特許第6252113号(P6252113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6252113
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】複合プレート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/00 20060101AFI20171218BHJP
   B32B 18/00 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   C04B37/00 A
   B32B18/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-230682(P2013-230682)
(22)【出願日】2013年11月6日
(65)【公開番号】特開2015-89863(P2015-89863A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今井 紘平
(72)【発明者】
【氏名】山下 勲
(72)【発明者】
【氏名】山内 正一
(72)【発明者】
【氏名】津久間 孝次
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−116745(JP,A)
【文献】 特開2003−268568(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/096478(WO,A1)
【文献】 特開平11−278928(JP,A)
【文献】 特開2001−240953(JP,A)
【文献】 特開2010−263147(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/108433(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0268528(US,A1)
【文献】 特開2014−113726(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/087655(WO,A1)
【文献】 特開2015−089656(JP,A)
【文献】 特許第6020564(JP,B2)
【文献】 特開2014−054780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00 − 37/04
C04B 35/48
B32B 18/00
G04B 37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニア質焼結体、繊維強化プラスチックスが積層し、互いにエポキシ系熱硬化型接着剤、室温で硬化するアクリル系接着剤、シアノアクリレート接着剤、紫外線硬化レジンからなる群の1種以上からなる白色接着剤によって密着固定されてなる2mm以下の複合プレートであって、ジルコニア質焼結体と繊維強化プラスチックスとの厚み比率(ジルコニア質焼結体厚み/繊維強化プラスチックス厚み)が0.01〜1であり、且つ、複合プレートの見かけ密度が4.3g/cm以下であり、表面の色調(L、a、b)がL=86〜94、a=−1〜+1、b=−1〜+1の範囲の白色を呈す複合プレート。
【請求項2】
ジルコニア質焼結体が、ジルコニアに対して2〜10mol%のイットリアを含有するジルコニアである請求項1記載の複合プレート。
【請求項3】
ジルコニア質焼結体が、白色着色剤を含有するジルコニアである請求項1又は2に記載の複合プレート。
【請求項4】
130gの鋼球を自由落下させる試験において、破壊高さが10cm以上である高耐衝撃性を示すことを特長とする請求項1〜のいずれかに記載の複合プレート。
【請求項5】
ジルコニア質焼結体と繊維強化プラスチックスを、エポキシ系熱硬化型接着剤を用いて300℃以下の温度で接合することを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の複合プレートの製造方法。
【請求項6】
ジルコニア質焼結体が、ジルコニア粉末と有機バインダーを混合したスラリーを厚さ1mm以下のグリーンシートに成膜し、次いで1300〜1500℃で焼結したものである請求項記載の複合プレートの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載の複合プレートを用いた携帯用電子機器の筐体。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載の複合プレートを用いた時計部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対擦傷性、耐衝撃性を有し、かつ充分な白色色調を保持するジルコニア質焼結体と繊維強化プラスチックスとの複合プレートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等に代表される携帯用電子機器において耐擦傷性、耐衝撃性の優れた部材への需要が高まっている。特に携帯用電子機器の外装部材は、厚さ2mm以下の薄板形状で且つ、落下などの衝突にも耐えなくてはならないため、とりわけ耐衝撃性の高い材質が要求されている。
【0003】
外装用部材として使用されている材質は、金属、樹脂、ガラスなどがあるが、耐擦傷性、高い意匠性のためガラス素材が広く用いられている。現在使用されているガラス素材は、イオン交換によって強化された強化ガラスである。イオン交換によってガラス表面に数十μm程度の強化層を生成し、表面に圧縮応力を発生させ傷の進展を防いでいる。しかしながら強化ガラスの強化機構は、強化層に由来するため強化層を超える傷が入ると直ちに破壊してしまう。またガラスのビッカース硬度は600程度であり、金属、コンクリート等との接触により容易に傷が付き、使用に伴う加傷により強度が著しく低下することが問題であった。
【0004】
セラミックスは耐熱性、耐摩耗性、耐食性に優れていることから、産業部材用途に広く使用されている。とりわけジルコニア質焼結体は高強度、高靭性かつ高硬度で耐擦傷性を有しており、更に着色による意匠性の向上が容易であることから、時計部材などへの使用が進んでいる。また、携帯用電子機器等の外装部材への使用も検討されているが、特に携帯電子機器の外装部材の場合、耐衝撃性を向上するためには厚くする必要があるため、部材が重くなり実用的ではなかった。また軽量化のために薄くすると、落下、衝突等の衝撃に対する耐性が十分でなく、容易に割れて使用することが出来なかった。
【0005】
セラミックス部材の耐衝撃性の向上については、繊維強化プラスチックスと接合し砲弾などの飛翔体の貫通を防ぐといった、いわゆる合わせガラスと類似した方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2等)。しかしながら、この手法は飛翔体の貫通を防ぐことを目的としたものであって、衝突によるセラミックスの割れを防ぐことは出来ない。
【0006】
特許文献3には、サファイヤと無機ガラスを接合した時計用カバーガラスが記述されているが、これは時計のカバーガラスの表面に高硬度のサファイヤを配置することで耐擦傷性を向上させることを目的としたものであり、この方法では携帯電子機器用途に要求される高い耐衝撃性は得られない。
【0007】
従って、これまでに厚さ数mm程度のジルコニア質焼結体板において、充分な白色色調を有し、落下、衝突等の衝撃に対する耐われ性を向上させた耐衝撃部材およびその製造方法は存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−162164号公報
【特許文献2】特開2009−264692号公報
【特許文献3】特開平6−242260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
携帯用電子機器の部材としてジルコニアセラミックスを使用する場合、その耐衝撃性を向上するために厚くする必要があり、未だ改良の余地があった。本発明は、耐衝撃性、特に衝撃による耐割れ性を向上させるために、ジルコニア質焼結体と繊維強化プラスチックスとを複合プレートとしたもののうち、特に白色色調に優れた複合プレート及びその製造法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を鑑み、本発明者らは、ジルコニア薄板の鋼球落下における破壊現象を詳細に検討した。その結果、鋼球の落下衝撃によりセラミックス板がたわみ、曲げモーメントが発生し、インパクト面の裏側の面のインパクト点近傍より引張破壊が生じていることを見出した。また、材料の弾性率が小さいものほど衝撃により大きく変形し、長い時間をかけて衝撃を吸収することで、インパクト面の裏側にかかる最大引張応力の絶対値が減少することを見出した。
【0011】
本発明者らは、上記の知見を基に鋭意検討することで、ジルコニア薄板(弾性率200GPa)の裏面に繊維強化プラスチックスを配置し、両者を密着固定することで、衝撃変形能をジルコニア薄板に付与し、最大引張応力の低減を図ると共に、引張応力が発生する裏面を繊維強化プラスチックスとし、専ら圧縮応力が発生するインパクト面をジルコニア薄板とする構造を実現し、ジルコニア薄板の耐衝撃性を向上させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
さらに、当該複合プレートでは、ジルコニア薄板が薄くなると、その透光性により、内部が透け、意匠性が低下した。そこで、ジルコニア薄板と繊維強化プラスチックスとの密着固定を、白色接着剤を用いることにより、意匠性に優れた白色の複合プレートを完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は、ジルコニア質焼結体、繊維強化プラスチックスが積層し、互いに白色接着剤によって密着固定されてなる2mm以下の複合プレートであって、ジルコニア質焼結体と繊維強化プラスチックスとの厚み比率(ジルコニア質焼結体厚み/繊維強化プラスチックス厚み)が0.01〜1であり、且つ、複合プレートの見かけ密度が4.3g/cm以下であり、表面の色調(L*、a*、b*)のうちL*=86〜94、a*=−1〜+1、b*=−1〜+1の複合プレート及びその製造方法に関する。
【0014】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の複合プレートは、ジルコニア質焼結体、繊維強化プラスチックスが積層し、互いに白色接着剤によって密着固定されてなる厚み2mm以下の複合プレートである。軽量のためには好ましくは1.5mm以下である。さらに好ましくは1.0mm以下である。
【0016】
本発明の複合プレートにおける、ジルコニア質焼結体の厚みと繊維強化プラスチックスの厚みの比率(ジルコニア質焼結体厚み/繊維強化プラスチックス厚み)は0.01〜1である。ジルコニア質焼結体の厚みと繊維強化プラスチックスの厚みの比率を0.01〜1とすることで軽量且つ耐擦傷性に優れる耐衝撃性複合プレートとすることが出来る。0.01未満では、十分な耐摩耗性が得られず、1を超えると複合プレートの見かけ密度が増加する。ジルコニア質焼結体の厚みが増加して複合プレートの見かけ密度が増加することを抑制し、耐衝撃強度の低下を抑制できる点、及びジルコニア質焼結体の厚みが薄くなることによる耐擦傷性の低下を抑制できる点で、好ましくは0.1〜0.75、さらに好ましくは0.1〜0.5である。
【0017】
本発明の複合プレートの見かけ密度(ρ(複合プレート))は、ジルコニア質焼結体の真密度(ρ(ジルコニア))と繊維強化プラスチックスの真密度(ρ(繊維強化プラスチックス))から式(1)で与えられる。
【0018】
ρ(複合プレート)=ρ(ジルコニア)×ジルコニア体積分率+ρ(繊維強化プラスチックス)×繊維強化プラスチックス体積分率
=ρ(ジルコニア)×ジルコニア厚み分率+ρ(繊維強化プラスチックス)×繊維強化プラスチックス厚み分率 (1)
本発明の複合プレートの見かけの密度が4.3g/cm以下であれば、外装部材として使用するのに十分な軽量感を得ることが出来る。またガラスを用いないことから安全性に関しても優れている。
【0019】
本発明の複合プレートの、表面の色調(L*、a*、b*)のうちL*=86〜94、a*=−1〜+1、b*=−1〜+1の範囲の白色を呈することにより、耐衝撃性に優れた薄板形状の複合プレートでありながら、外装部材として優れた白色色調を有し、内部が透けることによる装飾的価値を損なうことを防ぐことが出来るセラミックスの複合プレートとすることが出来る。
【0020】
L*値が小さくなると、色調が暗くなり装飾的価値を損なう。a*値、b*値の絶対値が大きくなると、赤味、青味、黄味又は緑味の色目が付いた白色となり、装飾的価値を損なう。
【0021】
本発明の複合プレートにおいて、ジルコニア質焼結体と繊維強化プラスチックスは、白色接着剤によって密着固定されている。ジルコニア質焼結体の光透過による白色低下を抑制するため、白色接着剤としては、エポキシ系熱硬化型接着剤、室温で硬化するアクリル系接着剤、シアノアクリレート接着剤、紫外線硬化レジン等が挙げられ、特にエポキシ系熱硬化型接着剤が好ましい。白色接着剤としては、特に、接着層の剛性の向上及び白色色調の付与のため白色フィラーを含有する白色接着剤が好ましい。白色フィラーとしては、アルミナ、シリカ等が例示できる。
【0022】
本発明の複合プレートにおけるジルコニア質焼結体としては、高強度、耐摩耗性、高靭性を併せ持つイットリア安定化ジルコニアが好ましく、イットリア含有量をジルコニアに対して2〜10mol%とすることにより、高強度、耐摩耗性、高靭性のイットリア安定化ジルコニアとすることができる。より好ましいイットリア含有量は2〜4mol%である。ジルコニア質焼結体は、イットリア以外の安定化剤のものも使用できる。他の安定化剤としては、カルシア、マグネシア、セリア等が例示できる。
【0023】
本発明の複合プレートにおけるジルコニア質焼結体には、さらに白色着色剤を含有させて、意匠製を向上しても良い。このような白色着色剤としては、たとえばアルミナ、シリカ、ムライト、酸化亜鉛、スピネルなどの酸化物を使用することが出来る。
【0024】
本発明の複合プレートにおけるジルコニア質焼結体は、その相対密度が97%以上であることが好ましく、より耐擦傷性を向上させるため、また、残留気孔に基づく焼結体表面の凹凸に起因する鏡面仕上げ時の意匠製低下を抑制するためには98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
【0025】
本発明の複合プレートに用いる繊維強化プラスチックスとしては、ガラス繊維強化プラスチックス、炭素繊維強化プラスチックス、芳香族ポリアミド繊維強化プラスチックス、セルロース繊維強化プラスチックス等を例示することが出来る。工業的な利用が容易な炭素繊維強化プラスチックス又はガラス繊維強化プラスチックスが好ましい。また電波透過性が必要な部材に対しては、ガラス繊維強化プラスチックスが好ましい。
【0026】
繊維強化プラスチックとしては、例えば、不飽和ポリエステルの熱硬化性樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフタレンテレフタレート(PET)等を例示できる。
【0027】
一方、プラスチックスを強化する繊維に関しては、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、セルロース繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、ポリエチレン繊維などが挙げられる。これらの繊維を細かく切断し樹脂に均一にまぶしたり、繊維に方向性を持たせたままプラスチックに浸潤させる方法などが挙げられる。
【0028】
本発明の複合プレートにおける耐衝撃性(耐われ性)は、複合プレートを、アルミ合金の上に厚さ0.1mmの両面テープで接着し、130gの鋼球を任意の高さから、自由落下させるという衝撃試験において、ジルコニア質焼結体にわれが発生する高さ(破壊高さ)が10cm以上、好ましくは15cm以上という高い耐衝撃性値を示すものである。10cm以上の破壊高さとすることで、携帯用電子機器の筐体として使用した場合、落下や衝突などに対する耐衝撃性を得ることが出来る。
【0029】
次に、本発明の複合プレートの製造方法について詳述する。
【0030】
本発明の複合プレートは、例えば、ジルコニア質焼結体からなる薄板と繊維強化プラスチックスとを白色接着剤を用いて300℃以下の温度で接合することで製造できる。接合に用いる白色接着剤としては、例えば、エポキシ系熱硬化型接着剤、室温で硬化するアクリル系接着剤、シアノアクリレート接着剤、紫外線硬化レジン等の白色接着剤を例示することが出来る。ジルコニア質焼結体と繊維強化プラスチックスとの接合強度が高く、耐熱性、耐衝撃性も高いという点で、エポキシ系熱硬化型接着剤を使用することが好ましい。また、接着剤中に白色の無機粒子などのフィラーを添加し、接着層の剛性を向上させるとともに白色色調を向上させることも可能である。無機フィラーとしてはシリカ、アルミナ等が例示できる。
【0031】
本発明の複合プレートに係るジルコニア質焼結体の薄板の作成方法は、一般的なセラミックスの成形方法を用いて作成することが出来る。例えば、プレス法、押し出し法、泥漿鋳込み法、射出成形法、シート成形法が例示でき、この中でもドクターブレードによるシート成型法が好ましい。具体的には、ジルコニア粉末と有機バインダーを混合したスラリーをドクターブレードにより厚さ1mm以下のグリーンシートに成膜し、1300〜1500℃で焼結し、ジルコニア質焼結体を得て、それを繊維強化プラスチックスに接合した後、ジルコニア質焼結体表面を研削・研磨し複合プレートを製造することができる。焼結は、通常の大気焼結の他、真空焼結、ホットプレス、熱間等方圧加圧法(HIP)なども使用することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の複合プレートは、白色色調が高く意匠性を持ち、薄板状で且つ耐衝撃性や耐擦傷性も高いことから、スマートフォン、タブレット型端末、ノートPC、小型音楽プレーヤーなどの携帯用電子機器の筐体部材として使用することが出来る。またタッチパッドなどの入力装置部材としても使用することが出来る。また、軽量且つ薄いため、時計用部材としても好適である。また、高い電波透過性を有するためにアンテナの保護部材等の部材にも使用できる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
【0034】
なお、3YS20Aは、3mol%のイットリアを含むジルコニアに重量比で20%のアルミナを添加した系である。
【0035】
(色差の測定)
本発明品の複合プレートのL*a*b*表色系におけるL*、a*、b*は、分光色彩計(日本電色社製 SD−3000)を用い、基準光源をD65、視野角2度で測定した。
【0036】
(全光線透過率の測定)
本発明品の複合プレートの全光線透過率は、ヘイズメーター(日本電色社製 NHH−5000)を用いて測定した。
【0037】
(衝撃強度測定)
複合プレートの衝撃強度評価は鋼球落下試験を用いて行った。鋼球落下試験は、「ウォッチ用ガラスの寸法、評価方法」規格のISO14368−3に類似した方法を適用した。すなわち、厚さ5mmの平坦なアルミ合金上(50mm×52mm)に厚さ0.1mmの両面テープ(3M製、商品番号「4511−100」)で、実施例又は比較例で得られた複合プレートを固定し、当該複合プレートの中心位置に130gの鋼球を任意の高さから自由落下させ、複合プレートが破壊する高さを測定した。なお、インパクト面については、表面粗さRa(算術平均高さ)=0.02μm以下に鏡面研磨したものを用いた。
【0038】
算術平均高さは、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し平均した値である。
【0039】
(見かけ密度)
見かけ密度の算出は、ジルコニア(3YS20A)の密度を5.47g/cm(相対密度99.3%)、ガラス繊維強化プラスチックスの密度を2.0g/cmとし、ジルコニアとガラス繊維強化樹脂との比率から計算を行った。
【0040】
実施例1
白色ジルコニア粉末(東ソー製、商品名「3YS20A」)を金型プレスによって圧力50MPaで成形した。成形体をさらに圧力200MPaの冷間静水圧プレス(CIP)で成形した。
【0041】
得られた成形体を、大気中、昇温速度100℃/hで1500℃まで昇温し、1500℃で2時間保持して焼結した。得られたジルコニア質焼結体を両面研削、両面研磨し所定の厚みとし、ジルコニア薄板を得た。
【0042】
得られたジルコニア薄板とエポキシ樹脂ベースのガラス繊維強化プラスチックス(日東シンコー製、エポキシ/ガラスクロス積層成型品SL−EC)の各表面をアセトンにより洗浄し、次いで、エポキシ系熱硬化性樹脂(ナガセケムテックス製、商品番号「AW136H」)を接着面に均一に塗布し、複合プレートの上下面に均等に荷重がかかる状態とし、100℃、10分の条件で接着した。得られた複合プレートにおける各層の厚みを表1に示した。
【0043】
得られた複合プレートの評価結果を表1に示す。5cm刻みで鋼球落下試験を行った結果、15cmと高い耐衝撃性を示すことがわかった。
【0044】
色差計により表面の色調(L*、a*、b*)における明度指数L*、クロマティクネス指数a*及びb*の測定を行った。参考例1に比べ高い明度指数L*を示しており、より白色色調の優れた複合プレートが得られている。
【0045】
ヘイズメーターを用いて全光線透過率を測定した。参考例1に比べ低い全光線透過率を示しており、光の透過を妨げ、白色色調が向上していることが示された。
【0046】
参考例1
実施例1と同様な方法で白色ジルコニア質焼結体(3YS20A)を得た。加工による接着剤の剥がれ、ジルコニアのチッピングなど見られず高い加工性であった。ついでジルコニア質焼結体の鏡面研磨面とガラス繊維強化プラスチックスを黒色エポキシ系熱硬化性樹脂(ナガセケムテックス製、商品番号「XN1245SR」)を用いて、複合プレートの上下面に均等に荷重が懸かる状態とし、120℃、30分の条件で接着した。得られた複合プレートをジルコニア、接着剤、繊維強化プラスチックスの全厚みが0.8mmとなるようにセラミックス面を研削、鏡面研磨した。
【0047】
実施例1と同様な方法で5cm刻みで鋼球落下試験を行った結果、25cmと高い耐いつ衝撃性を示すことがわかった。
【0048】
一方、実施例1と同様な方法で表面の色調(L*、a*、b*)における明度指数L*、クロマティクネス指数a*及びb*の測定を行った。実施例1に比べ、明度指数が低く、黒色接着剤の色が透過して白色色調が低下している。
【0049】
比較例1
実施例1と同様な方法で白色ジルコニア質焼結体(3YS20A)を得た。研削・研磨加工を行い1mmの平板状ジルコニア質焼結体を得た。
【0050】
実施例1と同様な方法で5cm刻みで鋼球落下試験を行った結果、5cmと耐衝撃性は低い。
【0051】
実施例1と同様な方法でCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*、クロマティクネス指数a*及びb*の測定を行った。実施例1が、参考例1に比べより白色色調が高く、バルク体のジルコニア(1mm以上の厚みを有するジルコニア質焼結体のみであり複合プレートではない)に近い色調となっていることがわかる。
【0052】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のジルコニア質焼結体と繊維強化プラスチックスとの複合プレートは、白色色調に優れ、軽量でかつ耐衝撃性、耐擦傷性を有するため、携帯用電子機器、時計部材等の小型・薄型部材に好適である。