特許第6255238号(P6255238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6255238
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/06 20060101AFI20171218BHJP
   B23Q 11/10 20060101ALI20171218BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20171218BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20171218BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20171218BHJP
   B24B 55/04 20060101ALI20171218BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   B24B27/06 M
   B23Q11/10 A
   B23Q11/00 L
   H01L21/78 F
   B24B55/02 D
   B24B55/04 Z
   B24B55/06
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-271760(P2013-271760)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-123568(P2015-123568A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087099
【弁理士】
【氏名又は名称】川村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100063174
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 功
(74)【代理人】
【識別番号】100124338
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 健
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ウィリアム ガド
【審査官】 中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−042009(JP,A)
【文献】 特開2009−099940(JP,A)
【文献】 特開2012−024895(JP,A)
【文献】 特開2011−104726(JP,A)
【文献】 特開2014−210303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06
B23Q 11/00
B23Q 11/10
B24B 55/02 −55/10
H01L 21/301
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持手段と、該保持手段で保持された被加工物を切削する切り刃を外周に有した切削ブレードと、該切削ブレードを回転させるスピンドルを含むスピンドルユニットと、該切削ブレードを覆い底部に該切削ブレードの該切り刃の先端を突出させるスリット状開口部を有し該スピンドルユニットに装着されたブレードカバーと、を備えた切削装置であって、
該スリット状開口部の幅方向外側には、被加工物の上面に切削液を供給する切削液供給手段を備え、
該ブレードカバーには、一端が該スリット状開口部に連通するとともに他端が吸引源に接続された排出口に連通する排出路が形成され、該排出口は、該排出路の該吸引源側の先端に配置され、
該ブレードカバーの該底部には、該底部における該切削ブレードの回転方向と逆方向に該スリット状開口部から該ブレードカバーの外側に伸長するエアー取り込み路が形成され、
該スリット状開口部の一端で該排出路の延長線上には、該スリット状開口部より幅が広い吸引開口部が形成され、
該切削液供給手段は、該切削ブレードに対して切削液を直接供給せず、被加工物の上面に供給された切削液が、該排出路及び該吸引開口部に作用する吸引力によって該切削ブレードと被加工物とが接触する加工点に集められ、該切削ブレードの回転に伴って該スリット状開口部を介して該排出路に取り込まれた後、該排出口を介して該ブレードカバー外に排出される、切削装置。
【請求項2】
前記切削液供給手段は、
前記ブレードカバーの前記底部に形成された切削液供給口と、
一端が該切削液供給口に接続されるとともに他端が切削液供給源に接続された切削液供給路とを備え、
該切削液供給口は、前記スリット状開口部を挟み該スリット状開口部の伸張方向に複数並ぶことにより一対の切削液供給領域を構成する請求項1に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレードカバーを有した切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
切削ブレードを有し被加工物に切削を施す切削装置においては、被加工物の切削によって発生する加工熱を冷却するとともに、切削によって生じる切削屑を被加工物上から排出するために、当該切削ブレードに切削液を供給しながら切削を実施する。被加工物が、CMOSやCCD等の撮像デバイスが表面に形成されたウェーハや、フィルタ、光ピックアップデバイス等の光デバイスが形成された基板である場合には、切削屑がデバイス上に付着するとデバイス不良を引き起こすため、切削屑がデバイスに付着するのを防止することが非常に重要視されている。
【0003】
ここで、一度被加工物の上面において付着し乾燥した切削屑を切削後の洗浄工程で取り除くことは非常に難しいため、被加工物の上面に洗浄水を供給する機構を備える切削装置が下記の特許文献1で提案されている。この切削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削手段と、切削ブレードに切削水を供給する切削水供給手段と、チャックテーブルに保持された被加工物を切削する際に被加工物の上面に洗浄水を供給する洗浄水供給手段とを少なくとも備えており、切削ブレードの回転方向に起因して切削水が飛散する方向と同じ方向に洗浄水を噴射して被加工物の上面に洗浄水を供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−231474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したような切削装置において被加工物を切削する際には、切削水供給手段によって切削ブレードに向けて切削水を供給するため、切削によって発生した切削屑の一部が切削水に取り込まれるとともに、切削屑が混入した切削水が切削ブレードの回転にともなって
被加工物上に飛び散ってしまい、被加工物全面を汚してしまう。
【0006】
このようにして被加工物の上面に切削屑が付着すると、たとえ上記洗浄水供給手段によっても被加工物の上面から切削屑を十分に排除することは難しい。洗浄水供給手段によって被加工物上に洗浄水を供給しても、被加工物の上面に飛び散った切削水によって被加工物上に供給された洗浄水の流れが乱されて洗浄が不十分な領域が生じるため、被加工物全面に飛び散った切削屑を洗浄しきれないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたものであり、被加工物に切削屑が付着するおそれを低減することに発明の解決すべき課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被加工物を保持する保持手段と、該保持手段で保持された被加工物を切削する切り刃を外周に有した切削ブレードと、該切削ブレードを回転させるスピンドルを含むスピンドルユニットと、該切削ブレードを覆い底部に該切削ブレードの該切り刃の先端を突出させるスリット状開口部を有し該スピンドルユニットに装着されたブレードカバーと、を備えた切削装置であって、該スリット状開口部の幅方向外側には、被加工物の上面に切削液を供給する切削液供給手段を備え、該ブレードカバーには、一端が該スリット状開口部に連通するとともに他端が吸引源に接続された排出口に連通する排出路が形成され、該排出口は、該排出路の該吸引源側の先端に配置され、該ブレードカバーの該底部には、該底部における該切削ブレードの回転方向と逆方向に該スリット状開口部から該ブレードカバーの外側に伸長するエアー取り込み路が形成され、該スリット状開口部の一端で該排出路の延長線上には、該スリット状開口部より幅が広い吸引開口部が形成され、該切削液供給手段は、該切削ブレードに対して切削液を直接供給せず、被加工物の上面に供給された切削液が、該排出路及び該吸引開口部に作用する吸引力によって該切削ブレードと被加工物とが接触する加工点に集められ、該切削ブレードの回転に伴って該スリット状開口部を介して該排出路に取り込まれた後、該排出口を介して該ブレードカバー外に排出される。
【0009】
上記切削液供給手段は、上記ブレードカバーの上記底部に形成された切削液供給口と、一端が該切削液供給口に接続されるとともに他端が切削液供給源に接続された切削液供給路とを備え、該切削液供給口は、上記スリット状開口部を挟み該スリット状開口部の伸張方向に複数並ぶことにより一対の切削液供給領域を構成することが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる切削装置は、被加工物に切り込む切削ブレードの先端の一部が突出するスリット状開口部が底部に形成されたブレードカバーと、スリット状開口部の外側で被加工物の上面に切削液を供給する切削液供給手段とを備えているため、切削時に被加工物に供給される切削液が、ブレードカバーによりカバーされた切削ブレードにかかって周囲に飛散することがない。また、このブレードカバーには、スリット状開口部に連通するとともに吸引源に接続された排出口が形成されているため、切削液供給手段によって被加工物の上面に供給された切削液を、吸引源の作動により切削ブレードと被加工物とが接触する加工点に流れ込ませて加工点の冷却を行うとともに、切削によって発生した切削屑を切削液に取り込ませながら、即座に排出口からブレードカバーの外部に排出させることができる。このように、切削屑を含んだ切削液が吸引されて排出されるため、被加工物の上面に切削屑が付着するおそれを低減することができる。
【0011】
上記ブレードカバーの底部には、切削ブレードの回転方向と逆方向側に、スリット状開口部からブレードカバーの外側に伸張するエアー取り込み路が形成されているため、吸引源の作動により、切削屑を含んだ切削液を安定して吸引してブレードカバーの排出路に取り込むとともに上記排出口からブレードカバーの外部へ該切削液を排出することができる。
【0012】
上記切削液供給手段は、ブレードカバーの底部においてスリット状開口部を挟むとともにスリット状開口部の伸張方向に並んで形成された複数の切削液供給口と、一端が切削液供給口に接続されるとともに他端が切削液供給源に接続された切削液供給路とを備えているため、切削液を切削ブレードに直接供給しなくても、切削ブレードと被加工物とが接触する加工点に対して効果的に切削液を供給することができる。したがって、被加工物の上面に切削屑を含んだ切削液が飛散することがなくなり、被加工物の上面に切削屑が付着するのを防止することができる。
【0013】
上記スリット状開口部の一端で、かつ上記排出路の延長線上には、吸引開口部が形成されているため、より多くの切削液や大きい切削屑を効率よく吸引開口部で吸引し上記排出口からブレードカバーの外部へ排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】切削装置の一例を示す斜視図である。
図2】切削手段の構成を示す斜視図である。
図3】ブレードカバーの構成を示す斜視図である。
図4】ブレードカバーの構成を示す底面図である。
図5】ブレードカバーの構成を示す図4のA−A線断面図である。
図6】ブレードカバーの構成を示す図4のB−B線断面図である。
図7】ブレードカバーの構成を示す図4のC−C線断面図である。
図8】ブレードカバーの下方において切削液が流れる方向を説明する説明図である。
図9】切削加工の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示す切削装置1は、装置ベース2を有しており、装置ベース2の前部には、複数の被加工物を収容するカセット3が配設されている。装置ベース2の上面2aには、カセット3から切削前の被加工物を搬出するとともにカセット3に切削後の被加工物を搬入する搬入出手段4と、被加工物が仮置きされる仮置き領域5と、被加工物を保持する保持手段7とが配設されている。カセット3の近傍には、仮置き領域5と保持手段7との間で被加工物を搬送する第1の搬送手段6aが配設されている。
【0016】
保持手段7は、図示しない吸引源に接続されており被加工物を吸引保持することができる。保持手段7の周囲は、移動基台70によってカバーされており、保持手段7は移動貴台70とともにX軸方向に往復移動することができる。この保持手段7の移動経路(X軸方向)上には、被加工物の切削すべき領域を認識するための撮像手段8と、被加工物に切削を施す切削手段10とを備えている。撮像手段8は、光学系の撮像素子を有しており、被加工物を個々のデバイスに分割するための領域を認識することができる。
【0017】
装置ベース2の中央には、切削手段10によって切削された被加工物の洗浄を行う洗浄領域9と、保持手段7から洗浄領域9に切削後の被加工物を搬送する第2の搬送手段6bとが配設されている。
【0018】
切削手段10は、図2に示すように、被加工物を切削する切削ブレード11と、切削ブレード11を回転可能に支持するスピンドルユニット12とを少なくとも備えている。スピンドルユニット12は、切削ブレード11が装着され回転可能なスピンドル120と、スピンドル120を回転可能に囲繞するスピンドルハウジング121とを少なくとも有しており、図示しないモータによってスピンドル120を回転させることにより、切削ブレード11を所定の回転速度で回転させることができる。
【0019】
切削ブレード11は、中央に開口部を有するハブ基台ボス部110とこれに連接したハブ基台テーパー部111の外周部112に切り刃113が装着されて構成されている。この切削ブレード11は、マウント固定ナット115によってスピンドル120と一体化した状態で固定される。
【0020】
切削装置1は、図2で示した切削ブレード11を回転可能にカバーする図3に示すブレードカバー20と、ブレードカバー20に配設され被加工物の上面に対して切削液を供給する切削液供給手段30とを備えている。ブレードカバー20は、切削ブレード11を覆う箱状のカバー本体200を有している。図3の例におけるカバー本体200は、スピンドルハウジング121に取り付けられる後部側カバー200aと、後部側カバー200aに対面して取り付けられる前部側カバー200bとから構成されている。
【0021】
ブレードカバー20の具体的な構成について説明する。図4に示すように、カバー本体200の底部201には、切削ブレード11の切り刃113の厚さ方向に所定の幅Lを有するスリット状開口部21が形成されている。カバー本体200の内部に図2で示した切削ブレード11を収容すると、スリット状開口21から切り刃113の刃先113a(図2参照)が僅かに突出するようになっている。スリット状開口部21の幅Lは、切り刃113の先端形状よりも僅かに大きい幅を有してればよく、例えば1mm以下の幅となっている。
【0022】
カバー本体200の底部201には、スリット状開口部21に連通してエアー取り込み路22が形成されている。エアー取り込み路22は、切削ブレード11の回転方向と逆方向側(上流側)にブレードカバー20の外側にむけて伸張しており、図3で示したカバー本体200の底部201の一端に至るまで形成されている。すなわち、エアー取り込み路22は、底部201の一端において開口している。
【0023】
図5に示すように、カバー本体200の内部には、一端がスリット状開口部21に連通するとともに他端が排出口25を介して吸引源27に連通する排出路24が形成されている。排出路24は、カバー本体200の底部201に対して傾斜を設けて図2で示した切削ブレード11の回転方向における先頭側に形成されている。排出路24の吸引源27側の先端にはパイプ26が挿入されており、そのパイプ26の露出部分がカバー本体200の外側に突出している。排出路24にパイプ26が挿入されていることにより、図3に示した後部側カバー200aと前部側カバー200bとの合わせ面からエアーが漏れて吸引圧力が低下するのを防止している。
【0024】
図5に示すように、スリット状開口部21の一端で、かつ排出路24の延長線上には吸引開口部23が形成されている。吸引開口部23は、図4に示すスリット状開口部21の幅Lよりも広い幅を有している。図5の例における吸引開口部23は楕円形に形成されているが、この形状には限定されない。このように、スリット状開口部21の一端に幅広の吸引開口部23を形成することにより、切削時に使用される切削液を排出路24に効率よく取り込むことができる。
【0025】
図6に示すように、切削手段10を構成するスピンドル120の先端にはマウントフランジ116が連結されている。切削ブレード11は、マウントフランジ116に装着されるとともに、マウントフランジ116とマウントフランジ116の先端に螺着したマウント固定ナット115とによって挟持されている。一方、図5及び図6に示すように、カバー本体200の中央には、スピンドル120をカバー本体200の内部に挿入させるスピンドル用挿入孔28が形成されている。また、カバー本体200には、スピンドル用挿入孔28に連通してマウントフランジ収容部29が形成されている。マウントフランジ収容部29は、スピンドル120の先端に連結されたマウントフランジ116と、マウント固定ナット115によってマウントフランジ116に固定された切削ブレード11とを収容できるスペースを有している。このようにブレードカバー20は、カバー本体200の内部において、被加工物に接触する切削ブレード11の切り刃113の一部分だけをスリット状開口部21から突出させ、突出部分以外の切削ブレード11を覆うようにして収容できる構成となっている。
【0026】
図7に示すように、切削液供給手段30は、カバー本体200の側部に取り付けられた供給部31と、図4で示したカバー本体200の底部201に形成された複数の切削液供給口32と、一端が切削液供給口32に接続されるとともに他端が供給部31を介して切削液供給源35に接続された切削液供給路33とを備えている。
【0027】
複数の切削液供給口32は、図4に示すスリット状開口部21の伸張方向と平行に一直線上に整列し、当該一直線上に複数の切削液供給口32が整列した部分が切削液供給領域32a、32bとして構成されている。この切削液供給領域32a、32bは、カバー本体200の底部201において図4に示したスリット状開口部21を挟んで少なくとも2つ形成されている。なお、切削液供給口32の個数や形状は特に限定されるものではない。また、切削液供給領域は、2組以上配設されていてもよい。
【0028】
図7に示す切削液供給路33には、カバー本体200の内部を紙面垂直方向にのびるとともに、図4で示したカバー本体200の底部201に形成された2つの切削液供給領域32a、32bのそれぞれに向けて切削液を供給するための接続供給路34が接続されている。図3に示されているように、供給部31は、後部側カバー200aに配設されている。供給部31を後部側カバー200aに配設し、切削液供給源35からブレードカバー200への外配管を1箇所とすることで、例えば切削ブレード11を交換するにあたって前部側カバー200bを取り外す際に前部側カバー200bには外配管がないため、切削ブレード11の交換の作業性が良好となる。
【0029】
以下では、切削装置1の動作例について説明する。図1に示す被加工物Wは、被加工物の一例であって、特に材質等が限定されるものではない。被加工物Wの切削時には、被加工物WはテープTを介して環状のフレームFと一体となって形成され、これがカセット3に複数収容されている。
【0030】
搬入出手段4は、フレームFと一体となった被加工物1をカセット3から引き出して仮置き領域5に仮置きする。次いで、仮置き領域5に仮置きされた被加工物Wを第1の搬送手段6aによって保持手段7に搬送する。保持手段7に被加工物Wが保持された後、保持手段7をX軸方向に移動させ、ブレードカバー20が装着された切削手段10の下方に移動させる。この際、撮像手段8によって、保持手段7に保持された被加工物Wを撮像して切削すべき領域を検出する。
【0031】
ブレードカバー20が装着された切削手段10の下方に保持手段7が移動してきたら、図2で示したスピンドル120が回転し、切削ブレード11を所定の回転速度で回転させるとともに、切削手段10をZ軸方向に下降させ、切削ブレード11の切り刃113によって被加工物Wの上面に対して切削を行う。
【0032】
被加工物Wの切削中は、図3に示した切削液供給手段30が作動し、切削液供給源35から供給部31に切削液を流入させる。図7に示した供給部31に流入した切削液は、接続供給路34を介して全ての切削液供給路33に流れ込むとともに各切削液供給口32から下方に噴出し、図1で示した被加工物Wの上面に供給される。このとき、図2で示した切削ブレード11は、図3で示したブレードカバー20によって全体が覆われており、各切削液供給口32は、切削ブレード11から離れた位置にあるため、切削液供給口32から噴出した切削液が切削ブレード11に直接かかることはない。
【0033】
切削液供給手段30は、回転する切削ブレード11に向けて切削液を直接供給しないため、切削ブレード11の回転によって切削液が切削ブレード11の周囲に飛散することはない。このように、切削液を切削ブレード11に向けて直接供給しないようにしても、複数の切削液供給口32から構成される一対の切削液供給領域32a、32bにおいて切削液を被加工物Wの上面に供給するとともに、図5で示した吸引源27の吸引力が排出路23及び吸引開口部24で作用することにより、図8に示すように、複数の切削液供給口32から噴出した切削液はスリット状開口部21及び吸引開口部23に向けて流れるため、切削ブレード11と被加工物Wとが接触する加工点に切削液を集め、その部分を冷却することができる。そして、吸引源27の吸引力によって、吸引開口部23に集まった切削液を図5で示した排出路24に吸引し、排出口25からブレードカバー20の外側に排出することができる。
【0034】
図9に示すように、切削手段10に対して被加工物WをX方向に相対移動させながら切り刃113によって被加工物Wの上面を切削する際、被加工物Wの上面に供給され溜まった切削液37は、ブレードカバー20の内部で回転する切り刃113の回転に伴って連れ回り、その回転方向に流れやすくなる。そのため、切削時に発生する切削屑40を含んだ切削液37は、スリット状開口部21及び吸引開口部23を介して排出路24に取り込まれやすい。
【0035】
このとき、エアー取り込み路22からブレードカバー20の内部において回転する切り刃113に向けてエアーが取り込まれるため、吸引源27の吸引力が排出路24で安定して作用し、切削液37を排出路24に確実に吸引することができる。
【0036】
さらに、被加工物Wの上面に供給される切削液37の流量が多くなっても、吸引開口部23で効率よく吸引することができる。また、切削屑40が図8に示すスリット状開口部21の幅よりも大きい場合であっても、吸引開口部23を通過できる大きさであれば、スリット状開口部21に切削屑が挟まってしまうことを防止できる。このようにして、切削中に発生する切削屑40は切削液37とともに排出口25からブレードカバー20の外部へ排出される。
【0037】
被加工物Wの切削が完了した後、図1に示す第2の搬送手段6bによって切削後の被加工物Wが洗浄領域9に搬送されて洗浄領域9で被加工物Wが洗浄された後、第1の搬送手段6aによって仮置き領域5に被加工物Wが仮置きされ、洗浄後の被加工物Wは搬入出手段4によりカセット3に収容される。
【0038】
以上のとおり、本発明の切削装置1は、切削ブレード11の切り刃113のうちスリット状開口部21から突出する部分以外をブレードカバー20で覆い、被加工物Wの上面に供給された切削液が吸引されて切削ブレード11の切り刃113と被加工物Wとが接触する加工点に流れ込み、その切削液がスリット状開口部21を介して排出路24に取り込まれ、排出口25を介してブレードカバー20外に排出される構成としたため、切削ブレード11に向けて切削液を直接噴射する必要がなく、切削屑を含んだ切削液が飛び散ることがないとともに、吸引源27の吸引力で切削屑40を含んだ切削液37を排出口25からブレードカバー20の外部へ排出できるため、被加工物Wの上面に切削屑が付着するおそれを低減することができる。
【0039】
切削液供給手段30は、ブレードカバー20の底部201においてスリット状開口部21を挟んで一直線上に並んで形成された複数の切削液供給口32と、一端が切削液供給口32に接続されるとともに他端が切削液供給源35に接続された切削液供給路33とを備えるため、切削液を切削ブレード11に直接供給しなくても、切削ブレード11と被加工物とが接触する加工点に対して効果的に切削液を供給することができる。
【符号の説明】
【0040】
1:切削装置 2:装置ベース 2a:上面 3:カセット 4:搬入出手段
5:仮置き領域 6a:第1の搬送手段 6b:第2の搬送手段 7:保持手段
70:移動基台 8:撮像手段 9:洗浄領域 10:切削手段
11:切削ブレード 110:ハブ基台ボス部 111:ハブ基台テーパー部
112:外周部 113:切り刃 113a:刃先
115:ブレード固定ナット 116:マウントフランジ
12:スピンドルユニット 120:スピンドル 121:スピンドルハウジング
20:ブレードカバー
200:カバー本体 200a:後部側カバー 200b:前部側カバー
201:底部 21:スリット状開口部
22:エアー取り込み路 23:吸引開口部 24:排出路 25:排出口
26:排出カバー 27:吸引源 28:スピンドル用挿入孔
29:マウントフランジ収容部
30:切削液供給手段 31:供給部 32:切削液供給口 33:切削液供給路
34:接続供給路 35:切削液供給源 36:切削液供給領域 37:切削液
40:切削屑
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9