(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記異常判断部は、最新の前記頻度分布によって描画されるグラフと、それよりも前に生成された頻度分布によって描画されるグラフと原点を通るX軸及びY軸とで囲まれる範囲の面積が所定の閾値以上である場合に、前記画像形成装置の異常を判断することを特徴とする請求項1または2に記載の画像検査装置。
前記異常判断部は、最新の前記頻度分布によって描画されるグラフの形状から抽出される特徴量と、それよりも前に生成された頻度分布によって描画されるグラフの形状から抽出される特徴量との差異が所定の閾値以上である場合に、前記画像形成装置の異常を判断することを特徴とする請求項1または2に記載の画像検査装置。
前記異常判断部は、最新の前記頻度分布と、予め定められた他の前記頻度分布との差異が所定の閾値以上である場合に、前記画像形成装置の異常を判断することを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の画像検査装置。
前記異常判断部は、所定の期間毎に生成された前記頻度分布のうち、最新の前記頻度分布と、1つ前に生成された前記頻度分布との差異が所定の閾値以上である場合に、前記画像形成装置の異常を判断することを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の画像検査装置。
前記頻度分布生成部は、所定数の前記読取画像の欠陥の判定が行われて前記欠陥の数が判断される毎に、前記頻度分布を生成することを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項に記載の画像検査装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態においては、画像形成出力による出力結果を読み取った読取画像とマスター画像とを比較することにより出力結果を検査する検査装置を含む画像検査システムにおいて、検査の結果に基づいて装置内部の故障診断を行う処理を特徴として説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る画像形成システムの全体構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成システムは、DFE(Digital Front End)1、エンジンコントローラ2、プリントエンジン3及び検査装置4を含む。DFE1は、受信した印刷ジョブに基づいて印刷出力するべき画像データ、即ち出力対象画像であるビットマップデータを生成し、生成したビットマップデータをエンジンコントローラ2に出力する。
【0013】
エンジンコントローラ2は、DFE1から受信したビットマップデータに基づいてプリントエンジン3を制御して画像形成出力を実行させる。また、本実施形態に係るコントローラ2は、DFE1から受信したビットマップデータを、プリントエンジン3による画像形成出力の結果を検査装置4が検査する際に参照するための検査用画像の元となる情報として検査装置4に送信する。
【0014】
プリントエンジン3は、エンジンコントローラ2の制御に従い、ビットマップデータに基づいて記録媒体である用紙に対して画像形成出力を実行すると共に、出力した用紙を読取装置で読み取って生成した読取画像データを検査装置4に入力する。尚、記録媒体としては、上述した用紙の他、フィルム、プラスチック等のシート状の材料で、画像形成出力の対象物となるものであれば採用可能である。検査装置4は、エンジンコントローラ2から入力されたビットマップデータに基づいてマスター画像を生成する。
【0015】
そして、検査装置4は、プリントエンジン3から入力された読取画像を上記生成したマスター画像と比較することにより、出力結果の検査を行う画像検査装置である。また、本実施形態に係る検査装置4は、画像の検査結果に基づき、プリントエンジン3側の劣化診断を行う機能を有する。これが、本実施形態の要旨に係る機能である。
【0016】
ここで、本実施形態に係るエンジンコントローラ2、プリントエンジン3及び検査装置4の機能ブロックを構成するハードウェア構成について、
図2を参照して説明する。
図2は、本実施形態に係る検査装置4のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2においては、検査装置4のハードウェア構成を示すが、エンジンコントローラ2及びプリントエンジン3についても同様である。
【0017】
図2に示すように、本実施形態に係る検査装置4は、一般的なPC(Personal Computer)やサーバ等の情報処理装置と同様の構成を有する。即ち、本実施形態に係る検査装置4は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)20、ROM(Read Only Memory)30、HDD(Hard Disk Drive)40及びI/F50がバス90を介して接続されている。また、I/F50にはLCD(Liquid Crystal Display)60、操作部70及び専用デバイス80が接続されている。
【0018】
CPU10は演算手段であり、検査装置4全体の動作を制御する。RAM20は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU10が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM30は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD40は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納されている。
【0019】
I/F50は、バス90と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。LCD60は、ユーザが検査装置4の状態を確認するための視覚的ユーザインタフェースである。操作部70は、キーボードやマウス等、ユーザが検査装置4に情報を入力するためのユーザインタフェースである。
【0020】
専用デバイス80は、エンジンコントローラ2、プリントエンジン3及び検査装置4において、専用の機能を実現するためのハードウェアであり、プリントエンジン3の場合は、紙面上に画像形成出力を実行するプロッタ装置や、紙面上に出力された画像を読み取る読取装置である。また、エンジンコントローラ2、検査装置4の場合は、高速に画像処理を行うための専用の演算装置である。このような演算装置は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)として構成される。
【0021】
このようなハードウェア構成において、ROM30やHDD40若しくは図示しない光学ディスク等の記録媒体に格納されたプログラムがRAM20に読み出され、CPU10がそれらのプログラムに従って演算を行うことにより、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係るエンジンコントローラ2、プリントエンジン3及び検査装置4の機能を実現する機能ブロックが構成される。
【0022】
図3は、本実施形態に係るエンジンコントローラ2、プリントエンジン3及び検査装置4の機能構成を示すブロック図である。
図3においては、データの送受信を実線で、用紙の流れを破線で示している。
図3に示すように、本実施形態に係るエンジンコントローラ2は、データ取得部201、エンジン制御部202、ビットマップ送信部203を含む。また、プリントエンジン3は、印刷処理部301及び読取装置302を含む。また、検査装置4は、読取画像取得部401、マスター画像処理部402、検査制御部403及び比較検査部404を含む。
【0023】
データ取得部201は、DFE1から入力されるビットマップデータを取得し、エンジン制御部202及びビットマップ送信部203夫々を動作させる。ビットマップデータは、画像形成出力するべき画像を構成する各画素の情報である。エンジン制御部202は、データ取得部201から転送されたビットマップデータに基づき、プリントエンジン3に画像形成出力を実行させる。ビットマップ送信部203は、データ取得部201が取得したビットマップデータを検査装置4に送信する。
【0024】
印刷処理部301は、エンジンコントローラ2から入力されるビットマップデータを取得し、印刷用紙に対して画像形成出力を実行し、印刷済みの用紙を出力する。本実施形態に係る印刷処理部301は、電子写真方式の一般的な画像形成機構によって実現される。読取装置302は、印刷処理部301によって印刷が実行されて出力された印刷用紙の紙面上に形成された画像を読み取り、読取データを検査装置4に出力する画像読取部である。
【0025】
読取装置302は、例えば印刷処理部301によって出力された印刷用紙の搬送経路に設置されたラインスキャナであり、搬送される印刷用紙の紙面上を走査することによって紙面上に形成された画像を読み取る。尚、本実施形態においては、プリントエンジン3に読取装置302が含まれている場合を例としているが、検査装置4に読取装置が含まれる場合もある。
【0026】
ここで、印刷処理部301及び読取装置302の機械的な構成について、
図4を参照して説明する。
図4に示すように、本実施形態に係る印刷処理部301は、無端状移動手段である搬送ベルト105に沿って各色の画像形成部106が並べられた構成を備えるものであり、所謂タンデムタイプといわれるものである。すなわち、給紙トレイ101から給紙ローラ102と分離ローラ103とにより分離給紙される用紙(記録媒体の一例)104に転写するための中間転写画像が形成される中間転写ベルトである搬送ベルト105に沿って、この搬送ベルト105の搬送方向の上流側から順に、複数の画像形成部(電子写真プロセス部)106BK、106M、106C、106Yが配列されている。
【0027】
これら複数の画像形成部106BK、106M、106C、106Yは、形成するトナー画像の色が異なるだけで内部構成は共通である。画像形成部106BKはブラックの画像を、画像形成部106Mはマゼンタの画像を、画像形成部106Cはシアンの画像を、画像形成部106Yはイエローの画像をそれぞれ形成する。尚、以下の説明においては、画像形成部106BKについて具体的に説明するが、他の画像形成部106M、106C、106Yは画像形成部106BKと同様であるので、その画像形成部106M、106C、106Yの各構成要素については、画像形成部106BKの各構成要素に付したBKに替えて、M、C、Yによって区別した符号を図に表示するにとどめ、説明を省略する。
【0028】
搬送ベルト105は、回転駆動される駆動ローラ107と従動ローラ108とに架け渡されたエンドレスのベルト、即ち無端状ベルトである。この駆動ローラ107は、不図示の駆動モータにより回転駆動させられ、この駆動モータと、駆動ローラ107と、従動ローラ108とが、無端状移動手段である搬送ベルト105を移動させる駆動手段として機能する。
【0029】
画像形成に際しては、回転駆動される搬送ベルト105に対して、最初の画像形成部106BKが、ブラックのトナー画像を転写する。画像形成部106BKは、感光体としての感光体ドラム109BK、この感光体ドラム109BKの周囲に配置された帯電器110BK、光書き込み装置200、現像器112BK、感光体クリーナ(図示せず)、除電器113BK等から構成されている。光書き込み装置200は、夫々の感光体ドラム109BK、109M、109C、109Y(以降、総じて「感光体ドラム109」という)に対して光を照射するように構成されている。
【0030】
画像形成に際し、感光体ドラム109BKの外周面は、暗中にて帯電器110BKにより一様に帯電された後、光書き込み装置200からのブラック画像に対応した光源からの光により書き込みが行われ、静電潜像が形成される。現像器112BKは、この静電潜像をブラックトナーにより可視像化し、このことにより感光体ドラム109BK上にブラックのトナー画像が形成される。
【0031】
このトナー画像は、感光体ドラム109BKと搬送ベルト105とが当接若しくは最も接近する位置(転写位置)で、転写器115BKの働きにより搬送ベルト105上に転写される。この転写により、搬送ベルト105上にブラックのトナーによる画像が形成される。トナー画像の転写が終了した感光体ドラム109BKは、外周面に残留した不要なトナーを感光体クリーナにより払拭された後、除電器113BKにより除電され、次の画像形成のために待機する。
【0032】
以上のようにして、画像形成部106BKにより搬送ベルト105上に転写されたブラックのトナー画像は、搬送ベルト105のローラ駆動により次の画像形成部106Mに搬送される。画像形成部106Mでは、画像形成部106BKでの画像形成プロセスと同様のプロセスにより感光体ドラム109M上にマゼンタのトナー画像が形成され、そのトナー画像が既に形成されたブラックの画像に重畳されて転写される。
【0033】
搬送ベルト105上に転写されたブラック、マゼンタのトナー画像は、さらに次の画像形成部106C、106Yに搬送され、同様の動作により、感光体ドラム109C上に形成されたシアンのトナー画像と、感光体ドラム109Y上に形成されたイエローのトナー画像とが、既に転写されている画像上に重畳されて転写される。こうして、搬送ベルト105上にフルカラーの中間転写画像が形成される。
【0034】
給紙トレイ101に収納された用紙104は最も上のものから順に送り出され、その搬送経路が搬送ベルト105と接触する位置若しくは最も接近する位置において、搬送ベルト105上に形成された中間転写画像がその紙面上に転写される。これにより、用紙104の紙面上に画像が形成される。紙面上に画像が形成された用紙104は更に搬送され、定着器116にて画像を定着された後、読取装置302に搬送される。
【0035】
読取装置302においては、内部に設けられたラインスキャナによって原稿表面が撮像されることにより読取画像が生成される。尚、両面印刷の場合、画像が定着された用紙は反転経路に搬送され、反転された上で再度転写位置に搬送される。
【0036】
次に、再度
図3を参照し、検査装置4の各構成について説明する。読取画像取得部401は、プリントエンジン3において印刷用紙の紙面が読取装置302によって読み取られて生成された読取画像の情報を取得する。読取画像取得部401が取得した読取画像の情報は、比較検査のために比較検査部404に入力される。尚、比較検査部404への読取画像の入力は検査制御部403の制御によって実行される。その際、検査制御部403が読取画像を取得してから比較検査部404に入力する。
【0037】
マスター画像処理部402は、上述したようにエンジンコントローラ2から入力されたビットマップデータを取得し、上記検査対象の画像と比較するための検査用画像であるマスター画像を生成する。即ち、マスター画像処理部402が、読取画像の検査を行うための検査用画像であるマスター画像を出力対象画像に基づいて生成する検査用画像生成部として機能する。マスター画像生成部203によるマスター画像の生成処理については後に詳述する。
【0038】
検査制御部403は、検査装置4全体の動作を制御する制御部であり、検査装置4に含まれる各構成は検査制御部403の制御に従って動作する。比較検査部404は、読取画像取得部401から入力される読取画像とマスター画像処理部402が生成したマスター画像とを比較し、意図した通りの画像形成出力が実行されているか否かを判断する。比較検査部404は、膨大な計算量を迅速に処理するために上述したようなASICによって構成される。
【0039】
次に、マスター画像処理部402に含まれる機能の詳細について
図5を参照して説明する。
図5は、マスター画像処理部402内部の構成を示すブロック図である。
図5に示すように、マスター画像処理部402は、少値多値変換処理部421、解像度変換処理部422、色変換処理部423及びマスター画像出力部424を含む。尚、本実施形態に係るマスター画像処理部402は、
図2において説明した専用デバイス80、即ち、ASICとして構成されたハードウェアが、ソフトウェアの制御に従って動作することにより実現される。
【0040】
少値多値変換処理部421は、有色/無色で表現された二値画像に対して少値/多値変換処理を実行して多値画像を生成する。本実施形態に係るビットマップデータは、プリントエンジン3に入力するための情報であり、プリントエンジンはCMYK(Cyan,Magenta,Yellow,blacK)各色二値の画像に基づいて画像形成出力を実行する。これに対して検査対象の画像である読取画像は、基本三原色であるRGB(Red,Green,Blue)各色多階調の多値画像であるため、少値多値変換処理部421により先ず二値画像が多値画像に変換される。多値画像としては、例えばCMYK各8bitで表現された画像を用いることができる。
【0041】
尚、本実施形態においては、プリントエンジン3がCMYK各色二値の画像に基づいて画像形成出力を実行する場合を例とし、マスター画像処理部402に少値多値変換処理部421が含まれる場合を例とするが、これは一例である。即ち、プリントエンジン3が多値画像に基づいて画像形成出力を実行する場合は、少値多値変換処理部421は省略可能である。
【0042】
解像度変換処理部422は、少値多値変換処理部421によって生成された多値画像の解像度を、検査対象の画像である読取画像の解像度に合わせるように解像度変換を行う。本実施形態においては、読取装置302は200dpiの読取画像を生成するため、解像度変換処理部422は、少値多値変換処理部421によって生成された多値画像の解像度を200dpiに変換する。
【0043】
色変換処理部423は、解像度変換処理部422によって解像度が変換された画像を取得して色変換を行う。上述したように、本実施形態に係る読取画像はRGB形式の画像であるため、色変換処理部423は、解像度変換処理部422によって解像度変換された後のCMYK形式の画像をRGB形式に変換する。これにより、画素毎にRGB各色8bit(合計24bit)で表現された200dpiの多値画像が生成される。
【0044】
マスター画像出力部424は、少値多値変換処理部421、解像度変換処理部422及び色変換処理部423によって生成されたマスター画像を、検査制御部403に出力する。検査制御部403は、マスター画像処理部402から取得したマスター画像に基づいて比較検査部404に画像比較処理を実行させ、その比較結果を取得する。
【0045】
比較検査部404においては、上述したようにRGB各色8bitで表現された200dpiの読取画像及びマスター画像を対応する画素毎に比較し、夫々の画素毎に上述したRGB各色8bitの画素値の差分値を算出する。そのようにして算出した差分値と閾値との大小関係に基づき、比較検査部404は、読取画像における欠陥の有無を判断する。
【0046】
尚、読取画像とマスター画像との比較に際して、検査制御部403は、
図22に示すように、所定範囲毎に分割されたマスター画像を、分割された範囲に対応する読取画像に重ね合わせて各画素の画素値、即ち濃度の差分算出を行う。このような処理は、検査制御部403が、重ね合わせる範囲の画像をマスター画像及び読取画像夫々から取得し、比較検査部404に入力することによって実現される。
【0047】
更に、検査制御部403は、分割された範囲を読取画像に重ね合わせる位置を縦横にずらしながら、即ち、読取画像から取得する画像の範囲を縦横にずらしながら、算出される差分値の合計値が最も小さかった際の抽出範囲を、マスター画像の抽出範囲に対応する正確な重ね合わせの位置、即ち、読取画像側の対応する抽出範囲として決定すると共に、その際に算出された各画素の差分値を比較結果として採用する。
【0048】
図22に示すように方眼上に区切られている夫々のマスが、上述した各画素の差分値を合計する所定範囲である。また、
図22に示す夫々の分割範囲のサイズは、例えば、上述したようにASICによって構成される比較検査部404が一度に画素値の比較を行うことが可能な範囲に基づいて決定される。
【0049】
また、他の方法として、夫々の画素について算出された差分値と閾値との比較結果に基づいてまず夫々の画素が正常か欠陥かを判断し、欠陥と判断された画素数のカウント値とそれについて設定された閾値とを比較する方法がある。また、上述した所定範囲毎の欠陥の判定ではなく、夫々の画素毎に欠陥の有無を判断しても良い。
【0050】
このような処理により、読取画像とマスター画像とが位置合わせされた上で差分値が算出される。例えば、読取画像全体とマスター画像全体とで縮尺に差異があったとしても、
図22に示すように範囲毎に分割して位置合わせを行うことにより、縮尺の際による影響を低減することが可能となる。
【0051】
また、
図22に示すように分割された夫々の範囲において、隣接する範囲の位置ずれ量は比較的近いことが予測される。従って、分割された夫々の範囲についての比較検査を行う際、隣接する領域の比較検査によって決定された位置ずれ量を中心として上述した縦横にずらしながらの計算を行うことにより、縦横にずらしながら計算を行う回数を少なくしても、正確な重ね合わせ位置による計算が実行される可能性が高く、全体として計算量を減らすことが出来る。
【0052】
上記説明においては、比較検査部404がマスター画像を構成する画素と読取画像を構成する画素との差分値を算出して出力し、検査制御部403において差分値と閾値との比較を行う場合を例としている。この他、比較検査部404において差分値と閾値との比較を行い、その比較結果、即ち、読取画像を構成する各画素について、マスター画像において対応する画素との差異が所定の閾値を超えたか否かを示す情報を、検査制御部403が取得するようにしても良い。これにより、検査制御部403における閾値との比較処理を比較検査部404側に移転し、ハードウェア利用により処理の高速化を図ることが可能となる。
【0053】
このようなシステムにおいて、本実施形態に係る要旨は、検査装置4が、上述した比較処理を実行して得た読取画像の検査結果に基づき、プリントエンジン3に含まれる各部、より具体的には、
図4に示す印刷処理部301、読取装置302の各部の故障を診断することにある。以下、本実施形態に係る検査制御部403の機能及び動作について説明する。
【0054】
図6は、本実施形態に係る検査制御部403の機能構成を示すブロック図である。また、
図7は、本実施形態に係る検査制御部403、比較検査部404の動作を示すフローチャートである。本実施形態に係る検査制御部403は、
図6に示すように、まずマスター画像取得部431が、マスター画像処理部402によって生成されたマスター画像を取得する(S701)。
【0055】
また、読取画像取得部432が、読取画像取得部401から読取画像を取得し(S702)、基準点抽出部433が、マスター画像及び読取画像から基準点を抽出する(S703)。ここでいう基準点とは、画像形成出力対象の原稿内部の領域の四隅に表示されているマーキングである。尚、このようなマーキングがない場合であっても、コーナー抽出フィルタ等の画像フィルタを用いて、
図23(a)に示すような画像中から、
図23(b)に示すようにマーキングとなり得るような画素を抽出しても良い。
【0056】
基準点抽出部433がマスター画像及び読取画像から基準点を抽出すると、位置合せ部434が、夫々の画像における基準点の位置、即ち画像上の座標に基づいて、画像の位置合わせを行い(S704)、差分算出部435が位置合わせされた画像の比較照合を行う(S705)。S704、S705において、位置合せ部434及び差分算出部435は、比較検査部404に画像の比較演算処理を実行させてその結果を取得することにより処理を行う。
【0057】
S704において、位置合せ部434の制御に従って位置合せを行う比較検査部404は、比較的広い範囲、例えば縦横20画素の範囲について、マスター画像と読取画像とを重ね合わせる位置をずらしながら、重ね合わせた夫々の画素毎の差分値を算出して合計する。位置合せ部434は、その合計値が最も小さくなった重ね合わせ状態を、位置合わせの状態として決定する。
【0058】
また、S705において、差分算出部435の制御に従って比較照合を行う比較検査部404は、上述したように縦横3画素の検査範囲について、マスター画像と読取画像とを重ね合わせる位置をずらしながら、重ね合わせた夫々の画素毎の差分値を算出して合計する。差分算出部435は、最も小さくなった合計値と予め定められた閾値を比較し、その検査範囲が欠陥であるか否か判断する。即ち、位置合わせ部435が比較検査部404を制御することにより、画像検査部として機能する。
【0059】
図8は、差分算出部435及び比較検査部404による比較検査の検査範囲の概念を示す図である。
図8に示すように、マスター画像及び読取画像は、D
11、D
12、D
13・・・D
21、D
22、D
23・・・のように、夫々の画素の情報によって構成されている。D
11、D
12、D
13・・・の夫々の画素は、上述したようにRGB各色8bitの情報である。そして、比較検査部404が差分算出部435の制御に従って差分値を合計、閾値との比較を判断する検査範囲が、
図8に太い破線でB
11、B
12、B
21、B
22・・・のように示す縦横3画素の範囲である。
【0060】
従って、差分算出部435は、
図9に示すように、B
11、B
12・・・B
21、B
22・・・のように示す夫々の検査範囲毎に、差分値の合計が所定の閾値を超えていれば欠陥を示す“1”を設定し、差分値の合計が所定の閾値を下回っていれば正常を示す“0”を設定して、1つの読取画像についての検査を終了する。
【0061】
図9に示すように生成された1つの読取画像についての検査結果は、比較結果通知部436に入力される。比較結果通知部436は、差分算出部435から取得した検査結果について、欠陥として判定された範囲があった場合、エンジンコントローラ2のエンジン制御部202に送信する。これにより、エンジン制御部202によって、欠陥が通知された画像の再印刷が実行される。この他、比較結果通知部436は、読取画像及び欠陥判定結果を示す
図9のような情報をPC等の情報処理に送信しても良い。これにより、情報処理装置において検査結果を視覚的に表示し、その後の対応をユーザに促すことができる。
【0062】
図9に示すように生成された1つの読取画像についての検査結果は、欠陥群抽出部437にも入力される。欠陥群抽出部437は、
図9に示すように夫々の検査範囲毎に判断された欠陥か否かの情報に基づき、欠陥として判断された検査範囲のうち、近傍に位置している検査範囲を群としてグループ化し、同一の理由によって生じた欠陥であるとみなせる欠陥群の判断を行う(S706)。
【0063】
図10は、本実施形態のS706における欠陥群の判断動作を示すフローチャートである。
図10に示すように、まず欠陥群抽出部437は、
図9に示すように夫々の検査範囲毎に判断された欠陥範囲の判断結果の外接矩形を抽出する(S1001)。
図11(a)は、
図9に示す判断結果の外接矩形の抽出態様を太い破線で示す図である。欠陥群抽出部437は、
図11(a)に示すような態様で、判断対象のページについて欠陥と判断されたすべての検査範囲について、外接矩形を抽出する。
【0064】
欠陥範囲の外接矩形を抽出すると、欠陥群抽出部437は、比較的近傍に位置している矩形を統合するため、夫々の矩形位置の比較処理を行う(S1002)。欠陥群抽出部437は、S1002において、選択した2つの矩形について位置、即ち夫々の検査範囲の座標を参照し、所定の閾値よりも近距離に存在する場合(S1003/YES)、2つの矩形を統合して欠陥群とする(S1004)。
【0065】
図11(b)は、S1004の処理によって2つの矩形が統合される場合の例を示す図である。
図11(b)の左側は、
図11(a)に示すようにS1001の処理によって2つの外接矩形が抽出され、その2つの外接矩形が近傍に配置されている状態を示す図である。
図11(b)の左側の状態の場合、S1003において2つの矩形が近傍に存在すると判断され、S1004の処理により、
図11(b)の右側において太い破線で示すように、2つの矩形が統合される。S1004の処理は、2つの矩形を統合して1つの矩形にする処理である。換言すると、S1004の処理は、既に複数の検査範囲が既に統合されている外接矩形を更に統合して、より大きな外接矩形とする処理である。
【0066】
このようにして矩形化、及び統合された範囲が、1つの欠陥として認識される。尚、S1002における閾値としては、例えば30、即ち、元の画素単位の座標における90画素分の範囲を用いることができる。また、外接矩形の統合については、クラスタリング等の既知の技術を用いることができる。
【0067】
他方、選択した2つの矩形の位置が近距離ではない場合(S1003/NO)、その2つの矩形については特に処理を行わない。欠陥群抽出部437は、S1001において抽出されたすべての矩形の組み合わせについて矩形位置の比較を行うようにS1002からの処理を繰り返し(S1005/NO)、全矩形の組み合わせについて処理を終了したら(S1005/YES)、欠陥群の抽出を終了する。このような処理により、互いに近傍に存在している欠陥範囲が統合され、1つの欠陥として認識される。
【0068】
欠陥群抽出部437は、S706の処理を終了すると、1つの欠陥として認識される欠陥群の数をカウントし、そのカウント結果を、そのページを識別するページIDと関連付けて欠陥数として欠陥数情報記憶部439に格納する(S707)。即ち、欠陥群抽出部437が、欠陥数判断部として機能する。このような処理が画像検査の度に繰り返されることにより、
図12に示すような欠陥数情報が蓄積されていく。尚、
図6においては、図示の簡略化のため、欠陥数情報記憶部439を検査制御部403の一部として示しているが、欠陥数情報記憶部439は、検査制御部403内部のモジュールによってアクセス可能な記憶媒体であり、例えば、検査装置4を構成するハードウェアのうち、HDD40等の不揮発性記憶媒体によって実現される。
【0069】
図12に示すように、本実施形態に係る欠陥数情報においては、上述した検査対象のページを識別するための“ページID”と、そのページについて1つの欠陥として認識されるものとして判断された欠陥群の数を示す“欠陥数”とが関連付けられて記憶されている。
【0070】
検査制御部403は、予め定められた判断タイミングに到達するまで、S701からの処理を繰り返し(S708/NO)、判断タイミングに到達すると(S708/YES)、頻度分布処理部438が判断タイミングに従って動作し、
図12に示す欠陥数情報に基づいて欠陥数の頻度分布を生成する。このように生成された頻度分布に基づいて異常判断部440が装置の劣化を判断する(S709)。このような処理により、本実施形態に係る検査装置4の動作が実行される。
【0071】
S708において判断される判断タイミングとは、頻度分布処理部438が、所定期間毎にプリントエンジン3の劣化を判断するために定められる。判断タイミングの設定例としては、例えば、
図12に示す欠陥数情報のデータ数を用いることが可能である。即ち、頻度分布処理部438は、画像の比較検査が繰り返されることにより欠陥数情報記憶部439にデータが蓄積されていき、予め定められた所定数の新たなページIDのデータが欠陥数情報記憶部439に蓄積される度に、判断タイミングであると判断する。
【0072】
この他、プリントエンジン3や検査装置4の電源投入状態において所定期間毎のタイミングにより、上述した判断タイミングを判断することも可能である。以降の説明においては、新たに200個のデータが欠陥数情報記憶部439に格納される度に、判断タイミングを発生させる場合を例として説明する。
【0073】
次に、本実施形態に係る頻度分布の処理について説明する。頻度分布処理部438は、
図7のS709の処理において、まず
図12に示す欠陥数情報の所定データ数毎の集計を行う。欠陥数情報の集計において、頻度分布処理部438は、
図12に示す欠陥数情報を欠陥数毎に集計する。
図13は、頻度分布処理部438による欠陥数情報の集計結果の例を示す図である。
図13の例においては、連続する200ページ分のデータごとに欠陥数情報を集計している。即ち、頻度分布処理部438が頻度分布生成部として機能する。
【0074】
図13の例によれば、期間T
1に相当する200ページ分の検査結果において、1ページあたりの欠陥数が0個であったページ数が「76」、欠陥数が1個であったページ数が「86」、2個であったページ数が「31」であることが示されている。このような集計により、所定データ数における1ページあたりの欠陥数の頻度分布が示される。
図14は、
図13に示す期間T
1の集計結果をグラフとして示した図である。
【0075】
このような集計によれば、プリントエンジン3の状態が良く、画像に発生する欠陥が少なければ、0個、1個等、少ない欠陥数の頻度が高くなり、プリントエンジン3の状態が悪くなるほど、大きい値の欠陥数の頻度が高くなる。本実施形態に係る異常判断部440は、そのような欠陥数の頻度分布に基づいてプリントエンジン3の状態を判断する。
【0076】
図15は、
図14に示すT
1のグラフに加えて、
図13に示す期間T
3の集計結果のグラフを示した図である。
図15に示すように、期間が経過するにつれて、上述したように欠陥数の頻度分布が図中左側から右側へ、即ち、欠陥数が少ない側から多い側へ動く。そのような変化は、
図15において斜線で示す領域の面積を求めることによって判断することが可能である。
【0077】
即ち、本実施形態に係る異常判断部440は、最新の200ページ分のデータのグラフ(以降、「最新グラフ」とする)と、比較対象とする200ページ分のデータのグラフ(以降、「比較対象グラフ」とする)と、グラフのX軸及びY軸によって囲まれる範囲の面積を求め、その面積と所定の閾値を比較することにより、プリントエンジン3の現在の劣化状態を判断することができる。
【0078】
そして、異常判断部440は、上述したように求めた面積が所定の閾値を超えている場合に、プリントエンジン3の異常通知を行う。異常判断部440によるプリントエンジン3の異常通知は、例えばオペレータが操作するPC等の情報処理端末に通知され、若しくは検査装置4に搭載されているLCD60等の表示装置にGUI(Graphical User Interface)として表示される。これにより、検査装置4は、プリントエンジン3内部の部品の異常をオペレータに解りやすく通知することができる。
【0079】
ここで、比較対象グラフのために選択される200ページ分のデータは、プリントエンジン3の運用が開始されたばかりの情報、即ち、プリントエンジン3を構成する各部の部品が新品の状態において画像形成出力が実行された200ページ分のデータを用いることができる。これにより、プリントエンジン3の劣化が極めて小さい状態、即ち、プリントエンジン3を要因とした画像の欠陥が最も少ないと考えられる状態を比較対象とすることができ、上述した最新グラフとの比較によって現在のプリントエンジン3の劣化状態を確認することができる。
【0080】
他方、
図13に示すように、欠陥数情報の集計結果は、
図7のS708において判断された判断タイミング毎に継続的に生成される。従って、連続して生成された集計結果のグラフを比較するようにしても良い。
図16は、
図13に示す期間T
1、T
2、T
3のような、連続して生成された集計結果のグラフを重ねて示す図である。
【0081】
連続して生成された集計結果のグラフを比較する場合、
図16に示すT
1とT
2のグラフや、T
2とT
3のグラフや、T
3とT
4のグラフを夫々比較する。プリントエンジン3は、継続して使用されることにより徐々に劣化していくことが考えられる。従って、プリントエンジン3の劣化が継時的なもののみであれば、連続して生成された集計結果のグラフを比較する場合、夫々の比較結果、即ち面積の差異は、所定の範囲内に収まることが考えられる。
【0082】
これに対して、連続して生成された集計結果のグラフを比較した結果、面積の差異が所定の範囲を超えた場合には、プリントエンジン3について突発的な不具合が発生したことが考えられる。従って、連続して生成された集計結果のグラフを比較し、その結果求められる面積と、予め定められた閾値とを比較することにより、プリントエンジン3の継時的な劣化を除外し、突発的な不具合のみを検知することが可能となる。
【0083】
以上説明したように、このような処理により、画像形成出力による出力結果を読み取った画像とマスター画像とを比較することによる画像の検査において、画像の検査結果に基づいて装置の劣化を判断することが可能となる。
【0084】
尚、上記実施形態においては、
図15において説明したように、グラフ及び軸によって囲まれる面積に基づいて装置の劣化を判断する場合を例として説明した。この他、
図13に示すような欠陥数情報の集計結果によって描かれるグラフの特徴を示す値(以降、「特徴量」とする)を算出し、その特徴量の変化に基づいて装置の劣化を判断することも可能である。
【0085】
図17は、特徴量の比較によって装置の劣化を判断する場合に、異常判断部440が抽出する特徴量の例を示す図である。
図17に示すように、異常判断部440は、例えば、“最頻値”、“最頻値割合”、“最頻値以前割合”、“データ幅”、“歪度”、“尖度”の夫々の値を特徴量として算出する。“最頻値”は、
図13に示す“欠陥数”の夫々の値のうち、最も“カウント値”が大きい値であり、
図13の期間T
1の場合、最も大きいカウント値が「86」であるため、最頻値は「1」となる。
【0086】
“最頻値割合”は、全カウント値の合計に対する最頻値のカウント値の割合であり、
図13の期間T
1の場合、「43」(86/200×100)となる。“最頻値以前割合”は、全カウント値の合計に対する、欠陥数が「0」から最頻値までのカウント値の合計の割合であり、
図13の期間T
1の場合、「81」((76+86)/200×100)となる。
【0087】
“データ幅”は、「0」ではない“カウント値”が分布している欠陥数の範囲を示す値、即ち、
図14に示すようなグラフの横軸方向の幅であり、
図13の期間T
1の場合、欠陥数「0」〜「4」までの間に分布しているため、データ幅は「5」となる。“歪度”は、分布の偏りや歪みを示す指標となる値であり、正規分布等の左右対称の分布の場合には「0」となる。
【0088】
歪度は統計上の公知技術によって計算可能であるが、一般的に、歪度は、夫々のデータ(ここでは、
図13に示す“欠陥数”毎のカウント値)をX
1、X
2、・・・X
n、その平均値をμ、標準偏差をσとすると、以下の式(1)で求めることができ、
図13の期間T
1の場合、「1.7」となる。
【0089】
尖度は、分布の尖り具合を示す指標となる値であり、正規分布では「3」となる。尖度は統計上の公知技術によって計算可能であるが、一般的に、尖度は、夫々のデータ(ここでは、
図13に示す“欠陥数”毎のカウント値)をX
1、X
2、・・・X
n、その平均値をμ、標準偏差をσとすると、以下の式(1)で求めることができ、
図13の期間T
1の場合、「1.3」となる。
【0090】
異常判断部440は、上述したような特徴量を
図13に示す夫々の期間毎に算出し、その特徴量の差分を求めることにより、装置の劣化を判断する。装置の劣化判断に際しては、例えば、求めた差分値とあらかじめ定められた閾値とを比較することにより実現可能である。その際、差分値の算出に際して、絶対値を求めるようにすれば、閾値の設定を容易化することが可能である。
【0091】
図18は、
図13に示す期間T
1、T
3夫々のグラフについて算出された特徴量及びその差分を示す図である。
図18に示すように、夫々の特徴量は、値のスケールが夫々異なるため、全ての特徴量について同一の閾値を設定することはできない。従って、夫々の特徴量に応じた閾値を設定することが好ましい。また、夫々の特徴量に対して一括した閾値設定を可能とするため、夫々の特徴量のスケールを合わせるための重み値を設定しても良い。
【0092】
また、特徴量の差分と閾値との比較についての他の態様として、
図18に示すように算出された差分値を合計し、その合計値に対して差分値を設定しても良い。その際、
図18に示すように算出された値をそのまま合計するのではなく、各特徴量のスケールや、値としての重要性に応じた重み値を乗じた上で合計を行うことが好ましい。
【0093】
上述したように、夫々の特徴量に対して個別に閾値を設定して差分値との比較を行う場合、差分値が閾値を超えた特徴量が1つでもあった場合には装置の劣化として判断するのか、差分値が閾値を超えた特徴量が所定数以上の場合に装置の劣化として判断するのかを定める必要がある。これに対して、差分値を合計した値に対して閾値を設定する態様によれば、全特徴量について一括して判断を行うことができ、処理を簡潔かつ合理的なものとすることができる。
【0094】
尚、
図17及び
図18において説明したように特徴量の比較によって装置の劣化を判断する場合にも、面積を比較する場合において説明したように、最新のグラフと予め定められたグラフとの比較を行う場合の他、連続して生成された集計結果のグラフを比較しても良いことは同様である。いずれの場合においても、欠陥数の頻度分布の差異を比較することに変わりはない。
【0095】
また、上記実施形態においては、集計結果の比較により、欠陥数の頻度分布の差異が所定の閾値を超えた場合に、装置の劣化を判断して通知を行う場合を例として説明した。しかしながら、欠陥数の頻度分布の判断のみでは、装置のどの部分が劣化しているかを判断することはできない。これに対して、上述した欠陥数の頻度分布に基づく劣化判断を、装置各部の劣化の詳細な判断動作のトリガとして用いることも可能である。以下、そのような態様について説明する。
【0096】
図7のS706において説明した欠陥群の判断によれば、
図12に示す各データのような、夫々のページに含まれる欠陥数に加えて、欠陥群として統合された欠陥群の読取画像上における位置をも取得することが可能である。
図19は、そのように取得される欠陥群の位置の情報(以降、「欠陥群位置情報」とする)を示す図である。
図19に示すように、本実施形態に係る欠陥群位置情報によれば、夫々の欠陥群を識別する“欠陥群ID”毎に、欠陥として判断された矩形の範囲が、その矩形の四隅の検査範囲の座標“X
s”、“Y
s”、“X
e”、“Y
e”によって特定されている。
【0097】
図19に示すような情報は、例えば
図7のS706の処理において、欠陥群抽出部437によって生成され、欠陥数情報記憶部439若しくは他の記憶媒体に格納される。そして、異常判断部440は、上述したような劣化判断の動作により装置の劣化を判断すると、
図19において説明した欠陥群位置情報に登録されている欠陥群の位置情報に基づいて、予め登録されている欠陥DB(Data Base)を検索し、検知された欠陥群が装置のどの部分の劣化に応じて発生したものであるか判断する。
【0098】
図20は、上述した欠陥DBの内容を示す図である。
図20に示すように、欠陥DBは、予め定義された複数の欠陥について“欠陥種ID”が割り振られており、
図19に示す欠陥群位置情報と同様に、夫々の欠陥が現れることが予測される矩形の範囲が、矩形の四隅の検査範囲の座標“XS”、“YS”、“XE”、“YE”によって特定されている。更に、“欠陥種ID”によって特定される夫々の欠陥が、プリントエンジン3に含まれるいずれの部品の異常によるものかを示す“欠陥種”の情報が関連付けられている。このような情報は、欠陥数情報記憶部439と同様に、HDD40のような検査制御部403内部のモジュールによってアクセス可能な記憶媒体に格納されている。
【0099】
このように、本実施形態に係る欠陥DBは、画像形成装置であるプリントエンジン3における異常の種類と、欠陥として判定された画像上の位置とが関連付けられた欠陥種情報である。頻度分布処理部438は、
図19に示すように抽出された欠陥群夫々についての位置、即ち、“X
s”、“Y
s”、“X
e”、“Y
e”の情報と、
図20に示す欠陥DBにおける欠陥種夫々の“XS”、“YS”、“XE”、“YE”の情報とを比較し、両者の位置に基づいて両者が類似しているか否かを判断する。
図21は、欠陥種の具体的な判断動作を示すフローチャートである。
【0100】
図21に示すように、頻度分布処理部438は、“X
s”と“XS”(S2101)、“Y
s”と“YS”(S2102)、“X
e”と“XE”(S2103)、“Y
e”と“YE”(S2104)について、夫々の差分の絶対値を所定の閾値と比較する。この際用いる閾値としては、例えば10、即ち、元の画素単位の座標における30画素分の範囲を用いることができる。
【0101】
S2101〜S2104の判断の結果、全てが所定の閾値内であれば、頻度分布処理部438は、比較対象の欠陥群と欠陥種が類似であると判断する(S2105)。この場合、異常判断部440は、類似であると判断した欠陥種を外部に通知し、処理を終了する。他方、差分が1つでも閾値を超えていた場合、比較対象の欠陥群と欠陥種が非類似であると判断する(S2106)。この場合、異常判断部440は、装置の劣化ではないとして処理を終了する。
【0102】
このような処理により、装置のどの部分が劣化しているかを詳細に判断することが可能となる。また、そのような詳細な判断を開始するためのトリガとして、本実施形態に係る欠陥数の頻度分布の判断を用いることにより、
図20において説明した動作が実行される回数を絞り、装置動作の制御を効率化することが可能となる。
【0103】
尚、上記実施形態においては、
図7のS706において
図19に示すような欠陥群位置情報を生成する場合を例として説明した。しかしながら、装置の劣化によって生じる欠陥は、突発的なものではなく、複数のページにわたって継続的に発生することが考えられる。従って、
図21において説明した動作において比較対象となる欠陥群位置情報は、1ページについての比較検査により抽出された欠陥群に基づくのではなく、複数ページにわたって類似した位置に抽出された欠陥群に基づいて生成しても良い。これにより、装置の劣化判断の精度を向上することが可能である。
【0104】
このように複数にページにわたって継続的に発生している欠陥の判断方法としては、例えば、
図9において説明したように夫々の検査範囲毎の欠陥の判定結果である“1”の値を複数の読取画像について積算し、その積算結果に対して所定の閾値を適用して二値化することにより実現可能である。即ち、二値化の結果“1”となった検査範囲については、複数にページにわたって継続的に欠陥が発生しているということができる。また、夫々の検査範囲毎ではなく、夫々の画素毎にも判断可能であることは上述した通りである。
【0105】
また、上記実施形態においては、欠陥DBから類似する欠陥種が抽出されなかった場合、装置の劣化ではないとして処理を終える場合を例として説明したが、上述した複数ページにわたって類似した位置に欠陥が抽出されることや、本実施形態の要旨である欠陥数の頻度分布により、装置の劣化である可能性が高い場合には、抽出されている欠陥群の“X
s”、“Y
s”、“X
e”、“Y
e”の情報を上述した“XS”、“YS”、“XE”、“YE”の情報として、欠陥DBに登録するようにしても良い。この場合、登録されたデータについて、オペレータが後から欠陥種の情報を入力することにより、欠陥DBを随時更新していくことが可能となる。
【0106】
また、上記実施形態においては、
図8において説明したように、縦横3画素の検査範囲毎に画素値の差分値と閾値との比較を行う場合を例として説明した。このような態様によれば、読取画像とマスター画像との位置合わせが完全な状態ではなかったとしても、位置ずれによって欠陥が誤検知されてしまうことを防ぐことが可能となる。しかしながら、読取画像とマスター画像との精度によっては、各画素毎に画素値の差分値と閾値との比較を行っても良い。そのような場合であっても、
図11において説明した外接矩形の抽出や矩形統合による欠陥群の抽出を行うことにより、上記と同様の効果を得ることが可能である。
【0107】
また、上記実施形態においては、プリントエンジン3の劣化を判断することを目的として説明した。しかしながら、画像の比較検査は読取画像とマスター画像との比較検査であるため、読取装置302による読取画像の生成時に欠陥が生じる場合、即ち、読取装置302が劣化している場合もあり得る。従って、欠陥数の頻度分布によって装置の劣化を判断した場合に、読取装置302にも含めて劣化の可能性があることを通知することが好ましい。
【0108】
また、
図21において説明した欠陥DBによる劣化部位の判断においては、読取装置302の劣化によって生じる欠陥の態様を分析して、
図20において説明した欠陥DBのデータとして読取装置302の劣化を示す欠陥種データを登録しておくことが好ましい。これにより、読取装置302も含めて、劣化部位の判断を行うことが可能となる。