【文献】
Samsung,Load balancing between 3GPP and WLAN[online],3GPP TSG-RAN WG2#81bis R2-131181,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_81bis/Docs/R2-131181.zip>,2013年 4月 5日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ランダムアクセス方式に基づいた無線通信が行われる第1の周波数帯、及び、前記第1の周波数帯と異なる第2の周波数帯を用いた無線通信を行う複数の端末装置と、前記第1の周波数帯を用いて前記端末装置と無線通信を行う第1の基地局装置と、前記第2の周波数帯を用いて前記端末装置と無線通信を行う第2の基地局装置と、前記第1の基地局装置と前記端末装置とが行う無線通信における第1の通信品質、及び、前記第2の基地局装置と前記端末装置とが行う無線通信における第2の通信品質のいずれか又は両方に基づいて、複数の前記端末装置のうち前記第1の基地局装置を介してユーザデータを伝送する端末装置を選択する連携制御装置と、を備える無線通信システムにおける無線通信方法であって、
前記連携制御装置が、前記ユーザデータの伝送に対し、前記第1の基地局装置と前記選択された端末装置のいずれの装置がアクセス権を取得するかを選択する第1のステップと、
前記連携制御装置が、決定されたアクセス権を取得する装置を通知するUC通信開始信号を生成し、前記第1の基地局装置と第2の基地局装置へ出力する第2のステップと、
前記第2の基地局装置が、前記連携制御装置から入力されたUC通信開始信号を前記端末装置へ送信する第3のステップと、
アクセス権を取得する装置として通知された前記第1の基地局装置又は前記端末装置が、前記連携制御装置から前記UC通信開始信号を受信すると、前記第1の周波数帯におけるアクセス権を取得し、前記第1の周波数帯を用いて前記第1の基地局装置を介してユーザデータの伝送を行う第4のステップと、
を含むことを特徴とする無線通信方法。
ランダムアクセス方式に基づいた無線通信が行われる第1の周波数帯、及び、前記第1の周波数帯と異なる第2の周波数帯を用いた無線通信を行う複数の端末装置と、前記第1の周波数帯を用いて前記端末装置と無線通信を行う第1の基地局装置と、前記第2の周波数帯を用いて前記端末装置と無線通信を行う第2の基地局装置と、前記端末装置のユーザデータの伝送を制御する連携制御装置とを備える無線通信システムにおける前記連携制御装置であって、
前記第1の基地局装置と前記端末装置とが行う無線通信における第1の通信品質と、前記第2の基地局装置と前記端末装置とが行う無線通信における第2の通信品質とのいずれか又は両方に基づいて、複数の前記端末装置の中から、前記第1の基地局装置を介してユーザデータを伝送する端末装置を選択するとともに、当該ユーザデータの伝送に対し、前記第1の基地局装置と前記選択された端末装置のいずれの装置がアクセス権を取得するかを選択し、少なくともアクセス権を取得する装置の指定を含む、第1の周波数帯での通信条件を、前記第1の基地局装置と第2の基地局装置とに出力する経路評価部
を有することを特徴とする連携制御装置。
ランダムアクセス方式に基づいた無線通信が行われる第1の周波数帯、及び、前記第1の周波数帯と異なる第2の周波数帯を用いた無線通信を行う複数の端末装置と、前記第1の周波数帯を用いて前記端末装置と無線通信を行う第1の基地局装置と、前記第2の周波数帯を用いて前記端末装置と無線通信を行う第2の基地局装置と、前記第1の基地局装置と前記端末装置とが行う無線通信における第1の通信品質、及び、前記第2の基地局装置と前記端末装置とが行う無線通信における第2の通信品質のいずれか又は両方に基づいて、複数の前記端末装置のうち前記第1の基地局装置を介してユーザデータを伝送する端末装置を選択する連携制御装置とを備える無線通信システムにおける、前記選択された端末装置であって、
前記連携制御装置が決定するアクセス権を取得する装置の指定を含むUC通信開始信号を、前記第2の基地局装置から受信する受信部と、
前記UC通信開始信号により、アクセス権を取得する装置として指定された場合、前記第1の基地局装置へ、ユーザデータ、または、該第1の基地局装置に送信を行わせるためのUC送信要求信号を送信する送信部と
を有する端末装置。
ランダムアクセス方式に基づいた無線通信が行われる第1の周波数帯、及び、前記第1の周波数帯と異なる第2の周波数帯を用いた無線通信を行う複数の端末装置と、前記第1の周波数帯を用いて前記端末装置と無線通信を行う第1の基地局装置と、前記端末装置のユーザデータの伝送を制御する連携制御装置とを備える無線通信システムにおけるライセンスバンド基地局装置であって、
前記第2の周波数帯を用いて前記端末装置と無線通信を行う通信部と、
前記通信部を介して前記端末装置に関する情報を収集する収集部と、
少なくともアクセス権を取得する装置の指定を含む、第1の周波数帯での通信条件を通知するUC通信開始信号を生成する生成部と
を有し、
端末装置への下り回線のユーザデータ伝送の場合、前記連携制御装置から、複数の前記端末装置のうち前記第1の基地局装置を介してユーザデータを伝送する端末装置を選択した情報を受信した場合に、受信した前記情報に基づいて、前記生成部によりUC通信開始信号を生成し、
端末装置からの上り回線のユーザデータ伝送の場合、前記端末装置に関して前記収集部により収集した情報を前記連携制御装置に提供し、前記連携制御装置から複数の前記端末装置のうち前記第1の基地局装置を介してユーザデータを伝送する端末装置を選択した情報を受信した場合に、当該受信した情報に基づいて、前記生成部によりUC通信開始信号を生成し、
前記生成されたUC通信開始信号を、前記通信部を介して、前記選択された端末装置に送信する
ことを特徴とするライセンスバンド基地局装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態における無線通信システム、無線通信方法、連携制御装置、端末装置、及び、ライセンスバンド基地局装置を説明する。
実施形態における無線通信システムは、無線LANシステムをはじめとする免許が不要な周波数帯である第1の周波数帯における無線通信を、第1の周波数帯以外の第2の周波数帯における無線通信を用いて制御することで、通信品質を改善する。
この場合の第2の周波数帯における無線通信は、予期しない無線通信回線の切断や著しいスループットの変化などが生じにくい無線通信として確立できることが望ましい。そのため、第2の周波数帯として、ランダムアクセス方式以外の無線通信が行われる周波数帯を好適に用いることができる。例えば、LTEをはじめとする免許が必要な周波数帯であるライセンスバンドを第2の周波数帯に用いるようにしてもよい。
以下、第1の周波数帯を共有周波数帯とし、第2の周波数帯をライセンスバンドとして説明する。
【0021】
すなわち、実施形態における無線通信システムは、共有周波数帯(第1の周波数帯)での無線通信におけるアクセス権取得を行う無線装置を、ライセンスバンド(第2の周波数帯)で送受信する信号を用いて制御することで、共有周波数帯の利用効率を向上させる。アクセス権取得を行う端末装置をこのように制御することで、受信側の装置がアクセス権を取得して通信相手に送信させたり、アクセス権を取得した端末装置とそれ以外の端末装置に同時に信号を送信させたりすることを可能にする。
以下、端末装置にアクセス権を取得させることで通信品質を向上させる第1の実施形態と、端末装置と無線通信する基地局装置にアクセス権を取得させることで通信品質を向上させる第2の実施形態を示す。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における無線通信システムの構成例を示すブロック図である。
無線通信システムは、複数の端末装置1、共有周波数帯基地局装置2、ライセンスバンド基地局装置3、ゲートウェイ4及びLC−UC連携制御装置5を備えている。
共有周波数帯基地局装置2、ライセンスバンド基地局装置3、ゲートウェイ4及びLC−UC連携制御装置5は、通信可能に接続されている。また、ゲートウェイ4は、外部ネットワーク6、例えばインターネットに通信可能に接続されている。無線通信システムに備えられている装置が外部ネットワーク6と送受信する信号は、ゲートウェイ4を経由する。
【0023】
無線通信システムが備える各構成要素は、3GPP規格で規定されるLTE/SAE(Long Term Evolution / System Architecture Evolution)などに従って無線通信を行う。
3GPP規格の用語に従えば、端末装置1はUser Equipment(UE)に置き換えられ、ライセンスバンド基地局装置3はevolved Node Bに置き換えられる。また、ゲートウェイ4は、パケットゲートウェイ又はサービングゲートウェイとしての機能を有し、外部ネットワーク6との接続点として動作する。
無線通信システムにおけるライセンスバンド基地局装置3と端末装置1との間における無線アクセスには、必要な設計上の変更を施した上で、他の無線アクセスの技術を適用可能である。
【0024】
共有周波数帯基地局装置2と端末装置1との間では、無線LANシステムである標準化規格IEEE802.11、無線PAN(Personal Area Network)システムである標準化規格IEEE802.15、又は、3GPP規格で定められる共有周波数帯の活用規格LTE−LAA(Licensed Assisted Access)で定められる無線通信を行う。
【0025】
端末装置1は、ライセンスバンド基地局装置3及び共有周波数帯基地局装置2のいずれとも無線通信することが可能である。端末装置1と各基地局装置との無線通信の方式は、上記の例に限られず、任意である。
例えば、CCK(Complementary Code Keying)、SC−FDMA(Single-Carrier Frequency Division Multiple Access)を初めとするSC(Single Carrier)送信、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)などの、いずれの方式を用いてもよい。
また、上り回線に用いる方式と下り回線に用いる方式とは、同一の方式であってもよいし、異なる方式であってもよい。ここで、下り回線とは、共有周波数帯基地局装置2又はライセンスバンド基地局装置3から端末装置1へユーザデータ信号を伝送することである。一方、上り回線は、端末装置1から共有周波数帯基地局装置2又はライセンスバンド基地局装置3へユーザデータ信号を伝送することである。
【0026】
無線通信システムにおける各構成要素であるノードのそれぞれは、固有の識別情報を有する。識別情報には、例えば当該ノードのIPアドレス、トンネルエンドポイント識別子、ネットワークアドレスなどが用いられる。
また、ライセンスバンド基地局装置3及び共有周波数帯基地局装置2の識別情報には、当該基地局装置が形成する通信セルを識別するための物理セルID(Physical Cell ID)が含まれていてもよい。
IPアドレスは、無線通信システムにおいてノードを一意に識別するアドレス値である。
トンネルエンドポイント識別子(Tunnel Endpoint Identifier:TEID)は、ノード間を論理的に接続するベアラ(GTP(GPRS Tunneling Protocol)トンネル)の端点を識別する識別子である。
ネットワークアドレスは、無線通信システムが複数のサブネットに分割されている場合に、ノードが属するサブネットを識別するアドレス値である。
無線通信システム内のノードは、他のノードの識別情報に基づいて他のノードを識別し、識別した他のノードとの間で信号を送受信することが可能となる。
【0027】
端末装置1は、共有周波数帯における周波数チャネルであるアンライセンスチャネル(Unlicense Channel:UC)を介して、共有周波数帯基地局装置2と無線通信を行うことができる。
また、端末装置1は、ライセンスバンドにおける周波数チャネルであるライセンスチャネル(License Channel:LC)を介して、ライセンスバンド基地局装置3と無線通信を行うことができる。
【0028】
ライセンスバンド基地局装置3は、制御信号及びユーザデータ信号をゲートウェイ4と送受信することが可能である。
共有周波数帯基地局装置2は、端末装置1へ送信する信号を、ライセンスバンド基地局装置3又はゲートウェイ4から受信することができる。また、共有周波数帯基地局装置2は、端末装置1から受信する信号を、ライセンスバンド基地局装置3又はゲートウェイ4へ送信することができる。
共有周波数帯基地局装置2は、ライセンスバンド基地局装置3又はゲートウェイ4のいずれか一方あるいは両方と接続されていてもよい。そのため、
図1においては、共有周波数帯基地局装置2とライセンスバンド基地局装置3とを接続する線、及び、共有周波数帯基地局装置2とゲートウェイ4とを接続する線は、点線で記載されている。
【0029】
LC−UC連携制御装置5は、端末装置1へ送信するユーザデータ信号及び端末装置1から受信するユーザデータ信号を伝送する際にUCとLCとのいずれを用いるか、又は両方を用いるかを選択して、ユーザデータ信号を伝送する経路を決定するとともに、本発明によるアクセス権を取得する装置(以下、アクセス権取得装置という)の制御を行うか否かを決定する。
また、LC−UC連携制御装置5は、ライセンスバンド基地局装置3と共有周波数帯基地局装置2とが複数存在する場合、いずれの基地局装置からのリンクをユーザデータ信号の伝送に用いるかを決定してもよい。
【0030】
以下、第1の実施形態の無線通信システムにおける端末装置1、共有周波数帯基地局装置2及びライセンスバンド基地局装置3それぞれの構成を説明する。
図2は、第1の実施形態における端末装置1の構成を示すブロック図である。
同図に示すように、端末装置1は、ライセンスチャネル(LC)用アンテナ101、LC送受信部102、LC送信信号変調部103、LC受信信号復号部104、アンライセンスチャネル(UC)用アンテナ105、UC送受信部106、UC送信信号変調部107、UC受信信号復号部108、UC制御信号取得部109、ランダムアクセス制御回路110、端末制御部111、及び記憶部112を備える。
なお、端末装置1は、LCとUCとに対する個別のアンテナに代えて、LCとUCとに用いる共用のアンテナを備えることも可能である。また、LC送受信部102とUC送受信部106とにおいて、一部又は全ての回路が共用される構成としてもよい。
【0031】
端末装置1は、端末装置1の識別情報をライセンスバンド基地局装置3宛に送信し、ライセンスバンド基地局装置3に識別情報を記憶させる。この処理において、端末制御部111は、自装置の識別情報を含む信号を生成し、生成した信号をLC送信信号変調部103へ出力する。LC送信信号変調部103は、端末制御部111から入力した信号を変調してLC送受信部102へ出力する。LC送受信部102は、LC送信信号変調部103から入力した信号に対してアナログ信号への変換(A/D変換)とアップコンバートとを施した後に、増幅してLC用アンテナ101から送信する。
ライセンスバンド基地局装置3は、端末装置1から識別情報を含む信号を受信すると当該識別情報を記憶し、識別情報の記憶が完了したことを示す情報及びライセンスバンド基地局装置3の識別情報を含む登録完了信号を端末装置1宛に送信する。
【0032】
端末装置1において、LC送受信部102は、LC用アンテナ101を介して登録完了信号を受信すると、受信した信号に対してダウンコンバート及びデジタル信号への変換(A/D変換)を行う。LC送受信部102は、ダウンコンバート及びA/D変換により得られた信号をLC受信信号復号部104へ出力する。
LC受信信号復号部104は、LC送受信部102から入力した信号を復調する。LC受信信号復号部104は、復調により得られた情報を、端末制御部111とUC制御信号取得部109とへ出力する。
端末制御部111は、LC受信信号復号部104から入力される情報からライセンスバンド基地局装置3の識別情報を検出する。端末制御部111は、検出したライセンスバンド基地局装置3の識別情報を記憶部112に記憶させる。
このように、端末装置1とライセンスバンド基地局装置3との間における相互の識別情報の通知により、それぞれの装置において接続先が記憶され、LCのリンクが確立する。
【0033】
端末装置1において、LCのリンクが確立されると、UC送受信部106は、周辺に位置する共有周波数帯基地局装置2が送信している制御信号を、UC用アンテナ105を介して受信する。UC送受信部106は、受信した信号に対してダウンコンバート及びデジタル信号への変換(A/D変換)を行う。UC送受信部106は、ダウンコンバート及びA/D変換により得られた信号をUC受信信号復号部108へ出力する。
UC受信信号復号部108は、UC送受信部106から入力した信号を復調する。UC受信信号復号部108は、復調により得られた共有周波数帯基地局装置2の識別情報を端末制御部111へ出力する。
端末制御部111は、UC受信信号復号部108から入力した共有周波数帯基地局装置2の識別情報を記憶部112に記憶させる。
端末制御部111は、記憶部112に記憶させる共有周波数帯基地局装置2の識別情報ごとに、当該識別情報を取得した際の通信品質に関するパラメータを対応付けて記憶させてもよい。端末制御部111は、係る通信品質に関するパラメータを、UC送受信部106又はUC受信信号復号部108から取得することができる。通信品質に関するパラメータには、受信レベル、チャネルの時間変動量、誤り率、チャネルの空間相関などが含まれる。
また、端末装置1は、周辺に位置する他の端末装置1の識別情報を、共有周波数帯基地局装置2の識別情報と同様に取得して記憶してもよい。この際、例えば端末装置1は、周辺に位置する他の端末装置1がUC又はLCで送信する信号に含まれるヘッダ情報から、当該他の端末装置1の識別情報を取得できる。
更に、端末装置1は、UC又はLCで受信する周辺に位置する他の端末装置1からの送信信号に宛先として含まれる共有周波数帯基地局装置2又はライセンスバンド基地局装置3の識別情報を取得し、当該識別情報を上記他の端末装置1の識別情報に対応付けて記憶してもよい。
【0034】
端末装置1は、記憶した共有周波数帯基地局装置2及び他の端末装置1の識別情報をライセンスバンド基地局装置3へ送信するか、あるいは、予め指定された共有周波数帯基地局装置2の識別情報を検出したかどうかをライセンスバンド基地局装置3へ送信する。
ここで、予め指定された共有周波数帯基地局装置2とは、端末装置1を有するユーザが契約しているオペレータが用いているSSID(Service Set Identifier)で識別される共有周波数帯基地局装置2や、ライセンスバンド基地局装置3とLCのリンクを確立した際に通知されたライセンスバンド基地局装置3の通信セル内に存在する共有周波数帯基地局装置2である。また、係る予め指定された共有周波数帯基地局装置2は、本発明による連携動作が可能な共有周波数帯を用いて端末装置1と無線通信を行うことができる。
また、上述した共有周波数帯を利用する通信装置の識別情報に関する情報をライセンスバンド基地局装置3へ送信する際の、端末装置1における各構成要素の動作は、自装置の識別情報をライセンスバンド基地局装置3へ送信する際の動作と同様に行われる。
【0035】
ライセンスバンド基地局装置3は、端末装置1に対し、UC情報要求信号を、LCを介して送信してもよい。UC情報要求信号は、端末装置1が記憶している共有周波数帯基地局装置2及び他の端末装置1の識別情報に関する情報と、端末装置1が測定した周辺のUCの無線環境情報とのいずれか一方又は両方の通知を要求する信号である。
UC情報要求信号を受信した端末装置1は、記憶している共有周波数帯基地局装置2及び他の端末装置1の識別情報と回線利用情報とを含むUC情報から、ライセンスバンド基地局装置3へ送信する情報を生成してもよい。回線利用情報には、端末装置1が測定した、UCにおける無線通信の利用に関する情報、例えばUCにおける無線通信の頻度、UCの利用率、受信レベルなどが含まれる。
端末装置1は、上記UC情報要求信号を受信することにより、自装置内のUCを用いる通信に関する回路の電源を入れるように制御することもできる。
【0036】
また、端末装置1における下り回線と上り回線とのいずれか一方又はその両方の無線通信を共有周波数帯基地局装置2と行うことがLC−UC連携制御装置5において決定され、かつ、当該共有周波数帯基地局装置2がスタンバイ状態となると、端末装置1は、ライセンスバンド基地局装置3からUC通信開始信号(UC Transmission Request for Uplink / for Downlink)をLCで受信する。
【0037】
端末装置1において、LC送受信部102が、LC用アンテナ101を介して、UC通信開始信号をライセンスバンド基地局装置3から受信すると、LC送受信部102におけるダウンコンバート及びA/D変換とLC受信信号復号部104における復号とにより、UC通信開始信号が復号される。LC受信信号復号部104は、UC通信開始信号をUC制御信号取得部109へ出力する。このUC通信開始信号を用いて、アクセス権の取得を端末装置1に行わせることを(LC−UC連携制御装置5により)指示することで、従来のランダムアクセスによる通信と比較して、スループットを改善できる。本第1の実施形態では、アクセス権取得制御の形態として、以下の4つのシナリオが考えられる。
【0038】
[シナリオ1] アクセス権を取得してUCにおける上り回線のシングルユーザ送信を行う複数の端末装置1を、互いに隠れ端末の条件とならないように選択することで、パケット衝突を回避する。
[シナリオ2] アクセス権を取得してUCにおける上り回線のマルチユーザ同時送信を行う複数の端末装置1を選択し、上り回線送信要求信号の送信によりアクセス権(送信権)を取得させてUCを用いたマルチユーザ上り回線の送信を複数の端末装置1から行うことで、当該マルチユーザ上り回線送信のための制御信号のやり取りを省き、UCを効率的に利用する。
[シナリオ3] アクセス権を取得してUCにおける下り回線のシングルユーザ受信を行う端末装置1を選択し、下り回線送信要求信号の送信によりアクセス権(受信権)を取得させ、共有周波数帯基地局装置2にユーザデータの送信を行わせることで、共有周波数帯基地局装置2から隠れ端末状態となっている無線装置の送信信号が端末装置1でパケット衝突を引き起こすことを回避する。
[シナリオ4] アクセス権を取得してUCにおける下り回線のマルチユーザ同時受信を行う複数の端末装置1を選択し、下り回線送信要求信号の送信によりアクセス権(受信権)を取得させて共有周波数帯基地局装置2にユーザデータの送信を行わせることで、共有周波数帯基地局装置2から隠れ端末状態となっている無線装置の送信信号が端末装置1でパケット衝突を引き起こすことを回避するとともに、UCを用いたマルチユーザ下り回線送信のための制御信号のやり取りを省き、UCを効率的に利用する。
【0039】
上述のUC通信開始信号は、シナリオ1からシナリオ4までのいずれかを指定することができ、また、UCを用いて無線通信を行う端末装置1及び共有周波数帯基地局装置2それぞれの識別情報、アクセス方法、アクセスタイミング、アクセス時間帯域、通信ビット数、及び、UCの利用を終了する終了条件のいずれかを示すUC利用指定情報を含めることができる。
また、UC通信開始信号には、アクセス権を取得する装置を指定したUCの通信において伝送されるユーザデータのフレーム長に関する情報が含まれていてもよい。フレーム長は、フレームあたりのユーザデータのビット数、及び、共有周波数帯基地局装置2と端末装置1との間のチャネル情報や変調方式や符号化率や空間多重数などのMCSインデックス(Modulation Code Scheme Index)などに基づいて算出される。
UC制御信号取得部109は、UC通信制御信号を、端末制御部111へ出力する。
【0040】
ここで、上り回線におけるマルチユーザ同時送信の実現方法は、OFDMAにより、当該UCにおいて周波数方向に回線を分割して各端末装置1に割り当てるか、符号分割多重技術により回線ごとに異なる符号を各端末装置1に割り当てるか、空間多重技術を用いて空間信号処理により同時・同一周波数で送信された各端末装置1からの信号を検出するか、の三つの方法が考えられる。
LC−UC連携制御装置5及びライセンスバンド基地局装置3は、周波数方向で回線を分割する場合、端末装置1が用いる周波数チャネルを、UC通信開始信号で端末装置1に通知することができる。
また、LC−UC連携制御装置5及びライセンスバンド基地局装置3は、符号分割多重技術により回線を分割する場合、端末装置1に割り当てた符号を、UC通信開始信号で端末装置1に通知することができる。
また、LC−UC連携制御装置5及びライセンスバンド基地局装置3は、空間(分割)多重技術により回線を多重する場合、各端末装置1のパイロット信号の送信ルールやデータパケット長に関する情報を、UC通信開始信号で端末装置1に通知することができる。
【0041】
また、下り回線におけるマルチユーザ同時通信の実現方法も、OFDMAにより周波数方向に回線を分割して各端末装置1に割り当てるか、符号分割多重技術により回線ごとに異なる符号を各端末装置1に割り当てるか、空間多重技術を用いて空間信号処理により各端末装置1への信号の干渉を抑えつつ同時・同一周波数での送信を行うか、の三つの方法が考えられる。
【0042】
シナリオ1からシナリオ4のいずれのシナリオも、隠れ端末問題の解決により特定の端末装置1に対するUCのスループットの向上が期待できる。
シナリオ1については、上り回線通信によるアクセス権取得時に、端末装置1同士が隠れ端末関係となりパケット衝突を引き起こすことを防ぐことができる。
シナリオ2〜4については、端末装置1同士が隠れ端末関係となりパケット衝突を引き起こすことを防ぐように端末装置1を選択できるとともに、端末装置1がマルチユーザ同時通信をトリガするため、共有周波数帯基地局装置2から見て隠れているUCを用いる端末装置1のパケットとの衝突を防ぐことができる。
【0043】
UC送信信号変調部107は、端末制御部111から入力される信号を変調してUC送受信部106へ出力する。端末制御部111からUC送信信号変調部107へ入力される信号は、制御信号やユーザデータ信号などである。
UC送受信部106は、ランダムアクセス制御回路110から送信停止を指示されてない場合に、UC送信信号変調部107から入力される信号に対して、アナログ信号への変換及び搬送波周波数へのアップコンバートを行った後に、当該信号を増幅してUC用アンテナ105から送信する。
ランダムアクセス制御回路110は、UC送受信部106が受信している信号の受信レベルが予め定められたしきい値以上である場合に、UC送受信部106に対して送信の停止を指示する。また、ランダムアクセス制御回路110は、UC受信信号復号部108が復号した信号に、一定時間の送信を禁止するNAV(Network Allocation Vector)の設定などのヴァーチャルキャリアセンスを指示する信号が含まれる場合に、当該信号が示す条件での送信の停止を、UC送受信部106に対して指示する。
【0044】
UC送受信部106は、ランダムアクセス制御回路110による送信の停止が解除されると、予め定められたランダムアクセス方式のルールに従い、UC送信信号変調部107から入力される信号の送信を行う。
端末装置1が受信を行う場合は、UC用アンテナ105から取得した受信信号をUC送受信部106においてダウンコンバートし、アナログデジタル変換してデジタル信号をUC受信信号復号部108へ出力し、復号した情報を端末制御部111で得ることができる。
【0045】
従来の無線システムでは、送信を行いたいユーザデータ信号が端末制御部111で生成されれば、ランダムアクセス方式のルールに従い送信を行い、また、受信したいデータは共有周波数帯基地局装置2から送信され、受信するまで待機することとなる。
本発明の方式では、LC−UC連携制御装置5が、アクセス権を取得する装置を予め決定するところが従来と異なる。端末装置1は、このアクセス権取得装置が自(無線)装置1であると指定されていた場合、送信及び受信のいずれを行うときにも、ユーザデータ信号と、上り回線送信要求信号と下り回線送信要求信号とのいずれかの信号を送信することにより、アクセス権の取得を行う。
端末装置1は、上記アクセス権取得装置が、通信相手である共有周波数帯基地局装置2である場合には、送信したいデータが自端末装置1にあるときでも、アクセス権を取得する共有周波数帯基地局装置2から送信を指示する信号を受信するまで待機することで、パケット衝突を低減する効率的なUCの利用を行うことができる。
また、下り回線送信要求信号により、共有周波数帯基地局装置2からの信号を受信する場合には、予め受信したいユーザデータ信号が共有周波数帯基地局装置2で待機されているかを端末装置1が知る必要があり、LC回線によるUC通信開始信号にこの通知機能を持たせることができる。
【0046】
第1の実施形態によるUC通信が行われ、予め定められたUC通信の条件を満たすと、端末制御部111は、UC送受信部106による通信(送信)の結果を示すUC通信報告情報を生成し、生成したUC通信報告情報をLC送信信号変調部103へ出力することができる。
UC通信報告情報は、共有周波数帯基地局装置2及び他の端末装置1の識別情報と同様に、LC送信信号変調部103における変調と、LC送受信部102におけるD/A変換、アップコンバート及び増幅とが施されてライセンスバンド基地局装置3宛に送信される。
UC通信報告情報に含まれる送信の結果は、例えば、伝送すべきユーザデータ信号全てが欠けることなく伝送されたか否かを示す情報である。
【0047】
なお、端末装置1は、UC通信開始信号をライセンスバンド基地局装置3から受信しない場合において、無線LAN通信のような公知のランダムアクセス方式のルールに従って共有周波数帯基地局装置2と無線通信を行ってもよい。又は、公知のランダムアクセス方式のルールと併用して、本発明によるアクセス権取得の制御によるアクセスを用い、共有周波数帯の通信を行うことができる。
また、端末装置1において、ユーザの操作を受け付けることでUCを用いた無線通信を行うこと、又は、本発明によるアクセス権の制御によるUCを用いた無線通信を行うことを要求するUC通信要求信号を端末制御部111が生成し、LC送信信号変調部103及びLC送受信部102による送信処理、又は、UC送信信号変調部107及びUC送受信部106による送信処理により、当該UC通信要求信号をLC−UC連携制御装置5へ送信してもよい。
LC−UC連携制御装置5は、端末装置1からの要求を受けて、ライセンスバンド基地局装置3から当該端末装置1へUC通信開始信号を送信させるようにしてもよい。
【0048】
図3は、第1の実施形態における端末装置1が行う端末通信処理を示すフローチャートである。
端末装置1において端末通信処理が開始されると、LC送受信部102、LC送信信号変調部103、及びLC受信信号復号部104による信号処理を介して、端末制御部111がライセンスバンド基地局装置3と互いの識別情報の送受信及び記録を行うことにより、通信リンクを確立する(ステップS101)。
【0049】
ライセンスバンドにおける通信リンクが確立されると、UC送受信部106及びUC受信信号復号部108は、自装置が接続可能な共有周波数帯基地局装置2を検出する(ステップS102)。ステップS102において検出された共有周波数帯基地局装置2の識別情報は、ライセンスバンド基地局装置3を経由してLC−UC連携制御装置5に通知される。
なお、端末装置1は、ステップS102において検出した共有周波数帯基地局装置2の識別情報、又は、予め指定された識別情報を検出したか否かを示す情報を、共有周波数帯基地局装置2を経由してLC−UC連携制御装置5へ通知してもよい。
【0050】
LC−UC連携制御装置5が端末装置1の第1の実施形態によるUC利用を決定すると、ライセンスバンド基地局装置3からUC通信開始信号が送信され、LC送受信部102がUC通信開始信号を受信する(ステップS103)。
受信されたUC通信開始信号は、LC送受信部102及びLC受信信号復号部104における受信処理が施されて、端末制御部111へ入力される。端末制御部111は、UC通信開始信号に含まれるUC利用指定情報を取得する(ステップS104)。
【0051】
端末制御部111、UC送信信号変調部107、及びUC送受信部106は、上記UC利用指定情報に基づいて、指定された形式の送信信号を生成する。前述の4つのシナリオで説明すると、指定された形式の送信信号とは、シナリオ1の場合は上り回線のユーザデータ信号、シナリオ2の場合は上り回線送信要求信号、シナリオ3と4の場合は下り回線送信要求信号である。
UC送受信部106は、ランダムアクセス制御回路110の制御に従い、UCを用いた送信を行う(ステップS105)。
端末制御部111は、UC利用指定情報に含まれるUCの利用を終了する終了条件が満たされているか否かを判定し(ステップS106)、条件が満たされている場合(ステップS106:YES)、処理をステップS107に進める。条件が満たされていない場合(ステップS106:NO)、端末制御部111は、処理をステップS105に戻して、UCを用いた送信を継続させる。
【0052】
上記終了条件が満たされている場合、端末制御部111は、UCを利用した送信の結果をUC送受信部106から取得し、取得した送信の結果を含むUC通信報告情報を生成する。UC通信報告情報は、LC送信信号変調部103及びLC送受信部102における送信処理が施されて送信され、ライセンスバンド基地局装置3を経由してLC−UC連携制御装置5へ伝送される(ステップS107)。
端末制御部111は、UC通信報告情報がライセンスバンド基地局装置3へ送信されると、端末通信処理を終了させる。
【0053】
図3に示した端末通信処理において、ステップS107を省くこともできる。即ち、端末装置1がUC通信報告情報をLC−UC連携制御装置5へ送信しない代わりに、共有周波数帯基地局装置2が、LC−UC連携制御装置5へ直接UC通信報告情報を出力するか、ライセンスバンド基地局装置3を介してLC−UC連携制御装置5へUC通信報告情報を出力することもできる。
【0054】
図4は、第1の実施形態における共有周波数帯基地局装置2の構成を示すブロック図である。
同図に示すように、共有周波数帯基地局装置2は、UC用アンテナ205、UC送受信部206、UC送信信号変調部207、UC受信信号復号部208、ランダムアクセス制御回路210、基地局制御部211、記憶部212、ネットワーク通信部214、及び、アクセス制御管理部215を備える。
【0055】
共有周波数帯基地局装置2は、自装置の識別情報を周囲の端末装置1に通知するために、識別情報を含むビーコン信号の周期的な送信による報知を行う。
基地局制御部211は、自装置の識別情報と自装置の機能に関する情報を含むビーコン情報を生成する。
UC送信信号変調部207は、基地局制御部211が生成したビーコン情報を入力し、ビーコン情報を変調する。UC送信信号変調部207は、ビーコン情報を変調して得られた信号にパイロット信号を付与して、UC送受信部206へ出力する。
UC送受信部206は、UC送信信号変調部207から入力する信号に対してD/A変換、搬送波周波数へのアップコンバート及び増幅などを施して、UC用アンテナ205から送信する。UC送受信部206による信号の送信は、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)に基づいた送信である。
【0056】
ランダムアクセス制御回路210は、UC送受信部206の送信タイミングを制御する。ランダムアクセス制御回路210は、端末装置1のランダムアクセス制御回路110と同様に、UC送受信部206が受信している信号の受信レベルが予め定められたしきい値以上である場合、又は、NAVの設定などのヴァーチャルキャリアセンスを指示する信号を受信した場合に、UC送受信部206に対して送信の停止を指示する。
UC送受信部206は、ランダムアクセス制御回路210から送信の停止を指示されていない期間において、信号を送信する。なお、共有周波数帯基地局装置2がCSMA/CAに基づいた送信を行わない場合には、共有周波数帯基地局装置2は、ランダムアクセス制御回路210を備えなくてもよい。
【0057】
UC送受信部206は、端末装置1が送信した信号を、UC用アンテナ205を介して受信する。UC送受信部206は、受信した信号に対して増幅、ダウンコンバート及びA/D変換などを施して得られた信号をUC受信信号復号部208へ出力する。
UC受信信号復号部208は、UC送受信部206から入力する信号を復号し、復号して得られた情報を基地局制御部211へ出力する。
基地局制御部211は、受信処理で得られた端末装置1の識別情報を、記憶部212に記憶させる。基地局制御部211は、記憶部212に記憶させた端末装置1の識別情報を、記憶させてから予め定めた時間が経過した後に削除してもよい。また、基地局制御部211は、記憶部212に記憶させた端末装置1の識別情報を、ネットワーク通信部214を介して、LC−UC連携制御装置5へ送信してもよい。
【0058】
第1の実施形態において、LC−UC連携制御装置5が通信にUCを利用することを決定すると、共有周波数帯基地局装置2と端末装置1とが前述の4つのシナリオに応じて、UCを介した無線通信を行う。
【0059】
シナリオ1及びシナリオ2では、上り回線により端末装置1からのユーザデータを受信する。この場合、共有周波数帯基地局装置2は、LC−UC連携制御装置5からの信号を受信せず、アクセス制御管理部215も具備せず、通常のランダムアクセス方式による受信として端末装置1からの信号を受信してもよい。
又は、共有周波数帯基地局装置2は、ネットワーク通信部214を介して、LC−UC連携制御装置5からUC利用指定情報を受信することもできる。シナリオ1及びシナリオ2のUC利用指定情報に、上り回線を行う端末装置1の情報や、端末装置1で記憶している送信待ちユーザデータの情報、UC通信の終了条件を含めることができる。アクセス制御管理部215は、基地局制御部211を介して、UC利用指定情報を取得する。
【0060】
シナリオ3及びシナリオ4では、下り回線により、端末装置1へのユーザデータを送信する。
共有周波数帯基地局装置2は、ネットワーク通信部214を介して、LC−UC連携制御装置5からUC利用指定情報を受信する。シナリオ1及びシナリオ2のUC利用指定情報には、上り回線を行う端末装置1の情報や、ユーザ端末に対し送信するユーザデータの情報、UC通信の終了条件を含めることができる。アクセス制御管理部215は、基地局制御部211を介してUC利用指定情報を取得する。
更にネットワーク通信部214は、外部ネットワーク6からの端末装置1宛のユーザデータを、ゲートウェイ4を介して受信する。基地局制御部211は、ネットワーク通信部214が受信したユーザデータを、記憶部212に記憶させる。
【0061】
アクセス制御管理部215は、UC利用指定情報に含まれる識別情報が示す、端末装置1からの下り回線送信要求信号を受信するまで待機する。又は、UC利用指定情報において、指定された端末装置1へのユーザデータ送信に際し、共有周波数帯基地局装置2は全くアクセス権(送信権)の取得をしないのか、又は、共有周波数帯基地局装置2もアクセス権(送信権)の取得を行うとともに端末装置1もアクセス権(受信権)の取得を行ってユーザデータの送信を行うのか、を指定できる。
共有周波数帯基地局装置2と端末装置1とがともにアクセス権を取得して下り回線のユーザデータの送信を行う場合は、アクセス制御管理部215はUC利用指定情報に含まれる識別情報が示す端末装置1からの下り回線送信要求信号を受信するまで待機するのではなく、下り回線送信要求信号を待ち受けつつ、記憶部212に記憶された送信待ちユーザデータの送信を、アクセス権(送信権)を取得して行うことができる。
【0062】
また、シナリオ2、シナリオ3、及びシナリオ4において、UC受信信号復号部208は、ユーザデータの宛先の端末装置1による上り回線送信要求信号又は下り回線送信要求信号を検出すると、これをアクセス制御管理部215へ出力する。
シナリオ2では、アクセス制御管理部215は、上り回線送信要求信号から、複数の端末装置1からの上り回線の送信が行われることを検出し、復号のための必要な準備を行う。必要な準備とは、例えばマルチユーザ同時通信の復号準備であり、必要なアナログデジタル変換ポートの起動や、ユーザ分離に必要な信号処理の待機、周波数帯域幅の変更、異なる複数の端末装置1のパイロット信号の復号の待機などがあげられる。
シナリオ4の場合も、アクセス制御管理部215は、複数の端末装置1への送信が必要となるため、マルチユーザ同時通信のために必要な準備を行う。必要な準備とは、OFDMAによるマルチユーザ同時送信の場合には、端末装置1への帯域割り当てや対応する変調、帯域幅の準備であり、符号化によるマルチユーザ多重の場合は、符号の通知の準備であり、空間多重によるマルチユーザ同時送信の場合には、複数の端末装置に対するチャネル情報取得の要求信号の生成や、複数の端末装置1に対して推定したチャネル情報を用いた送信ウエイトの演算などがあげられる。
【0063】
シナリオ3又はシナリオ4により、共有周波数帯基地局装置2に下り回線送信要求が入力されると、基地局制御部211は、下り回線送信要求の送信先として指定された一つ以上の端末装置1宛のユーザデータを、記憶部212から読み出す。
基地局制御部211は、読み出したユーザデータをUC送信信号変調部207へ出力する。当該ユーザデータには、UC送信信号変調部207における変調及びパイロット信号の付与が施される。ここで、アクセス権の取得及びNAVの設定が通信相手である端末装置1により行われているため、共有周波数帯基地局装置2は、ランダムアクセス方式のための判定や待機を行うことなく、予め定められたSIFS(Short Interframe Space)などの時間後に、ただちにユーザデータ信号を送信できる。
UC送信信号変調部207は、ユーザデータ信号をUC送受信部206へ出力し、UC送受信部206は、D/A変換、アップコンバート及び増幅などを施してUC用アンテナ205を介して送信する。ここで、シナリオ1の場合のみ、従来の無線システムと同様に端末装置1からの信号を受信・復号できる。ただし、前述のように、端末装置1同士のパケット衝突の確率は低減できる。
【0064】
シナリオ1とシナリオ2との場合には、UC送受信部206で受信されるユーザデータの情報を、UC受信信号復号部208で取得する。
シナリオ3とシナリオ4との場合には、UC受信信号復号部208は、UC送受信部206がユーザデータを端末装置1宛に送信した後に、当該端末装置1からのACK又はBlock−ACKを復号した信号に送信ビットが含まれていることを検出すると、この送信ビットを取得する。UC受信信号復号部208は、取得した送信ビットを基地局制御部211へ出力する。
基地局制御部211は、UC受信信号復号部208から入力する送信ビットに基づいて再送の要否を判定し、再送が必要であれば、当該ユーザデータを再度UC送信信号変調部207へ出力することもできる。
【0065】
UC利用指定情報に含まれる、UCの利用を終了する終了条件を共有周波数帯基地局装置2で判定する場合は、終了条件に関連する情報を、アクセス制御管理部215で収集する。
例えば、終了条件が端末装置1又は共有周波数帯基地局装置2で正常復号されたユーザデータの情報量として定められている場合、UC受信信号復号部208は、正常に送信又は受信したユーザデータ量に関する情報をアクセス制御管理部215へ出力し、アクセス制御管理部215は、当該情報と取得された送信ビットに基づいて、端末装置1への下り回線にUCの利用を継続させるか否かを判定することができる。
【0066】
なお、UCを利用した無線通信においてOFDMAや空間分割多重方式によるマルチユーザ同時送信を行う場合(シナリオ4)には、UC送受信部206は、複数の端末装置1宛のユーザデータを同時に送信する。このように異なる端末装置1宛のユーザデータを同時に送信する場合には、アクセス制御管理部215が宛先の端末装置1の組み合わせを選択する。
例えば、精度が高いチャネル情報を有する端末装置1を組み合わせたり、アクセスカテゴリ(送信データの種類)が同様の端末装置1を組み合わせたり、送信すべきユーザデータのデータ量が多い順に端末装置1を組み合わせたり、送信すべきユーザデータのデータ量の差が少ない端末装置1を組み合わせたりする。
アクセス制御管理部215は、選択した各端末装置1の識別情報を、基地局制御部211へ出力する。
【0067】
基地局制御部211は、端末装置1宛のユーザデータを記憶部212から読み出す際に、送信が完了していないユーザデータがなくなると、下り回線のユーザデータの残量がないことを示す残留データ情報をユーザデータに付加して、UC送信信号変調部207へ出力してもよい。このように、下り回線において端末装置1宛に送信するユーザデータがないことを当該端末装置1に通知することにより、当該端末装置1が不要に下り回線送信要求を送信することで利用効率が低下することを防ぐことができる。
端末装置1は、LCによる通信により、ライセンスバンド基地局装置3を介してLC−UC連携制御装置5へ、本発明によるUCでの無線通信の終了を通知することができる。
【0068】
第1の実施形態における共有周波数帯基地局装置2は、端末装置1と、従来の共有周波数帯でのランダムアクセス方式による無線システム(例えば無線LAN規格)に基づいた無線通信を行うこともできる。このため、本発明の構成により、アクセス権取得装置を指定された上り回線と下り回線とのいずれか一方又は両方でUCを用いる場合に、従来の無線システムによる通信を併用することもできる。
【0069】
アクセス制御管理部215は、UCを用いた無線通信の通信品質をモニタすることができる。また、アクセス制御管理部215は、UCを用いた無線通信における異常の発生を検出してもよい。この際に、アクセス権を取得した端末装置1に通信品質を関連付けることができる。つまり、共有周波数帯基地局装置2でアクセス権を取得した通信と、端末装置1でアクセス権取得した通信とで、スループットに関連する情報を評価する。スループットに関連する情報とは、変調方式や符号化率や空間多重数などのMCSインデックスや、周波数帯域幅、パケットエラーレートのことである。
異常の検出方法としては、例えば、共有周波数帯基地局装置2と端末装置1とがアクセス権をとった通信のスループットに関連する情報のずれや、上り回線における通信相手である複数の端末装置1が互いに隠れ端末状態である場合のパケットの衝突、又は、下り回線において共有周波数帯基地局装置2から隠れ端末状態として存在する他の端末装置1が送信する信号とのパケット衝突を異常として検出する。
【0070】
共有周波数帯基地局装置2がアクセス権をとった通信と端末装置1がアクセス権をとった通信とに大きなずれがある場合、隠れ端末問題によるパケット衝突が生じていると推定できる。
共有周波数帯基地局装置2がアクセス権を取得した場合にスループットが低い場合には、共有周波数帯基地局装置2から隠れ端末状態となる無線装置が通信して、共有周波数帯基地局装置2においてパケット衝突が生じていると考えられる。
また、端末装置1においてパケット衝突が生じており、端末装置1がアクセス権を取得した場合にスループットが低い場合には、端末装置から隠れ端末状態となる無線装置が通信して、共有周波数帯基地局装置2においてパケット衝突が生じていると考えられる。
【0071】
アクセス権取得装置の違いによるスループットのずれは、例えば共有周波数帯基地局装置2がアクセス権を取得した場合のスループットと、端末装置1がアクセス権を取得した場合のスループットとがα倍以上又は1/α以下になる場合として、予めαを設定した上で判定できる。このようにして、パケット衝突が生じやすい、または、スループットが低くなるアクセス権取得装置を検出できる。
LC−UC連携制御装置5は、このようなアクセス権取得装置の違いによる異常の情報を収集することで、本発明で指定するべきアクセス権取得装置を決定できる。
更に、アクセス制御管理部215は、通信異常について、時間、曜日、日付、周辺のイベント情報などと関連付けて、LC−UC連携制御装置5に出力することもできる。
【0072】
更に、アクセス制御管理部215は、パケット衝突又はパケットの復号失敗をアクセス権取得装置に対応付けて評価し、アクセス権取得装置のコンテンションウィンドウサイズ(送信を待機するスロット数)が大きくなり、送信権の取得率の低下やMAC(Medium Access Control)効率の低下が生じていると判定した場合に、当該アクセス権取得装置による通信の異常が発生していると判定する。
アクセス制御管理部215は、異常と判定するアクセス権取得装置(すなわち自共有周波数帯基地局装置2又は通信相手である端末装置1)の識別情報をLC−UC連携制御装置5へ通知する。
また、アクセス制御管理部215は、UCの上り回線におけるパケット衝突を検出することにより、通信を行う相手である端末装置1同士のパケット衝突を検出し、互いに信号を検出できない端末装置1を検出してもよい。アクセス制御管理部215は、これらの端末装置1の識別情報の組み合わせを、互いの信号を検出できない端末装置1の組み合わせとして、LC−UC連携制御装置5へ通知する。
【0073】
また、アクセス制御管理部215は、共有周波数帯基地局装置2がアクセス権を取得して送信を行った後に、ACK又はBlock−ACKなど対応する信号が返信されない割合が予め定められた値より大きい場合に、共有周波数帯基地局装置2がアクセス権を取得した通信に異常が発生していると判定することができる。
更に、アクセス制御管理部215は、RTS(Request To Send)/CTS(Clear To Send)を交換する通信で、RTSを端末装置1へ送信したにもかかわらずCTSが返信されない場合、又は、通信の失敗が端末装置1におけるパケット衝突による場合に、下り回線の異常が発生していると判定することができる。
【0074】
更に、アクセス制御管理部215は、自装置と端末装置1とが検出できる共有周波数帯において、同じ周波数チャネルを用いる他の端末装置1の識別情報を比較することで、下り回線の異常が発生する可能性が高いと判定することもできる。具体的には、共有周波数帯基地局装置2が検出した識別情報が示す他の端末装置1のうち有意な通信を行っている端末装置1のグループが、端末装置1が検出した識別情報が示す他の端末装置1のグループに包含される場合に、アクセス制御管理部215は、下り回線の異常が発生する可能性が高いと判定する。
【0075】
上記の異常に関する判定により異常が発生している又は発生する可能性が高い場合には、本発明によるアクセス権取得装置を指定することで、共有周波数帯におけるスループットを向上させることができる。具体的には、アクセス制御管理部215は、LCアシスト要求信号を生成して、ネットワーク通信部214を介してLC−UC連携制御装置5へ送信することで、本発明によるアクセス権取得者を指定した通信を行わせることができる。
例えば、共有周波数帯基地局装置2がアクセス権を取得した無線通信に異常があれば、端末装置1がアクセス権を取得して通信を行うことでスループットの向上が期待でき、端末装置1でアクセス権を取得した無線通信に異常があれば、共有周波数帯基地局装置2でアクセス権を取得した無線津伸を行うことができる。
更に、上記のLCアシスト要求信号を出力するか否かを判定するために、端末装置1がLCによる通信回線を持っているか、又は本発明によるアクセス権取得装置としての制御機能を有しているかを示す情報を、端末装置1から予め取得することもできる。
【0076】
図5は、第1の実施形態におけるシナリオ3とシナリオ4とにおいて、共有周波数帯基地局装置2が行う下り回線の通信処理を示すフローチャートである。
LC−UC連携制御装置5が端末装置1をアクセス権取得装置として共有周波数帯基地局装置2から下り回線の通信を行うことを決定し、ネットワーク通信部214が、端末装置1宛のユーザデータをライセンスバンド基地局装置3から受信する。基地局制御部211は、ネットワーク通信部214が受信したユーザデータを記憶部212に記憶させる(ステップS201)。
基地局制御部211は、ユーザデータを正常取得した後、LC−UC連携制御装置5又はライセンスバンド基地局装置3に正常取得を通知してもよい。
【0077】
UC受信信号復号部208が下り回線送信要求信号を受信し、下り回線送信要求を検出すると(ステップS202)、当該下り回線送信要求を送信した端末装置1の識別情報、又は、下り回線送信要求で指定される1つ以上の端末装置1の識別情報に対応するユーザデータが、基地局制御部211によって記憶部212から読み出され、UC送信信号変調部207及びUC送受信部206における信号処理が施されて送信される(ステップS203)。
ステップS203において、共有周波数帯基地局装置2は、端末装置1へユーザデータを送信する前に、対応する端末装置1に対応するチャネル情報の収集を行ってもよい。
UC受信信号復号部208が、ユーザデータの宛先の端末装置1からのACK又はBlock−ACKを、受信された信号から検出すると(ステップS204)、基地局制御部211は、UCの利用を終了する終了条件が満たされているか否かを判定する(ステップS205)。
【0078】
UCの利用を終了する終了条件が満たされている場合(ステップS205:YES)、基地局制御部211は、下り回線の通信処理を終了させる。一方、UCの利用を終了する終了条件が満たされていない場合(ステップS205:NO)、基地局制御部211は、処理をステップS202へ戻し、ステップS202以降の処理を繰り返し行わせる。
なお、ステップS205が終了後、基地局制御部211は、LC−UC連携制御装置5へ、本発明による通信が正常終了したことを通知することもできる。
【0079】
図6は、第1の実施形態におけるシナリオ1とシナリオ2とにおいて、共有周波数帯基地局装置2が行う上り回線の通信処理を示すフローチャートである。
LC−UC連携制御装置5が、端末装置1をアクセス権取得装置として共有周波数帯基地局装置2から上り回線の通信を行うことを決定すると、UC受信信号復号部208は、UC送受信部206が受信した信号から、端末装置1からのユーザデータを検出する(ステップS301)。
ステップS301において、シナリオ2の場合には、上り回線送信要求信号を受信することで、マルチユーザ同時受信の形態や対応する端末情報の識別情報を取得することもできる。
基地局制御部211は、ACK又はBlock−ACKを生成して、UC送信信号変調部207及びUC送受信部206を通じて、対応する端末装置1へACK又はBlock−ACKを送信する(ステップS302)。
基地局制御部211は、UC受信信号復号部208が検出したユーザデータを、ネットワーク通信部214を介して外部ネットワーク6へ送信し(ステップS303)、上り回線の通信処理を終了させる。
【0080】
図7は、第1の実施形態におけるライセンスバンド基地局装置3の構成を示す図である。
同図に示すように、ライセンスバンド基地局装置3は、LC用アンテナ301、LC送受信部302、LC送信信号変調部303、LC受信信号復号部304、基地局制御部311、記憶部312、ネットワーク通信部314、UC情報抽出部316、及び、UC制御信号生成部317を備える。
【0081】
ライセンスバンド基地局装置3は、LCにおいて端末装置1とリンクを確立し、互いに同じ通信セルに所属する共有周波数帯基地局装置2と端末装置1との間の通信を制御するための制御信号を送受信する。この制御信号は、例えばUC通信開始信号である。
端末装置1から送信された信号がLC用アンテナ301で受信されると、受信された信号がLC送受信部302に入力される。LC送受信部302は、入力した信号に対してダウンコンバート及びA/D変換を行い、得られた信号をLC受信信号復号部304へ出力する。LC受信信号復号部304は、LC送受信部302から入力した信号を復号し、復号により得られた情報を基地局制御部311へ出力する。
基地局制御部311は、LC受信信号復号部304から入力した情報に含まれる端末装置1の識別情報に基づいて、認証、権限付与、及びアカウンティング(Authentication, Authorization, Accounting:AAA)を行ってもよい。基地局制御部311は、AAAに必要な情報を、ネットワーク通信部314を介して取得してもよい。
【0082】
ライセンスバンド基地局装置3と端末装置1との間においてLCを用いたリンクが確立すると、LC受信信号復号部304又は基地局制御部311が、当該リンクにおける通信品質を評価する。LCにおける通信品質であるLC通信品質は、ライセンスバンド基地局装置3と端末装置1との間のチャネル利得、モビリティ、端末装置1が有する通信機能に基づいて評価される。
基地局制御部311は、リンクを確立した端末装置1ごとに、当該端末装置1の識別情報にLC通信品質を対応付けて記憶部312に記憶させる。
【0083】
基地局制御部311は、リンクを確立した端末装置1の識別情報及びLC通信品質を、LC−UC連携制御装置5へ出力する。基地局制御部311は、端末装置1に対するAAAを行う際の制御に用いる情報と、自装置の識別情報とを、LC送信信号変調部303へ出力する。
LC送信信号変調部303は、基地局制御部311から入力される情報を変調し、変調で得られた信号をLC送受信部302へ出力する。LC送受信部302は、LC送信信号変調部303から入力される信号に対して、D/A変換、搬送波周波数へのアップコンバート及び増幅を施し、LC用アンテナ301から送信する。
また、ライセンスバンド基地局装置3は、制御信号としてUC情報要求信号を端末装置1へ送信してもよい。これにより、ライセンスバンド基地局装置3は、各端末装置1の周辺に位置する共有周波数帯基地局装置2及び他の端末装置1の識別情報や、UCにおける無線通信の利用に関する回線利用情報を含むUC情報を取得できる。
【0084】
ライセンスバンド基地局装置3において、LC用アンテナ301で受信された信号は、LC送受信部302に入力される。LC送受信部302は、LC用アンテナ301から入力される信号に対してダウンコンバート及びA/D変換を施し、得られた信号をLC受信信号復号部304へ出力する。
LC受信信号復号部304は、LC送受信部302から入力される信号を復号して得られた情報を、UC情報抽出部316及び基地局制御部311へ出力する。
UC情報抽出部316は、LC受信信号復号部304から入力される情報のうちUCに関する情報を、ネットワーク通信部314を介してLC−UC連携制御装置5へ送信する。
【0085】
そして、LC−UC連携制御装置5が、共有周波数帯基地局装置2と無線通信を行う一つ又は複数の端末装置1を選択し、ライセンスバンド基地局装置3へ通知する。
ネットワーク通信部314は、選択された端末装置1の識別情報と当該端末装置1の識別情報をLC−UC連携制御装置5から取得したり、端末装置1のUC利用条件をLC−UC連携制御装置5から取得したりすることができる。また、ネットワーク通信部314は、当該端末装置1が通信を行う相手となる共有周波数帯基地局装置2の識別情報を取得してもよい。
【0086】
シナリオ1とシナリオ2との場合には、端末装置1における、送信待機状態にあるユーザデータの情報、上り回線の通信で用いるアプリケーションの情報、又は、上り回線で要求するスループット情報について、LCでの通信により取得する。取得された端末装置1の上り回線に関する情報は、ネットワーク通信部314を介してLC−UC連携制御装置5へ出力される。
LC−UC連携制御装置5が端末装置1をアクセス権取得装置としてUCの上り回線を開始することを決定すると、UC制御信号生成部317は、前述のように当該端末装置1の識別情報を取得し、指定された識別情報の端末装置1に対し、UCにおいて端末装置1がアクセス権を取得する上り回線の通信を行うことを通知するUC通信開始信号を生成する。このUC通信開始信号には、UCを用いて無線通信を行う端末装置1及び共有周波数帯基地局装置2それぞれの識別情報、アクセス方法、アクセスタイミング、アクセス時間帯域、通信ビット数、及び、UCの利用を終了する終了条件のうち、少なくとも一つを示すUC利用指定情報を含める。
UC制御信号生成部317は、生成したUC通信開始信号を、LC送信信号変調部303へ出力する。LC送信信号変調部303へ出力されたUC通信開始信号は、LC送受信部302から端末装置1へ送信される。
なお、LC−UC連携制御装置5は、アクセス権取得装置に決定した端末装置1の上り回線に関する情報を、当該端末装置1の識別情報とともに、UC制御信号生成部317へ出力してもよい。また、UC制御信号生成部317がUC通信開始信号を生成することに代えて、LC−UC連携制御装置5においてUC通信開始信号を生成して、ライセンスバンド基地局装置3へ出力するようにしてもよい。
【0087】
シナリオ2により上り回線においてマルチユーザ同時通信を行う場合、端末装置1のいずれかがアクセス権を取得したのち、それ以外の端末装置1も同時に送信を行うため、OFDMAの周波数割り当て、アクセス権取得後の送信のタイミング、符号の割り当て情報、同期ずれ補償情報、同時送信を行うように指定された端末装置1の識別情報、のうちいずれかを、UC通信開始信号に含めることもできる。
【0088】
シナリオ3及びシナリオ4の場合には、基地局制御部311は、共有周波数帯基地局装置2において、ユーザデータの送信準備が完了したと推定した上で、端末装置1へUC通信開始信号を送信する。選択された端末装置1宛のユーザデータが記憶部312に記憶されている場合、当該ユーザデータを共有周波数帯基地局装置2へネットワーク通信部314を介して出力する。
アクセス権取得装置を指定したUCの利用を制御する信号を生成するUC制御信号生成部317は、端末装置1でアクセス権を取得した下り回線通信を開始すること示す制御信号を生成する。UC制御信号生成部317は、生成した制御信号をLC送信信号変調部303へ出力する。
LC送信信号変調部303へ出力された制御信号は、UC通信開始信号としてLC送受信部302から端末装置1へ送信される。
【0089】
LC送信信号変調部303は、UC制御信号生成部317又は基地局制御部311から入力される情報を変調してLC送受信部302へ出力する。LC送受信部302へ出力された信号は、LC用アンテナ301を介して端末装置1へ送信される。
ライセンスバンド基地局装置3は、UCを用いた共有周波数帯基地局装置2と端末装置1との無線通信が正常終了又は異常終了したことを示すUC通信報告情報を受信した場合、受信したUC通信報告情報を、LC−UC連携制御装置5へ送信できる。
【0090】
図8は、第1の実施形態におけるシナリオ3とシナリオ4との場合のライセンスバンド基地局装置3が行う制御処理を示すフローチャートである。
LC−UC連携制御装置5において、ライセンスバンド基地局装置3の通信セルに所属する端末装置1のうち、アクセス権を制御しUC通信を行う端末装置1が決定されると、ライセンスバンド基地局装置3のネットワーク通信部314は、UCを用いる端末装置1の識別情報とUC利用条件とを、LC−UC連携制御装置5から取得する(ステップS401)。
ネットワーク通信部314は、端末装置1の識別情報とともに、当該端末装置1がUCを用いて通信をする共有周波数帯基地局装置2の識別情報を取得してもよい。
【0091】
UC制御信号生成部317は、ネットワーク通信部314が受信した識別情報により指定された端末装置1に対し、本発明によるUC通信を通知するUC通信開始信号を生成する(ステップS402)。
LC送信信号変調部303は、UC制御信号生成部317が生成したUC通信開始信号を変調してLC送受信部302へ出力する。LC送受信部302は、変調された制御信号に対してD/A変換、アップコンバート及び増幅を施して、LC用アンテナ301を介して端末装置1宛に送信する(ステップS403)。
ここで、UC通信開始信号は、ライセンスバンド基地局装置3の通信セル全体へ報知する報知信号として送信してもよいし、対応する端末装置1宛に個別に送信してもよい。
【0092】
本発明による通信の終了を端末装置1において判断する場合には、本発明によるUCの利用を終了する終了条件が満たされると端末装置1から送信されるUC通信報告情報を、ライセンスバンド基地局装置3が、LCを介して受信することもできる。即ち、ライセンスバンド基地局装置3において、UC情報抽出部316は、LC受信信号復号部304から入力される情報から、端末装置1からのUC通信報告情報を検出すると(ステップS404)、検出したUC通信報告情報を、ネットワーク通信部314を介してLC−UC連携制御装置5へ送信し(ステップS405)、制御処理を終了させる。
【0093】
図9は、第1の実施形態におけるシナリオ1とシナリオ2との場合の、ライセンスバンド基地局装置3が行う制御処理を示すフローチャートである。
ライセンスバンド基地局装置3は、通信セル内の端末装置1から、上り通信の送信情報、例えば、待機しているユーザデータに関する情報、上り回線で用いているアプリケーション情報、継続的に行っているこれまでの上り回線のスループット実績情報、上り回線で要求するスループット情報を収集し、LC−UC連携制御装置5へ出力する(S801)。
LC−UC連携制御装置5は、端末装置1がアクセス権を取得して上り回線の通信を行うことを決定すると、当該端末装置1の識別情報をライセンスバンド基地局装置3へ出力し、ライセンスバンド基地局装置3は、ネットワーク通信部314から識別情報を取得する(S802)。
【0094】
UC制御信号生成部317は、UC通信開始信号を生成し、指定された端末装置1に対し、UCにおいてアクセス権を取得し、上り回線通信を送信するように通知する(S803)。
UC通信が終了したことを端末装置1が判定する場合には、ライセンスバンド基地局装置3は、端末装置1から送信されるUC通信報告信号を受信し、UC通信に関する報告情報を取得し(S804)、LC−UC連携制御装置5へ出力する(S805)。
図8及び
図9の制御フローを行う前に、ライセンスバンド基地局装置3は、端末装置1に対し、共有周波数帯の無線環境情報や、共有周波数帯基地局装置2の情報や、周辺の端末装置1の識別情報を検出させ、それらの情報を収集することもできる。
【0095】
第1の実施形態のシナリオ3とシナリオ4では、端末装置1にアクセス権を取得させることで、下り回線のアクセス権取得装置を増加させることができる。下り回線のアクセス権の取得を複数の端末装置1に行わせることで、ランダムアクセス方式による無線システムにおいて、無線リソースの取得割合を改善することも期待できる。
【0096】
(第2の実施形態)
第2の実施形態における無線通信システムは、第1の実施形態における無線通信システムと同様に、複数の端末装置1、共有周波数帯基地局装置2、ライセンスバンド基地局装置3、ゲートウェイ4、及び、LC−UC連携制御装置5を備えている。また、各装置が備える構成要素も同じである。
第2の実施形態では、共有周波数帯のランダムアクセスにおいて、共有周波数帯基地局装置2がアクセス権を取得して上り回線又は下り回線の通信を行うことで、スループットの向上を図る。第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様に4つのシナリオを考えることができる。(ただし、アクセス権取得装置は共有周波数帯基地局装置2である。)
【0097】
[シナリオ1] アクセス権を取得して、UCにおける上り回線のシングルユーザ送信を端末装置1に行わせる。
[シナリオ2] アクセス権を取得して、UCにおける上り回線のマルチユーザ同時送信を複数の端末装置1に行わせる。
[シナリオ3] アクセス権を取得して、UCにおける下り回線のシングルユーザ送信を行う。
[シナリオ4] アクセス権を取得して、UCにおける下り回線のマルチユーザ同時送信を行う。
【0098】
UC通信開始信号は上記いずれのシナリオかを指定することができ、UCを用いて無線通信を行う端末装置1及び共有周波数帯基地局装置2それぞれの識別情報、アクセス方法、アクセスタイミング、アクセス時間帯域、通信ビット数、及び、UCの利用を終了する終了条件の、それぞれを示すUC利用指定情報を含めることができる。
第2の実施形態のシナリオ1及びシナリオ2では、第1の実施形態のシナリオ1及びシナリオ2と同様に、LC−UC連携制御装置5は、端末装置1に上り回線で送信するデータが存在するか否かを、ライセンスバンド基地局装置3からLCを通じて収集する。
共有周波数帯基地局装置2は、ポーリング信号などの上り回線送信要求信号を用いて上り回線の送信を端末装置1に要求することで、パケット衝突を回避させることができる。
第2の実施形態のシナリオ2の、上り回線マルチユーザ同時通信は、UCを用いずに、端末装置1の上り回線で送信待機しているユーザデータの情報や、上り回線へ要求するスループットの情報を取得できるため、効率的にマルチユーザ同時通信のオーバヘッドを削減し、UCで効率的に通信することができる。
シナリオ3とシナリオ4とは、共有周波数帯基地局装置2でアクセス権を取得して送信を行う従来のランダムアクセス方式の無線システムとなっている。
【0099】
第2の実施形態の端末装置1の制御フローについて、第1の実施形態の制御フローである
図3を参照して説明する。
図3に対応する、ステップS105のUCを用いた通信において、共有周波数帯基地局装置2がアクセス権を取得した通信を行うこととなる。この場合、ステップS103のLCを介したUC通信開始信号の受信は省くことができ、対応する信号を、共有周波数帯基地局装置2がネットワーク通信部214を介して取得してもよい。ステップS107のUC通信報告情報についても、端末装置1から送信せず、共有周波数帯基地局装置2で判定して、ネットワーク通信部214からLC−UC連携制御装置5へ出力することで、ステップS107を省くことができる。
【0100】
図10は、第2の実施形態におけるシナリオ1とシナリオ2とにおいて、共有周波数帯基地局装置2が行う上り回線の通信処理を示すフローチャートである。
第2の実施形態のシナリオ1とシナリオ2とは、第1の実施形態の
図6に対応し、ステップS301の前にステップが増える。
まず、共有周波数帯基地局装置2は、LC−UC連携制御装置5からUC通信開始信号を取得し、UCのアクセス権を取得した上で上り回線通信を行うことを通知される(S311)。そして、共有周波数帯基地局装置2は、上り回線のアクセス権の取得を行うため、ポーリング信号などの上り回線送信要求信号の送信を行う(S312)。
【0101】
共有周波数帯基地局装置2は、上り回線送信要求信号により、ユーザデータの送信を端末装置1に対して要求し、ユーザデータが端末装置1から送信され、受信信号からユーザデータを復号する(S301)。そして、共有周波数帯基地局装置2は、ACK又はBlock−ACKを送信し(S302)、ユーザデータを外部ネットワーク6へ出力する(S303)。
共有周波数帯基地局装置2は、ユーザデータ以外に、UCでの通信品質を報告するUC通信報告信号も、LC−UC連携制御装置5へ出力することができる。
【0102】
第2の実施形態のシナリオ3とシナリオ4とについては、第1の実施形態の
図5で示されるフローが対応するが、UC通信開始信号の受信(ステップS202)を必要としないため、通常のUCにおける下り回線通信と大きな違いはない。
【0103】
第2の実施形態のシナリオ1とシナリオ2との、ライセンスバンド基地局装置3の制御フローについては、第1の実施形態のフローチャート(
図9)に対応させて説明できる。
ライセンスバンド基地局装置3は、通信セル内の端末装置1から、上り通信の送信情報、例えば待機しているユーザデータに関する情報、上り回線で用いているアプリケーション情報、継続的に行っているこれまでの上り回線のスループット実績情報、上り回線で要求するスループット情報を収集し、LC−UC連携制御装置5へ出力する(S801)。
【0104】
LC−UC連携制御装置5は、共有周波数帯基地局装置2がアクセス権を取得して上り回線の通信を行うことを決定し、当該端末装置1の識別情報をライセンスバンド基地局装置3へ出力する。これにより、ライセンスバンド基地局装置3においてネットワーク通信部314が識別情報を取得する(S802)。
UC制御信号生成部317は、UC通信開始信号を生成し、指定された端末装置に対し、UCにおいてアクセス権の取得を行わず、通信相手となる共有周波数帯基地局装置2からの上り回線送信要求信号の受信を待機するように通知する(S803)。
UC通信が終了したことを端末装置1が判定する場合には、ライセンスバンド基地局装置3は、端末装置1から送信されるUC通信報告信号を受信し、UC通信に関する報告情報を取得し(S804)、LC−UC連携制御装置5へ出力する(S805)。
なお、UC通信報告信号を共有周波数帯基地局装置2がLC−UC連携制御装置5へ出力する場合には、S804とS805は省略できる。
【0105】
第2の実施形態のシナリオ3と4では、共有周波数帯基地局装置2がアクセス権を取得してユーザデータを送信するため、ライセンスバンド基地局装置3は、特別な制御フローを行わなくてもよい。
【0106】
第2の実施形態における無線通信システムは、端末装置1がアクセス権を取得して送信を行う通信において隠れ端末問題によるパケット衝突がスループットを低下させている場合(シナリオ1とシナリオ2に関連)と、共有周波数帯基地局装置2が上り回線マルチユーザ同時通信機能を有している場合(シナリオ2に関連)との二つの場合において、共有周波数帯の利用効率を向上させることが期待できる。
【0107】
図11は、第1及び第2の実施形態における、LC−UC連携制御装置5の構成を示すブロック図である。同図に示すように、LC−UC連携制御装置5は、LC通信管理部519、UC通信管理部520、経路評価部521、及び、ネットワーク通信部514を備える。ただし、LC通信管理部519は省くこともできる。
LC通信管理部519は、ライセンスバンド基地局装置3に接続する端末装置1の識別情報及び当該端末装置1のLCの通信品質、ライセンスバンド基地局装置3のバックホール容量、LCの無線リンク容量のひっ迫情報を取得する。LC通信管理部519は、取得した端末装置1の識別情報と通信品質を対応付けて記憶することもできる。
ネットワーク通信部514は、外部の装置、例えば共有周波数帯基地局装置2、ライセンスバンド基地局装置3、及びゲートウェイ4と、情報の送受信を行う。
【0108】
UC通信管理部520は、共有周波数帯基地局装置2と通信可能な端末装置1の識別情報、及び、当該端末装置1の共有周波数帯基地局装置2との間のUCの通信品質に関する情報を取得する。UC通信管理部520は、取得した端末装置1の識別情報と、通信品質などからなる端末装置1の周辺の無線環境情報とを対応付けて記憶する。
例えば、UC通信管理部520は、端末装置1と共有周波数帯基地局装置2との間のUCを用いた通信において、端末装置1がアクセス権を取得した場合と、共有周波数帯基地局装置2がアクセス権を取得した場合との各々について、異常を判定する条件について記憶することができる。
【0109】
経路評価部521は、無線通信システムにおける通信容量を増加させるために、アクセス権を指定したUC通信を行うか判定する。ここで、経路評価部521は、端末装置1同士が互いに検出可能かを判定し、互いに検出可能な関係となる端末装置1の組み合わせのみを、第1の実施形態によるUC通信を行う端末装置1として指定することもできる。
第1の実施形態による端末装置1がアクセス権を取得する通信は、特に、選択した端末装置1が受信して検出できるUCにおける無線信号が、通信相手である共有周波数帯基地局装置2では検出できない条件となる隠れ端末問題を解決するのに有効となる。このため、共有周波数帯基地局装置2から隠れ端末となる条件の無線装置が端末装置1においてパケット衝突などの問題を引き起こしているかどうかを、UC通信管理部520において評価することができる。
【0110】
隠れ端末問題が生じているかどうかは、厳密にその瞬間に生じているかを判定する必要はなく、端末装置1にアクセス権を取得させた場合にスループットが高くなる可能性が高い、などの経験から、本発明によるUC通信利用を用いることができる。
経験的に、本発明によるUC通信を利用するための方法としては、UC通信におけるアクセス権取得装置に対応して評価したスループットに関する情報(パケットエラーレートや、変調方式などからなる物理層のデータレートなど)と、時間、日付、曜日、更にイベントの情報を関連付けて記憶し、ビッグデータとして収集した情報群から機械学習などのアルゴリズムで、現時点で上り回線、下り回線、又は上下回線において端末装置1に対し高いスループットが期待できるアクセス権取得装置を決定することもできる。
どの端末装置1をUCで通信させるか、どのくらいの端末装置1をUCで通信させるかについては、LC通信管理部519において評価されるLCの通信情報を用いることができる。ライセンスバンド基地局装置3のバックホール回線(中継回線)や無線リソースがひっ迫していると判断できる場合、端末装置1の位置や機能により、LCによる無線通信品質が低いと判定できる場合に、UC通信を用いるように決定できる。
【0111】
UC利用を決定する方法として、LCの通信管理部で端末装置1の契約形態も記憶し、契約形態からUC利用を判断したり、あるいは、端末装置1から送信され、ライセンスバンド基地局装置3を介して受信されたUC通信要求信号を受信することで、UC通信を実行させるように決定したりすることもできる。
ネットワーク通信部514は、外部の装置、例えば共有周波数帯基地局装置2、ライセンスバンド基地局装置3、及びゲートウェイ4と、情報の送受信を行う。
【0112】
共有周波数帯基地局装置2が上り回線マルチユーザ同時通信機能を有している場合には、共有周波数帯基地局装置2が、LC−UC連携制御装置5に予めそのことを示す情報を通知することで、LC−UC連携制御装置5が経路選択をする際に活用できる。
上り回線マルチユーザ同時通信を行うことを目的として、端末装置1がUCを用いる場合、LC−UC連携制御装置5は、ユーザデータのアプリケーションのカテゴリ、端末装置1の位置、UCにおける端末装置1と共有周波数帯基地局装置2との間の伝搬ロスレベルに基づいて、マルチユーザ同時通信によりスループットの向上が見込める端末装置1の組み合わせを判定してもよい。
【0113】
次に、LC−UC連携制御装置5の動作について説明する。
図12は、第1及び第2の実施形態における、無線通信システムの構成例を示すブロック図である。
同図に示す構成例では、一つ又は複数の端末装置1−1〜1−Mと、一つ又は複数の共有周波数帯基地局装置2−1〜2−Nと、一つ又は複数のライセンスバンド基地局装置3−1〜3−Lとが存在している。即ち、同図においては、端末装置1、共有周波数帯基地局装置2、及び、ライセンスバンド基地局装置3それぞれの数は、M、N及びLである。M、N及びLは1以上の整数である。
【0114】
LC−UC連携制御装置5は、各ライセンスバンド基地局装置3から、配下の端末装置1−1〜1−Mの識別情報及びLC通信品質を収集する。また、LC−UC連携制御装置5は、端末装置1−1〜1−MのUC通信品質と、各端末装置1−1〜1−Mの通信相手となる共有周波数帯基地局装置2の識別情報とを収集する。
LC−UC連携制御装置5は、UC通信品質と通信相手となる共有周波数帯基地局装置2の識別情報を、ライセンスバンド基地局装置3を介して各端末装置1から取得してもよいし、各共有周波数帯基地局装置2−1〜2−Nに推定させて、共有周波数帯基地局装置2−1〜2−Nそれぞれから取得してもよい。
LC−UC連携制御装置5は、端末装置1−1〜1−Mそれぞれに共有周波数帯の利用状況を調査させ、その調査結果をライセンスバンド基地局装置3又は共有周波数帯基地局装置2を介して収集してもよい。
【0115】
また、端末装置1−1〜1−Mそれぞれは、共有周波数帯において他の端末装置1が送信する信号を受信できるか否かを示す、UC端末相互関係情報を生成するようにしてもよい。UCの利用では、端末装置1が送信権(Transmission Opportunity:TXOP)又は受信権(Reception Opportunity:RXOP)のアクセス権を取得する際におけるパケット衝突を防ぐことは、システム容量の増加に大きく寄与するためである。
UC端末相互関係情報は、GPS等による測位で得られる端末装置1の位置、複数の共有周波数帯基地局装置2との間の信号レベルから推定される端末装置1の位置、又は、端末装置1同士の間の信号レベルに基づいて生成されてもよい。
【0116】
端末装置1の位置に基づいてUC端末相互関係情報を生成する場合には、例えば、LC−UC連携制御装置5が端末装置1−1〜1−Mそれぞれから端末装置1の位置情報を取得して、UC端末相互関係情報を生成する。この場合には、これから用いるUCの周波数に対し、許容できる端末装置1間の距離が予め定義され、定義された距離の範囲内に位置する端末装置1同士は、互いのUCの信号を受信できるとみなす。すなわち、GPS等による測位で得られた端末装置1それぞれの位置情報をLC−UC連携制御装置5が収集し、収集した各端末装置1の位置情報に基づいて、互いの信号を検出できる端末装置1の組み合わせと、互いの信号を検出できない端末装置1の組み合わせを推定する。
なお、LC−UC連携制御装置5は、端末装置1間の相対的な位置を端末装置1間のLC又はUCのチャネル情報に基づいて算出し、互いの信号を検出できる端末装置1の組み合わせと、互いの信号を検出できない端末装置1の組み合わせを推定してもよい。
【0117】
また、端末装置1−1〜1−Mそれぞれが、UCにおける無線信号の測定を行い、受信したUCにおける信号を復号して送信元の識別情報を取得することにより、UC端末相互関係情報を生成してもよい。
また、LC−UC連携制御装置5が複数の端末装置1を指定し、指定した複数の端末装置1にUCを利用した通信を行わせた結果に基づいて、端末装置1にUC端末相互関係情報を生成させるようにしてもよい。
【0118】
また、共有周波数帯基地局装置2は、自装置とUCを用いた無線通信をしている端末装置1の上り回線において生じるパケット衝突の頻度に基づいて、当該端末装置1の信号を検出できない他の端末装置1(隠れ端末)が存在すると判定してもよい。この場合、共有周波数帯基地局装置2は、これらの、互いの信号を検出できない端末装置1の組み合わせをLC−UC連携制御装置5へ通知するようにしてもよい。
【0119】
LC−UC連携制御装置5は、取得したUC端末相互関係情報に基づいて、共有周波数帯基地局装置2とUCを用いた無線通信を行う端末装置1の組み合わせを決定してもよい。このとき、LC−UC連携制御装置5は、互いの信号を検出できない端末装置1の組み合わせを除外する。これにより、アクセス権を取得する際におけるパケット衝突の発生を低減させることができ、共有周波数帯における無線通信の利用効率を向上させることができる。
【0120】
図13は、第1及び第2の実施形態における、無線通信システムの異なる構成例を示す図である。同図に示す構成例は、ライセンスバンド基地局装置3と共有周波数帯基地局装置2とが、異なるゲートウェイ4に接続される構成になっている。このような構成であっても、LCを用いてUCの利用を制御することができる。
即ち、
図13に示す構成例では、無線通信システムは、ゲートウェイ4−1及び4−2と、ライセンスバンド基地局装置3と、LC−UC連携制御装置5と、共有周波数帯基地局装置2と、端末装置1とを備える。ライセンスバンド基地局装置3及びLC−UC連携制御装置5は、ゲートウェイ4−1に接続されている。一方、共有周波数帯基地局装置2は、ゲートウェイ4−2に接続されている。ゲートウェイ4−1とゲートウェイ4−2とは、外部ネットワーク6を介して通信可能になっている。
【0121】
端末装置1のUCに関する情報は、ライセンスバンド基地局装置3を介してLC−UC連携制御装置5へ送信される。
図1及び
図12に示した構成例と異なり、
図13に示す構成例では、外部ネットワーク6からライセンスバンド基地局装置3への接続と、外部ネットワーク6から共有周波数帯基地局装置2への接続との間では、応答速度にずれが生じ、制御に大きな遅延が生じる場合がある。このため、遅延に対する制約が厳しくないユーザデータの伝送について、アクセス制御の連携を適用しやすい。この場合、LC−UC連携制御装置5は、遅延時間要求がない、又は、遅延時間要求の緩いユーザデータの伝送に対して、本発明によるUCの利用を決定できる。
【0122】
図11に戻り、LC−UC連携制御装置5において、LC通信管理部519は、ネットワーク通信部514を介して、各端末装置1の識別情報及びLC通信品質を取得する。LC通信管理部519が取得するLC通信品質は、LCを介してライセンスバンド基地局装置3に接続する端末装置1のものである。
このとき、LC通信管理部519は、上り回線及び下り回線のトラヒック量の情報をライセンスバンド基地局装置3又はゲートウェイ4から取得してもよい。また、LC通信管理部519は、上り回線及び下り回線のバックホールのトラヒック量や、無線リソースの活用度を用いるようにしてもよい。更に、LC通信管理部519は、統計情報として、曜日や時間帯などに対する規則性から、LCのトラヒック量、LCでアクティブな端末装置1の数、端末装置1のモビリティ、端末装置1のアプリケーションを推定してもよい。
【0123】
UC通信管理部520は、共有周波数帯基地局装置2と通信可能な端末装置1の識別情報と、当該端末装置1の通信品質とを収集して記憶する。UC通信管理部520は、端末装置1の識別情報及び通信品質を、ライセンスバンド基地局装置3又は共有周波数帯基地局装置2から、ネットワーク通信部514を介して取得する。
UC通信管理部520がライセンスバンド基地局装置3から端末装置1の識別情報及び通信品質を取得する場合、ライセンスバンド基地局装置3において、LCの通信で端末装置1から収集したUC情報は、UC情報抽出部316で抽出される。UC情報抽出部316で抽出されたUC情報は、ネットワーク通信部314を介して、LC−UC連携制御装置5へ送信される。
一方、UC通信管理部520が共有周波数帯基地局装置2から端末装置1の識別情報及び通信品質を取得する場合、UC通信管理部520は、端末装置1で生成されたUC情報を共有周波数帯基地局装置2を介して取得するか、あるいは、共有周波数帯基地局装置2が取得した端末装置1の識別情報と共有周波数帯基地局装置2が推定した当該端末装置1の通信品質とを含む基地局UC情報を取得するか、又はその両方のUCに関する情報を取得する。
また、UC通信管理部520は、収集したUCの無線環境の情報における曜日や時間帯などに対する規則性から、UCのトラヒック量、UCでアクティブな端末装置1の数、端末装置1のモビリティ、端末装置1のアプリケーションを推定してもよい。
【0124】
また、UC通信管理部520は、端末装置1同士がUCにおいて互いの信号を検出できるか否かを示すUC端末相互関係情報、UCで行われた通信結果を示すUC通信報告情報を取得してもよい。UC通信管理部520は、端末装置1ごとのUC通信報告情報に基づいて、UCを用いた無線通信によるユーザデータ伝送の失敗が予め定めた頻度を超えて生じているか否かを判定することもできる。
ここで、パケットロスとアクセス権取得装置とを関連付け、ユーザデータ伝送の失敗が予め定めた頻度を超えて生じている場合、UC通信管理部520は、当該装置がアクセス権を取得した通信に異常が発生しているとみなして、ユーザデータ伝送の失敗が生じているアクセス権取得装置に(次の通信に関する)アクセス権を取得させないように、アクセス権取得装置を決定する。
【0125】
共有周波数帯基地局装置2と端末装置1のいずれについても、アクセス権を取得した通信が異常と判定された場合、UC通信管理部520は、UC利用の停止を決定し、ユーザデータ伝送の失敗が生じている端末装置1に対して、UC利用の停止を通知する制御信号を送信することもできる。
また、UC通信管理部520は、ユーザデータの伝送をLCからUCに切り替えることを要求するLCアシスト要求信号を共有周波数帯基地局装置2から取得したり、UC通信要求信号をライセンスバンド基地局装置3から取得したりした場合、取得したLCアシスト要求信号又はUC通信要求信号を、経路評価部521へ出力する。
【0126】
経路評価部521は、無線通信システムにおけるシステム容量を増大させるために、UCを用いてユーザデータを伝送させる端末装置1とUC利用条件とを決定してもよい。経路評価部521は、以下の1.〜7.の場合に、ユーザデータの伝送にアクセス権を指定したUCを利用することを決定するようにできる。
経路評価部521は、ユーザデータの伝送にアクセス権の取得を指定してUCを利用することを決定すると、UCを用いてアクセス権を取得した送信又は受信、又は、アクセス権を取得せずに送信又は受信を行うことを端末装置1に通知するUC通信開始信号を生成する。
経路評価部521は、ネットワーク通信部514を介して、生成したUC通信開始信号を、ライセンスバンド基地局装置3へ送信する。ライセンスバンド基地局装置3は、LC−UC連携制御装置5からUC通信開始信号を受信すると、変調や周波数変換などの処理を施して、当該信号を端末装置1へ送信する。UC通信開始信号には、UCを利用する端末装置1の識別情報と、当該端末装置1とUCを用いた無線通信をする共有周波数帯基地局装置2の識別情報とを含むことができる。
【0127】
1.端末装置1ごとに、LC通信品質とアクセス権を指定したUC通信品質とを比較して、UCを用いることでスループットを増大させることができる端末装置1が存在する場合。
2.LCの伝送で用いているバックホール又は無線区間回線がボトルネックになり、LCにおけるユーザデータの伝送に遅延又はスループットの低下が生じうる場合。
3.共有周波数帯基地局装置2からLCアシスト要求信号を取得した場合。
4.端末装置1からUC通信要求信号を取得した場合。
5.アクセス権を指定してUC通信を行う端末装置1を選択することで、マルチユーザ同時通信の効果が高くなると判断した場合。
6.従来のランダムアクセス方式によるUC利用を行っていた端末装置1について、アクセス権を指定することでスループットの向上が期待できると判断した場合。
7.端末装置1にアクセス権を取得させることにより、下り回線のアクセス権取得装置の数を増大させ、共有周波数帯基地局装置2から送信されるトラヒック量が増大することが期待できると判断した場合。
【0128】
上記1.及び2.の場合は、UCを利用する端末装置1の組み合わせとその条件を、経路評価部521が決定する。
また、上記3.及び4.の場合は、指定された端末装置1のUC利用を許可するか否かの判定を、経路評価部521が行う。この判定は、共有周波数帯基地局装置2又は端末装置1がアクセス権を取得する上り回線又は下り回線の通信で、異常や低スループットが報告されていないアクセス権取得装置が存在するかどうかで判定することができる。
この場合、経路評価部521は、LCアシスト要求信号を送信した共有周波数帯基地局装置2と、UCを用いた無線通信が可能な端末装置1のうちUCを用いた無線通信を行っていない端末装置1とがUCを用いた無線通信を行うと、スループットが増大するか否かを判定することもできる。経路評価部521は、スループットが増大する場合にUCの利用を許可し、スループットが増大しない場合にUCの利用を許可しないこともできる。
【0129】
また、上記4.の場合において、経路評価部521は、UC通信要求信号を送信した端末装置1と、対象となる共有周波数帯基地局装置2との間の、アクセス権取得装置に対応する通信の品質の情報から、当該端末装置1又は共有周波数帯基地局装置2がアクセス権をUCで取得した場合の通信において異常や低スループットが報告さ・BR>黷ス情報などを参照し、適切なアクセス権取得装置を指定した上で、UCを当該端末装置1に利用させる。
アクセス権取得装置に基づく通信品質情報については、判断を行う際の曜日・日付・時間や、端末装置1の種類や、ユーザの行動予測などの特定の情報を用いて、アクセス権取得装置に対する通信品質異常の判定に対する精度を高めることもできる。
【0130】
また、対象となる共有周波数帯基地局装置2が複数存在する場合、経路評価部521は、複数の共有周波数帯基地局装置2それぞれに対し、アクセス権取得装置に対する通信品質の情報を用い、通信相手となる共有周波数帯基地局装置2の指定、及び、アクセス権取得装置の指定を行うこともできる。
更に、UC通信要求信号を送信した端末装置1とUCを用いた無線通信を行う共有周波数帯基地局装置2が、既にアクセス権取得装置を指定したUCによる無線通信をしている他の端末装置1から収集したUC情報に基づいて、当該判定を行うこともできる。
例えば、他の端末装置1が信号を検出可能な端末装置1のグループに、UC通信要求信号を送信した端末装置1が含まれていない場合には、隠れ端末問題によるパケット衝突が発生する可能性が高いため、経路評価部521は、UCの利用を許可しないこともできる。一方、他の端末装置1が信号を検出可能な端末装置1のグループに、UC通信要求信号を送信した端末装置1が含まれている場合には、隠れ端末問題によるパケット衝突が発生する可能性が低いため、経路評価部521は、UCの利用を許可してもよい。
【0131】
また、上記6.の場合には、従来のランダムアクセス方式により、共有周波数帯基地局装置2と継続的に通信を行い、アクセス権取得装置に対する通信品質に関する情報も測定し、本発明によるアクセス権の指定を行うことでスループットが向上できると判定できたときに、経路評価部521は、本発明によるアクセス権を取得する装置を指定してUC通信を開始させることもできる。
また、上記7.の場合は、通常下り回線において、アクセス権取得装置は共有周波数帯基地局装置2の1台のみであるが、経路評価部521は、共有周波数帯基地局装置2と通信を行う複数の端末装置1に対し、下り回線のアクセス権の取得(下り回線送信要求信号の送信)を行わせる。これにより、アクセス権取得装置の数を増やし、同じUCを共有する他の無線装置(基地局でも端末装置でも良い)に対し、無線リソースを確保できる確率を増加させることができる。
【0132】
また、経路評価部521は、UCの上り回線の空間多重によるマルチユーザ同時送信の利得とUCの下り回線における空間多重によるマルチユーザ同時送信の利得とに基づいて端末装置1のスループットを評価し、UCを用いた無線通信を行う端末装置1の組み合わせを選択するようにしてもよい。
【0133】
更に、経路評価部521は、端末装置1ごとに、その通信についてのアクセス権取得装置を決定することもできる。
例えば、ライセンスバンド基地局装置3が通信している端末装置1が3台あり、端末装置1−1、1−2、及び1−3であったとして、端末装置1−1のUC通信では上りも下りも端末装置1−1がアクセス権を取得し、端末装置1−2のUC通信では従来のランダムアクセス方式により送信したい方がアクセス権を取得(送信したい端末装置1が送信)し、端末装置1−3のUC通信では上りも下りも共有周波数帯基地局装置2がアクセス権を取得するように制御できる。
このように端末装置1ごとにアクセス権取得装置を指定することで、隠れ端末問題によるスループット低下を防ぎつつ、UCを利用できる。更に、もう一つの効果として、下り回線通信において、アクセス権取得装置を増やし、共有周波数帯基地局装置2から送信するトラヒック量を増加させることもできる。
【0134】
図14は、第1の実施形態のシナリオ1における、上り回線のMACシーケンスの一例を示す図である。
ライセンスバンド基地局装置3は、LCを利用して端末装置1−1及び1−2へ、上り回線においてUCを用いた送信を行うことを要求するUC通信通知信号(U)を送信する。UC通信開始信号(U)は、LC−UC連携制御装置5から受信する要求情報に基づく信号である。
端末装置1−1及び1−2は、LCでUC通信開始信号(U)を受信したとき、他の無線装置(基地局でも端末装置でも良い)がUCで通信をしているため待機する。
他の無線装置の通信が終了すると、端末装置1−1及び1−2は、ランダムアクセス方式に従い、ユーザデータの送信を行う。例えば端末装置1−1は、無線LANシステムのCSMA/CAに基づいて、AIFS(Arbitration Inter Frame Space:フレームの送信間隔)に対応する時間待機して、ランダム時間(Backoff)の後に送信権を獲得している。
端末装置1−1が送信を終えて共有周波数帯基地局装置2がACKを送信すると、端末装置1−2もUCを用いた上り回線による通信を行う。
【0135】
LC−UC連携制御装置5が、UCを用いた上り回線の通信を行う端末装置1を選択することにより、共有周波数帯基地局装置2とUCを用いて通信を行う端末装置1の数を制限することができ、ランダムアクセス方式におけるパケット衝突によるコンテンションウィンドウサイズの上昇と、それに伴うMAC効率の低下を防ぐことができる。
また、LC−UC連携制御装置5は、UCを用いた上り回線の通信を行う端末装置1を複数選択するときに、選択する端末装置1が互いの信号を検出できる端末装置1を選択する。これにより、選択される複数の端末装置1が互いに隠れ端末になることを防ぎ、共有周波数帯基地局装置2がユーザデータを受信する際のパケット衝突を削減することができる。
【0136】
図15は、第1の実施形態のシナリオ2における、マルチユーザ上り回線のMACシーケンスの一例を示す図である。
ライセンスバンド基地局装置3は、LCを利用して端末装置1−1及び1−2へ、UC通信開始信号(U)を送信する。このUC通信開始信号には、UCを用いた上り回線においてマルチユーザ通信を行う端末装置1−1及び1−2の識別情報と、上り回線においてマルチユーザ通信を行う際の同期情報とを含めてもよい。
【0137】
なお、共有周波数帯基地局装置2が、複数の端末装置からの非同期な受信信号を分離復号できる場合には、これらの上り回線用の付加情報を省くことができる。この場合には、LC−UC連携制御装置5は、互いの信号を検出できない端末装置1を組み合わせ、組み合わせた端末装置1にUCを用いたユーザデータの伝送を行わせてもよい。このように端末装置1を組み合わせることにより、各端末装置1に上り回線におけるマルチユーザ通信を認識させることなく、送信を行わせることができる。
【0138】
図15に示す例では、端末装置1−1及び1−2は、UC通信開始信号(U)を受信したとき、他の無線装置がUCで通信をしているため待機する。他の無線装置の通信が終了すると、端末装置1−1及び1−2は、ランダムアクセス方式に従い、ユーザデータの送信を行う。
マルチユーザ送信では、端末装置1−1及び1−2が同期して信号を送信する必要があるため、端末装置1−1及び1−2が、上り回線送信要求信号(I)をUCで送信する。具体的には、端末装置1−1は、AIFSに対応する時間待機し、ランダム時間(Backoff)の後に、上り回線送信要求信号(I)をUCで送信する。端末装置1−1が送信する上り回線送信要求信号には、UC通信開始信号(U)で通知された他の端末装置1−2の識別情報が含まれていてもよい。他の端末装置1の識別情報を含めることにより、マルチユーザ送信を行う端末装置1が、上り回線送信要求信号(I)を送信する順番を指定することができる。
【0139】
端末装置1−2は、端末装置1−1が送信した上り回線送信要求信号(I)を検出したタイミング、又は、受信した上り回線送信要求信号(I)に含まれる上り回線送信要求信号を送信するタイミングに従い、上り回線送信要求信号(I)を送信する。
なお、端末装置1−2は、上り回線送信要求信号(I)の送信を省き、端末装置1−1が送信する上り回線送信要求信号(I)によってユーザデータを送信するタイミングを端末装置1−1と合わせ、上り回線においてユーザデータを送信してもよい。
また、端末装置1−1及び1−2は、端末装置1−1が送信する上り回線送信要求信号(I)に対して共有周波数帯基地局装置2から返信されるCTSに基づいて、タイミング同期又は周波数同期のいずれか、あるいは両方を行い、上り回線におけるユーザデータを送信するタイミングを同期させてもよい。
端末装置1−1及び1−2が同期してユーザデータ(D)の送信を開始し、端末装置1−1及び1−2の送信が終わると、共有周波数帯基地局装置2が端末装置1−1及び1−2へ、ACK又はBlock−ACK(A)を送信する。
【0140】
LC−UC連携制御装置5は、UC通信開始信号(U)で送信権を取得する端末装置1を指定することができる。端末装置1−1及び1−2が独立にランダムアクセスにより送信権を取得するように動作させることで、送信権の取得確率を増加させることができる。
また、LC−UC連携制御装置5は、UCを用いた上り回線でユーザデータを送信する端末装置1を選択するとともに、マルチユーザ通信を行うことで得られる利得も考慮することができる。空間多重によるマルチユーザMIMO送信は同時に送信する端末装置1の数に比例してスループットの増加が期待できるため、マルチユーザMIMOをUCの上り回線に適用することにより、システム容量の増加を図ることができる。
【0141】
図16は、第1の実施形態のシナリオ3における、下り回線のMACシーケンスの一例を示す図である。
ライセンスバンド基地局装置3は、LCを利用して端末装置1−1及び1−2へ、下り回線においてUCを用いた受信を行うことを要求するUC通信開始信号(U)を送信する。UC通信開始信号(U)は、LC−UC連携制御装置5から受信する要求情報に基づく信号である。
端末装置1−1及び1−2は、LCでUC通信開始信号(U)を受信したとき、他の無線装置がUCで通信をしているため待機する。
他の無線装置の通信が終了すると、端末装置1−1は、ランダムアクセス方式のルールに従い、下り回線の受信権を要求する下り回線送信要求信号(I)を送信する。下り回線送信要求信号(I)は、当該信号を受信した周辺の無線装置にNAVの設定を要求する情報を含み、当該信号を送信した端末装置1に受信権を獲得させる役割を有する。
ここでは、端末装置1−1は、無線LANシステムのCSMA/CAに基づいてAIFSに対応する時間待機し、ランダム時間(Backoff)の後に、下り回線送信要求信号(I)を送信して受信権を獲得している。
【0142】
なお、下り回線送信要求信号(I)に含まれるNAV(送信禁止期間)は、LC−UC連携制御装置5において算出され、UC通信開始信号(U)でLC−UC連携制御装置5から端末装置1−1及び1−2に通知されてもよい。
LC−UC連携制御装置5においてNAVの時間長を算出する場合、経路評価部521は、端末装置1−1及び1−2宛に送信されるそれぞれのユーザデータのデータ量と、共有周波数帯基地局装置2と端末装置1−1及び1−2それぞれとの間におけるUC通信品質とに基づいて、ユーザデータの伝送に要する通信時間を算出する。経路評価部521は、算出した通信時間に基づいた送信禁止期間を示す情報をUC利用指定情報に含め、ライセンスバンド基地局装置3へ送信してもよい。UC利用指定情報に含まれるNAV(送信禁止期間)は、端末装置1へ通知される。
【0143】
共有周波数帯基地局装置2は、端末装置1−1が送信した下り回線送信要求信号(I)を受信すると、端末装置1−1宛のユーザデータ(D)を送信する。端末装置1−1は、共有周波数帯基地局装置2から自装置宛のユーザデータを正常に受信すると、ACK又はBlock−ACK(A)を共有周波数帯基地局装置2へ送信する。
端末装置1−2は、UCにおける端末装置1−1宛の送信が終了したことをACK又はBlock−ACK(A)で検出すると、下り回線送信要求信号(I)を送信して受信権を獲得する。
共有周波数帯基地局装置2は、端末装置1−2が送信した下り回線送信要求信号(I)を受信すると、端末装置1−2宛のユーザデータ(D)を送信する。端末装置1−2は、共有周波数帯基地局装置2から自装置宛のユーザデータを正常に受信すると、ACK又はBlock−ACK(A)を共有周波数帯基地局装置2へ送信する。
端末装置1−1及び1−2は、UC通信条件に示されるUC通信を終了する条件が満たされていない場合、ランダムアクセス方式のルールに従い、再び下り回線送信要求信号(I)を送信して受信権の獲得を行う。
【0144】
LCを利用してUC通信開始信号(U)を受信した端末装置1がNAV区間の設定を行うことにより、RTS/CTSを用いて共有周波数帯基地局装置2が送信権を取得する場合などに比べて、共有周波数帯における無線通信の利用効率を向上させることができる。
一般的なRTS/CTSを用いた通信では、送信側から隠れている無線装置が多い場合には、RTSを受信したタイミングでCTSを正常に返信できる確率は著しく低下する可能性がある。なお、第1の実施形態における無線通信システムでは、端末装置1が共有周波数帯基地局装置2よりも多くの他の無線装置を検出できる環境にあれば、隠れ端末によるスループットの低下を防ぐことができる。
【0145】
更に、上り回線の場合と同様に、LC−UC連携制御装置5が下り回線送信要求信号(I)を送信する端末装置1を選択するので、共有周波数帯基地局装置2とUCを用いて通信する端末装置1を制限することができ、ランダムアクセスにおけるパケット衝突によりコンテンションウィンドウサイズの上昇とそれに伴うMAC効率の低下とを防ぐことができる。
更に、LC−UC連携制御装置5が互いの信号を検出できる端末装置1を組み合わせてUCを用いた通信を行わせることで、上り回線において端末装置1同士が隠れ端末になり共有周波数帯基地局装置2におけるパケット衝突を防ぐことができる。
【0146】
図17は、第1の実施形態のシナリオ4における、マルチユーザ下り回線のMACシーケンスの一例を示す図である。
ライセンスバンド基地局装置3は、LCを利用して端末装置1−1及び1−2へ、UC通信開始信号(U)を送信する。この下り回線送信要求信号には、UCを用いた下り回線においてマルチユーザ通信を行う端末装置1−1及び1−2の識別情報と、下り回線においてマルチユーザ通信を行う際の同期情報とが含まれる。
【0147】
図17に示す例では、端末装置1−1及び1−2は、UC通信開始信号(U)を受信したとき、他の無線装置がUCで通信をしているため待機する。
他の無線装置の通信が終了すると、端末装置1−1及び1−2は、ランダムアクセス方式のルールに従い下り回線送信要求信号(I)の送信を試みる。ここでは、端末装置1−1が受信権を取得し、下り回線送信要求信号(I)を送信している。
空間多重によるマルチユーザ通信を下り回線で行う場合には、下り回線送信要求信号(I)から当該信号を送信した端末装置1と共有周波数帯基地局装置2との間のチャネル情報を取得することが重要となる。共有周波数帯基地局装置2は、TDD(Time Division Duplex)システムにおける上り回線と下り回線との対称性を利用して、下り回線送信要求信号から取得したチャネル情報を上り回線のチャネル情報にキャリブレーションして得ることができる。
【0148】
すなわち、空間多重によるマルチユーザ通信を下り回線で行う場合、マルチユーザ通信の対象となる端末装置1全てが下り回線送信要求信号(I)又はチャネル推定用のフレームを送信することで、チャネル情報の精度を高めることができる。
図17に示す例では、端末装置1−1が送信した下り回線送信要求信号(I)をトリガとして、一定時間後に端末装置1−2も下り回線送信要求信号(I)を送信している。これは、UC通信開始信号(U)に、他の端末装置1が送信した下り回線送信要求信号を受信した場合に一定時間後に下り回線送信要求信号を送信する指示を含めることで実現することができる。
また、端末装置1−1が次に下り回線送信要求信号を送信する端末装置1−2の識別情報を下り回線送信要求信号に含めて送信したり、各端末装置1が、UC通信開始信号(U)で指定された下り回線送信要求信号を送信する順番に基づいて下り回線送信要求信号を送信したりすることで実現してもよい。
【0149】
また、LCによる通信を利用し、端末装置1からライセンスバンド基地局装置3へ共有周波数帯基地局装置2に対応するチャネル情報を送信し、ライセンスバンド基地局装置3から当該チャネル情報を共有周波数帯基地局装置2へ出力してもよい。
更に、共有周波数帯基地局装置2が、端末装置1との間のチャネル情報を取得してから経過した時間が一定期間以下である場合に、下り回線送信要求信号の送信を省略してもよい。
また、共有周波数帯基地局装置2が、端末装置1−1から下り回線送信要求信号を受信した後に、端末装置1−2に対して下り回線送信要求信号の送信を要求する信号を送信し、端末装置1−2に下り回線送信要求信号を送信させてもよい。
下りマルチユーザ同時送信を行う前に、下り回線送信要求信号、又は、チャネル推定用のフレームを端末装置1から送信するために、初めの端末装置1が送信する下り回線送信要求信号が設定するNAVにおいて、マルチユーザ同時送信に含まれる他の端末装置1ではNAVを設定しないように指定することもできる。
又は、下り回線送信要求信号(I)において設定したNAVを、共有周波数帯基地局装置2から新たに送信する信号により、NAVの設定を更新することで、初めに下り回線送信要求信号(I)を送信した端末装置以外の端末装置も信号を送信できるように設定することもできる。
【0150】
共有周波数帯基地局装置2は、周波数分割多重又は符号分割多重を用いて複数の端末装置1へユーザデータの送信を行う場合、複数の端末装置1を代表する一つの端末装置1(
図17においては端末装置1−1)の下り回線送信要求信号を受信したタイミングで、下り回線送信要求信号で示される複数の端末装置1への送信をしてもよい。この場合には、
図17における端末装置1−2による下り回線送信要求信号の送信が省略される。
【0151】
また、LC−UC連携制御装置5がUCの下り回線を用いる端末装置1を選択する構成により、受信権を取得させる端末装置1を指定することができるし、端末装置1−1と端末装置1−2に対して独立にランダムアクセスにより受信権を取得させることで、受信権の取得確率を増加させることができる。
例えば、共有周波数帯基地局装置2が一つであり、かつ端末装置1が複数である場合であって、UCで無線通信を行う他の無線装置が多数存在する場合に、共有周波数帯基地局装置2が送信権の取得を試みたときに失敗する可能性が高くなってしまう。しかし、本実施形態の無線通信システムでは、端末装置1が受信権を取得する構成になっており、下り回線で受信を行う複数の端末装置1が受信権の取得を試みるため、受信権の取得に失敗する可能性を低くし、UCにおける通信を行える可能性を高くすることができる。しかしながら、受信権の取得を行う端末装置1の数を大きくすると、パケット衝突の発生や、互いに信号を検出できない端末装置1が組み合わされて隠れ端末を生じさせてしまうおそれがある。そのため、LC−UC連携制御装置5は、適切な数の端末装置1を選択する必要がある。
更に、ユーザデータのアプリケーションカテゴリや、物理層のスループットと、フレーム当たりのビット数で得られるフレーム長から、マルチユーザ通信の利得を最大化するように、UCを利用する端末装置1を選択するようにしてもよい。
特に、空間多重によるマルチユーザMIMO送信は、同時に送信する端末装置1の数に比例してスループットの増大が期待できるため、マルチユーザMIMO下り回線を成功させることにより、システム容量の増加を実現することも可能となる。
【0152】
図18は、第2の実施形態のシナリオ2の、上り回線におけるマルチユーザ通信のMACシーケンスの一例である。
ライセンスバンド基地局装置3は、LCを利用して端末装置1−1及び1−2へ、基地局トリガUC上り回線通信の実施を通知するUC通信開始信号(U)を送信する。このUC通信開始信号では、アクセス権の取得を共有周波数帯基地局装置2が行うことを示したり、端末装置自らアクセス権の取得を行わないように指定したり、上り回線においてこれからマルチユーザ通信を行う端末装置1の識別情報を含めることができる。
【0153】
図18に示す例では、UC通信開始信号(U)に共有周波数帯基地局装置2がアクセス権を取得するように通知する情報が含まれており、端末装置1−1及び1−2がこれを受信すると、共有周波数帯基地局装置2から上り回線送信要求を受信するまで待機する。
一方、共有周波数帯基地局装置2は、バックホールの通信により、LC−UC連携制御装置5から、端末装置1がUCでの上り回線送信を待機している通知をUC通信開始信号により受信する。共有周波数帯基地局装置2は、LC−UC連携制御装置5からの通知を受信すると、共有周波数帯におけるアクセス権の取得を開始する(
図18におけるTiming A)。
【0154】
図18では、CSMA/CAに基づく通信を示しているが、CSMA/CAにおけるListen Before Talkを行わずにアクセス権を取得してもよい。
共有周波数帯基地局装置2は、アクセス権を取得すると、端末装置1−1及び1−2へ、上り回線送信要求信号(I)を送信する。端末装置1−1及び1−2は、共有周波数帯基地局装置2から上り回線送信要求信号(I)を受信すると、UCでユーザデータ(D)を共有周波数帯基地局装置2へ送信する。
このように、共有周波数帯基地局装置2は、端末装置1における待機データが存在するか否かと待機データが存在する端末装置1とに関する情報を、UCを用いた通信を行わずに取得することができ、UCを用いた上り回線の通信を効率的に行うことができる。
また、
図18において、ライセンスバンド基地局装置3がUC通信開始信号(U)を送信するよりも前に、端末装置1からLCにおいてライセンスバンド基地局装置3へ、上り回線に関する情報(送信待機状態にあるユーザデータ量など)を送信し、LC−UC連携制御装置5により、本発明による上り回線通信を行うことを決定することで、効率的にUCにおける上り回線マルチユーザ同時送信が実現できる。
【0155】
本実施形態における無線通信システムの効果を示すために、計算機によるシミュレーションを行った(第1の実施形態のシナリオ3の例)。
図19は、シミュレーションの対象とした無線通信システムのモデルを示す図である。
同図に示すように、共有周波数帯基地局装置2から端末装置1への下り回線(以下、主リンクという)を評価対象とし、共有周波数帯基地局装置2が検出できない無線通信を行う無線装置91及び92が端末装置1の周辺に位置している。無線装置91がUCを用いて無線装置92に対する送信を続けている。
無線装置91から無線装置92への通信を他リンクという。シミュレーションでは、物理リンクのスループットを130[Mbit/s]とした。これは、空間多重数が2であり、変調方式が64QAMであり、符号化率が5/6であり、ガードインターバル(前後のデータ間の干渉を防ぐために挿入される時間)が800[μs]である場合に対応する。
【0156】
図20は、シミュレーションの対象とした三つのMACシーケンスを示す図である。一つ目は、第1の比較例としてのRTS/CTSを用いないフレーム送信である。二つ目は、第2の比較例としてのRTS/CTSを用いたフレーム送信である。三つ目は、本実施形態におけるフレーム送信であり、端末装置1が受信権を取得した後に共有周波数帯基地局装置2がフレーム送信を行う。
三つのMACシーケンスそれぞれにおいて、データシンボル長T
Dを1.520[ms]とした。一つのフレームを送信するのに必要な時間長をT
fとすると、第1の比較例、第2の比較例、及び、本実施形態それぞれにおけるT
D/T
fは、0.889、0.846、0.867となる。
【0157】
図21は、
図19に示したモデルにおけるシミュレーション結果を示すグラフである。
図21に示すシミュレーション結果は、主リンク(Link A)のトラヒックを130[Mbit/s]としたときに、無線装置91から無線装置92への無線通信(他リンク:Link C)におけるトラヒックを0[Mbit/s]から130[Mbit/s]まで変化させた際の、共有周波数帯基地局装置2から端末装置1へのUCによる下り回線である主リンクのスループットを示すグラフである。
図21のグラフにおいて、横軸は無線装置91から無線装置92への無線通信におけるトラヒックを示し、縦軸は主リンク(実線)及び他リンク(破線)のスループットを示す。なお、トラヒックが0から40までにおいては、上記三つのMACシーケンス間で他リンクのスループットに差はない(グラフ上で×、白丸、黒四角が重なっている)。
第1及び第2の比較例では、無線装置91と無線装置92との間のトラヒックの増加に応じて、主リンクにおけるスループットが低下している。無線装置91と無線装置92との間のトラヒックが130[Mbit/s]に達すると、第1の比較例の方法(Conv. access w/o RTS/CTS)ではスループットが得られず、第2の比較例の方法(Conv. access w/ RTS/CTS)においてもほとんどスループットが得られずに6.5[Mbit/s]程度になってしまっている。
【0158】
一方、本実施形態の方法(Proposed access)では、端末装置1がアクセス権を取得するので、隠れ端末問題は生じない。このため、他リンクのトラヒックが約60[Mbit/s]を超えると、他リンクと主リンクとのスループットが一致し、収束する。これは、他リンクと主リンクとが無線リソースをほぼ等しくシェアしていることを示す。
他リンクのトラヒックが130[Mbit/s]となるひっ迫した無線通信環境では、本実施形態の方法における主リンクのスループットが第2の比較例における主リンクのスループットに対して8.8倍のスループットになっている。
【0159】
本実施形態における無線通信システムの効果を示すために、異なる計算機によるシミュレーションを更に行った。第1の実施形態と第2の実施形態とを併用し、端末装置1ごとにアクセス権の取得装置を設定することで得られる効果を示す。
図22は、シミュレーションの対象とした無線通信システムのモデルを示す図である。同図に示すように、共有周波数帯基地局装置2から端末装置1−1、端末装置1−2、及び端末装置1−3それぞれへの下り回線(以下、主リンクという)を評価対象とした。
また、共有周波数帯基地局装置2、端末装置1−1、端末装置1−2、及び端末装置1−3とそれぞれほぼ同じ位置に存在する無線装置90、無線装置91、無線装置92、及び無線装置93を与え、無線装置90は共有周波数帯基地局装置2と同様に、無線装置91、無線装置92及び無線装置93それぞれへの下り回線の送信を行っているものとする。
【0160】
8台の無線装置は、例外を除いて他の全ての無線装置の信号を検出できるものとした。例外とは、端末装置1−1と無線装置91とは、端末装置1−3及び無線装置93の通信を検知できない、端末装置1−3と無線装置93とは、端末装置1−1及び無線装置91の通信を検知できない、の2つの条件である。
図22に示す構成では、両端の無線装置同士が互いの通信が聞こえない条件となっている。シミュレーションでは、物理リンクのスループットを130[Mbit/s]とした。これは、空間多重数が2であり、変調方式が64QAMであり、符号化率が5/6であり、ガードインターバルが800[μs]である場合に対応する。
【0161】
図23は、
図22に示すモデルにおいて、従来のランダムアクセス方式を用いた場合のシミュレーション結果を示すグラフである。
図23に示す結果は、従来のランダムアクセス方式により、無線装置90と共有周波数帯基地局装置2がアクセス権を取得して下り回線送信を行う場合の、無線装置90と共有周波数帯基地局装置2とそれぞれの3つの通信相手宛てに与えるトラヒック量を増やしたときの、各宛先において得られるスループットの結果を示している。従来のランダムアクセス方式では、トラヒック量の増大に対し、無線リソースがひっ迫すると、全ての端末装置1が等しくスループットを得ているのが確認できる。
【0162】
図24は、
図22に示すモデルにおいて第1及び第2の実施形態の無線通信システムにおける動作のシミュレーション結果を示すグラフである。
図24に示すシミュレーション結果では、共有周波数帯基地局装置2から端末装置1−1と端末装置1−2とへの下り回線通信におけるアクセス権取得装置を端末装置1−1及び端末装置1−2とし、共有周波数帯基地局装置2から端末装置1−3への下り回線におけるアクセス権取得装置を共有周波数帯基地局装置2としている。
他の無線システムである無線装置90〜無線装置93の通信では、アクセス権取得装置が無線装置90の一台であるのに対し、本発明の動作を行う無線通信システムでは端末装置1−1、端末装置1−2及び共有周波数帯基地局装置2の三台がアクセス権を取得しており、他の無線システムに対して高いスループットを得られていることが確認できる。
ここで、端末装置1−3のみ、アクセス権取得装置を共有周波数帯基地局装置2としたのは、端末装置1−1と端末装置1−3とが互いに隠れ端末条件となっており、両装置にアクセス権を取得させると、パケット衝突によるスループット低下が生じるおそれがあるためである。
このように、端末装置1にアクセス権を取得させることで、アクセス権取得装置の数を増やしたり、隠れ端末条件となる端末装置1を同時に選択しないように制御したりすることで、高いスループットを得ることができる。
【0163】
以上のように、上述した実施形態における無線通信システムは、第1の周波数帯のUCにおける通信の制御を、第1の基地局装置である共有周波数帯基地局装置2と第2の基地局装置であるライセンスバンド基地局装置3とを接続するバックホール回線及びライセンスバンド基地局装置3と端末装置1とにおける第2の周波数帯のLCを介して行うことにより、UCにおける通信を阻害せずに、共有周波数帯における無線通信の利用効率を向上させることができる。
【0164】
なお、上述した実施形態における無線通信システムでは、LC−UC連携制御装置5を独立した装置とする構成を説明したが、ライセンスバンド基地局装置3がLC−UC連携制御装置5を内部に備える構成としてもよい。この構成では、LC−UC連携制御装置5のネットワーク通信部514を省いてもよい。ネットワーク通信部514を省く場合には、LC通信管理部519、UC通信管理部520及び経路評価部521は、ライセンスバンド基地局装置3のネットワーク通信部314を介して通信を行う。
【0165】
上述した実施形態における端末装置1、共有周波数帯基地局装置2、ライセンスバンド基地局装置3、LC−UC連携制御装置5を、コンピュータで実現するようにしてもよい。
その場合、各装置が有する構成要素それぞれを実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
更に「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。
また上記プログラムは、前述した構成要素の一部を実現するためのものであってもよく、更に前述した構成要素をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。
【0166】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。