(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
二環式アミン化合物は、例えば、医農薬中間体、有機合成用触媒、化学吸着剤、抗菌剤等に有用な化合物として知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
二環式アミン化合物の製造方法として、特許文献1では、エステル基を置換基に有する二環式アミン化合物を合成した後、エステル基を還元することにより誘導している。
【0004】
しかしながら、この製造方法は、還元剤として発火の危険性が高い水素化リチウムアルミニウムを使用するため、工業的なスケールアップ製造上好ましいと言えない。また高価な反応基質を使用することから実用的とは言えない状況にある。
【0005】
このため、本件出願人は、一段階で目的物が得られる上、過度な高圧反応が不要な簡便且つ安全な製造方法として、下記式
【0006】
【化1】
(上記式中、Rは水素原子又は直鎖状若しくは分枝状の炭素数1〜4のアルキル基、nは0〜6の整数を表す。)
で示されるジヒドロキシアルキルピペラジン類を、酸触媒の存在下で分子内脱水縮合反応させて、二環式アミン化合物を製造する方法について既に特許出願している(特許文献2参照)。
【0007】
特許文献2に記載の方法は、多段階の反応が不要であり、発火の危険性が高い還元剤を用いることなく、簡便且つ安全に二環式アミン化合物を製造することができるという優れた方法ではあるが、転化率が十分でないために未反応原料の回収工程が必要になることや、この製造方法における酸触媒を気相反応に適用すると、十分な収率が得られない上に反応副生物がタール状となって析出し、反応管を閉塞させる場合があるため、工業的に連続生産する上で未だ改善すべき問題があった。
【0008】
このため本件出願人は、二環式アミン化合物を簡便に且つ高収率で得ることができ、また連続生産の支障となる副生タール分が抑制できる製造方法として、下記式
【0009】
【化2】
(上記式中、R
1〜R
8は各々独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、Xは炭素原子又は窒素原子を表し、Yは水素原子、アルキル基、水酸基、又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を表す。)
で示される化合物を、固体触媒として下記式
【0010】
【化3】
[上記式中、AはSi、Al、Mg、Ti及びZrからなる群より選ばれる1種又は2種以上の元素を表し、Mはアルカリ金属元素又はアルカリ土類金属元素を表し、Pはリンを表し、Oは酸素を表す。添字a〜dは各元素のモル数を表し、b/a=0.001〜0.3(モル比)、c/a=0.001〜0.3(モル比)であって、dは各原子の結合状態によって任意に取り得る値を表す。ただし、Aが2種以上の元素を表す場合には、添字aはそのモル数が最も大きい元素のモル数を表す。]
で示される無機酸化物の存在下、気相中で分子内脱水させて、二環式アミン化合物を製造する方法について、既に特許出願している(特許文献3参照)。
【0011】
特許文献3には、気相反応による製造方法が示されており、特定の固体触媒を使用することにより、副生タール分が低減できることが記載されている。しかしながら、触媒のコーキングについて検討がなされておらず、また長期の運転評価も約1週間程度の実施に留まっているため、工業的に連続生産する上では未だ改善すべき問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、二環式アミン化合物を工業的に連続的かつ安定的に製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、反応を行う溶媒中に溶存している酸素が、原料であるジヒドロキシアルキル基含有環状アミン化合物の酸化劣化を促進し、反応選択性を低下させていることを突き止め、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下に示すとおりの二環式アミン化合物の製造方法である。
【0015】
[1]下記式(1)
【0016】
【化4】
(式中、R
1〜R
10は各々独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、又は水酸基を表し、R
9、R
10のいずれか一方は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基である。Xは炭素原子又は窒素原子を表す。)
で示されるジヒドロキシアルキル基含有環状アミン化合物を、固体触媒存在下、気相中で、分子内脱水させて、下記式(2)
【0017】
【化5】
(式中、R
1〜R
10及びXは前記に同じ定義である。)
で表される二環式アミン化合物を製造する際に、当該ジヒドロキシアルキル基含有環状アミン化合物を含み、かつ溶存酸素濃度が3mg−O
2/L以下である原料液を用いることを特徴とする二環式アミン化合物の製造方法。
【0018】
[2]一般式(1)で示されるジヒドロキシアルキル基含有環状アミン化合物を含む原料液に対し、不活性ガスを用いた置換操作(パージング)を行い、溶存酸素濃度を3mg−O
2/L以下にすることを特徴とする上記[1]に記載の二環式アミン化合物の製造方法。
【0019】
[3]置換操作が、不活性ガスを用いたバブリング法であることを特徴とする上記[2]に記載の二環式アミン化合物の製造方法。
【0020】
[4]置換操作が、不活性ガスを用いたストリッピング法であることを特徴とする上記[2]に記載の二環式アミン化合物の製造方法。
【0021】
[5]不活性ガスが、窒素ガスであることを特徴とする上記[2]乃至[4]に記載の二環式アミン化合物の製造方法。
【0022】
[6]一般式(1)及び(2)において、R
1〜R
10が各々独立して、水素原子、メチル基又はヒドロキシメチル基であり、かつR
9、R
10のいずれか一方がヒドロキシメチル基であることを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の二環式アミン化合物の製造方法。
【0023】
[7]一般式(1)及び(2)において、R
1〜R
8が、水素原子であることを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の二環式アミン化合物の製造方法。
【0024】
[8]一般式(1)及び(2)において、Xが、窒素原子であることを特徴とする上記[1]乃至[7]のいずれかに記載の二環式アミン化合物の製造方法。
【0025】
[9]固体触媒が、酸成分、塩基成分、又はそれらの両方を担体に担持させた触媒であることを特徴とする上記[1]乃至[8]のいずれかに記載の二環式アミン化合物の製造方法。
【0026】
[10]上記酸成分が無機酸であり、かつ塩基成分がアルカリ金属又はアルカリ土類金属であることを特徴とする上記[1]乃至[9]のいずれかに記載の二環式アミン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明の製造方法によれば、従来に比べ高い収率でかつ再現性よく二環式アミン化合物を工業的に連続的かつ安定的に製造することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、上記式(1)で示されるジヒドロキシアルキル基含有環状アミン化合物を、固体触媒存在下、気相中で、分子内脱水させて、上記式(2)で表される二環式アミン化合物を製造する際に、当該ジヒドロキシアルキル基含有環状アミン化合物を含み、かつ溶存酸素濃度が3mg−O
2/L以下である原料液を用いることをその特徴とする。原料液中の溶存酸素濃度は2mg−O
2/L以下であることがより好ましい。
【0031】
ここで、単位「mg−O
2/L」は、原料液1L中に溶存する酸素の量(mg)を意味する。
【0032】
この原料液としては、上記式(1)で示される化合物を含んでいればよく、その他の溶剤を特に必要とするものではないが、分子間反応を抑制すると言う観点からは、その他の溶剤を含むことが好ましい。
【0033】
ここで、溶剤としては、上記式(1)で示される化合物を溶解させるものであれば、特に限定するものではないが、例えば、水、アルコール(具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等)、n−ヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。溶剤との相溶性や反応性の観点から、水が特に好ましい。
【0034】
本発明において、上記式(1)で示される化合物を含む原料液中の溶存酸素濃度を3mg−O
2/L以下、好ましくは2mg−O
2/L以下にする方法としては、特に限定するものではないが、例えば、不活性ガスを用いた置換操作(パージング)が挙げられ、具体的には、下記(ア)〜(エ)に示す方法等によって行われる。
【0035】
(ア)上記式(1)で示される化合物を含む原料液に対し、不活性ガスによりバブリングすることで原料液中の溶存酸素を追い出す(バブリング法)。気液接触の効率性の観点から、プロセス配管中にストリッパーを設置し、不活性ガスを同伴させることで溶存酸素を低減することが望ましい(ストリッピング法)。
【0036】
(イ)上記式(1)で示される化合物を含む原料液を、密閉容器内で不活性ガスを加圧充填した後、密閉容器内の圧力を下げることで原料液中の酸素分圧を低くして原料液中の酸素を追い出す。
【0037】
(ウ)上記式(1)で示される化合物を含む原料液に対し、減圧脱気することにより溶存酸素を追い出す。この減圧脱気において、超音波装置等を併用する事は、溶存酸素の低減効果から鑑みて好ましい。
【0038】
(エ)上記式(1)で示される化合物を含む原料液を一度加熱沸騰させた後、不活性ガス雰囲気下で冷却することで原料液中の溶存酸素中を追い出す。
【0039】
上記(ア)〜(エ)の方法のうち、生産効率が良く、設備への負荷が少ない等の点で、上記(ア)及び(イ)の方法が好ましい。
【0040】
上記(ア)の方法は、不活性ガスを原料タンク又は配管内で、原料液中に直接同伴させることで原料液中に溶存している酸素を低減するものである。温度や量等の条件によって変化するため、同伴させる不活性ガスの量としては、特に限定するものではないが、溶存酸素量に対し、2〜5倍、好ましくは2〜3倍の不活性ガス量を同伴させる。この同伴量が多いほど溶存酸素濃度が低くなるが、5倍量を超えると溶存酸素濃度があまり低下しなくなり効率が悪くなる。
【0041】
上記(イ)の方法では、不活性ガスを加圧充填した密閉容器内の圧力を下げた後、この容器を密閉して不活性ガスを加圧充填するという工程を、好ましくは2〜10回、さらに好ましくは2〜5回繰り返す。この工程の繰り返し回数が多いほど溶存酸素濃度が低くなるが、10回を超えると溶存酸素濃度があまり低下しなくなり効率が悪くなる。
【0042】
ここで、不活性ガスとしては、原料等へ影響を与えなければ、特に限定するものではないが、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素等が挙げられる。特に窒素ガスが操作性、生産性の点から好ましい。
【0043】
本発明において、原料液中の溶存酸素濃度は、例えば、市販の溶存酸素計を用いることで、容易に測定することができる。
【0044】
上記式(1)及び(2)において、R
1〜R
10は上記の定義に該当すればよく、特に限定するものではないが、例えば、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基(すなわち、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基)、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基(すなわち、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基)、水酸基等を挙げることができる。好ましくは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基である。これらのうち、R
1〜R
8の全てが水素原子であることがより好ましい。
【0045】
上記式(1)で示される化合物としては、特に限定するものではないが、Xが炭素原子である場合の好ましい化合物として、例えば、以下の化合物(例示化合物番号3−1及び3−2)を挙げることができる。
【0046】
【化6】
また、上記式(2)で示される二環式アミン化合物としては、特に限定するものではないが、Xが炭素原子である場合の好ましい化合物として、例えば、以下の化合物(例示化合物番号4−1及び4−2)を挙げることができる。
【0047】
【化7】
上記式(1)で示されるヒドロキシル基含有環状アミン化合物のXが窒素原子である場合の好ましい化合物としては、例えば、以下の化合物(例示化合物番号5−1〜6)を挙げることができる。
【0048】
【化8】
また、上記式(2)で示される二環式アミン化合物としては、特に限定するものではないが、Xが窒素原子である場合の好ましい化合物として、例えば、以下の化合物(例示化合物番号6−1〜7)を挙げることができる。
【0049】
【化9】
また、上記式(1)又は(2)で示される化合物のより好ましい態様としては、Xが窒素原子である、ピペラジン誘導体の場合、上記式(1)で示される化合物を含む原料液中の溶存酸素濃度を低減させたときの効果が大きい。
【0050】
次に、固体触媒を用いる、上記式(1)で示される化合物の分子内脱水反応について説明する。
【0051】
本発明において、固体触媒としては、特に限定するものではないが、酸成分、塩基成分、又はそれらの両方を担体に担持させた触媒であることがより好ましい。
【0052】
固体触媒の担体としては、例えば、無機酸化物が用いられる。無機酸化物としては、特に限定するものではないが、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、アルミノシリケート、ゼオライト、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらの中では、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、ハイシリカゼオライトが好ましい。さらに酸化ケイ素としては、非晶質の乾式シリカ又は多孔質シリカが特に好ましい。
【0053】
また別の担体として、例えば、金属リン酸塩も使用できる。金属リン酸塩としては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸等の金属塩が挙げられる。リン酸と塩を形成する金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、パラジウム、銀、スズ、鉛等が挙げられる。より好ましくは、リン酸アルミニウム塩である。
【0054】
この担体に、酸成分、塩基成分、又はその両方を担持させることにより、好適な固体触媒を調製することができる。塩基成分単独、又は酸成分と塩基成分を併用することがさらに好ましい。
【0055】
酸成分としては、無機酸を使用することが好ましい。無機酸としては、特に限定するものではないが、例えば、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ホスフィンオキサイド、各種リン酸塩やスルホン酸等が好適なものとして挙げられる。
【0056】
塩基成分としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属元素を含有することが好ましい。アルカリ金属又はアルカリ土類金属元素としては、特に限定するものではないが、例えば、Na,K,Rb,Cs,Ca,Sr,Ba等が挙げられる。目的物を高収率で得るためには、Cs又はRbを含有することが特に好ましい。
【0057】
このような塩基成分の原料としては、特に限定するものではないが、例えば、それらの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩等が挙げられる。これらの中では硝酸塩、炭酸塩が好ましい。
【0058】
本発明において、固体触媒の調製方法は、特に限定するもののではないが、例えば、一般的に行われる調製法が利用できる。具体的には、上記した固体触媒の原料(例えば、触媒担体、酸成分の原料、塩基成分の原料等)を水中に溶解又は懸濁させて、攪拌、加熱、濃縮、乾燥等の工程後、成型し、更に焼成を経て固体触媒とする方法等が例示される。
【0059】
固体触媒の焼成温度としては、特に限定するものではないが、通常300〜1,100℃の範囲であり、好ましくは400〜700℃の範囲である。この範囲とすることで、固体触媒の酸塩基強度や比表面積等の物性を向上させ、触媒活性、選択率をより高めることができる。
【0060】
また、固体触媒の焼成は、特に限定されるものではないが、空気又は窒素雰囲気下で行えばよい。
【0061】
本発明において、分子内脱水反応は気相中で行われるが、好ましくは固定床流通式で行われる。
【実施例】
【0062】
本発明を以下の参考例、実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0063】
なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
【0064】
[溶存酸素]
溶存酸素計:マザーツール社製DO−5509。
【0065】
[元素分析]
元素分析計:パーキンエルマー全自動元素分析装置 2400II,
酸素フラスコ燃焼−IC測定法:東ソー製 イオンクロマトグラフ IC−2001。
【0066】
[NMR測定]
NMR測定装置:VARIAN Gemini−200。
【0067】
[定量分析]
質量分析装置:日本電子社製 JMS−K9,
測定方法:GC−MS分析。
【0068】
[重量分析]
マッフル炉:ヤマト科学社製 FO810,
示差熱・熱重量測定装置:セイコーインスツル社製 EXSTAR TG/DTA6000。
【0069】
参考例1(気相反応用触媒−1の調製).
触媒担体として、非晶質の乾式シリカ(ox−50、日本アエロジル社製)40gを、水200mlと混合しスラリー溶液とし、硝酸セシウム13.0g、リン酸水素二アンモニウム4.4gを混合し分散させた後、エバポレーターを用いて蒸発乾固させ白色個体を得た。この固体を圧縮成型し、窒素雰囲気下、マッフル炉で600℃、4時間焼成し、2.5〜3.5メッシュに分砕して気相反応用触媒−2を得た。
【0070】
参考例2 3−(1’−ピペラジニル)−1,2−プロパンジオール(例示化合物番号5−1で示される化合物。以下「DHPP」と略称する。)の合成.
50Lの反応釜に、ピペラジン15.5kg(180モル)、溶媒としてメタノール15.6Lを仕込み、窒素雰囲気下で液温が45℃となるように調整した後、3−クロロ−1,2−プロパンジオール6.06kg(54.8モル)を3時間かけて滴下した。滴下中液温は徐々に上昇し、終了時の液温は75℃であった。その後、反応温度を70℃となるように調整し、更に3時間熟成した。反応転化率は100%であった。一晩放置し、室温付近まで低下した反応液に、48%水酸化ナトリウム水溶液4.6kg(55モル)をゆっくり滴下させ、副生塩を析出させた。釜底から抜出した反応液をろ過処理により脱塩した後、エバポレーターを用いてメタノールを留去した。さらに単蒸留により未反応のピペラジンを留去した後、減圧蒸留により目的物を単離した(白色固体、収量7.9kg、収率90%)。GC−MS及びNMR解析から例示化合物5−1で示されるDHPPであることを確認した。
【0071】
GC−MS:160。
【0072】
13C−NMR(CDCl
3):66.71,64.97,61.16,54.64,46.04。
【0073】
参考例3 3−(3’−メチルピペラジン−1’−イル)−1,2−プロパンジオール(例示化合物番号5−3で示される化合物。以下「DHPMP」と略称する。)の合成.
参考例2において、ピペラジン15.5kg(180モル)の代わりに2−メチルピペラジン18.0kg(180モル)を用いる以外は参考例4に記載した方法に従い実施し淡黄色油状物を得た(収量6.5kg、収率68%)。GC−MS及びNMRの結果から、DHPMPと、その異性体である下記式(8)
【0074】
【化10】
に示される3−(2’−メチルピペラジン−1’−イル)−1,2−プロパンジオールとの混合物であることを確認した。質量分析、NMR測定の結果を以下に示す。
【0075】
GC−MS:174。
【0076】
13C−NMR(CDCl
3):66.60,64.95,62.66,60.76,60.67,60.34,55.03,52.76,50.81,50.61,46.05,45.91,19.89。
【0077】
実施例1 例示化合物番号6−1で示される化合物の合成.
参考例3で合成した例示化合物番号5−1で示されるDHPPを水で16重量%の濃度に溶解後、窒素ガスを溶存酸素濃度が最終的に2mg−O
2/L以下となるまでバブリングを実施し、原料液を調製した。そのときの溶存酸素濃度を溶存酸素計で測定したところ1.9mg/Lであった。内径18mmの石英ガラス管中央部に、参考例1で調製した気相反応用触媒−1を20ml、その上下部に外径3mmのラッシヒリングを充填した。電気炉で触媒層及びラッシヒリング層を400℃に保ち、上部より、予め調製した前記原料液を0.5ml/min、窒素、GHSV約1,600Hr
−1の速度で滴下した。なお、窒素ガスは、反応液が反応管上部から下部へ流れる程度に流した(これはGHSVとしては無視できる程度である)。通液開始から3時間後、反応液を1時間かけて採取した。この通液中は、原料液容器内は窒素雰囲気下とした。この反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率は97%であった。得られた成分をGC−MS解析し、蒸留単離後、NMR解析したところ、上記した例示化合物番号6−1で示される1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン−2−メタノールであることを確認した。反応収率は54%であった。
【0078】
実施例2.
実施例1において、溶存酸素濃度が最終的に1mg−O
2/L以下となるまで窒素バブリングを実施した原料液を用いる以外は、実施例1に記載した方法に従った。その場合の溶存酸素濃度を溶存酸素計で測定したところ0.8mg/Lであった。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率は98%、例示化合物6−1の反応収率は58%であった。
【0079】
比較例1 例示化合物番号4−1で示される化合物の合成.
実施例1において、窒素ガスを用いたバブリングを行わずに原料液を反応に使用した。その場合の溶存酸素濃度を溶存酸素計で測定したところ9.0mg/Lであった。反応液を1時間かけて採取し、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率は98%、反応収率は46%であった。
【0080】
実施例3 例示化合物番号6−3で示される化合物の合成.
実施例2において、例示化合物番号5−1で示されるDHPPの代わりに参考例3で合成した例示化合物番号5−3で示されるDHPMPを用いる以外は、実施例2に記載した方法に従って実施した。その場合の溶存酸素濃度を溶存酸素計で測定したところ0.9mg/Lであった。この反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率は96%であった。得られた成分をGC−MS及びNMR解析した結果、主生成物は例示化合物番号6−2で示される化合物と例示化合物番号6−3で示される化合物の混合物であり、それらの合計収率は41%であった。
【0081】
比較例2.
実施例3において、窒素ガスを用いたバブリングを行わずに原料液を反応に使用した。その場合の溶存酸素濃度を溶存酸素計で測定したところ9.3mg/Lであった。反応液を1時間かけて採取し、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率は95%、反応収率は32%であった。
【0082】
実施例4 原料液中の溶存酸素濃度の経時変化.
実施例2で使用した溶存酸素濃度0.8mg/Lの原料液(16重量%濃度のDHPP水溶液)500gを、1L丸底フラスコ(活栓付き)中に入れ、室温下放置し、溶存酸素濃度の経時変化を測定した。結果を
図1に示す。原料液中の溶存酸素濃度は、約3日で飽和付近まで達した。このことから、工業的なプロセスにおいては、不活性ガスを連続又は断続的に導入することにより、原料液中の溶存酸素濃度は一定レベルにしておく事が望ましい。
【0083】
実施例5 原料液中の溶存酸素低減条件検討.
実施例1及び2で使用している原料液(16重量%濃度のDHPP水溶液)400gを、1L丸底フラスコ(活栓付き)中に入れ、窒素バブリングを行ったときの溶存酸素濃度の経時変化を測定した。結果を
図2と
図3に示す。窒素バブリングは溶存酸素との接触効率の観点から単位時間当たりの窒素ガス吹込み量が大きいほうが、溶存酸素の低減効果が高い結果となった。また、溶存酸素濃度は1mg/L以下で減少しにくくなった。
【0084】
以上の結果から、本発明の製造方法を用いることで、二環式アミン化合物の生産性を向上できることが理解される。