(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記張力付与機構は、前記ウエブバッファ機構及び前記ウエブ位置規制機構の機能が無効化されて前記ユニット内部を搬送される前記ウエブに対して常に張力が付与された状態において、前記ウエブに更に張力を付与することが可能であることを特徴とする請求項1に記載のウエブ搬送装置。
前記ウエブバッファ機構の機能が無効化されることによって前記ウエブの弛みが解消された状態であっても、前記ウエブの曲率が所定の閾値以下となるように前記ウエブの経路を形成するウエブ経路形成機構を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のウエブ搬送装置。
前記ウエブの搬送経路が前記ウエブバッファ機構および前記ウエブ位置規制機構を通る状態で前記ウエブバッファ機構および前記ウエブ位置規制機構の機能が無効化されることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載のウエブ搬送装置。
前記ウエブの搬送経路が前記ウエブバッファ機構および前記ウエブ位置規制機構を通らない搬送経路となることにより、前記ウエブバッファ機構および前記ウエブ位置規制機構の機能が無効化されることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載のウエブ搬送装置。
前記ウエブバッファ機構および前記ウエブ位置規制機構が有効である状態と無効である状態とで前記ウエブの有無が異なる位置において前記ウエブを検知する搬送検知センサと、
前記搬送検知センサの検知結果に応じて前記ウエブバッファ機構および前記ウエブ位置規制機構の制御を切り替える切替制御部とを含むことを特徴とする請求項5に記載のウエブ搬送装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような連続紙を用いる画像形成装置においては、連続紙の蛇行、傾きを抑制し、連続紙が搬送方向に対して平行に搬送される必要がある。連続紙に蛇行、傾きが発生すると、プリントユニットにおける画像形成出力の位置から連続紙が外れ、画像形成出力の位置に不具合が生じてしまう問題や、前処理ユニットおよび後処理ユニットにおいて連続紙が適正に処理されない問題が発生する。
【0008】
上述したようなフリーエリアを設ける態様の場合、フリーエリアにおいては連続紙に張力が加えられていないため、搬送方向と垂直な方向(以降、「主走査方向」とする)における連続紙の移動も自由であり、そのまま連続紙を搬送すると下流側において連続紙の蛇行や傾きが発生してしまう。そのため、連続紙のフリーエリアを設ける態様の場合、主走査方向における連続紙の位置を合わせるためのエッジガイド機構が設けられることが一般的である。
【0009】
このようなエッジガイド機構は、搬送方向に垂直な方向の連続紙の端部をガイドに突き当てることによって連続紙の主走査方向の位置を合わせる機構が一般的である。そのような機構においては、連続紙を主走査方向から見た際に、S字を描くような搬送経路とすることにより主走査方向の断面係数を上げ、連続紙がガイドに突き当たることによる用紙の折れ等を防止している。
【0010】
しかしながら、蛇行や傾きの程度が大きければ、その分連続紙がガイドに突き当てられる力も強くなり、上述したような連続紙の折れや、破断等が発生してしまう。従って、厚みの薄い連続紙を用いる場合等、上述したS字の搬送経路であっても断面係数が不足する場合には、上述したエッジガイド機構を用いることは避けるべきであり、その結果フリーエリアを設けることもできない。
【0011】
また、フリーエリアを設ける態様の場合、フリーエリアの連続紙を引き込んで下流側に搬送する際には、再度張力を付与する必要があるため、連続紙に対して張力を付与するための張力付与機能がフリーエリアの下流側に設けられる。
【0012】
他方、厚みの薄い連続紙を用いるためにエッジガイド機構を避ける場合、上述したようにフリーエリアを設けることはできない。そのため、連続紙の蛇行や傾きを避けるためには、連続紙の搬送経路の全域にわたって常に連続紙に対して張力が付与された状態とする必要がある。しかしながら、連続紙の搬送経路を構成するガイドローラの平行度を完全に一定に保つことは困難であるため、ガイドローラによって連続紙がガイドされる度に連続紙を蛇行させる力(以降、「蛇行力」とする)が生じる。
【0013】
このような場合、ガイドローラにおいて発生した蛇行力と連続紙に加わっている張力とが吊り合う状態で連続紙が搬送されることとなるが、その際の連続紙の主走査方向の位置は、各ユニットの据え付け状態に応じて決定される。従って、連続紙の主走査方向の搬送位置を高精度に保つためには、各ユニットの据え付けを高精度に行う必要があり、装置を稼働させる際のセットアップ時やレイアウト変更時等には高精度な据え付け調整を行うために時間的および技術な負担が大きくなる。
【0014】
このように、連続紙の搬送機構には種類に応じた長所、短所があり、目的に応じて機能が選択されて運用されることとなる。他方、上述したように、複数のユニットが連結されてシステムとして運用される場合においても、搬送される連続紙は全てのユニットを通過するように搬送されることとなる。そのため、各ユニットにおける搬送機構に応じた運用が求められることとなる。
【0015】
上述した各ユニットには、上述したフリーエリア、エッジガイドおよび張力付与の機能(以降、「ウエブバッファ機能」とする)の他、下流側に接続されるユニット内を搬送される連続紙の張力を可変可能な機能(以降、「下流側張力可変機能」とする)を有するものがある。そのような機能を有するユニットや有さないユニット間の組み合わせ応じた装置の運用について
図11を参照して説明する。
【0016】
図11は、連結される2つのユニットである“上流側ユニット”における下流側張力可変機能の有無と、“下流側ユニット”におけるウエブバッファ機能の有無との組み合わせに応じた運用形態を示す表である。「パターン1」に示すように“上流側ユニット”には下流側張力可変機能が設けられており、“下流側ユニット”にはウエブバッファ機能が設けられていない場合、上述したように、断面係数の低い、薄いウエブの搬送を行うことが可能であるというメリットがあるが、装置を稼働させる際のセットアップ時やレイアウト変更時等には高精度な据え付け調整を行うために時間的および技術な負担が大きくなるというデメリットがある。
【0017】
「パターン2」、「パターン3」に示すように、“上流側ユニット”における下流側張力可変機能の有無に関わらず、“下流側ユニット”にウエブバッファ機能が設けられている場合、断面係数の低い、薄いウエブの搬送が不可能であるというデメリットがあるが、「パターン1」の場合のようなデメリットは生じない。
【0018】
尚、「パターン4」の様に、“上流側ユニット”に下流側張力可変機能が設けられておらず、且つ“下流側ユニット”にウエブバッファ機能が設けられていない場合、ユニット間で張力を制御することが不可能であるため、この構成による運用は不可能である。
【0019】
このように、連続紙を用いる画像形成出力のシステムにおいては、目的に応じたユニットが選択され、運用されるが、その分ユニット選択に制約が生じてしまう。また、ユニットの交換に際してもユニット選択に制約が生じてしまう。例えば、パターン1で使用していたシステムにおいて、下流側ユニットをウエブバッファ機能が設けられているユニットに交換すると、それまで使用できていた薄紙などのウエブ幅方向の剛性が小さいウエブが使用できなくなってしまう。
【0020】
他方、パターン2で使用していたシステムにおいて、下流側にユニットをウエブバッファ機能が設けられていないユニットに交換する場合は、高精度な据え付け調整を行うために時間的および技術な負担が大きいというデメリットがある。また、パターン3で使用していたシステムの場合、下流側ユニットとしては、ウエブバッファ機能が設けられているユニットに限定されることとなる。
【0021】
即ち、連続紙を用いる画像形成システムにおいては、システムを構成する各ユニットにおける連続紙の搬送機能によりユニット選択に制約が生じる。このような課題を解決するためには、様々な搬送機能に対応可能な汎用性の高い搬送機構が求められる。
【0022】
尚、このような課題は、画像形成装置において用いられる連続紙の搬送機構に限らず、連続したシート状の部材を搬送するウエブ搬送機構であれば同様に生じ得る。
【0023】
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、ウエブが複数のユニットを通過するように搬送されるシステムに含まれる各ユニットのウエブの搬送機構として、汎用性の高いウエブの搬送機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、ウエブが複数のユニットを通過するように搬送されるシステムに含まれる前記ユニットにおいて前記ウエブを搬送するウエブ搬送装置であって、前記ユニット内部に供給された前記ウエブを弛ませた状態で保持するウエブバッファ機構と、弛ませた状態で保持された前記ウエブの搬送方向に対して垂直な方向の位置を規制するウエブ位置規制機構と、前記搬送方向に対して垂直な方向の位置が規制された前記ウエブに対して張力を付加する張力付加機構とを含み、前記ウエブバッファ機構、前記ウエブ位置規制機構および前記張力付与機構の機能を無効化し、前記ユニット内部を搬送される前記ウエブに対して常に張力が付与された状態とすることが可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ウエブが複数のユニットを通過するように搬送されるシステムに含まれる各ユニットのウエブの搬送機構として、汎用性の高いウエブの搬送機構を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施の形態1.
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態においては、ウエブ搬送装置の例として、ウエブとしての連続紙を用いるインクジェットタイプの画像形成装置を含む画像形成システムにおいて、画像形成装置による画像形成出力の前に紙面上に液体を塗布する液体塗布装置における連続紙の搬送機構を特徴として説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係る画像形成システム全体の構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成システムは、連続紙がロール状に巻かれた連続紙を送り出す前処理機1、前処理機1から送り出された連続紙の表面に液体を塗布する前処理液塗布装置2、前処理液塗布装置2によって液体が塗布された連続紙に対して色材を吐出して画像を形成するインクジェットプリンタ本体3および画像が形成された用紙を巻き取る後処理機4を含む。即ち、本実施形態においては、前処理液塗布装置2が液体塗布装置として機能する。
【0029】
尚、
図1においては、インクジェットプリンタ本体3が1つのみ設けられる場合を示しているが、1つめのインクジェットプリンタ本体3の後に連続紙の反転機構を介して2つめのインクジェットプリンタを配置し、連続紙両面への画像形成出力を可能とする場合もある。
【0030】
図1に示すような構成において、本実施形態に係る要旨は、前処理液塗布装置2における連続紙の搬送機構にある。本実施形態に係る前処理液塗布装置2の構成について、
図2を参照して説明する。
【0031】
図2は、本実施形態に係る前処理液塗布装置2の構成を、連続紙の搬送経路の観点で示す図である。
図2に示すように、前処理液塗布装置2内部においては、図示しない軸受けが端部に設けられた複数のガイドローラ201が配置されており、このガイドローラ201によって連続紙の搬送経路が構成されている。
【0032】
引き込みローラ202は、図示しないモータなどの駆動源によって回転駆動されるローラである。引き込みローラ202には、バネ等の弾性体の弾性力によってニップローラ203が押し付けられており、引き込みローラ202が回転駆動されることによって、ニップローラ203と引き込みローラ202とによって挟持された連続紙が前処理液塗布装置2の上流側に配置されている前処理機1から引き込まれる。
【0033】
引き込みローラ202とニップローラ203によって引き込まれ、下流側に送り出された連続紙は、張力が解除され撓んだ状態となって保持される。これにより、ウエブバッファ204が形成されている。ウエブバッファ204において連続紙が垂れ下がる位置にはウエブバッファセンサ204a、204b、204c、204d(以降、総じて「ウエブバッファ量センサ204n」とする)が設けられている。
【0034】
夫々のセンサの出力信号により、前処理液塗布装置2を制御する制御部は、ウエブバッファ204における連続紙の弛み量を認識することができ、それに応じて引き込みローラ202の回転を制御することにより、ウエブバッファ204における連続紙の弛み量を調整することができる。
【0035】
即ち、引き込みローラ202、ニップローラ203、ウエブバッファセンサ204nが、ウエブバッファ204を形成するためのウエブバッファ機構として機能する。ウエブバッファ204は、ウエブである連続紙をバッファし、下流側に対して安定して連続紙を送り出す機能や、前処理機1において連続紙に付与されている張力の影響を分断する機能を担っている。
【0036】
ウエブバッファ204を経た連続紙は、パスシャフト205とエッジガイド206の間を通る。
図2に示すように、パスシャフト205においては、連続紙の搬送方向と直交する方向(以降、「主走査方向」とする)に平行な2本のシャフトが配置され、ウエブWがそのパスシャフト205の間をSの字状に通る。
【0037】
このパスシャフト205に一対のエッジガイド206が支持されている。エッジガイド206は板面が略平行になるように配置された2つのガイド板206a、206bによって構成され、2つのガイド板206a、206bの間隔は、連続紙の主走査方向の幅と略同一となるように設定されている。そのため連続紙の主走査方向の走行位置はエッジガイド206の配置に応じた位置となる。
【0038】
ここで、
図3(a)、(b)を参照してパスシャフト205およびエッジガイド206から下流側の連続紙の搬送経路について説明する。
図3(a)に示すように、パスシャフト205は主走査方向に対して平行に配置された2本のシャフトである。この2本のシャフトに連続紙がかけ渡される。
【0039】
ここで、
図3(a)の図面に対して垂直な方向から見た場合に、一方のシャフトに対しては図面の表前側を、他方のシャフトに対しては図面の裏面側を通るように連続紙がかけ渡される。これにより、主走査方向から見た場合の連続紙の経路がS字状となる。これにより、連続紙を直線状に搬送する場合よりも、連続紙の主走査方向端部における断面係数を上げることが出来る。
【0040】
エッジガイド206は、パスシャフト205に対して例えばネジ等で固定されており、
図3(b)に示すように、搬送される連続紙の主走査方向幅の寸法に応じて位置の調整が可能である。上述したようにパスシャフト205によって連続紙の断面係数が上げられた状態において、連続紙の主走査方向端部がエッジガイド206に突き当てられることにより、連続紙の主走査方向の搬送位置がエッジガイド206の位置に合わせられる。即ち、パスシャフト205及びエッジガイド206がウエブ位置規制機構として機能する。
【0041】
パスシャフト205とエッジガイド206の間を通過したウエブWは、テンションローラ208と押し付けローラ207との間を通過する。テンションローラ208と押し付けローラ207とによって挟持されることにより、その下流側における連続紙搬送の安定性が確保するために必要な張力が付与される。即ち、テンションローラ208、押し付けローラ207が張力付加機構として機能する。
【0042】
押し付けローラ207はバネ等の弾性体によりテンションローラ208側に押し付けられており、これにより、テンションローラ208と押し付けローラ207とによって連続紙が挟持される。テンションローラ208は偏芯しておりその位相を回転することで押し付けローラ207への押し付け量を変化させることが出来る。
【0043】
テンションローラ208の回転位置を調整することにより連続紙に加わる押し付けローラ207の押し付け力を変化させることができるため、連続紙に加わる負荷が変化する。つまり下流のウエブ張力を変化させることができる。テンションローラ208は例えばモータなどの駆動源によって回転駆動が可能である。即ち、モータ等の駆動源を含むテンションローラ208と、押し付けローラ207とで張力付与機構が構成される。
【0044】
張力付与機構の下流側には、連続紙の裏面側に処理剤液を塗布する裏面塗布手段213r、表面側に処理剤液を塗布する表面塗布手段213fが設けられている。これらの塗布手段を連続紙が通過することにより、連続紙の両面に処理剤液が塗布される。表面塗布手段213f、裏面塗布手段213rは、多段ロールにより汲み上げられた液を塗布ローラと加圧ローラのニップ間を通過する連続紙に転写する。
【0045】
2つの塗布手段の下流側には、内部にヒータランプが配置された加熱ロールによって構成される裏面乾燥手段212r、表面乾燥手段212fが設けられている。この2つの乾燥手段に巻き掛けられるように連続紙が搬送されることにより、塗布手段において塗布された処理剤液が乾燥される。
【0046】
乾燥手段の下流側には、モータなどの駆動源によって回転駆動されるフィードローラ210と、バネ等の弾性体によりフィードローラ210に押し付けられているフィードニップローラ209とが配置されている。フィードローラ210が回転駆動されることにより、フィードニップローラ209との間で連続紙が挟持された状態で搬送される。
【0047】
フィードローラ210およびフィードニップローラ209の下流側には、回転自在なダンサーローラ215a、215bが配置されており、2つのダンサーローラと交互にガイドローラ201が配置されることにより、
図2に示すようにW型の搬送経路が構成されている。
【0048】
2つのダンサーローラ215a、215bは、夫々ローラ端部に設けられた軸受けを介して稼働フレーム216に回転自在に取り付けられ、ダンサーローラ機構217を構成している。即ち、ダンサーローラ機構217は、連続紙によって吊り下げられた状態となっている。ダンサーローラ機構217は、図中Aの矢印で示す鉛直方向に沿って移動可能であり、フィードローラ210の駆動源が加減速制御されることによりダンサーローラ機構217の位置が調整される。
【0049】
また、ダンサーローラ機構217が移動する範囲にはダンサーローラ機構位置センサ217a、217b、217c、217d(以降、総じて「ダンサーローラ機構位置センサ217n」とする)が設けられており、前処理液塗布装置2を制御する制御部は、ダンサーローラ機構位置センサ217a〜217dの検知信号に基づいてダンサーローラ機構217の位置を認識可能である。従って、前処理液塗布装置2を制御する制御部は、ダンサーローラ機構位置センサ217a〜217dの検知信号に基づいてフィードローラ210の駆動源の加減速制御を行うことにより、ダンサーローラ機構217の位置を調整制御する。
【0050】
このようにして前処理液塗布装置2内を通過した連続紙は
図1において説明したように、下流側に配置されたインクジェットプリンタ本体3へと送り込まれる。尚、インクジェットプリンタ本体3には、前処理液塗布装置2と同様に、装置内部を搬送される連続紙の主走査方向位置を規制する手段が設けられていることが一般的である。
【0051】
次に、本実施形態に係る前処理液塗布装置2の制御構成について、
図4を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係る前処理液塗布装置2の制御構成を示すブロック図である。
図4に示すように、本実施形態に係る前処理液塗布装置2においては、コントローラ220が装置各部の構成を制御するように構成されている。
【0052】
コントローラ220は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成される。具体的には、ROM(Read Only Memory)や不揮発性メモリ並びにNV−RAM(Non Volatile−Random Access Memory)や光学ディスク等の不揮発性記録媒体に格納されたファームウェア等の制御プログラムに従ったCPU(Central Processing Unit)の演算によって構成されるソフトウェア制御部と集積回路などのハードウェアとによってコントローラ220が構成される。
【0053】
図4に示すように、コントローラ220は、主制御部221、塗布制御部222、センサ制御部223、張力制御部224および搬送制御部225を含む。主制御部221は、コントローラ220に含まれる各部を制御する役割を担い、コントローラ220の各部に命令を与える。
【0054】
塗布制御部222は、
図2に示す表面塗布手段213fおよび裏面塗布手段213rに夫々含まれる多段ロールや処理剤液の供給機構を制御することにより、連続紙への処理剤液の塗布を制御する。
【0055】
センサ制御部223は、
図2において説明したウエブバッファセンサ204nおよびダンサーローラ機構位置センサ217nによる検知信号を取得する。これにより、主制御部221は、センサ制御部223を介してウエブバッファセンサ204nおよびダンサーローラ機構位置センサ217nによる検知状態を認識する。
【0056】
張力制御部224は、
図2において説明したテンションローラ208の回転位置を制御することにより、テンションローラ208と押し付けローラ207とで連続紙に付与される張力を制御する。
【0057】
搬送制御部225は、引き込みローラ202を回転駆動するモータを駆動制御することにより、引き込みローラ202によって前処理液塗布装置2内部に引き込まれる連続紙の引き込み速度を制御する。また、搬送制御部225は、フィードローラ210を回転駆動するモータを駆動制御することにより、フィードローラ210下流側への連続紙の搬送速度を制御する。
【0058】
尚、上述したように、引き込みローラ202の回転はウエブバッファセンサ204nの検知状態に応じて制御される。従って、主制御部221は、センサ制御部223を介してウエブバッファセンサ204nの検知状態を認識し、その認識結果に応じた制御値を搬送制御部225に対して設定する。これにより、搬送制御部225は、ウエブバッファセンサ204nの検知状態に応じた搬送速度で引き込みローラ202を駆動制御する。
【0059】
また、フィードローラ210の回転は、ダンサーローラ機構位置検知センサ217nの検知状態に応じて制御される。従って、主制御部221は、センサ制御部223を介してダンサーローラ機構位置センサ217nの検知状態を認識し、その認識結果に応じた制御値を搬送制御部225に対して設定する。これにより、搬送制御部225は、ダンサーローラ機構位置センサ217nの検知状態に応じた搬送速度でフィードローラ210を駆動制御する。
【0060】
このような構成において、本実施形態に係る要旨は、引き込みローラ202およびニップローラ203によって構成される連続紙の引き込み機構、ウエブバッファ204による連続紙のバッファ機構、パスシャフト205およびエッジガイド206によって構成される連続紙の主走査方向の位置合わせ機構、テンションローラ208および押し付けローラ207とで構成される張力付与機構の有効/無効の切替機能にある。以下、上記夫々の機構を無効化する場合の態様について説明する。
【0061】
図5は、上記全ての機構を無効化する場合の前処理液塗布装置2の構成を、連続紙の搬送経路の観点で示す図である。上記全ての機構が無効化された場合、ウエブバッファは引き込みローラ202による連続紙の引き込みによって形成されるため、連続紙の引き込み機構が無効化された
図5の状態においては、ウエブバッファがなくなった搬送経路となっている。その結果、前処理液塗布装置2内部を搬送される連続紙は、常に張力が付与された状態となる。
【0062】
連続紙の引き込み機構を無効化する手段は様々であるが、基本的には引き込みローラ202に関する手段である。例えば、
図4において説明した搬送制御部225による引き込みローラ202の駆動制御を無効化し、引き込みローラ202を回転駆動するためのモータの回転を停止させる方法である。
【0063】
また、引き込みローラ202とその駆動源であるモータとの間にクラッチを設けておき、モータから引き込みローラ202への動力伝達を遮断し、引き込みローラ202を連続紙の搬送に従動させても良い。また、
図6に示すように、引き込みローラ202に対するニップローラ203の押し付けを解除することにより、引き込みローラ202が回転しても連続紙が挟持されないために搬送力を生み出さないようにしても良い。
【0064】
この場合、ウエブバッファ204における連続紙の弛み量を監視するためのウエブバッファセンサ204nも無効化される。この場合、光学センサであるウエブバッファセンサ204nの光源を停止することにより検知を無効化する方法がある。
【0065】
また、主制御部221におけるウエブバッファセンサ204nの検知状態に基づく制御を無効化するように制御を切り替える方法もある。この場合、ウエブバッファセンサ204nの検知結果に関わるアラームやエラーなども無効とし搬送機能に支障がないようにすることが好ましい。ウエブバッファセンサ204nの検知情報と引き込みローラ202の駆動制御は一体であるため、これらを機能的に無効化する方法は組み合わせにより様々考えられるが、どのような態様であっても、ウエブバッファ204がなくなった搬送経路を実現すれば良い。
【0066】
また、エッジガイド206を構成するガイド板206a、206bが
図3(b)において説明したように移動され、連続紙の主走査方向の位置合わせ機構が無効化される。
図3(a)において説明したように、連続紙の主走査方向の位置合わせ機構を用いる場合、2つのガイド板間の間隔は連続紙の主走査方向幅と同等の間隔である。これに対して、ガイド板間の間隔を連続紙の主走査方向幅よりも広くすることにより、連続紙のエッジがガイド板に突き当てられなくなり、連続紙の主走査方向の位置合わせ機構が無効化される。
【0067】
図3(a)に示す状態から
図3(b)に示す状態にガイド板間を広げる方法としては、例えば手作業による方法がある。即ち、パスシャフト205にエッジガイド206を固定しているネジ等を緩めることにより、2つのガイド板206a、206bがパスシャフト205上を主走査方向に移動可能な状態とし、連続紙の主走査方向幅よりも十分外側に移動させる。
【0068】
尚、このような手動による調整態様の他、ガイド板206a、206bを移動させるためのモータ等の駆動源を設ける態様が考えられる。即ち、ガイド板206a、206bを、ワイヤやベルトまたはスクリュウシャフトなどにより、上述した駆動源と接続し、前処理液塗布装置2に設けられた操作パネル等からの設定により、該駆動源を駆動してガイド板206a、206bを移動させ、エッジガイド206の使用/未使用を切り替えられるようにする方法などが考えられる。
【0069】
張力付与機構の無効に際しては、テンションローラ208と押し付けローラ207のニップを解除し、連続紙に負荷がかからないようにする。上述したようにテンションローラ208は偏芯しており、駆動源により偏芯の位相を調整することによりウエブに与える張力を制御している。そのため、テンションローラ208の駆動源を駆動することで対応可能である。このような態様は、例えば、
図4において説明したように、主制御部221が張力制御部224に対して命令を与えることによって容易に実現可能である。
【0070】
尚、張力付与機構を無効とする方法は、手動で押し付けローラ207のニップを解除する方法でも良い。また、連続紙に張力を付与する機構は、偏心しているテンションローラ208および押し付けローラ207を用いた態様に限らず様々な態様があり得る。従って、張力付与機構を無効化する方法については、張力付与機構の構成に応じて様々な態様を取り得る。
【0071】
図2に示す状態と
図5に示す状態との切り替えにより、ウエブである連続紙の搬送経路を変更することなく、連続紙の引き込み機構、連続紙のバッファ機構、連続紙の主走査方向の位置合わせ機構、張力付与機構の有効/無効を切り替えることが可能である。そのため、連続紙の架け替えをすることなく簡単な設定切替により状況に応じて求められるウエブの搬送機能を実現することが可能である。
【0072】
従って、このように
図2に示す状態と
図5に示す状態との切り替え機能により、汎用性の高いウエブの搬送機構を提供することが可能となる。その結果、ウエブが複数のユニットを通過するように搬送されるシステムに含まれる各ユニットにおけるユニットの選択における制約を緩和することが可能である。
【0073】
また、本実施形態においては、連続紙を送り出す前処理機1と連続紙上に画像を形成するインクジェットプリンタ本体3との間に接続される前処理液塗布装置2において、本件の要旨である切り替え機能が設けられている。従って、本実施形態に係る前処理液塗布装置2を用いることにより、前処理機1およびインクジェットプリンタ本体3における連続紙の搬送機構に対する制約を解消し、ユニット選択の選択肢を広げることが出来る。
【0074】
図7は、
図5、
図6に示す態様を更に発展させた例を示す図である。
図5、
図6に示すように、ウエブバッファを使用しない搬送機構とした場合には当該部分を通過するウエブWの曲率が大きくなる。パスシャフト205を構成する2つのシャフトの直径は、一般的に10〜20mm程度と細いため、この部分で連続紙にかかる負荷が大きくなる。
【0075】
この部分において連続紙に加わる負荷がフィードローラ210の駆動源の発生トルクを超過する場合や、フィードニップローラ209の加圧力と摩擦係数により決定する搬送力を超過する場合、フィードローラ210において連続紙のスリップが発生し、ウエブ搬送が不可能となる課題が発生する。
【0076】
これに対して、
図7に示すように、パスシャフト205の上流側であって、ウエブバッファ204が形成される際にも搬送経路の妨げとならない位置に、連続紙の搬送に従動するパス形成ローラ218を追加することで、パスシャフト205を構成するシャフトでの連続紙の曲率を抑制し、上述した課題を回避することが出来る。即ち、パス形成ローラ218は、ウエブバッファ機構が無効化されることにより連続紙の弛みが解消された状態であっても、連続紙の曲率が所定の閾値以下となるように連続紙の経路を形成するウエブ経路形成機構として機能する。
【0077】
尚、
図7においては、ウエブバッファ204の機能が無効化され、ウエブの緩みが解消された場合に、ウエブの曲率が所定の閾値を超えないようにウエブの搬送系を形成するためのウエブ経路形成機構として、回転体であるパス形成ローラ218を用いる場合を例として説明した。しかしながらこれは一例であり、回転体以外であっても上記機能を実現する構成であれば採用可能である。
【0078】
尚、
図5〜7に示すように、ウエブバッファ機能を無効化する場合は、上流側のユニットである前処理機1において、前処理液塗布装置2内部の連続紙の張力を可変する下流側張力可変機能が設けられている場合である。しかしながら、前処理液塗布装置2内での連続紙の蛇行力が大きい場合は、前処理機1における下流側張力可変機能によって付与される張力を最大に設定したとしてもウエブ蛇行が抑制できない可能性がある。
【0079】
その結果、連続紙の主走査方向の搬送位置の精度が低下し、印刷品質が低下する課題が発生する。これに対して、ウエブバッファ機能を無効化した状態であっても、テンションローラ208と押し付けローラ207による前処理液塗布装置2内部の張力付与機能を有効にすることにより、張力を上乗せして付与可能であり、上述した課題を防止できる。つまり本発明によれば、前処理装置の張力付与機能が不足する場合でも、必要性に応じた機能が選択可能であり、より汎用性の高いウエブ搬送機構を提供することが出来る。
【0080】
図5〜
図7においては、上述したように連続紙の引き込み機構、連続紙のバッファ機構、連続紙の主走査方向の位置合わせ機構、張力付与機構が無効化されているが、ウエブバッファによる連続紙の弛み以外、連続紙の搬送経路は
図2に示す態様と同一である。これに対して、
図8は、無効化された部分をバイパスして連続紙を搬送する態様を示す図である。
【0081】
図8に示す例においては、連続紙の搬送経路が、引き込みローラ202、ウエブバッファ204、パスシャフト205、エッジガイド206およびテンションローラ208と押し付けローラ207とを通らない搬送経路となることにより、ウエブバッファ機構が無効されている。これにより、前処理液塗布装置2内部の最上流側に配置されたガイドローラ201からテンションローラ208と押し付けローラ207との下流側に配置されたガイドローラ201まで直接連続紙がかけ渡されている。
【0082】
図8に示すような態様を可能とするためには、引き込みローラ202の上流のガイドローラ201から、テンションローラ208と押し付けローラ207との下流側のガイドローラ201までのパス経路に、連続紙に干渉するものがないように装置内の機構部品を実装する必要がある。
【0083】
このような構成により、連続紙の引き込み機構、連続紙のバッファ機構、連続紙の主走査方向の位置合わせ機構、張力付与機構を使用しない搬送機構の場合には、引き込みローラ202や押し付けローラ207の磨耗を回避することが可能となる。その結果、部品交換によるコストやダウンタイム時間を抑制することが可能となる。
【0084】
図9は、
図8に示す態様を更に発展させた例を示す図である。
図9に示す例においては、
図2に示す状態においては連続紙の搬送経路となるが、
図8に示す状態においては連続紙の搬送経路とはならない位置において連続紙の有無を検知するための搬送経路判定センサ219が設けられている。
【0085】
即ち、搬送経路判定センサ219は、ウエブバッファ機構が有効である状態と無効である状態とで、連続紙の有無が異なる位置において連続紙を検知する搬送検知センサである。
図10は、
図9に示す例において前処理液塗布装置2を制御するための制御構成を示す図であり、搬送経路判定センサ219が設けられている点が
図4とは異なる。
【0086】
図9、
図10に示す構成によれば、主制御部221は、センサ制御部223を介して搬送経路判定センサ219の検知状態を認識することにより、前処理液塗布装置2内部の最上流側に配置されたガイドローラ201からテンションローラ208と押し付けローラ207との下流側に配置されたガイドローラ201までの搬送経路がバイパスされているか否かを認識することが可能となる。
【0087】
搬送経路がバイパスされている場合とは、即ち連続紙の引き込み機構、連続紙のバッファ機構、連続紙の主走査方向の位置合わせ機構、張力付与機構が無効化される場合である。従って、そのような認識結果の場合、主制御部221は、ウエブバッファセンサ204nによる検知を無効化し、張力制御部224を制御してテンションローラ208による張力付与機構を無効化し、搬送制御部225を制御して引き込みローラ202による連続紙の引き込み機構を無効化する。即ち、主制御部221が切替制御部として機能する。
【0088】
このような構成により、上記各機構の無効化設定を手動で行う必要がなくなり、設定忘れによる人為的ミスの回避や、手動設定のための人的負荷の解消を行うことが可能となる。
【0089】
尚、搬送経路判定センサ219として用いられるセンサとしては、反射式光学センサ、透過式光学センサ、マイクロスイッチなど様々なものを用いることが可能である。
【0090】
尚、上記実施形態においては、連続紙を用いる画像形成システムを例として説明したが、これは一例である。即ち、画像形成システムに限らず、シート状の部材であるウエブが複数のユニットを通過するように搬送されるシステムに含まれる各ユニットのウエブの搬送機構であれば、同様に適用することが可能であり、上記と同様の効果を得ることが可能である。