特許第6252833号(P6252833)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6252833マルテンサイト系ステンレス鋼鋼帯の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6252833
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】マルテンサイト系ステンレス鋼鋼帯の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/56 20060101AFI20171218BHJP
   C21D 9/573 20060101ALI20171218BHJP
   C21D 9/60 20060101ALI20171218BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20171218BHJP
   C21D 1/18 20060101ALI20171218BHJP
   C21D 1/42 20060101ALI20171218BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20171218BHJP
   C22C 38/22 20060101ALN20171218BHJP
【FI】
   C21D9/56 101B
   C21D9/573 101Z
   C21D9/60 101
   C21D9/46 Q
   C21D1/18 Q
   C21D1/42 L
   !C22C38/00 302Z
   !C22C38/22
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-203882(P2013-203882)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-67873(P2015-67873A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 文徳
【審査官】 瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−008321(JP,A)
【文献】 特開昭53−133513(JP,A)
【文献】 特開平08−081716(JP,A)
【文献】 特開平10−330974(JP,A)
【文献】 特開平08−164412(JP,A)
【文献】 特表2002−538310(JP,A)
【文献】 特開平04−276028(JP,A)
【文献】 特開2008−255422(JP,A)
【文献】 特開昭61−257430(JP,A)
【文献】 特開2011−074455(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/147155(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/56
C21D 1/18
C21D 1/42
C21D 9/46
C21D 9/573
C21D 9/60
C22C 38/00
C22C 38/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)巻出し機によりマルテンサイト系ステンレス鋼鋼帯を巻出す巻出し工程と、
(2)前記巻出し工程により巻き出されたマルテンサイト系ステンレス鋼鋼帯を通板さ
せながら誘導加熱により予熱する予熱工程と、
(3)前記予熱工程により予熱されたマルテンサイト系ステンレス鋼鋼帯を800℃を
超え1100℃以下に加熱された不活性ガス雰囲気中に通板し、次いで急冷して焼入れす
る焼入れ工程と、
(4)前記焼入れ工程により焼入れされたマルテンサイト系ステンレス鋼鋼帯を300
〜500℃に加熱された不活性ガス雰囲気中に通板して焼戻しする焼戻し工程と、
(5)前記焼戻し工程により焼戻しされたマルテンサイト系ステンレス鋼鋼帯を巻取る
巻取り工程と、
を連続して行い、前記予熱工程において、誘導加熱はソレノイド方式誘導加熱コイルの内側にセラミックス管を配置した前記焼入れ工程と同一雰囲気中の誘導加熱帯により、行うことを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼鋼帯の製造方法。
【請求項2】
前記予熱工程の温度が600〜800℃であることを特徴とする請求項1に記載のマル
テンサイト系ステンレス鋼鋼帯の製造方法。
【請求項3】
前記焼戻し工程と前記巻取り工程の間に、更に、焼戻したマルテンサイト系ステンレス
鋼鋼帯表面を研磨する研磨工程を設けることを特徴とする請求項1または2に記載のマル
テンサイト系ステンレス鋼鋼帯の製造方法。
【請求項4】
前記セラミックス管は断熱材で被覆されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のマルテンサイト系ステンレス鋼鋼帯の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルテンサイト系ステンレス鋼鋼帯の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、バネや弁等に用いるのに適したマルテンサイト系ステンレス鋼の鋼帯(以下「鋼帯」という。)は、一般に、所定の板厚まで圧延を行った後、予熱帯と加熱帯を有する焼入れ炉、噴霧装置、水冷定盤および焼戻し炉をこの順番で連続的に配置した連続加熱設備を利用して、鋼帯を巻出しながら連続的に焼入れと焼戻しを行う方法により製造されている。
前述の鋼帯に連続加熱設備を利用して焼入れ焼戻しを行う具体的な製造方法には、例えば、本出願人による特開昭56−139627号公報(特許文献1)に記載された製造方法がある。この製造方法は、焼入れ炉を出た鋼帯を急冷し焼入を行なう場合に、鋼帯のきず及び歪の発生を防止し、焼入後の硬さのばらつきを少なくすることができるものである。
このような連続加熱設備には、熱源として天然ガス、軽油、重油等をバーナで燃焼させた燃焼熱を利用するものや、電気ヒーター等の通電加熱により発生した熱を利用するものなどがある。いずれの場合も、鋼帯は、これらの熱源からの輻射熱により加熱されるのであった。
また、従来技術に係る連続加熱設備のうち、焼入れ炉は、一般に鋼帯が通板される部分に複数の均熱帯を連続的に設けた構成となっている。均熱帯の一般的な構成としては、例えば、鋼帯を一定の温度まで予熱する予熱帯と、鋼帯の所定の焼入れ温度に保持する1または2以上の加熱帯とからなっている。このような構成により、初めに常温で巻き出され、焼入れ炉に通板された鋼帯を、焼入れ温度まで昇温させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56−139627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは上述した特許文献1に記載された連続加熱設備を用いて、鋼帯への熱処理能力を向上させ、生産能力を向上させる方法を検討した。
単位時間あたりの熱処理能力を向上させるには、例えば、焼入れ炉の長さを延長すると共に通板速度を早くする方法など、が考えられる。
しかしながら、従来の輻射加熱では、焼入れ炉を構成する複数の均熱帯のうち予熱帯の温度域における鋼帯の昇温速度が遅いために、熱処理能力の向上には十分な効果が得られないという問題がある。また、輻射加熱だと、上記の温度域における鋼帯の昇温速度その他の温度条件を任意の条件に制御することが容易ではないという問題もある。
本発明の目的は、鋼帯を製造するにあたり、温度制御を容易とし、熱処理能力を向上させることができる鋼帯の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものである。
すなわち本発明は、
(1)巻出し機により鋼帯を巻出す巻出し工程と、
(2)前記巻出し工程により巻き出された鋼帯を通板させながら誘導加熱により予熱する予熱工程と、
(3)前記予熱工程により予熱された鋼帯を800℃を超え1100℃以下に加熱された不活性ガス雰囲気中に通板し、次いで急冷して焼入れする焼入れ工程と、
(4)前記焼入れ工程により焼入れした鋼帯を300〜500℃に加熱された不活性ガス雰囲気中に通板して焼戻しする焼戻し工程と、
(5)前記焼戻し工程により焼戻しされた鋼帯を巻取る巻取り工程と、
を連続して行う鋼帯の製造方法である。
【0006】
好ましくは、前記予熱工程の温度が600〜800℃である鋼帯。
また、本発明では、前記の焼入れ工程の急冷は、Ms点を超えて350℃以下に冷却する第一冷却工程の後、水冷定盤内で鋼帯を拘束しつつMs点以下に冷却する第二冷却工程を設けることが好ましく、前記第二冷却工程において、鋼帯を拘束する前記水冷定盤を複数個とすることが更に好ましい。
また、本発明では、前記焼戻し工程と前記巻取り工程の間に、更に焼戻した鋼帯表面を研磨する研磨工程を設けることが好ましい。
前記予熱工程において、誘導加熱はソレノイド方式誘導加熱コイルの内側にセラミックス管を配置した前記焼入れ工程と同一雰囲気中の誘導加熱帯により、行うことが好ましい。
さらに、本発明では、前記セラミックス管は断熱材で被覆されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、誘導加熱を利用した予熱炉によって鋼帯を急速加熱できることから、温度制御が容易となり優れた熱処理能力が得られ、更に、加熱時間が短縮され、熱処理能力が向上することで生産性も大きく向上させることができる。また、予熱炉、加熱炉を不活性ガス雰囲気とすることで確実に脱炭を防止し、所望の硬さをより確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の製造方法に用いる連続加熱設備の構成の一例を示す模式図である。
図2】本発明の製造方法に用いる予熱炉の構成の一例を示す模式図である。
図3】本発明の製造方法を適用した鋼帯の断面顕微鏡写真である。
図4】比較例の製造方法を適用した鋼帯の断面顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の製造方法の特徴は、鋼帯を焼入れ温度にまで昇温する際に、焼入れ炉の予熱帯のみによって昇温を行うのではなく、焼入れ炉の前に誘導加熱を利用した予熱炉を設置し、この予熱炉により昇温を行うことにより、鋼帯を急速加熱できることである。また、焼入れと焼戻し時の雰囲気を不活性ガス雰囲気とすることで脱炭を発生させることなく所望の硬さを得ることができる。
以下、本発明について説明する。
先ず、本発明で用いる鋼帯の好ましい組成は、質量%でC:0.3〜0.5%、Si:0.2〜0.5%、Mn:0.2〜0.5%、Cr:12.0〜15.0%、Mo:1.1〜1.4%を含有し、残部はFe及び不純物である。
【0010】
図1に本発明で用いる連続加熱設備のレイアウトの一例を示す。図1を示しながら本発明を説明する。
焼入れと焼戻しを連続で行うための鋼帯2を巻出し機1により巻き出す(巻出し工程)。続いて、巻き出された鋼帯2は、誘導加熱を利用した予熱炉3に通板される(予熱工程)。
本発明において誘導加熱を利用した予熱炉によって予熱を行う理由は、交番磁束によって鋼帯2に誘起される渦電流のジュール熱によって鋼帯2が自ら発熱するので、輻射加熱により加熱する場合に比べて急速に加熱することが可能となるためである。誘導加熱の方法としては、例えば、ソレノイド方式とトランスバース方式等があるが、本発明の場合では、ソレノイド方式とするのが好ましい。これは、ソレノイド方式の場合、鋼帯2のAc1点を利用して、鋼帯の温度制御を容易とし、鋼帯を均一に加熱しやすいためである。
この予熱工程での予熱温度は600℃以上の範囲が好ましい。これは、鋼帯の予熱温度が600℃未満であると、予熱工程の後に行う焼入れ温度まで鋼帯を加熱することが困難となる場合があるからである。そうなると、十分な焼入れ硬さを得ることができなくなる。また、予熱温度の上限は800℃とするのが好ましい。これは、高周波加熱によって800℃を超える温度に急速加熱すると鋼帯の変形のおそれがあるためである。また、800℃付近の鋼帯のAc1点の温度を超えることにより金属組織がフェライトからオーステナイトに変態する。オーステナイトは非磁性であり、ソレノイド方式の高周波加熱ではAc1点の温度以上で加熱効率が低下して過熱が防止されるため、予熱工程における鋼帯の温度制御を行うのに好都合である。
また、予熱炉内では鋼帯表面の脱炭を防止するために後述する焼入れ工程と同一な不活性ガス雰囲気とし、誘導加熱コイル10の内側には雰囲気を保つためにセラミックス管11を配置して、鋼帯2を前記セラミックス管11内を通板させることが好ましい。セラミックス管11は非磁性体であり、誘導加熱が生じないため、電力をロスすることなく効率的に鋼帯を誘導加熱することができる。セラミックス管は放熱による熱損失を低減するために、セラミックス管を断熱材で被覆することが好ましい。
なお、予熱工程における通板速度が過度に速すぎると、上述した予熱効果が得られない。そのため、通板速度を調整し、鋼帯のある部位が予熱炉を通過するのに要する時間を0.8〜3秒の範囲となるように通板させるのが好ましい。
【0011】
上述の予熱工程の後、鋼帯2は脱炭を防ぐために不活性ガス雰囲気とした焼入れ炉4に通板し、800℃を超え1100℃以下に昇温保持する(焼入れ工程)。好適な不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、アンモニア分解ガス等があるが、中でもアルゴンはステンレス鋼鋼帯と反応しないことからアルゴンガスを用いるのが好ましい。
本発明において、焼入れ加熱温度が800℃以下であると炭化物の固溶が不十分となって疲労特性が低減する。また、焼入れ加熱温度が1100℃を超えると炭化物の固溶量が多くなり、焼戻し時に硬さが高くなりにくくなるばかりか、残留炭化物が少なくなり、打抜き性が劣化する。そのため、焼入れ加熱温度の範囲を800℃を超え1100℃以下とする。
なお、焼入れ工程における通板速度が過度に速すぎると、上述した焼入れ時の加熱温度の効果が得られない。そのため、通板速度を調整し、鋼帯のある部位が焼入れ炉を追加するのに要する時間を35〜90秒の範囲となるように通板させるのが好ましい。
続いて、鋼帯2を急冷して焼入れを行う。急冷の方法としては、ソルトバス、溶融金属、水を用いる方法がある。このうち水を噴射する方法は最も簡便な方法であると共に、鋼帯表面に薄い酸化被膜を形成させることができる。この薄い酸化被膜は硬質であり、後述する水冷定盤6を通板する際に、鋼帯表面のきずの発生を抑制できる。そのため、本発明で用いる鋼帯2への急冷も水を噴射する方法を用いるのが好ましい。
【0012】
本発明で前述の水を噴射して急冷するには、焼入れ炉4の出側に設置された噴霧装置5を設けるのが好ましい。
また、焼入れ工程の急冷は、圧縮空気と浄水を用いた噴霧装置5によって鋼帯2をMs点を超えて350℃以下に冷却する第一冷却工程の後、鋼帯を挟みこむように水冷定盤6で拘束し、形状を矯正しながらMs点以下に冷却する第二冷却工程を行ってマルテンサイト組織とするのが好ましい。
冷却を二段階とするのは、第一冷却工程でパーライトノーズを避けつつ、且つ、鋼帯2の焼入れ時に生じる歪を軽減し、次の第二冷却工程中でマルテンサイト変態を行わせつつ、鋼帯2の形状を整えることができるためである。
前述の第一冷却工程において、鋼帯2の急冷の下限をMs点を超える温度としたのは、鋼帯2の焼入れ時に生じる歪を軽減させるためである。これは、第一の冷却工程で一気にMs点以下とすると、焼入れ時の歪が大きくなり過ぎて形状が不安定になる場合があるためである。なお、鋼帯の組成によっても若干Ms点は変化するが、おおよそ180〜190℃である。好ましい第一冷却工程の冷却温度の下限はMs点よりも10〜20℃高めの温度とすると良い。また、第一冷却工程の冷却温度の上限を350℃としたのは、350℃を超える温度となると、後述する水冷定盤内でMs点以下まで冷却するのが困難となる場合があるためである。伝熱には熱伝導、熱対流、輻射熱の3つの形態があるが、水冷定盤中6で鋼帯2を拘束しつつMs点以下に冷却を行うと、水冷定盤内で水冷定盤6と鋼帯2との物理的接触による熱伝導により急速に冷却される。そして、鋼帯2を水冷定盤6によって拘束することが可能となるため、鋼帯2の変形を防止したり、変形を矯正できるためである。
本発明で用いる水冷定盤6は水により冷却しつつ、更に、複数個を連続して配置することが好ましい。これは、水冷定盤内で拘束する時間を長くすることができるため、より確実にMs点以下まで冷却することができるため、鋼帯2の変形の防止や矯正をより確実に行うことができるためである。
【0013】
前述の焼入れ工程に続き、鋼帯2を300〜500℃に加熱しつつ不活性ガス雰囲気の焼戻し炉7に通板して焼戻しを行う。不活性ガス雰囲気とするのは鋼帯の脱炭を防ぐためである。
本発明において、焼戻しの温度が300℃未満であると、硬度が高くなり過ぎる。一方、焼戻しの温度が500℃より高いと硬度が低くなる。
従って焼戻し温度が高過ぎても、低過ぎても適切な硬さを得ることができず、打抜き性が阻害されることになる。なお、焼戻しで調整する硬さはビッカース硬度が500〜650(Hv)とすれば、良好な打抜き性を得ることができる。
なお、焼戻し工程における通板速度が過度に速すぎると、上述した焼戻し時の加熱温度の効果が得られない。そのため、通板速度を調整し、鋼帯が焼戻し炉を通過するのに要する時間を50〜125秒の範囲となるように通板させるのが好ましい。
【0014】
前述の焼戻し工程により焼戻した鋼帯2は、焼戻し炉7の下流側に配置された研磨装置8によって、鋼帯表面を研磨するのが好ましい。
これは、前述したように、焼入れ時に形成された酸化被膜を除去するほか、表面に不可避的に付いたきずを除去または軽減することで、表面のきずに起因した疲労破壊を防止することができる。
その後、巻取り機9によって巻取る(巻取り工程)ことにより、脱炭を発生させることなく所望の硬さを有する鋼帯を得ることができる。
本発明では、前述したように、巻出し工程から巻取り工程までの各工程をコイルから巻き出した鋼帯を再びコイルに巻き取るまでを連続で行うことが可能なため、高い生産性を有するものである。これに加え、誘導加熱を利用した予熱炉によって、鋼帯を急速加熱できることから、優れた熱処理能力を付与し、更に、加熱時間を短縮し、処理能力を向上させることで生産性も大きく向上させることができる。
【実施例】
【0015】
図1に示す連続加熱設備を用いて、鋼帯を連続して焼入れ、焼戻しした。このとき、本発明例では予熱炉3を稼働させ、比較例(従来例)では予熱なしとした。通板速度は本発明例が7m/分とし、比較例を5m/分とした。焼入れ温度、焼戻し温度、冷却速度は本発明と比較例ともに同じとした。
厚さが0.3mm、長さが約1500mの表1に示す鋼帯を用意した。用意した鋼帯を焼入れ、焼戻しする連続焼入れ焼戻し炉は図1に示す構造のものであり、予熱炉3は図2に示す構造のものである。具体的には、
焼入れと焼戻しを連続で行うための鋼帯2を巻出し機1により巻き出して、続いて、
巻き出された鋼帯2は、焼入れ炉4と同じアルゴンガス雰囲気とし、誘導加熱コイル10の内側には雰囲気を保つためにセラミックス管11を配置した温度制御が容易なソレノイド方式の誘導加熱装置による誘導加熱により予熱された予熱炉3に通板させ、本発明の鋼帯を600〜700℃に昇温させた。続いて、
鋼帯2を表2に示す焼入れ温度に昇温保持し、アルゴンガス雰囲気とした焼入れ炉4中を通板させ、続いて、
焼入れ炉4の出側に設置された噴霧装置5により、鋼帯2に空気を噴射して最初の冷却を行った。鋼帯の温度は250℃程度あった。
更に、鋼帯2を挟みこむように設置された4個の冷却定盤6で拘束して鋼帯2を約140℃まで急冷して焼入れを行い、続いて、
鋼帯2の脱炭を防ぐためにアルゴンガス雰囲気とした焼戻し炉7に通板して350℃で焼戻しを行い、
焼戻し炉7の下流側に配置された研磨装置8によって、鋼帯表面を研磨して、巻取り機9によって鋼帯2を巻取る構造を有するものである。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
焼入れと焼戻しを行った鋼帯から、脱炭の有無、硬さ、金属組織を調査するため、それぞれの試験片を採取した。代表的な金属組織として、本発明例1、比較例の顕微鏡写真を図3及び図4に示す。
図3(本発明例1)及び図4(比較例)の金属組織は、マルテンサイトの基地に白色の微細炭化物が認められ、両者ともに遜色のないものであった。脱炭の有無、硬さ、結晶粒度の結果は併せて表3に示す。なお、結晶粒度は旧オーステナイト粒をJIS0551に従って測定したものである。
【0019】
【表3】
【0020】
以上の結果から、本発明では、従来から実施されていた連続焼入れ、焼戻しを行った鋼帯が有する各種の特性を維持していることが分かる。また、今回の実施例では、本発明を適用した場合の所要時間は約214分であるのに対し、比較例では約300分であった。
従って、誘導加熱を利用した予熱炉によって、鋼帯を急速加熱できることから、優れた熱処理能力を付与し、更に、通板速度を高めることで加熱時間を短縮し、処理能力を向上させることで生産性も大きく向上させることができるものである。
【符号の説明】
【0021】
1 巻出し機
2 マルテンサイト系ステンレス鋼鋼帯
3 予熱炉
4 焼入れ炉
5 噴霧装置
6 水冷定盤
7 焼戻し炉
8 研磨装置
9 巻取り機
10 誘導加熱コイル
11 セラミックス管
図1
図2
図3
図4