特許第6251978号(P6251978)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6251978カラム用コアシェル型粒子及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6251978
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】カラム用コアシェル型粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/88 20060101AFI20171218BHJP
【FI】
   G01N30/88 201G
   G01N30/88 201X
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-98701(P2013-98701)
(22)【出願日】2013年5月8日
(65)【公開番号】特開2014-160051(P2014-160051A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2016年3月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-12071(P2013-12071)
(32)【優先日】2013年1月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】高井 健次
(72)【発明者】
【氏名】佛願 道男
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 優
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−085758(JP,A)
【文献】 特開2010−075885(JP,A)
【文献】 特開2007−217616(JP,A)
【文献】 特表2007−518065(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/005664(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/026569(WO,A1)
【文献】 特開昭60−106538(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0277839(US,A1)
【文献】 特開2011−219869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/88
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親粒子と、該親粒子の外側に付着された複数の子粒子とを備え、
前記親粒子は有機系粒子であり、且つ前記子粒子は樹脂系粒子であり、
前記子粒子の被覆率が、前記親粒子の総表面積に対して10〜70%の範囲である、カラム用コアシェル型粒子。
【請求項2】
前記子粒子が、前記親粒子の外側に化学結合して付着される、請求項1に記載のカラム用コアシェル型粒子。
【請求項3】
前記子粒子が、前記親粒子の外側に高分子を介して化学結合して付着される、請求項2に記載のカラム用コアシェル型粒子。
【請求項4】
前記子粒子が、半円型の粒子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカラム用コアシェル型粒子。
【請求項5】
前記子粒子が、表面に凸凹を有する球状の粒子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカラム用コアシェル型粒子。
【請求項6】
親粒子と、該親粒子の外側に付着された複数の子粒子と、を備えるカラム用コアシェル型粒子の製造方法であり、
官能基を有する親粒子の外側に高分子電解質を吸着させる工程と、
前記高分子電解質の外側に子粒子を、前記子粒子の被覆率が前記親粒子の総表面積に対して10〜70%の範囲となるように吸着させる工程とを含み、
前記親粒子は有機系粒子であり、且つ前記子粒子は樹脂系粒子である、カラム用コアシェル型粒子の製造方法。
【請求項7】
前記官能基がカルボキシル基である、請求項に記載のカラム用コアシェル型粒子の製造方法。
【請求項8】
前記高分子電解質がポリアミンである、請求項6又は7に記載のカラム用コアシェル型粒子の製造方法。
【請求項9】
前記高分子電解質がポリエチレンイミンである、請求項6〜8のいずれか一項に記載のカラム用コアシェル型粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離、分取、分析、精製用カラムの充填剤として好適なコアシェル型粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分離、分取、分析用カラムの充填剤には多孔質シリカや有機粒子である多孔質ポリマーが使用される。必要に応じて、多孔質シリカや多孔質ポリマーの外側に官能基を形成させ、特定の物質を分離、分取、分析するのに用いられてきた。有機粒子は、合成に用いるモノマーの種類(スチレン、ジビニルベンゼン、アクリル系樹脂、アガロース等)によって多様な特性が得られる点が長所であり(例えば、特許文献1〜3等参照)、アフィニティー精製用等には殆ど有機粒子が用いられている。短所としては、圧力によって変形しやすいために分離、分取、分析時の流量が制限される点が挙げられる。樹脂の架橋度を上げる事で耐圧性をコントロールすることも可能であるが、用いるモノマーが限定されるので有機物本来の長所が失われていく。更に移動相の種類によって粒子の膨潤や収縮が発生する。
【0003】
他方、多孔質シリカは、耐圧性が比較的良好であり、小径化による分離能向上も可能である。分析では多孔質シリカの外側に有機官能基(オクタデシル(炭素数18)、オクチル(炭素数8)、フェニル等)が吸着した粒子を用いたカラムが用いられている。但し、高速液体クロマトグラフィー用途においては更なる小径化により、耐圧性が一層求められる。特許文献4には耐圧性を改善したコアシェル型シリカに関する記載があるが、この場合のコアシェルは中心部を無孔質にするという意味のコアシェルであり、圧力低減効果は不十分である。
【0004】
カラム用の粒子は粒子径が小さいほど理論段数が向上する。しかし、圧力低減と理論段数向上はトレードオフの関係になっているので、カラム用の粒子の粒子径が小さいほどカラム内の圧力が上昇し、カラムが使いにくくなるという課題がある。
【0005】
更に、近年のシード重合等の重合技術、分級技術の発展に伴い、単分散粒子をカラムに用いる試みがなされている(例えば、特許文献5、6等参照)。しかしながら、粒子の単分散性を上げると、粒子が配列しやすくなり、所定圧力でのカラム充填が困難になる。このような粒子で充填されたカラムは圧力上昇、理論段数低下、ピーク対称度の低下、ピークのテーリングといった様々な課題が生じる。また、2種類の単分散粒子を適宜混ぜることで、理論段数を向上させる方法もあるが、このような方法は煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−171947号公報
【特許文献2】特許第4335168号公報
【特許文献3】特表2003−509549号公報
【特許文献4】国際公開第2007/122930号
【特許文献5】特許第3628493号公報
【特許文献6】特表2003―509549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の課題を改善し、カラム圧、理論段数及びピーク対称度を向上させたカラム用コアシェル型粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、親粒子と、該親粒子の外側に付着された複数の子粒子とを備える、カラム用コアシェル型粒子に関する。かかるカラム用コアシェル型粒子は、分離、分取、分析、精製用途の充填剤として好適である。
【0009】
また、本発明は、上記子粒子が、上記親粒子の外側に化学結合して付着される上記のカラム用コアシェル型粒子に関する。
【0010】
また、本発明は、上記子粒子が、上記親粒子の外側に高分子を介して化学結合して付着される上記のカラム用コアシェル型粒子に関する。
【0011】
また、本発明は、上記子粒子の被覆率が、上記親粒子の総表面積に対して10〜70%の範囲である上記のカラム用コアシェル型粒子に関する。
【0012】
また、本発明は、上記子粒子が、半円型の粒子である上記のカラム用コアシェル型粒子に関する。
【0013】
また、本発明は、上記子粒子が、表面に凸凹を有する球状の粒子である上記のカラム用コアシェル型粒子に関する。
【0014】
また、本発明は、親粒子と、該親粒子の外側に付着された複数の子粒子と、を備えるカラム用コアシェル型粒子の製造方法であり、官能基を有する親粒子の外側に高分子電解質を吸着させる工程と、上記高分子電解質の外側に子粒子を吸着させる工程とを含む、カラム用コアシェル型粒子の製造方法に関する。
【0015】
また、本発明は、上記官能基がカルボキシル基である上記のカラム用コアシェル型粒子の製造方法に関する。
【0016】
また、本発明は、上記高分子電解質がポリアミンである上記のカラム用コアシェル型粒子の製造方法に関する。
【0017】
また、本発明は、上記高分子電解質がポリエチレンイミンである上記のカラム用コアシェル型粒子の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、圧力上昇を低減させ、理論段数を向上させ、ピークの対称性を向上させたカラム用コアシェル型粒子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
本実施形態においては、親粒子の外側に子粒子を化学結合させて固定化することにより、カラム用コアシェル型粒子(以下、「コアシェル粒子」ということがある。)が得られる。
【0021】
親粒子の平均粒子径は、分析用途であれば理論段数向上のために0.2〜100μmであることが好ましく、分取・分離用途であれば30〜300μmであることが好ましい。
【0022】
なお、ここでいう平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM;例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製、製品名:S−4800)にて複数の粒子を撮像し、画像解析により粒子径を測定して平均値を算出する方法により求められる個数平均粒子径である。
【0023】
親粒子の粒子径分布は小さいほうが好ましい。粒子径の変動係数(C.V.)は0.2以下が好ましく、0.15以下がより好ましく、0.1以下が更に好ましく、0.05以下が特に好ましい。変動係数が小さいほど、理論段数が高くなる。理論上は変動係数が小さいほうが良いのであるが、単分散になりすぎると、粒子が並んでしまうため、カラムへの充填が困難になる。そうした場合、2種類の単分散粒子を適宜混ぜることで、理論段数を向上させる方法もあるが、煩雑であり、本実施形態のようなコアシェル粒子を用いると、コアシェル型粒子のカラムへの充填が簡便であり好ましい。
【0024】
親粒子は、シリカ等の無機粒子であっても、有機系粒子であってもよいが、本発明の効果が出やすいのは有機系粒子である(耐圧性が元々低いため)。以下、有機系粒子に関して詳細に説明を行うが、無機系粒子であっても効果はある。
【0025】
親粒子の球形度は0.8以上が好ましく、0.9以上がより好ましく、0.95以上が更に好ましい。球形度は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、1000個の粒子を撮影し、画像解析により長径及び短径を測定して個々の球形度(短径/長径)を算出して平均値として求めることができる。
【0026】
親粒子の合成方法としては、シード重合や懸濁重合が挙げられるが、比較的単分散の粒子を合成しやすいシード重合が好ましい。
【0027】
シード重合は、数百nm〜数十μmの大きさの種粒子を膨潤させて数倍の大きさにし、重合を行う合成方法である。種粒子はソープフリー乳化重合や沈殿重合で合成することが一般的であるが、単分散粒子の合成の行いやすさの観点から、ソープフリー乳化重合で合成することが好ましい。
【0028】
ソープフリー乳化重合は、水、アルコール又は水/アルコール混合溶媒中で合成を行うが、コストの面から水が好ましい。具体的には、溶媒中に反応開始剤とモノマーを入れてラジカル重合により表面にポリマーをグラフトする。モノマーとしてはビニル基を有するものであれば、用いることができる。モノマーとしては、モノビニル芳香族単量体、アクリル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン単量体、ジオレフィン単量体等が挙げられる。
【0029】
具体的には、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン及びそれらの誘導体、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、α−クロロアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体などをモノマーとして使用でき、場合によってはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸等も使用できる。また、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタレン塩などもモノマーとして挙げられる。この中でも、重合のしやすさの観点で、スチレンやメタクリル酸メチルを用いることが好ましい。
【0030】
重合開始剤としては、通常の乳化重合に使用されているものであればよく、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類、ベンゾイルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類などが挙げられる。必要に応じて還元剤と組合せて、レドックス系開始剤として使用することもできる。
【0031】
ここで、種粒子として用いるポリマーの分子量が大きすぎるとシード重合の際、膨潤しにくい。そのため、物理吸着している種粒子として用いるポリマーの重量平均分子量は10万以下であることが好ましい。
【0032】
なお、ポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算して求めることができる。検量線は、標準ポリスチレンの5サンプルセット(PStQuick MP−H、PStQuick B(東ソー株式会社製、商品名))を用いて3次式で近似して求めることができる。
【0033】
GPCの条件を以下に示す。
(GPC条件)
装置:(ポンプ:L−2130型(株式会社日立ハイテクノロジーズ製))、
(検出器:L−2490型RI(株式会社日立ハイテクノロジーズ製))、
(カラムオーブン:L−2350(株式会社日立ハイテクノロジーズ製))
カラム:Gelpack GL−R440 + Gelpack GL−R450
+ Gelpack GL−R400M(計3本)(日立化成(株)製、商品名)
カラムサイズ:10.7mmI.D×300mm
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:10mg/2mL
注入量:200μL
流量:2.05mL/分
測定温度:25℃
【0034】
ソープフリー乳化重合においては、必要に応じて酸素を溶存させる方法や、連鎖移動剤を添加する方法が好ましい。連鎖移動剤としては、モノスルフィド又はジスルフィド系連鎖移動剤が好ましい。
【0035】
次に、種粒子を水、アルコール、及び水/アルコール混合溶媒のいずれかに分散し、シード重合を行う。シード重合は、本来は、Colloid&Polymer Science,267巻,193−200項(1989)や、Colloid&Polymer Science,274巻,279−284項(1996)に示される方法が一般的である。即ち、未架橋の樹脂で合成した種粒子の存在下、重合性ビニル単量体を溶解するが、生成する重合体を溶解しない媒体中で、該媒体可溶の重合開始剤を用いて重合を行う。
【0036】
具体的には、以下の方法で行う。まず、種粒子分散媒を準備する。次に、重合開始剤、重合性ビニル単量体と適宜界面活性剤、多孔質剤等を加え、ホモジナイザー等で乳化する。乳化した液を分散媒に添加し、数時間〜数十時間かけて種粒子に膨潤させる。膨潤速度は、種粒子として用いられるポリマーの分子量や重合性ビニル単量体の種類で異なる。
【0037】
重合性ビニル単量体は、ポリビニル単量体、又は、ポリビニル単量体とモノビニル単量体との混合物等を用いることができる。
【0038】
ポリビニル単量体としては、芳香族ポリビニル単量体又は脂芳族ポリビニル単量体が好ましい。芳香族ポリビニル単量体としては、ジビニルベンゼン、ビスフェニルメタン、ビスビニルフェニルエタン等のビスビニルフェニルアルカンが、脂肪族ポリビニル単量体としては、多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート又はアルキレンポリ(メタ)アクリルアミドが好ましい。具体的には、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラヒドロキシブタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
ポリビニル単量体の割合は、耐圧性の観点から、重合性ビニル単量体の総質量を基準に、1〜100質量%が好ましく、20〜100質量%がより好ましい。この範囲外であると、得られた重合体が溶けやすい上、耐圧性が十分でなく、壊れやすくなる傾向がある。
【0040】
モノビニル単量体としては、前述のモノビニル芳香族単量体、アクリル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン単量体等を用いることができる。
【0041】
多孔質剤としては、シード重合時に相分離剤として作用し、粒子の多孔質化を促進する有機溶媒である脂肪族又は芳香族の炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類が挙げられる。具体的には、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、オクタン、酢酸ブチル、フタル酸ジブチル、メチルエチルケトン、ジエチルベンゼン、ジブチルエーテル、1−ヘキサノール、2−オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、シクロヘキサノール等が挙げられ、これらを単独もしくは混合して用いることができる。
【0042】
多孔質剤は、重合性ビニル単量体に対して0〜200質量%使用できる。多孔質剤の量で粒子の空孔率をコントロールできる。更に多孔質剤の種類によって、孔の大きさや形状をコントロールすることができる。
【0043】
重合開始剤としては、通常の乳化重合に使用されているものであればよく、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類、過酸化ベンゾイル、ベンゾイルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類などである。必要に応じて還元剤と組合せて、レドックス系開始剤として使用することもできる。
【0044】
膨潤後、開始剤の反応温度に適する温度で数時間〜数十時間反応を行う。反応前に窒素置換することもできる。反応温度は、通常は40℃〜90℃の範囲で行う。反応前に、ポリビニルアルコール等で粒子の分散性をコントロールすると、粒子の凝集を緩和できる。
【0045】
重合開始剤、重合性ビニル単量体、及び多孔質剤の総量によって粒子径が決定される。シード重合であれば、平均粒子径1〜100μmの粒子を合成することができる。
【0046】
以上のようにして合成した親粒子の外側に子粒子を被覆する。子粒子の平均粒子径は、親粒子の平均粒子径の0.1〜20%であることが好ましい。0.1%未満であると、耐圧改善効果が不十分であり、20%を超えると、被覆が困難になる傾向がある。子粒子の平均粒子径は10nm〜20μmの範囲であることが好ましい。
【0047】
子粒子の組成は、樹脂系であっても無機系であってもよい。樹脂系である場合は、なるべく親粒子と同一組成に近い方が好ましく、例えば、スチレン/ジビニルベンゼン共重合系の樹脂等が挙げられる。無機系である場合は、例えば、シリカ等が挙げられる。
【0048】
子粒子は、半円型の粒子であることや、表面に凸凹を有する球状の粒子(ジャガイモ状粒子)であることが好ましい。このような子粒子を用いた場合、親粒子と子粒子との結合力が強くなる。
【0049】
なお、本明細書において、「半円型の粒子」とは、二次元的には円の部分を有しており、球状ではない粒子と定義する。半円型の粒子は、扁平形状及び赤血球形状であることが好ましい。本明細書において、赤血球形状粒子は、両面に窪みを有するものであってもよく、片面のみに窪みを有するもの(以下、おわん型粒子ともいう。)であってもよい。
【0050】
このような重合体子粒子は、乳化重合により合成することが好ましく、ソープフリー乳化重合により合成することがより好ましい。乳化重合においては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はアルキル硫酸ナトリウム等の界面活性剤を用いてもよいが、ソープフリー乳化重合を用いると、簡便であり、後の洗浄が不要であるため、安価に粒子を合成できる。
【0051】
ソープフリー乳化重合に用いる単量体としては、ビニル基を有するものであれば、用いることができる。モノビニル芳香族単量体、アクリル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン単量体、ジオレフィン単量体等が挙げられる。
【0052】
具体的には、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン及びそれらの誘導体、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、α−クロロアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体などをモノマーとして使用でき、場合によってはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸等も使用できる。また、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタレン塩などもモノマーとして挙げられる。
【0053】
この中でも、重合のしやすさや半円型の粒子の形状の得やすさの観点から、スチレン及びその誘導体やアクリル酸エステル及びその誘導体、ビニルエステル類が好ましく、スチレン及びその誘導体がより好ましい。また、上記単量体は2種類以上の複数を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
本実施形態では、半円型の粒子の形状を得るために、重合性を有する二重結合を持ったアルコキシシラン、即ちC=Cの二重結合を有するアルコキシシランを混合する方法が挙げられる。粒子形状に影響を及ぼさせる観点で、全単量体に対して0.3mol%以上のC=Cの二重結合を有するアルコキシシランを混合することが好ましい。C=Cの二重結合を有するアルコキシシランとしては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。アルコキシシランを混合することにより、耐溶剤性を向上させることができる。
【0055】
子粒子に対して耐候性や耐湿性、耐溶剤性、破壊強度、絶縁性を持たせるために、重合性のビニル基を複数有する架橋性モノマーを入れると良い。このような架橋性モノマーとしては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンのような芳香族ジビニル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0056】
架橋性モノマーが多すぎると、全単量体に対して0.3mol%以上の重合性を有する二重結合を持ったアルコキシシランを入れても、子粒子が半円型になりにくい。
【0057】
二重結合を持ったアルコキシシランと架橋性単量体の比(二重結合を持ったアルコキシシラン/架橋性単量体)が=0.2以上であることが望ましい。比が0.2未満の場合、得られた子粒子は球状に近くなる傾向がある。
【0058】
重合開始剤としては、通常の乳化重合に使用されているものであればよく、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類、ベンゾイルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類などである。必要に応じて還元剤と組合せて、レドックス系開始剤として使用することもできる。子粒子エマルションを製造するには、通常、前記の界面活性剤、又は、重合開始剤の存在下に、各種の単量体を一括、分割、又は、連続的に滴下して重合を行う。ソープフリー乳化重合を行う際には、親水性の反応性モノマーを入れることで、安定的に粒子を合成出来て、粒子径制御も容易になる。具体的には、スチレンスルホン酸ナトリウム、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム等が挙げられる。親水性の反応性モノマーを多く入れれば粒子径が小さくなり、親水性の反応性モノマーを少なく入れれば粒子径が大きくなる。
【0059】
これらの単量体を一括、分割、又は連続滴下して、窒素雰囲気下で攪拌して乳化重合を行う。溶媒には、イオンを除去した純水を用いる。重合温度は40℃〜90℃、反応時間は2時間〜10時間が好ましい。攪拌速度としては100〜500min−1が好ましい。
【0060】
合成する半円型の粒子の形状は、架橋性モノマーや二重結合を持ったアルコキシシランの量で調整することが出来る。
【0061】
二重結合を持ったアルコキシシランと架橋性単量体の比(二重結合を持ったアルコキシシラン/架橋性単量体)が大きいほど厚さ(d)と扁平面の直径(D)の比(d/D)が小さくなり、二重結合を持ったアルコキシシランの量が多いほど(d/D)が小さくなる。d/Dの比は、0.1〜1.0の範囲が好ましく、0.2〜0.8の範囲がより好ましい。d/Dの比が0.2を下回ると、親粒子上に子粒子を被覆することが困難になり、0.8を上回ると、使用可能ではあるが、子粒子脱落のリスクが増す。
【0062】
子粒子の粒子径ばらつきは、C.V.<10%であることが好ましく、C.V.<3%であることがより好ましい。この場合の粒子径は、体積平均粒子径で表すものとし、コールターカウンター等で測定可能である。
【0063】
子粒子はまた、表面に凹凸を有する球状の粒子であってもよい。二重結合を持ったアルコキシシランと架橋性単量体を同モル程度入れると、このような形状になることがある。
【0064】
以上に示したような方法で、親粒子と子粒子を別々に合成した後、親粒子の外側に子粒子を化学的に強固に被覆させる。
【0065】
親粒子と子粒子の結合方法としては、官能基を有する親粒子と官能基を有する子粒子とをヘテロ凝集させる方法が挙げられる。この場合、アミノ基とカルボキシル基、グリシジル基とアミノ基、ヒドロキシル基とヒドロキシル基等の組み合わせで、触媒存在下で反応させる方法がある。
【0066】
更に結合性を強化しようとする場合、高分子を介し結合させる方法が挙げられる。
【0067】
この場合、親粒子には予めカルボキシル基、イソシアネート基、グリシジル基を粒子表面に導入し、他方、子粒子にもカルボキシル基、イソシアネート基、グリシジル基を粒子表面に導入しておく。これらには従来公知の方法を用いることができる。中でも、導入が容易なカルボキシル基が好ましく、具体的には、樹脂粒子の場合、例えばアクリル酸、アクリル酸塩等を親粒子又は子粒子の合成時に微量(1質量%程度)投入しておくと、カルボキシル基に被覆された親粒子又は子粒子を得ることができる。シリカ等の無機粒子の場合は、カルボキシル基を有するシランカップリング剤等で処理することで、カルボキシル基を有する無機粒子を合成することができる。
【0068】
次に、官能基を有する親粒子表面に子粒子を被覆するが、カルボキシル基、イソシアネート基、グリシジル基を有する親粒子と子粒子の表面電位(ゼータ電位)は通常(pHが中性領域であれば)マイナスである。表面電位がマイナスの粒子の周囲に表面電位がマイナスの粒子を被覆することは難しい。
【0069】
そこで、高分子電解質と子粒子を交互に積層する方法が好ましい。より具体的な製造方法としては、
(1)官能基を有する親粒子を高分子電解質溶液に分散し、親粒子の表面に高分子電解質を吸着させた後、リンスする工程と、
(2)親粒子を子粒子の分散溶液に分散し、親粒子の表面に子粒子を吸着させた後、リンスする工程とを行うことで、表面に高分子電解質と子粒子とが積層された粒子を製造できる。
【0070】
このような方法は、交互積層法(Layer−by−Layer assembly)と呼ばれる。交互積層法は、G.Decherらによって1992年に発表された有機薄膜を形成する方法である(Thin Solid Films,210/211,p.831(1992))。この方法では、正電荷を有するポリマー電解質(ポリカチオン)と負電荷を有するポリマー電解質(ポリアニオン)の水溶液に、基材を交互に浸漬することで基板上に静電的引力によって吸着したポリカチオンとポリアニオンの組が積層して複合膜(交互積層膜)が得られる。
【0071】
交互積層法では、静電的な引力によって、基材上に形成された材料の電荷と、溶液中の反対電荷を有する材料が引き合うことにより膜成長するので、吸着が進行して電荷の中和が起こるとそれ以上の吸着が起こらなくなる。従って、ある飽和点までに至れば、それ以上膜厚が増加することはない。
【0072】
Lvovらは、交互積層法を、微粒子に応用し、シリカやチタニア、セリアの各微粒子分散液を用いて、微粒子の表面電荷と反対電荷を有する高分子電解質を交互積層法で積層する方法を報告している(Langmuir,Vol.13,(1997),p.6195−6203)。この方法を用いると、負の表面電荷を有する絶縁性子粒子とその反対電荷を持つポリカチオンであるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDA)又はポリエチレンイミン(PEI)等とを交互に積層することで、絶縁性子粒子と高分子電解質が交互に積層された微粒子積層薄膜を形成することが可能である。
【0073】
高分子電解質溶液又は無機酸化物微粒子の分散液に浸漬後、反対電荷を有する微粒子分散液又は高分子電解質溶液に浸漬する前に溶媒のみのリンスによって余剰の高分子電解質溶液又は無機酸化物微粒子の分散液を洗い流すことが好ましい。このようなリンスに用いるものとしては、水、アルコール、アセトンなどがある。
【0074】
本実施形態で使用する高分子電解質溶液は、水又は有機溶媒の混合溶媒に溶解したものである。使用できる水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等があげられる。
【0075】
高分子電解質としては、水溶液中で電離し、荷電を有する官能基を主鎖又は側鎖に持つ高分子を用いることができる。この場合はポリカチオンを用いることが好ましい。また、ポリカチオンとしては、一般に、ポリアミン類等のように正荷電を帯びることのできる官能基を有するもの、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)、ポリビニルピリジン(PVP)、ポリリジン、ポリアクリルアミド及びそれらを少なくとも1種以上を含む共重合体等を用いることができる。
【0076】
高分子電解質の中でもポリエチレンイミンは電荷密度が高く、結合力が強い。また、これらの高分子電解質の中でも、イオン溶出を避けるために、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)イオン、及びアルカリ土類金属(Ca、Sr、Ba、Ra)イオン、ハロゲン化物イオン(フッ素イオン、クロライドイオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)を含まないものが好ましい。
【0077】
これらの高分子電解質は、いずれも水溶性又はアルコール等の有機溶媒に可溶なものであり、高分子電解質の分子量としては、用いる高分子電解質の種類により一概には定めることができないが、一般に、重量平均分子量が1,000〜200,000程度のものが好ましい。重量平均分子量が1,000以下であると、親粒子の分散性が不十分であり、親粒子の粒子径が3.0μm以下になると、凝集が顕在化する。なお、溶液中の高分子電解質の濃度は、一般に、0.01〜10質量%程度が好ましい。また、高分子電解質溶液のpHは、特に限定されない。
【0078】
上記の高分子電解質薄膜を用いることにより、親粒子の表面に欠陥なく均一に子粒子を被覆することができる。
【0079】
また、高分子電解質薄膜の種類や分子量、濃度を調整することにより子粒子の被覆率をコントロールすることが出来る。
【0080】
具体的には、ポリエチレンイミン等、電荷密度の高い高分子電解質薄膜を用いた場合、子粒子の被覆率が高くなる傾向があり、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド等、電荷密度の低い高分子電解質薄膜を用いた場合、子粒子の被覆率が低くなる傾向がある。また、高分子電解質の分子量が大きい場合、子粒子の被覆率が高くなる傾向があり、高分子電解質の分子量が小さい場合、子粒子の被覆率が低くなる傾向がある。更に、高分子電解質を高濃度で用いた場合、子粒子の被覆率が高くなる傾向があり、高分子電解質を低濃度で用いた場合、子粒子の被覆率が低くなる傾向がある。
【0081】
子粒子も表面に重量平均分子量500〜10,000、より好ましくは重量平均分子量1,000〜4,000の範囲の高分子(オリゴマー)が存在していることが好ましい。
【0082】
このように、化学反応性のポリマーを有する微粒子同士を結合させることで、従来にはない強固な結合が得られる上、親粒子の小径化や子粒子の大径化に対応できる。
【0083】
子粒子は、複層積層すると脱落しやすくなるため、一層のみ被覆されていることが好ましい。
【0084】
子粒子の被覆率は10〜70%の範囲であることが好ましく、20〜60%の範囲であることがより好ましく、20〜40%の範囲であることが更に好ましい。ここでいう被覆率とは、SEM画像解析により(絶縁被覆部分の表面積/全体の表面積)×100%で表す。また、被覆ばらつき(C.V.)が0.3以下の範囲であることが好ましい。子粒子の被覆率が20〜60%の範囲であると、圧力低減効果が大きい。
【0085】
以上のようにして得られたコアシェル型粒子を加熱乾燥することで、子粒子と親粒子の結合を強化することが出来る。結合力が増す理由としては、官能基同士の化学結合が挙げられる。加熱乾燥の温度としては60℃〜100℃、加熱時間は10〜180分間の範囲が好ましい。温度が60℃より低い場合や加熱時間が10分間より短い場合は子粒子が剥離しやすく、温度が100℃より高い場合や加熱時間が180分間より長い場合は粒子が変形しやすい傾向がある。
【0086】
本実施形態において、少なくとも親粒子は多孔質粒子であることが望ましい。
【0087】
多孔質粒子とは、表面積が約50m/g以上の粒子を指す。実用性を鑑みると、約80m/g以上であることが好ましく、300m/g以上であることがより好ましい。表面積が小さいと、分析や分離に悪影響を及ぼすことがある。
【0088】
平均細孔直径に関しては、30Å〜1000Åの平均細孔直径を有することが好ましい。これより小さい場合、細孔に入れない物質が増えてくる傾向があり、これより大きい場合、表面積が小さくなる。これらはジビニルベンゼン、トルエン等の細孔調整剤により調整可能である。なお、細孔とは、粒子表面及び内部に存在する空孔であり、例えば、前述の細孔調整剤を合成後に除去することで形成することができる。である。また、平均細孔直径は、ガス吸着法、水銀圧入法等により測定することができる。
【0089】
以上のようにして製造されたカラム用コアシェル型粒子は、スルホン酸基等の官能基を適宜付与した後、分離、分取、分析、精製用充填剤として使用することができる。特に、液体クロマトグラフィー用充填剤に用いることができる。
【0090】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0091】
(親粒子用種粒子1の合成)
500mLの三口フラスコに、スチレン(ST)40g、オクタンチオール(OCT)4g、ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)1.98g及び水400gを一括して仕込み、70℃のウォーターバスで加熱しながら、攪拌機を用いて約8時間攪拌をして、種粒子を形成させた。種粒子は、平均粒子径0.75μm、粒径C.V.=2.3%、重量平均分子量Mw約25200であった。なお、粒子径測定はSEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、製品名:S−4800)にて写真を撮像し、画像解析を行った。平均粒子径とC.V.の測定は、2000個の粒子で行った。以下同様である。
【0092】
(多孔質親粒子1の合成)
重合開始剤として過酸化ベンゾイル1g、モノマーとしてスチレン10g、ジビニルベンゼン2.5g、多孔質剤としてのトルエン3.75g、ジエチルベンゼン3.75g、カルボキシル基導入剤としてのメタクリル酸0.2gを溶媒(イオン交換水92.2質量%、エタノール7.5質量%に界面活性剤としてエマールTD(ラウリル硫酸トリエタノールアミン、花王株式会社製、商品名(「エマール」は、登録商標。))0.3質量%純水)340gに分散し、ホモジナイザーで10分間超音波照射し、乳化を行った。その後、種粒子1を固形分で0.70g添加した後、20時間膨潤を行った。その後80℃に昇温し、8時間重合を行った。重合終了後、得られた粒子を、水、メタノールで洗浄を行った。合成した粒子は、平均粒子径4.05μm、粒径C.V.=3.3%であった。
【0093】
(多孔質親粒子2の合成)
メタクリル酸0.2gを入れなかったこと以外は多孔質親粒子1と同様に多孔質粒子2の合成を行った。
【0094】
(子粒子1〜6の合成)
純水400g中に表1の子粒子1〜6の配合表にしたがって材料を添加し、攪拌速度200min−1で攪拌しながら、80℃、6時間加熱を行った。合成した粒子をSEM(S−4800)にて写真を撮像し、画像解析を行った。平均粒子径測定は100個の粒子で行った。以下同様である。子粒子の形状は、赤血球形状、ジャガイモ状(表面がでこぼこ状)、球状のいずれかであった。
【0095】
【表1】
【0096】
(カラム用コアシェル型粒子1の合成)
次に、重量平均分子量70,000の30質量%ポリエチレンイミン水溶液(和光純薬工業株式会社製)を超純水で希釈し、0.3質量%ポリエチレンイミン水溶液を得た。前記カルボキシル基を有する多孔質粒子1を10g、前記0.3質量%ポリエチレンイミン水溶液に加え、室温で15分攪拌した。次に、孔径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で多孔質粒子をろ過し、超純水200gに入れて室温で5分間攪拌した。更に孔径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で多孔質粒子をろ過し、前記メンブレンフィルタ上にて200gの超純水で2回洗浄して、吸着していないポリエチレンイミンを除去することで、表面にアミノ基含有ポリマーを有する多孔質粒子を作製した。
【0097】
次に、表面にカルボキシル基を有する子粒子1のメタノール分散媒(固形分10質量%)を作製した。
【0098】
次に、上記ポリエチレンイミンで処理した多孔質粒子をイソプロピルアルコールに浸漬し、表面にカルボキシル基を有する子粒子1のメタノール分散媒を滴下することで、子粒子被覆率が40%となるようにコアシェル粒子を作製した。被覆率は滴下量で調整した。
【0099】
その後、濃硫酸で処理し、表面にスルホン酸基を導入した。具体的には多孔質粒子10gに対し、ジクロロエタン57g、97質量%硫酸92gを加え、110℃で4時間反応を行い、スルホン酸基を導入したコアシェル型多孔質ポリマー粒子を合成した。
【0100】
その後、80℃、1時間の条件で加熱乾燥を行うことでカラム用コアシェル型粒子1を作製した。
【0101】
(カラム用コアシェル型粒子2の合成)
子粒子1の代わりに子粒子2を用いた以外はカラム用コアシェル型粒子1と同様の方法でカラム用コアシェル型粒子2を作製した。
【0102】
(カラム用コアシェル型粒子3の合成)
子粒子1の代わりに子粒子3を用いた以外はカラム用コアシェル型粒子1と同様の方法でカラム用コアシェル型粒子3を作製した。
【0103】
(カラム用コアシェル型粒子4の合成)
子粒子1の代わりに子粒子4を用いた以外はカラム用コアシェル型粒子1と同様の方法でカラム用コアシェル型粒子4を作製した。
【0104】
(カラム用コアシェル型粒子5の合成)
子粒子1の代わりに子粒子5を用いた以外はカラム用コアシェル型粒子1と同様の方法でカラム用コアシェル型粒子5を作製した。
【0105】
(カラム用コアシェル型粒子6の合成)
子粒子1の代わりに子粒子6を用いた以外はカラム用コアシェル型粒子1と同様の方法でカラム用コアシェル型粒子6を作製した。
【0106】
(カラム用コアシェル型粒子7の合成)
子粒子被覆率が10%となるようにした以外はカラム用コアシェル型粒子1と同様の方法でカラム用コアシェル型粒子7を作製した。
【0107】
(カラム用コアシェル型粒子8の合成)
子粒子被覆率が60%となるようにした以外はカラム用コアシェル型粒子1と同様の方法でカラム用コアシェル型粒子8を作製した。
【0108】
(カラム用コアシェル型粒子9の合成)
多孔質親粒子1の代わりに多孔質親粒子2を用いた以外はカラム用コアシェル型粒子1と同様の方法でカラム用コアシェル型粒子9を作製した。
【0109】
(通常粒子)
10gの多孔質親粒子1に対し、ジクロロエタン57g、97質量%硫酸92gを加え、110℃で4時間反応を行い、スルホン酸基を導入した多孔質ポリマー粒子を合成した。その後、80℃、1時間の条件で加熱乾燥を行うことで通常粒子を作製した。
【0110】
[実験方法]
直径7.8mm、長さ150mmのステンレスカラムに、充填溶媒0.1質量%リン酸、スラリー濃度50質量%、充填圧15MPa、充填時間30分間の条件で充填した。
充填したカラムを用い、高速液体クロマトグラフ(L2000、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)にて、溶離液0.1質量%リン酸水溶液、カラム温度25℃、流速0.5mL/分、サンプル3.5質量%蟻酸、サンプル注入量2μL、溶出器UV210nmの測定条件でクロマト特性を測定した。クロマト測定により、理論段数、カラム圧、ピーク対称度、ピーク形状を求め、粒子特性の指標とした。
【0111】
[実験結果]
実験結果を表2に示す。なお、表2に示す子粒子の被覆率は、実験終了後、カラムから粒子を100個取り出してSEM画像解析により、(絶縁被覆部分の表面積/全体の表面積)×100%で算出した。
【0112】
通常粒子を用いた場合、いくつか問題があった。まず、単分散粒子は粒子が並んでしまう傾向があるため、充填が困難であった。そのため、理論段数が向上せず、カラム圧が上昇しやすく、ピークの対称度が悪く(1が最適)、テーリング(ピークのすそ引き)が発生する傾向があった。
【0113】
赤血球形状粒子又はジャガイモ状粒子を40%被覆したコアシェル粒子1〜5は、極めて良好な結果であった。これは、赤血球形状粒子、ジャガイモ状粒子が強固に親粒子に吸着して外れにくい上、適度なスペーサーとなってカラムへの充填性を向上させているためと考えられる。それにより、通常粒子を用いた場合に比べて、理論段数、カラム圧、ピーク対称度、ピーク形状のすべてが改善した。
【0114】
他方、球状の子粒子6を用いたコアシェル粒子6も、若干コアシェル粒子1〜5に劣る結果ではあったが、大きな改善効果が得られた。子粒子が真球状であると、若干子粒子の脱落が発生しやすい(実際、設計に比べて被覆率が下がっていた)上、子粒子が動きやすいため、赤血球形状粒子又はジャガイモ状粒子を用いる場合に比べて特性が劣化傾向であった。
【0115】
子粒子被覆率が10%のコアシェル粒子7の場合や60%のコアシェル粒子8の場合も、被覆率が40%の場合に比べて特性が劣るものの、通常粒子に比べて特性の改善が認められた。
【0116】
親粒子にカルボキシル基を導入しなかったコアシェル粒子9の場合も、子粒子の脱落があり、親粒子にカルボキシル基を導入した場合に比べて特性が劣るものの、通常粒子に比べて特性の改善が認められた。
【0117】
【表2】