特許第6255191号(P6255191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6255191
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】検査装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20171218BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20171218BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   G01N21/956 A
   G01B11/24 K
   G01B11/24 F
   H01L21/66 J
【請求項の数】4
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-180622(P2013-180622)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-49116(P2015-49116A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100120569
【弁理士】
【氏名又は名称】大阿久 敦子
(72)【発明者】
【氏名】土屋 英雄
(72)【発明者】
【氏名】礒部 学
(72)【発明者】
【氏名】秋山 裕照
(72)【発明者】
【氏名】矢部 誠
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴文
【審査官】 小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−229230(JP,A)
【文献】 特開2011−039013(JP,A)
【文献】 特開2007−064843(JP,A)
【文献】 特開2011−145263(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/030825(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G01B 11/00−11/30
G03F 1/00−1/92
H01L 21/64−21/66
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが設けられた検査対象に光を照射して、前記パターンの光学画像を得る光学画像取得部と、
前記パターンの重要度情報が入力されるインターフェース部と、
前記光学画像を基準画像と比較し、これらの差異が、前記重要度情報を用いて決定された閾値を超えた場合に欠陥と判定する比較部とを有し、
前記重要度情報は、前記パターンを描画する描画装置に対して設定される前記描画装置の描画条件への補正処理の情報を少なくとも含み、
前記描画条件は、前記描画装置に用いられる荷電粒子ビームの照射量、照射回数および照射位置の少なくとも1つであることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
パターンが設けられた検査対象に光を照射して、前記パターンの光学画像を得る光学画像取得部と、
前記パターンの重要度情報が入力されるインターフェース部と、
前記光学画像を基準画像と比較し、これらの差異が、前記重要度情報を用いて決定された閾値を超えた場合に欠陥と判定する比較部とを有し、
前記重要度情報は、前記パターンを描画する描画装置のログ情報を少なくとも含み、
前記ログ情報は、前記描画装置の描画データに設定された前記描画装置の描画条件への補正処理の情報を含むことを特徴とする検査装置。
【請求項3】
描画装置によって描画されるパターンの欠陥を検査する検査方法において、
前記パターンの光学画像を得る工程と、
前記パターンの各部分の重要度情報を取得する工程と、
前記重要度情報を用いて前記欠陥を判定する閾値を決定する工程と、
前記光学画像を基準画像と比較し、これらの差異が、前記閾値を超えた場合に欠陥と判定する工程とを有し、
前記重要度情報は、前記パターンを描画する描画装置に対して設定される前記描画装置の描画条件への補正処理の情報を少なくとも含み、
前記描画条件は、前記描画装置に用いられる荷電粒子ビームの照射量、照射回数および照射位置の少なくとも1つであることを特徴とする検査方法。
【請求項4】
描画装置によって描画されるパターンの欠陥を検査する検査方法において、
前記パターンの光学画像を得る工程と、
前記パターンの各部分の重要度情報を取得する工程と、
前記重要度情報を用いて前記欠陥を判定する閾値を決定する工程と、
前記光学画像を基準画像と比較し、これらの差異が、前記閾値を超えた場合に欠陥と判定する工程とを有し、
前記重要度情報は、前記パターンを描画する描画装置のログ情報を少なくとも含み、
前記ログ情報は、前記描画装置の描画データに設定された前記描画装置の描画条件への補正処理の情報を含むことを特徴とする検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模集積回路(Large Scale Integration;LSI)の高集積化および大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路寸法は狭小化の一途を辿っている。例えば、最近の代表的なロジックデバイスでは、数十nmの線幅のパターン形成が要求される状況となってきている。
【0003】
半導体素子の製造工程では、ステッパまたはスキャナと呼ばれる縮小投影露光装置により、回路パターンが形成された原画パターン(マスクまたはレチクルを指す。以下では、マスクと総称する。)がウェハ上に露光転写される。多大な製造コストのかかるLSIにとって、製造工程における歩留まりの向上は欠かせない。マスクパターンの形状欠陥は、半導体素子の歩留まりを低下させる大きな要因となるので、こうした形状欠陥を検出する検査工程は重要である。
【0004】
ウェハ上に形成される回路パターンの寸法が微細化していることに伴って、マスクパターンの形状欠陥も微細化している。また、マスクの寸法精度を高めることで、プロセス諸条件の変動を吸収しようとしてきたこともあり、マスク検査においては、極めて小さなパターンの欠陥検出が必要とされる。
【0005】
しかしながら、その一方で、1枚のマスクには、用途に応じた様々な種類のパターンが混在して形成されている。その中には、上記のように極めて小さな欠陥であっても検出が必要なパターンもあれば、ある程度までの大きさの欠陥であれば問題とならないパターンもある。したがって、全てのパターンに対して、画一的な欠陥判定閾値を適用すると、本来は問題とならない欠陥であっても欠陥として判定されてしまう場合がある。
【0006】
例えば、LSIとして動作する際のクロック信号線として使用されるパターンについては、線幅誤差やエッジラフネスが小さい事が要求されるため、高い感度で検査される必要があるが、ダミーやシールドのパターンについては多少の寸法変動や孤立欠陥の存在は問われないため、低い感度でよく、電源に使用されるパターンについては、これらの間の感度で構わない。しかし、欠陥判定閾値を画一的なものとすると、クロックに使用されるパターンの欠陥検出が基準とされるため、欠陥判定閾値は厳しく設定される。その結果、ダミーやシールド、電源に使用されるパターンに対する検査感度が高くなり過ぎてしまい、本来は欠陥として検出される必要のないものが欠陥とされることが起こり得る。
【0007】
こうしたことから、欠陥判定閾値は、画一的な値ではなく、パターンの用途に応じて必要とされる感度に応じた値に設定されることが好ましい。特許文献1には、1枚のマスクを複数の検査領域に分け、領域毎に欠陥判定閾値を変更する検査装置が開示されている。また、特許文献2には、パターンの重要度情報に基づく多値の解像度で示される画素値を有する領域画像データを作成し、この領域画像データの各画素の画素値によって定まる複数の閾値の1つを用いて、領域画像データが示す領域内の光学画像データを参照画像データと画素毎に比較する検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−229230号公報
【特許文献2】特許第4870704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2における重要度情報は、パターンの用途に応じた情報である。例えば、クロックパターンについては、重要度情報としてランクコード1が定義される。同様に、電源パターンについてはランクコード2が、シールドパターンについてはランクコード3が、ダミーパターンにはランクコード4が、それぞれ定義される。しかしながら、こうしたパターン用途に関する情報だけでは疑似欠陥の多発を抑制できず、検査時間を短縮できないという問題があった。
【0010】
本発明は、こうした点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、パターンの用途以外にも検査に適用可能な重要度情報を見出し、これを用いることで、不要な欠陥検出を低減できる検査装置および検査方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、パターンが設けられた検査対象に光を照射して、前記パターンの光学画像を得る光学画像取得部と、
前記パターンの重要度情報が入力されるインターフェース部と、
前記光学画像を基準画像と比較し、これらの差異が、前記重要度情報を用いて決定された閾値を超えた場合に欠陥と判定する比較部とを有し、
前記重要度情報は、前記パターンを描画する描画装置に入力される描画データ、前記描画データまたは前記描画データの基になる設計データへのリサイズ処理、前記描画データまたは前記設計データへの補助パターンの付加、前記描画データに設定された前記描画装置の描画条件への補正処理、および前記描画装置のログのうちの少なくとも1つの情報であることを特徴とする検査装置に関する。
【0013】
本発明の第1の態様において、前記描画データは、前記インターフェース部にLAN回線を介して接続するサーバに格納されていることが好ましい。
【0014】
本発明の第1の態様において、前記描画データまたは前記描画データの基になる設計データへのリサイズ処理の情報、前記描画データまたは前記設計データへの補助パターンの付加の情報、および前記描画データに設定された前記描画装置の描画条件への補正処理の情報は、前記インターフェース部にLAN回線を介して接続するサーバ、または、前記描画装置に格納されていることが好ましい。
【0015】
本発明の第1の態様において、前記描画条件は、前記描画装置に用いられる荷電粒子ビームの照射量、照射回数および照射位置の少なくとも1つであることが好ましい。
【0016】
本発明の第1の態様において、前記ログ情報は、前記描画データに設定された前記描画装置の描画条件への補正処理の情報を含むことが好ましい。
【0017】
本発明の第1の態様において、前記インターフェース部は、LAN回線を介して前記描画装置に接続することが好ましい。
【0018】
本発明の第1の態様において、前記重要度情報は、前記パターンの用途に関する情報を含むことが好ましい。
【0019】
本発明の第1の態様における検査装置は、前記描画装置と互換性のあるフォーマットデータを直接取り扱い可能とすることが好ましい。
【0020】
本発明の第2の態様は、描画装置によって描画されたパターンの欠陥を検査する検査方法において、
前記パターンの光学画像を得る工程と、
前記描画装置に入力される描画データ、前記描画データまたは前記描画データの基になる設計データへのリサイズ処理、前記描画データまたは前記設計データへの補助パターンの付加、前記描画データに設定された前記描画装置の描画条件への補正処理、および前記描画装置のログのうちの少なくとも1つの重要度情報を取得する工程と、
前記光学画像を基準画像と比較し、これらの差異が、前記重要度情報を用いて決定された閾値を超えた場合に欠陥と判定する工程とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第1の態様の検査装置によれば、パターンを描画する描画装置に入力される描画データ、描画データまたは描画データの基になる設計データへのリサイズ処理、描画データまたは設計データへの補助パターンの付加、描画データに設定された描画装置の描画条件への補正処理、および描画装置のログのうちの少なくとも1つの情報を重要度情報とし、これを用いて欠陥判定閾値を決定する。これにより、パターンに応じた感度で検査をすることができるので、不要な欠陥検出を低減することが可能となる。
【0022】
本発明の第2の態様の検査方法によれば、描画装置に入力される描画データ、描画データまたは描画データの基になる設計データへのリサイズ処理、描画データまたは設計データへの補助パターンの付加、描画データに設定された描画装置の描画条件への補正処理、および描画装置のログのうちの少なくとも1つの重要度情報を取得して欠陥判定閾値を決定する。これにより、パターンに応じた感度で検査をすることができるので、不要な欠陥検出を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施の形態の電子ビーム描画装置と検査装置におけるデータの流れを説明する図である。
図2】本実施の形態で、検査装置に入力されるデータの流れの一例を説明する図である。
図3】本実施の形態における検査装置の概略構成図である。
図4図3の検査装置におけるデータの流れを示す図である。
図5】マスクの光学画像の取得手順を説明する図である。
図6】本実施の形態の検査装置を備えたマスク製造装置システムの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
マスク上に微細なパターンを形成する方法としては、電子ビームリソグラフィ技術が好適である。その理由として、この技術は、荷電粒子ビームを用いるため、本質的に優れた解像度を有することや、焦点深度を大きく確保できることにより、高い段差上でも寸法変動を抑制できることなどが挙げられる。
【0025】
電子ビームリソグラフィ技術で使用される電子ビーム描画装置は、複雑且つ任意に設計される回路パターンをデータ処理して描画するシステムを備えている。このシステムでは、設計パターンを基に電子ビームの照射量が決定され、また、かかる照射量の電子ビームがマスク基板の所定個所へ照射されるよう、照射位置や照射のタイミングが制御される。また、設計パターン通りのパターンがマスク基板上に形成されるようにするため、電子ビームの照射量や照射回数などに対する補正処理も行われる。
【0026】
既に述べたように、マスクには、所定の回路パターンが形成されており、マスクは、ウェハにこの回路パターンを転写する目的で使用される。
【0027】
マスクを用いた転写は、例えば、次のような工程によって行われる。まず、所定の膜が形成されたウェハ上にレジスト膜を設ける。次に、上記のマスクを介して露光装置によりウェハを露光し、レジスト膜に回路パターンの露光イメージを転写する。次いで、レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する。その後、このレジストパターンをマスクとして下層の膜をエッチングした後、レジスト膜を剥離する。これにより、下層の膜を目的とする形状の回路パターンに加工することができる。次に、下層膜の凹部に銅(Cu)などを充填した後、CMP(Chemical Mechanical Planarization)法により不要な部分を除去することで配線が形成される。
【0028】
上記の工程において、レジスト膜に設計通りの露光イメージが転写されたとしても、現像後のレジストパターンや、エッチング後の下層膜のパターンは、設計パターンとは異なる形状を示すことがある。そうした場合、現像やエッチングによる変化量を見越して、マスクに形成される回路パターンの線幅を設計値より太くしたり、矩形パターンのコーナー形状を意図的に誇張したりするなどのリサイズ処理が行われる。このリサイズ処理により、最終的なパターンの仕上がり寸法が設計値に近付くようにしている。
【0029】
また、微細化が進む回路パターンに合わせて、超解像度技術(RET:Resolution Enhancement Technology)の適用も行われている。この技術は、例えば、メインパターンの脇にアシストパターンと称される補助パターンを配置し、これによってメインパターンの形成性を向上させるものである。転写像では補助パターンは解像しないが、補助パターンがあることによって、メインパターンの領域に入射する光エネルギーを確保することができる。
【0030】
マスクに形成されたパターンの中で、上記のリサイズ処理が施されている個所や、補助パターンが配置された個所は、ウェハ上への微細なパターン転写が求められる個所であり、マスク上におけるパターンの仕上がり寸法にも高い精度が求められる個所と言える。逆に、こうした高精度でのパターン形成が求められる個所では、リサイズ処理や補助パターンの配置に限られず、予め設定された電子ビームの照射量や照射回数、照射位置などの条件に対する補正処理が行われることも多い。かかる補正処理は、電子ビーム描画装置の内部で行われてもよく、また、電子ビーム描画装置の外部で行われてもよい。後者の場合には、補正後の値が電子ビーム描画装置に入力される。そして、いずれの場合においても、電子ビーム描画装置は、補正後の条件で電子ビームが照射されるように動作する。
【0031】
次に、補正処理の具体例を挙げる。
【0032】
例えば、電子ビームリソグラフィ技術では、多重描画方式が採られる。この方式は、パターンを繰り返し重ねて描画することで、パターン位置精度の誤差と、偏向領域の境界で生じるパターンの接続精度の誤差とを、平均化の効果によって改善しようとするものである。そのため、パターンの仕上がり寸法に高い精度が要求される個所では、こうした多重描画を行ったり、多重描画による電子ビームの照射回数(多重度)を多くしたりしている。具体的には、描画するパターン毎に寸法や形状、周辺のパターンとの関係を分析し、高い描画精度が要求される個所では、ショットサイズを小さくしたり、多重度を大きくしたりするといった補正処理が行われる。
【0033】
また、電子ビーム描画装置では、電子ビームを偏向させてマスク上に照射しているが、この偏向制御は偏向アンプと偏向器によって行われる。偏向制御としては、例えば、電子ビームのオンとオフによりビームショットの生成を行うブランキング制御、電子ビームを所望の形状と寸法に成形する成形制御、電子ビームを所望の位置にショットする位置制御が挙げられる。偏向アンプで偏向器を駆動する際には、その負荷に応じた出力電圧のセトリング時間(整定時間)が必要になる。例えば、目標とする偏向位置に整定するには、所定のセトリング時間を要する。そして、特に高い描画精度が求められる個所では、セトリング時間を十分にとる必要がある。したがって、こうした個所では、セトリング時間が長くなるような補正処理が行われる。
【0034】
また、電子ビーム描画装置では、例えば、マスク基板に電子ビームが照射されると反射電子が発生し、装置内の各種レンズなどに衝突してチャージアップされ、新たな電界が生まれる。すると、マスク基板へ向けて偏向された電子ビームの軌道が変化し、電子ビームの照射位置が所望の位置からずれるドリフトが起こる。このため、電子ビーム描画装置では、描画中にドリフト量を測定し、その結果に基づいて、照射位置が所望の位置となるよう補正している。
【0035】
例えば、予め設定された補正インターバルにしたがい、所定位置まで描画を終えた後に、電子ビームの照射位置を基準マークの位置まで移動させる。次いで、電子ビームで基準マークを走査してその位置を測定し、これと、前回同様にして測定した位置との差分を線形補間する。得られた値は、次回測定までの位置変動量とみなされ、この値に基づいて電子ビームの照射位置がドリフト補正される。この場合、補正誤差を小さくしようとすると、測定の時間間隔を短くして、ドリフト補正の回数を増やす必要がある。したがって、高い描画精度が求められる個所では、予め設定されたドリフト補正のインターバルに対して、補正間隔が短くなるような補正処理が行われる。
【0036】
さらに、電子ビーム描画装置の光学系内やマスク基板の近傍では、電子が相互に反発するクーロン相互作用が働く。このため、ビームサイズに依存してビームぼけが変化し、所望の寸法のパターンを形成できないという問題がある。また、マスク基板に電子ビームが照射されると、電子ビームは、レジストを透過した後に一部がレジストの下層に形成された膜で反射して再びレジストを透過する。このような反射をしてレジストの表面に戻る電子は、後方散乱電子と呼ばれ、ドーズ量の変動、いわゆる近接効果を引き起こす。このため、電子ビーム描画装置では、後方散乱電子による影響を考慮し、所望のパターン寸法およびパターン形状となるようなドーズ量とする補正処理が行われる。
【0037】
また、近接効果を考慮した補正処理としては、マスク基板上に所望のパターンを形成できるように、描画データを補正する方法も挙げられる。例えば、マスク上に複数のラインが同一間隔で並んでいるライン・アンド・スペースのパターンの場合、パターン密度の大きい中央部ほど近接効果の影響が大きくなる。このため、周辺部のパターンが所定の線幅となる照射条件では、中央部に行くほど線幅が所定値より太くなってしまう。そこで、中央部のパターンの描画データに対して、線幅の増分が相殺されるようなリサイズ処理が行われる。したがって、こうしたリサイズ処理が施される個所も、マスク上に形成されるパターンの仕上がり寸法に高い精度が求められる個所と判断できる。
【0038】
さらに、上記の補正処理やリサイズ処理を行っても、ビームぼけ量が変化すると所望のパターンを形成することができなくなる。そこで、光学系のフォーカスを変えることでビームぼけ量を意図的に変化させ、平均寸法の変動量が最も小さくなるようなドーズ量とする方法もある。このような目的で光学系のフォーカスを変化させた描画条件が適用される個所も、マスク上に形成されるパターンの仕上がり寸法に高い精度が求められる個所と言える。
【0039】
このように、マスクに描画されるパターンの重要度情報は、パターンの用途に限られない。すなわち、マスクに形成されたパターンの中で、パターンのリサイズ処理が施されている個所や、補助パターンが配置された個所は、高い仕上がり寸法が求められる個所である。したがって、リサイズ処理の有無や補助パターンの配置に関する情報も、パターンの重要度情報として用いることができる。また、電子ビームの照射条件に対する補正処理が行われている個所も、高い仕上がり寸法が求められる個所と言える。したがって、補正処理に関する情報もパターンの重要度情報として用いることが可能である。さらに、パターン密度の高い個所は、一般に、高精度での描画が求められる個所である。それ故、パターン密度に関する情報も、パターンの重要度情報として挙げられる。尚、パターン密度による重要度の判定は、例えば、所定の閾値を設け、この閾値より大きいか小さいかによって行うことができる。
【0040】
以上より、本実施の形態では、パターンの重要度情報として、パターンの用途に代えて、あるいは、パターンの用途ともに、リサイズ処理の有無や補助パターンの配置に関する情報、電子ビームの照射条件の補正処理に関する情報およびパターン密度に関する情報の少なくとも一つを用い、かかる重要度情報を検査装置に入力する。検査装置は、入力されたパターンの重要度情報を基に欠陥判定閾値を決定し、この値に基づいて欠陥を検出する。
【0041】
上記データの流れを概略的に述べると、次のようになる。
【0042】
パターンの用途は、MDR(Mask Data Rank)情報として電子ビーム描画装置に入力される。リサイズ処理や補助パターンの付加は、描画データが作成される過程で行われて、電子ビーム描画装置に入力されてもよく、あるいは、電子ビーム描画装置に入力された後の描画データに対して行われてもよい。同様に、電子ビームの照射条件の補正処理も、電子ビーム描画装置の外部で行われた後に電子ビーム描画装置に入力されてもよく、あるいは、電子ビーム描画装置の内部で補正処理が行われてもよい。
【0043】
パターンの重要度情報の中で、電子ビーム描画装置へ入力可能な情報は、検査装置に直接入力されて、欠陥判定閾値の決定に用いられるようにすることができる。一方、電子ビーム描画装置の内部で処理が行われて生成する情報の場合には、電子ビーム描画装置から出力されて検査装置に入力されるようにすることで、同様に欠陥判定閾値の決定に用いられるようにすることができる。この場合、電子ビーム描画装置内で生成し、格納された情報が出力されて検査装置に入力されてもよく、あるいは、電子ビーム描画装置から出力されたログ情報が検査装置に入力されてもよい。尚、いずれの場合においても、検査装置のフォーマットデータを電子ビーム描画装置と互換性のあるデータとしておくことが好ましい。
【0044】
検査装置は、入力されたパターンの重要度情報を基に、マスク上に形成されるパターンの中で仕上がり寸法に高い精度が求められる個所を特定する。検査装置は、そうした個所に対して検査感度が高くなるように欠陥判定閾値を設定する。一方、パターンの重要度情報から、上記ほどの描画精度は求められないと判断された個所は、その個所に応じた欠陥判定閾値を設定する。例えば、MDR情報から、ダミーやシールド、電源に使用されると判断されたパターンに対しては、上記個所より検査感度が低くなるように、欠陥判定閾値を設定する。また、リサイズ処理が行われていない個所、補助パターンが配置されていない個所、補正処理が行われていない個所、パターン密度が低い個所に対しても、同様に、緩い欠陥判定閾値を設定する。尚、欠陥判定閾値の設定にあたっては、複数の重要度情報を参照して検査感度を決定することが好ましい。例えば、リサイズ処理が行われていない個所であっても、パターン密度が高く、補正処理が行われている個所では、欠陥判定閾値を厳しく設定することが好ましい。
【0045】
図1は、電子ビーム描画装置と検査装置におけるデータの流れを説明する図である。
【0046】
電子ビーム描画装置によりパターンが描画されたマスクは、検査装置に送られる。検査装置では、このパターンにおける欠陥の有無が検査される。その後、検査結果や、この検査結果を基に決定されたマスクの修正情報が、検査装置から出力される。
【0047】
電子ビーム描画装置は、描画データに基づいて描画を行う。描画データは、CAD(Computer Aided Design)システムを用いて設計された半導体集積回路などのCADデータに、図形パターンの分割などの処理を施し、さらにこれを同じ幅の複数のストライプに分割することによって作成される。ストライプの幅は、主偏向で偏向可能な幅である。さらに各ストライプは、多数の副偏向領域に分割される。これにより、チップ全体の描画データは、主偏向領域のサイズにしたがった複数の帯状のストライプデータと、ストライプ内で主偏向領域よりも小さい複数の副偏向領域単位とからなるデータ階層構造になる。
【0048】
設計者(ユーザ)が作成したCADデータは、OASISなどの階層化されたフォーマットの設計中間データに変換される。設計中間データには、レイヤ(層)毎に作成されて各マスクに形成されるパターンデータ(設計パターンデータ)が格納される。ここで、一般に、電子ビーム描画装置は、OASISデータを直接読み込めるようには構成されていない。すなわち、電子ビーム描画装置の製造メーカー毎に、独自のフォーマットデータが用いられている。このため、OASISデータは、レイヤ毎に各電子ビーム描画装置に固有のフォーマットデータに変換される。
【0049】
パターンデータに含まれる図形は、長方形や三角形を基本図形としたものである。そこで、変換されたフォーマットデータから、例えば、図形の基準位置における座標(x,y)、辺の長さ、長方形や三角形などの図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報であって、各パターン図形の形、大きさ、位置などを定義したレイアウトデータが作成される。さらに、数十μm程度の範囲に存在する図形の集合を一般にクラスタまたはセルと称するが、これを用いてデータを階層化することも行われる。クラスタまたはセルには、各種図形を単独で配置したり、ある間隔で繰り返し配置したりする場合の配置座標や繰り返し記述も定義される。クラスタまたはセルデータは、さらにストライプと称される、幅が数百μmであって、長さがマスクのX方向またはY方向の全長に対応する100mm程度の短冊状領域に配置される。
【0050】
レイアウトデータは、電子ビームのサイズにより規定される最大ショットサイズ単位で分割される。またこのデータには、分割された各ショットの座標位置、サイズおよび照射時間などが設定される。そして、描画する図形パターンの形状や大きさに応じてショットが成形されるように、描画データが作成される。作成された描画データは、電子ビーム描画装置に入力され、電子ビーム描画装置は、この描画データに基づいて描画を行う。
【0051】
マスクデータランク(MDR)情報は、CADデータを作成した設計者によって決められ、電子ビーム描画装置に入力される。尚、MDR情報は、設計中間データに格納されるようにしてもよい。既に述べたように、パターンの用途によって、検査する際に求められる精度は異なる。MDR情報としては、そうしたデータランクの識別コードとなるランクコード(重要度情報)と、該当のパターンを含む領域を示す領域パターンデータとが格納される。例えば、クロック領域パターンデータにはランクコード1、電源領域パターンデータにはランクコード2、シールド領域パターンデータにはランクコード3、ダミー領域パターンデータにはランクコード4といったように、各パターンに対して、パターンの重要度に応じたランクコードが付けられる。
【0052】
本実施の形態では、描画データやMDR情報を検査装置にも入力する。検査装置は、欠陥判定閾値の設定にこれらの情報を利用する。但し、MDR情報を検査装置へ入力することが難しい場合には、描画データのみを入力するのでもよい。リサイズ処理や補助パターンの付加が、描画データが作成される過程で行われる場合、検査装置は、パターンの重要度情報として、入力された情報から、パターンの用途、リサイズ処理が施されている個所や補助パターンの配置に関する情報、パターン密度に関する情報を取得する。次いで、検査装置は、これらの情報を利用して、マスク上で高い描画精度が求められる個所を特定し、欠陥判定閾値を設定する。
【0053】
尚、検査装置と描画装置との間でデータフォーマットの互換性があれば、すなわち、検査装置に入力可能なフォーマットデータを電子ビーム描画装置と互換性のあるデータとしておけば、描画データやMDR情報を検査装置固有のフォーマットデータに変換する工程が不要となる。
【0054】
既に述べたように、描画パターンのリサイズ処理や補助パターンの付加は、描画データが作成される過程で行われて、電子ビーム描画装置に入力されてもよく、あるいは、電子ビーム描画装置に入力された後の描画データに対して行われてもよい。後者の場合には、電子ビーム描画装置の計算機に組み込まれたレイアウト解析プログラムを利用できる。すなわち、電子ビーム描画装置は、かかるレイアウト解析プログラムによって、描画データに対し、現像やエッチングによる変化量を見越したリサイズ処理や、近接効果補正のためのリサイズ処理を行うことができる。また、マスクに描画するパターンの解像度を高めるための補助パターンの他、パターンの線幅および空隙の精度を維持することを目的としてパターン形状を複雑に加工するための図形、あるいは、ダミーパターンなどを加えることもできる。
【0055】
また、電子ビーム描画装置では、入力された描画データやMDR情報を基に、描画データに設定された電子ビームの照射量や照射回数、照射位置などの条件に対する補正処理も行われる。あるいは、電子ビーム描画装置の外部で補正処理が行われ、補正後の値が電子ビーム描画装置に入力される。そして、電子ビーム描画装置は、かかる補正後の値にしたがって描画を行う。
【0056】
本実施の形態では、描画データやMDR情報と同様に、電子ビーム描画装置の内部で行われたリサイズ処理や補助パターンの付加に関する情報や、電子ビーム描画装置の内部または外部で行われた補正処理による補正情報も検査装置に入力する。ここで、補正情報には、前述した各種補正処理がおこなわれた個所、すなわち、ショットサイズや多重度といった多重描画の条件、セトリング時間、ドリフト補正の間隔、ドーズ量などについての補正処理が行われた個所に関する位置データなどが含まれる。検査装置は、入力された情報からパターンの重要度情報を取得する。そして、欠陥判定閾値を取得するために、これらの情報を利用して、マスク上で高い描画精度が求められる個所を特定する。例えば、電子ビームの照射条件に対する補正処理が行われている個所は、高い仕上がり寸法が求められる個所と推定できる。
【0057】
上記の補正情報は、電子ビーム描画装置のログ情報から取得することも可能である。したがって、検査装置には、電子ビーム描画装置のログ情報が入力されるようにしてもよい。
【0058】
図2は、検査装置に入力されるデータの流れの一例を説明する図である。この図を用いて、描画データとMDR情報について説明する。
【0059】
前述の通り、設計者(ユーザ)が作成したCADデータ10は、OASISなどの階層化されたフォーマットの設計中間データ12に変換される。設計中間データ12では、レイヤ(層)毎に製作される各マスクに形成されるパターンデータが格納される。
【0060】
上記のように変換された設計中間データ12に対し、レイアウト解析プログラムが組み込まれた計算機により機械的に解析処理が行なわれることによって、設計中間データ14が生成される。具体的には、レイアウト解析プログラムによって、設計中間データ12に対し、現像やエッチングによる変化量を見越したリサイズ処理や、近接効果補正のためのリサイズ処理、また、超解像度技術で必要とされる補助パターンの付加が行われる。レイアウト解析プログラムによって加えられたパターンは、設計者がCADデータを作成した時点では意図していないものである。
【0061】
設計中間データ14には、設計中間データ12の内容に、さらに付加されたパターンの種別(データタイプ)を識別する識別コードとなるデータタイプコード(重要度情報)と、該当するパターンを含む領域を示す領域パターンデータとが格納される。図2において、解析結果情報には、例えば、データタイプコードAとして、リサイズ処理されたパターンの領域データが定義され、データタイプコードBとして、補助パターンの領域データが定義される。
【0062】
OASISデータは、電子ビーム描画装置で読み込み可能なフォーマットの設計データ16に変換され、描画データ17が作成される。本実施の形態では、検査装置のフォーマットデータは、電子ビーム描画装置と互換性のあるデータとする。これにより、検査装置は、描画データ17をそのまま読み込むことができる。
【0063】
また、検査装置には、CADデータ10を作成した設計者によって任意に決められたマスクデータランク(MDR)情報18も格納される。
【0064】
パターンによっては、その用途に応じて検査する際に求められる精度が異なる。このため、そのデータランクの識別コードとなるランクコード(重要度情報)と、該当するパターンを含む領域を示す領域データとがMDR情報18に格納される。設計者には、例えば、クロックに使用されるパターンについては高感度に、ダミーやシールドに使用されるパターンについては低感度に、電源に使用されるパターンについては中間の感度に、それぞれ判定閾値を設定したいといった要求がある。そこで、図2に示すように、MDR情報18に、例えば、ランクコード1としてクロックパターン領域データが、ランクコード2として電源パターン領域データが、ランクコード3としてシールドパターン領域データが、ランクコード4としてダミーパターン領域データが、それぞれ定義される。
【0065】
図3は、本実施の形態における検査装置の概略構成図である。また、図4は、図3の検査装置におけるデータの流れを示す図である。尚、これらの図では、本実施の形態で必要な構成部を記載しているが、検査に必要な他の公知の構成部が含まれていてもよい。
【0066】
また、本明細書において、「〜回路」または「〜部」と記載したものは、コンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができるが、ソフトウェアとなるプログラムだけではなく、ハードウェアとソフトウェアとの組合せやファームウェアとの組合せによって実施されるものであってもよい。プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置などの記録装置に記録され得る。
【0067】
さらに、本発明の検査方法は、ダイ−トゥ−データベース(Die to Database)比較方式、ダイ−トゥ−ダイ(Die to Die)比較方式、セル(Cell)比較方式のいずれであってもよく、また、ナノインプリントリソグラフィ(Nanoimprint Lithography;NIL)におけるテンプレートの検査のように、1つの画像内で注目する画素とその周辺の画素とを比較する方式であってもよい。以下では、ダイ−トゥ−データベース比較方式を例にとり説明する。この方式では、検査対象となるパターンの設計データから作成された参照画像が基準画像、すなわち、欠陥検出を目的として上記パターンの光学画像と比較される画像となる。
【0068】
図3に示すように、検査装置100は、光学画像取得部を構成する構成部Aと、構成部Aで取得された光学画像を用いて検査に必要な処理などを行う構成部Bとを有する。
【0069】
構成部Aは、光源103と、水平方向(X方向、Y方向)および回転方向(θ方向)に移動可能なXYθテーブル102と、透過照明系を構成する照明光学系170と、拡大光学系104と、フォトダイオードアレイ105と、センサ回路106と、レーザ測長システム122と、オートローダ130とを有する。
【0070】
構成部Aでは、検査対象となるマスク101の光学画像、すなわち、測定データが取得される。測定データは、マスク101の設計パターンデータに含まれる図形データに基づく図形が描画されたマスクの画像である。例えば、測定データは、8ビットの符号なしデータであって、各画素の明るさの階調を表現するものである。
【0071】
マスク101は、オートローダ130により、XYθテーブル102上に載置される。尚、オートローダ130は、オートローダ制御回路113によって駆動される。また、オートローダ制回路113は、制御計算機110によって制御される。マスク101がXYθテーブル102の上に載置されると、マスク101に形成されたパターンに対し、XYθテーブル102の上方に配置された光源103から光が照射される。より詳しくは、光源103から照射される光束が、照明光学系170を介してマスク101に照射される。マスク101の下方には、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105およびセンサ回路106が配置されている。マスク101を透過した光は、拡大光学系104を介して、フォトダイオードアレイ105に光学像として結像する。
【0072】
拡大光学系104は、図示しない自動焦点機構によって自動的に焦点調整がなされるように構成されていてもよい。さらに、図示しないが、検査装置100は、マスク101の下方から光を照射し、反射光を拡大光学系を介してフォトダイオードアレイに導く構成としてもよい。この構成によれば、透過光と反射光による各光学画像を同時に取得することが可能である。
【0073】
フォトダイオードアレイ105上に結像したマスク101のパターン像は、フォトダイオードアレイ105によって光電変換され、さらにセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。フォトダイオードアレイ105には、センサ(図示せず)が配置されている。このセンサの例としては、TDI(Time Delay Integration)センサなどが挙げられる。この場合、XYθテーブル102が連続的に移動しながら、TDIセンサによってマスク101のパターンが撮像される。ここで、光源103、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105およびセンサ回路106により高倍率の検査光学系が構成される。
【0074】
構成部Bでは、検査装置100全体の制御を司る制御部としての制御計算機110が、データ伝送路となるバス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照回路112、展開回路111、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、保存部の一例となる磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115およびフレキシブルディスク装置116、CRT117、パターンモニタ118並びにプリンタ119に接続されている。XYθテーブル102は、テーブル制御回路114によって制御されたX軸モータ、Y軸モータおよびθ軸モータによって駆動される。これらの駆動機構には、例えば、エアスライダと、リニアモータやステップモータなどとを組み合わせて用いることができる。
【0075】
図3で「〜回路」と記載したものが、プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置109に記録されることができる。例えば、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、展開回路111、参照回路112、比較回路108および位置回路107の各回路は、電気的回路で構成されてもよく、制御計算機110によって処理することのできるソフトウェアとして実現されてもよい。また、電気的回路とソフトウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0076】
制御計算機110は、テーブル制御回路114を制御して、XYθテーブル102を駆動する。XYθテーブル102の移動位置は、レーザ測長システム122により測定されて位置回路107に送られる。
【0077】
また、制御計算機110は、オートローダ制御回路113を制御して、オートローダ130を駆動する。オートローダ130は、マスク101を自動的に搬送し、検査終了後には自動的にマスク101を搬出する。
【0078】
マスク101の光学画像は、次のようにして取得される。
【0079】
図5は、マスク101に形成されたパターンの欠陥を検出するための光学画像の取得手順を説明する図である。この図において、マスク101は、図3のXYθテーブル102の上に載置されているものとする。
【0080】
マスク101上の検査領域は、図5に示すように、短冊状の複数の検査領域、すなわち、ストライプ20,20,20,20,・・・に仮想的に分割されている。各ストライプは、例えば、幅が数百μmであって、長さがマスク101のX方向またはY方向の全長に対応する100mm程度の領域とすることができる。
【0081】
光学画像は、ストライプ毎に取得される。すなわち、図5で光学画像を取得する際には、各ストライプ20,20,20,20,・・・が連続的に走査されるように、XYθテーブル102の動作が制御される。例えば、XYθテーブル102が図5の−X方向に移動しながら、マスク101の光学画像が取得される。そして、図3のフォトダイオードアレイ105に、図5に示されるような走査幅Wの画像が連続的に入力される。
【0082】
上記例を詳しく説明すると、まず、第1のストライプ20における画像を取得する。次いで、第2のストライプ20における画像を取得する。このとき、XYθテーブル102が−Y方向にステップ移動した後、第1のストライプ20における画像の取得時の方向(−X方向)とは逆方向(X方向)に移動しながら光学画像を取得して、走査幅Wの画像がフォトダイオードアレイ105に連続的に入力される。第3のストライプ20における画像を取得する場合には、XYθテーブル102が−Y方向にステップ移動した後、第2のストライプ20における画像を取得する方向(X方向)とは逆方向、すなわち、第1のストライプ20における画像を取得した方向(−X方向)に、XYθテーブル102が移動する。尚、図5の矢印は、光学画像が取得される方向と順序を示しており、斜線部分は、光学画像の取得が済んだ領域を表している。
【0083】
図3のフォトダイオードアレイ105上に結像したパターンの像は、フォトダイオードアレイ105によって光電変換され、さらにセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。その後、光学画像は、センサ回路106から比較回路108へ送られる。
【0084】
尚、A/D変換されたセンサデータは、画素毎にオフセット・ゲイン調整可能なデジタルアンプ(図示せず)に入力される。デジタルアンプの各画素用のゲインは、キャリブレーション工程で決定される。例えば、透過光用のキャリブレーション工程においては、センサが撮像する面積に対して十分に広いマスク101の遮光領域を撮影中に、黒レベルを決定する。次いで、センサが撮像する面積に対して十分に広いマスク101の透過光領域を撮影中に、白レベルを決定する。このとき、検査中の光量変動を見越して、例えば、白レベルと黒レベルの振幅が8ビット階調データの約4%から約94%に相当する10〜240に分布するよう、画素毎にオフセットとゲインを調整する。
【0085】
ダイ−トゥ−データベース比較方式による検査の場合、欠陥判定の基準となるのは、設計パターンデータから生成する参照画像である。次に、図3および図4を参照しながら、参照画像の生成方法を説明する。
【0086】
検査装置100では、マスク101のパターン形成時に用いたパターンデータ(設計パターンデータ)が磁気ディスク装置109に記憶される。
【0087】
展開回路111は、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通してパターンデータを読み出す。次いで、読み出したパターンデータを2値ないしは多値のイメージデータ(設計画像データ)に変換する。具体的には、展開回路111は、描画データを図形毎のデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして、パターンデータを2値ないしは多値のイメージデータに展開する。さらに、センサ画素に相当する領域(マス目)毎に設計パターンにおける図形が占める占有率が演算され、各画素内の図形占有率が画素値となる。
【0088】
展開回路111で変換されたイメージデータは、参照回路112に送られる。
【0089】
参照回路112は、図形のイメージデータであるパターンデータに適切なフィルタ処理を施す。その理由は、次の通りである。
【0090】
マスク101に形成されたパターンは、その製造工程でコーナーの丸まりや線幅の仕上がり寸法などが加減されており、設計パターンと厳密には一致しない。また、図3のセンサ回路106から得られた光学画像は、拡大光学系104の解像特性やフォトダイオードアレイ105のアパーチャ効果などによってぼやけた状態、言い換えれば、空間的なローパスフィルタが作用した状態にある。そこで、検査に先だって検査対象となるマスクを観察し、その製造プロセスや検査装置の光学系による変化を模擬したフィルタ係数を学習して、パターンデータに2次元のデジタルフィルタをかける。このようにして、参照画像に対して光学画像に似せる処理を行う。
【0091】
フィルタ係数の学習は、製造工程で決められた基準となるマスクのパターンを用いて行ってもよく、また、検査対象となるマスク(本実施の形態ではマスク101)のパターンの一部を用いて行ってもよい。後者であれば、学習に用いられた領域のパターン線幅やコーナーの丸まりの仕上がり具合を踏まえたフィルタ係数が取得され、マスク全体の欠陥判定基準に反映されることになる。
【0092】
尚、検査対象となるマスクを使用する場合、製造ロットのばらつきや、検査装置のコンディション変動といった影響を排除したフィルタ係数の学習ができるという利点がある。しかし、マスク面内で寸法変動があると、学習に用いた個所に対しては最適なフィルタ係数になるが、他の領域に対しては必ずしも最適な係数とはならないため、疑似欠陥を生じる原因になり得る。そこで、面内での寸法変動の影響を受け難いマスクの中央付近で学習することが好ましい。あるいは、マスク面内の複数の個所で学習を行い、得られた複数のフィルタ係数の平均値を用いてもよい。
【0093】
フィルタ処理が施された参照画像は比較回路108へ送られ、マスク101の光学画像における欠陥検査の基準として用いられる。尚、比較回路108へは、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上でのマスク101の位置を示すデータも送られる。
【0094】
上記したように、パターンデータに含まれる図形は、長方形や三角形を基本図形としたものである。磁気ディスク装置109には、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報であって、各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納される。また、クラスタ(またはセル)を用いて階層化されたデータは、ストライプに配置されるが、ストライプは、適当なサイズに分割されてサブストライプとなる。そして、光学画像から切り出されたサブストライプと、光学画像に対応する参照画像から切り出されたサブストライプとが、比較回路108内の比較ユニットに投入される。
【0095】
比較回路108に投入されたサブストライプは、さらに検査フレームと称される矩形の小領域に分割される。そして、比較ユニットにおいてフレーム単位で比較されて欠陥が検出される。比較回路108には、複数の検査フレームが同時に並列して処理されるよう、数十個の比較ユニットが装備されている。各比較ユニットは、1つの検査フレームの処理が終わり次第、未処理のフレーム画像を取り込む。これにより、多数の検査フレームが順次処理されていく。
【0096】
比較ユニットでの処理は、具体的には次のようにして行われる。まず、光学画像と、参照画像とを位置合わせする。このとき、パターンのエッジ位置や、輝度のピークの位置が揃うように、センサ画素単位で平行シフトさせる他、近隣の画素の輝度値を比例配分するなどして、センサ画素未満の合わせ込みも行う。位置合わせを終えた後は、センサフレーム画像と参照フレーム画像との画素毎のレベル差を評価したり、パターンエッジ方向の画素の微分値同士を比較したりするなどして、適切な比較アルゴリズムにしたがって欠陥を検出していく。尚、図3の構成であれば、透過画像同士での比較となるが、反射光学系を用いた構成であれば、反射画像同士での比較、あるいは、透過と反射を組み合わせた比較判定アルゴリズムが用いられる。比較の結果、両者の差異が欠陥判定閾値を超えた場合には、その個所が欠陥と判定される。
【0097】
本実施の形態では、欠陥判定閾値を次のようにして決定する。
【0098】
既に述べたように、検査装置100には、電子ビーム描画装置で利用される描画データやMDR情報、電子ビーム描画装置の内部または外部で行われた補正処理による補正情報、電子ビーム描画装置のログ情報が入力されて、磁気ディスク装置109に記憶される。尚、上記の描画データには、電子ビーム描画装置の内部で行われたリサイズ処理や補助パターンの付加に関する情報が含まれる。
【0099】
展開回路140は、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して、上記の情報から、リサイズ処理や補助パターンの付加が行われた領域、補正処理が行われた領域、パターン密度が所定の閾値以上の領域といった領域データを読み出す。そして、例えば、磁気ディスク装置109に記憶させた換算テーブルを用いて、領域データの感度指定情報を取得する。この場合、換算テーブルには、例えば、ランクコード(重要度情報)と感度指定情報の相関関係や、データタイプコード(重要度情報)と感度指定情報の相関関係が定義される。例えば、用途が電源を示すランクコードであれば感度指定情報はレベル2、用途がシールドを示すランクコードであれば感度指定情報はレベル1というように定義される。また、リサイズ処理されたパターンを示すデータタイプコードであれば感度指定情報はレベル4、補助パターンを示すデータタイプコードであれば感度指定情報はレベル5というように定義される。
【0100】
次に、展開回路140は、領域データを領域画像データに展開する。領域画像データは、画素に相当するマス目内に多値の値が設定されたものであり、各画素の値は、感度指定情報のレベル値によって決定される。
【0101】
次いで、展開回路140は、パターン展開された領域画像データを合成する。例えば、参照画像と光学画像の比較単位の大きさで合成してもよく、マスク1枚分で合成してもよい。
【0102】
ここで、領域データが示す領域は、該当するパターン寸法にマージンが付加された寸法となっているので、中には領域同士が重複してしまう場合があり得る。つまり、展開回路140には、領域が重複する複数の領域データとともに、複数の領域データのいずれかと対となる複数の重要度情報が入力される場合があり得る。こうした場合には、次のようにして、合成後の領域画像データを作成することが好ましい。
【0103】
例えば、2つの領域が重複する場合、展開回路140は、領域が重複する複数の領域データを合成した領域を示す領域画像データを作成する。そして、設計者が設定した複数のランクコードのそれぞれに該当する異なる領域データが示す領域同士が重複する場合、合成後の領域画像データが示す重複する領域の画素値に、重要度が高く定義された重要度情報に基づいた多値の解像度で示される画素値を用いる。すなわち、重要度情報に基づいて指定された感度指定情報のレベル値が大きい方に合わせる。これにより、厳しく検査すべき個所が緩く検査されてしまうのを防ぐことができる。
【0104】
また、設計者が設定したランクコードに該当する領域データが示す領域と、パターン形状を解析する外部ソフトウェアによって付加されたデータタイプコードに該当する領域データとが重複する場合、展開回路140は、設計者の意図を反映して画素値を設定する。すなわち、合成後の領域画像データが示す重複する領域の画素値には、設計者(ユーザ)が所望する重要度に対応する情報が定義された重要度情報に基づく多値の解像度で示される画素値を用いる。
【0105】
以上のようにして作成された領域画像データは、比較回路108に出力される。
【0106】
比較回路108は、展開回路140で作成された領域画像データを取り込み、領域画像データの各画素の画素値によって定まる欠陥判定閾値を用いて、画素毎に所定のアルゴリズムにしたがって比較し、欠陥の有無を判定する。判定は、例えば、各画素の画素値が0〜7ではレベル1の閾値で、各画素の画素値が8〜15ではレベル2の閾値で、各画素の画素値が16〜23ではレベル3の閾値で、各画素の画素値が24〜31ではレベル4の閾値でといったようにして行われる。すなわち、領域画像データの画素値に基づいて欠陥判定閾値を変更し、所定のアルゴリズムにしたがって比較する。そして、誤差が閾値を超えた場合、その個所は欠陥と判断される。欠陥と判断されると、その座標と、欠陥判定の根拠となった光学画像および参照画像とが、検査結果として磁気ディスク装置109に格納される。
【0107】
その後、検査結果は、オペレータによってレビューされる。レビューは、検出された欠陥が実用上問題となるものであるかどうかを判断する動作である。オペレータは、例えば、欠陥判定の根拠となった参照画像と、欠陥が含まれる光学画像とを見比べて、修正の必要な欠陥であるか否かを判断する。レビュー工程を経て判別された欠陥情報も、磁気ディスク装置109に保存される。レビュー工程で1つでも修正すべき欠陥が確認されると、マスク101は、欠陥情報リストとともに、検査装置100の外部装置である修正装置200へ送られる。修正方法は、欠陥のタイプが凸系の欠陥か凹系の欠陥かによって異なるので、欠陥情報リストには、凹凸の区別を含む欠陥の種別と欠陥の座標が添付される。
【0108】
以上のようにすることで、比較回路108は、領域画像データによって比較対象領域の欠陥判定閾値を画素毎に変更しながら欠陥判定することになる。これにより、判定を厳しく行わなければならない領域は厳しい判定閾値で検査され、それほど重要ではない領域に対しては不必要に厳しい判定閾値で検査しないようにすることができる。したがって、疑似欠陥の多発を防ぎ、検査時間を短縮することが可能となる。
【0109】
また、本実施の形態によれば、パターンの用途に限らず、リサイズ処理の有無や補助パターンの配置に関する情報、電子ビームの照射条件の補正処理に関する情報、パターン密度に関する情報を重要度情報として用いる。これにより、特定の情報のみを用いる場合に比べて、重要度情報の入手が容易となる。したがって、特定の情報(例えば、パターン用途に関する情報)について、マスクの製造部門やマスクパターンの設計部門から検査装置の側への伝達方法が具体的に定まっていない場合や、LSIを製造するうえでのノウハウが含まれていることにより、検査装置の側への伝達が容易でない場合であっても、他の重要度情報を検査装置に入力することで、パターンの重要度に応じた欠陥判定閾値を設定することが可能となる。
【0110】
さらに、本実施の形態の検査装置100は、2つの展開回路(140,111)を有する。展開回路111は、マスク101のパターン形成時に用いたパターンデータを2値ないしは多値のイメージデータ(設計画像データ)に変換する。一方、展開回路140は、リサイズ処理や補助パターンの付加が行われた領域、補正処理が行われた領域、パターン密度が所定の閾値以上の領域といった領域データを領域画像データに変換し、欠陥判定閾値を決定する。このようにすることで、検査装置100は、2つの変換処理を並列しておこなうことができる。
【0111】
但し、本実施の形態は上記に限られるものではなく、展開回路140における処理を制御計算機110で行ってもよい。この場合、決定された欠陥判定閾値は磁気ディスク装置109に格納される。検査の際には、制御計算機110が磁気ディスク装置109から欠陥判定閾値を読み出す。そして、比較回路108は、この値を参照して光学画像と参照画像を比較する。
【0112】
図6は、本実施の形態の検査装置を備えたマスク製造装置システムの一例である。このシステムでは、共通サーバ400、第1の描画装置301、第2の描画装置302、検査装置100、レビュー装置500および修正装置200が、LAN回線を介して互いに接続されている。検査装置100は、検査対象となるマスクパターンの描画データ、MDR情報、描画パターンのリサイズ処理、描画パターンへの補助パターンの付加、描画データに設定された電子ビームの照射条件に対する補正処理および第1の描画装置301と第2の描画装置302のログ情報の少なくとも1つが入力されるインターフェース部を有する。尚、マスク製造システムにおいて、共通サーバ、描画装置および検査装置は、いずれも1以上であればよい。レビュー装置および修正装置も同様であるが、これらはなくてもよく、いずれか一方のみであってもよい。
【0113】
図6において、検査装置100によって検査されるマスクのパターンは、電子ビームを利用した第1の描画装置301および第2の描画装置302の少なくとも一方を用いて形成される。このパターンの描画データは、MDR情報とともに、共通サーバ400に格納されている。第1の描画装置301および第2の描画装置302は、共通サーバからこれらの情報を読み出して描画を行う。
【0114】
共通サーバ400に格納された描画データとMDR情報は、検査装置100によっても読み出される。検査装置100は、パターンの重要度情報として、読み出した情報から、パターン密度やパターンの用途に関する情報を取得する。また、リサイズ処理や補助パターンの付加が、描画データが作成される過程で行われる場合、検査装置100は、リサイズ処理が施されている個所や補助パターンの配置に関する情報もパターンの重要度情報として取得する。次いで、検査装置100は、これらの情報を利用して、マスク上で高い描画精度が求められる個所を特定し、欠陥判定閾値を設定する。
【0115】
尚、検査装置100のフォーマットデータを第1の描画装置301や第2の描画装置302と互換性のあるデータとしておけば、描画データやMDR情報を装置毎のフォーマットデータに変換する工程が不要となる。
【0116】
描画パターンのリサイズ処理や補助パターンの付加が、第1の描画装置301や第2の描画装置302の内部で行われる場合、検査装置100は、第1の描画装置301および第2の描画装置302から、インターフェース部を通じて、リサイズ処理や補助パターンの付加に関する情報を得る。
【0117】
また、第1の描画装置301や第2の描画装置302において、描画データやMDR情報を基に、描画データに設定された電子ビームの照射量や照射回数、照射位置などの照射条件に対する補正処理が行われる場合、あるいは、第1の描画装置301や第2の描画装置302の外部で補正処理が行われ、補正後の値がこれらの描画装置に入力される場合にも、検査装置100は、第1の描画装置301および第2の描画装置302から、インターフェース部を通じて、補正処理に関する情報を得る。
【0118】
さらに、検査装置100は、第1の描画装置301や第2の描画装置302のログ情報から補正情報を取得することも可能である。この場合にも、検査装置100は、インターフェース部を通じてログ情報を得る。
【0119】
次いで、検査装置100は、取得した情報を利用して、マスク上で高い描画精度が求められる個所を特定し、欠陥判定閾値を設定する。かかる欠陥判定閾値はパターンの重要度情報に応じた値であるので、判定を厳しく行わなければならないパターンは厳しい判定閾値で検査されるが、それほど重要ではないパターンに対しては緩い判定閾値で検査される。
【0120】
検査装置100における検査結果は、共通サーバ400に保存される。尚、検査装置100内の保存部(例えば、図3の磁気ディスク装置109)に保存されてもよい。
【0121】
オペレータは、レビュー装置500を用いて、共通サーバ400から検査結果を読み出し、検出された欠陥が修正の必要なものであるか否かを判断する。そして、レビュー工程を経て判別された欠陥情報は、レビュー結果として共通サーバ400に保存される。
【0122】
レビュー装置500で1つでも修正すべき欠陥が確認されると、マスク101は修正装置200に送られる。修正装置200は、共通サーバ400からレビュー結果を読み出し、それにしたがって必要な修正を行う。修正方法は、欠陥のタイプが凸系の欠陥か凹系の欠陥かによって異なるので、レビュー結果には、凹凸の区別を含む欠陥の種別と欠陥の座標が含まれる。
【0123】
図6の検査装置システムによれば、検査装置100は、共通サーバ400や描画装置(301,302)からパターンの重要度情報を読み出し、これを参照して欠陥判定閾値を決定する。これにより、パターンの重要度に応じた検査が可能となるので、不必要な欠陥検出を防ぐことができ、ひいては、マスク製造のスループットを向上させることができる。
【0124】
また、パターンの重要度情報は、その用途に限られず、リサイズ処理の有無や補助パターンの配置に関する情報、電子ビームの照射条件の補正処理に関する情報、パターン密度に関する情報も含まれる。これにより、特定の情報のみが重要度情報とされる場合に比較して、検査装置100は重要度情報を入手し易くなり、パターンの重要度に応じた欠陥判定閾値を設定することが容易となる。
【0125】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。例えば、上記実施の形態では、電子ビームを用いた描画装置について述べたが、本発明は、これに限られるものではなく、イオンビームなどの他の荷電粒子ビームを用いた描画装置であってもよい。
【0126】
また、上記実施の形態では、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要としない部分についての記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができることは言うまでもない。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更し得る全ての検査装置または検査方法は、本発明の範囲に包含される。
以下に、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
パターンが設けられた検査対象に光を照射して、前記パターンの光学画像を得る光学画像取得部と
前記パターンの重要度情報が入力されるインターフェース部と、
前記光学画像を基準画像と比較し、これらの差異が、前記重要度情報を用いて決定された閾値を超えた場合に欠陥と判定する比較部とを有し、
前記重要度情報は、前記パターンを描画する描画装置に入力される描画データ、前記描画データまたは前記描画データの基になる設計データへのリサイズ処理、前記描画データまたは前記設計データへの補助パターンの付加、前記描画データに設定された前記描画装置の描画条件への補正処理、および前記描画装置のログのうちの少なくとも1つの情報であることを特徴とする検査装置。
[C2]
前記描画データまたは前記描画データの基になる設計データへのリサイズ処理の情報、前記描画データまたは前記設計データへの補助パターンの付加の情報、および前記描画データに設定された前記描画装置の描画条件への補正処理の情報は、前記インターフェース部にLAN回線を介して接続するサーバ、または、前記描画装置に格納されていることを特徴とする[C1]に記載の検査装置。
[C3]
前記描画装置と互換性のあるフォーマットデータを取り扱い可能とすることを特徴とする[C1]または[C2]に記載の検査装置。
[C4]
前記描画条件は、前記描画装置に用いられる荷電粒子ビームの照射量、照射回数および照射位置の少なくとも1つであることを特徴とする[C1]に記載の検査装置。
[C5]
前記ログ情報は、前記描画データに設定された前記描画装置の描画条件への補正処理の情報を含むことを特徴とする[C1]に記載の検査装置。
[C6]
描画装置によって描画されたパターンの欠陥を検査する検査方法において、
前記パターンの光学画像を得る工程と、
前記描画装置に入力される描画データ、前記描画データまたは前記描画データの基になる設計データへのリサイズ処理、前記描画データまたは前記設計データへの補助パターンの付加、前記描画データに設定された前記描画装置の描画条件への補正処理、および前記描画装置のログのうちの少なくとも1つの重要度情報を取得する工程と、
前記光学画像を基準画像と比較し、これらの差異が、前記重要度情報を用いて決定された閾値を超えた場合に欠陥と判定する工程とを有することを特徴とする検査方法。
【符号の説明】
【0127】
100 検査装置
101 マスク
102 XYθテーブル
103 光源
104 拡大光学系
105 フォトダイオードアレイ
106 センサ回路
107 位置回路
108 比較回路
109 磁気ディスク装置
110 制御計算機
111、140 展開回路
112 参照回路
113 オートローダ制御回路
114 テーブル制御回路
115 磁気テープ装置
116 フレキシブルディスク装置
117 CRT
118 パターンモニタ
119 プリンタ
120 バス
122 レーザ測長システム
130 オートローダ
170 照明光学系
10 CADデータ
12、14 設計中間データ
16 設計データ
17 描画データ
18 MDR情報
200 修正装置
301 第1の描画装置
302 第2の描画装置
400 共通サーバ
500 レビュー装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6