【実施例1】
【0011】
図1は、本実施例の検査装置を説明する図である。照明光学系101はレーザ光等の照明光を基板103へ照射し、基板103上に照明領域111を形成する。照明領域111から発生した散乱光108は、検出光学系109、110によって検出される。検出光学系110、109はそれぞれ、対物レンズ、結像レンズ、光電変換素子(光電子増倍管、1次元CCD、2次元CCD(TDI含む)、アバランシェホトダイオード等)を含む(検出光学系110についても同様)。検出光学系109、110からの電気信号は、A/D変換器等を経由して、処理部113に送られる。処理部113では、検出光学系109、110からの電気信号に対して閾値を使用した閾値処理を行う。電気信号が閾値以下であれば、その電気信号は虚報であると判断される。電気信号が閾値より大きければ、その電気信号は欠陥であると判断される。なお、閾値処理に際しては、検出光学系109、110からの電気信号を加算して、加算された信号に対して行われる場合もあるし、各電気信号に対して行われる場合もある。
【0012】
また、基板103は基板搭載装置104に搭載されている。基板搭載装置104は、基板103の裏面全面を吸着する裏面吸着方式である場合もあれば、基板103の裏面は吸着せずにその端部のみを把持する所謂エッジグリップ方式である場合もある。基板搭載装置104は、基板搭載装置104を回転させるスピンドル106上に搭載されている。スピンドル106が回転すると、基板103も回転することになる。スピンドル106はXY方向またはX方向に移動可能、かつZ方向に昇降可能なステージ107に搭載されている。基板103が、スピンドル106によって回転し、かつステージ107によって矢印115の方向に移動することになる。この動作によって、照明領域111は相対的に基板103上を螺旋状に走査することになる。この走査によって基板103全面の検査が行われる。なお、ステージの移動距離、スピンドルの回転角は処理部113に送信されている。よって、処理部113は検査結果をこの移動距離、回転角から得られた基板上の座標(極座標)と対応付けることができる。基板上の座標を対応付けられた検査結果は、表示部114にマップとして表示される。
【0013】
本実施例では、少なくとも基板103を覆うチャンバシステム105を有する。このチャンバシステム105の詳細について
図2を用いて説明する。
図2は、チャンバシステム105の詳細を説明する図である。チャンバシステム105は、少なくとも基板105を覆うチャンバ部と、気体等の媒体を供給する供給システムと、供給された媒体を排出する排出システムと、を有する。
【0014】
図2では、チャンバ部はチャンバ201として表現される。チャンバ201は少なくとも基板103を覆うものであり、その形は実質的な円筒型である。チャンバ201の上部には、開口211が形成されている。照明光学系101からの照明光102はこの開口211を通過して基板103へ供給されるし、散乱光108もこの開口211を経由して検出光学系109、110で検出されることになる。なお、開口211の代わりに、光学的に透明な素材でチャンバ201の上面を形成しても良い。
【0015】
なお、チャンバシステム105の大きさは要求される清浄度と基板103の大きさにより決定される場合もある。そのため、チャンバシステム105の要求サイズが大きい場合は、
図3に示すように、チャンバシステム105は照明光学系101、検出光学系109、110を内包する場合もある。さらに、チャンバシステム105には、開口211が形成されない場合もある。
【0016】
なお、チャンバ201の内面には、後述する気流205、206、207の摩擦を低減するためにガイドが設けられることがある。また、チャンバ201の内面には、後述する気流205、206、207の摩擦を低減するために突起等が配置され、実質的な凹凸が形成されることもある。もちろんチャンバ201の内面は実質的に平坦となる場合もある。
【0017】
次に、供給システムについて説明する。供給システムは、
図2、4では例えば気流供給部202、203、204として表現される。
図2では、気流供給部202、203、204はチャンバ201上面の開口211よりも外側に配置されている。
図4では、気流供給部202、203、204は、上面の開口部が無いため、
図2の場合よりも気流制御により好ましい位置に配置されている。
【0018】
気流供給部202、203、204は気体等の媒体をチャンバ201内部に供給するものである。供給する気体としては、空気が挙げられるし、窒素、アルゴン等の不活性ガスであっても良い。気流供給部202、203、204から供給された気体は、
図2、4では気流205、206、207として表現される。
【0019】
より詳細には、
図5に示すように、気流205、206、207はチャンバ201の側面に沿い内部空間を独立した異なる層流を形成しながら螺旋状に下降し、基板103の上方より外周部へ供給される。外周部については様々な表現ができるが、例えば、基板103の中心よりも基板103の端部に近い場所と表現することができる。なお、この際、気流205、206、207のそれぞれの経路は重複することがない、つまり乱流を発生することがなく、異なる層流を形成して、基板103に供給されることになる。また、気流205、206、207の向き(より具体的には、気流205、206、207を基板103上に投影した際の軌跡の向き)は、基板103が回転する向きと同じである。基板103の外周部に供給された気流205、206、207は、それぞれ気流排気部208、209、210によってチャンバ201の外へ排気されることになる。
【0020】
次に、排出システムについて説明する。排出システムは、
図2、4では、例えば、気流排気部208、209、210として表現される。気流排気部208、209、210は、基板103と基板搭載装置104との間に設けられた遮蔽板212上の異なる位置に配置されている。基板103の外周部に供給された気流205、206、207は、それぞれ気流排気部208、209、210によってチャンバ201の外へ排気されることになる。
【0021】
なお、遮蔽板212の表面には、排気される気流205、206、207の摩擦を低減するために突起等が配置され、実質的な凹凸が形成されることがある。もちろん遮蔽板212の表面は実質的に平坦となる場合もある。
【0022】
次に、チャンバ201内の圧力分布について説明する。チャンバ201内における、基板103の高さ方向と圧力との関係は
図2、4の一次関数f
1として表現される。つまり、気流205、206、207の供給によって、チャンバ201内の圧力では、チャンバ201の上方に行けばいくほど高く、チャンバ201の下部に行けば行くほど低い分布となっている。なお、この際、圧力の最小値Pminはチャンバ201の外部よりも高くなるよう制御される。このように設定することで、外部からの空気の流入を防ぐことができる。圧力分布については、1次関数f
1ではなく、1次関数よりも次数の高い関数f
2としても良い。
【0023】
なお、チャンバ201の形状としては、他の形状も考えられる。
図6に示すように、チャンバ201の下面301の面積と上面302との面積は同一でなくとも良い。つまり、チャンバ201の形状は実質的な円錐型となっても良い。チャンバ201の形状が実質的な円錐型である場合、チャンバの側面は基板103の法線303に対して傾斜することになる。チャンバ201の形状を実質的な円錐型とすると、基板103の外周部に供給される際の気流205、206、207の流速を向上させることができる。なお、
図6のチャンバ201についても開口211は形成されない場合もある。
【0024】
次に、照明光102とチャンバ201の高さH(他の表現としては、基板103からチャンバ201の上部までの長さ)との関係について説明する。
図1に示すように照明光102はある入射角をもって基板103に斜入射する。この際、入射角は実質的にブリュースター角であることが望ましい場合もある。よって、チャンバ201の高さHは照明光102を基板103へブリュースター角で照明できる高さであることが望ましい場合もある。さらに、ブリュースター角は入射側の屈折率と透過側の屈折率との関数である。そして、本実施例では、前述したように供給する気体としては空気以外にも、窒素、アルゴン等の不活性ガスが考えられる。また、検査対象である基板103は所謂鏡面ウェハである場合もあるし、鏡面ウェハ上に何らかの膜が形成されている場合もある。このことは、検査の過程で入射側の屈折率、及び透過側の屈折率のうち少なくとも1つが変化すること、すなわちブリュースター角が変化することを意味している。そこで本実施例は、基板103とチャンバ201間の相対的な距離を変更する変更手段(例えばレールとブロックとの組み合わせ)を用いて、ブリュースター角の変化に応じて、チャンバ201の高さHを変更する構成としても良い。さらに、チャンバ201の高さの変化に応じて供給する気体の流量、流速のうち少なくとも1つを変更しても良い。
【0025】
次に、
図7を用いて、気流供給部202、及び気流排気部210の詳細を説明する。
図7(a)は気流供給部202、及び気流排気部210の詳細を説明する図であり、
図7(b)はチャンバ201のA-A’断面から気流供給部202、及び気流排気部210を説明する図である。基板103の上方から観察すると、気流供給部202、203、204は基板103を囲うように配置される。気流排気部210についても同様である。気流供給部202、203、204の吹き出し口は基板の円周方向を向いている。気流排気部210の排気口も同様である。
【0026】
気流供給部202についてより詳細に説明する。気流供給部202は、気体供給部401と、供給口であるダクト402と、を有する。気体供給部401は空気、窒素、アルゴン等を供給するガス源4011、気体の流量、流速のうち少なくとも1つを制御する制御部4012、気体の露点を制御する除湿部4013、気体から異物を除去するフィルタ部4014を有する。気体供給部401から流量、流速のうち少なくとも1つ、湿度、清浄度を制御された気体は、ダクト402を経由して気流205となって所定の角度でチャンバ201の内面へ供給されることになる。なお、ダクト402は効率良く気体をチャンバ201へ供給できるようチャンバ201の上面に対して傾斜して形成されており、その内部には気体を整流するためのガイド4021が形成されている。
【0027】
なお、チャンバ201上面の内側及び側面には、気流205の摩擦を低減するための突起403等や実質的な凹凸が形成されることもある。
【0028】
次に、気流排気部210の詳細について説明する。気流排気部210は、排気口であるダクト404と、ポンプ等の排気源405と、を有する。ダクト404は効率良く気流207を排気できるようチャンバ201の下面に対して傾斜して形成されている。またダクト404の内部には、気流207の摩擦を低減するよう突起4041が複数配置されている。つまり、ダクト404の内部には実質的な凹凸が存在するということである。気流207はダクト404を経由して排気源405によって所定の角度で排気されることになる。なお、この気流排気部210が排気する流量、流速は制御部4051によって任意に変更可能である。
図4では、気流供給部202、気流排気部210について説明したが、気流供給部203、204、気流排気部208、209についても、その構造は同様である。また、気流供給部202、気流排気部210のうち少なくとも1つが制御する流量、流速のうち少なくとも1つは、基板103の大きさ(より具体的には、口径)、基板の回転数のうち少なくとも1つに応じて変更されることもある。また、気流供給部202は、ファンフィルタユニットとしても良い。
【0029】
次に、
図8を用いて本実施例のフローチャートを説明する。まず、処理部113の制御によって、ステージ107が降下する。そして、検査装置前段のプリアライメント装置からプリアライメントされた基板103は基板搭載装置104上に搭載される。基板搭載装置104上に基板103が搭載された後、ステージ107は上昇し、基板103はチャンバ201内に格納される(ステップ501)。なお、基板103のチャンバ201内のステージ107への供給は搬送機構の上下動作(ステージ107のZ位置は固定)により行ってもよい。
【0030】
次に、処理部113の制御によって、チャンバシステム105は所定の条件(例えば、基板103の有無、基板103の寸法、基板103の回転数)に基づき、気流の流量、流速を所定の流量、流速として、基板103の上方から外周部へ供給する(ステップ502)。
【0031】
次に、処理部113が所定の流量、流速となったのを確認した後、スピンドル106によって、基板103は回転する(ステップ503)。
【0032】
処理部113は基板103の回転数が所定の回転数(例えば、数千rpm以上)となったのを確認したら(ステップ504)、検査は行われる(ステップ505)。なお、基板103の回転数が所定の回転数とならなければ、基板103の回転数と連動して気流の供給、及び制御が行われる(ステップ508)。
【0033】
基板103の全面の検査を終了したのち、スピンドル106が基板103の回転数を落とし始め、最終的には基板の回転を停止させる(ステップ506)。
【0034】
この後、気流の供給は基板供給時の流量、流速に戻される(ステップ507)。スピンドル106の回転上昇時と下降時の流量、流速の制御は異なる場合もある。次の基板についても、ステップ501からステップ507の動作が繰り返される。
【0035】
本実施例によれば、基板103が例えば数千rpmの高速回転した際に、基板103の外周部で発生する不所望な気流、及び不所望な気流に起因する異物の基板103の付着は、気流205、206、207が基板103の上方より外周部に供給され、最終的に基板103の外部に排気されることで効果的に抑制されることになる。
【実施例2】
【0036】
次に、実施例2について説明する。実施例1では、チャンバ201の上部から気流205、206、207を供給した。本実施例では、チャンバ201の側面から気流を供給し、チャンバ201の側面から供給された気流を排気することを特徴とする。
【0037】
より具体的に、
図9を用いて本実施例を説明する。以降は、主に実施例1と異なる部分について説明する。
図9(a)は本実施例のチャンバ201を説明する図、
図9(b)は本実施例のチャンバ201をZ軸上方から観察した場合、気流供給部603、604、605の配置を説明する図、
図9(b)は本実施例のチャンバ201をZ軸上方から観察した場合、気流供給部606、607、608の配置を説明する図である。本実施例のチャンバ201は実質的に円筒型であり、その上面には開口602が形成されている。開口602からはファンフィルタユニット601によって、清浄化された気体が供給される。チャンバ201の側面には、気流供給部603、604、605が形成されている。気流供給部603、604、605が形成されている場所よりも低い場所(他の表現としてはより基板103に近い場所)には、気流排気部606、607、608が形成されている。
【0038】
図10に示すように、気流供給部603のダクト6031はチャンバ201の断面に平行な面609に対して角度θ1だけ傾斜して形成されており、角度θ1で気流を供給する。また気流排気部606のダクト6061はチャンバ201の断面に平行な面610に対して角度θ2だけ傾斜して形成されており、角度θ2で供給された気流を排気する。気流供給部604、605、気流排気部607、608についても同様である。本実施例でも実施例1と同様の効果を奏することが可能となる。
【0039】
以上、実施例を説明したが、本発明は実施例に限定されない。例えば、
図11に示すように、照明光102はチャンバ201の側壁に設けた開口801から基板103へ照明するようにしても良い。また、気流供給部、気流排気部の数は実施例より多くても、少なくても良い。また、本実施例のチャンバシステム105は、スピンコータ等、基板に液体と塗布するような装置に適用しても良い。