(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム等のIII族窒化物半導体は直接遷移型の化合物半導体であり、そのバンドギャップが大きいこと、さらに組成中のIII族元素の比によってバンドギャップを調整可能であることから、可視光、紫外光を発する固体発光素子に代表的に用いられている。
【0003】
特にIII族元素としてアルミニウムを含有した窒化物(窒化アルミニウムガリウム等)は深紫外光(波長300nm以下の紫外線)を発する発光素子への利用が期待されている。
【0004】
窒化アルミニウムガリウム等III族窒化物は、サファイア等の半導体素子用基板として一般的に用いられる材料と格子定数が大きく異なるので、通常バッファ層を設け、その上にIII族窒化物の層(窒化物半導体層)を形成する。窒化物半導体素子の各層について、目的に応じて層内の組成を傾斜させる(組成傾斜層にする)技術が存在する。
【0005】
特許文献1には、サファイア等の基板にAlN、AlGaN等のバッファ層を形成し、このバッファ層にエピタキシャル成長によりAlGaN、AlInGaN等のデバイス多層膜を形成したフォトニックデバイス用基板が開示されている。前記バッファ層において、Al組成はデバイス多層膜における最大膜厚の層のAl組成以上であり、そのAl組成は、デバイス多層膜の反対側からデバイス多層膜に向けて小さくなるように調整されている。このようにすることでクラックが少なく結晶性のよいデバイス多層膜が得られ、効率の高いフォトニックデバイスを得ることができるとされている。
【0006】
特許文献2には、サファイア等の基板上に形成された無極性面以外の面(−c面等)を主面とするAlN、AlInGaN等の窒化物半導体層と、その上に形成されたAlを含み、Al組成が傾斜したAl組成傾斜層と、さらにその上に形成された活性層を有する発光素子が開示されている。Al組成傾斜層のAl組成は、活性層側に向かって増加しないように調整されている。このようにすることで、n型不純物なしにn型窒化物半導体層を形成できるので、クラックが発生しにくく且つAl組成の高いn型窒化物半導体層を形成可能になるとされている。そして、その結果としてサファイア基板のような導電性のない基板を用いた深紫外領域発光窒化物半導体発光素子において電流広がりを向上させることができ、発光領域を大きくすることができるとされている。
【0007】
特許文献3には、SiC基板上に形成されたAlN薄膜の上に形成される組成傾斜させたn型AlGaN層が記載されている。n型AlGaN層の好ましい形態としてSiをドープしたものが記載されているが、どう好ましいのかの言及は特にない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の窒化物半導体積層体の実施形態について説明する。但し、本発明は以下の説明によって制限されるものではない。
【0021】
本発明の窒化物半導体積層体は、大別してテンプレート基板、超格子層、第一の組成傾斜層、第二の組成傾斜層、活性層及びp型層に分けられる。以下これらを中心に説明する。必要に応じて図面も参照するが、当該図面は本発明の実施の形態の一例を模式的に表したものにすぎない。本発明の技術思想は図面によって限定されるものでない。また、当該図面は説明時の分かり易さのために寸法表現等に一部誇張がある。
【0022】
[積層体全体の概観]
本発明の実施形態に係る窒化物半導体積層体は、発光層からの光を基板側に取り出す所謂フェイスダウンの構成をとる。窒化物半導体発光素子に用いられる電極は深紫外光を吸収し易いのでフェイスダウン構造にして電極での深紫外光吸収による発光効率低下を回避させる。このため、後述のテンプレート基板〜第二の組成傾斜層は発光層から発せられる深紫外線に対して透明であることが前提になる。積層体全体の概観は大凡
図1の様になる。
【0023】
[テンプレート基板]
テンプレート基板は下地基板にバッファ層となる層を形成し、全体として基板としたものである。以下、下地基板及びバッファ層に分けて説明する。
【0024】
<下地基板>
下地基板はサファイア基板を用いる。これは入手のし易さ及びバッファ層形成以降のプロセスが実施し易いことによる。また、深紫外光に対して透明であることにもよる。さらに、バッファ層は後述のように窒化アルミニウムからなるので、c面を上面として用いる。c面以外だとバッファ層が形成しにくい。上面の状態は特に制限されないが、c面からa軸方向又はm軸方向にある程度傾いているとバッファ層より上の層の結晶性が良くなるので好ましい。より好ましい傾き具合は0.2°以上2°以下である。
【0025】
<バッファ層>
窒化アルミニウムからなるバッファ層を下地基板上面に接して形成し、合わせてテンプレート基板とする。。窒化アルミニウムはバンドギャップが極めて大きく、深紫外光に対して透明であり、なお且つ窒化ガリウム同様サファイアとIII族窒化物半導体との格子不整合を緩和する。但し、バッファ層の成長初期にサファイア基板との格子不整合および熱膨張係数差に起因する多数の欠陥が導入される。バッファ層が薄すぎると前述したように欠陥の低減が十分おこなわれず、通常は1×10
10/cm
2程度の刃状転位が残留し、発光素子の発光効率を高めることができない。このためバッファ層には一定以上の厚みが必要である。バッファ層の厚みが2μm以上あれば、バッファ層内の欠陥は十分低減され、より上の層に生じる欠陥を低減できる。一方、バッファ層が厚すぎると結晶内部に応力を抱えるため、より上部の層を形成する際にクラックを発生させ得る。しかし、本発明の半導体発光素子においては後述の超格子層によってクラック発生を防止するため、厚い方には特に制限はない。但し、必要以上に厚くしても生産性の低下を招くだけなので、現実的には4μm以下である。このため、本発明の半導体積層体において、バッファ層の厚みは2μm以上4μm以下とする。バッファ層の窒化アルミニウムは結晶質であることが必要で、単結晶であるとc軸配向性が調整可能なので好ましい。c軸配向性が高いと、バンドギャップをより大きくすることができ、より広範囲の深紫外線に対して透明になるので好ましい。
【0026】
なお、テンプレート基板上面に接して後述の超格子層を形成する前に、50〜200nm程度のバッファ層を追加しても良い。追加のバッファ層は最終的にテンプレート基板のバッファ層の一部として一体化される。
【0027】
[超格子層]
テンプレート基板と後述の第一の組成傾斜層との間に超格子層を形成し、バッファ層が厚いことによるクラックの発生を防止する。超格子層は相対的に格子定数の小さい層と大きい層を交互に多周期積層することで、異種材料の接合界面に引っ張り応力と圧縮応力を交互に生じさせ、上層に形成される層に加わる応力を分散させる。
図1における超格子層12を抜き出し、強調したものが
図2である。超格子層は窒化アルミニウム層と窒化アルミニウムガリウム層を交互に積層する。超格子層における最下層(テンプレート基板側の層)はどちらでも構わない。また、超格子層における最上層(第一の組成傾斜層と接する層)も、どちらでも構わない。また、窒化アルミニウム層及び/又は窒化アルミニウムガリウム層に目的に応じて添加元素をドープさせても良い。超格子層の各層の厚みは特に限定されず、目的に応じて厚みをそろえても良いし、不規則にしても良い。また、超格子層を構成する層の合計も特に限定されない。但し、超格子として成立させるために少なくとも計2層は必要である。窒化アルミニウムガリウム層の組成は、発光層から発せられる深紫外光の光子エネルギーよりも大きなバンドギャップを持つように調整される。なお、超格子層中で窒化アルミニウムガリウム層の組成はほぼ一定に保たれる。製造方法等による組成ばらつき程度なら許容されるものとする。
図2は、超格子層における最上層121と、最下層とが同種の層であり、各層の厚みが大凡等しい例を表している。合計層数をn層としているが、一部の層は記載を省略している。
【0028】
[第一の組成傾斜層]
アンドープの窒化アルミニウムガリウムからなる第一の組成傾斜層を超格子層の上面に接して形成する。アンドープのIII族窒化物化合物は通常n型半導体としてふるまう。第一の組成傾斜層において、窒化アルミニウムガリウムは超格子層側から後述の第二の組成傾斜層側に向けて(この方向を上方向とする)組成が連続的に変化している。その変化の仕方は、窒化アルミニウムガリウムにおけるアルミニウム比m
Al1が、上方向に順次減る変化の仕方である。なお、アルミニウム比m
Al1は、窒化アルミニウムガリウム中のガリウム及びアルミニウムの和に対するアルミニウムの比で定義する。なお、第一の組成傾斜層全体が、発光層から発せられる深紫外光に対して透明であるよう、m
Al1の最小値は調整する。
【0029】
[第二の組成傾斜層]
n型不純物ドープの窒化アルミニウムガリウムからなる第二の組成傾斜層を第一の組成傾斜層の上面に接して形成する。n型不純物ドープはどのようになされていても良いが、シリコンドープであれば添加濃度が効率良く半導体層のn型化に寄与するので好ましい。結果、後述のn電極から(第一の組成傾斜層及び)第二の組成傾斜層を経由して活性層へ自由電子を効率良く供給できる。また、n側層の電気抵抗率が低下する。第一の組成傾斜層同様第二の組成傾斜層も組成が連続的に変化している。その変化の仕方は、n型不純物ドープの窒化アルミニウムガリウムにおけるアルミニウム比m
Al2が、上方向に順次減る変化の仕方である。なお、アルミニウム比m
Al2は、n型不純物ドープの窒化アルミニウムガリウム中のガリウム及びアルミニウムの和に対するアルミニウムの比で定義する。なお、第二の組成傾斜層全体が、発光層から発せられる深紫外光に対して透明であるよう、m
Al2の最小値もm
Al1の最小値同様調整する。
【0030】
[第一及び第二の組成傾斜層の関係]
第一の組成傾斜層及び第二の組成傾斜層の組成及びその変化の仕方は夫々独立していて良い。しかし、第一の組成傾斜層上面におけるm
Al1(≡m
Al1
u)が第二の組成傾斜層下面におけるm
Al2(≡m
Al2
b)以上であると、第二の組成傾斜層全体に圧縮応力を加えることができ、クラックの発生を抑制できるため好ましい。m
Al1
uとm
Al2
bはその上で近い値であると格子不整合による界面での欠陥発生を防ぐことができるためより好ましい。より好ましい範囲を比で表すと、m
Al1
u/m
Al2
bとして1.00以上1.02以下である。また、第一及の組成傾斜層及び第二の組成傾斜層は後述のp側層と対応してn側層とみなすことができる。n側層は、後述の活性層に自由電子を供給する役割を果たす。
図1におけるn側層13を抜き出し、強調したものが
図3である。
【0031】
[活性層]
第二の組成傾斜層の上面に接して活性層を形成する。活性層は深紫外光を発するIII族窒化物半導体からなる発光層を有する。発光層の例として、一般式In
xAl
yGa
1−x−yN(0≦x≦0.1、0.4≦y≦1.0、x+y≦1.0)で表されるIII族窒化物を発光層が挙げられる。発生させる深紫外光のエネルギーに応じて発光層の全金属元素中のアルミニウムの比率が決定される。例えば波長280nmの発光素子の場合、発光層のアルミニウムの割合は45%程度が必要である。アルミニウムの割合が高ければ高い程発光波長は短くなり、AlNを発光層に用いた場合その発光波長は210nmとなる。目的に応じてインジウムが入っていても発光特性に影響を与えないが、その比率は1割以下にする。1割を超えると結晶性が悪化し易くなる。活性層は発光層のみで構成しても良いが、目的に応じて他の層と組み合わせても良い。また、同一種の発光層を複数設ける、複数種の発光層を組み合わせる等しても良い。
図1における活性層14を抜き出し、強調したものが
図4である。
図4は、エネルギー障壁を形成する3つの層141に挟まれた2つの発光層142の計5層によって2つの量子井戸が形成された例を表している。もちろん量子井戸を形成しなくとも良いし、より多数の量子井戸を形成しても良い。
【0032】
[p側層]
活性層の上面に接してp側層を形成する。p側層の形態は、p型半導体からなり、活性層にホールを供給する役割を果たす。p側層を構成するp型半導体層の数、種類は目的に応じて適宜調整すれば良い。本発明の半導体積層体は所謂フェイスダウン構造をとるので、p側層にはバンドギャップの制約がない。p側層がp型不純物ドープの窒化アルミニウムガリウムからなる層を有すると、この層が電子障壁層として機能するため、発光効率が向上し、好ましい。また、p側層がp型不純物ドープ窒化アルミニウムガリウムからなり、p型不純物ドープ窒化アルミニウムガリウムにおけるアルミニウム比m
Al3が活性層側から上方向に順次減少する第三の組成傾斜層を有していると、電子障壁層としての機能を維持しつつ、ホール障壁を上方向に漸次減少させることができるためより好ましい。結果、後述のp電極からp側層を経由して活性層へホールを効率良く供給可能になる。第三の組成傾斜層は先述の電子障壁層を兼ねても良いし、電子障壁層から独立していても良い。p側層は、単一の層のみからなっていても良いし、他の層と組み合わせたものであっても良い。なお、p側層をp型不純物ドープの窒化アルミニウムガリウムとする手段は限定されないが、マグネシウムドープであると添加濃度が効率良く半導体層のp型化に寄与するので好ましい。
図1におけるp側層を抜き出し、強調したものが
図5である。
図5は、とある目的で形成される層151、電子障壁層152、層151とは別の目的で形成される層153及び層154からなるp側層の例を表している。更に、
図5において、電子障壁層152は、第三の組成傾斜層152cを有している。もちろん目的に応じてp側層は様々な形態をとることが可能である。
【0033】
[半導体積層体の製造方法]
本発明の半導体積層体は公知の手法を用いて製造することができる。有機気相金属成長法(MOCVD)、分子線エピタキシー法(MBE)、液相成長法(LPE)、水素化物気相反応法(HVPE)等を目的に応じて適宜選択すれば良い。
【0034】
[半導体発光素子]
本発明の半導体積層体に公知の手法を用いて電極等を形成する、あるいは半導体積層体を所望の形状に加工する、等して、深紫外線を発する本発明の窒化物半導体発光素子を得ることができる。なお、本発明の半導体発光素子は所謂フェイスダウン構造をとるので、n電極は本発明の半導体積層体の特定領域を一定量除去し、n側層を上側に露出させた上で形成する。露出させるn側層は、第一の組成傾斜層でも良いし、第二の組成傾斜層でも良い。
図6は本発明の窒化物半導体積層体にn電極16及びp電極17を形成した例を表している。
図6においてはn電極は第一の組成傾斜層に電気的に接続されているが、第二の組成傾斜層に電気的に接続されていても良い。
【0035】
以下、実施例を用いてより具体的に説明する。
【実施例1】
【0036】
直径7.62cm(3インチ)の、c面を上面に有するサファイアからなる下地基板上に厚さ3.5μmの窒化アルミニウムからなるバッファ層が形成されたテンプレート基板を反応容器に設置し、原料ガスとしてアンモニア、トリメチルアルミニウム(TMA)を用いて、厚さ約0.1μmの単結晶の窒化アルミニウムからなるバッファ層を追加形成した。こうしてテンプレート基板におけるバッファ層の厚さを約3.6μmにした。
【0037】
引き続きアンモニア、TMA及びトリメチルガリウム(TMG)を用いて、厚さ約27.0nmのAl
0.7Ga
0.3Nからなる層(層a)を形成した。次にTMGの導入を止め、アンモニア及びTMAを用いて、厚さ約10.2nmのAlNからなる層(層b)を形成した。層a及び層bを交互に夫々30回繰り返し形成し、超格子層を形成した。
【0038】
引き続きアンモニア、TMA及びTMGを用いて、アンドープであり、Al
0.7Ga
0.3NからAl
0.56Ga
0.44Nまで上方向へm
Al1が順次減少する第一の組成傾斜層を形成した。第一の組成傾斜層の厚みは500nmである。
【0039】
引き続きアンモニア、TMA、TMG及びモノシラン用いて、シリコンドープであり、Al
0.56Ga
0.44NからAl
0.45Ga
0.55Nまで上方向へm
Al2が順次減少する第二の組成傾斜層を形成した。第二の組成傾斜層の厚みは2500nmである。
【0040】
第二の組成傾斜層形成後、全てのガスを一旦止め、反応容器内を970℃、26.7kPa(200Torr)に調整した。調整後、アンモニア、TMA、トリエチルガリウム(TEG)及びモノシランを用いて、厚さ約50.0nmのシリコンドープのAl
0.56Ga
0.44Nからなる層(層c)を形成した。
【0041】
次にモノシランの導入を止め、アンモニア、TMA及びTEGを用いて、厚さ約4.4nmのAl
0.45Ga
0.55Nからなる層(層d1)を形成した。引き続きアンモニア、TMA、TEG及びモノシランを用いて、厚さ約2.5nmのシリコンドープのAl
0.56Ga
0.44Nからなる層(層d2)を形成した。層d1及び層d2を交互に2回繰り返し形成し、層dとした。
【0042】
層c及び層dを合わせて活性層とした。層d1は発光層としての役目を果たす。
【0043】
活性層形成後、全てのガスを一旦止め、反応容器内を870℃、13.3kPaに調整した。調整後、アンモニア及びTMAを用いて、厚さ約1.0nmのp型不純物ドープの窒化アルミニウムからなる層(層e)を形成した。
【0044】
引き続きアンモニア、TMA及びTMGを用いて、厚さ約4.0nmのp型不純物ドープのAl
0.78Ga
0.22Nからなる層(層f)を形成した。
【0045】
引き続きアンモニア、TMA、TMG及びビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp
2Mg;マグネソセン)を用いて、厚さ約78.0nmのマグネシウムドープのAl
0.63Ga
0.37Nからなる層(層g)を形成した。
【0046】
引き続きアンモニア、TMA、TMG及びCp
2Mgを用いて、マグネシウムドープであり、Al
0.6Ga
0.4NからGaNまで上方向へm
Al3が順次減少する第三の組成傾斜層(層h)を形成した。第三の組成傾斜層の厚さは23nmである。
【0047】
引き続きアンモニア、TMG及びCp
2Mgを用いて、厚さ約309.0nmのマグネシウムドープの窒化ガリウムからなる層(層i)を形成した。
【0048】
引き続きアンモニア、TMG及びCp
2Mgを用いて、厚さ約14.6nmのマグネシウムドープの窒化ガリウムからなる層(層j)を形成した。
【0049】
層e〜層jを合わせてp側層とした。こうして目的の窒化物半導体積層体を得た。また、層f〜層hは電子障壁層としての役目も果たす。
【実施例2】
【0050】
実施例1と同様のテンプレート基板を反応容器に設置し、実施例1と同様にバッファ層、超格子層及び第一の組成傾斜層を形成した。
【0051】
引き続きアンモニア、TMA、TMG及びモノシランを用いて、シリコンドープであり、Al
0.56Ga
0.44NからAl
0.45Ga
0.55Nまで1.5μmかけて上方向へm
Al2が順次減少し、さらに約1μmの、シリコンドープのAl
0.45Ga
0.55Nからなる層が連続する第二の組成傾斜層を形成した。
【0052】
引き続き実施例1と同様にして活性層及びp側層を形成した。こうして目的の窒化物半導体積層体を得た。
【実施例3】
【0053】
実施例1と同様のテンプレート基板を反応容器に設置し、実施例1と同様にバッファ層、超格子層及び第一の組成傾斜層を形成した。
【0054】
引き続きアンモニア、TMA、TMG及びモノシランを用いて、シリコンドープであり、Al
0.56Ga
0.44NからAl
0.51Ga
0.59Nまで350nmかけて、Al
0.51Ga
0.59NからAl
0.48Ga
0.52Nまで350nmかけて、Al
0.48Ga
0.52NからAl
0.47Ga
0.53Nまで450nmかけて、Al
0.47Ga
0.53NからAl
0.46Ga
0.54Nまで750nmかけて、Al
0.46Ga
0.54NからAl
0.45Ga
0.55Nまで750nmかけて上方向へm
Al2が順次減少する第二の組成傾斜層を形成した。
【0055】
引き続き実施例1と同様にして活性層及びp側層を形成した。こうして目的の窒化物半導体積層体を得た。
【実施例4】
【0056】
実施例1と同様のテンプレート基板を反応容器に設置し、実施例1と同様にバッファ層及び超格子層を形成した。
【0057】
引き続きアンモニア、TMA及びTMGを用いて、アンドープであり、Al
0.7Ga
0.3NからAl
0.51Ga
0.49Nまで上方向へm
Al1が順次減少する第一の組成傾斜層を形成した。第一の組成傾斜層の厚みは500nmである。
【0058】
引き続きアンモニア、TMA、TMG及びモノシランを用いて、シリコンドープであり、Al
0.51Ga
0.49NからAl
0.45Ga
0.55Nまで上方向へm
Al2が順次減少する第二の組成傾斜層を形成した。第二の組成傾斜層の厚みは2.5μmである。
【0059】
引き続き実施例1と同様にして活性層及びp側層を形成した。こうして目的の窒化物半導体積層体を得た。
【0060】
[比較例1]
実施例1と同様のテンプレート基板を反応容器に設置し、実施例1と同様にバッファ層及び超格子層を形成した。
【0061】
引き続きアンモニア、TMA及びTMGを用いて、厚さ約500nmのアンドープのAl
0.65Ga
0.35Nの層を形成し、実施例1における第一の組成傾斜層の替りとした。
【0062】
引き続きアンモニア、TMA、TMG及びモノシランを用いて、厚さ約2.5μmのシリコンドープのAl
0.65Ga
0.35Nの層を形成し、実施例1における第二の組成傾斜層の替りとした。
【0063】
引き続き実施例1と同様にして活性層及びp側層を形成した。こうして目的の窒化物半導体積層体を得た。
【0064】
[比較例2]
超格子層を形成しない以外実施例1と同様にし、目的の窒化物半導体積層体を得た。
【0065】
[表面抵抗率測定]
実施例1〜4及び比較例1、2について、以下のようにして表面抵抗率を求める。
【0066】
渦電流を用いる非接触シート抵抗測定器で半導体層のシート抵抗を計測した。測定は夫々5点ずつ行い、その平均を半導体積層体の表面抵抗率とした。
【0067】
[Vf測定]
実施例及び比較例について以下のようにしてn電極を形成し、If(順駆動電流)20mAで通電してVfを測定する。
【0068】
[n側層露出]
所定の領域のみエッチングされる様マスクを形成する。形成後、半導体積層体をドライエッチング装置に入れ、装置内を10.5Paに調整する。調整後、バイアス出力250Wにし、塩素及び四塩化ケイ素を用いて、p側層側から約0.8μmエッチングを施し、n側層を露出させる。エッチング後ドライエッチング装置から半導体積層体を取り出し、マスクを除去する。
【0069】
[n電極形成]
露出したn側層のみスパッタされるようマスクを形成する。形成後、半導体積層体をスパッタ装置に入れ、装置内を1.0×10
−4Paに調整する。調整後、アルゴン雰囲気下でチタンとアルミニウムの合金を露出したn側層にスパッタする。チタンターゲットにかける高周波電圧の出力は300W、アルミニウムターゲットにかける高周波電圧の出力は500Wとする。スパッタ後n電極が形成された半導体積層体をスパッタ装置から取り出す。この時点では一枚のウエハーに複数の半導体積層体が形成され、個々の半導体積層体は同一のn側層を共有している状態である。
【0070】
[通電]
隣り合う半導体積層体のn電極間を通電する。
【0071】
[クラックの発生率]
実施例1及び比較例1、2の半導体積層体を夫々10個作製し、活性層におけるクラックの発生率Crを測定した。
【0072】
バッファ層膜厚と発光素子の発光効率の関係を調べるために、AlNバッファ層厚みを変えて深紫外発光素子を作製した。AlNバッファ層が1μmのとき、ピーク波長280nmのLEDの初期特性は下記の通りだった。電流=20mA、電圧=7.13V、光出力=0.293mW。一方、AlNバッファ層を2μmにしたときのLEDの初期特性は下記の通りだった。電流=20mA、電圧=7.20V、光出力=0.401mW。AlNバッファ層厚を1μmから2μmに大きくすることで光出力が37%向上した。AlNバッファ層厚をさらに大きくすることで、更なる光出力の向上が期待できる。
【0073】
実施例及び比較について、表面抵抗率Rs、Vf及びクラック発生率Crの値を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
表1より、n側層を組成傾斜層にすることでRsが低下することが分かる。Vfが低下しているのはその結果と考えられる。さらに、n側層を組成傾斜層にすることで、I−Vカーブが曲線状から直線状に変化した。これはn側層とn電極との電気的接合がショットキー接合からオーミック接合に変化したことを意味する。オーミック接合が得られた効果でLED駆動時の順方向電圧も低下した。また、超格子層を形成することでバッファ層を厚くしてもクラックが発生しないことが分かる。このため、従来よりも少ない投入電力で効率良く深紫外線を発光させることが可能となる。