特許第6254258号(P6254258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6254258非可逆添加剤が含まれている二次電池用正極合剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254258
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】非可逆添加剤が含まれている二次電池用正極合剤
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20171218BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20171218BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20171218BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20171218BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20171218BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20171218BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20171218BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20171218BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   H01M4/13
   H01M10/0566
   H01M4/36 E
   H01M4/587
   H01M10/0565
   H01M10/052
   H01M10/0525
【請求項の数】23
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-512855(P2016-512855)
(86)(22)【出願日】2014年7月28日
(65)【公表番号】特表2016-518012(P2016-518012A)
(43)【公表日】2016年6月20日
(86)【国際出願番号】KR2014006865
(87)【国際公開番号】WO2015016548
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2015年11月10日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0090534
(32)【優先日】2013年7月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ボクキュ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ソク・ク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】シ・ウン・オウ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ヨン・キム
【審査官】 正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−238490(JP,A)
【文献】 特開2006−344395(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/115411(WO,A2)
【文献】 特開2001−273899(JP,A)
【文献】 特開2011−233234(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/108702(WO,A2)
【文献】 特開2010−129481(JP,A)
【文献】 特開2008−300244(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/113268(WO,A1)
【文献】 特開2004−319268(JP,A)
【文献】 特開昭63−241864(JP,A)
【文献】 特開平08−148180(JP,A)
【文献】 特開2011−233369(JP,A)
【文献】 特開2014−063645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
H01M 10/05−10/0587
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質、及び正極の非可逆効率を低下させる非可逆添加剤が含まれている二次電池用正極合剤であって、
前記非可逆添加剤は、下記化学式1で表されるリチウムモリブデン硫化物であることを特徴とする、二次電池用正極合剤:
Li2+xMo6−y8−z (1)
上記式中、−0.1≦x≦0.5、0≦y≦0.5、−0.1≦z≦0.5であり、
Mは、+2価〜+4価の酸化数の金属又は遷移金属カチオンである。
【請求項2】
前記非可逆添加剤は、Li対比1.0V以上〜2.5V以下の作動電圧を有することを特徴とする、請求項1に記載の二次電池用正極合剤。
【請求項3】
前記非可逆添加剤の電気抵抗値は5μΩm以上〜100μΩm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池用正極合剤。
【請求項4】
前記リチウムモリブデン硫化物はLi2.3Mo7.7であることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池用正極合剤。
【請求項5】
前記非可逆添加剤は、正極合剤の全重量を基準として0.1重量%以上〜5重量%以下の範囲で含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池用正極合剤。
【請求項6】
前記正極合剤は、バインダー及び導電材をさらに含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池用正極合剤。
【請求項7】
前記非可逆添加剤は、正極集電体上で正極活物質と均一に混合されて塗布されることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池用正極合剤。
【請求項8】
前記非可逆添加剤は、正極集電体上で正極活物質と層をなして塗布されることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池用正極合剤。
【請求項9】
前記非可逆添加剤層の厚さは、正極合剤層全体の厚さを基準として0.1%以上〜20%未満であることを特徴とする、請求項8に記載の二次電池用正極合剤。
【請求項10】
前記非可逆添加剤層は導電材をさらに含んでいることを特徴とする、請求項8に記載の二次電池用正極合剤。
【請求項11】
前記導電材は、非可逆添加剤の全重量を基準として20重量%未満含まれていることを特徴とする、請求項10に記載の二次電池用正極合剤。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の正極合剤を電極集体上に塗布して製造されることを特徴とする、正極。
【請求項13】
請求項12に記載の正極、負極及び前記正極と負極との間に介在する分離膜を含む電極組立体に電解液が含浸されていることを特徴とする、二次電池。
【請求項14】
前記負極は、負極活物質として、シリコン(Si)系物質を含むことを特徴とする、請求項13に記載の二次電池。
【請求項15】
前記シリコン系物質は、シリコン及びシリコン酸化物の複合体及び/又はシリコン合金であることを特徴とする、請求項14に記載の二次電池。
【請求項16】
前記負極活物質は炭素系物質をさらに含み、前記炭素系物質は、負極活物質の全重量を基準として70重量%以上〜99.9重量%以下含まれていることを特徴とする、請求項14に記載の二次電池。
【請求項17】
前記炭素系物質は、結晶質人造黒鉛、結晶質天然黒鉛、非晶質ハードカーボン、低結晶質ソフトカーボン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケチェンブラック、スーパーP(登録商標)、グラフェン(graphene)、及び繊維状炭素からなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項16に記載の二次電池。
【請求項18】
前記炭素系物質は、結晶質人造黒鉛、及び/又は結晶質天然黒鉛であることを特徴とする、請求項17記載の二次電池。
【請求項19】
前記二次電池は、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、又はリチウムポリマー電池であることを特徴とする、請求項13に記載の二次電池。
【請求項20】
請求項13に記載の二次電池を単位電池として含むことを特徴とする、電池モジュール。
【請求項21】
請求項20に記載の電池モジュールを含むことを特徴とする、電池パック。
【請求項22】
請求項21に記載の電池パックを電源として含むことを特徴とする、デバイス。
【請求項23】
前記デバイスは、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、または電力貯蔵用システムであることを特徴とする、請求項22に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非可逆添加剤が含まれている二次電池用正極合剤に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器に対する技術開発及び需要の増加に伴い、エネルギー源としての二次電池の需要が急増しており、そのような二次電池の中でも、高いエネルギー密度と電圧を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率の低いリチウム二次電池が商用化されて広く使用されている。
【0003】
このようなリチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム含有コバルト酸化物(LiCoO)が主に使用されており、その他に、スピネル結晶構造のLiMnなどのようなリチウム含有マンガン酸化物、及びリチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO)なども使用されている。負極活物質としては炭素材料が主に使用されており、リチウム金属、硫黄化合物などの使用も考慮されており、特に、純粋なシリコン(Si)の理論的比容量(specific capacity)は4200mAh/gであって、グラファイト炭素の372mAh/gよりも遥かに大きいので、前記Si系活物質を使用するリチウム二次電池が多くの関心を集めており、一部は炭素材料と混合された電極として使用されることもある。
【0004】
しかし、前記負極が正極に比べて非可逆効率が低い場合、負極活物質の量が過度に多く投入され、電池のエネルギー密度に否定的な影響を及ぼすことになる。また、負極の非可逆容量を合せるために、正極活物質も負極の非可逆に対応するように過度に多い量が投入されなければならないという問題がある。
【0005】
したがって、このような問題点を解決できる技術に対する必要性が高い実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点及び過去から要請されてきた技術的課題を解決することを目的とする。
【0007】
本出願の発明者らは、鋭意研究と様々な実験を重ねた結果、後述するように、二次電池用正極合剤に、正極の非可逆効率を低下させる非可逆添加剤を含ませることによって、非可逆効率を効果的に設計することができ、場合によって、高い導電性により電極の導電ネットワークの構成を改善させることができることを確認し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明に係る二次電池用正極合剤は、正極活物質、及び正極の非可逆効率を低下させる非可逆添加剤が含まれていることを特徴とする。
【0009】
一具体例において、前記非可逆添加剤は、Li対比1.0V以上〜2.5V以下の作動電圧を有することができる。
【0010】
したがって、前記非可逆添加剤は、一般に、正極の作動電圧である2.5〜4.25Vよりも低いため、初期の充電時にのみ反応に参与し、放電時には反応に参与しないので、電池の非可逆効率を効果的に設計することができる。
【0011】
また、前記非可逆添加剤は、場合によって、高い導電性を示すことができ、電極の導電ネットワークの構成を改善させることができる。
【0012】
このような場合に、前記非可逆添加剤の電気抵抗値は5μΩm以上〜100μΩm以下であってもよい。
【0013】
一具体例において、前記非可逆添加剤は、Li7/3Ti5/3で表されるリチウム化されたリチウムチタン酸化物であってもよい。
【0014】
他の具体例において、前記非可逆添加剤はリチウムモリブデン化合物であってもよく、より具体的に、下記化学式1で表されるリチウムモリブデン硫化物であってもよい。
【0015】
Li2+xMo6−y8−z (1)
上記式中、−0.1≦x≦0.5、0≦y≦0.5、−0.1≦z≦0.5であり、
Mは、+2価〜+4価の酸化数の金属又は遷移金属カチオンである。
【0016】
このような場合に、前記リチウムモリブデン硫化物はLi2.3Mo7.7であってもよい。
【0017】
一方、前記非可逆添加剤は、正極合剤の全重量を基準として0.1重量%以上〜5重量%以下の範囲で含まれてもよい。
【0018】
一方、前記正極活物質は、下記化学式2又は3で表されるリチウム遷移金属酸化物を含むことができる。
【0019】
LiMn2−y4−z (2)
上記式中、
Mは、Al、Mg、Ni、Co、Fe、Cr、V、Ti、Cu、B、Ca、Zn、Zr、Nb、Mo、Sr、Sb、W、Ti及びBiからなる群から選択される1つ以上の元素であり、
Aは、−1又は−2価の1つ以上のアニオンであり、
0.9≦x≦1.2、0<y<2、0≦z<0.2である。
【0020】
(1−x)LiM’O2−y −xLiMnO3−y’y’ (3)
上記式中、
M’は、Mnであり、
Mは、Ni、Ti、Co、Al、Cu、Fe、Mg、B、Cr、Zr、Zn及び2周期の遷移金属からなる群から選択される1つ以上であり、
Aは、PO、BO、CO、F及びNOのアニオンからなる群から選択される1つ以上であり、
0<x<1、0<y≦0.02、0<y’≦0.02、0.5≦a≦1.0、0≦b≦0.5、a+b=1である。
【0021】
一具体例において、前記正極合剤は、バインダー及び導電材をさらに含むことができる。
【0022】
一具体例において、前記非可逆添加剤は、正極集電体上で正極活物質と均一に混合されて塗布されるか、または正極活物質と層をなして塗布されてもよい。
【0023】
このような場合に、前記非可逆添加剤層は、正極集電体上の正極活物質層上に塗布されてもよく、前記非可逆添加剤層の厚さは、正極合剤層全体の厚さを基準として0.1%以上〜20%未満であってもよい。
【0024】
また、前記非可逆添加剤層は導電材をさらに含むことができ、詳細には、前記導電材は、非可逆添加剤の全重量を基準として20重量%未満含まれていてもよい。
【0025】
本発明は、前記正極合剤を電極集体上に塗布して製造される正極を提供し、一般に、前記正極は、正極集電体上に正極活物質、前記導電材及びバインダーの混合物である電極合剤を塗布した後、乾燥して製造され、必要に応じて、前記混合物に充填剤をさらに添加することもある。
【0026】
前記正極活物質は、前記化学式2又は3で表されるリチウム遷移金属酸化物以外に、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物や、1つまたはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2−x(ここで、xは0〜0.33である)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、LiFe、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1−x(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、x=0.01〜0.3である)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2−x(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、x=0.01〜0.1である)またはLiMnMO(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;LiNiMn2−xで表されるスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土金属イオンで置換されたLiMn;ジスルフィド化合物;Fe(MoOなどを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
前記正極集電体は、一般に3〜500μmの厚さに製造される。このような正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを使用することができる。集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態が可能である。
【0028】
前記導電材は、通常、正極活物質を含んだ混合物の全重量を基準として1〜50重量%で添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などを使用することができる。
【0029】
一方、前記弾性を有する黒鉛系物質が導電材として使用されてもよく、前記物質と共に使用されてもよい。
【0030】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合及び集電体に対する結合を助ける成分であって、通常、正極活物質を含む混合物の全重量を基準として1〜50重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、様々な共重合体などを挙げることができる。
【0031】
前記充填剤は、正極の膨張を抑制する成分として選択的に使用され、当該電池に化学的変化を誘発せずに繊維状材料であれば特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が使用される。
【0032】
本発明は、前記正極、負極及び前記正極と負極との間に介在する分離膜を含む電極組立体に電解液が含浸されていることを特徴とする二次電池を提供する。
【0033】
このような場合に、前記負極は、負極活物質として、シリコン(Si)系物質を含むことができ、前記シリコン系物質は、シリコン及びシリコン酸化物の複合体及び/又はシリコン合金であってもよい。
【0034】
また、前記負極活物質は炭素系物質をさらに含み、前記炭素系物質は、負極活物質の全重量を基準として70重量%以上〜99.9重量%以下で含まれてもよく、前記炭素系物質は、結晶質人造黒鉛、結晶質天然黒鉛、非晶質ハードカーボン、低結晶質ソフトカーボン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケチェンブラック、スーパーP、グラフェン(graphene)、及び繊維状炭素からなる群から選択される1つ以上であってもよく、詳細には、結晶質人造黒鉛、及び/又は結晶質天然黒鉛であってもよい。
【0035】
一具体例において、前記二次電池は、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、またはリチウムポリマー電池であってもよい。
【0036】
前記リチウム二次電池は、一般に、正極、負極、前記正極と負極との間に介在する分離膜、及びリチウム塩含有非水電解質で構成されており、リチウム二次電池のその他の成分については、以下で説明する。
【0037】
前記負極活物質は、前記炭素系物質、Si以外に、LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1−xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;錫系合金;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、Biなどの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li−Co−Ni系材料;チタン酸化物;リチウムチタン酸化物などを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
前記負極集電体は、一般に3〜500μmの厚さに製造される。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム−カドミウム合金などを使用することができる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で使用することができる。
【0039】
前記分離膜は、正極と負極との間に介在し、高いイオン透過度及び機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜が使用される。一般に、分離膜の気孔径は0.01〜10μmで、厚さは5〜300μmである。このような分離膜としては、例えば、耐化学性及び疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ガラス繊維またはポリエチレンなどで作られたシートや不織布などが使用される。電解質としてポリマーなどの固体電解質が使用される場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。
【0040】
前記リチウム塩含有非水電解質は、非水電解質とリチウムからなっており、非水電解質としては、非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用されるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
前記非水系有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ホルム酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒を使用することができる。
【0042】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などを使用することができる。
【0043】
前記無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNI、LiN−LiI−LiOH、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiPO−LiS−SiSなどのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などを使用することができる。
【0044】
前記リチウム塩は、前記非水系電解質に溶解しやすい物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、(CFSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、イミドなどを使用することができる。
【0045】
また、前記リチウム塩含有非水電解質には、充放電特性、難燃性などの改善を目的として、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グリム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N−置換オキサゾリジノン、N,N−置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2−メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されてもよい。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含ませることもでき、高温保存特性を向上させるために二酸化炭酸ガスをさらに含ませることもでき、FEC(Fluoro−Ethylene Carbonate)、PRS(Propene sultone)などをさらに含ませることができる。
【0046】
一具体例において、LiPF、LiClO、LiBF、LiN(SOCFなどのリチウム塩を、高誘電性溶媒であるEC又はPCの環状カーボネートと、低粘度溶媒であるDEC、DMC又はEMCの線状カーボネートとの混合溶媒に添加し、リチウム塩含有非水系電解質を製造することができる。
【0047】
本発明は、前記二次電池を単位電池として含む電池モジュール、前記電池モジュールを含む電池パック、及び前記電池パックを電源として含むデバイスを提供する。
【0048】
このとき、前記デバイスの具体的な例としては、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、または電力貯蔵用システムであってもよいが、これに限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳述するが、下記の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範疇がこれらのみに限定されるものではない。
【0050】
<実施例1>
正極活物質として、過量のニッケルを含むリチウムニッケルマンガン系複合酸化物93重量%、Super−P(導電材)3重量%、PVdF(結合剤)3重量%及び非可逆添加剤としてリチウムモリブデン硫化物(Li2.3Mo7.7)1重量%を、溶剤であるNMP(N−methyl−2−pyrrolidone)に添加して、正極合剤を製造し、前記正極合剤を厚さ15μmのアルミニウムホイルに塗布して、正極を製造した。
【0051】
<実施例2>
正極活物質として、過量のニッケルを含むリチウムニッケルマンガン系複合酸化物94重量%、Super−P(導電材)3重量%及びPVdF(結合剤)3重量%を、溶剤であるNMP(N−methyl−2−pyrrolidone)に添加して、正極合剤を製造し、前記正極合剤を厚さ15μmのアルミニウムホイルに塗布し、前記アルミニウムホイルに塗布された正極合剤層上に、非可逆添加剤としてリチウムモリブデン硫化物(Li2.3Mo7.7)を6μmの厚さに塗布して、正極を製造した。
【0052】
<実施例3>
正極活物質として、過量のニッケルを含むリチウムニッケルマンガン系複合酸化物92重量%、Super−P(導電材)3重量%、PVdF(結合剤)3重量%及び非可逆添加剤としてリチウムチタン酸化物(Li(Li1/3Ti5/3)O)2重量%を、溶剤であるNMP(N−methyl−2−pyrrolidone)に添加して、正極合剤を製造し、前記正極合剤を厚さ15μmのアルミニウムホイルに塗布して、正極を製造した。
【0053】
<実施例4>
正極活物質として、過量のニッケルを含むリチウムニッケルマンガン系複合酸化物94重量%、Super−P(導電材)3重量%及びPVdF(結合剤)3重量%を、溶剤であるNMP(N−methyl−2−pyrrolidone)に添加して、正極合剤を製造し、前記正極合剤を厚さ15μmのアルミニウムホイルに塗布し、前記アルミニウムホイルに塗布された正極合剤層上に、非可逆添加剤としてリチウムチタン酸化物(Li(Li1/3Ti5/3)O)を10μmの厚さに塗布して、正極を製造した。
【0054】
<比較例1>
リチウムモリブデン硫化物(Li2.3Mo7.7)またはリチウムチタン酸化物(Li(Li1/3Ti5/3)O)を添加又は塗布していないことを除いては、正極活物質として、過量のニッケルを含むリチウムニッケルマンガン系複合酸化物94重量%、Super−P(導電材)3重量%及びPVdF(結合剤)3重量%を、溶剤であるNMP(N−methyl−2−pyrrolidone)に添加して、正極合剤を製造し、実施例1と同様の方法で正極を製造した。
【0055】
<実験例1>
負極活物質としてシリコン−炭素複合体を含む負極であって、非可逆効率が84%(充電容量535mAh/g)である負極を製造し、前記実施例1乃至4及び比較例1でそれぞれ製造した正極の非可逆効率、及び前記正極と負極を含む電池を製造して測定した電池の容量をそれぞれ表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
前記表1からわかるように、本発明の実施例1乃至4のように、非可逆添加剤としてリチウムモリブデン硫化物またはリチウムチタン酸化物を含む正極合剤の場合、前記非可逆添加剤を含んでいない比較例1の正極合剤に比べて、負極との非可逆効率の差が少ないことを確認することができる。これは、負極の非可逆に該当するリチウムが正極の非可逆を増加させることによって、全体的に電池の容量を向上させる効果を発揮することを示す。
【0058】
これは、前記リチウムモリブデン硫化物及びリチウムチタン酸化物の作動電圧が、Li対比1.0V以上〜2.5V以下の範囲にあるため、正極の作動電圧に比べて低いので、初期の充電時にのみ反応に参与し、放電時には反応に参与しないからである。
【0059】
これによって、前記リチウムモリブデン硫化物又はリチウムチタン酸化物が非可逆添加剤として正極合剤に添加されるか、または正極合剤層上に追加的に塗布される場合、正極の初期非可逆効率を負極と類似の範囲に合わせることによって、電池セルの全体的な容量及び体積当たりのエネルギー密度を最大化することができる。
【0060】
本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、上記内容に基づいて本発明の範疇内で様々な応用及び変形を行うことが可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上で説明したように、本発明に係る二次電池用正極合剤は、正極活物質及び正極の非可逆効率を低下させる非可逆添加剤が含まれているので、電池の非可逆効率を効果的に設計することができ、電極の導電ネットワークの構成を改善させることができる。