特許第6251907号(P6251907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 藤森工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6251907
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/02 20060101AFI20171218BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20171218BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   C09J7/02 Z
   C09J133/04
   C09J11/06
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-116613(P2015-116613)
(22)【出願日】2015年6月9日
(62)【分割の表示】特願2013-25495(P2013-25495)の分割
【原出願日】2013年2月13日
(65)【公開番号】特開2015-157964(P2015-157964A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年1月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】島口 龍介
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−224811(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/008239(WO,A1)
【文献】 特開2011−241311(JP,A)
【文献】 特開2006−016595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
C09J 1/00−201/10
C09K 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤ポリマーと、帯電防止剤とを含有し、帯電防止性能を有する粘着剤組成物を架橋させてなる粘着剤層を、基材の片面上に積層してなる粘着フィルムであって、
前記粘着剤ポリマーが、次の粘着剤ポリマー(1)〜粘着剤ポリマー(3)から選択したいずれかの共重合体からなり、
粘着剤ポリマー(1);(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種と、(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種とを共重合させた共重合体、
粘着剤ポリマー(2);(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも2種以上を共重合させた共重合体、
粘着剤ポリマー(3);(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種と、芳香族系モノマーの少なくとも1種とを共重合させた共重合体、
前記帯電防止剤が、25℃水中での酸解離定数(pKa)が0以下の強酸の無機酸と、25℃水中での酸解離定数(pKa)が9〜14の強塩基の有機塩基との中和塩からなり、
前記有機塩基が、脂肪族第3級アミン類、環状アミン類、複素環式化合物のアミジン類、グアニジン類、及び複素環式化合物のグアニジン類、有機ホスファゼン類からなる群から選択した1種であり、
前記共重合体の100重量部に対して、前記帯電防止剤が、(C)前記の中和塩を0.1〜10重量部、を必須成分として含有することを特徴とする粘着フィルム
【請求項2】
前記粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であることを特徴とする請求項1に記載の粘着フィルム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性能を有する粘着フィルムに関する。さらに詳細には、帯電防止剤として、中和塩を含有する粘着剤組成物に関し、粘着性能を損なわずに帯電防止性能に優れた粘着フィルムを提供することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
粘着剤層を介して偏光板、位相差板などの光学部材を液晶セルなどの被着体に貼合するため、種々の粘着フィルムが提案されている(例えば特許文献1〜2参照)。
特許文献1には、ブチルアクリレートなどを主成分のモノマーとし、アクリルアミド化合物などを含有する光学用粘着剤組成物が記載されている。
特許文献2には、炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを主成分のモノマーとし、カルボキシル基含有モノマー、及び窒素含有ビニルモノマーを含有する光学用粘着剤組成物が記載されている。
また、「剥離フィルム/粘着剤層/剥離フィルム」の3層からなる構成の粘着フィルムは、剥離フィルムを剥離する時に、静電気が発生することから、粘着フィルムの粘着剤層が帯電して、被着体である液晶セルの液晶や制御用電子回路に損傷を与える可能性がある。そのため、液晶ディスプレイなどの製造工程においては、偏光板や位相差フィルムなどの各種光学フィルムを、粘着フィルムを介して、液晶セルなどの光学部品及び他の光学フィルムに貼り合せるに際し、該粘着フィルムの粘着剤層が、優れた帯電防止性能を有することが必要とされる。
【0003】
また、従来から、電子機器部品、光学機器部品、画像表示パネルなどの精密部品及び部材の製造加工・組み立て工程においては、これらの精密部品及び部材の表面を一時的に保護して、作業環境雰囲気からのパーティクル・気体状の汚染物質の付着や、すりキズ・打痕の発生を防止するために表面保護フィルムが、精密部品及び部材の表面に貼着されている。
例えば、液晶ディスプレイを構成する部材である偏光板、位相差板などの光学部材を製造する工程において使用される表面保護フィルムは、光学的に透明性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムの片面に粘着剤層が形成されているが、光学部材に貼り合わせるまで、その粘着剤層を保護するための剥離処理された剥離フィルムが、粘着剤層の上に貼り合わされている。
【0004】
また、偏光板、位相差板などの光学部材は、表面保護フィルムを貼り合わされた状態で、液晶表示板の表示能力、色相、コントラスト、異物混入などの光学的評価を伴う製品検査を行うため、表面保護フィルムに対する要求性能としては、粘着剤層に気泡や異物が付着していないことが求められている。
また、近年では、偏光板、位相差板などの光学部材から表面保護フィルムを剥がすときに、粘着剤層を被着体が剥がす時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電が、液晶ディスプレイの電気制御回路の故障に影響することが懸念され、粘着剤層に対して優れた帯電防止性能が求められている。
【0005】
優れた帯電防止性能については、表面保護フィルムに帯電防止性能を付与させるための方法として、基材フィルムに帯電防止剤を練り込む方法などが示され、帯電防止剤としては、例えば、(a)第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜3級アミノ基などのカチオン性基を有する各種のカチオン性帯電防止剤、(b)スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基などのアニオン性基を有するアニオン性帯電防止剤、(c)アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系などの両性帯電防止剤、(d)アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系などのノニオン性帯電防止剤、(e)上記の様な帯電防止剤を高分子量化した高分子型帯電防止剤、などが開示されている(特許文献3)。
【0006】
また、近年では、このような帯電防止剤を基材フィルムに含有させたり、あるいは基材フィルムの表面に塗布するのではなく、直接に粘着剤層に含有させたりすることが提案されている(特許文献4)。
特許文献4では、(1)(a)ウレタンアクリレートと、(b)ポリアルキレンオキサイド鎖を有する(メタ)アクリレートと、(c)接着力付与性モノマーと、を主成分として含む重合性混合物を放射線重合することにより得られた共重合体、および、(2)イオン性化合物、を含む、帯電防止性能を有する粘着剤組成、及びそれを用いた粘着シートが開示されている。具体的な、粘着剤組成物の製造方法として、ポリエステルウレタンアクリレートのようなウレタンアクリレートと、メトキシポリエチレングリコールアクリレートのようなポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレートモノマーと、ヒドロキシプロピルアクリレートのような接着力付与性モノマーと、必要に応じてイソオクチルアクリレートのようなさらなるコモノマーとを含む重合性混合物に、過塩素酸リチウムのようなイオン性化合物を混合し、必要ならば光重合開始剤を添加し、完全に溶解するまで攪拌した後、紫外線などを照射して硬化することにより粘着剤組成物が得られるとしている。
しかし、イオン性化合物として使用している過塩素酸リチウムは、金属腐食性を有するため、帯電防止性能を有する粘着剤組成物を使用できる場所が限られてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−177022号公報
【特許文献2】特開2012−201734号公報
【特許文献3】特開平11−070629号公報
【特許文献4】特開2000−129235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のとおり、粘着剤フィルム及び粘着剤シートは、帯電防止性能を備えることを求められることが多く、色々な種類の帯電防止剤が試みられてきた。しかし、特に光学フィルムの用途においては、帯電防止性能は持たせることができるが、透明性が悪いなどの欠点があり、さらには帯電防止剤の粘着剤への相溶性不足などから帯電防止剤のブリードアウトや粘着シートを剥がした際に被着体に汚染が生じてしまうなどのリワーク性が悪い等の欠点が多かった。これらの必要とされる性能を満足できても、コストが高くなって採用できないという問題もある。そのため、低コストでこれらの欠点を克服できる帯電防止剤を含んだ粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルムが必要とされている。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、粘着性能を損なわずに帯電防止性能に優れた粘着フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、粘着剤ポリマーと、帯電防止剤とを含有し、帯電防止性能を有する粘着剤組成物を架橋させてなる粘着剤層を、基材の片面上に積層してなる粘着フィルムであって、前記粘着剤ポリマーが、次の粘着剤ポリマー(1)〜粘着剤ポリマー(3)から選択したいずれかの共重合体からなり、
粘着剤ポリマー(1);(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種と、(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種とを共重合させた共重合体、
粘着剤ポリマー(2);(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも2種以上を共重合させた共重合体、
粘着剤ポリマー(3);(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種と、芳香族系モノマーの少なくとも1種とを共重合させた共重合体、
前記帯電防止剤が、25℃水中での酸解離定数(pKa)が0以下の強酸の無機酸と、25℃水中での酸解離定数(pKa)が9〜14の強塩基の有機塩基との中和塩からなり、前記有機塩基が、脂肪族第3級アミン類、環状アミン類、複素環式化合物のアミジン類、グアニジン類、及び複素環式化合物のグアニジン類、有機ホスファゼン類からなる群から選択した1種であり、前記共重合体の100重量部に対して、前記帯電防止剤が、(C)前記の中和塩を0.1〜10重量部、を必須成分として含有することを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0016】
前記粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、剥離フィルムの片面上に、前記粘着剤組成物を用いた粘着剤層が積層されたことを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0019】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、表面保護フィルムを提供する。
【0020】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、偏光板用の表面保護フィルムを提供する。
【0021】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、光学用の表面保護フィルムを提供する。
【0022】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、偏光板とディスプレイパネルの貼合用粘着フィルムを提供する。
【0023】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、偏光板を構成する光学フィルム材料の貼合用粘着フィルムを提供する。
【0024】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、タッチパネル用光学フィルムを提供する。
【0025】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、電子ペーパー用光学フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、安価な中和塩を帯電防止剤として含有する粘着剤組成物を用いることで、コストを抑えることができ、透明性、リワーク性などの欠点など上記の課題を改善することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、好適な実施の形態に基づいて本発明を説明する。
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止性能を有する粘着剤組成物であって、強酸の無機酸と強塩基の有機塩基との中和塩からなる帯電防止剤と、粘着剤樹脂成分とを含有することを特徴とする。これにより、帯電防止性能に優れ、透明性、リワーク性などの欠点などの課題を改善することが可能となる。
【0028】
本発明の粘着剤組成物に用いる粘着剤樹脂成分(ポリマー)としては、アクリル系ポリマーが好ましく、特に、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を主成分とする共重合体が好ましい。
(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基は、直鎖、分枝状、環状のいずれでもよい。
【0029】
本発明に用いる粘着剤樹脂成分として、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種と、他の共重合性モノマーの少なくとも1種とからなる共重合組成物を採用することもできる。この場合、他の共重合性モノマーとしては、ビニル基を有する共重合性ビニルモノマーや、(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマー、芳香族系モノマーが挙げられる。
【0030】
水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類や、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、これらの化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレートからなどが挙げられ、これらの化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
芳香族系モノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステル類のほか、スチレン等が挙げられる。
上記以外の共重合性ビニルモノマーとしては、アクリルアミド、アクリロニトリル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの各種ビニルモノマーが挙げられる。
【0031】
また、本発明に用いる粘着剤樹脂成分として、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも2種以上からなる共重合組成物を採用することもできる。この場合、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外の共重合性ビニルモノマーを用いなくても共重合組成物とすることができる。
【0032】
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止性能を有する粘着剤組成物であって、強酸の無機酸と強塩基の有機塩基との中和塩からなる帯電防止剤を少なくとも1種以上、必須成分として含有する。このような中和塩は、第4級化されたカチオンを有する有機塩(オニウム塩など)に比べると、第4級化(アルキル化)が不要で、代わりに中和工程を行うことで容易に製造でき、低コスト化が可能である。
【0033】
前記無機酸としては、25℃水中での酸解離定数(pKa)が0以下の無機酸であることが好ましい。具体的には、過マンガン酸、過塩素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、塩酸、硫酸、硝酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過臭素酸、メタ過ヨウ素酸、テトラフルオロホウ酸(4フッ化ホウ酸)、ヘキサフルオロリン酸(6フッ化リン酸)、チオシアン酸などを挙げることができる。
【0034】
また、前記有機塩基としては、25℃水中での酸解離定数(pKa)が8以上の有機塩基が好ましい。具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジエチルブチルアミン、ジエチルヘキシルアミン、ジエチルオクチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、メチルジオクチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N,N−ジブチルメタノールアミン、2−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、ジ(2−エチルヘキシル)メタノールアミン、エチルジエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、トリアリルアミン、等の脂肪族の第3級アミン類;
ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジイソブチルアミン、ジオクチルアミン、アミノエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチレンテトラミン、メトキシ(メチル)アミン等の脂肪族の第2級アミン類;
メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ジ−n−アミルアミン、イソホロンジアミン、2−アミノエタノール、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン(プトレッシン)、1,6−ヘキサンジアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3−ラウリルオキシプロピルアミン、オクタデシルアミン等の脂肪族の第1級アミン類;
ジシクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、N,N’−ジメチルベンジルアミン、N,N’−ジエチルベンジルアミン、N,N’−メチルエチルベンジルアミン、N,N’−メチルブチルベンジルアミン、2−ヒドロキシベンジルアミン、トリフェニルアミン、トリ(メチルフェニル)アミン、トリ(ブチルフェニル)アミン、ジフェニルエチルアミン、ジフェニルブチルアミン、ビス(メチルフェニル)メチルアミン等のシクロアルキル基含有の脂肪族アミン類、及び芳香族含有の脂肪族アミン類;
1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(商品名プロトンスポンジ)、キヌクリジン(1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン)、トリエチレンジアミン(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、DABCO)、ピロリジン、N−メチルピロリジン、ピペリジン、N−メチルピペリジン、N−ジメチルピペラジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、モルホリン、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、4−アミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、3−ヒドロキシピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、N−シクロヘキシルピリジン、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン、1,5,9,13−テトラアザシクロトリデカン等の環状(芳香族または脂肪族)のアミン類;
ジアザビシクロノネン(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、DBN)、ジアザビシクロウンデセン(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、DBU)、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBA−DBU)等の複素環式化合物のアミジン類;
グアニジン、テトラメチルグアニジン(TMG)、ブチルグアニジン、ジフェ二ルグアニジン(DPG)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロデカ−5−エン(7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、MTBD)、1,5,7−トリアザビシクロデカ−5−エン(1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、TBD)等のグアニジン類及び複素環式化合物のグアニジン類;
2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−ペルヒドロ−1,3,2−ジアザホスフォリン(BEMP)等の有機ホスファゼン類;
などを挙げることができる。
前記有機塩基の酸解離定数(pKa)の値としては、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、・・等が挙げられる。
本発明に係わる粘着剤組成物においては、これらの有機塩基の中でも、酸解離定数(pKa)が9〜14である脂肪族第3級アミン類、環状アミン類、複素環式化合物のアミジン類、グアニジン類、及び複素環式化合物のグアニジン類、有機ホスファゼン類が更に好ましい。また、本発明に係わる粘着剤組成物における中和塩の有機塩基としては、酸解離定数(pKa)が10〜14である複素環式化合物のアミジン類、グアニジン類、及び複素環式化合物のグアニジン類が特に好ましい。また、有機塩基としては、悪臭を低減し、可燃性物質の火災の危険性を減らす観点から、沸点が80℃〜350℃のアミン類が好ましい。
【0035】
なお、本発明において、酸解離定数とは、25℃水中での酸解離定数(pKa)(ただし、pKa=−log10Kaであり、Ka(酸解離定数)の負の常用対数である。酸解離指数ともいう。)を意味する。2段階以上の解離が考えられる場合は、最初の解離を考慮する。無機酸については、電気的中性の分子(HA)から1個の水素イオンHが解離して、1価の陰イオン(A)となる段階の酸解離定数(pKa)であり、有機塩基については、電気的中性の分子(B)が1個の水素イオンHを受容して、1価の陽イオン(BH)となる段階の酸解離定数(pKa)である。塩基(B)の酸解離定数(pKa)とは、より正確には、当該塩基の共役酸(BH)が酸として解離する場合(BH→B+H)の酸解離定数(pKa)を指す。
【0036】
前記帯電防止剤は、前記粘着剤樹脂成分となる前記共重合体の100重量部に対して、(C)前記の中和塩を0.1〜10重量部、を必須成分として含有することが好ましい。
【0037】
前記粘着剤組成物からなる粘着剤層を積層した、粘着フィルムの帯電防止性能として、前記粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であることが好ましい。表面抵抗率が大きいと、剥離時に帯電で発生した静電気を逃がす性能に劣る。そのため、表面抵抗率を十分に小さくすることにより、粘着剤層を被着体が剥がす時に発生する、静電気に伴って生じる剥離帯電圧が低減され、被着体の制御用電子回路等に影響することを抑制することができる。
【0038】
本発明の粘着剤組成物は、粘着剤層を形成する際に前記粘着剤樹脂成分を架橋することが好ましい。架橋をするため、粘着剤組成物が既知の架橋剤を含んでも良く、紫外線(UV)など光架橋で架橋しても良い。架橋剤としては、2官能以上のイソシアネート化合物、2官能以上のエポキシ化合物、2官能以上のアクリレート化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。架橋剤を用いる場合は、前記粘着剤樹脂成分となる前記共重合体の100重量部に対して、0.1〜5重量部含有することが好ましい。
【0039】
さらにその他成分としてシランカップリング剤、酸化防止剤、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤などの公知の添加剤を適宜に配合することができる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0040】
本発明の粘着フィルムは、本発明の粘着剤層を、基材又は離型フィルムの片面上に形成することで製造することができる。
粘着剤層の形成に用いる基材フィルムや、粘着面を保護する離型フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。
基材フィルムには、樹脂フィルムの粘着剤層が形成された側とは反対面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤やコート剤、シリカ微粒子等による防汚処理、帯電防止剤の塗布や練り込み等による帯電防止処理を施すことができる。
剥離フィルムには、粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤などにより離型処理が施される。
偏光板や位相差フィルムなどの各種光学フィルムを、液晶セルなどの光学部品及び他の光学フィルムに貼り合せる、粘着フィルムの粘着剤層は、十分な透明性を有することが好ましい。また、偏光板用の表面保護フィルムなどの光学用の表面保護フィルムの場合は、基材フィルム及び粘着剤層は、十分な透明性を有することが好ましい。
【0041】
粘着フィルムが基材フィルムを有する場合、本発明の粘着フィルムは、例えば、表面保護フィルム、偏光板用の表面保護フィルム、光学用の表面保護フィルム、粘着剤付き光学フィルム、粘着剤付き偏光板などに好適に用いることができる。
【0042】
粘着フィルムが基材フィルムを有しない場合、1つの粘着剤層の両面に、それぞれ離型フィルムの離型処理が施された面を合わせることで、「離型フィルム/粘着剤層/離型フィルム」の構成とすることもできる。この場合、両側の離型フィルムを、順次、あるいは同時に剥離して粘着面を表出することにより、光学フィルム等の光学部材と貼合可能になる。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。
この場合、本発明の粘着フィルムは、偏光板とディスプレイパネルの貼り合せに用いることができる。ディスプレイパネルとしては液晶表示装置や有機EL等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明の粘着フィルムは、偏光板を構成する光学フィルム材料の貼合用粘着フィルム、偏光板を主とする液晶表示装置の周辺部材用の各種光学フィルム、タッチパネル用の各種光学フィルム、電子ペーパー用の各種光学フィルム、有機EL用の各種光学フィルム等の貼り合せに用いることができる。
【0043】
また、これらの光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤層が積層されてなる粘着剤層付き光学フィルムとすることができる。具体的には、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層」、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」、「離型フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」等の構成が挙げられる。
例えば、「光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」のように、離型フィルムで保護された粘着剤層を有する場合、離型フィルムを剥がして、「光学フィルム/粘着剤層」のように粘着剤層を表出させ、他の光学フィルムと貼合することにより、粘着剤層が層間の貼合に用いられた「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」のような構成が得られる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0045】
<アクリル共重合体の製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に2−エチルヘキシルアクリレート100重量部、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート1.5重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を100部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で8時間反応させ、重量平均分子量50万の、実施例1のアクリル共重合体溶液1を得た。
[実施例2〜7及び比較例1〜3]
単量体の組成を各々、表1の(A)、(A′)、及び(B)の記載のようにする以外は、上記の実施例1に用いるアクリル共重合体溶液1と同様にして、実施例2〜7及び比較例1〜3に用いるアクリル共重合体溶液を得た。
【0046】
<粘着剤組成物及び粘着フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造したアクリル共重合体溶液1(そのうちアクリル共重合体が100重量部)に対して、ジアザビシクロノネニウム過マンガン酸塩1.5重量部、コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)化合物のイソシアヌレート体)1.5重量部を加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物をシリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる剥離フィルムの上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去し、粘着剤層の厚さが25μmである粘着シートを得た。
その後、一方の面に帯電防止及び防汚処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの帯電防止及び防汚処理された面とは反対の面に粘着シートを転写させ、「帯電防止及び防汚処理されたPETフィルム/粘着剤層/剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)」の積層構成を有する実施例1の粘着フィルムを得た。
[実施例2〜7及び比較例1〜3]
添加剤の組成を各々、表1の「架橋剤」、及び(C)の記載のようにする以外は、上記の実施例1の粘着フィルムと同様にして、実施例2〜7及び比較例1〜3の粘着フィルムを得た。
【0047】
表1において、各成分の配合比は、(A)と(A′)との合計量を100重量部として求めた重量部の数値を括弧で囲んで示す。また、表1に用いた各成分の略記号の化合物名を、表2に示す。
なお、コロネート(登録商標)HX、同HL及び同L−45は日本ポリウレタン工業株式会社の商品名であり、TETRAD(登録商標)−Xは三菱ガス化学株式会社の商品名であり、デュラネート(登録商標)24A―100は旭化成ケミカルズ株式会社の商品名である。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
また、参考として、(C)群に属する帯電防止剤のうち、中和塩に該当するもの(C−1からC−8)については対応する有機塩基の名称を、第4級化された塩に該当するもの(C−9)については第4級化されたカチオンの名称を、それぞれ表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
<試験方法及び評価>
実施例1〜7及び比較例1〜3における粘着フィルムを23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングした後、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして、粘着剤層を表出させたものを、表面抵抗率の測定試料とした。
さらに、この粘着剤層を表出させた粘着フィルムを、粘着剤層を介して液晶セルに貼られた偏光板の表面に貼り合わせ、1日放置した後、50℃、5気圧、20分間オートクレーブ処理し、室温でさらに12時間放置したものを、粘着力、及び耐汚染性の測定試料とした。
【0053】
<表面抵抗率>
エージングした後、偏光板に貼り合わせる前に、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして粘着剤層を表出し、抵抗率計ハイレスタUP−HT450(三菱化学アナリテック製)を用いて粘着剤層の表面抵抗率を測定した。
【0054】
<粘着力>
上記で得られた粘着剤層を表出させた粘着フィルムを、25mm幅の粘着フィルムを偏光板の表面に貼り合わせた後、180°方向に引張試験機を用いて30m/minの剥離速度において剥がして測定した剥離強度を粘着力とした。
【0055】
<耐汚染性>
上記で得られた粘着剤層を表出させた粘着フィルムを、偏光板に貼り合せた後、60℃、90%RHの雰囲気下に250時間放置後、室温に取り出し、さらに12時間放置した後、試料を30m/minの引張速度で180°剥離した際に偏光板表面に汚染移行の無いことを確認した。評価目標基準は、偏光板に汚染移行の無い場合を「○」、少なくとも一部汚染移行が確認された場合を「△」、全面に汚染移行が確認された場合を「×」と評価した。
【0056】
表4に、評価結果を示す。なお、表面抵抗率は、「m×10+n」を「mE+n」とする方式(ただし、mは任意の実数値、nは正の整数)により表記した。
【0057】
【表4】
【0058】
実施例1〜7の粘着フィルムは、粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であり、適度な粘着力を備え、良好な耐汚染性を有していた。すなわち、帯電防止性能やリワーク性などの欠点などの課題を改善することができるものとなった。
【0059】
一方、比較例1の粘着フィルムは、粘着剤組成物が帯電防止剤を含まず、かつ、粘着剤樹脂成分が、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの1種のみのホモポリマーである。この場合、粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□を超えており、帯電防止性能に問題があった。
また、比較例2の粘着フィルムは、25℃水中での酸解離定数(pKa)が0より大きい無機酸と、25℃水中での酸解離定数(pKa)が8より小さい有機塩基の中和塩からなる帯電防止剤を用いている。この場合、粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□を超えており、帯電防止性能に問題があった。また、耐汚染性がやや劣っていた。
また、比較例3の粘着フィルムは、第4級化されたカチオンを有するイオン性液体からなる帯電防止剤を用いている。この場合、耐汚染性がやや劣っていた。
このように、比較例1〜3の粘着フィルムは、帯電防止性能と耐汚染性を両立することができなかった。