特許第6252587号(P6252587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6252587-CMP用研磨液及び研磨方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6252587
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】CMP用研磨液及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20171218BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20171218BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20171218BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   H01L21/304 622D
   B24B37/00 H
   C09K3/14 550D
   C09K3/14 550Z
   C09G1/02
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-522639(P2015-522639)
(86)(22)【出願日】2014年4月28日
(86)【国際出願番号】JP2014061847
(87)【国際公開番号】WO2014199739
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2017年3月1日
(31)【優先権主張番号】特願2013-123824(P2013-123824)
(32)【優先日】2013年6月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】太田 宗宏
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 寿夫
(72)【発明者】
【氏名】南 久貴
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 利明
(72)【発明者】
【氏名】岩野 友洋
【審査官】 山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/081109(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/067844(WO,A1)
【文献】 特開2013−038211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 3/00−3/60
21/00−39/06
C06B 21/00−49/00
C06C 5/00−15/00
C06D 3/00−7/00
C06F 1/00−5/04
C09F 1/00−11/00
C09G 1/00−3/00
C09K 3/14
C10F 5/00−7/08
C10H 1/00−21/16
H01L 21/304
21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリウム系化合物を含む砥粒と、下記一般式(I)で表される4−ピロン系化合物と、芳香環及びポリオキシアルキレン鎖を有する高分子化合物と、陽イオン性ポリマと、水と、を含有する、CMP用研磨液。
【化1】
[式(I)中、X11、X12及びX13は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基である。]
【請求項2】
当該研磨液中における前記砥粒のゼータ電位が正である、請求項1に記載の研磨液。
【請求項3】
前記4−ピロン系化合物が、3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン、5−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−4−ピロン、及び、2−エチル−3−ヒドロキシ−4−ピロンからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の研磨液。
【請求項4】
飽和モノカルボン酸を更に含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項5】
前記飽和モノカルボン酸の炭素数が2〜6である、請求項4に記載の研磨液。
【請求項6】
前記飽和モノカルボン酸が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ヒドロアンゲリカ酸、カプロン酸、2−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2,3−ジメチルブタン酸、2−エチルブタン酸、2,2−ジメチルブタン酸及び3,3−ジメチルブタン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項4又は5に記載の研磨液。
【請求項7】
第1の液及び第2の液に分けて保存され、前記第1の液が、前記砥粒及び水を少なくとも含み、前記第2の液が、前記高分子化合物、前記陽イオン性ポリマ及び水を少なくとも含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の研磨液を用いて、絶縁材料を含む基体を研磨する工程を備える、研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CMP用研磨液及び研磨方法に関する。本発明は、特に、半導体ウエハ材料のケミカルメカニカルポリッシング(CMP)に使用する研磨液、及び、これを用いた研磨方法に関する。本発明は、例えば、半導体ウエハの表面に設けられた酸化珪素等の絶縁材料を研磨するための研磨液、及び、これを用いた研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造の分野では、超LSIデバイスの高性能化に伴い、従来技術の延長線上の微細化技術では高集積化及び高速化を両立することは限界になってきている。そこで、半導体素子の微細化を進めつつ、垂直方向にも高集積化する技術、すなわち配線を多層化する技術が開発されている。
【0003】
配線が多層化されたデバイスを製造するプロセスにおいて、最も重要な技術の一つにCMP技術がある。CMP技術は、化学気相蒸着(CVD)等によって基板上に薄膜を形成した後、その表面を平坦化する技術である。例えば、リソグラフィの焦点深度を確保するためには、CMPによる処理が不可欠である。基板表面に凹凸があると、露光工程における焦点合わせが不可能となったり、微細な配線構造を充分に形成できなかったり等の不都合が生じる。CMP技術は、デバイスの製造過程において、プラズマ酸化物材料(例えばBPSG、HDP−SiO、p−TEOS)の研磨によって素子分離領域を形成する工程、層間絶縁材料を形成する工程、又は、酸化珪素を含む部材(例えば酸化珪素膜)を金属配線に埋め込んだ後にプラグ(例えば、Al・Cuプラグ)を平坦化する工程等にも適用される。
【0004】
CMPは、通常、研磨パッド上に研磨液を供給できる装置を用いて行われる。基板表面と研磨パッドとの間に研磨液を供給しながら、基板を研磨パッドに押し当て、基板と研磨パッドの少なくとも一方を動かすことによって基板表面が研磨される。CMP技術においては、高性能の研磨液が要素技術の一つであり、これまでにも種々の研磨液が開発されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−288537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、基板上に素子分離領域を形成する工程においては、予め基板表面に溝を設け、この溝を埋めるように絶縁材料(例えば酸化珪素)がCVD等によって形成される。その後、絶縁材料の表面をCMPによって平坦化することによって素子分離領域が形成される。表面に溝等の素子分離構造が設けられた基板上に絶縁材料を形成する場合、絶縁材料の表面にも素子分離構造の凹凸に応じた凹凸が生じる。凹凸を有する表面の研磨では、凸部を優先的に除去する一方、凹部をゆっくりと除去することによって表面の平坦化がなされる。
【0007】
半導体生産のスループットを向上させるためには、基板上に形成した絶縁材料の不要な部分を可能な限り速く除去し、ストッパ(ストッパ材料で構成される研磨停止層)で確実に研磨を停止させることが好ましい。例えば、素子分離領域の狭幅化に対応すべく、シャロー・トレンチ分離(STI)を採用した場合、基板上に設けた絶縁材料の不要な部分を高い研磨速度で取り除くと共に、研磨をストッパで停止させることが要求される。
【0008】
しかし、酸化珪素等の絶縁材料の研磨速度が速い従来のCMP用研磨液を用いると、一般に、研磨終了後の研磨面が粗くなり、平坦性に劣る傾向がある。そのため、絶縁材料の研磨処理を二段階に分け、種類の異なる研磨液をそれぞれの工程で使用することによって、生産効率の向上を図る場合がある。第1の研磨工程(荒削り工程)では絶縁材料の研磨速度が高い研磨液を使用して絶縁材料の大部分を除去する。第2の研磨工程(仕上げ工程)ではストッパが露出するまで絶縁材料を除去し、研磨面が充分に平坦となるように仕上げる。
【0009】
第1の研磨工程と第2の研磨工程に要求される特性が異なるため、それぞれの工程に適合した研磨液が選択される必要がある。しかし、従来、第1の研磨工程及び第2の研磨工程において同一の研磨液を用いる場合には、いずれかの工程の要求特性を妥協する必要があり、第1の研磨工程及び第2の研磨工程のいずれの特性も充分に満足する研磨液が必要とされている。
【0010】
本発明は、前記課題を解決しようとするものであり、絶縁材料の高い研磨速度、及び、ストッパ材料の高いストップ性(ストッパ材料の低い研磨速度)を達成できるCMP用研磨液、及び、これを用いた研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記課題を解決すべく、CMP用研磨液に配合する添加剤について鋭意検討を重ねた。本発明者らは、種々の有機化合物を添加剤として使用して研磨液を調製し、これらの研磨液を用いて絶縁材料及びストッパ材料を研磨し、研磨速度の評価を行った。その結果、本発明者らは、特定の三種類の添加剤を組み合わせることで、絶縁材料の高い研磨速度と、ストッパ材料の高いストップ性とを両立することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
本発明に係るCMP用研磨液は、セリウム系化合物を含む砥粒と、下記一般式(I)で表される4−ピロン系化合物と、芳香環及びポリオキシアルキレン鎖を有する高分子化合物と、陽イオン性ポリマと、水と、を含有する。
【化1】
[式(I)中、X11、X12及びX13は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基である。]
【0013】
本発明に係るCMP用研磨液によれば、絶縁材料の高い研磨速度を得ることができる。また、本発明に係るCMP用研磨液によれば、ストッパ材料の研磨速度を抑制することが可能であり、ストッパ材料の高いストップ性を得ることができる。このようなCMP用研磨液によれば、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性(研磨速度比:絶縁材料の研磨速度/ストッパ材料の研磨速度)を向上させることができる。
【0014】
本発明に係るCMP用研磨液中における砥粒のゼータ電位は正であることが好ましい。これにより、絶縁材料の高い研磨速度、及び、ストッパ材料の高いストップ性を達成しやすくなる。
【0015】
前記4−ピロン系化合物は、3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン、5−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−4−ピロン、及び、2−エチル−3−ヒドロキシ−4−ピロンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。これにより、絶縁材料の高い研磨速度、及び、ストッパ材料の高いストップ性を達成しやすくなる。
【0016】
本発明に係るCMP用研磨液は、飽和モノカルボン酸を更に含有していてもよい。これにより、絶縁材料の研磨速度を更に向上させることができる。
【0017】
飽和モノカルボン酸の炭素数は2〜6であることが好ましい。これにより、絶縁材料の研磨速度を更に向上させることができる。
【0018】
飽和モノカルボン酸は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ヒドロアンゲリカ酸、カプロン酸、2−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2,3−ジメチルブタン酸、2−エチルブタン酸、2,2−ジメチルブタン酸及び3,3−ジメチルブタン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。これにより、絶縁材料の研磨速度を更に向上させることができる。
【0019】
本発明に係るCMP用研磨液は、第1の液及び第2の液に分けて保存され、前記第1の液が、前記砥粒及び水を少なくとも含み、前記第2の液が、前記高分子化合物、前記陽イオン性ポリマ及び水を少なくとも含む。
【0020】
本発明に係る研磨方法は、前記研磨液を用いて、絶縁材料を含む基体を研磨する工程を備える。このような研磨方法によれば、絶縁材料の高い研磨速度、及び、ストッパ材料の高いストップ性を達成できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、絶縁材料(例えば酸化珪素)の高い研磨速度、及び、ストッパ材料(例えばポリシリコン)の高いストップ性を達成できるCMP用研磨液が提供される。また、本発明によれば、前記研磨液を用いた研磨方法が提供される。
【0022】
本発明によれば、半導体ウエハ材料の研磨のための研磨液の応用が提供される。本発明によれば、絶縁材料の研磨のための研磨液の応用が提供される。本発明によれば、酸化珪素の研磨のための研磨液の応用が提供される。本発明によれば、ストッパ材料に対する絶縁材料の選択的な研磨のための研磨液の応用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】半導体基板にシャロー・トレンチ分離構造が形成される過程を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について説明する。なお、本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0025】
<CMP用研磨液>
本実施形態に係るCMP用研磨液は、セリウム系化合物を含む砥粒と、少なくとも三種類の添加剤と、水とを含有する。本実施形態に係るCMP用研磨液は、第1の添加剤として、特定の構造を有する4−ピロン系化合物を含有し、第2の添加剤として、芳香環及びポリオキシアルキレン鎖を有する高分子化合物(以下、「芳香族ポリオキシアルキレン化合物」という。)を含有し、第3の添加剤として、陽イオン性ポリマを含有する。以下、各成分について説明する。
【0026】
(第1の添加剤:4−ピロン系化合物)
本実施形態に係るCMP用研磨液は、第1の添加剤として、下記一般式(I)で表される4−ピロン系化合物を含有する。これにより、絶縁材料の研磨速度の向上効果が発現する。4−ピロン系化合物は、少なくともカルボニル基の炭素原子に隣接している炭素原子にヒドロキシ基が結合した構造を有するものである。ここで、4−ピロン系化合物とは、オキシ基及びカルボニル基が含まれると共に、オキシ基に対してカルボニル基が4位に位置している6員環(γ−ピロン環)構造を有する複素環式化合物である。本実施形態の4−ピロン系化合物は、このγ−ピロン環におけるカルボニル基に隣接している炭素原子にヒドロキシ基が結合しており、それ以外の炭素原子には、水素原子、又は、水素原子以外の置換基が置換していてもよい。
【0027】
【化2】
[式(I)中、X11、X12及びX13は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基である。]
【0028】
1価の置換基としては、アルデヒド基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、臭素、塩素、ヨウ素、フッ素、ニトロ基、ヒドラジン基、炭素数1〜8のアルキル基(OH、COOH、Br、Cl、I又はNOで置換されていてもよい)、ヒドロキシアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、及び、炭素数1〜8のアルケニル基等が挙げられる。1価の置換基としては、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基が好ましい。
【0029】
4−ピロン系化合物が1価の置換基を有する場合、置換基は、合成が簡易である観点から、オキシ基に隣接する炭素原子に結合していることが好ましい。すなわち、X11及び/又はX12が置換基であることが好ましい。また、セリウム系化合物を含む砥粒の研磨能力の向上効果が得られやすくなる観点から、X11、X12及びX13のうち少なくとも2つが水素原子であることが好ましく、X11、X12及びX13のうち2つが水素原子であることがより好ましい。
【0030】
4−ピロン系化合物としては、3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン(別名:3−ヒドロキシ−2−メチル−4H−ピラン−4−オン)、5−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−4−ピロン(別名:5−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−4H−ピラン−4−オン)、及び、2−エチル−3−ヒドロキシ−4−ピロン(別名:2−エチル−3−ヒドロキシ−4H−ピラン−4−オン)からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。4−ピロン系化合物としては、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
4−ピロン系化合物は、水溶性であることが好ましい。水への溶解度が高い化合物を使用することで、所望の量の添加剤を良好に研磨液中に溶解させることが可能であり、研磨速度の向上効果、及び、砥粒の凝集の抑制効果をより一層高水準に得ることができる。常温(25℃)の水100gに対する4−ピロン系化合物の溶解度は、0.001g以上が好ましく、0.005g以上がより好ましく、0.01g以上が更に好ましく、0.05g以上が特に好ましい。なお、溶解度の上限は特に制限はない。
【0032】
第1の添加剤の含有量は、CMP用研磨液の全質量を基準として0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.03質量%以上が更に好ましく、0.04質量%以上が特に好ましく、0.05質量%以上が極めて好ましい。第1の添加剤の含有量が0.01質量%以上であると、0.01質量%未満である場合と比較して安定した研磨速度を達成しやすい。第1の添加剤の含有量は、CMP用研磨液の全質量を基準として5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。第1の添加剤の含有量が5質量%以下であると、5質量%を超える場合と比較して砥粒の凝集を抑制しやすく、高い研磨速度が達成されやすい。
【0033】
(第2の添加剤:芳香族ポリオキシアルキレン化合物)
芳香族ポリオキシアルキレン化合物は、ストッパ材料の研磨速度が過度に高くなることを抑制する効果がある。この効果が生じる理由は、芳香族ポリオキシアルキレン化合物がストッパ材料を被覆することにより、ストッパ材料の研磨が抑制されるものと推測される。このような効果は、ストッパ材料がポリシリコンである場合により顕著に得られる。
【0034】
芳香族ポリオキシアルキレン化合物は、芳香環を有する置換基をポリオキシアルキレンの末端に導入した化合物である。芳香環は、ポリオキシアルキレン鎖に直接結合していてもよく、直接結合していなくてもよい。芳香環は、単環であってもよく、多環であってもよい。また、芳香族ポリオキシアルキレン化合物は、芳香環を有する置換基を介して複数のポリオキシアルキレン鎖が結合する構造を有していてもよい。ポリオキシアルキレン鎖は、合成が簡易である観点から、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン鎖が好ましい。ポリオキシアルキレン鎖の構造単位数(オキシアルキレン構造の構造単位数)は、ストッパ材料を効率よく被覆する観点から、15以上が好ましい。
【0035】
芳香環を有する置換基としては、芳香環が芳香族ポリオキシアルキレン化合物の末端に位置する場合、アリール基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基等の単環芳香族基;ナフチル基等の多環芳香族などが挙げられ、これらの芳香族基は置換基を更に有していてもよい。芳香族基に導入される置換基としては、アルキル基、ビニル基、アリル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、ヒドロキシ基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、スチレン基、芳香族基等が挙げられ、ストッパ材料を効率よく被覆する観点から、アルキル基及びスチレン基が好ましい。
【0036】
芳香環を有する置換基としては、芳香環が芳香族ポリオキシアルキレン化合物の主鎖中に位置する場合、アリーレン基等が挙げられる。アリーレン基としては、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基等の単環芳香族基;ナフチレン基等の多環芳香族などが挙げられ、これらの芳香族基は置換基を更に有していてもよい。芳香族基に導入される置換基としては、アルキル基、ビニル基、アリル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、ヒドロキシ基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、スチレン基、芳香族基等が挙げられる。
【0037】
芳香族ポリオキシアルキレン化合物は、ストッパ材料を効率よく被覆する観点から、下記一般式(II)又は一般式(III)で表される化合物であることが好ましい。
11-O-(R12-O)-H …(II)
[式(II)中、R11は、置換基を有していてもよいアリール基を表し、R12は、置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキレン基を表し、mは、15以上の整数を表す。]
H-(O-R23n1-O-R21-R25-R22-O-(R24-O)n2-H …(III)
[式(III)中、R21及びR22は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、R23、R24及びR25は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキレン基を表し、n1及びn2は、それぞれ独立に15以上の整数を表す。]
【0038】
ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性が更に向上する観点から、式(II)又は式(III)は下記条件の少なくとも一つを満たすことが好ましい。
・R11としては、芳香環を有する置換基として例示した前記のアリール基が好ましく、スチレン基又はアルキル基が置換基として導入されたフェニル基がより好ましい。
・R21及びR22としては、芳香環を有する置換基として例示した前記のアリーレン基が好ましい。
・R12、R23、R24及びR25としては、エチレン基、n−プロピレン基が好ましい。
・mは、15以上が好ましく、30以上がより好ましい。
・mは、20000以下が好ましく、10000以下がより好ましく、5000以下が更に好ましく、1000以下が特に好ましい。
・n1及びn2は、15以上が好ましく、30以上がより好ましい。
・n1及びn2は、20000以下が好ましく、10000以下がより好ましく、5000以下が更に好ましく、1000以下が特に好ましい。
【0039】
式(II)で表される芳香族ポリオキシアルキレン化合物としては、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンクミルフェニルエーテル、
ポリオキシアルキレンベンジルエーテル等が挙げられる。具体的には、式(II)で表される芳香族ポリオキシアルキレン化合物としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えば、第一工業製薬株式会社製、エマルジットシリーズ)、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル(例えば、第一工業製薬株式会社製、アクアロンRNシリーズ)、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(例えば、花王株式会社製、エマルゲンA−500;第一工業製薬株式会社製、ノイゲンEA−7シリーズ)、ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンベンジルエーテル等が挙げられる。式(III)で表される芳香族ポリオキシアルキレン化合物としては、2,2−ビス(4−ポリオキシエチレンオキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0040】
芳香族ポリオキシアルキレン化合物は、研磨選択性及び平坦性等の研磨特性を調整する目的で、一種類単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
芳香族ポリオキシアルキレン化合物の重量平均分子量の下限は、研磨選択性に更に優れる観点から、1000以上が好ましく、1500以上がより好ましく、2000以上が更に好ましく、4000以上が特に好ましい。芳香族ポリオキシアルキレン化合物の重量平均分子量の上限は、研磨選択性に更に優れる観点から、1000000以下が好ましく、500000以下がより好ましく、250000以下が更に好ましく、100000以下が特に好ましく、50000以下が極めて好ましく、10000以下が非常に好ましい。
【0042】
なお、芳香族ポリオキシアルキレン化合物の重量平均分子量は、例えば、標準ポリスチレンの検量線を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により下記の条件で測定することができる。
使用機器:日立L−6000型〔株式会社日立製作所製〕
カラム:ゲルパックGL−R420+ゲルパックGL−R430+ゲルパックGL−R440〔日立化成株式会社製 商品名、計3本〕
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:1.75mL/min
検出器:L−3300RI〔株式会社日立製作所製〕
【0043】
芳香族ポリオキシアルキレン化合物の含有量は、CMP用研磨液の全質量を基準として0.01質量%以上が好ましい。これにより、ストッパ材料の研磨速度を更に抑制することができる。同様の観点で、芳香族ポリオキシアルキレン化合物の含有量の下限は、CMP用研磨液の全質量を基準として0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、0.2質量%以上が特に好ましい。芳香族ポリオキシアルキレン化合物の含有量の上限は、特に制限はないが、安定性及び生産性に優れる観点から、10.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下が更に好ましく、2.0質量%以下が特に好ましく、1.0質量%以下が極めて好ましい。
【0044】
(第3の添加剤:陽イオン性ポリマ)
本実施形態に係るCMP用研磨液は、前記第1の添加剤(4−ピロン系化合物)及び前記第2の添加剤(芳香族ポリオキシアルキレン化合物)の他に、第3の添加剤として陽イオン性ポリマを含有する。すなわち、第3の添加剤としては、前記第1の添加剤又は前記第2の添加剤に該当する化合物を除く。「陽イオン性ポリマ」とは、カチオン基、又は、カチオン基にイオン化され得る基を主鎖又は側鎖に有するポリマとして定義される。カチオン基としては、アミノ基、イミノ基、シアノ基等が挙げられる。
【0045】
陽イオン性ポリマは、芳香族ポリオキシアルキレン化合物と併用することにより、ストッパ材料の研磨速度が過度に高くなることを抑制する効果がある。また、陽イオン性ポリマは、芳香族ポリオキシアルキレン化合物がストッパ材料に加えて絶縁材料を過度に被覆することにより絶縁材料の研磨速度が低下することを抑制可能であり、絶縁材料の研磨速度を向上させる効果もある。そのため、芳香族ポリオキシアルキレン化合物と陽イオン性ポリマとを併用した場合、陽イオン性ポリマが芳香族ポリオキシアルキレン化合物と相互作用することにより、ストッパ材料の研磨速度を抑制することができると共に、絶縁材料の研磨速度を向上させることができると考えられる。
【0046】
陽イオン性ポリマとしては、アリルアミン、ジアリルアミン、ビニルアミン、エチレンイミン及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の単量体成分を重合させることにより得られる重合体(アリルアミン重合体、ジアリルアミン重合体、ビニルアミン重合体、エチレンイミン重合体)、キトサン及びキトサン誘導体等の多糖類などが挙げられる。
【0047】
アリルアミン重合体は、アリルアミン又はその誘導体を重合させることにより得られる重合体である。アリルアミン誘導体としては、アルコキシカルボニル化アリルアミン、メチルカルボニル化アリルアミン、アミノカルボニル化アリルアミン、尿素化アリルアミン等が挙げられる。
【0048】
ジアリルアミン重合体は、ジアリルアミン又はその誘導体を重合させることにより得られる重合体である。ジアリルアミン誘導体としては、メチルジアリルアミン、ジアリルジメチルアンモニウム塩、ジアリルメチルエチルアンモニウム塩、アシル化ジアリルアミン、アミノカルボニル化ジアリルアミン、アルコキシカルボニル化ジアリルアミン、アミノチオカルボニル化ジアリルアミン、ヒドロキシアルキル化ジアリルアミン等が挙げられる。アンモニウム塩としては、アンモニウムクロリド、アンモニウムアルキルサルフェイト(例えばアンモニウムエチルサルフェイト)等が挙げられる。
【0049】
ビニルアミン重合体は、ビニルアミン又はその誘導体を重合させることにより得られる重合体である。ビニルアミン誘導体としては、アルキル化ビニルアミン、アミド化ビニルアミン、エチレンオキサイド化ビニルアミン、プロピレンオキサイド化ビニルアミン、アルコキシ化ビニルアミン、カルボキシメチル化ビニルアミン、アシル化ビニルアミン、尿素化ビニルアミン等が挙げられる。
【0050】
エチレンイミン重合体は、エチレンイミン又はその誘導体を重合させることにより得られる重合体である。エチレンイミン誘導体としては、アミノエチル化アクリル重合体、アルキル化エチレンイミン、尿素化エチレンイミン、プロピレンオキサイド化エチレンイミン等が挙げられる。
【0051】
陽イオン性ポリマは、アリルアミン、ジアリルアミン、ビニルアミン、エチレンイミン及びこれらの誘導体以外の単量体成分由来の構造単位を有していてもよい。陽イオン性ポリマは、例えば、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸、マレイン酸又は二酸化硫黄等に由来する構造単位を有していてもよい。
【0052】
陽イオン性ポリマは、アリルアミン、ジアリルアミン、ビニルアミン、エチレンイミンの単独重合体(ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン)であってもよく、アリルアミン、ジアリルアミン、ビニルアミン、エチレンイミン又はこれらの誘導体由来の構造単位を有する共重合体であってもよい。共重合体において構造単位の配列は任意である。例えば、(a)それぞれ同種の構造単位が連続したブロック共重合の形態、(b)構造単位A及び構造単位Bが特に秩序なく配列したランダム共重合の形態、(c)構造単位A及び構造単位Bが交互に配列した交互共重合の形態等の任意の形態をとり得る。
【0053】
前記共重合体としては、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性を更に向上させる観点から、アクリルアミドを単量体成分として含む組成物を重合させて得られる共重合体が好ましく、ジアリルジメチルアンモニウム塩とアクリルアミドとを単量体成分として含む組成物を重合させて得られる共重合体がより好ましく、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体が更に好ましい。
【0054】
前記陽イオン性ポリマの中でも、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性を更に向上させる観点、及び、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、アリルアミン、ジアリルアミン、ビニルアミン等の重合体であるアミンポリマが好ましい。陽イオン性ポリマは、研磨選択性及び平坦性等の研磨特性を調整する目的で、一種類単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
陽イオン性ポリマの重量平均分子量の下限は、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性を更に向上させる観点から、100以上が好ましく、300以上がより好ましく、500以上が更に好ましい。陽イオン性ポリマの重量平均分子量の上限は、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性を更に向上させる観点から、1000000以下が好ましく、600000以下がより好ましく、300000以下が更に好ましい。なお、陽イオン性ポリマの重量平均分子量は、第2の添加剤の重量平均分子量と同様の方法により測定することができる。
【0056】
陽イオン性ポリマの含有量の下限は、研磨選択性及び平坦性を更に向上させる観点から、CMP用研磨液の全質量を基準として0.00001質量%以上が好ましく、0.00003質量%以上がより好ましく、0.00005質量%以上が更に好ましい。陽イオン性ポリマの含有量の上限は、研磨選択性に更に優れる観点から、CMP用研磨液の全質量を基準として5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましく、0.01質量%以下が特に好ましく、0.005質量%以下が極めて好ましく、0.001質量%以下が非常に好ましく、0.0005質量%以下が特に好ましい。陽イオン性ポリマの含有量は、絶縁材料の研磨速度、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性、及び、平坦性を更に向上させる観点から、絶縁材料の作製方法(種類及び膜付け条件)に応じて適宜調整することが好ましい。
【0057】
(第4の添加剤:飽和モノカルボン酸)
本実施形態に係るCMP用研磨液は、第4の添加剤として飽和モノカルボン酸を更に含有していてもよい。これにより、絶縁材料の研磨速度を更に向上させることができる。
【0058】
絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、飽和モノカルボン酸の炭素数は、2〜6が好ましい。飽和モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ヒドロアンゲリカ酸、カプロン酸、2−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2,3−ジメチルブタン酸、2−エチルブタン酸、2,2−ジメチルブタン酸及び3,3−ジメチルブタン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。なお、飽和モノカルボン酸としては、これらの化合物のうちの一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。飽和モノカルボンの炭素数は、絶縁材料の研磨速度に更に優れる観点から、3以上がより好ましい。また、水溶性が良好で使用しやすく、安価で入手しやすいという点から、炭素数2又は3の飽和モノカルボン酸が好ましく、具体的には酢酸、プロピオン酸が好ましい。以上より、研磨速度、水溶性、入手容易性等のバランスをとる点ではプロピオン酸が特に好ましい。
【0059】
飽和モノカルボン酸の含有量は、CMP用研磨液の全質量を基準として0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.02質量%以上が特に好ましく、0.03質量%以上が極めて好ましく、0.05質量%以上が非常に好ましい。飽和モノカルボン酸の含有量が0.001質量%以上であると、安定した研磨速度及び良好な面内均一性を達成するという飽和モノカルボン酸の効果が得られやすい。飽和モノカルボン酸の含有量は、CMP用研磨液の全質量を基準として5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましく、0.3質量%以下が特に好ましく、0.1質量%以下が極めて好ましい。飽和モノカルボン酸の含有量が5質量%以下であると、5質量%を超える場合と比較して砥粒の凝集を抑制しやすく、高い研磨速度及び良好な面内均一性が達成されやすい。
【0060】
(砥粒)
本実施形態に係るCMP用研磨液は、セリウム系化合物を含む砥粒を含有する。セリウム系化合物を含む砥粒を用いた研磨液は、研磨面に生じる研磨傷が比較的少ないという特長を有する。従来、絶縁材料の高い研磨速度を達成しやすい点から、砥粒としてシリカ粒子を含む研磨液が広く用いられている。しかし、シリカ粒子を用いた研磨液は、一般に研磨面に研磨傷が生じやすいという課題がある。配線幅が45nm世代以降の微細パターンを有するデバイスにおいては、従来問題にならなかったような微細な傷であっても、デバイスの信頼性に影響するおそれがある。
【0061】
なお、セリウム系化合物を含む砥粒を使用した研磨液は、従来、シリカ粒子を使用したものと比較し、絶縁材料の研磨速度がやや低い傾向があった。しかし、本実施形態においては、上述の添加剤と、セリウム系化合物を含む砥粒とを併用することにより、絶縁材料の高い研磨速度が達成される。このことは、セリウム系化合物と前記添加剤との組み合わせが、特に研磨に有効であることを示唆している。
【0062】
セリウム系化合物としては、酸化セリウム、水酸化セリウム、硝酸アンモニウムセリウム、酢酸セリウム、硫酸セリウム水和物、臭素酸セリウム、臭化セリウム、塩化セリウム、シュウ酸セリウム、硝酸セリウム、炭酸セリウム等が挙げられる。これらの中でも酸化セリウムが好ましい。酸化セリウムを含む砥粒を使用することで、更に高い研磨速度を達成できると共に、傷が少なく平坦性に優れた研磨面が得られる。
【0063】
砥粒として使用する酸化セリウムは、結晶粒界を有する多結晶酸化セリウムを含むことが好ましい。かかる構成の多結晶酸化セリウム粒子は、単結晶粒子が凝集した単なる凝集体とは異なっており、研磨中の応力により細かくなると同時に、活性面(細かくなる前は外部にさらされていない面)が次々と現れるため、絶縁材料の高い研磨速度を高度に維持できると考えられる。このような多結晶酸化セリウム粒子については、国際公開公報WO99/31195号に詳しく説明されている。
【0064】
酸化セリウム粒子の製造方法としては特に制限はないが、液相合成、焼成、又は、過酸化水素等により酸化する方法などが挙げられる。前記結晶粒界を有する多結晶酸化セリウムを得る場合には、炭酸セリウム等のセリウム源を焼成する方法が好ましい。前記焼成時の温度は、350〜900℃が好ましい。製造された酸化セリウム粒子が凝集している場合は、機械的に粉砕することが好ましい。粉砕方法としては特に制限はないが、例えば、ジェットミル等による乾式粉砕、及び、遊星ビーズミル等による湿式粉砕が好ましい。ジェットミルは、例えば、「化学工学論文集」第6巻第5号(1980)527〜532頁に説明されているものを使用することができる。
【0065】
砥粒の平均粒径は、50nm以上が好ましく、70nm以上がより好ましく、80nm以上が更に好ましい。砥粒の平均粒径が50nm以上であると、50nm未満の場合と比較して絶縁材料の研磨速度を更に向上させることができる。砥粒の平均粒径は、500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、280nm以下が更に好ましく、250nm以下が特に好ましく、200nm以下が極めて好ましい。砥粒の平均粒径が500nm以下であると、500nmを超える場合と比較して研磨傷を抑制できる。前記砥粒の平均粒径を制御するためには、従来公知の方法を使用することが可能であり、前記酸化セリウム粒子を例にすると、前記焼成温度、焼成時間、粉砕条件等の制御;濾過、分級等の適用などが挙げられる。
【0066】
前記「砥粒の平均粒径」は、砥粒が分散したスラリサンプルを、動的光散乱式粒度分布計を用いて測定した体積分布の中央値を意味する。具体的には、株式会社堀場製作所製のLB−500(商品名)等を用いて測定される値である。砥粒の含有量がスラリサンプル全質量基準で0.5質量%となるようにスラリサンプルの含有量を調整し、これをLB−500にセットして体積分布の中央値の測定を行う。なお、LB−500によってメジアン径(累積中央値)を測定することによって、砥粒の凝集の程度を評価することもできる。なお、研磨液中の砥粒の粒径を測定する場合は、前記研磨液を濃縮又は水で希釈することによって砥粒の含有量がスラリサンプル全質量基準で0.5質量%となるようにスラリサンプルの含有量を調整してから、同様の方法で測定することができる。
【0067】
CMP用研磨液中における砥粒のゼータ電位は正であることが好ましい。「ゼータ電位」とは、CMP用研磨液中に分散させた砥粒表面の表面電荷を意味する。砥粒のゼータ電位が正であることにより、絶縁材料に砥粒が作用しやすくなり、絶縁材料の研磨速度を更に向上させることができる。
【0068】
CMP用研磨液中における砥粒のゼータ電位は、砥粒の分散状態を安定させやすくなる観点から、+10mV以上が好ましく、+20mV以上がより好ましく、+30mV以上が更に好ましい。ゼータ電位の上限は、特に制限はないが+100mV程度である。ゼータ電位は、例えば、BECKMAN COULTER社製、Delsa Nano Cを用いて測定することができる。
【0069】
(水)
研磨液の調製に用いる水は、特に制限されるものではないが、脱イオン水、イオン交換水、超純水等が好ましい。なお、必要に応じて、エタノール、酢酸、アセトン等の極性溶媒などを水と併用してもよい。
【0070】
(他の成分)
本実施形態に係るCMP用研磨液は、砥粒の分散安定性及び/又は研磨面の平坦性を向上させる観点から、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤が挙げられ、非イオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。
【0071】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル誘導体、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、アセチレン系ジオールのオキシエチレン付加体等のエーテル型界面活性剤;
ソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールボレイト脂肪酸エステル等のエステル型界面活性剤;
ポリオキシエチレンアルキルアミン等のアミノエーテル型界面活性剤;
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエステル等のエーテルエステル型界面活性剤;
脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド等のアルカノールアミド型界面活性剤;
アセチレン系ジオールのオキシエチレン付加体;ポリビニルピロリドン;ポリアクリルアミド;ポリジメチルアクリルアミド;ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0072】
本実施形態に係るCMP用研磨液は、界面活性剤以外に、所望とする特性に合わせてその他の成分を更に含有していてもよい。このような成分としては、後述するようなpH調整剤、pHの変動を抑えるためのpH緩衝剤、アミノカルボン酸、環状モノカルボン酸等が挙げられる。これらの成分の含有量は、CMP用研磨液による前記効果を過度に低下させない範囲とすることが望ましい。
【0073】
(pH)
本実施形態に係るCMP用研磨液のpHの下限は、絶縁材料の研磨速度を高く保持しやすくなる観点から、1.0以上が好ましく、2.0以上がより好ましく、3.0以上が更に好ましい。本実施形態に係るCMP用研磨液のpHの上限は、砥粒の分散状態を安定させやすくなる観点から、9.0以下が好ましく、8.0以下がより好ましく、7.0以下が更に好ましく、6.0以下が特に好ましい。なお、pHは、液温25℃におけるpHと定義する。
【0074】
研磨液のpHは、無機酸、有機酸等の酸成分;アンモニア、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、イミダゾール等のアルカリ成分などのpH調整剤によって調整可能である。また、pHを安定化させるため、緩衝剤を添加してもよい。また、緩衝液(緩衝剤を含む液)として緩衝剤を添加してもよい。このような緩衝液としては、酢酸塩緩衝液、フタル酸塩緩衝液等が挙げられる。
【0075】
本実施形態に係るCMP用研磨液のpHは、pHメータ(例えば、電気化学計器株式会社製の型番PHL−40)で測定することができる。例えば、フタル酸塩pH緩衝液(pH4.01)と中性リン酸塩pH緩衝液(pH6.86)とを標準緩衝液として用いてpHメータを2点校正した後、pHメータの電極を研磨液に入れて、2分以上経過して安定した後の値を測定する。このとき、標準緩衝液と研磨液の液温は共に25℃とする。
【0076】
本実施形態に係るCMP用研磨液は、砥粒と、4−ピロン系化合物と、芳香環及びポリオキシアルキレン鎖を有する高分子化合物と、陽イオン性ポリマと、水とを少なくとも含む一液式研磨液として保存してもよく、スラリ(第1の液)と添加液(第2の液)とを混合して前記研磨液となるように前記研磨液の構成成分をスラリと添加液とに分けた二液式の研磨液セット(例えばCMP用研磨液セット)として保存してもよい。スラリは、例えば、砥粒及び水を少なくとも含む。添加液は、例えば、芳香環及びポリオキシアルキレン鎖を有する高分子化合物と、陽イオン性ポリマ及び水を少なくとも含む。なお、前記研磨液の構成成分は、三液以上に分けた研磨液セットとして保存してもよい。
【0077】
4−ピロン系化合物及び飽和モノカルボン酸は、スラリ及び添加液のいずれに含まれてもよいが、スラリに含まれることが好ましい。例えば、砥粒、4−ピロン系化合物(必要に応じて飽和モノカルボン酸)及び水を少なくとも含むスラリと、芳香環及びポリオキシアルキレン鎖を有する高分子化合物、陽イオン性ポリマ及び水を少なくとも含む添加液とに分けることが好ましい。これにより、例えば、後述する第1の研磨工程を前記スラリのみで行い、後述する第2の研磨工程を、前記スラリと添加液とを混合して得られるCMP用研磨液で行うといった使用方法が可能となる。
【0078】
前記CMP用研磨液セットにおいては、研磨直前又は研磨時に、スラリ及び添加液が混合されて研磨液が調製される。また、一液式研磨液は、水の含有量を減じた研磨液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に水で希釈して用いられてもよい。二液式の研磨液セットは、水の含有量を減じたスラリ用貯蔵液及び添加液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に水で希釈して用いられてもよい。
【0079】
一液式研磨液の場合、研磨定盤上への研磨液の供給方法としては、研磨液を直接送液して供給する方法;研磨液用貯蔵液及び水を別々の配管で送液し、これらを合流、混合させて供給する方法;あらかじめ研磨液用貯蔵液及び水を混合しておき供給する方法等を用いることができる。
【0080】
スラリと添加液とに分けた二液式の研磨液セットとして保存する場合、これら二液の配合を任意に変えることにより研磨速度を調整できる。研磨液セットを用いて研磨する場合、研磨定盤上への研磨液の供給方法としては、下記に示す方法がある。例えば、スラリと添加液とを別々の配管で送液し、これらの配管を合流、混合させて供給する方法;スラリ用貯蔵液、添加液用貯蔵液及び水を別々の配管で送液し、これらを合流、混合させて供給する方法;あらかじめスラリ及び添加液を混合しておき供給する方法;あらかじめスラリ用貯蔵液、添加液用貯蔵液及び水を混合しておき供給する方法を用いることができる。また、前記研磨液セットにおけるスラリと添加液とをそれぞれ研磨定盤上へ供給する方法を用いることもできる。この場合、研磨定盤上においてスラリ及び添加液が混合されて得られる研磨液を用いて被研磨面が研磨される。
【0081】
<研磨方法>
本実施形態に係る研磨方法は、前記CMP用研磨液を用いて、絶縁材料を含む基体(例えば基板)を研磨する研磨工程を備える。例えば、研磨工程では、絶縁材料を研磨パッドに押し当てると共に前記研磨液を絶縁材料と研磨パッドとの間に供給しながら、基体と研磨パッドの少なくとも一方を動かすことにより、研磨パッドによって絶縁材料の研磨を行う。研磨工程では、例えば、各成分の含有量及びpH等が調整された研磨液を使用し、表面に絶縁材料を有する基体をCMP技術によって平坦化する。
【0082】
本実施形態に係る研磨方法は、デバイスの製造過程において、表面に絶縁材料を有する基体を研磨することに適している。デバイスとしては、ダイオード、トランジスタ、化合物半導体、サーミスタ、バリスタ、サイリスタ等の個別半導体、DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ)、SRAM(スタティック・ランダム・アクセス・メモリ)、EPROM(イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリ)、マスクROM(マスク・リード・オンリー・メモリ)、EEPROM(エレクトリカル・イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリ)、フラッシュメモリ等の記憶素子、マイクロプロセッサー、DSP、ASIC等の理論回路素子、MMIC(モノリシック・マイクロウェーブ集積回路)に代表される化合物半導体等の集積回路素子、混成集積回路(ハイブリッドIC)、発光ダイオード、電荷結合素子等の光電変換素子などが挙げられる。
【0083】
本実施形態に係るCMP用研磨液は、被研磨面の状態に大きく依存することなく、絶縁材料の高い研磨速度を達成できる。そのため、当該研磨液を用いた研磨方法は、従来のCMP用研磨液を用いた方法では高い研磨速度を達成することが困難であって基体に対しても適用できる。
【0084】
本実施形態に係る研磨方法は、表面に段差(凹凸)を有する被研磨面の平坦化に特に適している。このような被研磨面を有する基体としては、例えば、ロジック用の半導体デバイスが挙げられる。また、この研磨方法は、上から見たときに凹部又は凸部がT字形状又は格子形状になっている部分を含む表面を研磨することに適している。例えば、メモリセルを有する半導体デバイス(例えば、DRAM、フラッシュメモリ)の表面に設けられた絶縁材料も高い速度で研磨できる。これらは、従来のCMP用研磨液を用いた方法では高い研磨速度を達成することが困難であったものであり、本実施形態に係るCMP用研磨液が、被研磨面の凹凸形状に大きく依存することなく、高い研磨速度を達成できることを示している。
【0085】
本実施形態に係る研磨方法は、前記絶縁材料を研磨し、ストッパが露出した段階で研磨を停止する研磨方法に適している。これは、前記CMP用研磨液が、絶縁材料の高い研磨速度、及び、ストッパ材料の高いストップ性を達成できるためである。本実施形態に係る研磨方法では、ストッパ材料に対して絶縁材料を選択的に研磨できる。ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨速度比としては、30以上が好ましく、50以上がより好ましく、100以上が更に好ましい。
【0086】
絶縁材料としては、無機絶縁材料、有機絶縁材料等が挙げられる。無機絶縁材料としては、シリコン系絶縁材料等が挙げられる。シリコン系絶縁材料としては、酸化珪素、フルオロシリケートグラス、オルガノシリケートグラス、水素化シルセスキオキサン等のシリカ系材料、シリコンカーバイド、シリコンナイトライドなどが挙げられる。前記絶縁材料は、リン、ホウ素等の元素がドープされていてもよい。有機絶縁材料としては、全芳香族系低誘電率絶縁材料等が挙げられる。前記絶縁材料としては、更に高い研磨速度を達成する観点から、無機絶縁材料が好ましく、シリコン系絶縁材料がより好ましく、酸化珪素が更に好ましい。
【0087】
前記ストッパを構成するストッパ材料としては、例えば、窒化珪素、ポリシリコン等が挙げられ、更に高いストップ性を達成する観点から、ポリシリコンが好ましい。
【0088】
当該研磨方法を適用できる基体は、被研磨面全体が酸化珪素によって形成されたものに限らず、表面に酸化珪素の他に窒化珪素、ポリシリコン等を更に有するものであってもよい。また、当該研磨方法は、所定の配線を有する配線板上に、酸化珪素膜、ガラス、窒化珪素等の無機絶縁膜、ポリシリコン、Al、Cu、Ti、TiN、W、Ta、TaN等を主として含有する膜が形成された基体に対しても適用できる。
【0089】
図1を参照しながら、本実施形態に係る研磨方法によるCMPによって基板(ウエハ)にシャロー・トレンチ分離(STI)構造を形成するプロセスについて説明する。本実施形態に係る研磨方法は、酸化珪素膜3を高い速度で研磨する第1の研磨工程(荒削り工程)と、残りの酸化珪素膜3を比較的低い速度で研磨する第2の研磨工程(仕上げ工程)とを有してもよい。
【0090】
図1(a)は研磨前の基板を示す断面図である。図1(b)は第1の研磨工程後の基板を示す断面図である。図1(c)は第2の研磨工程後の基板を示す断面図である。これらの図に示すように、STI構造を形成する過程では、シリコン基板1上に成膜した酸化珪素膜3の段差Dを解消するため、部分的に突出した不要な箇所をCMPによって優先的に除去する。なお、表面が平坦化した時点で適切に研磨を停止させるため、酸化珪素膜3の下には、研磨速度の遅いポリシリコン膜(ストッパ膜)2を予め形成しておくことが好ましい。第1の研磨工程及び第2の研磨工程を経ることによって酸化珪素膜3の段差Dが解消され、埋め込み部分5を有する素子分離構造が形成される。
【0091】
酸化珪素膜3を研磨するには、酸化珪素膜3の表面と研磨パッドとが当接するように、研磨パッド上に基板(ウエハ)を配置し、研磨パッドによって酸化珪素膜3の表面を研磨する。より具体的には、研磨定盤の研磨パッドに酸化珪素膜3の被研磨面側を押し当て、被研磨面と研磨パッドとの間にCMP用研磨液を供給しながら、両者を相対的に動かすことによって酸化珪素膜3を研磨する。
【0092】
本実施形態に係るCMP用研磨液は、第1の研磨工程及び第2の研磨工程のいずれにも適用できるが、高い研磨速度を達成し得るので、第2の研磨工程において使用することが特に好ましい。
【0093】
なお、ここでは、研磨工程を2段階に分けて実施する場合を例示したが、図1(a)に示す状態から図1(c)に示す状態まで一段階で研磨処理することもできる。
【0094】
研磨装置としては、例えば、基体を保持するホルダーと、研磨パッドが貼り付けられる研磨定盤と、研磨パッド上に研磨液を供給する手段とを備える装置が好適である。例えば、株式会社荏原製作所製の研磨装置(型番:EPO−111、EPO−222、FREX200、FREX300)、APPLIED MATERIALS社製の研磨装置(商品名:Mirra3400、Reflexion研磨機)等が挙げられる。研磨パッドとしては、特に制限はなく、例えば、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂等を使用することができる。また、研磨パッドは、研磨液が溜まるような溝加工が施されたものが好ましい。
【0095】
研磨条件としては、特に制限はないが、基体が飛び出さないようにする見地から、研磨定盤の回転速度は200min−1以下が好ましい。基体にかける圧力(加工荷重)は、研磨面の傷を抑制するという見地から、100kPa以下が好ましい。研磨している間、ポンプ等によって研磨パッドに研磨液を連続的に供給することが好ましい。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨液で覆われていることが好ましい。
【0096】
研磨終了後、流水中で基体を充分に洗浄した後、スピンドライヤ等を用いて、基体に付着した水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。このように研磨することによって、表面の凹凸を解消し、基体全面にわたって平滑な面を得ることができる。膜の形成及びこれを研磨する工程を所定の回数繰り返すことによって、所望の層数を有する基体を製造することができる。
【0097】
このようにして得られた基体は、種々の電子部品として使用することができる。具体例としては、半導体素子、フォトマスク・レンズ・プリズム等の光学ガラス、ITO等の無機導電膜、ガラス及び結晶質材料で構成される光集積回路・光スイッチング素子・光導波路、光ファイバーの端面、シンチレータ等の光学用単結晶、固体レーザ単結晶、青色レーザLED用サファイヤ基板、SiC、GaP、GaAs等の半導体単結晶、磁気ディスク用ガラス基板、磁気ヘッドなどが挙げられる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0099】
[砥粒の作製]
炭酸セリウム水和物40kgをアルミナ製容器に入れ、830℃で2時間、空気中で焼成して黄白色の粉末を20kg得た。この粉末についてX線回折法で相同定を行い、当該粉末が多結晶体の酸化セリウムを含むことを確認した。焼成によって得られた粉末の粒子径をSEMで観察したところ、20〜100μmであった。次いで、酸化セリウム粉末20kgを、ジェットミルを用いて乾式粉砕した。粉砕後の酸化セリウム粉末をSEMで観察したところ、結晶粒界を有する多結晶酸化セリウム粒子を含むものであった。また、比表面積は9.4m/gであった。比表面積の測定はBET法によって実施した。
【0100】
[CMP用研磨液の調製]
前記で得られた酸化セリウム粉末(砥粒)150g及び脱イオン水849.8gを容器内に入れて混合した。さらに酢酸0.2gを添加してpHを4.5に調整し、10分間攪拌した。得られたスラリを別の容器に30分かけて送液した。その間、送液する配管内で、スラリに対して超音波周波数400kHzにて超音波照射を行った。
【0101】
500mLビーカー2個にそれぞれ500g±20gのスラリを採取し、遠心分離を行った。遠心分離は、外周にかかる遠心力が500Gになる条件で2分間実施した。ビーカーの底に固相(沈降した砥粒)を残し、液相(沈降していない砥粒を含む液)を回収した。前記液相に脱イオン水を添加して、スラリ全質量基準で砥粒の含有量が0.5質量%となるように調整し、平均粒径測定用サンプルを得た。動的光散乱式粒度分布計〔株式会社堀場製作所製、商品名:LB−500〕を用いて砥粒の平均粒径を測定した結果、平均粒径は150nmであった。
【0102】
(実施例1)
前記砥粒が5.0質量%、第1の添加剤として3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロンが0.7質量%、及び、第4の添加剤としてプロピオン酸が0.9質量%となるように、脱イオン水を用いて調整して、スラリ用貯蔵液を得た。スラリ用貯蔵液のpHは3.0であった。pHは、電気化学計器株式会社製の型番PHL−40を用いて測定した。
【0103】
第2の添加剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルが5質量%、及び、第3の添加剤としてジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体が0.0015質量%となるように、脱イオン水を用いて調整し、アンモニア水溶液を用いてpHを調整し、添加液用貯蔵液を得た。添加液用貯蔵液のpHは5.7であった。pHは、電気化学計器株式会社製の型番PHL−40を用いて測定した。
【0104】
前記スラリ用貯蔵液:前記添加液用貯蔵液:脱イオン水を、それぞれ質量比で1:1:8となるように混合し、研磨液を得た。研磨液において、前記スラリ用貯蔵液及び前記添加液用貯蔵液は10倍に希釈されたことになる。研磨液のpHは3.5であった。pHは、電気化学計器株式会社製の型番PHL−40を用いて測定した。
【0105】
(実施例2〜12、比較例1〜4)
前記で得られた砥粒と、下記表1に示す添加剤とを用いて、実施例1と同様に、スラリ用貯蔵液と添加液用貯蔵液とを用意して、脱イオン水と混合し、砥粒の含有量が0.5質量%であると共に4−ピロン系化合物の含有量が0.07質量%である研磨液を調製した。実施例2〜3では、添加液を作製する際に、pH調整剤としてアンモニア水を用いた。
【0106】
[ゼータ電位]
測定装置として、BECKMAN COULTER社製、Delsa Nano Cを使用し、前記測定装置における測定サンプルの散乱強度が1.0×10〜5.0×10cpsとなるように、CMP用研磨液を遠心分離して、液相を測定サンプルとして得た。具体的な遠心分離条件は、外周にかかる遠心力が500Gであり、遠心分離時間が10分間であった。そして、測定サンプルをゼータ電位測定用セルに入れた後、ゼータ電位を測定した。測定結果を表1に示す。
【0107】
[CMP評価]
前記CMP用研磨液のそれぞれを用いて下記研磨条件で被研磨基板を研磨した。
【0108】
(CMP研磨条件)
・研磨装置:Reflexion(APPLIED MATERIALS社製)
・CMP用研磨液流量:250mL/min
・被研磨基板:下記「ブランケットウエハ」
・研磨パッド:独立気泡を有する発泡ポリウレタン樹脂(ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製、型番IC1010)
・研磨圧力:20.6kPa(3.0psi)
・基板と研磨定盤の回転速度:100min−1(rpm)
・研磨時間:ブランケットウエハを30秒間(0.5min)研磨した。
【0109】
(ブランケットウエハ)
ブランケットウエハとして、厚さ1μm(10000Å)の酸化珪素膜をシリコン基板上にプラズマCVD法で形成した基板と、厚さ0.2μm(2000Å)のポリシリコン膜をシリコン基板上にCVD法で形成した基板とを用いた。
【0110】
(研磨品評価:ブランケットウエハ研磨速度及び研磨選択比)
前記条件で研磨した被研磨基板について、各被研磨膜(酸化珪素膜、ポリシリコン膜)の研磨速度を次式より求めた。なお、研磨前後での各被研磨膜の膜厚差は、光干渉式膜厚装置(フィルメトリクス社製、商品名:F80)を用いて求めた。また、ポリシリコン膜に対する酸化珪素膜の研磨選択性(研磨速度比:酸化珪素膜の研磨速度/ポリシリコン膜の研磨速度)を算出した。測定結果を表1に示す。
(研磨速度)=(研磨前後での各被研磨膜の膜厚差(Å))/(研磨時間(min))
【0111】
【表1】
【0112】
なお、表1中の添加剤の詳細は下記のとおりである。
A−1:3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン
A−2:5−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−4−ピロン
B−1:ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(花王株式会社製、製品名:エマルゲンA−500、重量平均分子量:4500〜5000)
B−2:ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(第一工業製薬株式会社製、製品名:エマルジット、重量平均分子量:3000〜3500)
B−3:ポリエチレングリコール(ライオン株式会社製、製品名:PEG600、重量平均分子量:600)
C−1:ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体(ニットーボーメディカル株式会社製、製品名:PAS−J−81、重量平均分子量:200000)
C−2:ポリアリルアミン(ニットーボーメディカル株式会社製、製品名:PAA−01、重量平均分子量:1600)
C−3:ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体(ニットーボーメディカル株式会社製、製品名:PAS−H−10L、重量平均分子量:200000)
D−1:プロピオン酸
【0113】
表1より、実施例1〜12では、比較例1〜4に対して、絶縁材料(酸化珪素)の高い研磨速度と、ストッパ材料(ポリシリコン)の高いストップ性とが両立されていることが明らかである。
【符号の説明】
【0114】
1…シリコン基板、2…ポリシリコン膜、3…酸化珪素膜、5…埋め込み部分、D…段差。
図1