特許第6251710号(P6251710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6251710銅被覆アルミニウム複合押出材の製造方法、ならびに銅被覆アルミニウム導体線材およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6251710
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】銅被覆アルミニウム複合押出材の製造方法、ならびに銅被覆アルミニウム導体線材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21C 23/26 20060101AFI20171211BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20171211BHJP
   H01B 5/02 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   B21C23/26
   H01B13/00 501B
   H01B5/02 A
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-172345(P2015-172345)
(22)【出願日】2015年9月1日
(65)【公開番号】特開2017-47448(P2017-47448A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2016年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500356038
【氏名又は名称】FCM株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】高木 亮
(72)【発明者】
【氏名】芥田 泰夫
(72)【発明者】
【氏名】白崎 賢治
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−315524(JP,A)
【文献】 特開昭60−223611(JP,A)
【文献】 特開2004−342561(JP,A)
【文献】 特開2004−304483(JP,A)
【文献】 特開2010−135138(JP,A)
【文献】 特開平01−224111(JP,A)
【文献】 特公昭47−018404(JP,B1)
【文献】 特開平04−230905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 23/00−35/36
H01B 13/00−13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu系材料からなる円筒状のCuパイプ、およびAl系材料からなる円柱状のAl材を、500℃における変形抵抗値の比が5以下になるようにそれぞれ選択する第1工程と、
それぞれ選択した前記Cuパイプおよび前記Al材を用い、前記Cuパイプに前記Al材を装入する第2工程と、
前記Al材が装入された前記Cuパイプ内を真空引きした状態で前記Cuパイプの両端開口を密封して、前記Al材が真空封入されたCuパイプの複合ビレットを形成する第3工程と、
該複合ビレットを400〜450℃に加熱しながら熱間押出しすることにより、前記Al材および前記Cuパイプを一体化してなる棒状の銅被覆アルミニウム複合押出材を得る第4工程と
を含む
Al系材料からなるAl芯部と、該Al芯部の周囲に配置された、Cu系材料からなるCu被覆層とを有する銅被覆アルミニウム導体線材の製造方法であり
前記銅被覆アルミニウム導体線材の横断面で見て、前記Al芯部に対する前記Cu被覆層の面積比が、0.43以上であることを特徴とする、銅被覆アルミニウム導体線材の製造方法。
【請求項2】
前記Al芯部に対する前記Cu被覆層の面積比が、0.82〜1.23である、請求項1に記載の銅被覆アルミニウム導体線材の製造方法
【請求項3】
前記第1工程における前記変形抵抗値の比が3以下である、請求項1または2に記載の銅被覆アルミニウム導体線材の製造方法。
【請求項4】
前記第2工程を行なうに先立ち、前記Al材の表面に、NbまたはTaからなる拡散バリア層を形成する工程をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅被覆アルミニウム導体線材の製造方法。
【請求項5】
前記第4工程における熱間押出し時の減面率を85.0%以上99.5%未満とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の銅被覆アルミニウム導体線材の製造方法。
【請求項6】
前記第1工程で選択される、前記Al材の横断面積に対する前記Cuパイプの横断面積の比が、前記第4工程で得られた前記銅被覆アルミニウム複合押出材を構成する、前記Al材に相当する部分の横断面積に対する前記Cuパイプに相当する部分の横断面積の比の0.43〜2.30の範囲である、請求項1〜のいずれか1項に記載の銅被覆アルミニウム導体線材の製造方法。
【請求項7】
前記第4工程で得られた前記銅被覆アルミニウム複合押出材に伸線加工を施して銅被覆アルミニウム導体線材を得る第5工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の銅被覆アルミニウム導体線材の製造方法。
【請求項8】
前記第4工程で得られた前記銅被覆アルミニウム複合押出材を構成する、前記Al材に相当する部分の横断面積に対する前記Cuパイプに相当する部分の横断面積の比が、前記第5工程で得られた前記銅被覆アルミニウム導体線材を構成する、Al芯部の横断面積に対するCu被覆層の横断面積の比の0.43〜2.30の範囲である、請求項に記載の銅被覆アルミニウム導体線材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅被覆アルミニウム複合押出材の製造方法、ならびに銅被覆アルミニウム導体線材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅被覆アルミニウム導体線材は、アルミニウム(Al)芯部の周囲に、銅(Cu)被覆層を一体形成したものであって、Cu線材に比べて軽量化が図れることから、自動車用電線、同軸ケーブルの中心線、さらには、ボイスコイルのような微小コイル等に用いられる導体線として使用されている。
【0003】
また、銅被覆アルミニウム導体線材は、Al芯部の周囲にCu被覆層を形成した後に、線径を所定の寸法まで縮径化するための伸線加工を施して製造されるのが一般的である。このとき、Al芯部の周囲にCu被覆層を形成するための従来の方法としては、例えばアルミニウム線上に銅テープ(銅箔)を巻き付けてCu被覆層を形成する、いわゆるフォーミング加工法(例えば特許文献1)、あるいはAl線の外周面にCuまたはCu合金を析出させることにより、Cu被覆層を形成する、いわゆるめっき法(例えば特許文献2)が挙げられる。
【0004】
しかしながら、フォーミング加工法は、Al芯材に巻きつける銅テープが厚くなるにつれて、フォーミング加工を施すのが難しくなる傾向があり、また、めっき法は、均一に形成できるCuめっき層の厚さに限界があることから、両法とも、形成可能なCu被覆層の厚さとしては、銅被覆アルミニウム導体線材に占めるCu被覆層の(断)面積率にして、最大でも25%程度であると考えられる。
【0005】
また、最近では、線材が適用される工業製品によっては、従来の銅被覆アルミニウム導体線材では導電率が十分ではなく、さらに高い導電率を有する銅被覆アルミニウム導体線材を開発する必要性が高まりつつあり、さらには、顧客の要望に応じて、銅被覆アルミニウム導体線材を構成する銅被覆層の厚さを、銅被覆アルミニウム導体線材に占めるCu被覆層の面積率にして、25%以下の薄肉の範囲から、25%超えの厚肉の範囲までの広い範囲で簡便に設定できる銅被覆アルミニウム導体線材の製造方法があれば望ましい。
【0006】
従来の銅被覆アルミニウム導体線材に比べて導電率を高めるには、Al芯部の周囲に形成するCu被覆層の厚さを、従来の銅被覆アルミニウム導体線材よりも厚くすること(例えば銅被覆アルミニウム導体線材に占めるCu被覆層の面積率にして30%以上)が有効であるが、フォーミング加工法やめっき法のような従来法では、そのように厚いCu被覆層を形成することは難しかった。加えて、フォーミング加工法で形成したCuテープ(Cu被覆層)は、Al芯部に対する密着性が劣るため、その後に行う伸線加工時後にCuテープの一部が剥がれてAl芯部の表面の一部が露出する傾向があり、また、めっき法で形成したCuめっき(Cu被覆層)は、薄くしか形成できないため、その後に行う伸線加工後にCuめっきの一部が剥がれてAl芯部の表面の一部が露出する傾向があり、いずれの場合も、このような表面状態を有する線材を使用し続けると、Al芯部の表面露出部分を起点として異種金属腐食が生じるようになり、最悪の場合には、Al芯部が破断するおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5203817号公報
【特許文献2】特開2004−39477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、Al芯部に対するCu被覆層の面積比を、従来の銅被覆アルミニウム導体線材(例えば前記銅面積率にして25%以下)に比べて高く(例えば前記銅面積率にして30%以上)することによって、従来の銅線材(前記銅面積率にして100%)に比べて軽量を維持しつつ、従来の銅被覆アルミニウム導体線材に比べて高導電率を有する銅被覆アルミニウム導体線材を提供することにある。
【0009】
また、本発明の別の目的は、円柱状のAl材および円筒状のCuパイプを適正に選択し、選択したAl材およびCuパイプで所定の複合ビレットを形成し、この複合ビレットを所定の温度で熱間押出しすることにより、複合ビレットを構成する、Al材とCuパイプの断面積比と同じまたは近い断面積比をもつ銅被覆アルミニウム複合押出材の製造方法を提供することにある。なお、この銅被覆アルミニウム複合押出材は、銅被覆アルミニウム導体線材を製造するための伸線加工用素材として用いるのに好適である他、銅材料からなる柱状または棒状の導電部材(例えばブスバー)等の各種部材の代用材として用いれば、軽量化を図ることができる。
【0010】
さらに、本発明の他の目的は、上述したAl芯部に対するCu被覆層の面積比が高い被覆アルミニウム導体線材の製造を可能にする銅被覆アルミニウム導体線材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)Cu系材料からなる円筒状のCuパイプ、およびAl系材料からなる円柱状のAl材を、500℃における変形抵抗値の比が10未満になるようにそれぞれ選択する第1工程と、それぞれ選択した前記Cuパイプおよび前記Al材を用い、前記Cuパイプに前記Al材を装入する第2工程と、前記Al材が装入された前記Cuパイプ内を真空引きした状態で前記Cuパイプの両端開口を密封して、前記Al材が真空封入されたCuパイプの複合ビレットを形成する第3工程と、該複合ビレットを400〜450℃に加熱しながら熱間押出しすることにより、前記Al材および前記Cuパイプを一体化してなる棒状の銅被覆アルミニウム複合押出材を得る第4工程とを含むことを特徴とする、銅被覆アルミニウム複合押出材の製造方法。
【0012】
(2)前記第1工程における前記変形抵抗値の比が3以下である、上記(1)に記載の銅被覆アルミニウム複合押出材の製造方法。
【0013】
(3)前記第2工程を行なうに先立ち、前記Al材の表面に、NbまたはTaからなる拡散バリア層を形成する工程をさらに含む、上記(1)または(2)に記載の銅被覆アルミニウム複合押出材の製造方法。
【0014】
(4)前記第4工程における熱間押出し時の減面率を85.0%以上99.9%未満とする、上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の銅被覆アルミニウム複合押出材の製造方法。
【0015】
(5)前記第1工程で選択される、前記Al材の横断面積に対する前記Cuパイプの横断面積の比が、前記第4工程で得られた前記銅被覆アルミニウム複合押出材を構成する、前記Al材に相当する部分の横断面積に対する前記Cuパイプに相当する部分の横断面積の比の0.43〜2.30の範囲である、上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の銅被覆アルミニウム複合押出材の製造方法。
【0016】
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の銅被覆アルミニウム複合押出材の製造方法を用いて製造された銅被覆アルミニウム複合押出材に、伸線加工を施して銅被覆アルミニウム導体線材を得る第5工程を含む、銅被覆アルミニウム導体線材の製造方法。
【0017】
(7)前記第4工程で得られた前記銅被覆アルミニウム複合押出材を構成する、前記Al材に相当する部分の横断面積に対する前記Cuパイプに相当する部分の横断面積の比が、前記第5工程で得られた前記銅被覆アルミニウム導体線材を構成する、Al芯部の横断面積に対するCu被覆層の横断面積の比の0.43〜2.30範囲である、上記(6)に記載の銅被覆アルミニウム複合押出材の製造方法。
【0018】
(8)Al系材料からなるAl芯部と、該Al芯部の周囲に配置された、Cu系材料からなるCu被覆層とを有する銅被覆アルミニウム導体線材であって、前記銅被覆アルミニウム導体線材の横断面で見て、前記Al芯部に対する前記Cu被覆層の面積比が、0.43以上であることを特徴とする銅被覆アルミニウム導体線材。
【0019】
(9)前記Al芯部に対する前記Cu被覆層の面積比が、0.82〜1.23である、上記(8)に記載の銅被覆アルミニウム導体線材。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、Al系材料からなるAl芯部と、このAl芯部の周囲に配置された、Cu系材料からなるCu被覆層とを有する銅被覆アルミニウム導体線材であって、Al芯部の面積比に対するCu被覆層の面積比を0.43以上として、Al芯部に対するCu被覆層の面積比を、従来の銅被覆アルミニウム導体線材(銅被覆アルミニウム導体線材に占めるCu被覆層の面積率にして25%以下)に比べて高く(例えば前記銅面積率にして30%以上)することによって、従来の銅線材(前記銅面積率にして100%)に比べて軽量を維持しつつ、これまでの従来の銅被覆アルミニウム導体線材では得られなかった高導電率を有する銅被覆アルミニウム導体線の提供が可能になった。
【0021】
また、本発明によれば、Cu系材料からなる円筒状のCuパイプ、およびAl系材料からなる円柱状のAl材を、500℃における変形抵抗値の比が10未満になるようにそれぞれ選択する第1工程と、それぞれ選択したCuパイプおよびAl材を用い、CuパイプにAl材を装入する第2工程と、Al材が装入されたCuパイプ内を真空引きした状態で前記Cuパイプの両端開口を密封して、Al材が真空封入されたCuパイプの複合ビレットを形成する第3工程と、複合ビレットを400〜450℃に加熱しながら熱間押出しすることにより、Al材およびCuパイプが一体化してなる棒状の銅被覆アルミニウム複合押出材を得る第4工程とを含むことによって、特に従来の製造方法では製造できなかった、Cuパイプに相当する部分の厚さを厚く(例えば前記銅面積率にして30%以上)した棒状の銅被覆アルミニウム複合押出材の製造方法の提供が可能になった。なお、この銅被覆アルミニウム複合押出材は、銅被覆アルミニウム導体線材を製造するための伸線加工用素材として用いるのに好適である他、銅材料からなる棒状の導電部材(例えばブスバー)等の各種部材の代用材として用いれば、軽量化を図ることができる。
【0022】
さらに、本発明によれば、特に上述したAl芯部に対するCu被覆層の面積比が高い被覆アルミニウム導体線材の製造を可能にする銅被覆アルミニウム導体線材の製造方法の提供が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明に従う銅被覆アルミニウム導体線材の横断面を模式的に示した図である。
図2図2(a)〜(d)は、本発明に従う銅被覆アルミニウム複合押出材の製造方法を説明するための図であって、(a)が製造フロー図、(b)がAl材をCuパイプに装入(組立)するときの状態を示す図、(c)が複合ビレットを形成するときの状態を示す図、そして、(d)が複合ビレットを熱間押出しするときの状態を示す図である。
図3図3(a)〜(e)は、本発明に従う銅被覆アルミニウム導体線材の製造方法を説明するための図であって、(a)が製造フロー図、(b)がAl材をCuパイプに装入(組立)するときの状態を示す図、(c)が複合ビレットを形成するときの状態を示す図、(d)が複合ビレットを熱間押出しするときの状態を示す図、そして、(e)が銅被覆アルミニウム複合押出材を伸線加工するときの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
(銅被覆アルミニウム導体線材)
図1は、本発明に従う銅被覆アルミニウム導体線材の横断面を模式的に示したものであって、図1中の符号10は銅被覆アルミニウム導体線材、11はアルミニウム(Al)芯部、12は銅(Cu)被覆層である。
【0026】
図示の銅被覆アルミニウム導体線材10は、Al芯部11と、このAl芯部11の周囲に配置されたCu被覆層12とで主に構成されている。
【0027】
Al芯部11は、AlまたはAl合金からなるAl系材料で構成され、特に5000系(Al−Mg系)や、機械的強度が高い6000系(Al−Mg−Si系)のAl合金で構成されているのが、Cu被覆層12とともに押出加工した時における断面積比の均一性に優れている点で好ましい。
【0028】
また、Cu被覆層12は、CuまたはCu合金からなるCu系材料で構成され、特に、Ni−Cu−Ni合金やCu−Zn合金で構成されているのが、Al芯部11とともに押出加工した時における断面積比の均一性に優れている点で好ましい。
【0029】
そして、本発明の銅被覆アルミニウム導体線材10は、Al芯部11に対するCu被覆層12の厚さtを、従来の製造方法では製造できなかった、例えば銅被覆アルミニウム導体線材10に占めるCu被覆層12の(断)面積率にして30%以上とすることにあり、より具体的には、銅被覆アルミニウム導体線材10の横断面で見て、Al芯部11の面積S1に対するCu被覆層12の面積S2の比S2/S1を0.43以上とすることを必須の発明特定事項とすることにある。そして、本発明の銅被覆アルミニウム導体線材10は、この構成を採用することにより、従来の銅線材に比べて軽量でありながら、これまでの従来の銅被覆アルミニウム導体線材では得られなかった高導電率を有することができる。
【0030】
また、本発明の銅被覆アルミニウム導体線材10は、Al芯部11の部分で軽量化に寄与させるとともに、従来の銅被覆アルミニウム導体線材に比べて厚く形成できるCu被覆層12の部分で、導電率の向上に寄与させるように構成することを可能としたものである。Al芯部11の面積S1に対するCu被覆層12の面積S2の比S2/S1が0.43未満であると、従来の銅被覆アルミニウム導体線材に比べて、導電率の向上効果が顕著ではなく、線材を用いて構成される工業製品によっては、必要とされる導電率のレベルを満たない場合が想定され、銅被覆アルミニウム導体線材を使用できる工業製品の種類や用途が限定されるからである。
【0031】
また、銅被覆アルミニウム導体線材10において、軽量と高導電率の双方をバランスよく満足させることを重視する場合には、Al芯部11に対するCu被覆層12の面積比S2/S1を、0.82〜1.23とすることがより好適である。
【0032】
さらに、図1の銅被覆アルミニウム導体線材10は、Al芯部11とCu被覆層12とで構成した場合を示しているが、Al芯部11とCu被覆層12との間にNbまたはTaからなる拡散防止層(図示せず)を形成することも可能である。拡散防止層は、銅被覆アルミニウム導体線材10の製造時に熱間押出し等の加熱処理が施される場合に、Al芯部11中のAlや、Cu被覆層12中のCuが相互に熱拡散して、Al芯部11とCu被覆層12との界面等にAl−Cu相が生成するのを有効に防止することができることから、必要に応じて形成することが好ましい。
【0033】
(銅被覆アルミニウム複合押出材の製造方法)
次に、本発明に従う銅被覆アルミニウム複合押出材20の製造方法について説明する。
図2(a)は、本発明に従う銅被覆アルミニウム複合押出材の製造フローを示したものである。本発明の銅被覆アルミニウム複合押出材20の製造方法は、Al系材料からなる円柱状のAl材21およびCu系材料からなる円筒状のCuパイプ22を、500℃における変形抵抗値の比が10未満になるようにそれぞれ選択する第1工程S1と、それぞれ選択したCuパイプ22およびAl材21を用い、Cuパイプ22にAl材21を装入する第2工程S2と、Al材21が装入されたCuパイプ22内を真空引きした状態でCuパイプ22の両端開口を密封して、Al材21が真空封入されたCuパイプ22の複合ビレット23を形成する第3工程S3と、複合ビレット23を400〜450℃に加熱しながら熱間押出しすることにより、Al材21およびCuパイプ22が一体化してなる棒状の銅被覆アルミニウム複合押出材20を得る第4工程S4とを順次行なうものである。
【0034】
本発明の銅被覆アルミニウム複合押出材20の製造方法は、Al材21とCuパイプ22とで構成される複合ビレット23を熱間押出しすることによって銅被覆アルミニウム複合押出材20を得る方法であって、熱間押出を行なう複合ビレット23は、Al材21とCuパイプ22の異種材料で構成されているため、Al材21とCuパイプ22の変形抵抗値が大きく異なる場合には、熱間押出し後に得られる銅被覆アルミニウム複合押出材20を構成するAl材に相当する部分(以下「Al材相当部」という場合がある。)とCuパイプに相当する部分(以下「Cuパイプ相当部」という場合がある。)が、均一には押し出されず、Al材相当部に対するCuパイプ相当部の面積比が、所期した面積比にすることができず、さらに、その後に伸線加工を施す場合も同様の問題が生じる。このため、第1工程では、Cu系材料からなる円筒状のCuパイプ22と、Al系材料からなる円柱状のAl材21を、500℃における変形抵抗値の比が10未満になるようにそれぞれ選択する。
【0035】
一般に、Al系材料は、Cu系材料よりも軟質であって、変形抵抗値が小さいことが知られている。本発明者らは、純AlからなるAl系材料と、Cu−10質量%Ni合金からなるCu系材料を選択し、本発明の製造方法に従って銅被覆アルミニウム複合押出材を製造したところ、製造された銅被覆アルミニウム複合押出材は、長手方向に断続的に外径が大きい部分と小さい部分とが生じる現象、いわゆるソーセージング現象と呼ばれる不均一形状が生じていて、均一形状(棒状)の銅被覆アルミニウム複合押出材を得ることができないことが判明した。このとき用いた純AlからなるAl系材料と、Cu−10質量%Ni合金からなるCu系材料の変形抵抗値の比は約15であった。
【0036】
そこで、本発明者らは、異なる組成をもつ種々のCu系材料からなるCuパイプと、異なる組成をもつ種々のAl材を準備し、CuパイプとAl材をいろいろな組合せで、変形抵抗値の差が異なる複合ビレットを作製し、各複合ビレットを熱間押出して得られる押出材の形状を検討した。その結果、CuパイプとAl材の500℃における変形抵抗値の比が10未満になるようにして作製した複合ビレットを熱間押出して得られる押出材は、いずれも均一形状(棒状)を有することを見出した。
【0037】
このため、本発明では、Cu系材料からなる円筒状のCuパイプ22と、Al系材料からなる円柱状のAl材21を、500℃における変形抵抗値の比が10未満になるようにそれぞれ選択することを必須の発明特定事項とした。なお、熱間押出しや伸線加工の前後で、Al材(Al芯部)に対するCuパイプ(Cu被覆層)の面積比が等しくなるような断面がほぼ相似形になるようにして、長手方向の断面積比の変動をより一層抑制する必要がある場合には、前記変形抵抗値の比が3以下になるようにすることが好ましい。
前記第1工程S1で選択される、Al材21の横断面積に対するCuパイプ22の横断面積の比が、第4工程S4で得られた銅被覆アルミニウム複合押出材20を構成する、Al材相当部の横断面積に対する前記Cuパイプ相当部の横断面積の比の0.43〜2.30の範囲であることが、銅被覆アルミニウム複合押出材20を構成するCuパイプ相当部の厚さを所期した厚さに簡便に設定することができる点で好ましい。
【0038】
第2工程S2は、第1工程S1でそれぞれ選択したCuパイプ22およびAl材21を用い、Cuパイプ22にAl材21を装入する工程(図2(b))である。Cuパイプ22は、Al材21の装入を容易にするとともに、その後に行われる第3工程S3でCuパイプ22内の真空引きを行なうことから、Cuパイプ22の内径を、Al材21の直径よりも0.1〜0.5mm程度大きくすることが好ましい。加えて、銅被覆アルミニウム複合押出材20において、Al材相当部とCuパイプ相当部の間にNb等の拡散防止層を設ける場合には、Al材21の表面にNb等の箔を巻き付けてから、このAl材21をCuパイプ22に装入すればよい。また、Al材21は、その後に行われる第3工程S3でCuパイプ22内に真空封入されることから、Al材21の長さをCuパイプ22の長さと同じか、或いは3〜10mm程度短くすることが好ましい。また、Cuパイプ22の内面とAl材21の表面は、熱間押出し後に密着して一体化する必要があるため、Cuパイプ22とAl材21は、Cuパイプ22にAl材21を装入する前に、表面を洗浄することが好ましい。Cuパイプ22の表面は、酸洗浄によって行なえばよいが、Al材21は、酸にもアルカリにも溶ける金属であるため、表面を酸やアルカリでは洗浄せず、機械加工で酸化被膜を除去したきれいな表面にした後に、脱脂ふき取りのみで洗浄することが好ましい。
【0039】
また、他の実施形態として、第2工程S2を行なうに先立ち、Al材21の表面に、NbまたはTaからなる拡散バリア層を形成する工程をさらに行なってもよい。この拡散バリア層は、特にAlとCuの熱拡散を防止するのに有効であることから、銅被覆アルミニウム複合押出材20(およびこの押出材20を用いて製造される銅被覆アルミニウム導体線材10)が熱間押出時やそれ以外の製造工程時に高温の熱履歴を経なければならない場合に、特に設けることが好ましい。
【0040】
第3工程S3は、第2工程S2で、Al材21が装入されたCuパイプ22内を真空引きした状態でCuパイプ22の両端開口を密封して、Al材21が真空封入されたCuパイプ22の複合ビレット23を形成する工程(図2(c))である。本発明の製造方法は、熱間押出しの際に複合ビレット23が400℃以上の高温に加熱されるため、複合ビレット23を、Al材21とCuパイプ22で形成する場合には、Al材21とCuパイプ22の間に空気が存在すると、高温加熱下でCuパイプ22の内面が酸化しやすく、Cuパイプ22の内面に酸化膜が形成された状態で熱間押出しすると、Alに対するCuの密着性が劣ることから、本発明において、熱間押出しされる複合ビレット23を、Al材21が装入されたCuパイプ22内を真空引きした状態でCuパイプ22の両端開口を密封して、Al材21が真空封入されたCuパイプ22の複合ビレット23として形成することが必要である。
【0041】
複合ビレット23の形成方法としては、種々の方法が考えられるが、一例として挙げると、まず、Al材21が装入されたCuパイプ22を真空チャンバー内に回転可能にセットし、次いで、Cuパイプ22の両端にCu製の蓋24、24を被せる。このとき、Cuパイプ22の両端開口は蓋24で閉ざされているものの、気体が出入りできないような気密(密封)状態にはなっていないため、Cuパイプ22の内部と外部(真空チャンバー内)とは連通していて気体が自由に出入りできる状態になっている。その後、真空チャンバー内を真空引きして、蓋24をしたCuパイプ22の内部に存在する空気を外部へ吸引して排出した後、真空チャンバー内に設置された電子ビーム溶接機の電子銃(陰極)25から放射させた電子ビームを、Cuパイプ22を回転させながらCuパイプ22と蓋24の嵌合部分の全周にわたって照射することによって溶接し、Al材21が装入されたCuパイプ22内を真空引きした状態でCuパイプ22の両端開口を密封することができ、これによって、Al材21が真空封入されたCuパイプ22の複合ビレット23を形成することができる。このようにして形成した複合ビレット23は、その後、大気中で熱間押出しを行なったとしても、Cuパイプ22の内面が酸化することがなく、常に安定して均一形状の銅被覆アルミニウム複合押出材20を得るのに好適な複合ビレット23を形成することができる。
【0042】
第4工程S4は、複合ビレット23を400〜450℃に加熱しながら熱間押出しすることにより、前記Al材および前記Cuパイプが一体化してなる棒状の銅被覆アルミニウム複合押出材20を得る工程(図2(d))である。熱間押出し時の複合ビレット23の加熱温度は、400〜450℃とする。前記加熱温度が400℃よりも低いと、熱間押出しに用いるプレス機26の圧力が高くなりすぎ、熱間押出時の減面率を大きくすることができず、所定の径にするには、さらに伸線加工を行なうか、あるいは伸線加工の回数を多くしなくてはならず、効率良く製造することができなくなるからである。また、前記加熱温度が450℃よりも高いと、Alの溶融や、AlやCuの熱拡散が生じやすくなるからである。本発明では、複合ビレット23を400〜450℃に加熱しながら熱間押出しすることにより、Al材21とCuパイプ22とを密着一体化させて、均一形状をした棒状の銅被覆アルミニウム複合押出材20を得ることができる。複合ビレット23の熱間押出しは、具体的には複合ビレット23をコンテナ27の中に入れ、400〜450℃に加熱した後にプレス機26によって複合ビレットに圧力を加えてダイスから押し出すことにより行えばよい。なお、熱間押出しの回数は、特に限定はしないが、歩留りやコストのことを考慮して、1回とすることが好ましい。
【0043】
また、本発明の銅被覆アルミニウム複合押出材の製造方法によって得られる銅被覆アルミニウム複合押出材20を用い、この押出材20に伸線加工を施して所定の線径の銅被覆アルミニウム導体線材10を形成する場合には、熱間押出し時の減面率を85.0%以上99.5%未満と大きくすることが、伸線加工を行なう回数を少なくできる点で好ましい。熱間押出し時の減面率が85.0%未満だと、熱間押出後の押出材20の径を十分に縮径することができず、伸線加工を行なう回数が多くなって、製造設備が大型化するなどの問題が生じるため好ましくなく、また、前記減面率が99.5%未満としたのは、熱間押出しのプレス機26のプレス圧力の限界を考慮して限定したものである。
【0044】
また、熱間押出し時における押出材20の形成速度は、特に限定はしないが、例えば5〜100mm/secで行なうことができる。さらに、熱間押出しに用いるダイス28の角度は60〜120°とすることが好ましい。ダイス28の角度が60°以上だと、熱間押出しにより得られる押出材20におけるCuとAlとが密着性よく一体化される傾向があるからであり、また、ダイス28の角度が120°以下だと、熱間押出しにより得られる押出材20の両端における不良部の生成割合が少なく、高い歩留まりで押出材20を製造できる傾向があるからである。なお、ここでいう「ダイスの角度」は、ダイスの軸線方向断面で見て、複合ビレットの押出方向に向かって円錐台状に延び、複合ビレットが接触するダイスの傾斜表面を、仮想円錐の頂点まで延長して傾斜表面同士を交差させたときの交角(頂角)を意味する。
【0045】
(銅被覆アルミニウム導体線材の製造方法)
また、本発明に従う銅被覆アルミニウム導体線材10の製造方法は、上述した銅被覆アルミニウム複合押出材の製造方法を用いて製造された銅被覆アルミニウム複合押出材に、伸線加工を施す第5工程(図3(e))を含む製造方法である。図3(a)は、本発明に従う銅被覆アルミニウム導体線材10の製造フローを示したものである。なお、本発明の銅被覆アルミニウム導体線材10の製造方法の主要工程である第1工程S1から第5工程S5のうち、第1工程S1から第4工程S4までは、上述した本発明の銅被覆アルミニウム複合押出材の製造方法と同様であり、図3(a)〜図3(d)と図2(a)〜(d)は同じ工程を示しており、説明は省略する。
【0046】
伸線加工は、複数回行なわれる。1回の伸線加工における減面率は、15〜30%とすることが好ましい。前記減面率が30%を超えると、断線の恐れがあり、また、前記減面率が15%未満だと、伸線加工の回数が多くなるとともに、線材の内部に加工力が十分に伝わらないため、不均一な加工になりやすいため好ましくない。
【0047】
また、伸線加工は、常温で行なわれ、加工によって銅被覆層12に導入された加工歪みを除去する必要がある場合には、加工途中に200〜300℃程度の温度で1回または複数回の中間焼鈍を行うことが好ましい。
【0048】
さらに、第4工程S4で得られた銅被覆アルミニウム複合押出材20を構成する、Al材相当部の横断面積0.4に対するCuパイプ相当部の横断面積の比が、第5工程S5で得られた銅被覆アルミニウム導体線材10を構成する、Al芯部11の横断面積S1に対するCu被覆層12の横断面積S2の比S2/S1の0.43〜2.30の範囲であることが、銅被覆アルミニウム導体線材10を構成するCu被覆層12の厚さを所期した厚さに簡便に設定することができる点で好ましい。
【0049】
本発明の銅被覆アルミニウム導体線材10の製造方法は、線径が50〜100μm程度の極細な銅被覆アルミニウム導体線を製造することができ、銅線に近い導電率を有しつつ、銅線よりも軽量化が図れているので、自動車用電線や同軸ケーブルの中心線に使用できるのは勿論のこと、さらには、ボイスコイルのような微小コイル等に用いられる導体線として用いるのに特に適している。
【0050】
なお、本発明の銅被覆アルミニウム導体線材の製造方法は、フォーミング加工法やめっき法のような従来の製造方法では製造することができなかった、Cu被覆層の厚さを厚く(例えばAl芯部に対する前記Cu被覆層の面積比にして0.43以上)した銅被覆アルミニウム導体線材を製造することを可能にするだけではなく、Cu被覆層の厚さが薄い従来の銅被覆アルミニウム導体線材を製造することもできることから、顧客の要求に応じて、Cu被覆層の厚さを広範囲にわたって所望の厚さにした銅被覆アルミニウム導体線材の供給も可能にすることができる。
【実施例】
【0051】
次に、本発明の実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0052】
(実施例I:銅被覆アルミニウム複合押出材の製造)
表1に示す種々のCu系材料からなる円筒状のCuパイプ22(外径:200mm、内径:130.0mm、長さ:805.0mm)と、表1に示す種々のAl系材料からなる円柱状のAl材21(直径:129.5mm、長さ:800.0mm)を選択した。Cuパイプ22とAl材21の変形抵抗値の比を表1に示す。
【0053】
次に、Cuパイプ22の内面及び外面を酸洗浄し、また、Al材21の表面は、機械加工で酸化被膜を除去した後に、脱脂ふき取りのみの表面洗浄を行った後に、Cuパイプ22にAl材21を装入した。その後、Al材21が装入されたCuパイプ22の両端にCu製の蓋24を被せ、このCuパイプ22を真空チャンバー内に回転可能にセットし、真空チャンバー内を10−5Pa以下まで真空引きして、蓋24をしたCuパイプ22の内部に存在する空気を外部へ吸引して排出した後、真空チャンバー内に設置された電子ビーム溶接機の電子銃25から放射された電子ビームを、Cuパイプ22を回転させながらCuパイプ22と蓋24の嵌合部分の全周にわたって照射して溶接し、Al材21が装入されたCuパイプ22内を真空引きした状態でCuパイプ22の両端開口を密封することによって、Al材21が真空封入されたCuパイプ22の複合ビレット23を形成した。次に、この複合ビレット23を430℃に加熱しながら熱間押出しすることにより、Al材21およびCuパイプ22を一体化してなる、外径:75mm、長さ:10mの棒状の銅被覆アルミニウム複合押出材20(実施例1−1〜1−4)を作製した。なお、熱間押出し時の減面率は85.0%とした。また、作製した銅被覆アルミニウム複合押出材20のうち、その両端からそれぞれ全長の5%に相当する長さ部分を除いた、全長の90%に相当する長さ部分について、ソーセージング現象と呼ばれる不均一形状の発生の有無を外観目視で観察した結果を表1に示す。表1中の「×」は、前記銅被覆アルミニウム複合押出材の全長の90%に相当する長さ部分が、熱間押出し時の押出径(75mm)に対する押出材の外径の変動幅が±2%を超えていて不均一形状が発生、または破断が生じている場合(不合格)を示しており、また、「◎」および「○」は、熱間押出し時の押出径(75mm)に対する押出材の外径の変動幅が±2%以内である場合(合格品)を示すものであって、特に、「◎」は前記変動幅が±1%以内である場合を示している。
参考のため、変形抵抗値の比が、本発明の適正範囲外である組合せのCuパイプとAl材を用いたことを除いて、実施例と同様の製造方法で銅被覆アルミニウム複合押出材(比較例2−1および2−2)を作製したので、表1に併記した。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示す結果から、実施例1−1〜1−4は、いずれも均一な棒状の銅被覆アルミニウム複合押出材が得られた。また、実施例1−1〜1−4で得られた押出材をその後切断して、Al材相当部に対するCuパイプ相当部の面積比を、押出材の長手方向に沿って調べたところ、いずれもほぼ1であった。一方、変形抵抗比が本発明の適正範囲外である比較例1−1および1−2は、いずれも不均一形状が生じていた。また、比較例1−1および1−2で得られた押出材をその後切断して、Al材相当部に対するCuパイプ相当部の面積比を、押出材の長手方向に沿って調べたところ、いずれも0.5〜1.5の範囲であり、Cuパイプ相当部の厚さに大きなバラツキがあることを確認した。
【0056】
(実施例II:銅被覆アルミニウム導体線材の製造)
純Cuからなる円筒状のCuパイプ22と、6063番のAl合金からなる円柱状のAl材21を、表2に示すAl材に対するCuパイプの面積比になるような異なる横断面積をもつ種々のものを用意した。なお、用意したCuパイプとAl材は、変形抵抗比が2.0であり、CuパイプとAl材で構成される複合ビレットを構成する、Al材に対するCuパイプの面積比と、最終的に得られる銅被覆アルミニウム導体線材を構成する、Al芯部に対するCu被覆層の面積比とは、ほぼ同じであった。
【0057】
次に、Cuパイプ22の内面及び外面を酸洗浄し、また、Al材21の表面は、機械加工で酸化被膜を除去した後に、脱脂ふき取りのみの表面洗浄を行った後に、Cuパイプ22にAl材21を装入した。その後、Al材21が装入されたCuパイプ22の両端にCu製の蓋24を被せ、このCuパイプ22を真空チャンバー内に回転可能にセットし、真空チャンバー内を10−5Pa以下まで真空引きして、蓋24をしたCuパイプ22の内部に存在する空気を外部へ吸引して排出した後、真空チャンバー内に設置された電子ビーム溶接機の電子銃25から放射された電子ビームを、Cuパイプ22を回転させながらCuパイプ22と蓋24の嵌合部分の全周にわたって照射して溶接し、Al材21が装入されたCuパイプ22内を真空引きした状態でCuパイプ22の両端開口を密封することによって、Al材21が真空封入されたCuパイプ22の複合ビレット23を形成した。次に、この複合ビレット23を430℃に加熱しながら熱間押出しすることにより、Al材21およびCuパイプ22を一体化してなる棒状の銅被覆アルミニウム複合押出材20(外径:75mm、長さ:6m)を作製した。なお、熱間押出し時の減面率は85.0%とした。その後、この押出材20に、250℃の中間焼鈍を施した後に、減面率が25%の伸線加工を30回施して、線径8mmの銅被覆アルミニウム導体線材(実施例2−1〜2−7)を作製し、作製した各銅被覆アルミニウム導体線材について、導電率、重量、屈曲性および交差圧縮性について評価した結果を表2に示す。参考のため、従来の特許文献2記載の電気メッキ法と同様な製造方法で製造した、Al芯部に対するCu被覆層の面積比が0.1である銅被覆アルミニウム導体線材(比較例2−1)についても作製したので、表2に併記した。
【0058】
(導電率)
導電率は、JIS H 0505−1975に従い測定し、Cu線の導電率を100としたときの銅被覆アルミニウム導体線材の導電率を指数比で表したものを表2に示す。
【0059】
(重量)
重量は、長さ10mの線材の重量を化学天秤により測定し、Cu線の重量を100としたときの銅被覆アルミニウム導体線材の重量を指数比で表したものを表2に示す。
【0060】
(屈曲性)
屈曲性は、銅被覆アルミニウム導体線材を180°折り返して、ヘアピン状に曲げ、そのとき、ヘアピン曲げ部に1mm以上の割れ等の欠陥の発生の有無を光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することによって評価した。表2に屈曲性の評価結果を示す。表2中に示す屈曲性の欄の「◎」は、ヘアピン曲げ部に割れ等の欠陥が存在しない場合を示し、また、「○」は、ヘアピン曲げ部に1mm未満の微小な欠陥が存在する場合を示し、「×」は、ヘアピン曲げ部に1mm以上の割れ等の欠陥が存在する場合を示す。
【0061】
(交差圧縮性)
交差圧縮性は、銅被覆アルミニウム導体線材を90°に交差させ、この交差部を線材の線径の半分になる位置まで押圧し、このとき、線材の表面における割れの発生の有無を光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することによって評価した。表2に交差圧縮性の評価結果を示す。表2中に示す交差圧縮性の欄の「○」は、線材の表面に割れの発生が認められない場合、「×」は、線材の表面に割れの発生が認められた場合を示す。
【0062】
【表2】
【0063】
表2に示す結果から、実施例2−1〜2−7は、いずれも屈曲性および交差圧縮性が優れていた。特に、実施例2−3〜2−7は、屈曲性に優れていた。一方、Al芯部に対するCu被覆層の面積率が0.1と小さい比較例2−1は、屈曲性および交差圧縮性の双方ともが劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、従来の銅線材に比べて軽量を維持しつつ、これまでの従来の銅被覆アルミニウム導体線材では得られなかった高導電率を有する銅被覆アルミニウム導体線の提供が可能になった。また、本発明によれば、特に従来の製造方法では製造できなかった、Cuパイプ相当部の厚さを厚く(例えば前記銅面積率にして30%以上)した棒状の銅被覆アルミニウム複合押出材の製造方法の提供が可能になった。なお、この銅被覆アルミニウム複合押出材は、銅被覆アルミニウム導体線材を製造するための伸線加工用素材として用いるのに好適である他、銅材料からなる棒状の導電部材(例えばブスバー)等の各種部材の代用材として用いれば、軽量化を図ることができる。さらに、本発明によれば、特に、上述したAl芯部に対するCu被覆層の面積比が高い被覆アルミニウム導体線材の製造を可能にする銅被覆アルミニウム導体線材の製造方法の提供が可能になり、自動車用電線や同軸ケーブルの中心線への適用の他、さらには、ボイスコイルのような微小コイル等に用いられる導体線に適用することが期待される。
【符号の説明】
【0065】
10 銅被覆アルミニウム導体線材
11 Al芯部
12 Cu被覆層
20 銅被覆アルミニウム複合押出材
21 Al材
22 Cuパイプ
23 複合ビレット
24 蓋
25 電子銃(陰極)
26 プレス機
27 コンテナ
28 ダイス
図1
図2
図3