(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例について説明する。なお、添付図面は本発明の原理に則った具体的な実施例を示しているが、これらは本発明の理解のためのものであり、決して本発明を限定的に解釈するために用いられるものではない。また、各図において共通の構成については同一の参照番号が付されている。
【0013】
試料観察装置としては、荷電粒子線(例えば、電子)を試料表面で走査して、二次的に発生する電子を用いる荷電粒子線装置がある。本発明は、荷電粒子線装置全般に適用可能である。荷電粒子線装置の代表的な例として、電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)がある。以下では、一例として、測長SEM、レビューSEMなどの電子線応用装置に適用した例として説明する。
【0014】
[第1実施例]
以下、本発明の第1実施例を、
図1、
図2、
図3、
図4、
図5、及び
図6を用いて説明する。
図6は、垂直移動ステージ(Zステージ)を搭載した電子線応用装置の全様を示す概略側面図である。
【0015】
図6の電子線応用装置は、試料に電子線を照射するカラム109と、カラム109に接続された真空チャンバー108と、真空チャンバー内に配置されたステージシステム106と、電子線応用装置の各種構成要素を制御する制御ユニット(図示せず)を備える。
【0016】
カラム109は、電子線光学系(荷電粒子線光学系)を含む。一例として、電子線光学系は、電子線を放射する電子源と、引出し電極、コンデンサレンズ、偏向電極、及び、対物レンズなどを含む。真空チャンバー108の内部は、図示しない排気装置によって真空排気される。なお、電子線応用装置のカラム109は、これ以外に他のレンズや電極、検出器を含んでもよいし、一部が上記と異なっていてもよく、電子線光学系の構成はこれに限られない。
【0017】
カラム109の電子線光学系の下方には、ステージシステム106が設置されている。ステージシステム106は、Xステージ102、Yステージ103、及び、Zステージ101を備える。ステージシステム106は、スタック型の多軸ステージシステムであり、Xステージ102が、Yステージ103の上に搭載され、Zステージ101が、Xステージ102の上に搭載されている。
【0018】
Xステージ102及びYステージ103は、それぞれ、図示しないリニアモータによって駆動される。あるいは、Xステージ102及びYステージ103は、電磁モータ及びボールねじ等のアクチュエータによって駆動されてもよい。
【0019】
ステージシステム106のZステージ101上(より詳細には、Zステージ101のトップテーブル1上)には、試料ホルダ104が搭載される。試料ホルダ104は、測定対象となる試料105を吸着保持する。Xステージ102、Yステージ103、及びZステージ101は、指定された画像取得位置に応じて、試料105の位置を移動させる。ステージシステム106は、電子線光学系で収束された電子線は試料ホルダ104に保持された試料105に照射され、カラム109によって測定及び測長を行うことができる。
【0020】
図1は、Zステージ101の詳細を示す側面図である。Zステージ101は、トップテーブル1と、ベーステーブル2と、トップテーブル1とベーステーブル2との間に配置されたスライダ(移動部)6とを備える。
【0021】
スライダ6は、ベーステーブル2上に接続されており、水平方向に移動するものである。スライダ6は、スライダテーブル6aと、リニアガイド6bと、ガイドレール6cとから構成される。リニアガイド6bはスライダテーブル6aと固定されている。ガイドレール6cは、ベーステーブル2上に固定されている。リニアガイド6bは、ガイドレール6c上に配置される。したがって、ガイドレール6c上をリニアガイド6bが移動することにより、スライダテーブル6aのX方向の移動を許容する。また、ガイドレール6c上をリニアガイド6bが移動することにより、スライダテーブル6aの他方向の動き(Y、Z方向及び回転方向)を拘束することができる。図示したガイドは一般的なリニアガイドであるが、直線方向の運動をガイドする機構であればよく、例えばより高剛性なクロスローラガイド等でもよい。
【0022】
ベーステーブル2には、スライダ6のX方向の駆動機構としてアクチュエータ9が設置されている。図示したアクチュエータ9では、回転型モータとボールねじを用いることを想定しているが、直線方向に駆動可能なアクチュエータであればどのような構成であっても構わない。例えば、非磁性部品のみから構成される超音波モータは好適である。超音波モータは圧電素子の高周波振動による摩擦駆動を行うため、電磁モータとは異なり磁性を持たない。そのため、測定に用いる荷電粒子への影響を小さく構成することができる。また、DCモータ、ACモータ及びリニアモータ等の電磁モータを使用する場合、電磁シールドを用いた磁気遮蔽を用いるか、又は、モータを荷電粒子線から離した位置に配置する構成をとればよい。
【0023】
また、ベーステーブル2上には、Zガイド3が設けられている。Zガイド3は、Zガイド駆動部3aと、Zガイド固定部3bと、ガイド機構3cとから構成される。Zガイド駆動部3aは、例えば板状の部材であり、トップテーブル1と固定される。Zガイド固定部3bは、例えば板状の部材であり、ベーステーブル2上に固定される。Zガイド駆動部3aとZガイド固定部3bとの間にはガイド機構3cが設けられている。このガイド機構3cを介してZガイド駆動部3aが垂直方向(Z方向)に移動し、トップテーブル1が上下動する。また、Zガイド3において、ガイド機構3cは、Zガイド駆動部3aのZ方向以外の自由度を拘束する。なお、Zガイド3は、このような構成に限定されず、スライダ6と同様にリニアガイドやクロスローラガイド等でもよい。
【0024】
上記のトップテーブル1の垂直移動機構として、スライダ6のスライダテーブル6aの上面には、並進カム機構(カム部)4と、第1の下側スペーサ5bと、第2の下側スペーサ5cとが設けられている。ここで、第1の下側スペーサ5bと第2の下側スペーサ5cは、これらを繋ぐ直線が並進カム機構4の駆動方向と並行するように配置する。
【0025】
また、トップテーブル1の下面には、トップテーブル1の荷重を受ける上側スペーサ(上側荷重受け部)5aと、カムフォロワ7とが設けられている。ここで、上側スペーサ5aは、トップテーブル1の下面の中心の位置に固定されている。カムフォロワ7は、並進カム機構4の傾斜面に接触する。一方、上側スペーサ5aと、第1及び第2の下側スペーサ5b、5cとは、Y軸方向に関して同じ位置に配置される。したがって、上側スペーサ5aと、第1及び第2の下側スペーサ5b、5cとは、互いに対向するように配置される。上側スペーサ5aは、第1の下側スペーサ5b又は第2の下側スペーサ5cと接触する接触面を有し、第1及び第2の下側スペーサ5b、5cは、それぞれ、上側スペーサ5aと接触する接触面を有する。この構成によれば、並進カム機構4の傾斜面をカムフォロワ7が移動することにより、上側スペーサ5aの接触面を第1の下側スペーサ5bの接触面又は第2の下側スペーサ5cの接触面上に載せることができる。これにより、トップテーブル1が垂直方向に移動させて、垂直方向の位置決めを行うことができる。以下に垂直移動機構の詳細を説明する。
【0026】
並進カム機構4は、X軸方向に沿って、正方向の傾きを持つ傾斜面4aと負方向の傾きを持つ傾斜面4bを有する。2つの傾斜面4a、4bは長さが異なる。また、傾斜面の高さは、(
図1上での)左端が最少となり、傾斜面の中央からやや右の位置で最高点となる。並進カム機構4の傾斜面の傾きが、入力する水平方向(X軸方向)の力と出力する垂直方向(Z軸方向)の力の比を表し、傾きが小さいほど入力する力を小さく設計できる。
【0027】
第1の下側スペーサ5bの高さは、第2の下側スペーサ5cより低く、この高さの差が垂直方向(Z方向)のストローク量となる。
図1のZステージ101は、第1の位置(低い位置)で静止している状態であり、上側スペーサ5aと第1の下側スペーサ5bが接触している。図ではスペーサ接触面の形状を正方形としているが、面での接触が可能で、かつ剛性が確保できる形状であれば、スペーサの形状は任意の形状とすることができる。なお、スペーサ間の接触面積が大きいほど剛性が確保できる。また、剛性を確保することで、低振動のZステージ101を提供できる。スペーサを構成する材料は、真空で使用でき、非磁性である金属が良い。また、接触による発塵を少なくするため、上側スペーサ5aと第1及び第2の下側スペーサ5b、5cは、同一の材料を用いるのが望ましい。
【0028】
カムフォロワ7は、円形のローラ7aと、ローラ7aを接続するローラホルダ(ローラ支持部)7bとを有する。ローラホルダ7bが、トップテーブル1の下面に固定されており、ローラ7aの外周面が並進カム機構4の傾斜面に接触する。すなわち、カムフォロワ7と並進カム機構4は、Y軸方向に関して同じ位置に配置される。トップテーブル1の垂直方向の移動が停止しているとき(すなわち、上側スペーサ5aが第1の下側スペーサ5b又は第2の下側スペーサ5c上に載っているとき)、ローラ7aは、並進カム機構4の傾斜面に接触していてもよいし、傾斜面と接触しないようにしてもよい。なお、トップテーブル1の停止時にローラ7aが並進カム機構4の傾斜面に接触しない構成は、ローラ7aの加工精度や弾性変形がステージ精度に直接影響しないため好ましい。この構成の場合、剛性や精度を得るための加工や部品コストを抑えることができる。
【0029】
図4は、Zステージ101の正面図である。トップテーブル1の下面の中心位置には上側スペーサ5aが固定されている。また、2つのカムフォロワ7が、上側スペーサ5aの左右に(上側スペーサ5aを挟んで)固定されている。また、Zガイド3が、トップテーブル1のY方向の両側に設けられており、2つのZガイド3によって垂直方向(Z方向)以外の自由度を拘束する。
【0030】
2つの並進カム機構4が、スライダテーブル6a上に2つのカムフォロワ7と対向するように配置される。そして、カムフォロワ7は、水平方向の力を垂直方向に変換できるように、並進カム機構4の傾斜面上に配置される。例えば、並進カム機構4及びカムフォロワ7は、これらに作用するZ軸方向の駆動力の合力の作用位置がトップテーブル1およびその付属固定物の重心G(
図4参照)と一致するように、配置されることが望ましい。ここで、トップテーブル1の付属固定物とは、トップテーブル1に固定されている、例えばカムフォロワ7や、Zガイド駆動部3aなどを指す。
【0031】
図5は、スライダ6のスライダテーブル6aの斜視図である。スライダテーブル6aのY方向の両側に、2つの並進カム機構4が配置されている。このように、スライダテーブル6aのY方向の両側に並進カム機構4を配置することで、カムフォロワ7に作用するZ方向駆動力の合力の作用位置がトップテーブル1及びその付属固定物の重心となるようにすることが望ましい。
【0032】
図5に示すように、2つの並進カム機構4と、第1及び第2の下側スペーサ5b、5cとは、互いに干渉しないよう配置される。スライダ6の水平方向の駆動に合わせて、カムフォロワ7のローラ7aが並進カム機構4の傾斜面を上る/下る動作と、第1及び第2の下側スペーサ5b、5cとの間での上側スペーサ5aの乗せ換え動作とが連動するように、2つの並進カム機構4と、第1及び第2の下側スペーサ5b、5cを配置する。
【0033】
例えば、並進カム機構4の傾斜面の第1の接地点4dと第2の接地点4eのX方向距離d1(すなわち、スライダ6の水平方向のストローク)と第1及び第2の下側スペーサ5b、5cの中心間のX方向距離d2とが一致し、かつ、カムフォロワ7に作用するZ方向駆動力の合力の作用位置をトップテーブル1及びその付属固定物の重心の位置に一致させることが望ましい。ここで、第1の接地点4dとは、上側スペーサ5aと第1の下側スペーサ5bとが接触したときのローラ7aと並進カム機構4の傾斜面との接地点(
図1参照)である。また、第2の接地点4eとは、上側スペーサ5aと第2の下側スペーサ5cとが接触したときのローラ7aと並進カム機構4の傾斜面との接地点(
図3参照)である。スライダ6の水平方向のストロークと第1及び第2の下側スペーサ5b、5cの間のX方向距離d2とが一致することにより、スライダ6のストロークの端の位置で、上側スペーサ5aが第1及び第2の下側スペーサ5b、5cのいずれかに接触し、トップテーブル1の垂直方向の駆動が停止する。以上の制約のもとで、第1の下側スペーサ5bと第2の下側スペーサ5cはスライダ6のスライダテーブル6a上に自由に配置してよい。
【0034】
次に、並進カム機構4によるスペーサ乗せ換えによる昇降動作の原理を
図1、
図2、及び
図3を用いて説明する。本実施例では、アクチュエータ9がスライダ6を水平方向に駆動させることにより、並進カム機構4と第1の下側スペーサ5bと第2の下側スペーサ5cが水平方向に移動する。このとき、カムフォロワ7が並進カム機構4上を移動することにより、上側スペーサ5aが垂直方向(Z方向)に移動し、上側スペーサ5aを、高さの異なる第1及び第2の下側スペーサ5b、5cのいずれかに接触させることができる。これにより、トップテーブル1の垂直方向の位置決めが可能となる。以下で、より詳細に説明する。
【0035】
図1は、垂直移動機構における二点位置決めの第1の位置(低い位置)での静止状態を示す。第1の位置での静止状態では、上側スペーサ5aの接触面が下側スペーサ5bの接触面と接触する。Zガイド3により水平方向が拘束されているトップテーブル1とスライダ6との間の摩擦力によって水平方向(X軸方向)の駆動が拘束されている。アクチュエータ9に駆動力があってもトップテーブル1の自重に依存する摩擦力以下の力の範囲では、スライダ6が水平方向に駆動しない。アクチュエータ9により静止摩擦力以上の水平方向の力がスライダ6に加わった際、スライダ6が水平方向(X軸負方向)に移動を開始する。この動きにより、スライダ6のスライダテーブル6a上に固定された並進カム機構4の傾斜面をカムフォロワ7のローラ7aが上り、トップテーブル1及びそれに付属する上側スペーサ5aが上昇する。なお、この上昇と連動し、スライダ6のスライダテーブル6a上に固定された第1の下側スペーサ5b及び第2の下側スペーサ5cも水平方向(X軸負方向)に移動する。
【0036】
図2は、
図1の状態からスライダ6を水平方向(X軸負方向)に移動させた状態を示す。アクチュエータ9を用いてスライダ6の水平方向(X軸負方向)の移動を続けると、並進カム機構4の傾斜面の最高点4cで上昇動作から下降動作へ切り替わることになる。最高点4cを越えてスライダ6が水平方向に移動を続けると、トップテーブル1が下降する。上昇動作及び下降動作に合わせて、上側スペーサ5aの下方に位置するスペーサが、第1の下側スペーサ5bから第2の下側スペーサ5cに切り替わる。
【0037】
図3は、
図2の状態からスライダ6を水平方向(X軸負方向)に移動させ、第2の位置(高い位置)での静止状態を示す。スライダ6の水平方向(X軸負方向)の移動に伴って、第2の下側スペーサ5cが上側スペーサ5aの下方に移動し、上側スペーサ5aの接触面と第2の下側スペーサ5cの接触面とが接触する。その後、アクチュエータ9が止まると、トップテーブル1は上側スペーサ5aと第2の下側スペーサ5cとの間の摩擦により拘束され静止する。
【0038】
以上のように、スライダ6の水平方向の移動によって、上側スペーサ5aが、第1の下側スペーサ5bと第2の下側スペーサ5cとの間で載せ替えられる。第1の下側スペーサ5bと第2の下側スペーサ5cとの間の高さの差異が、垂直方向(Z方向)の移動量となる。この構成によれば、機構部品の寸法により予め設計された任意の2点のみの位置決めを可能とする。また、上側スペーサ5aと、第1及び第2の下側スペーサ5b、5cとの接触による摩擦で、トップテーブル1の保持が可能となる。すなわち、アクチュエータ9によって、トップテーブル1を保持する必要がない。したがって、従来のように、トップテーブルの高さの保持のためにアクチュエータが必要なく、アクチュエータなどによる発熱を防止し、低発熱の垂直移動機構を提供することができる。
【0039】
上述したように本構成では、トップテーブル1が一度最高点に達してから下降を行うことで、第1の下側スペーサ5bから第2の下側スペーサ5cへの乗せ換えを実現している。そのため、要求される垂直方向(Z方向)のストローク量に加えて、最高点に到達させるための数mmのストロークを必要とする。トップテーブル1が最高点に達した際に試料105上面と対物レンズ109aとが接触するおそれがある場合は、Xステージ102及びYステージ103を用いて水平方向に移動させ、Zステージ101を対物レンズ109a直下から退避させてから、垂直方向の駆動を行うことが望ましい。
【0040】
本実施例によれば、ローラやベアリング等の弾性部材ではなく、剛体として扱えるスペーサによってトップテーブルを支持することができる。従来では弾性部材の変形によって位置精度及び位置再現精度が低下する課題があったが、本実施例では、スペーサをはじめとする剛体でトップテーブルを保持するため、高剛性、高精度、高再現精度なZステージ(垂直移動ステージ)101を提供することができる。また、剛体であるスペーサでトップテーブルを保持するため、低振動のZステージ(垂直移動ステージ)101を提供することができる。さらに、本実施例は、トップテーブル1の静止時にアクチュエータによる保持を必要としないため、アクチュエータなどによる発熱を防止し、低発熱のZステージ101を提供することができる。
【0041】
また、本実施例では、高さ方向の位置決めの精度が第1の下側スペーサ5bと第2の下側スペーサ5cとの間の高さの差異に依存するため、位置センサ等を用いたフィードバック制御及び制御装置を必ずしも必要としない。スペーサ接触面の傾きや加工精度のばらつきによりステージ精度を十分に得られない場合は、不図示の制御器及びセンサを用いてアクチュエータ9によるスライダ6の水平方向(X方向)の位置決めを行えばよい。
【0042】
なお、上側スペーサ5aの固定位置は、トップテーブル1の下面に限定されない。例えば、上側スペーサ5aは、カムフォロワ7のローラホルダ(ローラ支持部)7bに固定されてもよい。
【0043】
また、上述の例では、スライダ6上に第1の下側スペーサ5bと第2の下側スペーサ5cを設けた例を説明したが、これに限定されない。例えば、異なる高さの複数の上側スペーサを設けて、1つの下側スペーサを設ける構成でもよい。また、上述の例では下側スペーサを2つの別箇の構成部品として設けたが、異なる高さの複数の接触面を有する一体的な下側スペーサを設けてもよい。したがって、上側スペーサ(上側荷重受け部)と下側スペーサ(下側荷重受け部)とは互いが接触する接触面を有し、かつ、上側スペーサと下側スペーサとの少なくとも一方が、異なる高さの複数の接触面を備えればよい。
【0044】
また、移動機構は図示のスライダ6に限定されない。移動機構は、ベーステーブル2とトップテーブル1との水平方向の相対位置を移動させる移動部であればよい。
【0045】
また、カム部は、図示の並進カム機構4に限定されない。カム部は、ベーステーブル2とトップテーブル1との垂直方向の相対位置を変化させる少なくとも2つの傾斜面を備えればよい。カム部は、ローラが前記傾斜面を回転することにより、ベーステーブル2とトップテーブル1との水平方向の相対位置が変更できるように構成されていればよい。
【0046】
また、第1の下側スペーサ5bと第2の下側スペーサ5cはスライダ6上ではなく、ベーステーブル2上に設けてもよい。これに合わせて、ベーステーブル2とトップテーブル1との水平方向の相対位置を移動させる移動部を設ければよい。例えば、移動部によってトップテーブル1側を移動させて、ベーステーブル2上の複数の下側スペーサへ載せ替えてもよい。
【0047】
なお、以上で説明した変形例は以下で説明する実施例にも適用可能である。
【0048】
[第2実施例]
次に
図7、
図8を用いて第2実施例について説明を行う。なお、
図7及び
図8において、第1実施例と同一符号は同一部品を示すので、再度の説明を省略する。
【0049】
図7は、第2実施例のスライダ6上の第1の下側スペーサ5b、第2の下側スペーサ5c、及び並進カム機構4の配置を示す。第1実施例と異なる構成要素は、スライダテーブル6a上に固定される第1の下側スペーサ5b、第2の下側スペーサ5c、並進カム機構4、図示しないトップテーブル1に固定されるカムフォロワ7及び上側スペーサ5aであり、その他の構成は第1実施例と同じである。スライダテーブル6a上に配置される並進カム機構4及びスペーサは、配置位置及び個数によりステージシステムの性能に特徴を持たせることができる。
【0050】
図8は、トップテーブル1の振動方向を説明する図である。例えば
図4で示したように、トップテーブル1を2つのZガイド3により拘束する場合、
図8のようにトップテーブル1は想定される振動方向としてX軸周りの回転ロールθX、Y軸周りの回転ピッチθYがある。振動が発生しやすい方向はトップテーブル1の形状によって決まる。例えば
図8のようなトップテーブル1の形状では、トップテーブル1に固定されたZガイド駆動部3aの質量によりX軸周り方向の慣性モーメントが大きくなるため、Y軸周りθYよりX軸周りθXの振動の方が発生し易い。
【0051】
図7は、トップテーブル1を2つのスペーサで支える構成を示す。
図7に示すように、2組の第1及び第2の下側スペーサ5b、5cが、スライダテーブル6a上のY軸方向の両側に配置される。また、不図示のトップテーブル1の下面には、2組の第1及び第2の下側スペーサ5b、5cに対応する位置に、2つの上側スペーサ5aが固定される。
【0052】
図7の例では、並進カム機構4は、スライダテーブル6aの中心位置に固定される。垂直移動の駆動に用いられる不図示のカムフォロワ7は、並進カム機構4に対応する位置、すなわち、トップテーブル1の下面の中心位置に固定される。
【0053】
図7の例では、2組の第1及び第2の下側スペーサ5b、5cが、
図8におけるX軸周りの回転ロールの方向に沿って配置される。このように、トップテーブル1をY軸方向両側の二点で支持することにより、
図8におけるトップテーブル1のX軸周りの回転ロールの振動を抑制することができる。
図8のトップテーブル1の構成はX軸周りの方が振動し易い形状となっているが、トップテーブル1の形状や構成に合わせて第1及び第2の下側スペーサ5b、5cの配置を変えてもよい。例えばトップテーブルが一方向に長い形状である場合や搭載される荷重が偏重心を持つ場合である。振動の発生し易い方向の軸に沿ってスペーサを二点配置すればよい。トップテーブル1の振動し易い方向に対して上側スペーサ5a、第1の下側スペーサ5b、第2の下側スペーサ5cを配置することで、振動の小さいステージシステムを構成できる。
【0054】
[第3実施例]
次に、
図9を用いて第3実施例について説明を行う。なお、
図9において、第1〜第2実施例と同一符号は同一部品を示すので、再度の説明を省略する。
【0055】
図9は、スライダ6上の第1の下側スペーサ5b、第2の下側スペーサ5c、及び並進カム機構4の配置を示す。第1〜第2実施例と異なる構成要素は、スライダテーブル6a上に固定される第1の下側スペーサ5b、第2の下側スペーサ5c、並進カム機構4、図示しないトップテーブル1に固定されるカムフォロワ7及び上側スペーサ5aであり、その他の構成は第1〜第2実施例と同じである。
【0056】
本実施例では、3組の第1及び第2の下側スペーサ5b、5cを使用する。
図9に示すように、第1及び第2の下側スペーサ5b、5cの3組のそれぞれの中心位置が、正三角形の頂点と一致するようスライダテーブル6a上に配置する。また、不図示のトップテーブル1の下面には、3組の第1及び第2の下側スペーサ5b、5cに対応する位置に、3つの上側スペーサ5aが固定される。
【0057】
並進カム機構4は、スライダテーブル6aの中心位置に1個配置しているが、その数と位置は、第1及び第2の下側スペーサ5b、5cと干渉せず、カムフォロワ7に作用する垂直方向の駆動力の合力の作用位置がトップテーブル1の重心となるという制限のもとで、自由に配置してもよい。
【0058】
3組の第1及び第2の下側スペーサ5b、5cを正三角形の頂点と一致するようスライダテーブル6a上に配置することで、正三角形の頂点の位置でトップテーブル1を支持することができる。この構成によれば、
図8に示したX軸周りの回転ロール及びY軸周りの回転ピッチ(ロールとピッチ)の二方向の振動を抑制する効果を得る。また、トップテーブル1を支持するための接触点の数が多くなることでステージ剛性が高くなる。三点全ての点でトップテーブル1に固定される上側スペーサ5aと第1及び第2の下側スペーサ5b、5cが接触するためには、第1及び第2の下側スペーサ5b、5cの接触面の加工精度を上げればよい。
【0059】
[第4実施例]
次に
図10を用いて第4実施例について説明する。なお、
図10において、第1〜第3実施例と同一符号は同一部品を示すので、再度の説明を省略する。
【0060】
図10に示す第4実施例は、第1実施例の構成にばねを加えた構成である。本実施例では、2つの与圧ばね8が、トップテーブル1とベーステーブル2とを接続するように設けられている。2つの与圧ばね8により、上側スペーサ5aと第1及び第2の下側スペーサ5b、5cとの接触面の摩擦力を増やし、トップテーブル1の保持力を適切に調整できる。
【0061】
図10に示すように、2つの与圧ばね8は、トップテーブル1の下面とベーステーブル2の上面とを繋ぎ、かつ、スライダ6のY方向外側に左右対称になるように配置する。与圧ばね8には引っ張りばねを用いる。図示する例では2つの与圧ばね8を用いているが、3つ以上の与圧ばね8を用いてもよい。また、2つの与圧ばね8の位置を、ステージ中心のZ軸に対して90°回転させてスライダ6のX方向外側に対称となるように変更してもよい。
【0062】
第1実施例においては、スライダ6のX軸方向の保持を、トップテーブル1の自重に依存する上側スペーサ5aと第1及び第2の下側スペーサ5b、5cとの間の摩擦力によって行っていた。本実施例では、トップテーブル1の自重に与圧ばね8による圧縮力を加えることで上記摩擦力を増加させ、スライダ6のX軸方向の保持力を強める効果を得る。この場合の適切な保持力は、Zステージ101を搭載する不図示のXステージ及びYステージの駆動時の加速度に依存し、加速度が高い程大きな保持力が必要となる。また、与圧ばね8によりZ方向の必要駆動力も増加するが、与圧ばね8の強さに応じてアクチュエータ9の推力を増やせばよい。
【0063】
[第5実施例]
次に、
図11〜
図14を用いて第5実施例について説明する。なお、
図11〜
図14において、第1〜第4実施例と同一符号は同一部品を示すので、再度の説明を省略する。
【0064】
第5実施例は、第1実施例の構成からアクチュエータ9を除き、外部アクチュエーションに必要な上昇用ロッド107aと下降用ロッド107bを加えた構成である。
図11に示すように、真空チャンバー108のX方向両側の内壁には、外部アクチュエーション用の上昇用ロッド107a及び下降用ロッド107bが設けられている。上昇用ロッド107a及び下降用ロッド107bは、スライダ6と同じ高さに配置されている。また、上昇用ロッド107a及び下降用ロッド107bは、
図12に示すように、カラム109直下ではなく、真空チャンバー108のY軸中心位置からY軸負方向にずらした位置に配置されている。したがって、Zステージ101のZ方向駆動は、カラム109から退避した位置で行うことができる。
【0065】
次に、
図11〜
図14を用いて外部アクチュエーションによる駆動原理ついて説明する。
図11は、上側スペーサ5aが第1の下側スペーサ5bと接触している状態を示す。Zステージ101のZ方向駆動を行うとき、まず、Xステージ102を、Xステージレール102a、102b上で移動させて、真空チャンバー108のX軸中心付近に停止させる。
図12は、Xステージ102が真空チャンバー108のX軸中心付近に停止した状態を示す。
【0066】
次に、Yステージ103を、Yステージレール103a、103b上でY軸負方向に移動させる。そして、
図13に示すように、上昇用ロッド107aと下降用ロッド107bを結ぶ直線がXステージ102の中心と一致する位置で、Yステージ103を停止させる。
【0067】
次に、Xステージ102を、Xステージレール102a、102b上でX軸正方向に移動させる。このとき、Xステージ102がX軸正方向に移動することで、スライダ6のスライダテーブル6aのX軸方向端部が上昇用ロッド107aと接触する。その後、Xステージ102のX軸正方向の移動を続けると、
図14に示すように、上昇用ロッド107aがスライダテーブル6aのX軸方向端部を押すことになり、Xステージ102に対して相対的にスライダ6が移動する。したがって、Xステージ102のX軸正方向の移動を続けると、カムフォロワ7のローラ7aが並進カム機構4の傾斜面を上り、上側スペーサ5aを第1の下側スペーサ5bから第2の下側スペーサ5cへ載せ替えることができる。
【0068】
このように、アクチュエータを用いずにスライダ6を移動させることにより、第1実施例と同様のZ方向の駆動を行うことができる。ここで、Xステージ102の必要推力は、Xステージ102上の構造物を水平方向に駆動する力とトップテーブル1を垂直方向に駆動する力の和となる。
【0069】
また、下降動作の場合は、上昇用ロッド107aのX軸方向逆側の真空チャンバー108内壁に設置された下降用ロッド107bを用いればよい。Xステージ102をX軸負方向に移動させることで、スライダ6のスライダテーブル6aのX軸方向端部が下降用ロッド107bと接触する。Xステージ102のX軸負方向の移動を続けると、カムフォロワ7のローラ7aが並進カム機構4の傾斜面を下り、上側スペーサ5aを第2の下側スペーサ5cから第1の下側スペーサ5bへ載せ替えることができる。これにより、上昇動作と同様にZ方向の下降動作が実現可能である。
【0070】
このように、Zステージ101の駆動機構をXステージ102が担うことで、Zステージ101上に第1〜第4実施例で使用するアクチュエータを搭載する必要がなくなり、より小型軽量なステージシステムを構成することができる。また、モータ等のアクチュエータ機構及び駆動に必要な不図示の配線等の電磁ノイズによる電子線への磁場の影響を低減することができる。
【0071】
なお、上記の構成ではXステージ102で外部アクチュエーションを行うが、ステージの大型化等により真空チャンバー108のX方向のスペースが足りない場合、Yステージ103を用いてZ駆動することも可能である。この場合、
図11において、上昇用ロッド107a及び下降用ロッド107bは真空チャンバー108内壁のY方向両側に設置する構成となる。また、Zステージ101は90°回転させた方向に設置する。すなわち、
図11とは異なり、Zステージ101のスライダ6の移動方向がY軸方向と一致するようにZステージ101を配置すればよい。なお、この構成の場合、Xステージ102の質量分だけ駆動に必要な推力が大きくなるが、Yステージ103の推力を上げればよい。以上のように、Zステージ101の駆動装置を、水平移動ステージ(Xステージ102又はYステージ103)と、上昇用ロッド107a及び下降用ロッド107bとから構成することができる。
【0072】
[第6実施例]
次に
図15を用いて第6実施例について説明する。なお、
図15において、第1〜第5実施例と同一符号は同一部品を示すので、再度の説明を省略する。
【0073】
第1〜第5実施例では、二点の位置決めのみのZ駆動を限定していたが、本実施例は、三点の位置決めを可能にする構成である。
図13に示すように、スライダテーブル6a上に、第1の下側スペーサ5bと、第2の下側スペーサ5cと、第3の下側スペーサ5dとが設けられている。第1の下側スペーサ5bと、第2の下側スペーサ5cと、第3の下側スペーサ5dは、高さがそれぞれ異なる。また、並進カム機構41には、右肩上がりの傾斜面と右肩下がりの傾斜面との組が交互に配置され、それぞれの組は頂点を有する。したがって、並進カム機構41は、3つの下側スペーサ5b、5c、5dに対応するように、2つの山を形成するような傾斜面を有する。
【0074】
図15に示すように、カムフォロワ7のローラ7aが並進カム機構41の傾斜面を転がりながらスライダ6が左方向に移動するのに対応して、トップテーブル1が、上昇、下降、上昇、下降の順でZ方向の駆動を行う。本実施例では、第1の下側スペーサ5bと第2の下側スペーサ5cとの間の中間位置に第3の下側スペーサ5dが設置されているため、位置決め出来る高さを二点から三点に増やすことができる。それ以外の動作は、第1〜第5実施例と同じである。これは三点に限定されず、要求される高さに応じて、スライダのX方向の長さとストローク制限のもとで更に多段化することも可能である。
【0075】
[第7実施例]
次に
図16を用いて第7実施例について説明する。なお、
図16において、第1〜第6実施例と同一符号は同一部品を示すので、再度の説明を省略する。
【0076】
図16に示すように、第1の下側スペーサ5bと上側スペーサ5aとの接触面積を小さくするための構造として、第1の下側スペーサ5bの先端に剛体の半球51が取付けられている。図示しない第2の下側スペーサ5cについても同様の構成とする。なお、本実施例において、第1の下側スペーサ5b及び半球51以外の構成は、第1〜第6実施例と同じである。
【0077】
半球51は、
図16に示すように、第1の下側スペーサ5bの上面に固定される。また、第2の下側スペーサ5cについても同様に半球51が固定される。この半球51と上側スペーサ5aの下部が接触点52によって接触し、Zステージ101のトップテーブル1の位置決めが行われる。
【0078】
本実施例では、点または最小限の面積で上側スペーサ5aと第1及び第2の下側スペーサ5b、5cとを接触させるために、第1及び第2の下側スペーサ5b、5cの先端部を球形状で構成する。
図1における面接触するスペーサを
図16に示す小面積で接触するスペーサに置きかえることにより、Z方向駆動した後の接触点が同じ点になり易くなる。したがって、面形状のスペーサでの接触面のばらつきによるZ方向の位置のずれを小さくでき、トップテーブル1のZ方向の位置及び姿勢の再現精度が確保される。
【0079】
なお、
図16では、第1の下側スペーサ5bに半球51を取り付けているが、上側スペーサ5aに半球を取り付けてもよいし、又は、上側スペーサ5aと第1及び第2の下側スペーサ5b、5cの両方に半球を取り付けてもよい。
【0080】
[第8実施例]
次に、
図17を用いて第8実施例について説明する。なお、
図17において、第1〜第7実施例と同一符号は同一部品を示すので、再度の説明を省略する。
【0081】
第1〜第7実施例では、スライダ6は一枚のスライダテーブル6aで構成されていたが、本実施例では、
図17に示すように、スライダ6を2つのスライダ61と62に分割する。スライダ61とスライダ62のそれぞれには、並進カム機構4、第1の下側スペーサ5b、及び第2の下側スペーサ5cが設けられている。本実施例において、その他の構成は第1〜第7実施例と同じである。
【0082】
本実施例では、それぞれのスライダ61とスライダ62を同期して駆動するため、2つの駆動機構を設ける。例えば、それぞれのスライダ61とスライダ62を駆動するための2つのアクチュエータ又はその他の図示しない駆動機構が搭載される。また、第5実施例のように外部機構により駆動する場合、スライダの数だけ上昇用ロッド107a、下降用ロッド107bを設ければよい。
【0083】
スライダ6を小型のスライダ61及びスライダ62に分割することで、スライダ61とスライダ62との間にスペースが確保できる。したがって、設計自由度が上がり、他機構との両立が容易となる。この場合、他機構として想定されるのはロボットアーム機構による試料搬送時に用いるリフトピン機構等である。また、ステージシステムの小型軽量化が可能となる。
【0084】
[第9実施例]
次に
図18を用いて第9実施例について説明する。なお、
図18において、第1〜第8実施例と同一符号は同一部品を示すので、再度の説明を省略する。
【0085】
本実施例は、スライダ6の周囲には、上下方向に伸縮可能な遮蔽機構が配置される。例えば、
図18では、伸縮可能な遮蔽機構としてベローズ10がスライダ6の全周囲に配置されている。Z方向駆動によるトップテーブル1とベーステーブル2との間の高さの変化に対して、ベローズ10は蛇腹の伸縮によって対応できる。ベローズ10はスライダ6の周りを囲むように配置されているが、Zガイド3の外側、つまりステージ全体を囲むように配置してもよい。
【0086】
並進カム機構4とカムフォロワ7の摺動及び上側スペーサ5aと下側スペーサ5b、5cとの間の接触によって発塵した場合でも、ベローズ10によって塵の拡散を遮断することができる。この遮断により試料測定への影響を与えないステージシステムを構成できる。また、ベローズ10のように全周囲を完全に遮断する機構でなくとも、塵を外部へ出ないようにする機構ならばよい。
【0087】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることもできる。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることもできる。また、各実施例の構成の一部について、他の構成を追加・削除・置換することもできる。