特許第6252302号(P6252302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6252302
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/48 20100101AFI20171218BHJP
【FI】
   H01L33/48
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-68802(P2014-68802)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-192061(P2015-192061A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】岡 祐太
【審査官】 吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−077491(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/118002(WO,A1)
【文献】 特開2013−232656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を備える発光体と、前記発光体の上面を封止するレンズと、を含み、前記レンズの底面から前記発光体の下面が露出し、前記発光体の下面に垂直な方向からの上面視において前記底面が前記発光体の外側にまで延在している発光装置の製造方法であって、
1)基体上に接着層を設ける工程と、
2)前記接着層上に開口部を有するシム板を配置する工程と、
3)前記シム板の前記開口部から露出した前記接着層上に、前記発光体を配置する工程と、
4)表面に凹部を設けた金型を、前記シム板に近づけ、前記凹部内において、レンズ形成材料により、前記発光体の上面と前記シム板の上面とを覆った後、前記レンズ形成材料を硬化させることにより前記レンズを形成する工程と、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記シム板の前記開口部が、前記シム板の下面から上面に向けて広がるテーパー部を有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程3)の後で且つ前記工程4)の前に、前記シム板の側面と前記発光体の側面との間の隙間を樹脂で埋める工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記発光体が、上方から下方に向けて狭くなるテーパー部を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記レンズが前記底面の端部に、前記発光体の上面に平行な方向に対して傾斜している傾斜部を有し、
前記シム板が、前記基体の上面に平行な方向に対し傾斜した、傾斜面を有し、前記工程4)において、前記傾斜部を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程3)において、前記シム板の前記テーパー部と、前記発光体の前記テーパー部とを対向させることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記レンズが、トランスファーモールドまたは圧縮成形により形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の製造方法、とりわけ発光素子を覆うように配置したレンズを有する発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード等の半導体チップ(発光素子)を用いた発光装置は小型化が容易で且つ高い発光効率が得られることから、広く用いられている。
このような発光装置の中には、例えば、実装基板の上面側方向等の特定の方向により多くの光量を得るために、半導体チップからの光を所望の方向に屈折させるレンズ(レンズとして機能する封止部)を有するものがある。レンズを備えたこの種の発光装置は、照明やバックライトをはじめとする多くの用途で用いられている。
【0003】
このような発光装置に用いられるレンズは、通常、発光素子を覆うように実装基板上に配置される。そして、発光素子の発光のうち、多くはレンズにより屈折し、レンズの上面から所望の方向に向かうこととなる。
しかし、このようにレンズを配置すると、レンズの下面の大部分は、実装基板の表面と接触することになる。この結果、発光素子を出た光の一部、とりわけ、下方に向かう光は、レンズを出て実装基板に達する。これは、レンズを形成するガラスまたは樹脂等の透光性材料の屈折率nと基板を形成する材料の屈折率nについて、nよりnの方が大きいため全反射が起こらない、またはnの方がnより大きくてもその差が小さいため全反射が起こる臨界角が大きくなることによる。
【0004】
そして、実装基板に達した光の一部は反射され再びレンズ内に戻るものの、実装基板に達した光のかなりの部分が実装基板に当たり、吸収されてしまう。この実装基板による吸収は、実装基板の表面の反射率を高くすることで緩和することができる。しかし、このような既知の緩和策を行っても、相当量の光が、実装基板に吸収されるため、光取り出し効率が低下するという問題があった。
そこで、平面視において基板の外側までレンズ(特にレンズの底面)を延在させた発光装置が知られている。
【0005】
このような発光装置では、実装基板の上に発光素子が実装されている。この発光素子と、実装基板の上面とがレンズの内部に配置され、レンズの底面より実装基板下面が突出(露出)している。
【0006】
そして、レンズの底面のうち、実装基板の外側にまで延在している部分は空気と接している。空気は、屈折率が小さいことから、レンズを形成するガラスまたは樹脂等の透光性材料の屈折率n1と空気の屈折率nairとの差が大きな値となり、全反射が起こる臨界角が小さな値となる。この結果、発光素子からレンズの底面に達した光の大部分が反射され、レンズの底面から外部に出る光の量を抑制することができる。
従って、平面視において実装基板の外側までレンズ(特にレンズの底面)を延在させた発光装置は高い取り出し効率、とりわけレンズ上面からの高い取り出し効率を得ることができる。
【0007】
このような、平面視において実装基板の外側までレンズを延在させた発光装置の製造方法として、特許文献1および特許文献2に記載の方法が知られている。
【0008】
特許文献1に記載の方法は、下型(下側金型)の上に、発光素子を載置した実装基板を複数、互いに離間させて配置する。離間した実装基板の間にスペーサを配置する。次に、下面に得ようとするレンズの形状に対応した凹部を有する上型(上側金型)を凹部内に硬化前の封止部材(レンズ用材料)が装填された状態で、凹部内に発光素子が入るように、下型に接触および圧下した後、封止部材を硬化させて所望のレンズ形状を有する発光装置を得ている。
【0009】
特許文献2に記載の方法は、チャックを用いて、下面上に、発光素子を載置した実装基板を保持する上側金型(上母型)と、上面に得ようとするレンズの形状に対応した凹部を有する下側金型を準備する。上側金型と下側金型を密着させて、凹部(チャンバ)内に実装基板と発光素子と配置した後、上側金型に設けた排気口を用いて、凹部内を減圧後、上側金型に設けた注入口を介して、熱硬化性樹脂のモノマーと重合触媒との混合液を凹部内に供給する。そして、この混合液を硬化させて所望のレンズ形状を有する発光装置を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−077491号公報
【特許文献2】特開2007−273764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載の方法を用いた場合、硬化前の封止部材が実装基板の下面に回り込み、得られた発光装置の実装基板の下面に樹脂皮膜を形成してしまう場合があった。
このような樹脂皮膜が実装基板の下面に設けた配線層上に形成されると、導通不良を生ずるという問題がある。また、導通不要を回避するためには、レンズ形成後にこの樹脂皮膜を除去する工程を追加する必要があった。
【0012】
一方、引用文献2に記載の方法を用いた場合、硬化時の樹脂の収縮等により、レンズの底面が平面または滑らかな曲面とならず、底面に凹凸を生ずる(例えば断面内でレンズ底面に凹凸生ずる)等により全反射が起こらない場合があると言う問題があった。
【0013】
そこで、本発明は、平面視において実装基板の外側まで延在するレンズを有する発光装置であって、レンズ形成時に実装基板の下面に樹脂が回り込むのを抑制し、かつレンズの底面が平面または滑らかな曲面を有する発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る製造方法は、発光素子を備える発光体と、前記発光体の上面を封止するレンズと、を含み、前記レンズの底面から前記発光体の下面が露出し、前記発光体の下面に垂直な方向からの上面視において前記底面が前記発光体の外側にまで延在している発光装置の製造方法であって、1)基体上に接着層を設ける工程と、2)前記接着層上に開口部を有するシム板を配置する工程と、
3)前記シム板の前記開口部から露出した前記接着層上に、前記発光体を配置する工程と、4)表面に凹部を設けた金型を、前記シム板に近づけ、前記凹部内において、レンズ形成材料により、前記体上面と前記シム板の上面とを覆った後、前記レンズ形成材料を硬化させることにより前記レンズを形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る製造方法を用いることで、レンズ成形時に実装基板の下面に樹脂が回り込むのを抑制できる。また、平面視において実装基板の外側まで延在するレンズを有する発光装置を得ることができ、かつ、得られた発光装置のレンズの底面は、平面または滑らか曲面を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)〜(c)は、図3に示す発光装置100を製造する方法を示す模式断面図である。
図2図2(a)、(b)は、図3に示す発光装置100を製造する方法を示す模式断面図である。
図3図3は、発光装置100を示す模式断面図である。
図4図4は、シム板14の開口20内に配置された発光体3の配置を示す模式断面図である。
図5図5(a)は、シム板14の模式上面図であり、図5(b)は、図5(a)に示された開口部20の拡大図である。
図6図6は、開口部20の側面と実装基板4との間にシーリング樹脂22を配置した実施形態を示す模式断面図である。
図7図7は、実装基板がテーパー部を有する実施形態を示す模式断面図である。
図8図8は、本発明の変形例に係る発光装置100Aを示す模式断面図である。
図9図9は、シム板14Aの開口部20内に配置された発光体3の配置を示す模式断面図である。
図10図10(a)は、発光体3Aを示す模式断面図であり、図10(b)は、発光体3Bを示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。複数の図面に表れる同一符号の部分は同一の部分又は部材を示す。
また、これらの図面は、本発明の理解を容易にするために、一部分を誇張して表示している場合がある。従って、縮尺および相対的な配置等が、実際の本発明に係る物品と異なる場合があることに留意されたい。
【0018】
図1(a)〜(c)および図2(a)、(b)は、図3に示す発光装置100を製造する方法を示す模式断面図である。図3は、発光装置100を示す模式断面図である。
図1(a)〜(c)および図2(a)、(b)を用いて、本発明に係る製造方法を説明する前に、発光装置100について説明しておく。
【0019】
発光装置100は、実装基板4および実装基板4の上に実装(載置)された発光素子2を有する発光体3と、レンズ9とを含む。
発光素子2は、半導体層を含み、必要に応じて半導体層の外面を覆う蛍光体層6を含んでいる。半導体層は、p型半導体層とn型半導体層とを含み、その間で発光する。また、半導体層は必要に応じてp型半導体層とn型半導体層の間に活性層(発光層)を含んでよい。
【0020】
実装基板4の表面および内部には発光素子2に電力を供給する配線パターン8が形成されている。
より詳細には、実装基板4の上面(図3のZ方向側の主面)には2つの上面配線パターン8aが配置され、2つの上面配線パターン8aの一方が、発光素子2のp型半導体層と電気的に接続され、他方が、発光素子2のn型半導体層と電気的に接続されている。また、2つの上面配線パターン8aは、それぞれ、例えば貫通ビアのような基板貫通配線8bと、下面配線8cとを介して、発光装置100の外部に設けた配線等と電気的に接続可能である。
このような外部の配線として、図示しない二次基板(第2の基板)に設けた配線パターンを挙げることができる。例えば、二次基板の上面に発光体3の底面(実装基板4の下面)を実装することで、実装基板4の下面配線パターンと二次基板の配線パターンとを電気的に接続することができる。これにより、発光体3の発光素子2に外部電源から電力を供給することが可能となる。
【0021】
レンズ9は、上面28と底面29とを有し、底面29からレンズ9の内部に発光体3の一部分が埋め込まれている。より詳細には発光素子2と実装基板4の上面(図3において、実装基板4のX−Y面に平行な2つの主面のうち、Z側の主面)とがレンズ9の内部に埋め込まれている(すなわち、発光素子2と、実装基板4の上面とがレンズ9の内部に封止されている)。また、レンズ9の底面29からは、実装基板4の下面(図3において、実装基板4のX−Y面に平行な2つの主面のうち、−Z側の面)が露出している。
【0022】
図3に示す実施形態では、発光素子2はその全体がレンズ9の内部に封止されている。実装基板4は、上面全体がレンズ9の内部に封止され、4つの側面は、それぞれ、その一部分がレンズ9の内部に配置されている。この結果、実装基板4の下面は、レンズ9の底面29から突出して露出している。
このような構成を有することにより、発光素子2からの発光を確実にレンズ9の内部に導くことができる。さらに、例えば、実装基板4の下面を2次基板の上面等の平面部に載置した場合(すなわち、発光装置100を広い基板等の平面部上に配置した場合)でも、レンズ9の底面29のうち、上面視において実装基板4の外側にまで延在している部分(以下、「外側延在部」と言う場合がある)を、確実に、基板材料等と比べて屈折率の低い空気に接触させることができる。
【0023】
レンズ9は、実装基板4の下面(すなわち、発光体3の底面)に垂直な方向(Z方向)からの上面視において、その底面29が実装基板4の外側にまで延在している(すなわち、底面29は、実装基板4の外側に延在する「外側延在部」を有する)。
図3に示す実施形態では、レンズ9は半球状の形状を有している。このため、上面28は球面(半球面)となっており、底面29は平面となっている(実装基板4および発光素子が埋め込まれている部分を除く。すなわち、外側延在部が平面となっている。)。
好ましくは、発光体3(すなわち、図3に示す実施形態では実装基板4)の横方向(図3のX方向)の長さおよび縦方向(同Y方向)の長さをレンズ9の外径より短くすることにより、図3に示すように発光体3(すなわち、図3に示す実施形態では実装基板4と同じ)の外周全体において、レンズ9の底面29が発光体3(または実装基板4)の外側まで延在している(すなわち、発光体3(または実装基板4)の外周全体にレンズ9の底面29の外側延在部が形成されている。)。
しかし、これに限定されるものではなく、例えば、発光体3(または実装基板4)の横方向の長さおよび縦方向の長さの一方をレンズ9の外径より長くし、他方をレンズ9の外径より短くする等により、発光体3(または実装基板4)の外周の一部分において、レンズ9の底面29が発光体3(または実装基板4)の外側まで延在してもよい。
【0024】
レンズ9の底面29のうち、発光体3(または実装基板4)の外側にまで延在している部分は、上述のように、屈折率が低い空気と接することとなる。このため、この部分では全反射の臨界角が小さくなり、発光素子2から、この部分に達した光の多くが、反射されてレンズ9内部を進むこととなる。
これにより、高い取り出し効率を得ることができる。
なお、発光体3(または、実装基板4および発光素子2)は、上面視において、レンズ9の略中央に位置することが好ましい。レンズ9(とりわけ、レンズ9の上面28)から外に出る光が均一になるからである。
【0025】
次に発光装置100の製造方法について詳述する。
図1(a)に示すように、基体(例えば、下側金型)18の上に接着層16を設けた後、図1(b)に示すように、接着層16の上にシム板14を配置する。そして図1(c)に示すように、シム板14に設けた開口部20に、実装基板4および実装基板4の上面に載置された発光素子2を有する発光体3を配置する。
図4は、シム板14の開口部20内に配置された発光体3の配置を示す模式断面図である。図4は、図1に示す、複数の実装基板4等のうちの1つの周辺部分を拡大した図に相当する。
図5(a)は、シム板14の模式上面図であり、図5(b)は、図5(a)に示された開口部20の拡大図である。
【0026】
基体18の上に接着層16を設けることで、シム板14を容易に固定できる。そして、基体18の上面に固定されたシム板14の開口部20より露出した接着層16の上に実装基板4の下面(すなわち、発光体3の底面)が固定されることでレンズ9を形成する際に、例えば硬化前の樹脂であるレンズ形成材料が実装基板4の下面(発光体3の底面)に回り込むのを抑制することができる。
【0027】
接着層16は、例えば、シリコーン系またはアクリル系のような、樹脂等の既知の任意の接着性を有する材料であってよい。
好ましい接着層16の例として、表面に接着剤が塗布された樹脂テープを挙げることができる。また、好ましい樹脂テープの例としてポリイミド樹脂よりなるテープ(ポリイミドテープ)を挙げることができる。
接着層16として、接着剤が塗布された樹脂テープを用いる場合、接着剤は樹脂テープの上面にのみ塗布されていることが好ましい。樹脂テープと基体18とを接着剤で固定すると、成形後の取り扱いの作業性が悪くなる場合があるからである。樹脂テープの下面に接着剤が塗布されていなくても、詳細を後述するレンズ9を形成する工程においてモールド10と基体18とを型締めする際に、樹脂テープの下面と基体18とは密着される。
しかし、これに限定されるものでなく、例えば、接着テープの両面に接着剤が塗布されていてもよい。
【0028】
シム板14は、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属、ならびにPET、PP、PS、PMMA、ABS、PA、PCおよびPLA等の樹脂を含む任意の材料から形成されてよい。
シム板14は、少なくとも1つ以上の開口部20を有する。好ましくは、図5に示すように複数の開口部20、とりわけ整列して配置された複数の開口部20を有する。一度に複数の発光装置100を形成でき、生産性を向上できるからである。
開口部20の形状は、上面視において、正方形および長方形を含む任意の形状であってよい。図5(b)に示す実施形態では、正方形であるが、角部に円弧状の曲線部を有している。
【0029】
また、シム板14の厚さを適切な値とすることにより、得られた発光装置100のレンズ9の底面29の下に形成される空間の高さ(底面29と発光体3の底面(または実装基板4の下面)との距離)を調整することができる。すなわち、シム板14は、底面29の下部に空間を形成するためのスペーサとして機能する。
【0030】
シム板14の上面には、後述するようにレンズ形成材料が接触し、レンズ9の底面29を形成する。このため、シム板14の上面は凹凸であって、底面29にその形状が反映されて、発光素子2からの光の全反射を阻害するような凹凸を有しないことが好ましい。図1に示す発光装置のように、レンズ9の底面(外側延在部)29が平面の場合、シム板14の上面は平面(顕著な凹凸のない)である。
【0031】
図4に示すように、開口部20は、シム板14の下面から上面に向けて(上方に向けて)広がるテーパーを有する(側面20aがテーパー部を形成する)ことが好ましい。
開口部20の上面側が広いことで発光体3を容易に開口部20に挿入できる。また、開口部20の下面側が狭いことで、発光体3等を接着層16上(すなわち、基体18上)の所定の位置に高い精度で配置することができる。
【0032】
なお、開口部20がテーパーを有する場合、発光体3を開口部20に配置した状態で、図4に示ようにシム板14の開口部20の側面と実装基板4の側面との間に空隙を生じる場合がある。また、開口部20がテーパーを有しない場合であっても発光体3を開口部20に配置した状態で、シム板14の開口部20の側面と実装基板4の側面との間に空隙を生じる場合がある。
そして、この空隙にレンズ形成材料が入り込むことにより、図3に示すように、発光装置100のレンズ9は下垂部79を有する場合がある。 下垂部79は、その幅(図3のX方向長さ)が、50μm程度(例えば、0.2mm以下)と短いため、通常、この存在を無視してよい。この場合、喩え下垂部79が存在しても、この下垂部79を無視し、図示した底面29(図3でX方向に平行に延在している)を延長して、実装基板4の側面と交わる部分を実装基板4と底面29との境界としてよい。
【0033】
図6は、開口部20の側面と実装基板4との間にシーリング樹脂22を配置した実施形態を示す模式断面図である。
図6に示すように、図4に示す開口部20の側面20aと実装基板4の側面との間の隙間を、例えば樹脂ポッティング等を用いることにより、シーリング樹脂(樹脂)22により埋めてよい。シーリング樹脂22を配置することにより、更に確実に発光体3の底面(実装基板4の下面)にレンズ形成材料が回り込むのを回避することができる。
シーリング樹脂22に用いる好ましい樹脂として、シリコーン樹脂を例示できる。
【0034】
このように形成したシーリング樹脂22は、レンズ9を形成した後、必要に応じて除去してよい。
また、このシーリング樹脂22を除去しないで発光装置100を用いる場合、このシーリング樹脂22を介してレンズ9内の光が実装基板4の上面に漏れるのを抑制するように、シーリング樹脂22は光反射性の樹脂により形成することが好ましい。なお、発光装置100がシーリング樹脂22を有する場合、「レンズ9」および「底面29」は、シーリング樹脂22を含まない概念である。
【0035】
図7は、実装基板がテーパー部を有する実施形態を示す模式断面図である。
図7の断面図から分かるように、図7に示す実施形態では、実装基板4Aは、上方から下方に向けて(図7の−Z方向に向けて)狭くなっているテーパー部を形成している(実装基板4Aは側面にテーパー部を有する)。
なお、実装基板4Aは、テーパー部を有すること以外についての構成は、実装基板4と同じであってよい。
【0036】
図7に示す実施形態においても図4に示す実施形態と同じく、開口部20は、シム板14の下面から上面に向けて(上方に向けて)広がるようにテーパーを有する(側面20aがテーパー部を形成する)ことが好ましい。
これにより、図7に示すように、開口部20の側面20aと実装基板4Aの側面とが、より広い面積に亘って対向することとなり、実装基板4Aを接着層16の上に配置する際の位置合わせの精度が向上するとともに、レンズ形成材料が、開口部20の側面20aと実装基板4Aの側面との間の隙間を通り、実装基板4Aの下面(特に接着層16と接する部分(すなわち、下面配線8cが形成されている部分))に達するのをより確実に抑制することができる。
【0037】
開口部20の側面20aが上述のテーパー部を有しない場合であっても実装基板4Aのテーパー部は以下の効果を有する。
実装基板4Aが下部にテーパー部を有することにより、実装基板4Aの下端側の幅が狭くなり、シム板14の開口部20への挿入が容易になる。一方、テーパー部の上端側では実装基板4Aの幅は広くなっている。このため、シム板14の上面側では、その側面20aと実装基板4Aの側面との距離が短くなり、実装基板4Aを接着層16の上に配置する際の位置合わせの精度が向上する。また、この距離の短い部分が存在することに起因して、レンズ形成材料が、実装基板4Aの下面(特に接着層16と接する部分(すなわち、下面配線8cが形成されている部分))に達するのをより確実に抑制することができる。
【0038】
なお、図7に示す実施形態では、テーパー部は実装基板4Aの下部にのみ設けられている(実装基板4Aの上部では、テーパーがなく、従って側面は上面に対して垂直となっている)。この場合、実装基板4Aの下部に設けたテーパー部は、シム板14の開口部20内に挿入される部分のみに設けることが好ましい。これにより図7に示すように、実装基板4Aの無い部分(非テーパー部)の下面は図7に示すようにシム板14の上面に近接する。この結果、実装基板4Aの非テーパー部の下面とシム板14の上面との隙間が狭くなることにより、この部分でもレンズ形成材料が実装基板4Aの下面のうち、接着層16と接する部分(すなわち、下面配線8cが形成されている部分)に回り込むのを抑制できる。
【0039】
しかし、テーパー部の形状は、これに限定されるものではなく、例えば、実装基板4Aの側面全体(高さ方向全体(図7のZ方向))に亘ってテーパーを形成してもよい。
【0040】
以上に述べた方法により、発光素子2が載置された実装基板4(または実装基板4A)を接着層16の上に配置した後、図2(a)に示すように、表面に凹部(キャビティ)12を設けたモールド(金型(例えば、上側金型))10を、シム板14に近づける。そして、図2(b)に示すように、凹部12内において、レンズ形成材料により、発光体3の上面(図2(b)の実施形態では、発光素子2の上面と、実装基板4(または実装基板4A。以下、「実装基板4」と言う場合、特段の断りがない限りは、実装基板4に代えて実装基板4Aを用いてよい)の上面)と、シム板14の上面とを覆う。これによりレンズ形成材料を得ようとするレンズ9の形状にすることができる。
【0041】
より具体的には、図2(a)に示すように、例えば、モールド10の下面のうち、凹部12が形成されていない部分を、シム板14の上面に押圧する(接触させる)ことでモールド10と基体18とは、シム板14と接着層16とを介して型締めされ、凹部12内に発光素子2と、好ましくは実装基板4の少なくとも一部分が凹部12の内部に位置する。
そして、モールド10に設けた、図2(b)に図示しない供給口から、例えば、硬化前の樹脂等であるレンズ形成材料を供給し、レンズ形成材料により凹部12内を満たす。レンズ形成材料を凹部12内に供給する前に、必要に応じて凹部12内を減圧してよい。
なお、発光素子2が実装基板4の上面全体を覆う場合、実装基板4は発光素子2を介してレンズ形成材料に覆われることとなる。
【0042】
また、レンズ形成材料がある程度の粘度を有する場合、圧縮成形法により、凹部12内において、レンズ形成材料により、発光体3(発光素子2の上面と実装基板4)の上面と、シム板14の上面とを覆ってよい。すなわち、予め、レンズ形成材料により発光素子2の上面と、実装基板4上面と、シム板14の上面とを覆った後、モールド10の凹部12が形成されていない部分をシム板14の上面に押圧することで、凹部12内において、レンズ形成材料により、発光素子2の上面と、実装基板4上面と、シム板14の上面とが覆われ、かつ凹部12内がレンズ形成材料により満たされる。
なお、この場合、必要に応じて、モールド10等に凹部12内の空気を排気する排気路を設けてよい。
【0043】
さらに、図2(a)、(b)に示す状態の上下(Z軸方向)を反転させた状態(すなわち、基体18が上部にあり、モールド10が下部にあり、凹部12がモールド10の上面に形成されている状態)で、予め凹部12にレンズ形成材料を配置した状態で、基体18とモールド10とを接近させて(例えば、モールド10の凹部12が形成されていない部分をシム板14の上面に接触させて)、凹部12内において、レンズ形成材料により、発光体3(発光素子2と実装基板4)の上面と、シム板14の上面とを覆い、かつ凹部12内をレンズ形成材料により満たしてもよい。
また、圧縮成形法に代えてトランスファーモールド法によりレンズ9を形成してもよい。例えば、凹部12からモールド10の外側に繋がる貫通孔をモールド10に設け、基体18を下金型として用い、当該貫通孔を通ってモールド内にレンズ形成材料を押し出すことによって、トランスファーモールド法によりレンズ9を形成できる。
【0044】
レンズ9は、発光体3が発する光(発光素子2が発する光および蛍光体層6が発する光(蛍光体層6を用いる場合))に対して、透光性を有する任意の材料により形成してよい。例えば、レンズ9は、透明な樹脂またはガラス等からなる。このような樹脂として、例えば、硬質シリコーン樹脂およびエポキシ樹脂を例示できる。
レンズ形成材料は凹部12内に供給でき、かつ発光体3(発光素子2と実装基板4)の上面と、シム板14の上面とを覆うことができ、得ようとするレンズ9の形状を形成した後、硬化可能な材料であれば任意の材料を用いてよい。レンズ形成材料として、例えば、硬化剤を含む液状の樹脂、および溶融ガラスを例示できる。また、好ましいレンズ形成材料として、硬化剤を含むシリコーン樹脂および硬化剤を含むエポキシ樹脂を例示できる。
【0045】
このようにして、レンズ形成材料により所望の形状を形成した後、レンズ形成材料を硬化させてレンズ9を得る。
なお、レンズ形成材料の硬化は、モールド10と基体18とを離間させてもレンズ形成材料が流動しない程度にレンズ形成材料を仮硬化させた後、モールド10と基体18とを離間させ、さらに接着層16と実装基板4とを離間させた後、本硬化を行って、レンズ9を得てもよい。
また、例えば、シム板14の上面と、モールド10の下面のうち凹部12が形成されていない部分との間にレンズ形成材料が入り込む等により、異なる発光装置100のレンズ9同士が接続されている場合は、この接続されている部分を、切断する(必要に応じて更に研磨を行う)等により除去することで発光装置100の個片化を行ってよい。
【0046】
このようにして発光装置100を得ることができる。
以下に、発光体3に含まれる、発光素子2と実装基板4の詳細を示す。
発光素子2は、例えば、LEDチップ等の半導体素子である。発光素子2に含まれる半導体層の具体的な例として、サファイア等の基板側から順に、n型半導体層、活性層(発光層)及びp型半導体層が積層された構成を挙げることができる。用いる半導体として、例えば窒化物半導体であるGaN系化合物半導体を例示できる。
なお、発光素子2は、これらの構成に限定されるものではなく、他の半導体材料を用いて構成してもよく、適宜、保護層や反射層などを備えてよい。
【0047】
また、発光素子2が蛍光体層6を有する場合、蛍光体層6に用いる蛍光体として、黄色発光する、セリウムで賦活されたYAG系、LAG系蛍光体、(Sr,Ba)SiO:Eu等のシリケート系蛍光体およびこれらの組み合わせを挙げることができる。なお、蛍光体は黄色発光するものに限られず、青色発光、緑色発光、赤色発光する蛍光体を用いてもよい。これらの蛍光体は単独で用いてもよいし、複数の種類の蛍光体を組み合わせて用いてもよい。量子ドット蛍光体を用いてもよい。
【0048】
実装基板4は、例えば、窒化アルミニウムやアルミナなどのセラミックス、ガラスエポキシ、および樹脂などを用いることができる。
実装基板4は上面配線パターン8aおよび下面配線パターン8cに用いる金属層としては、導電性がよく、発光素子2が発光する波長の光の反射率が高い材料が好ましい。例えば、導電性を確保するためにTi/Pt/Auなどを用いて配線パターンを形成し、反射率を向上させるために、更に表層にAg、Al、Rhなどを有する、単層膜又は多層膜を設けるようにしてもよい。
また、実装基板4の、貫通配線8bは例えば銅メッキ等により形成されたビアであってよい。
発光素子2は、例えばフリップチップ実装等の既知の方法により、実装基板4に実装(載置)されてよい。
【0049】
なお、本発明に用いることができる発光体は、発光素子2と実装基板4を備えた発光体3に限定されるものではなく、発光素子を含む任意の既知の発光体を用いてよい。このような発光体を以下に例示する。
図10(a)は、発光体3Aを示す模式断面図であり、図10(b)は、発光体3Bを示す模式断面図である。
【0050】
発光体3Aは、第1のリード34Aと、第2のリード34Bと、発光素子2とを含む。第1のリード34Aおよび第2のリード34Bは、樹脂パッケージ36の中に配置されている。発光素子2は、第1のリード34Aの上に配置され、第1の金属ワイヤ38Aにより第1のリード34Aと電気的に接続され、第2の金属ワイヤ38Bにより第2のリード34Bと電気的に接続されている。第1のリード34Aと第2のリード34Bは、樹脂パッケージ36の底面から露出しており、例えば、この露出部分を2次基板の配線と電気的に接続することにより、発光素子2と外部電源とを電気的に接続することができる。発光素子2は、蛍光体層6により覆われてよい。発光体3Aは、発光素子2を覆う発光体レンズ39を有してもよい。なお、蛍光体層6を設けた場合、発光体レンズ39は、蛍光体層6を介して発光素子2を覆ってよい。
【0051】
発光体3Bは、発光素子2と、発光素子2の側面を覆う光反射性樹脂層35と、発光素子2の下面に配置された第1の電極32Aおよび第2の電極32Bを有する。
例えば、第1の電極32Aおよび第2の電極32Bと2次基板の配線とを電気的に接続することにより、発光素子2と外部電源とを電気的に接続することができる。
光反射性樹脂層35は、発光素子2の側面から出射した光を反射する。このため、例えば白樹脂等、発光素子2が発する光に対して高い反射率を有する樹脂を含むことが好ましい。
発光素子2は、その上面を蛍光体層6により覆われてよい。
【0052】
・変形例
図8は、本発明の変形例に係る発光装置100Aである。発光装置100Aの特段の断りがない構成については、発光装置100と同じ構成を有してよい。
発光装置100Aのレンズ9Aの底面29Aは、端部(底面の外周部分)に、実装基板4の上面に平行な方向(図8ではX方向)に対して傾斜している傾斜部を有している。
図8に示す実施形態では、底面29Aの外側延在部全体が傾斜部となっているがこの実施形態に限定されるものではない。例えば、底面29Aの外側延在部のうち基端側(実装基板4に近い側)は、実装基板4の上面に平行な平面であって、端部(末端側)にのみ傾斜部を有してもよい。
なお、傾斜部は図8に示す断面図では直線で示されるが、この直線を図8のZ軸方向に平行な軸の回りに回転させて得られる曲面(滑らかな曲面)となっている。
【0053】
底面29Aの傾斜部は、基端側と比べて端部側(実装基板4から遠い側)の方が、上部(図8のZ方向)に位置している。
【0054】
発光装置100のように底面29が平面の場合、発光素子2から斜め下方に出射し、底面29と上面28との境界部に達した光は、そのままレンズ9の外に出る場合がある。しかし、レンズ9Aでは、レンズ9において上面と底面の境界部分から出ていた光が、傾斜部にあたりレンズ9Aの上方向に反射される。これにより発光装置100Aでは、よりいっそう取り出し効率を向上できる。
なお、レンズ9Aのその他の構成は、レンズ9と同じであってよい。
【0055】
次に、発光装置100Aの製造方法を説明する。
ただし、発光装置100の製造方法と異なる部分のみを説明する。
図9は、シム板14Aの開口部20内に配置された発光体3の配置を示す断面図である。図9は、図1に示す、複数の発光体3のうちの1つの周辺部分を拡大した図に相当する。
【0056】
シム板14Aの上面24Aは、レンズ9Aの傾斜部に対応した傾斜面を有している。
すなわち、シム板14Aの傾斜面は、基体18の上面に対して傾斜しており、基端側(開口部20に近い側)と比べて、端部側(開口部20から遠い側)の方が、上部(図9のZ方向)に位置している。
このように上面24Aが傾斜面を含むシム板14Aを用い、上述の発光装置100と同じ方法を用いることにより、発光装置100Aを得ることができる。
なおシム板14Aの特段の説明のない構成については、シム板14と同じ構成を有してよい。
【符号の説明】
【0057】
2 発光素子
3、3A、3B 発光体
4、4A 実装基板(基板)
6 蛍光体層
8 配線
8a 上面配線
8b 貫通配線
8c 下面配線
9、9A レンズ
10 モールド
12 凹部(キャビティ)
14、14A シム板
16 接着層
18 基体
20 開口
20a 開口側面
24A シム板上面
29、29A レンズ底面
79 下垂部
100 発光装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10