(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1において、前記溶解工程で得られたスラリーに新品のホウ素吸着剤を添加することにより該スラリーの50℃換算の粘度を200〜1600cPに調整することを特徴とするホウ素吸着剤のリサイクル方法。
請求項1又は2において、前記溶解工程に先立ち、前記劣化したホウ素吸着剤を酸及び/又はアルカリで洗浄する洗浄工程を有することを特徴とするホウ素吸着剤のリサイクル方法。
請求項3において、前記洗浄工程において、前記劣化したホウ素吸着剤をカラムに充填し、該カラムに0.5N以上の酸を2BV以上通液する酸洗浄と、0.5N以上のアルカリを2BV以上通液するアルカリ洗浄のいずれか一方又は双方を行うことを特徴とするホウ素吸着剤のリサイクル方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のホウ素吸着剤による処理は、通常、ホウ素吸着剤を充填したカラムにホウ素含有排水を通液するホウ素吸着工程と、その後、アルカリを通液してホウ素吸着剤に吸着されたホウ素を脱着させてホウ素吸着剤を再生する再生工程とを繰り返すことにより行われるが、処理時間が長く、処理排水量が多くなり、ホウ素吸着剤がこの吸着工程と再生工程を繰り返し受けることにより、ホウ素吸着剤を構成する高分子樹脂が劣化し、微細化ないしは収縮を起こす。
【0006】
このように高分子樹脂が劣化して微細化ないしは収縮したホウ素吸着剤(以下「劣化吸着剤」と称す場合がある。)は、処理時の通液差圧上昇の原因となるため、従来、劣化吸着剤は、カラムから漉き取り、廃棄処分されていた。
【0007】
本発明は、このように、従来、廃棄されている劣化吸着剤を回収して有効に再利用するホウ素吸着剤のリサイクル方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
使用により劣化したホウ素吸着剤は、主として高分子樹脂が劣化することにより微細化ないしは収縮したものであり、ホウ素吸着成分である希土類元素水酸化物については殆ど劣化していない。
本発明者らは、この劣化していない希土類元素水酸化物を有効再利用するべく鋭意検討を重ねた結果、劣化吸着剤を有機溶媒に溶解させて所定の粘度のスラリーとし、これを造粒することで、ホウ素吸着剤として再利用可能な形態に復元することができること、更には、有機溶媒への溶解に先立ち薬品による洗浄を行うことで、スラリー粘度の調整を容易とすると共に、ホウ素吸着性能を回復させて再生することができることを見出した。
【0009】
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0010】
[1]
バインダーとしての高分子樹脂と、ホウ素吸着成分である希土類元素水酸化物との混合物よりなるホウ素吸着剤中に含まれる
該高分子樹脂が劣化したホウ素吸着剤をリサイクルする方法であって、該
高分子樹脂が劣化したホウ素吸着剤を有機溶媒と混合して該ホウ素吸着剤中の高分子樹脂が溶解したスラリーを得る溶解工程と、該溶解工程で得られたスラリーを造粒する造粒工程とを有し、該造粒
工程に供するスラリーの50℃換算の粘度が200〜1600cPであることを特徴とするホウ素吸着剤のリサイクル方法。
【0011】
[2] [1]において、前記溶解工程で得られたスラリーに新品のホウ素吸着剤を添加することにより該スラリーの50℃換算の粘度を200〜1600cPに調整することを特徴とするホウ素吸着剤のリサイクル方法。
【0012】
[3] [1]又は[2]において、前記溶解工程に先立ち、前記劣化したホウ素吸着剤を酸及び/又はアルカリで洗浄する洗浄工程を有することを特徴とするホウ素吸着剤のリサイクル方法。
【0013】
[4] [3]において、前記洗浄工程において、前記劣化したホウ素吸着剤をカラムに充填し、該カラムに0.5N以上の酸を2BV以上通液する酸洗浄と、0.5N以上のアルカリを2BV以上通液するアルカリ洗浄のいずれか一方又は双方を行うことを特徴とするホウ素吸着剤のリサイクル方法。
【0014】
[5] [3]又は[4]において、前記洗浄工程で洗浄したホウ素吸着剤を、65℃未満の温度で乾燥させる乾燥工程を有し、該乾燥
工程後のホウ素吸着剤が前記溶解工程に供されることを特徴とするホウ素吸着剤のリサイクル方法。
【0015】
[6] [1]ないし[5]のいずれかにおいて、前記ホウ素吸着剤が高分子樹脂と希土類元素水酸化物とを含むことを特徴とするホウ素吸着剤のリサイクル方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、長期使用により劣化したホウ素吸着剤を、有機溶媒に溶解させて得られたスラリーを造粒するという簡便な操作で再利用可能な形態に復元することができ、更には、特定の薬品洗浄を行うことで、スラリーの粘度調整を容易に行うと共に、ホウ素吸着性能を回復させて再生することができ、劣化吸着剤をホウ素吸着剤として有効に再利用することが可能となる。
本発明によれば、従来、廃棄されていた劣化吸着剤を回収して再利用することができるため、有価物の回収再利用による資源の有効利用、吸着剤コストの低減、廃棄物の減量を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明のホウ素吸着剤のリサイクル方法の実施の形態を詳細に説明する。
以下において、使用することにより劣化したホウ素吸着剤を「劣化吸着剤」と称し、この劣化吸着剤を本発明の方法に従って造粒して得られる造粒体を「再生吸着剤」と称す場合がある。
【0018】
[ホウ素吸着剤]
まず、本発明で処理対象となるホウ素吸着剤について説明する。
このホウ素吸着剤は、高分子樹脂とホウ素吸着成分である希土類元素水酸化物との混合物よりなる。
【0019】
高分子樹脂としては、高耐熱性で水不溶性の高分子樹脂が好ましく、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂等のフッ素系樹脂、ポリビニル系樹脂、アルギン酸塩等の天然高分子及びこれらの誘導体が挙げられる。
これらのなかでも、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン6フッ化プロピレン共重合樹脂は、希土類元素水酸化物を高濃度に含有させ易く、水不溶性、耐薬品性にも優れる点において好ましい。
これらの高分子樹脂の数平均分子量は通常500以上、好ましくは2000以上である。
ホウ素吸着剤中には、これらの高分子樹脂の1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0020】
一方、希土類元素水酸化物とは、周期表第3族の希土類元素の水酸化物であって、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド元素である、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、カドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)の水酸化物である。
これらのうち、セリウム、特に4価のセリウムの水酸化物を好適に用いることができる。
ホウ素吸着剤中にはこれらの希土類元素水酸化物の1種のみ含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
例えば、水酸化セリウムと水酸化イットリウムの併用も好ましく、その場合、水酸化イットリウムは、水酸化セリウムに対して5重量%以下の量で併用することが好ましい。
【0021】
ホウ素吸着剤は、上記の高分子樹脂100重量部に対して希土類元素水酸化物を600重量部以上含むことが好ましい。希土類元素水酸化物の含有量が少ないと十分なホウ素吸着性能を得ることができない。
ホウ素吸着性能の面から希土類元素水酸化物の含有量は多い程有利であるが、希土類元素水酸化物の含有量が多過ぎると、バインダーとしての高分子樹脂量が不足するため、希土類元素水酸化物は高分子樹脂100重量部に対して5000重量部以下、特に1000重量部以下、とりわけ800重量部以下であることが好ましい。
【0022】
ホウ素吸着剤の形状や大きさには特に制限はなく、例えば、形状については、粒状であってもよく、カラムに充填した際に、ホウ素含有排水が支障なく通過できる形状であれば網状成形体等の成形体であってもよい。
球状ないしは楕円体状の粒状体の場合、その平均粒径は0.2〜5.0mm程度であることが好ましい。ホウ素吸着剤の平均粒径が0.2mm未満では、カラム充填密度が高くなって通液抵抗が高くなり、作業性が劣る傾向がある。一方、平均粒径が5.0mmを超えると、ホウ素含有排水とホウ素吸着剤との単位時間当たりの接触面積が少なくなり、結果としてホウ素吸着効率が低下するおそれがある。
【0023】
[溶解工程]
本発明においては、使用により劣化したホウ素吸着剤(劣化吸着剤)を有機溶媒に溶解させて、50℃換算の粘度(以下、本明細書において、「50℃換算の粘度」を単に「粘度」と称す。)が200〜1600cPのスラリーとし、このスラリーを後述の造粒工程に供する。
【0024】
造粒工程に供するスラリーの粘度が200cPより低くても1600cPを超えても、ホウ素吸着剤として再利用可能な良好な形状に造粒することは困難である。
【0025】
劣化吸着剤の溶解に用いる有機溶媒としては、劣化吸着剤に含まれる高分子樹脂の良溶媒であればよく、例えば、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドンなどを用いることができる。これらの有機溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
劣化吸着剤を有機溶媒に溶解させるには、例えば、劣化吸着剤を有機溶媒に添加して撹拌混合すればよい。その際の有機溶媒の使用量は、予め予備実験を行って、粘度200〜1600cPのスラリーが調製できるような量として用いてもよく、この粘度範囲よりも高粘度となる量の有機溶媒を用いて、高粘度のスラリーを調製し、このスラリーに更に有機溶媒を追加添加して粘度200〜1600cPのスラリーを調製してもよい。
【0027】
劣化吸着剤を有機溶媒に溶解させる際には、有機溶媒を加温してもよく、有機溶媒を加温することにより、有機溶媒への高分子樹脂の溶解を促進することができ、短時間で溶解工程を行うことが可能となる。この場合、有機溶媒の温度は、溶解効率と作業上の安全性等の面から50〜70℃程度とすることが好ましい。
【0028】
溶解工程では、劣化吸着剤と有機溶媒とを混合して劣化吸着剤中の高分子樹脂を溶解させ、高分子樹脂の不溶分が確認されず、希土類元素水酸化物紛体が分散した均一なスラリーが得られたら、溶解操作を終了する。
【0029】
なお、劣化吸着剤中の高分子樹脂が単に物理的に劣化して微細化ないしは収縮しただけではなく、化学的にも劣化して組成変化ないしは分子量低下といった変性を起こしている場合、このような劣化吸着剤を単に有機溶媒に溶解させても、造粒により、ホウ素吸着剤としての使用に耐え得る十分な強度を有する再生吸着剤を得ることができない場合がある。
この場合には、補強のために、劣化していない高分子樹脂の追加添加が必要となり、高分子樹脂の添加で多くの場合、スラリーの粘度が1600cPを超えてしまう。
そこで、このような場合には、高分子樹脂を添加するのではなく、新品のホウ素吸着剤(劣化していないホウ素吸着剤)或いは、新品の高分子樹脂(劣化していない高分子樹脂)と希土類元素水酸化物を、劣化吸着剤と共に所定の割合で有機溶媒に添加混合することが好ましく、このようにすることにより、得られる再生吸着剤の強度を高めると共に希土類元素水酸化物含有量を確保した上で、スラリー粘度を200〜1600cPに調整することが可能となる。
【0030】
また、塩類濃度の高いホウ素含有排水等の処理に使用され、排水由来の塩類等の不純物が吸着ないしは付着している劣化吸着剤を、そのまま有機溶媒に溶解させると、不純物の影響でスラリー粘度が1600cPを超えてしまう場合がある。有機溶媒の添加量を増やすことで、スラリー粘度を低下させることができるが、有機溶媒量を増加させるとスラリー中の希土類元素水酸化物の含有割合が少なくなり、性能維持の面で好ましくない。
従って、このような場合には、溶解工程に先立ち、以下に記載する薬品による洗浄工程を行って、劣化吸着剤に吸着ないし付着している不純物を予め除去することが好ましく、このような洗浄工程を行うことで、得られる再生吸着剤のホウ素吸着性能も高めることができる。
【0031】
このような洗浄を行う場合であっても洗浄を行わない場合であっても、溶解工程に供する劣化吸着剤は水分量が十分に低減されているものであることが好ましい。これは、劣化吸着剤中の水分量が多いと、有機溶媒がこの水分で希釈されて劣化吸着剤中の高分子樹脂が溶解し難くなるためである。従って、溶解工程に供する劣化吸着剤は必要に応じて、後述の乾燥工程で十分に水分量を減少させておくことが好ましい。
【0032】
[洗浄工程]
溶解工程に先立つ洗浄工程では、酸及び/又はアルカリ、好ましくは酸及びアルカリで劣化吸着剤を洗浄する。酸及びアルカリにより洗浄を行う場合、いずれを先に行ってもよいが、Ca等のスケール成分除去の観点で酸洗浄を先に行い、酸洗浄後にアルカリ洗浄を行うことが好ましい。酸洗浄とアルカリ洗浄は、それぞれ2回以上行うことも可能である。
【0033】
酸洗浄に用いる酸としては、塩酸(HCl)、硫酸(H
2SO
4)等の無機酸を用いることができ、その濃度としては0.5N以上、特に2〜5Nであることが好ましい。酸濃度が0.5Nより低いと、洗浄による十分な不純物除去効果を得ることができず、例えば、以下の通液洗浄の場合、通液量を増やしても洗浄効果が得られない場合がある。酸濃度が5Nより高くても、2Nの場合と洗浄効果に大差はなく、薬品コストの面で好ましくない。
【0034】
アルカリ洗浄に用いるアルカリとしては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ金属水酸化物を用いることができ、その濃度としては0.5N以上、特に2〜5Nであることが好ましい。アルカリ濃度が0.5Nより低いと洗浄による十分な不純物除去効果を得ることができず、例えば、以下の通液洗浄の場合、通液量を増やしても洗浄効果が得られない場合がある。アルカリ濃度が5Nより高くても、2Nの場合と洗浄効果に大差はなく、薬品コストの面で好ましくない。
【0035】
薬品洗浄は、劣化吸着剤を充填したカラムに酸又はアルカリを通液して行うことが好ましく、この場合、十分な洗浄効果を得る上で、酸、アルカリの通液量は、それぞれ2BV以上であることが好ましい。ただし、酸、アルカリの通液量を過度に多くしても、洗浄効果は頭打ちとなるため、通常その通液量の上限はそれぞれ3BV以下である。
【0036】
上記の薬品洗浄後に、水洗を行うことが好ましく、例えば、劣化吸着剤を充填したカラムに純水を3〜5BV程度通水して水洗することが好ましい。
【0037】
なお、上記の通液洗浄は、上向流で行っても下向流で行ってもよい。
【0038】
[乾燥工程]
劣化吸着剤、或いは上記薬品洗浄後の劣化吸着剤を溶解工程に先立ち乾燥する場合、乾燥方法としては、減圧乾燥、加熱乾燥等各種の方法を採用することができるが、簡易な操作で短時間で乾燥することができることから、加熱乾燥が好ましい。加熱により乾燥を行う場合、加熱温度が高い方が乾燥効率の面で好ましいが、乾燥温度が高く65℃以上となると、高分子樹脂の熱劣化等で有機溶媒への溶解時に粘度が上昇する傾向がある。このため、乾燥温度は65℃未満、例えば45〜55℃とすることが好ましい。
【0039】
[造粒工程]
前記の溶解工程で得られた粘度200〜1600cPのスラリーを造粒して再生吸着剤を得る。
【0040】
スラリーの造粒方法としては特に制限はないが、水中造粒が望ましい。
【0041】
造粒により得られる再生吸着剤の形状としては、ホウ素吸着剤としての使用において、例えばカラムに充填してホウ素含有排水を通液する際に支障なく通液することができるような形状であればよく、特に制限はないが、一般的には、楕円体状ないしは球状のほぼ均一な粒状体であることが好ましく、その平均粒径としては、前述の新品のホウ素吸着剤と同様の理由から0.2〜5.0mmであることが好ましい。
【0042】
上記の造粒により得られた再生吸着剤は、ホウ素含有排水の処理に有効に再利用することができる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例、比較例及び参考例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
なお、以下の実施例、比較例及び参考例において、再生処理に供した劣化吸着剤は、特開2004−330012の実施例1に記載の方法で製作した新品のホウ素吸着剤(ポリフッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン共重合樹脂(以下「原料ポリマー」と称す。)100重量部に、水酸化セリウム700重量部を含む、平均粒径0.70mmの球状の粒状体)を充填した吸着塔に、石炭焚き脱硫排水を約2年間通液することにより劣化させたものである。
この劣化吸着剤は、原料ポリマーの微細化、収縮により吸着塔において差圧上昇の傾向を示していた。
また、スラリーの造粒は、水中造粒により行い、でき上った造粒体が糸引きがなく、楕円体状ないし球状の粒状造粒体となる場合を、造粒体形状良好(○)と評価した。
【0045】
また、再生処理により得られた造粒体(再生吸着剤)の吸着性能の評価は以下の方法により行った。
[吸着性能の評価方法]
再生処理により得られた造粒体に対し、アルカリ液による賦活処理を行った後、以下の評価を行った。
純水にH
3BO
3(試薬1級)を溶解させて初期ホウ素濃度(B濃度)200mg/Lにした試験液を調製し、アルカリ(NaOH)を添加してpH8.5に調整した。
この試験液1L中に、賦活させた造粒体25mLを投入し、pHが8.5±0.1の範囲になるよう酸(HCl)又はアルカリ(NaOH)で調整しながら90時間攪拌を行った。その後、上澄液中のホウ素濃度(上澄液B濃度)を測定し、この測定値から、造粒体(再生吸着剤)単位重量当たりのホウ素吸着量(以下、単に「B吸着量」と記載する。)を算出した。
【0046】
[実施例1]
直径80mmのアクリル製カラムに劣化吸着剤500mLを充填し、2NのHCl水溶液2BVと2NのNaOH水溶液2BVを順次通液して洗浄し、次いで、純水3BVを通水して水洗した後、カラムより抜き出して50℃に設定した熱風乾燥機中で恒量になるまで乾燥処理を行った。
65℃に加温したジメチルスルホキシド240mLに、上記の乾燥後の吸着剤300gを添加して撹拌混合して溶解させたところ、スラリーの粘度が13,055cPとなった。
そこで、スラリー粘度が1,600cP以下になるようにジメチルスルホキシドを60mL追加添加し、得られた粘度1,581cPのスラリーを平均粒径が0.7mmになるよう造粒したところ、楕円体状ないし球状の粒状造粒体が得られた。
この造粒体の吸着剤としての評価結果を再生処理条件と共に、表1に示した。
【0047】
[実施例2]
直径80mmのアクリル製カラムに劣化吸着剤500mLを充填し、0.5NのHCl水溶液2BVと0.5NのNaOH水溶液2BVを順次通液して洗浄し、次いで、純水3BVを通水して水洗した後、カラムより抜き出して50℃に設定した熱風乾燥機中で恒量になるまで乾燥処理を行った。
65℃に加温したジメチルスルホキシド240mLに、上記の乾燥後の吸着剤300gを添加して撹拌混合して溶解させたところ、スラリーの粘度が14,015cPとなった。
そこで、スラリー粘度が1,600cP以下になるようにジメチルスルホキシドを60mL追加添加し、得られた粘度1,222cPのスラリーを平均粒径が0.7mmになるよう造粒したところ、楕円体状ないし球状の粒状造粒体が得られた。
この造粒体の吸着剤としての評価結果を再生処理条件と共に、表1に示した。
【0048】
[実施例3]
実施例1と同様にして劣化吸着剤の酸洗浄、アルカリ洗浄、水洗及び乾燥処理を行った。
得られた乾燥後の吸着剤150gを、原料ポリマーと水酸化セリウム粉末を新品のホウ素吸着剤と同配合で混合したもの150gと共に、65℃に加温したジメチルスルホキシド240mLに添加して撹拌混合して溶解させたところ、スラリーの粘度が1,900cPとなった。
そこで、スラリー粘度が1,600cP以下になるようジメチルスルホキシドを15mL追加添加し、得られた粘度1,597cPのスラリーを平均粒径が0.7mmになるよう造粒したところ、楕円体状ないし球状の粒状造粒体が得られた。
この造粒体の吸着剤としての評価結果を再生処理条件と共に、表1に示した。
【0049】
[実施例4]
直径80mmのアクリル製カラムに劣化吸着剤500mLを充填し、0.3NのHCl水溶液0.3BVと2NのNaOH水溶液2BVを順次通液して洗浄し、次いで、純水3BVを通水して水洗した後、カラムより抜き出して50℃に設定した熱風乾燥機中で恒量になるまで乾燥処理を行った。
65℃に加温したジメチルスルホキシド240mLに、上記の乾燥後の吸着剤300gを添加して撹拌混合して溶解させたところ、スラリーの粘度が32,440cPとなった。
そこで、スラリー粘度が1,600cP以下になるようにジメチルスルホキシドを120mL追加添加し、得られた粘度1,410cPのスラリーを平均粒径が0.7mmになるよう造粒したところ、楕円体状ないし球状の粒状造粒体が得られた。
この造粒体の吸着剤としての評価結果を再生処理条件と共に、表1に示した。
【0050】
[実施例5]
実施例1と同様にして劣化吸着剤の酸洗浄、アルカリ洗浄及び水洗を行った吸着剤を、65℃に設定した熱風乾燥機中で恒量になるまで乾燥処理を行った。
65℃に加温したジメチルスルホキシド240mLに、上記の乾燥後の吸着剤300gを添加して撹拌混合して溶解させたところ、スラリーの粘度が45,390cPとなった。
そこで、スラリー粘度が1,600cP以下になるようにジメチルスルホキシドを150mL追加添加し、得られた粘度1,505cPのスラリーを平均粒径が0.7mmになるよう造粒したところ、楕円体状ないし球状の粒状造粒体が得られた。
この造粒体の吸着剤としての評価結果を再生処理条件と共に、表1に示した。
【0051】
[参考例1]
前記の新品のホウ素吸着剤について、前述の吸着性能の評価を行って結果を表1に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
表1より、予め酸洗浄とアルカリ洗浄を行った後乾燥処理した劣化吸着剤を有機溶媒で所定の粘度にスラリー化したものを造粒することにより、劣化吸着剤を再生することができ、特に、0.5N以上の酸と0.5N以上のアルカリを用い、また65℃未満の温度で乾燥することにより劣化吸着剤の吸着性能を十分に回復させることができることが分かる。
【0054】
[実施例6、比較例1,2]
実施例1と同様にして劣化吸着剤の酸洗浄、アルカリ洗浄及び水洗を行った吸着剤を、65℃に設定した熱風乾燥機中で恒量になるまで乾燥処理を行った。
得られた乾燥後の吸着剤を、65℃に加温したジメチルスルホキシドに所定の割合で添加して撹拌混合することにより、粘度が2,590cP(比較例1)、1,650cP(比較例2)、1,597cP(実施例6)と、粘度の異なる3種類のスラリーを得た。
粘度2,950cPの比較例1のスラリーを造粒したところ、造粒体が糸を引いた状態となり長い楕円体形の形状となった。
また、粘度1,650cPの比較例2のスラリーの造粒を行ったところ、やはり糸を引いた状態のものが確認された。
これに対して、粘度1,597cPの実施例6のスラリーの造粒を行ったところ、糸引きした造粒体は見られず、楕円体状ないし球状の粒状造粒体を得ることができた。
この結果から、スラリーの粘度が1,600cP以下であると良好な造粒体が得られることが分かる。