(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1パターンを描画する際、パターンエッジ部の照射量をパターン中央部の照射量よりも大きくすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のアパーチャ部材製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本実施形態によるアパーチャ部材が取り付けられる荷電粒子ビーム描画装置の概略図である。本実施形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の他の荷電粒子ビームでもよい。
【0017】
図1に示す電子ビーム描画装置は、電子ビーム鏡筒500及び描画室400を有している。電子ビーム鏡筒500内には、電子銃510、ブランキングアパーチャ520、第1アパーチャ522、第2アパーチャ524、ブランキング偏向器530、成形偏向器532、対物偏向器534、レンズ540(照明レンズ(CL)、投影レンズ(PL)、対物レンズ(OL))が配置されている。描画室400内には、XYステージ420が配置される。XYステージ420上には、描画対象となる試料410が載置されている。試料410は、ウェーハや、ウェーハにパターンを転写する露光用のマスクである。また、このマスクは、例えば、まだ何もパターンが形成されていないマスクブランクスが含まれる。
【0018】
電子銃510から放出された電子ビーム502は、照明レンズCLにより矩形、例えば正方形の穴を持つ第1アパーチャ522全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず矩形、例えば正方形に成形する。そして、第1アパーチャ522を通過した第1アパーチャ像の電子ビームは、投影レンズPLにより第2アパーチャ524上に投影される。第2アパーチャ524上での第1アパーチャ像の位置は、成形偏向器532によって制御され、ビーム形状と寸法を変化させることができる。そして、第2アパーチャ524を通過した第2アパーチャ像の電子ビームは、対物レンズOLにより焦点が合わされ、対物偏向器534により偏向されて、移動可能に配置されたX−Yステージ420上の試料410の所望する位置に照射される。かかる構成にすることにより電子ビーム描画装置を可変成形型の描画装置とすることができる。
【0019】
電子銃510から放出された電子ビーム502は、ブランキング偏向器530によって、ビームオンの状態では、ブランキングアパーチャ520を通過するように制御され、ビームオフの状態では、ビーム全体がブランキングアパーチャ520で遮蔽されるように偏向される。ビームオフの状態からビームオンとなり、その後ビームオフになるまでにブランキングアパーチャ520を通過した電子ビームが1回の電子ビームのショットとなる。各ショットの照射時間により、試料410に照射される電子ビームのショットあたりの照射量が調整されることになる。
【0020】
図2は、第1アパーチャ522及び第2アパーチャ524によるビーム成形を説明するための概略的な斜視図である。第1アパーチャ522には、電子ビーム502を成形するための矩形(長方形又は正方形)の開口52が形成されている。
【0021】
また、第2アパーチャ524には、第1アパーチャ522の開口52を通過した電子ビーム502を所望の形状に成形するための可変成形開口54が形成されている。可変成形開口54は、
図3の通り、開口52の一辺に対して平行な辺54a、54eと、直交する辺54b、54hと、開口52の一辺に対して45度又は135度をなす辺54c、54d、54f、54gとが組み合わされた形状を有する。
【0022】
可変成形開口54の形状について詳述すると、辺54f、54dの一端同士が辺54eによって接続されている。辺54aの両端に、辺54b、54hの一端側が直交状に連なり、辺54b、54hの他端側がそれぞれ辺54c、54gの一端に連なっている。辺54c、54dの他端同士が接続され、辺54f、54gの他端同士が接続されている。可変成形開口54は、辺54c〜54gによって囲まれた六角形状部と、辺54a、54b、54hによって囲まれ該六角形状部に連なる四角形状部とを共有した八角形状である。
【0023】
図2に示すように、第1アパーチャ522の開口52と第2アパーチャ524の可変成形開口54との両方を通過できるビーム形状が、X方向に連続的に移動するXYステージ420上に搭載された試料410の描画領域に描画される。
【0024】
図2の例では、電子ビーム502は、第1アパーチャ522の開口52を通過することでまず矩形に成形され、次いで、第2アパーチャ524の可変成形開口54の135度の辺54cを含む領域に照射される。その結果、開口52で成形された矩形の電子ビームのうち、可変成形開口54の135度の辺54cよりも可変成形開口54の内側に照射された電子ビームのみが、第2アパーチャ524で遮断されずに可変成形開口54を通過する。これにより、電子ビーム502は、ビーム軸心方向と垂直な断面形状が直角二等辺三角形となるように成形され、直角二等辺三角形のショットビーム56が試料410上に照射される。
【0025】
電子ビーム描画装置の各部は図示しない制御装置により制御される。制御装置は、描画データに対し複数段のデータ変換処理を行って装置固有のショットデータを生成する。ショットデータには、例えば、図形種、図形サイズ、照射位置、照射時間等が定義される。ショットデータに含まれる“図形種”及び“図形サイズ”により成形偏向器532の偏向量が制御され、“照射位置”により対物偏向器534の偏向量が制御され、“照射時間”によりブランキング偏向器530によるビームオン/オフが制御される。
【0026】
次に、このような電子ビーム描画装置に取り付けられる第1アパーチャ522や第2アパーチャ524等のアパーチャ部材の製造方法を
図4に示すフローチャート、及び
図5〜
図10を用いて説明する。
【0027】
[ステップS101]
図5(a)に示すように、表面にクロム膜102及びその上にレジスト103が形成された基板101を準備する。基板101は後述する光を透過する材料、例えば石英ガラスで形成される。クロム膜102は省略してもよく、レジスト103の下に酸化クロム膜を設けてもよい。そして、
図1に示すような電子ビーム描画装置を用いてレジスト103にアパーチャ開口に対応するパターンを描画する。レジスト103はネガ型であり、アパーチャ開口に対応する部分に電子ビームを照射する。
【0028】
図6に示すように、基板101には複数のチップ領域Cが形成され、各チップ領域Cにおいてアパーチャ開口に対応するパターン110を描画する。
【0029】
パターン110の直角部分の形状や、直線部分の形状の精度を高めるために、
図7(a)に示すように直角部分にアシストパターン112を描画する。また、パターン110のエッジラフネスを低減するために、
図7(b)に示すように、パターンエッジ部110aの照射量を、それ以外のパターン中央部110bの照射量よりも上げて描画を行う。
【0030】
図6に示すチップ領域C毎に、アシストパターン112の大きさや位置、パターンエッジ部110aの照射量等の描画条件を変えて、パターン110を描画する。描画精度を向上させるために多重描画を行ってもよい。
【0031】
[ステップS102]
図5(b)に示すように、現像処理を行った後、レジスト103をマスクとしてドライエッチング処理によりクロム膜102及び基板101を加工する。続いて、
図5(c)に示すように、レジスト103及びクロム膜102を剥離する。これにより、アパーチャ開口に対応するパターン120が形成された基板101が得られる。
図5(a)〜(c)は、1つのチップ領域Cの断面を示す。
【0032】
[ステップS103]各チップ領域Cに形成されたパターン120について、寸法測定や位置座標測定を行い、パターン120の寸法及びエッジ位置の精度を求める。複数のチップ領域Cを含む基板101単位で測定を行うため、寸法測定装置や位置座標測定装置を用いることができる。
【0033】
[ステップS104]寸法及びエッジ位置が所望の精度を満たすパターン120がある場合は、ステップS105へ進む。所望の精度を満たすパターン120がない場合は、ステップS101に戻り、描画条件を変えて、上述のステップを実施してパターン110を作成する。
【0034】
[ステップS105]寸法及びエッジ位置が所望の精度を満たすパターン120を含むチップ領域Cをダイシングして基板101から切り出す。これにより、
図8に示すような、アパーチャ開口に対応する凸部210を有するマスターのテンプレート200が作製される。凸部210はパターン120に相当する。所望の精度を満たすパターン120が複数ある場合は、最も精度のよいものを選択し、チップ領域Cを切り出す。テンプレート200の外周部に凸状の枠体が形成されていてもよい。
【0035】
[ステップS106]テンプレート200を用いたインプリント処理により、基板上のレジストにテンプレートパターンを転写する。具体的には、
図9(a)に示すように、基板220上に塗布されたレジスト222に、テンプレート200の凸部210を含むパターン面を接触させる。基板220は、アパーチャ部材の材料となるものであり、例えば、シリコン基板と、シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜からなる絶縁膜と、シリコン膜等の半導体層とを有するSOI基板である。レジスト222は、例えば紫外線硬化型レジストであり、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化樹脂からなる。
【0036】
図9(b)に示すように、レジスト222がテンプレートパターンの凹部に充填された後、エネルギー線を照射し、レジスト222を硬化させる。エネルギー線は、例えば、紫外線である。
【0037】
なお、レジスト222は、紫外線硬化型レジストに限定されず、例えば、熱を加えることによって硬化する熱硬化型レジスト等を用いることができる。熱硬化型レジストを用いる場合、ホットプレートにより基板220を介して熱硬化型レジストに熱を加えて硬化させる。
【0038】
図9(c)に示すように、テンプレート200をレジスト222から離型する。既にこの状態ではレジスト222が硬化しているので、テンプレート200が接触していたときの状態(形状)に維持される。これにより、レジスト222に、テンプレートパターンに対応する転写パターンをパターニングすることができる。
【0039】
[ステップS107]
図9(d)に示すように、レジスト222をマスクとしてドライエッチング処理により基板220を加工し、基板220の表面に凹部230を形成する。例えば、基板220の厚みは数百μmであり、凹部230の深さは数十μmである。凹部230の形成後、レジスト222を剥離する。
【0040】
続いて、
図9(e)に示すように、凹部230が形成された領域の裏面側から基板220をエッチングし、凹部240を形成する。凹部240と凹部230とが連通し、基板220を貫通する開口部252が形成される。凹部240の(水平方向の)サイズは凹部230より大きく、基板220の裏面側から、凹部230による開口部の全体が見えるようになっている。例えば、凹部230のサイズは数μmであり、凹部240のサイズは数百μm〜数mmである。
【0041】
[ステップS108]基板220から、開口部252を含むチップをダイシングにより切り出す。切り出すチップサイズは例えば数mm角である。これにより、
図10に示すような、アパーチャ開口(開口部252)が設けられたアパーチャ部材250が作製される。
【0042】
このようにして作製されたアパーチャ部材250が、第2アパーチャ524として電子ビーム描画装置に取り付けられる。
【0043】
基板101に形成された描画条件の異なる複数のパターン120は、寸法測定装置や位置座標測定装置を用いて、寸法やエッジ位置の精度を求めることができる。複数のパターン120から精度の良いものを選択し、基板101から切り出すことで、高精度なテンプレートパターン形状を有するテンプレート200を作製できる。このテンプレート200を使用してインプリント処理によりアパーチャ開口を形成するため、所望の寸法形状の開口部を有するアパーチャ部材を作製することができる。
【0044】
また、テンプレート200は繰り返し使用することができ、インプリント処理を複数回行うことで、所望の寸法形状の開口部を有するアパーチャ部材を、再現性良く複数個作製できる。複数のアパーチャ部材を異なる電子ビーム描画装置に取り付けた場合、装置間でのアパーチャ開口の形状のばらつきが小さく、描画装置の設定が容易となる。
【0045】
このように、本実施形態によれば、所望の寸法形状の開口部を有するアパーチャ部材を再現性良く製造できる。
【0046】
上記実施形態の方法で作製するアパーチャ部材は、1本の電子ビームで描画するシングルビーム方式の描画装置で用いられるアパーチャ部材に限定されず、マルチビーム方式の描画装置で用いられる複数の開口部を有するアパーチャ部材でもよい。マルチビーム方式の描画装置においては、
図11に示すように、縦(y方向)m列×横(x方向)n列(m,n≧2)の穴(開口部)262が所定の配列ピッチでマトリクス状に形成されたアパーチャ部材260が用いられる。これらの複数の穴262を電子ビームの一部がそれぞれ通過することで、マルチビームが形成される。
【0047】
上記実施形態では、
図9(a)〜(e)に示すように、インプリント処理及びエッチングにより凹部230を形成した後に、基板220の裏面側に凹部240を形成する例について説明したが、凹部240の形成後に凹部230を形成してもよい。
【0048】
例えば、
図12(a)に示すように、基板220の裏面側をエッチングし、凹部240を形成する。次に、
図12(b)に示すように、凹部240に埋め込み材270を埋め込む。埋め込み材270には、酸で溶解する材料が用いられ、例えば、アルミニウム、タングステン、タンタル、モリブデン等の金属材料や、ポリイミド、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)等のアクリル樹脂を用いることができる。
【0049】
その後、基板220の表面にレジスト222を塗布し、
図9(a)〜(d)と同様の処理を行い、基板220の表面に凹部230を形成する。凹部230は、
図12(c)に示すように、埋め込み部270が露出するように形成する。
【0050】
次に、
図12(d)に示すように、酸を用いて埋め込み材270を溶解して除去する。これにより、凹部240と凹部230とが連通し、基板220を貫通する開口部252が形成される。このように、凹部240の形成後に凹部230を形成する方法でも、所望の寸法形状の開口部を有するアパーチャ部材を再現性良く製造できる。
【0051】
基板220の裏面側に凹部240を形成し、この凹部240においてインプリント処理を行い、開口部252を形成してもよい。この場合、インプリント処理には、
図13に示すような2段掘り込み型のテンプレート300が用いられる。
図13(a)はマスターテンプレート300の上面図であり、
図13(b)は
図13(a)のB−B線での断面図である。
【0052】
テンプレート300は、基材310、基材310上に設けられた第1凸部320、及び第1凸部320上に形成された第2凸部330を有する。第1凸部320の断面積は凹部240よりも小さい。また、第1凸部320の高さは、凹部240の深さよりも大きい。第2凸部330は、アパーチャ開口に対応する形状となっている。
【0053】
このテンプレート300の作製では、まず、第1リソグラフィ処理により基板に第1凸部320を形成する。第1凸部320のパターン形状に高い精度は要求されず、第1リソグラフィ処理の露光光やエッチング処理は特に限定されない。
【0054】
第1凸部320の形成後、第2リソグラフィ処理により第2凸部330を形成する。第2凸部330のパターン形状には高い精度が求められるため、電子ビーム描画装置を用いてレジストにパターンを描画する。基板には複数のチップ領域が設けられ、各チップ領域に、第1凸部320及び第2凸部330を形成する。チップ領域毎に描画条件を変えて、第2凸部330のパターンを描画する。
【0055】
そして、各チップ領域の第2凸部330の寸法やエッジ位置を測定し、所望の精度を満たす第2凸部330が設けられたチップ領域を基板から切り出すことでテンプレート300が作製される。
【0056】
このテンプレート300を用いたインプリント処理を
図14(a)〜(d)を用いて説明する。なお、
図14(a)〜(d)では、基板の裏面側が上になっている。まず、
図14(a)に示すように、基板220の裏面側をエッチングし、凹部240を形成する。そして、凹部240内にレジスト280を塗布する。レジスト280はレジスト222と同じものを使用することができる。
【0057】
次に、
図14(b)に示すように、レジスト280に、テンプレート300の第2凸部330を含むパターン面を接触させる。第1凸部320の断面積は凹部240よりも小さく、また、第1凸部320の高さは、凹部240の深さよりも大きいため、第2凸部330をレジスト280に接触させることができる。レジスト280がテンプレートパターンの凹部に充填された後、エネルギー線を照射し、レジスト280を硬化させる。
【0058】
次に、
図14(c)に示すように、テンプレート300をレジスト280から離型する。既にこの状態ではレジスト280が硬化しているので、テンプレート300が接触していたときの状態(形状)に維持される。これにより、レジスト280に、テンプレートパターンに対応する転写パターンをパターニングすることができる。
【0059】
次に、
図14(d)に示すように、レジスト222をマスクとしてドライエッチング処理により基板220を加工し、基板220を貫通するように凹部230を形成する。凹部230の形成後、レジスト280を剥離する。これにより、基板220を貫通する開口部252が形成される。このように、基板220の裏面側からインプリント処理を行う方法でも、所望の寸法形状の開口部を有するアパーチャ部材を再現性良く製造できる。
【0060】
上記実施形態において、基板220には、導電膜が形成されていてもよい。この導電膜は、電子ビーム描画装置で使用する際にグラウンド電位に接続され、打ち込まれた電子をグラウンドへ除去する。導電膜には、電気抵抗の小さい金属材料を用いることが好ましく、タングステン膜、イリジウム膜、白金膜、チタン膜等を用いることができる。
【0061】
基板220の材料は、シリコン系材料に限定されず、アルミナ等のセラミックスや、タンタル、チタン等の金属でもよい。
【0062】
図7(a)では直角部分にアシストパターン112を描画する例を示したが、アシストパターン112の描画箇所はこれに限定されず、例えば六角形状部の頂点の位置にアシストパターンを描画してもよい。
【0063】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。