特許第6252017号(P6252017)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6252017有機半導体層形成用溶液、有機半導体層および有機薄膜トランジスタ
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  • 特許6252017-有機半導体層形成用溶液、有機半導体層および有機薄膜トランジスタ 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6252017
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】有機半導体層形成用溶液、有機半導体層および有機薄膜トランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/30 20060101AFI20171218BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20171218BHJP
   H01L 51/40 20060101ALI20171218BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20171218BHJP
   C07D 495/22 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   H01L29/28 250H
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 310J
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 618E
   C07D495/22
   H01L29/28 220A
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-158162(P2013-158162)
(22)【出願日】2013年7月30日
(65)【公開番号】特開2015-29019(P2015-29019A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福田 貴
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 真人
(72)【発明者】
【氏名】羽村 敏
【審査官】 岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−069752(JP,A)
【文献】 特開2012−209329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/28
H01L 51/00−51/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(ここで、置換基RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、炭素数3〜9のアルキル基を示し、T〜Tは、各々同一でも異なっていてもよく、酸素原子または硫黄原子を示す。)
で示されるヘテロアセン誘導体、JIS R3257記載の方法に従って測定した水の接触角が70°以上の高分子化合物、および有機溶媒を含む有機半導体層形成用溶液により形成される有機半導体層であって、該ヘテロアセン誘導体と該高分子化合物が連続的な相分離構造を有することを特徴とする有機半導体層
【請求項2】
有機溶媒の沸点が140℃以上であることを特徴とする請求項1記載の有機半導体層。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の有機半導体層からなる有機薄膜トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
有機薄膜トランジスタに代表される有機半導体デバイスは、省エネルギー、低コストおよびフレキシブルといった無機半導体デバイスにはない特徴を有することから近年注目されている。この有機半導体デバイスは、有機半導体層、基板、絶縁層、電極等の数種類の材料から構成され、中でも電荷のキャリア移動を担う有機半導体層は該デバイスの中心的な役割を有している。そして、有機半導体デバイス性能は、この有機半導体層を構成する有機材料のキャリア移動度により左右されることから、高キャリア移動度を与える有機材料の出現が所望されている。
【0002】
有機半導体層を作製する方法としては、高温真空下、有機材料を気化させて実施する真空蒸着法、有機材料を適当な溶媒に溶解させその溶液を塗布する塗布法等の方法が一般的に知られている。塗布は高温高真空条件を用いることなく印刷技術を用いても実施することができるため、経済的に好ましいプロセスと考えられており、塗工性が高く、キャリア移動度に優れた有機半導体層が望まれている。
【0003】
塗布型有機半導体層として、ジチエノベンゾジチオフェン骨格を有する有機半導体材料を用い、ウェットプロセスで作製した有機薄膜トランジスタについて開示されている(特許文献1)。また、塗布型有機半導体層に高いキャリア輸送性を付与するため、低分子化合物とキャリア輸送性を有する高分子化合物を組み合わせた有機半導体組成物が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−209329号公報
【特許文献2】特開2009−267372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、塗工性に優れた有機半導体層形成用溶液、それを用いた有機半導体層および高い半導体・電気物性を有する有機薄膜トランジスタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討の結果、特定の有機半導体層形成用溶液を用いて、連続的な相分離構造を有する有機半導体層を形成することで、得られる有機薄膜トランジスタが優れた半導体・電気特性を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、一般式(1)
【0008】
【化1】
【0009】
(ここで、置換基RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、炭素数3〜9のアルキル基を示し、T〜Tは、各々同一でも異なっていてもよく、酸素原子または硫黄原子を示す。)
で示されるヘテロアセン誘導体、JIS R3257記載の方法に従って測定した水の接触角が70°以上を有する高分子化合物、および有機溶媒を含む有機半導体層形成用溶液、それを用いて形成した連続的な相分離構造を有する有機半導体層、並びに有機薄膜トランジスタに関するものである。
【0010】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
【0011】
本発明の有機半導体層形成用溶液は、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体、JIS R3257記載の方法に従って測定した水の接触角が70°以上を有する高分子化合物、および有機溶媒を含むこと特徴とする。
【0012】
本発明の有機半導体層形成用溶液を構成するヘテロアセン誘導体は、一般式(1)で示される縮合環骨格を有していることを特徴とする。
【0013】
一般式(1)中、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、炭素数3〜9のアルキル基を示し、炭素数4〜8のアルキル基であることが好ましい。RおよびRが、炭素数2以下のアルキル基である場合、ヘテロアセン誘導体の有機溶媒に対する溶解性が劣り、安定的な有機半導体層形成用溶液を調製することが困難となる。一方、RおよびRの炭素数が10以上のアルキル基である場合、得られる有機薄膜トランジスタの半導体・電気特性が劣る。
【0014】
およびRの具体例として、例えばn−プロピル、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基などを挙げることができ、特に、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基であることが好ましい。
【0015】
一般式(1)中、T〜Tは各々同一でも異なっていてもよく、酸素原子又は硫黄原子を示す。T〜Tがすべて硫黄原子の場合、一般式(1)は、ジチエノベンゾジチオフェン骨格を示す。
【0016】
一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体の具体例として、特に限定はなく、以下の化合物を挙げることができる。
【0017】
【化2】
【0018】
なお、一般式(1)で示される有機ヘテロアセン誘導体の特に好ましい例として、例えば2,7−ジ(n−ブチル)ジチエノベンゾジチオフェン、2,7−ジ(n−ペンチル)ジチエノベンゾジチオフェン、2,7−ジ(n−ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェン、2,7−ジ(n−ヘプチル)ジチエノベンゾジチオフェン、2,7−ジ(n−オクチル)ジチエノベンゾジチオフェンを挙げることができる。
【0019】
本発明の有機半導体層形成用溶液を構成する成分の一つである、水の接触角が70°以上の高分子化合物とは、シート化またはフィルム化した高分子化合物の水の接触角が70°以上を示す高分子化合物を示す。
【0020】
水の接触角とは、高分子化合物のシートまたはフィルムの表面に水を滴下して形成した液滴の成す角度を示しており、水の接触角の測定は、一般に公知の固体表面の接触角の測定方法に従って測定することが可能であり、本発明で用いる高分子化合物の水の接触角は、JIS R3257した値が70°以上である。
【0021】
なお、水の接触角が70°未満の高分子化合物を用いて、有機半導体層形成用溶液を調製した場合、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体と高分子化合物の連続的な相分離構造が形成されず、得られる有機薄膜トランジスタの特性が劣る。
【0022】
また、本発明で用いる高分子化合物は、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体と高分子化合物の連続的な相分離構造が形成されることから、重量平均分子量(Mw)が50,000〜2,000,000の範囲にあることが好ましく、100,000〜2,000,000であることが更に好ましい。高分子化合物の重量平均分子量がこの範囲内であれば、有機半導体層形成用溶液は特に優れた塗工性を発現する。
【0023】
高分子化合物を用いることで、有機半導体層内の一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体の結晶化速度を調整することができ、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体のグレインサイズが大きくなり、優れた半導体・電気物性を示すことが可能となる。
【0024】
本発明で用いることが可能な高分子化合物の具体的な例として、特に制限はなく、例えばポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(4−メチルスチレン)、ポリ(1-ビニルナフタレン)、ポリ(2−ビニルナフタレン)、ポリ(スチレン−ブロック−ブタジエン−ブロック−スチレン)、ポリ(スチレン−ブロック−イソプレン−ブロック−スチレン)、ポリ(ビニルトルエン)、ポリ(スチレン−コ−2,4−ジメチルスチレン)、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(スチレン−コ−α−メチルスチレン)、ポリ(スチレン−コ−ブタジエン)、ポリ(エチレン−コ−ノルボルネン)、ポリカルバゾール、ポリトリアリールアミン、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ジメチルトリアリールアミン)またはポリ(N−ビニルカルバゾール)等が挙げることができ、好ましくはポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)を挙げることができる。
【0025】
なお、本発明で用いる高分子化合物は、1種類の高分子化合物を単独で使用、または2種類以上の高分子化合物の混合物として使用することが可能である。更に、異なる分子量の高分子化合物を混合して使用することも可能である。
【0026】
本発明の有機半導体層形成用溶液の構成成分として用いる有機溶媒は、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体、および高分子化合物を溶解することが可能な有機溶媒であれば如何なる有機溶媒を使用してもよく、有機半導体層を形成する際、有機溶媒の乾燥が早くなりすぎず、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体と高分子化合物の連続的な相分離構造を形成できることから、有機溶媒の常圧での沸点が140℃以上であることが好ましい。
【0027】
本発明で用いることが可能な有機溶媒として、特に制限はなく、例えばテトラリン、メシチレン、キシレン、イソプロピルベンゼン、ペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、酢酸フェニル、アニソール、2,3−ジメチルアニソール、3,4−ジメチルアニソール、2,6−ジメチルアニソール、デカン、ドデカン、デカリン、シクロヘキサノン、シクロヘキサノールアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、1,3ブチレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチレンなどが挙げられることができ、その中でも好ましくはテトラリン、メシチレン、キシレン、イソプロピルベンゼン、ペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、酢酸フェニル、アニソール、2,3−ジメチルアニソール、3,4−ジメチルアニソール、2,6−ジメチルアニソールであり、特に好ましくは、テトラリン、メシチレン、キシレン、アニソール等である。
【0028】
なお、本発明で用いる有機溶媒は、1種類の有機溶媒の単独使用、若しくは沸点、極性、溶解度パラメーターなど性質の異なる有機溶剤を2種類以上混合して使用することも可能である。
【0029】
本発明の有機半導体層形成用溶液は、上記一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体、高分子化合物、および有機溶媒を混合、溶解することで調製する。
【0030】
有機半導体層形成用溶液を調製する方法について、特に制限はなく、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体と高分子化合物を有機溶媒に溶解することが可能な方法であれば、如何なる方法を用いてもよい。
【0031】
有機半導体層形成用溶液を調製する方法として、特に制限はなく、例えば一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体と高分子化合物の混合物を同時に有機溶媒に溶解して有機半導体層形成用溶液を調製する方法、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体の有機溶媒溶液に高分子化合物を溶解して有機半導体層形成用溶液を調製する方法、高分子化合物の有機溶媒溶液に一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体を溶解する方法などを挙げることができる。
【0032】
一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体と高分子化合物を有機溶媒に混合溶解する際の温度として、0〜100℃の温度範囲で行うことが好ましく、10〜80℃の温度範囲で行うことが更に好ましい。
【0033】
また、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体と高分子化合物を有機溶媒に溶解混合する時間は、1分〜2日間で溶解することが好ましい。
【0034】
一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体と高分子化合物の混合組成比は、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体と高分子化合物との合計100質量部に対して、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体の含有割合が、5〜95質量部の範囲であることが好ましく、30〜70質量部の範囲であることが更に好ましい。
【0035】
本発明の有機半導体層形成用溶液における一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体の濃度が0.01〜20.0重量%の範囲であると、取り扱いの容易さ、有機半導体層を形成する際の効率に優れる。また、有機半導体層形成用溶液の粘度が0.3〜100mPa・sの範囲であると、好適な塗工性を発現する。
【0036】
本発明の有機半導体層形成用溶液を用いて、有機半導体層を形成する方法について、有機半導体層を形成可能な方法であれば、有機半導体層形成用溶液の塗布方法に特に制限はなく、例えばドロップキャスト、スピンコート、キャストコート、インクジェット、スリットコート等の方法により有機半導体層を形成することが可能である。
【0037】
特に、ドロップキャストやスピンコートにより、高キャリア移動度を有する有機半導体層を容易に形成することが可能である。また、スクリーン印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷などの印刷技術を用いても有機半導体層を形成することが可能である。
【0038】
本発明の有機半導体層形成用溶液を塗布後、有機溶媒を乾燥除去することにより有機半導体層を形成することが可能である。
【0039】
塗布した有機半導体層から有機溶媒を乾燥除去する際、乾燥する条件に制限はなく、例えば、常圧下、もしくは減圧下で有機溶媒の乾燥除去を行うことが可能である。
【0040】
塗布した有機半導体層から有機溶媒を乾燥除去する温度に制限はなく、例えば、10〜150℃の温度範囲で行うと、効率よく塗布した有機半導体層から有機溶媒を乾燥除去することができ、有機半導体層を形成することが可能である。
【0041】
塗布した有機半導体層から有機溶媒を乾燥除去する際、除去する有機溶媒の気化速度を調節することで、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体の結晶成長を制御することが可能である。
【0042】
本発明の有機半導体層形成用溶液により形成される有機半導体層の膜厚に制限はなく、1nm〜1μmの範囲であることが好ましく、10〜300nmの範囲であることが更に好ましい。
【0043】
また、得られる有機半導体層は、有機半導体層を形成後、40〜150℃でアニール処理を行ってもよい。
【0044】
本発明で得られる有機半導体層は、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体と高分子化合物が連続的な相分離構造を有することを特徴とする。
【0045】
本発明で示す有機半導体膜の連続的な相分離構造とは、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体から形成される層と高分子化合物から形成される層に明確な界面が存在せず、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体と高分子化合物が連続的に変化していく傾斜濃度構造を有することを示す。
【0046】
連続的に変化していく傾斜濃度構造は、一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体および高分子化合物の成分を有機半導体層の縦方向に分析することで確認することが可能である。
【0047】
有機半導体層の縦方向に分析する方法として、例えばESCA(X線光電子分光分析装置)を用いた深さ方向の分析(アルゴンイオン銃を用いたエッチングにより深さ方向の分析を行う)により、有機半導体層の有機半導体と高分子化合物の組成比を分析することで分析することが可能である。
【0048】
本発明で得られる有機半導体層の構成として、(A)上層に一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体からなる層が形成され、連続的に高分子化合物からなる層に変化し、下層に高分子化合物からなる層から形成される層、(B)上層に高分子化合物からなる層が形成され、連続的に一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体からなる層に変化し、下層に一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体からなる層から形成された層、(C)上層に一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体層からなる層が形成され、連続的に高分子化合物からなる層に変化し、中間層に高分子化合物からなる層を有し、再度、連続的に一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体層からなる層が形成され、下層に一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体からなる層から形成される層、および(D)上層に高分子化合物からなる層が形成され、連続的に一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体からなる層に変化し、中間層に一般式(1)で示されるヘテロアセン誘導体からなる層を有し、再度、連続的に高分子化合物からなる層に変化してゆき、下層に高分子化合物からなる層から形成される層などを形成することが可能である。
【0049】
本発明の有機半導体層形成用溶液より形成される有機半導体層は、有機半導体デバイス、特に有機薄膜トランジスタの有機半導体層として使用することが可能である。
【0050】
有機薄膜トランジスタは、基板上に、ソース電極およびドレイン電極を付設した有機半導体層とゲート電極とを絶縁層を介し積層することにより得ることができ、該有機半導体層に本発明の有機半導体層形成用溶液により形成した有機半導体層を用いることにより、有機薄膜トランジスタとすることが可能である。
【0051】
図1に一般的な有機薄膜トランジスタの断面形状による構造を示す。ここで、(A)は、ボトムゲート−トップコンタクト型、(B)は、ボトムゲート−ボトムコンタクト型、(C)は、トップゲート−トップコンタクト型、(D)は、トップゲート−ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタであり、1は有機半導体層、2は基板、3はゲート電極、4はゲート絶縁層、5はソース電極、6はドレイン電極を示し、本発明の有機半導体層形成用溶液より形成される有機半導体層は、いずれの有機薄膜トランジスタにも適用することが可能である。
【0052】
基板の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、フッ素化環状ポリオレフィン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリ(ジイソプロピルフマレート)、ポリ(ジエチルフマレート)、ポリ(ジイソプロピルマレエート)、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、セルローストリアセテート等のプラスチック基板;ガラス、石英、酸化アルミニウム、シリコン、ハイドープシリコン、酸化シリコン、二酸化タンタル、五酸化タンタル、インジウム錫酸化物等の無機材料基板;金、銅、クロム、チタン、アルミニウム等の金属基板、等を挙げることができる。なお、ハイドープシリコンを基板に用いた場合、その基板はゲート電極を兼ねることができる。
【0053】
ゲート電極の具体例としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、ハイドープシリコン、スズ酸化物、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、酸化モリブデン、クロム、チタン、タンタル、クロム、グラフェン、カーボンナノチューブ等の無機材料;ドープされた導電性高分子(例えばPEDOT−PSS)等の有機材料を挙げることができる。
【0054】
ゲート絶縁層の具体例としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、二酸化タンタル、五酸化タンタル、インジウム錫酸化物、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマス等の無機材料基板;ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリ(ジイソプロピルフマレート)、ポリ(ジエチルフマレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、環状ポリオレフィン、フッ素化環状ポリオレフィン等のプラスチック材料を挙げることができる。また、これらのゲート絶縁層の表面は、例えばオクタデシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、デシルトリメトキシシラン、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、β−フェネチルトリクロロシラン、β−フェネチルトリメトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のシラン類;ヘキサメチルジシラザン等のシリルアミン類で修飾処理したものであっても使用することができる。
【0055】
一般的にゲート絶縁層の表面処理を行うことにより、有機半導体層を構成する材料の結晶粒径の増大および分子配向の向上が起こるため、キャリア移動度および電流オン・オフ比の向上、並びに閾値電圧の低下という好ましい結果が得られる。
【0056】
ソース電極およびドレイン電極の材料としては、ゲート電極と同様の材料を用いることができ、ゲート電極の材料と同じであっても異なっていてもよく、異種材料を積層してもよい。また、キャリアの注入効率を上げるために、これらの電極材料に表面処理を実施することもできる。例えば、ベンゼンチオール、ペンタフルオロベンゼンチオールを挙げることができる。
【0057】
そして、有機半導体層として、本発明の有機半導体層形成用溶液よりなる有機半導体層とする際には、例えばスピンコート、キャストコート、インクジェット、スリットコート等のドロップキャスト法;ブレードコート;ディップコート、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、等の方法を用いることが可能であり、中でも容易に効率よく有機半導体層とすることが可能となることから、スピンコート、キャストコート、インクジェット等のドロップキャスト法であることが好ましく、特にインクジェットであることが好ましい。また、その際の有機半導体層の膜厚に制限はなく、好ましくは1nm〜1μm、特に好ましくは10〜300nmである。
【0058】
本発明の有機半導体層形成用溶液およびそれよりなる有機半導体層は、電子ペーパー、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、ICタグ(RFIDタグ)、センサー用等のトランジスタの有機半導体層用途;有機ELディスプレイ材料;有機半導体レーザー材料;有機薄膜太陽電池材料;フォトニック結晶材料等の電子材料に利用することができる。
【発明の効果】
【0059】
本発明の有機半導体層形成用溶液を用いることで、キャリア移動度、電流オン・オフに代表される優れた半導体・電気特性を発現する有機薄膜トランジスタを提供することが可能となる。
【実施例】
【0060】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0061】
実施例中、高分子化合物の水の接触角は、対応する高分子化合物をシートとし、JIS R3257記載の方法に従って測定を行った。有機半導体層の深さ方向の組成を求めることで、連続的な相分離構造の有無は、アルゴンイオン銃によるエッチングとESCA(X線光電子分光法)により分析により判断した。半導体・電気物性の測定は、半導体パラメータアナライザー(ケースレー社製4200SCS)を用い、実施例に記載のドレイン電圧(Vd)、ゲート電圧(Vg)にて測定を行った。
【0062】
実施例1
(有機半導体層形成用溶液の調製)
空気下、10mlサンプル管に、テトラリン(沸点206℃)3.0g、2,7−ジ(n−ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェン61mg、およびポリ(α−メチルスチレン)(和光純薬工業製、Mw850,000、水の接触角88°)61mgを加え、50℃に加熱して溶解させることで、有機半導体層形成用溶液の調製を行った。
(有機半導体層の作製)
空気下、直径2インチのヒ素でn型にハイドープしたシリコン基板(セミテック製、抵抗値;0.001〜0.004Ω、表面に200nmのシリコン酸化膜付き)上に、上述の方法で調製した有機半導体層形成用溶液0.5mlを滴下してスピンコート(300rpm×3秒、2000rpm×100秒)を行い、膜厚40nmの有機半導体層を作製した。
【0063】
該有機半導体層のESCA分析により、2,7−ジ(n−ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェンとポリ(α-メチルスチレン)の連続的な相分離構造を有することを確認した。
(有機薄膜トランジスタの作製)
上述の方法で作製した有機半導体層に、チャネル長20μm、チャネル幅1000μmのシャドウマスクを置き、金を真空蒸着することで電極を形成し、ボトムゲートトップコンタクト型の有機薄膜トランジスタを作製した(ゲート電極はSi、ゲート絶縁層はSiO、ソース電極は金、ドレイン電極は金)。
(半導体・電気物性の測定)
作製した有機薄膜の電気物性をドレイン電圧(Vd=−50V)で、ゲート電圧(Vg)を+10〜−60Vまで1V刻みで走査し、伝達特性の評価を行った。正孔の移動度は3.33cm/V・s、電流オン・オフ比は4.0×10であった。
【0064】
実施例2
(有機半導体層形成用溶液の調製)
2,7−ジ(n−ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェンの代わりに2,7−ジ(n−ペンチル)ジチエノベンゾジチオフェンを用いた以外は、実施例1と同様の方法により有機半導体層形成用溶液の調整をおこなった。
(有機半導体層の作製)
実施例1と同様の方法により、有機半導体層の作製を行った。該有機半導体層が2,7−ジ(n−ペンチル)ジチエノベンゾジチオフェンとポリ(α-メチルスチレン)の連続的な相分離構造を有することをESCA分析にて確認した。
(有機薄膜トランジスタの作製)
実施例1と同様の方法により、有機薄膜トランジスタの作製を行った。
(半導体・電気物性の測定)
実施例1と同様の方法で、得られた有機薄膜トランジスタの電気物性評価をおこなったところ、その伝達特性から正孔移動度は2.52cm/V・s、電流オン・オフ比は3.5×10であった。
【0065】
実施例3
(有機半導体層形成用溶液の調製)
2,7−ジ(n−ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェンの代わりに2,7−ジ(n−ブチル)ジチエノベンゾジチオフェンを用いた以外は、実施例1と同様の方法により有機半導体層形成用溶液の調整をおこなった。
(有機半導体層の作製)
実施例1と同様の方法により、有機半導体層の作製を行った。該有機半導体層が2,7−ジ(n−ブチル)ジチエノベンゾジチオフェンとポリ(α-メチルスチレン)の連続的な相分離構造を有することをESCA分析にて確認した。
(有機薄膜トランジスタの作製)
実施例1と同様の方法により、有機薄膜トランジスタの作製を行った。
(半導体・電気物性の測定)
実施例1と同様の方法で、得られた有機薄膜トランジスタの電気物性評価をおこなったところ、その伝達特性から正孔移動度は2.21cm/V・s、電流オン・オフ比は3.3×10であった。
【0066】
実施例4
(有機半導体層形成用溶液の調製)
テトラリンの代わりにメシチレン(沸点165℃)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により有機半導体層形成用溶液の調製をおこなった。
(有機半導体層の作製)
実施例1と同様の方法により、有機半導体層の作製を行った。該有機半導体層が2,7−ジ(n−ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェンとポリ(α-メチルスチレン)の連続的な相分離構造を有することをESCA分析にて確認した。
(有機薄膜トランジスタの作製)
実施例1と同様の方法により、有機薄膜トランジスタの作製を行った。
(半導体・電気物性の測定)
実施例1と同様の方法で、得られた有機薄膜トランジスタの電気物性評価をおこなったところ、その伝達特性から正孔移動度は1.46cm/V・s、電流オン・オフ比は2.8×10であった。
【0067】
実施例5
(有機半導体層形成用溶液の調製)
テトラリンの代わりにキシレン(沸点144℃)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により有機半導体層形成用溶液の調整をおこなった。
(有機半導体層の作製)
実施例1と同様の方法により有機半導体層を作製し、該有機半導体層が2,7−ジ(n−ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェンとポリ(α-メチルスチレン)の連続的な相分離構造を有することをESCA分析にて確認した。
(半導体・電気物性の測定)
実施例1と同様の方法で電気物性評価をおこなったところ、その伝達特性から正孔移動度は1.23cm/V・s、電流オン・オフ比は2.2×10であった。
【0068】
実施例6
(有機半導体層形成用溶液の調製)
ポリ(α−メチルスチレン)の代わりにポリスチレン(シグマ−アルドリッチ社製、Mw900,000、水の接触角88°)を用いた以外は実施例1と同様の方法により有機半導体層形成用溶液の調製をおこなった。
(有機半導体層の作製)
実施例1と同様の方法により有機半導体層を作製し、該有機半導体層が2,7ジ(n−ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェンとポリスチレンの連続的な相分離構造を有することをESCA分析にて確認した。
(半導体・電気物性の測定)
実施例1と同様の方法で電気物性評価をおこなったところ、その伝達特性から正孔移動度は2.02cm/V・s、電流オン・オフ比は3.1×10であった。
【0069】
実施例7
(有機半導体層形成用溶液の調製)
2,7ジ(n−ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェンの代わりに2,7ジ(n−ペンチル)ジチエノベンゾジチオフェンを用いた以外は実施例6と同様の方法により有機半導体層形成用溶液の調整をおこなった。
(有機半導体層の作製)
実施例1と同様の方法により有機半導体層を作製し、該有機半導体層が2,7−ジ(n−ペンチル)ジチエノベンゾジチオフェンとポリスチレンの連続的な相分離構造を有することをESCA分析にて確認した。
(半導体・電気物性の測定)
実施例1と同様の方法で電気物性評価をおこなったところ、その伝達特性から正孔移動度は1.82cm/V・s、電流オン・オフ比は2.8×10であった。
【0070】
実施例8
(有機半導体層形成用溶液の調製)
ポリ(α−メチルスチレン)の代わりにポリ(1−ビニルナフタレン)(シグマ−アルドリッチ社製、Mw100,000、水の接触角93°)を用いた以外は実施例1と同様の方法により有機半導体層形成用溶液の調製をおこなった。
(有機半導体層の作製)
実施例1と同様の方法により有機半導体層を作製し、該有機半導体層が2,7−ジ(n−ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェンとポリ(1−ビニルナフタレン)の連続的な相分離構造を有することをESCA分析にて確認した。
(半導体・電気物性の測定)
実施例1と同様の方法で有機半導体層の電気物性評価をおこなったところ、その伝達特性から正孔移動度は1.76cm/V・s、電流オン・オフ比は3.0×10であった。
【0071】
比較例1
(有機半導体層形成用溶液の調製)
ポリ(α−メチルスチレン)の代わりにポリメタクリル酸メチル(シグマ−アルドリッチ社製、Mw996,000、水の接触角66°)を用いた以外は、実施例3と同様の方法により有機半導体層形成用溶液の調製をおこなった。
(有機半導体層の作製)
実施例1と同様の方法により有機半導体層を作製したが、該有機半導体層は2,7−ジ(n−ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェンとポリメタクリル酸メチルの不連続的な相分離構造を有していた。
(半導体・電気物性の測定)
実施例1と同様の方法で電気物性評価をおこなったところ、その伝達特性から正孔移動度は0.48cm/V・s、電流オン・オフ比は1.5×10であり、水の接触角が70℃未満の高分子化合物を含む有機半導体層形成用溶液より形成される有機半導体層を用いたことから、半導体・電気特性に劣るものであった。
【0072】
比較例2
(有機半導体層形成用溶液の調製)
2,7−ジ(n−ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェンの代わりに2,7−ジ(n−ペンチル)ジチエノベンゾジチオフェンを用いた以外は比較例1と同様の方法により有機半導体層形成用溶液の調整をおこなった。
(有機半導体層の作製)
実施例1と同様の方法により有機半導体層を作製したが、該有機半導体層は2,7−ジ(n−ペンチル)ジチエノベンゾジチオフェンとポリメタクリル酸メチルの不連続的な相分離構造を有していた。
(半導体・電気物性の測定)
実施例1と同様の方法で電気物性評価をおこなったところ、その伝達特性から正孔移動度は0.45cm/V・s、電流オン・オフ比は1.2×10であり、水の接触角が70℃未満の高分子化合物を含む有機半導体層形成用溶液より形成される有機半導体層を用いたことから、半導体・電気特性に劣るものであった。
【0073】
比較例3
(有機半導体層形成用溶液の調製)
2,7−ジ(n−ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェンの代わりに2,7−ジ(n−ブチル)ジチエノベンゾジチオフェンを用いた以外は比較例1と同様の方法により有機半導体層形成用溶液の調整をおこなった。
(有機半導体層の作製)
実施例1と同様の方法により有機半導体層を作製したが、該有機半導体層は2,7−ジ(n−ブチル)ジチエノベンゾジチオフェンとポリメタクリル酸メチルの不連続的な相分離構造を有していた。
(半導体・電気物性の測定)
実施例1と同様の方法で電気物性評価をおこなったところ、その伝達特性から正孔移動度は0.38cm/V・s、電流オン・オフ比は1.1×10であり、水の接触角が70℃未満の高分子化合物を含む有機半導体層形成用溶液より形成される有機半導体層を用いたことから、半導体・電気特性に劣るものであった。
【0074】
比較例4
(有機半導体層形成用溶液の調製)
ポリ(α−メチルスチレン)の代わりにポリ酢酸ビニル(Mw500,000、水の接触角57°)を用いた以外は、実施例5と同様の方法により有機半導体層形成用溶液の調整をおこなった。
(有機半導体層の作製)
実施例1と同様の方法により有機半導体層を作製したが、該有機半導体層は2,7−ジ(n−ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェンとポリ酢酸ビニルの不連続的な相分離構造を有していた。
(半導体・電気物性の測定)
実施例1と同様の方法で電気物性評価をおこなったところ、その伝達特性から正孔移動度は0.42cm/V・s、電流オン・オフ比は1.2×10であり、水の接触角が70℃未満の高分子化合物を含む有機半導体層形成用溶液より形成される有機半導体層を用いたことから、半導体・電気特性に劣るものであった。
【0075】
比較例5
(有機半導体層形成用溶液の調製)
2,7−ジ(n−ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェンの代わりに2,7−ジ(n−ペンチル)ジチエノベンゾジチオフェンを用いた以外は、比較例4と同様の方法により有機半導体層形成用溶液の調整をおこなった。
(有機半導体層の作製)
実施例1と同様の方法により有機半導体層を作製したが、該有機半導体層は2,7−ジ(n−ペンチル)ジチエノベンゾジチオフェンとポリ酢酸ビニルの不連続的な相分離構造を有していた。
(半導体・電気物性の測定)
実施例1と同様の方法で電気物性評価をおこなったところ、その伝達特性から正孔移動度は0.32cm/V・s、電流オン・オフ比は1.0×10であり、水の接触角が70℃未満の高分子化合物を含む有機半導体層形成用溶液より形成される有機半導体層を用いたことから、半導体・電気特性に劣るものであった。
【0076】
比較例6
(有機半導体層の作製)
ポリ(α−メチルスチレン)使用しない以外は実施例1と同様の方法により有機半導体層形成用溶液の調整をおこなったが、高分子化合物を含まない有機半導体層形成用溶液より形成される有機半導体層を用いたことから、溶液の塗工性が悪く基板上に薄膜は形成されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の有機半導体層形成用溶液を用いることで、塗工性を向上させるとともに、優れた半導体・電気物性を有する有機薄膜トランジスタを作製することができるため、半導体デバイス材料としての適用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1】;有機薄膜トランジスタの断面形状による構造を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
(A):ボトムゲート−トップコンタクト型有機薄膜トランジスタ
(B):ボトムゲート−ボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタ
(C):トップゲート−トップコンタクト型有機薄膜トランジスタ
(D):トップゲート−ボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタ
1:有機半導体層
2:基板
3:ゲート電極
4:ゲート絶縁層
5:ソース電極
6:ドレイン電極
図1