(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
中心軸回りに回転する回転部材の外周面に巻き付けられながら搬送されるシート状部材に超音波溶着処理を行う超音波溶着装置であって、
前記回転部材と、
前記回転部材と一緒に前記中心軸回りに回転する超音波処理ユニットと、を備え、
前記超音波処理ユニットは、超音波振動するホーンと、前記ホーンとで前記シート状部材を挟み込むアンビルと、を有し、
前記ホーン及び前記アンビルのうちの少なくとも一方の超音波処理部材は、前記シート状部材の搬送方向と交差するCD方向に往復移動可能に案内されているとともに、前記シート状部材において前記回転部材に巻き付けられている部分に対して、前記超音波処理部材は、前記CD方向に往復移動を行い、
前記回転部材の前記外周面は、前記CD方向に関して互いに異なる位置に第1区間と第2区間とを有し、
前記往復移動の往路及び復路のうちのどちらかの経路において前記超音波処理部材が前記第1区間を通過するときに、前記CD方向の単位長さ当たりに投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)と、前記往路及び前記復路のうちのどちらかの経路において前記超音波処理部材が前記第2区間を通過するときに、前記CD方向の単位長さ当たりに投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)とを、互いに異ならせる超音波エネルギー調整部を有していることを特徴とする吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置である。
【0016】
このような吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置によれば、CD方向の位置が互いに異なる第1区間と第2区間とにおいて、投入する超音波エネルギーの大きさ(J/m)を互いに異ならせている。そのため、溶着に必要な超音波エネルギーの大きさ(J/m)が第1区間に対応する部分と第2区間に対応する部分とで互いに異なるシート状部材に対して適切に溶着処理を行うことができる。
【0017】
かかる吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置であって、
前記往復移動の往路及び復路のうちの一方の経路において前記超音波処理部材が前記第1区間と前記第2区間とを通過する際に、前記シート状部材において前記第1区間に対応する第1部分及び前記第2区間に対応する第2部分に、それぞれ、対応する大きさ(J/m)の前記超音波エネルギーを投入することによって、前記第1部分及び前記第2部分をそれぞれ溶着するのが望ましい。
【0018】
このような吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置によれば、往路及び復路のうちの一方の経路において、溶着に必要な大きさ(J/m)の超音波エネルギーを第1区間及び第2区間に投入する。よって、第1区間で溶着に必要な超音波エネルギーと第2区間で溶着に必要な超音波エネルギーとが、第1区間又は第2区間の一部に対して二重に投入されてしまう事態を有効に防ぐことができる。
【0019】
かかる吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置であって、
前記往復移動の往路及び復路のうちの一方の経路において前記超音波処理部材が前記第1区間を通過する際に、前記シート状部材において前記第1区間に対応する第1部分に、対応する大きさ(J/m)の前記超音波エネルギーを投入することによって、前記第1部分を溶着し、
前記往復移動の往路及び復路のうちの他方の経路において前記超音波処理部材が前記第2区間を通過する際に、前記シート状部材において前記第2区間に対応する第2部分に、対応する大きさ(J/m)の前記超音波エネルギーを投入することによって、前記第2部分を溶着し、
前記往路では、前記第1区間を通過した後に前記第2区間を通過するとともに、前記往路における前記第2区間では、前記第2部分を溶着せず、
前記復路では、前記第2区間を通過した後に前記第1区間を通過するとともに、前記復路における前記第1区間では、前記第1部分を溶着しないのが望ましい。
【0020】
このような吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置によれば、往路において第1区間を超音波処理部材が通過する際に、シート状部材の第1部分を溶着するが、その後に同往路で通過する第2区間では、シート状部材の第2部分を溶着しない。よって、往路路においてシート状部材のCD方向の端縁部から溶着屑が飛び出して残留することを確実に防ぐことができる。また、同様に、復路において第2区間を超音波処理部材が通過する際に、シート状部材の第2部分を溶着するが、その後に同復路で通過する第1区間では、シート状部材の第1部分を溶着しない。よって、復路においてシート状部材のCD方向の端縁部から溶着屑が飛び出して残留することを確実に防ぐことができる。
【0021】
かかる吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置であって、
前記シート状部材は、厚さ方向に積層された複数枚のシートを有し、
前記シート状部材は、前記シートの積層枚数が異なる複数の部分を前記CD方向に並んで有し、
前記複数の部分のうちで前記積層枚数が多い部分を第1部分とし、前記第1部分よりも前記積層枚数が少ない部分を第2部分とした場合に、
前記第1部分には、前記第1区間が対応付けられており、前記第2部分には、前記第2区間が対応付けられており、
前記第1区間において前記単位長さ当たりに投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)は、前記第2区間において前記単位長さ当たりに投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)よりも大きいのが望ましい。
【0022】
このような吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置によれば、積層枚数が多い第1部分に投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)は、積層枚数が少ない第2部分に投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)よりも大きくされている。よって、第1部分及び第2部分のそれぞれの溶着に適した大きさ(J/m)の超音波エネルギーを、第1部分及び第2部分にそれぞれ投入することができる。そして、その結果として、第1部分への超音波エネルギーの投入不足による接合不良、及び第2部分への超音波エネルギーの投入過剰による溶損等の不具合を効果的に防ぐことができる。
【0023】
かかる吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置であって、
前記シート状部材は、互いの溶着強度を異ならせるべき複数の部分をCD方向に並んで有し、
前記複数の部分のうちで前記溶着強度を高くすべき部分を第1部分とし、前記第1部分よりも前記溶着強度を低くすべき部分を第2部分とした場合に、
前記第1部分には、前記第1区間が対応付けられており、前記第2部分には、前記第2区間が対応付けられており、
前記第1区間において前記単位長さ当たりに投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)は、前記第2区間において前記単位長さ当たりに投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)よりも大きいのが望ましい。
【0024】
このような吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置によれば、高い溶着強度が必要な第1部分には、大きな大きさ(J/m)で超音波エネルギーを投入し、低い溶着強度が必要な第2部分には、小さな大きさ(J/m)で超音波エネルギーを投入する。よって、第1部分の溶着強度を第2部分の溶着強度よりも高くすることができる。
【0025】
かかる吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置であって、
前記超音波エネルギー調整部は、前記単位長さ当たりに投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)の変更を、前記ホーンの超音波振動の振幅の変更で行うのが望ましい。
【0026】
このような吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置によれば、超音波エネルギーの大きさ(J/m)の変更を、超音波振動の振幅の変更によって行うので、当該超音波エネルギーの大きさ(J/m)の変更を、容易且つ高い応答性で行うことができる。そして、これにより、第1区間及び第2区間のそれぞれに対して、対応する大きさ(J/m)の超音波エネルギーを速やかに投入可能となる。
【0027】
かかる吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置であって、
前記超音波エネルギー調整部は、前記単位長さ当たりに投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)の変更を、前記ホーンと前記アンビルとで前記シート状部材を挟み込む挟み込み力の大きさを変更することで行うのが望ましい。
【0028】
このような吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置によれば、超音波エネルギーの大きさ(J/m)の変更を、上記の挟み込み力の大きさの変更によって行うので、当該超音波エネルギーの大きさ(J/m)の変更を、容易且つ確実に行うことができる。
【0029】
かかる吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置であって、
前記超音波エネルギー調整部は、前記単位長さ当たりに投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)の変更を、前記ホーンと前記アンビルとの間の隙間の大きさを変更することで行うのが望ましい。
【0030】
このような吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置によれば、超音波エネルギーの大きさ(J/m)の変更を、ホーンとアンビルとの間の隙間の大きさの変更によって行うので、当該超音波エネルギーの大きさ(J/m)の変更を、容易且つ確実に行うことができる。
【0031】
かかる吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置であって、
前記超音波エネルギー調整部は、前記単位長さ当たりに投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)の変更を、前記超音波処理部材の前記CD方向の移動速度値を変更することで行うのが望ましい。
【0032】
このような吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置によれば、超音波エネルギーの大きさ(J/m)の変更を、超音波処理部材のCD方向の移動速度値の変更によって行うので、当該超音波エネルギーの大きさ(J/m)の変更を確実に行うことができる。
【0033】
かかる吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置であって、
前記ホーン及び前記アンビルのうちの前記一方の超音波処理部材は、前記回転部材の前記外周面よりも外方に配置されつつ回転可能に設けられたローラー部材を有し、
前記ローラー部材は、他方の超音波処理部材として前記回転部材の前記外周面に相対移動不能に前記CD方向に延びて設けられたレール状部材を転がりながら前記CD方向に移動するのが望ましい。
【0034】
このような吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置によれば、他方の超音波処理部材たるレール状部材は、回転部材の外周面に相対移動不能に設けられている。よって、当該他方の超音波処理部材は、同外周面に巻き付けられたシート状部材との間の相対的位置関係を一定の状態に維持できる。そして、その結果、超音波溶着処理の安定化を図れる。
【0035】
かかる吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置であって、
前記ホーンと前記アンビルとが前記シート状部材を挟み込んだ状態で、前記ホーン及び前記アンビルの両方が前記CD方向に往復移動するのが望ましい。
【0036】
このような吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着装置によれば、ホーン及びアンビルの両方が、シート状部材に対してCD方向に相対移動する。よって、超音波溶着処理に起因して少なくともホーンに付着・堆積し得る溶着滓を、CD方向の往復移動中におけるシート状部材との当接によって順次拭き取ることができて、その結果、ホーンでの溶着滓の堆積を効果的に防ぐことができる。
【0037】
また、
中心軸回りに回転する回転部材の外周面に巻き付けられながら搬送されるシート状部材に超音波溶着処理を行う超音波溶着方法であって、
前記回転部材と一緒に超音波処理ユニットを前記中心軸回りに回転することと、
前記超音波処理ユニットが具備するホーンが超音波振動をすることと、
前記ホーンに対向して配置されたアンビルとで前記シート状部材を挟み込みながら、前記ホーン及び前記アンビルのうちの少なくとも一方の超音波処理部材が、前記シート状部材において前記回転部材に巻き付けられている部分に対して前記CD方向に往復移動を行うことと、を有し、
前記回転部材の前記外周面は、前記CD方向に関して互いに異なる位置に第1区間と第2区間とを有し、
前記往復移動の往路及び復路のうちのどちらかの経路において前記超音波処理部材が前記第1区間を通過するときに、前記CD方向の単位長さ当たりに投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)と、前記往路及び前記復路のうちのどちらかの経路において前記超音波処理部材が前記第2区間を通過するときに、前記CD方向の単位長さ当たりに投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)とを、互いに異ならせることを特徴とする吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着方法である。
【0038】
このような吸収性物品に係るシート状部材の超音波溶着方法によれば、CD方向の位置が互いに異なる第1区間と第2区間とにおいて投入する超音波エネルギーの大きさ(J/m)を互いに異ならせている。そのため、溶着に必要な超音波エネルギーの大きさ(J/m)が第1区間に対応する部分と第2区間に対応する部分とで互いに異なるシート状部材に対して適切に溶着処理を行うことができる。
【0039】
===第1実施形態===
本発明に係る超音波溶着装置20は、製造ラインで搬送される連続したシート状部材1aに対して、その搬送方向に間隔をあけながら例えば所定ピッチP1で溶着部14を形成する装置である。そして、ここでは、当該シート状部材1aとしてパンツ型使い捨ておむつ1の基材1aを例示している。
【0040】
図2A及び
図2Bは、超音波溶着装置20へ搬送されるおむつ1の基材1aの説明図であって、両図とも概略斜視図である。なお、
図2Aは、おむつ1の基材1aが二つ折りされる前の状態を示しており、
図2Bは、同基材1aが二つ折りされて、超音波溶着装置20に搬送される直前の状態を示している。また、
図2Cは、
図2A中のC−C断面図であり、
図2Dは、
図2B中のD−D断面図であるが、どちらの図でも、吸収性本体4、脚回り弾性部材6、及び胴回り弾性部材7を不図示としている。
【0041】
おむつ1の基材1aは、搬送方向に連続した連続シート2aを有している。そして、
図2Aの時点では、同連続シート2aにおける着用者の肌側面に、搬送方向に製品ピッチP1で間隔をあけて吸収性本体4,4…が載置されつつ接着等で接合された状態にある。
また、この時点の基材1aには、搬送方向に互いに隣り合う吸収性本体4,4同士の間の位置に脚回り開口部1LHが形成されている。そして、この脚回り開口部1LHに沿って、脚回り開口部1LHに伸縮性を付与する脚回り弾性部材6が貼着され、更には、胴回り開口部1BHとなるべき各端縁部1ae,1aeに沿っても、胴回り開口部1BHに伸縮性を付与する胴周り弾性部材7が貼着されている。
【0042】
連続シート2aには、例えば二層構造のシート2aが使用されている(
図2Cを参照)。すなわち、当該連続シート2aは、おむつ1の着用時に着用者の肌側を向いて内層をなす連続シート2a1(以下、内層シート2a1とも言う)と、同着用時に非肌側を向いて外層をなす連続シート2a2(以下、外層シート2a2とも言う)と、を有し、かかる内層シート2a1と外層シート2a2とは、厚さ方向に重ね合わせられつつ接着や溶着等で接合されている。
【0043】
また、この例では、外層シート2a2は、内層シート2a1よりも幅方向に大きくされており、これにより、外層シート2a2に内層シート2a1が重ね合わせられた状態においては、外層シート2a2は、内層シート2a1の幅方向の両端部2a1e,2a1eよりも外方に飛び出している。そして、かかる飛び出した各部分2a2e,2a2eは、それぞれ、幅方向の内側に折り返されていて、これにより、当該各部分2a2e,2a2eは、
図2Cに示すように、内層シート2a1の幅方向の各端部2a1e,2a1eを覆っている。よって、連続シート2aのうちで幅方向の各端部2ae,2aeは、それぞれ、三枚重ねたる三層構造になっている。つまり、正確に言えば、連続シート2aのうちで各端部2ae,2ae以外の部分2anが、二枚重ねたる二層構造となっている。
【0044】
かかる内層及び外層シート2a1,2a2の素材例としては、熱可塑性樹脂等の熱溶着性素材からなる不織布や織布、フィルムなどが挙げられるが、超音波溶着が可能な素材、つまり超音波エネルギーを投入することにより摩擦発熱で溶融して接合可能な素材であれば、何等これに限らない。
【0045】
一方、吸収性本体4は、排泄液を吸収するものであり、パルプ繊維等の液体吸収性繊維や高吸収性ポリマー等の液体吸収性粒状物を略砂時計形状などの所定形状に成形してなる成形体を本体とする。そして、かかる成形体は、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性の被覆シート(不図示)で被覆されているとともに、更に、同成形体は、非肌側から液不透過性の防漏シートで覆われている。
【0046】
そして、かような
図2Aの基材1aは、超音波溶着装置20に送り込まれる直前において、その幅方向の略中央部たる股下部13を折り位置として二つ折りにされる。そして、これにより、同基材1aは、
図2Bのような二つ折り状態で超音波溶着装置20に送られる。つまり、おむつ1の前身頃10に相当する部分と、後身頃11に相当する部分とが、上下に重ね合わせられた状態で、超音波溶着装置20へ搬送される。
【0047】
但し、この時点のおむつ1の基材1aにあっては、互いに重ね合わせられた前身頃10に相当する部分と後身頃11に相当する部分とが、未だ未接合の状態にある。そのため、当該基材1aに対して、超音波溶着装置20が、おむつ1の胴周りの側端部1eに相当する部分1eに溶着処理を施して溶着部14を形成することにより、基材1aの前身頃10と後身頃11とを接合する。
【0048】
ここで、この溶着対象部分1e、つまりおむつ1の胴周りの側端部1eに相当する部分1eは、基材1a上における吸収性本体4の両脇の位置に搬送方向に製品ピッチP1で現れる。よって、超音波溶着装置20は、基材1aのうちで吸収性本体4の両脇の部分1eに、搬送方向に製品ピッチP1で溶着部14を形成する。なお、このとき、
図2Bに示すように、一つの溶着対象部分1eにつき、少なくとも一対の溶着部14,14が搬送方向に並んで形成される。そして、かかる溶着部14が形成された基材1aは下工程へと送られて、当該下工程では、上記一対の溶着部14,14同士の間の部分1cで順次基材1aが分断されて、これにより、胴周り開口部1BHや脚回り開口部1LHを有したおむつ1が生成される。
【0049】
ところで、
図2Aの状態たる基材1aが二つ折りされる前の状態では、
図2Cを参照して既述のように、基材1aの連続シート2aは、三枚重ねの部分2aeと二枚重ねの部分2anとを有している。そして、
図2Bのように基材1aが二つ折りされる際には、
図2Dのように三枚重ねの部分2ae,2ae同士が重ね合わせられるとともに、二枚重ねの部分2an,2an同士が重ね合わせられることから、二つ折り後の基材1aは、六枚重ねの部分1a6(第1部分に相当)と四枚重ねの部分1a4(第2部分に相当)と、を有した状態になっている。そのため、上述の基材1aにおける溶着対象部分1eも、六枚重ねの部分1a6と四枚重ねの部分1a4と、を有しており、超音波溶着装置20は、このようにシート2a1,2a2…の積層枚数が異なる各部分1a4,1a6に対してそれぞれ溶着処理を行うことになるが、このことは、後述する本発明の特徴的構成に関係する。
【0050】
図3は、超音波溶着装置20を上方斜め前方から見た概略斜視図であり、
図4は、
図3中のIV−IV矢視の概略側面図であり、
図5は、
図3中のV−V矢視の概略正面図である。また、
図6は、
図4において基材1aと回転ドラム30とを取り外すとともにコラム41等の一部の構成を破断して示す概略側面図である。
【0051】
なお、以下の説明では、製造ラインにおいて基材1aの搬送方向と直交する方向のことを「CD方向」とも言う。この例では、CD方向は水平方向を向いている。また、基材1aは、同基材1aが連続する連続方向に沿って搬送されているが、設計上は、かかる基材1aの幅方向と、上記のCD方向とは平行関係にある。なお、基材1aの厚さ方向は、基材1aの連続方向及び幅方向の両者と直交関係にある。
【0052】
図3及び
図5に示すように、この超音波溶着装置20は、CD方向に沿った中心軸C30回りに一方向に回転する略円筒形状の回転ドラム30(回転部材に相当)と、同回転ドラム30と一緒に上記中心軸C30回りに回転する複数(この例では4つ)の超音波処理ユニット60,60…と、上工程から搬送される基材1aを、回転ドラム30の外周面30sに対して回転方向Dc30の所定範囲Rw(
図8)に亘って巻き付けながら下工程へ送り出すための一対の案内ロール90a,90bと、を備えている。
【0053】
そして、回転ドラム30は、上工程から搬送される基材1aの搬送速度値(m/分)と概ね同じ周速値(m/分)で駆動回転している。よって、回転ドラム30の外周面30sは基材1aとの相対滑りが概ね無い状態で当該基材1aを巻き付けながら外周面30sに沿って搬送し、そして、基材1aが上記所定範囲Rwを移動後には、当該基材1aを外周面30sから離して下工程へと送り出して行く。
【0054】
なお、以下では、説明し易くする目的で、回転ドラム30の周速値(m/分)は一定である前提で説明する。すなわち、実際の製造ラインでは、回転ドラム30の周速値(m/分)は変化し得る。例えば、製造ラインの立ち上げ時や立ち下げ時、並びに突発トラブル時などでは、定常速度値たる一定の周速値(m/分)とは異なる周速値で回転ドラム30は回転する。しかし、おむつ1を製造する稼働時間の大半においては、回転ドラム30は、上記の定常速度値たる一定の周速値(m/分)で回転しており、これと比べて、立ち上げ時等のように非定常な速度値で回転する時間は、ごくわずかである。よって、上記前提に基づいて説明しても、本発明の概念の理解の妨げにはならないので、以下では、その前提で説明する。
【0055】
図3及び
図5に示すように、各超音波処理ユニット60,60…は、回転ドラム30の回転方向Dc30に所定角度(例えば90°)おきに設けられている。そして、各超音波処理ユニット60は、それぞれ、回転ドラム30の外周面30sに相対移動不能に配置されて超音波振動するホーン61と、当該ホーン61と共同して基材1aを挟み込むべくホーン61よりも回転ドラム30の回転半径方向Dr30の外方に配置されたローラー状のアンビル71(ローラー部材に相当)と、を有している。
ここで、ホーン61は、CD方向に延設されてレール状をなしているとともに、かかるレール状のホーン61(レール状部材に相当)に対して、ローラー状のアンビル71(以下、アンビルローラー71とも言う)が、CD方向に沿って転動可能とされており、これにより、基材1aのうちでホーン61上に乗っている部分1apに対して、同アンビルローラー71はCD方向に往復移動可能となっている。よって、かかる往復移動の最中に、基材1aのうちでアンビルローラー71とホーン61とで挟み込まれる部分1apに対して選択的にホーン61から超音波エネルギーが投入されて、これにより、基材1aのうちの上記部分1apに溶着部14が形成される。
【0056】
以下、超音波溶着装置20の構成について詳しく説明する。
図3に示すように、回転ドラム30は、CD方向を法線方向とする断面での形状が例えば正円形状の円筒体を本体する。この断面形状の図心たる円心には、上記の中心軸C30と同心に軸部材31が一体に設けられているとともに、当該軸部材31の軸心方向をCD方向に向けた姿勢で、
図6の軸受け部材31brgによって当該軸部材31は回転可能に支持されている。そして、これにより、回転ドラム30は、上記の中心軸C30回りに回転可能となっている。
【0057】
また、かかる回転ドラム30には、駆動源としてのサーボモータ30Mから適宜な回転力伝達機構を介して回転力が付与される。そして、これにより、回転ドラム30は、一方向に駆動回転される。
例えば、
図6の例では、回転力伝達機構として所謂巻き掛け伝動装置が使用されている。すなわち、当該巻き掛け伝動装置は、上記の軸部材31の一端部31ebに同心且つ一体に設けられたプーリー31PLと、サーボモータ30Mの駆動回転軸と同心且つ一体に設けられたプーリー30MPLとの両者に無端状のタイミングベルト30TBを巻き掛けることによって、サーボモータ30Mが生成する駆動回転力を回転ドラム30の中心軸C30をなす上記軸部材31に伝達する。そして、これにより、回転ドラム30はサーボモータ30Mによって駆動回転される。但し、回転力伝達機構は、何等これに限らない。例えば、上記の各プーリー31PL,30MPLに代えてそれぞれ歯車を設け、これにより、上記回転力伝達機構を一群の歯車によって構成しても良い。また、この例では、回転ドラム30の断面形状を正円形状としているが、何等これに限らず、例えば、超音波処理ユニット60の配置数以上の数の角部を有した正多角形等の多角形形状としても良い。
【0058】
図5に示すように、超音波処理ユニット60,60…は、回転ドラム30の回転方向Dc30に所定角度おきに複数(例えば4つ)設けられている。当該所定角度は、回転ドラム30の外周面30s上での回転方向Dc30の長さがおむつ1の一つ分に相当する長さに概ね揃うような角度に設定されており、
図5の例では、90°に設定されている。そのため、超音波処理ユニット60,60…の設置数は、4つになっている。また、上工程から基材1aがおむつ1の一つ分に相当する長さだけ送り込まれるのに伴って、上記所定角度だけ回転ドラム30が回転するように、駆動源としての上記サーボモータ30Mは、コンピュータ又はPLC(プログラマブルロジックコントローラ)等の不図示の制御部により制御されており、これにより、基材1aにおける各溶着対象部分1eに、それぞれ各超音波処理ユニット60を対応付けて超音波溶着処理を行うようになっている。かかる回転動作は、例えば、同期信号に基づいて上記のサーボモータ30Mが位置制御されることにより実現される。
【0059】
同期信号は、例えば製造ラインの基準となる装置(例えば、
図2Aの脚回り開口部1LHを打ち抜き形成するロータリーダイカッター装置など)での基材1aの搬送量を計測するロータリー式エンコーダ等の回転検出センサー(不図示)から出力される。かかる同期信号は、例えば製品たるおむつ一つ分の搬送量(前述の製品ピッチP1と概ね同値)を単位搬送量として0°〜360°の各回転角度値を、搬送量に比例して割り当ててなる回転角度信号である。そして、おむつ一つ分だけ搬送される度に、0°から360°までの回転角度値の出力が周期的に繰り返される。但し、同期信号は、何等回転角度信号に限るものではない。例えば上記単位搬送量に0〜8191の各デジタル値を、搬送量に比例して割り当ててなるデジタル信号を、同期信号として用いても良い。
【0060】
図3及び
図5で説明したように、各超音波処理ユニット60は、それぞれ回転ドラム30の外周面30sに対して相対移動不能とすべく後述のコラム41に固定されたCD方向に沿った既述のレール状のホーン61と、ホーン61上を転がりながらCD方向に往復移動可能に設けられたアンビルローラー71と、を有する。
図3、
図5、及び
図6に示すように、ホーン61は、回転ドラム30の回転半径方向Dr30の外方を向いた略平面61sを有し、当該略平面61sをアンビルローラー71が転がるようになっている。また、かかる略平面61sは、超音波振動する発振面61sとして機能する。当該発振面61sは、回転ドラム30の外周面30sと面一か、或いは若干回転半径方向Dr30の外方に飛び出した状態に固定されている。また、かかる発振面61sのCD方向の長さは、回転ドラム30の外周面30sに巻き付いた基材1aのCD方向の両側から発振面61sがはみ出すような寸法に設計されている(例えば、
図10Aを参照)。よって、アンビルローラー71のCD方向の往復移動に基づいて、基材1aのCD方向の全長に亘る長さの溶着部14を形成可能である。
【0061】
かかるホーン61は、ブースターとコンバータとを経由して発振器(何れも不図示)に接続されている。発振器は電気回路を有し、同電気回路は、適宜な電源から電力供給されると、20kHz〜35kHzのうちの一定周波数の電気的信号を生成する。コンバータは、発振器から送られる上記一定周波数の電気的信号をピエゾ素子等によって同じ周波数の機械的振動に変換する。ブースターは、コンバータから送られる上記機械的振動を増幅してホーン61に伝達し、これにより、ホーン61の発振面61sは、同面61sの法線方向に超音波振動する。
【0062】
ここで、超音波振動によって基材1aに投入される超音波エネルギーの大きさ(J)の変更は、周波数が一定の場合には、発振面61sの超音波振動の振幅の変更、又はホーン61の発振面61sがアンビルローラー71とで基材1aを挟み込む力(以下、挟み込み力とも言う)の大きさ(N)の変更によって行うことができる。例えば、挟み込み力の大きさ(N)が一定の場合には、振幅を増減すれば、これに連動して、振動に対する抵抗が増減するために、発振器での消費電力も増減する。そして、当該消費電力が概ね超音波エネルギーとして基材1aに投じられることから、振幅の増減により、基材1aに投じる超音波エネルギーは増減される。一方、振幅が一定の場合には、挟み込み力の大きさ(N)を増減すれば、これに連動して、振動に対する抵抗が増減するために、発振器での消費電力も増減し、そして、当該消費電力が概ね超音波エネルギーとして基材1aに投じられる。よって、挟み込み力の大きさ(N)の増減によっても、基材1aに投じる超音波エネルギーは増減される。
【0063】
なお、前者の振幅の変更については、発振器によって行うことができる。すなわち、上記の発振器は、コンピュータ又はPLC等で構成された超音波エネルギー調整部(不図示)から送信される制御信号に基づいて、超音波振動の振幅を任意値に変更可能に構成されている。また、後者の挟み込み力の大きさ(N)の変更については、後述するアンビルローラー71に付設されたエアシリンダー75(
図7A及び
図7Bを参照)によって行うことができて、これについては後述する。ちなみに、この例では、発振器は、超音波振動の振幅(釣り合い位置から最大変位までの移動距離のこと)を0ミクロン〜30ミクロンの間の任意値に調整可能に構成されているが、調整可能な振幅の範囲は、何等これに限らない。
【0064】
一方、
図5及び
図6を参照して既述のように、アンビルローラー71は、ホーン61の発振面61sに対向しつつ、発振面61sよりも回転ドラム30の回転半径方向Dr30の外方の位置に配置されている。そして、発振面61sを転がりながらCD方向に往復移動可能に設けられている。かかるアンビルローラー71の往復移動動作は、例えば、次のようにして実現されている。
【0065】
図3、
図5、及び
図6に示すように、回転ドラム30の内周側には、同回転ドラム30の中心軸C30をなす前述の軸部材31と同軸に、多角形筒体状のコラム41が設けられている。かかるコラム41は、その大半の部分を、回転ドラム30の内周側に収容されており、CD方向の一端部41ebが回転ドラム30から飛び出している。また、当該コラム41は、不図示の連結部材によって、回転ドラム30の上記軸部材31に一体に連結されており、これにより、回転ドラム30と一緒に中心軸C30回りに回転する。なお、以下の説明では、CD方向に関してコラム41が回転ドラム30から飛び出した方向のことを「後方」と言い、その逆側の方向のことを「前方」と言う。
【0066】
図5に示すように、コラム41の断面形状(CD方向を法線方向とする断面での形状)は、例えば超音波処理ユニット60,60…の設置数と同数の角部を有した正多角形形状であり、これにより、コラム41は、超音波処理ユニット60,60…の設置数と同数の壁部41w,41w…を有した筒体となっている。この
図5の例では、4つの超音波処理ユニット60,60…を有していることから、断面形状は正方形であり、つまり、コラム41は4つの壁部41w,41w…を有した正方形の筒体となっている。そして、各壁部41wには、それぞれ、超音波処理ユニット60が一つずつ対応付けられている。すなわち、各壁部41wには、それぞれ、超音波処理ユニット60のアンビルローラー71をCD方向に往復移動するためのリニアガイド45が設けられている。
図6に示すように、リニアガイド45は、壁部41wに固定されたCD方向に延びたレール45Rと、CD方向の両側にスライド可能に上記レール45Rに係合するスライドブロック45SB,45SBとを有している。そして、当該スライドブロック45SB,45SBに、アンビルローラー71を支持する支持ユニット73が固定されている。
【0067】
図7A及び
図7Bに、当該支持ユニット73の説明図を示す。なお、
図7Aは、支持ユニット73を回転半径方向Dr30の外方斜め前方から見た概略斜視図であり、
図7Bは、同ユニット73を同外方斜め後方から見た概略斜視図である。
【0068】
支持ユニット73は、スライドブロック45SB,45SB…に固定されるベース部73bと、ベース部73bに揺動可能に支持されつつCD方向に延びたシーソー状部材73ssと、を有している。ここで、シーソー状部材73ssは、CD方向の略中央部に設けられた支持軸73sspによってベース部73bに揺動可能に支持されている。すなわち、シーソー状部材73ssの前端部73ssefと後端部73ssebとの両者は、それぞれ回転ドラム30の回転半径方向Dr30に揺動可能とされており、より詳しくは、前端部73ssefと後端部73ssebとは、互いに略逆動作をするようになっている。また、前端部73ssefには、上記のアンビルローラー71が回転可能に支持されており、他方、後端部73ssebには、シーソー状部材73ssに揺動動作をさせるための駆動源として例えば複動式のエアシリンダー75が設けられている。
図7Bに示すように、エアシリンダー75は、シリンダー部75cと、同シリンダー部75c内に二つの圧力室を区画形成しつつ、同シリンダー部75c内を摺動可能に設けられたピストン(不図示)と、同ピストンに一体且つシリンダー部75cから出没可能に設けられたピストンロッド75prと、を有する。そして、シーソー状部材73ssの後端部73ssebには、ピストンロッド75prの先端部が連結されているとともに、ベース部73bには、シリンダー部75cが固定されている。よって、二つの圧力室へ供給される圧縮エアーの供給圧力(MPa)をそれぞれ操作すれば、ピストンロッド75prの出没動作を通して、アンビルローラー71をホーン61の発振面61sに押し付けたり、同発振面61sからアンビルローラー71を離間させたりすることができる。
例えば、一方の圧力室を大気開放し、他方の圧力室に圧縮エアーを供給すれば、アンビルローラー71とホーン61の発振面61sとで基材1aを挟み込むことができて、更に、圧縮エアーの供給圧力(MPa)を変更すれば、基材1aの挟み込み力の大きさ(N)を調整することができる。なお、エアシリンダー75へ供給する圧縮エアーの供給圧力(MPa)を調整する機構の一例としては、例えば、各圧力室への圧縮エアーの供給経路にそれぞれ圧力調整弁(不図示)を設けるとともに、各供給経路を圧縮エアー源(不図示)に接続及び非接続に切り替える電磁弁等の切り替え弁(不図示)を設けた構成等を例示できるが、何等これに限らない。
【0069】
一方、アンビルローラー71の支持ユニット73をCD方向に往復移動するための駆動力は、コラム41の回転動作から生成される。すなわち、コラム41は回転ドラム30と一体となって回転方向Dc30に回転するが、この超音波溶着装置20には、当該回転動作をCD方向の往復移動動作に変換して各支持ユニット73に伝えることにより、これら支持ユニット73を駆動するカム機構が設けられている。
図6に示すように、かかるカム機構は、例えば、コラム41の内周側に同軸に挿入された円筒部材51を有し、当該円筒部材51は、地面GND側の適宜な支持部材55に回転不能に固定されている。そして、円筒部材51の外周面51sには、リブ状のカム51rが設けられており、他方、支持ユニット73のベース部73bには、一対のカムフォロワ53,53が設けられており、これら一対のカムフォロワ53,53同士は、上記のリブ状のカム51rを前後から挟み込んで係合している。また、リブ状のカム51rは、回転ドラム30の回転方向Dc30に連続した無端状に設けられており、更に、かかるカム51rのCD方向の位置は、同回転方向Dc30の位置に対応させて変化していて、これにより、カム曲線が設定されている。そして、かかるカム曲線の設定によって支持ユニット73の往復移動動作が規定されている。
【0070】
例えば、この例では、回転ドラム30の周速値(m/分)が一定の条件の下、支持ユニット73の往復移動動作の往路と復路との両者において、互いに同値の一定の移動速度値(m/分)で支持ユニット73が移動するように、上記のカム曲線は設定されている。
詳しくは、
図8の概略正面図に示すように、先ず、基材1aが回転ドラム30に巻き付いている巻き付き範囲Rwには、互いに同じ角度の大きさで重複なく第1角度範囲Rw1と第2角度範囲Rw2とが設定されている。そして、カム曲線における第1角度範囲Rw1に対応する部分に対して往路の移動動作たる前進動作を割り付けるべく、当該部分の形状は、リブ状のカム51rのCD方向の位置が回転方向Dc30の位置の変化に比例して前方へ変位するような形状とされている。よって、支持ユニット73が第1角度範囲Rw1を通過する際には、同ユニット73及び付属のアンビルローラー71は、CD方向の後方に設定された後退限Pb(
図6)から前方に設定された前進限Pf(
図6)へと一定の移動速度値(m/分)で移動する。また、カム曲線における第2角度範囲Rw2に対応する部分に対して復路の移動動作たる後退動作を割り付けるべく、当該部分の形状は、リブ状のカム51rのCD方向の位置が回転方向Dc30の位置の変化に比例して後方へ変位するような形状とされている。よって、支持ユニット73が第2角度範囲Rw2を通過する際には、同ユニット73及び付属のアンビルローラー71は、前進限Pfから後退限Pbへと往路の場合と同値の移動速度値(m/分)で移動する。
【0071】
ちなみに、この
図8の例では、第1角度範囲Rw1と第2角度範囲Rw2とは互いに隣接して設定されており、これにより、前進動作によって前進限Pfに到達したアンビルローラー71は、即座に折り返して後退動作を行うようになっている。しかし、何等これに限らない。例えば、前進限Pfにてアンビルローラー71が多少停留した後に、後退動作を行うようにしても良い。
【0072】
また、アンビルローラー71が後退限Pbに位置している状態では、アンビルローラー71は、基材1aを完全に横切り終えていて、基材1aに非当接の状態にある(例えば、
図10A及び
図10Bを参照)。そして、回転方向Dc30における第1及び第2角度範囲Rw1,Rw2以外の角度範囲Rw3では、アンビルローラー71は、後退限Pbに停留するように、上記のカム曲線は設定されている。よって、基材1aの巻き付き範囲Rwの始端をなす巻き付き開始位置Pws、及び巻き付き範囲Rwの終端をなす巻き付き終了位置Pweの両者では、それぞれ、アンビルローラー71は後退限Pbに位置しているので、回転ドラム30の外周面30sへの基材1aの巻き付き動作、及び巻き付き状態の解除動作をアンビルローラー71が阻害することはない。
【0073】
かようなアンビルローラー71は、CD方向の往復移動動作に伴って自転するように構成されている。すなわち、前進動作では、前方に転がるように前方への移動速度値(m/分)と略同じ周速値(m/分)で自転し、後退動作では、後方に転がるように後方への移動速度値(m/分)と略同じ周速値(m/分)で自転する。そして、これにより、基材1aとの間の相対滑りが概ね無い状態で基材1a上をCD方向に転がり移動する。
【0074】
かかる自転動作は、アンビルローラー71の従動回転で行われても良い。例えば、
図7A及び
図7Bに示すように、アンビルローラー71を適宜な軸受け部材(不図示)を介して支持ユニット73に支持することにより、ごく小さな回転抵抗で回転可能としながら、既述のエアシリンダー75で同アンビルローラー71を基材1a越しにホーン61の発振面61sに押し付ける。そうすれば、往復移動動作に伴ってアンビルローラー71は基材1aから回転力を取得して連れ回り、よって、同アンビルローラー71は従動回転で自転する。
【0075】
但し、かかる従動回転では、自転動作の確実性の点で問題がある。そこで、この
図7A及び
図7Bの例では、自転動作を確実に行う目的で、支持ユニット73の往復移動動作を回転動作に変換してアンビルローラー71に伝達する運動変換機構が設けられている。かかる運動変換機構は、所謂巻き掛け伝動機構である。
すなわち、アンビルローラー71の円心と同心且つ一体に設けられた軸部71Aには、プーリー71APLが固定されており、他方、シーソー状部材73ssの支持軸73sspにもプーリー73sspPLが回転可能に支持されている。そして、これらプーリー71APL,73sspPL同士には、無端状のタイミングベルト73TB1が掛け回されている。また、後者のプーリー73sspPLには、別のプーリー73sspPL2が同心且つ一体に固定されており、更に別のプーリー73bebPLが支持ユニット73のベース部73bの後端部73bebに回転可能に支持されている。そして、これら別のプーリー73sspPL2,73bebPL同士にも、別途無端状のタイミングベルト73TB2が掛け回されており、更に、当該タイミングベルト73TB2の一部は、不図示の連結部材を介してコラム41に連結されている。
よって、コラム41に対して支持ユニット73がCD方向に移動すると、この移動量分だけアンビルローラー71が自転する。すなわち、支持ユニット73が前進すれば、その前進の移動量と同じ自転量でアンビルローラー71は前進方向に自転し、他方、支持ユニット73が後退すれば、その後退の移動量と同じ自転量で後退方向に自転する。そのため、アンビルローラー71は、CD方向の往復移動の際に、基材1aに対してほぼ相対滑りをすることなく基材1a上を確実に転がることができる。
【0076】
図9に、アンビルローラー71の概略斜視図を示す。アンビルローラー71の周面71sには、基材1aにパターン状の溶着部14を形成する目的で、複数の突部71p,71p…が設けられている。詳説すると、先ず、アンビルローラー71の周面71sには、その周方向の全長に亘る無端状のリブ71r,71rが、アンビルローラー71の回転軸C71に沿う方向に二条並んで設けられている。そして、各リブ71rの頂面71rsには、それぞれ、複数の島状の突部71p,71p…が、一定の規則性を有したパターンで設けられている。よって、リブ71rの頂面71rsにより基材1aには低圧搾部が形成され、複数の突部71p,71p…の各頂面71ps,71ps…により、低圧搾部よりも大きな圧縮率で高圧搾部が形成される。そして、これにより、溶着部14は、複数の高圧搾部を有したパターン状に形成される。
【0077】
図10Aは、回転ドラム30の外周面30sに巻き付いた基材1aとホーン61との相対位置関係を示す概略図であり、
図10Bは、
図10A中のB−B断面図である。
ここで、
図10Aに示すように、回転ドラム30の外周面30sにおいてアンビルローラー71がCD方向に沿って基材1aを横切る区間を「横切り区間A1a」と定義した場合に、かかる横切り区間A1aには、
図10Bに示すように、基材1aを構成するシート2a1,2a2の積層枚数が互いに異なる部分1a6,1a4が存在している。すなわち、基材1aのうちのCD方向の後端部には、二枚の内層シート2a1と四枚の外層シート2a2とが積層された六枚重ねの部分1a6が存在し、他方、それ以外の部分1a4には、二枚の内層シート2a1と二枚の外層シート2a2とが積層された四枚重ねの部分1a4が存在している。
【0078】
そして、このように基材1aにおいて積層枚数が異なる部分1a4,1a6がCD方向に複数カ所存在している場合には、その積層枚数に応じて溶着に必要な超音波エネルギーの大きさ(J/m)が異なる。すなわち、上記の基材1aのように、四枚重ねの部分1a4と六枚重ねの部分1a6とがCD方向に存在している場合には、六枚重ねの部分1a6では、四枚重ねの部分1a4で溶着に必要な超音波エネルギーよりも大きな超音波エネルギーが必要である。そのため、仮に、四枚重ねの部分1a4用の超音波エネルギーの大きさ(J/m)で六枚重ねの部分1a6を溶着すると、超音波エネルギーの投入不足となって接合不良になる恐れがある。逆に、六枚重ねの部分1a6用の超音波エネルギーの大きさ(J/m)で四枚重ねの部分1a4を溶着すると、超音波エネルギーの投入過剰となって当該部分1a4が溶損してしまう恐れがある。
【0079】
そこで、この超音波溶着装置20では、
図10Bに示すように、横切り区間A1aにおいて六枚重ねの部分1a6に対応する区間を「六枚区間A1a6」(第1区間に相当)と定義し、また、同横切り区間A1aにおいて四枚重ねの部分1a4に対応する区間を「四枚区間A1a4」(第2区間に相当)と定義した場合に、アンビルローラー71が六枚区間A1a6を通過する際にCD方向の単位長さ当たりに投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)と、同ローラー71が四枚区間A1a4を通過する際にCD方向の単位長さ当たりに投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)とを互いに異ならせている。
【0080】
詳しくは次の通りである。先ず、この例では、往路においては溶着に必要な大きさ(J/m)で超音波エネルギーを基材1aに投入し、復路では溶着しない程度の大きさ(J/m)で超音波エネルギーを投入しており、これにより、専ら往路において超音波溶着処理を行う一方で、復路では概ね基材1aを溶着処理しないようにしている。そして、往路においては、六枚区間A1a6を通過する際に、CD方向の単位長さ当たりの大きさ(J/m)を六枚用の溶着に必要な第1所定値(J/m)に維持しながら超音波エネルギーを投入し、また、同往路において上記の六枚区間A1a6の通過後に四枚区間A1a4を通過する際には、CD方向の単位長さ当たりの大きさ(J/m)を四枚用の溶着に必要な第2所定値(J/m)に維持しながら超音波エネルギーを投入しており、そして、かかる第2所定値(J/m)は、上記第1所定値(J/m)よりも小さい値とされている。
よって、六枚区間A1a6では、基材1aにおける六枚重ねの部分1a6を接合不良等無く溶着することができるとともに、四枚区間A1a4でも、基材1aにおける四枚重ねの部分1a4を溶損等無く溶着することができる。
【0081】
このように六枚区間A1a6と四枚区間A1a4とで、投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)を異ならせることは、既述の超音波エネルギー調整部が発振器を制御することでなされる。詳しくは次の通りである。
【0082】
先ず、超音波エネルギー調整部は、アンビルローラー71の往復移動におけるCD方向の位置を常時監視している。かかる監視は、例えば、回転ドラム30の回転角度を検出する回転検出センサーとしてのロータリー式エンコーダ(不図示)から出力される信号に基づいて間接的になされている。すなわち、既述のように回転ドラム30の回転方向Dc30の位置とCD方向の位置との対応関係は、前述のリブ状のカム51rのカム曲線によって一義的に予め定まっており、これにより、回転ドラム30の回転方向Dc30におけるアンビルローラー71の位置がわかれば、現在CD方向のどの位置にアンビルローラー71が位置しているのかを認識することができる。一方、同回転方向Dc30におけるアンビルローラー71の位置は、上記エンコーダの出力信号が示す回転角度(0°〜360°)の値に基づいて検出可能である。
【0083】
そのため、同調整部のメモリには、例えば、往路において上記の六枚区間A1a6と四枚区間A1a4との境界位置PBL(
図10A及び
図10B)に対応する回転角度の値のデータ、又は境界位置PBLの近傍位置に対応する回転角度の値のデータが格納されている。すなわち、境界位置PBLを横断する直前の位置に対応する回転角度の値のデータ、又は、横断する位置に対応する回転角度の値のデータ、或いは、横断し終えた直後の位置に対応する回転角度の値のデータが予め格納されている。
そして、上記エンコーダの出力信号が示す回転角度の値がメモリ内の上記回転角度の値と一致したこと或いは越えたことを同調整部が検知したら、それと同時又はそれから所定時間の経過後に、振幅を六枚用の大きな振幅から、当該振幅よりも小さい四枚用の振幅に変更する。そして、これにより、六枚区間A1a6では、六枚に適した大きさ(J/m)の超音波エネルギーを投入する一方、四枚区間A1a4では、四枚に適した大きさ(J/m)の超音波エネルギーを投入することができる。
【0084】
なお、この例では、復路での振幅は、上記の四枚用の振幅よりも更に小さな振幅に変更される。そして、これにより、復路では超音波溶着処理をほぼ行わないようになっている。かかる復路用の振幅への変更は、例えば、往路においてアンビルローラー71が横切り区間A1aを横断し終える直前か、又は、横断し終える時点か、或いは、横断し終えた直後になされる。そして、かかる変更も、上述と同様に、超音波エネルギー調整部のメモリに予め格納された回転角度の値のデータと、上記エンコーダの出力信号との両者に基づいてなされる。すなわち、上記のメモリには、横切り区間A1aを横断し終える直前の位置に対応する回転角度の値のデータ、又は、同横切り区間A1aを横断し終える位置に対応する回転角度の値のデータ、或いは、同横切り区間A1aを横断し終えた直後の位置に対応する回転角度の値のデータが予め格納されている。そして、上記エンコーダの出力信号が示す回転角度の値がメモリ内の上記回転角度の値と一致したこと或いは越えたことを同調整部が検知したら、それと同時又はそれから所定時間の経過後に、振幅を復路用の小さな振幅に変更する。
【0085】
また、アンビルローラー71が復路から往路へと折り返す過程では、振幅が六枚用の大きな振幅に戻される。かかる振幅の変更は、例えば、復路においてアンビルローラー71が横切り区間A1aを横断し終える直前か、又は、横断し終える時点か、或いは、横断し終えた直後になされる。すなわち、同調整部のメモリには、復路において上記の横切り区間A1aを横断し終える直前の位置に対応する回転角度の値のデータ、又は、同横切り区間A1aを横断し終える位置に対応する回転角度の値のデータ、或いは、同横切り区間A1aを横断し終えた直後の位置に対応する回転角度の値のデータが予め格納されている。そして、上記エンコーダの出力信号が示す回転角度の値がメモリ内の上記回転角度の値と一致したこと或いは越えたことを同調整部が検知したら、それと同時或いはそれから所定時間の経過後に、振幅を復路用の小さな振幅から六枚用の大きな振幅へと変更する。そして、これにより、アンビルローラー71が往路で最初に通過する六枚用の振幅に戻される。
【0086】
ちなみに、当然ながら、前述した六枚区間A1a6に係る第1所定値(J/m)及び四枚区間A1a4に係る第2所定値(J/m)は、各区間A1a6,A1a4に投入すべき超音波エネルギーの最適値に設定される。しかし、六枚区間A1a6及び四枚区間A1a4において投入すべき超音波エネルギーの大きさ(J/m)の最適値は、厳密に言えば、基材1aの構成等に応じて変化し得て、そのため、上記の第1所定値(J/m)及び第2所定値(J/m)に基づいて定まる振幅の最適値についても、基材1aの構成等に応じて変化し得る。よって、当該振幅の最適値の取得は、超音波処理装置20で実際に基材1aを超音波溶着処理するという実機実験を通してなされる。但し、かかる最適値に関し、次のような目安を示すことはできる。すなわち、六枚区間A1a6たる積層枚数が多い方の区間A1a6での振幅の最適値は、15ミクロン〜30ミクロンの範囲の任意値に設定され、この例では、30ミクロンに設定されている。一方、四枚区間A1a4たる積層枚数が少ない方の区間A1a4での振幅は、例えば多い方の区間A1a6での振幅の50%〜90%の範囲の任意値に設定され、望ましくは、70%〜80%の任意値に設定され、この例では、80%に設定されている。そして、このように設定されていれば、六枚区間A1a6での接合不良及び四枚区間A1a4での溶損等の不具合を確実に防ぐことができる。
【0087】
また、この例では、アンビルローラー71とホーン61の発振面61sとで基材1aを挟み込む力の大きさ(N)は、往路の横切り区間A1aに亘って一定値に維持されている。そして、これにより、上記の振幅の変更によって、六枚区間A1a6で投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)よりも四枚区間A1a4で投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)を確実に小さくすることができる。かかる挟み込み力の大きさ(N)の最適値についても、上述と同様に実機実験等を通して得ることができる。
【0088】
ちなみに、復路では、既述のエアシリンダー75によってアンビルローラー71を基材1aから離間する操作も可能であるが、上記の例では、復路でも横切り区間A1aに亘ってホーン61とアンビルローラー71とは互いに共同して基材1aを挟み込んでいる。すなわち、往路及び復路の両方においてホーン61とアンビルローラー71との両者はそれぞれ基材1aに当接していて、基材1aから離間可能なアンビルローラー71についても、基材1aから離間していない。よって、当該横切り区間A1aにおけるアンビルローラー71とホーン61との相対位置関係を一定の状態に維持することができて、その結果、超音波溶着処理の安定化を図れる。また、離間動作を行う場合には、当該離間動作を数百ミリ秒のうちの更に一部という微小時間で行わなければならず、その実行は難しい。詳しくは、通常一つの超音波ユニット60が1分間に行う溶着処理の回数は、数十回〜百数十回に及ぶことから、アンビルローラー71のCD方向の往復移動動作は数百ミリ秒で行われる。そして、これに伴い、上記の離間動作についても、上記の数百ミリ秒のうちの一部で行われねばならないが、かかる微小時間での離間動作の実行は、実際には困難である。そのため、超音波溶着装置20の実現が危ぶまれるが、この例では、離間しないので、超音波溶着装置20を何等問題なく実現可能となる。
【0089】
ところで、この例では、基材1aの溶着に必要な大きさ(J/m)の超音波エネルギーを往路の六枚区間A1a6及び四枚区間A1a4で投入する一方で、復路の四枚区間A1a4及び六枚区間A1a6では溶着に必要な大きさ(J/m)の超音波エネルギーを投入していなかったが、何等これに限らない。すなわち、往路だけでなく、復路の四枚区間A1a4及び六枚区間A1a6においてそれぞれ対応する大きさ(J/m)の超音波エネルギーを投入しても良い。
【0090】
また、上述とは逆に、往路で投入せずに復路で投入しても良い。すなわち、往路の六枚区間A1a6及び四枚区間A1a4では溶着に必要な大きさ(J/m)の超音波エネルギーを投入せずに、復路の四枚区間A1a4及び六枚区間A1a6では溶着に必要な大きさ(J/m)の超音波エネルギーを投入しても良い。ちなみに、かかる復路では、アンビルローラー71が四枚区間A1a4を通過する際には、四枚用の溶着に必要な大きさ(J/m)で超音波エネルギーを投入し、同復路で上記四枚区間A1a4の通過後に六枚区間A1a6を通過する際には、六枚用の溶着に必要な大きさ(J/m)で超音波エネルギーを投入するが、このとき、四枚用の溶着に必要な超音波エネルギーの大きさ(J/m)は、六枚用の溶着に必要な超音波エネルギーの大きさ(J/m)よりも小さいのは言うまでもない。
【0091】
更に、場合によっては、往路の六枚区間A1a6では、溶着に必要な大きさ(J/m)の超音波エネルギーを投入するが、他方、同往路の四枚区間A1a4では、溶着に必要な大きさ(J/m)の超音波エネルギーを投入しないようにし、そして、その代わりとして、当該四枚区間A1a4については、溶着に必要な大きさ(J/m)の超音波エネルギーを復路で投入しても良い。
そして、このようにすれば、
図11Aに示すような問題、すなわち、溶着屑が基材1aのCD方向の端縁部1ae1から飛び出した状態で残留してしまう問題を回避することができる。詳しくは次の通りである。
【0092】
先ず、超音波溶着処理中にアンビルローラー71はCD方向に移動するので、当該溶着処理に伴って基材1aから溶融した溶融物は、CD方向に移動するアンビルローラー71の進行方向の下流側に押し出される傾向にある。よって、上述のように往路の横切り区間A1aに亘って、溶着に必要な大きさ(J/m)の超音波エネルギーを投入した場合には、横切り区間A1aを横切り終える際に、基材1aのCD方向の端縁部1ae1から溶融物が飛び出して固化し得る。そして、これにより、同端縁部1ae1にバリ状に溶着屑が残留してしまい、その結果、おむつ1の見栄えを悪くしてしまう恐れがある。
【0093】
この点につき、上述のように往路については六枚区間A1a6のみで、溶着に必要な大きさ(J/m)の超音波エネルギーを投入し、復路については四枚区間A1a4のみで、溶着に必要な大きさ(J/m)の超音波エネルギーを投入するようにすれば、
図11Bに示すように往路では六枚区間A1a6と四枚区間A1a4との境界位置PBLに溶融物が残留し、他方、復路でも同じく境界位置PBLに溶融物が残留し、そして、かかる境界位置PBLにおいて当該溶融物が固化して溶着屑となる。そのため、基材1aのCD方向の端縁部1ae1からの溶着屑の飛び出しを効果的に回避することができて、その結果、おむつ1の見栄えを良好にすることができる。
【0094】
<<<第1変形例>>>
上述の第1実施形態では、超音波振動の振幅を変更することによって、往路の六枚区間A1a6で基材1aに投入する超音波エネルギーの大きさ(J/m)と同四枚区間A1a4で基材1aに投入する超音波エネルギーの大きさ(J/m)とを異ならせていた。この点につき、この第1変形例では、往路における六枚区間A1a6と四枚区間A1a4との間では振幅を変更せず一定値に維持し、その代わりに、アンビルローラー71とホーン61の発振面61sとの両者で基材1aを挟み込む力たる挟み込み力の大きさ(N)を六枚区間A1a6と四枚区間A1a4とで変更し、これにより、超音波エネルギーの大きさ(J/m)を六枚区間A1a6と四枚区間A1a4とで異ならせている点で主に相違する。
なお、これ以外の点は、概ね上述の第1実施形態と同様である。そのため、以下では、この相違点について主に説明し、同様の構成については、同じ符号を付して、その説明については省略する。
【0095】
先ず、この第1変形例では、超音波エネルギー調整部は、発振器を制御して、これにより、ホーン61の発振面61sの超音波振動の振幅を、例えば30ミクロンの一定値に維持する。また、同調整部は、支持ユニット73に付設されたエアシリンダー75用の既述の圧力調整弁を制御し、これにより、往路の六枚区間A1a6に亘って大きな挟み込み力(N)でもって基材1aを挟み込み、他方、同往路の四枚区間A1a4に亘って、六枚区間A1a6での挟み込み力よりも小さな挟み込み力(N)でもって基材1aを挟み込む。そして、その結果、六枚区間A1a6においてCD方向の単位長さ当たりに投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)は、四枚区間A1a4においてCD方向の単位長さ当たりに投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)よりも大きくされる。
【0096】
ちなみに、例えば、四枚区間A1a4での挟み込み力の大きさ(N)は、六枚区間A1a6での挟み込み力の大きさ(N)の50%〜90%の任意値に設定され、望ましくは、70%〜80%の任意値に設定される。そして、このようにすれば、六枚区間A1a6での接合不良及び四枚区間A1a4での溶損等の不具合をより確実に防ぐことができる。
【0097】
また、この例では、復路での挟み込み力の大きさ(N)を、上記の往路の四枚区間A1a4での挟み込み力の大きさ(N)よりも更に小さくすることにより、復路では基材1aが概ね溶着されないような大きさ(J/m)で超音波エネルギーを投入するようにしているが、何等これに限らない。例えば、上述の逆にしても良い。すなわち、往路では基材1aが溶着されないような大きさ(N)の挟み込み力に設定する一方、復路では溶着される大きさ(N)の挟み込み力に設定しても良い。また、往路だけでなく復路においても、四枚区間A1a4と六枚区間A1a6とのそれぞれに対して、往路での各区間A1a4,A1a6の場合と同じ大きさ(N)の挟み込み力を設定しても構わない。
【0098】
<<<第2変形例>>>
図12Aは、第2変形例に係る超音波処理ユニット60aを回転ドラム30の回転方向Dc30から見た場合の概略図である。この第2変形例では、ホーン61の発振面61sとアンビルローラー71との間の隙間Gの大きさを変更することによって、超音波エネルギーの大きさ(J/m)を往路における六枚区間A1a6と四枚区間A1a4とで異ならせている。
【0099】
すなわち、この第2変形例でも、振幅については、往路における六枚区間A1a6と四枚区間A1a4とで変更せずに一定値としているが、上記の隙間Gの大きさにあっては、往路における六枚区間A1a6と四枚区間A1a4とで変更している。ここで、六枚区間A1a6での隙間Gの大きさ及び四枚区間A1a4の隙間Gでの大きさは、それぞれ、実機実験等によって取得される。詳しくは、各隙間G,Gの大きさを複数水準で振りながら、当該超音波溶着装置20で実際に基材1aに超音波溶着処理を施すとともに、基材1aに形成された溶着部14を目視確認などすることによって、各隙間G,Gの大きさが決められる。なお、目視確認では、基材1aの溶損の有無や接合不良の有無などが確認される。そして、このようにして決められた六枚区間A1a6用の隙間Gの大きさ及び四枚区間A1a4用の隙間Gの大きさを用いて超音波溶着処理を行った場合には、六枚区間A1a6においてCD方向の単位長さ当たりに投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)は、四枚区間A1a4において投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)よりも大きくされている。
【0100】
かかる隙間Gの変更は、例えば、次のような構成によって実現される。
図12Aに示すように、この第2変形例でも、第1実施形態の支持ユニット73と略同構造の支持ユニット73aを有している。すなわち、アンビルローラー71は、既述のシーソー状部材73ssの前端部73ssefに回転可能に支持されており、そして、同シーソー状部材73ssも、既述のようにCD方向の略中央部の支持軸73sspにて支持ユニット73aのベース部73baに回転可能に支持されている。そして、これにより、シーソー状部材73ssは、前端部73ssef及び後端部73ssebを互いに略逆動作可能とされており、つまりシーソー状に揺動可能とされている。
【0101】
一方、この第2変形例の支持ユニット73aは、シーソー状部材73ssに揺動動作をさせるための駆動源として、隙間Gが縮小する方向の力をシーソー状部材73ssに付与する空気ばね76と、隙間Gが拡大する方向の力をシーソー状部材73ssに付与する弾性部材としての板ばね77とを有している。
詳しくは、空気ばね76は、略密閉された袋体76bを有し、かかる袋体76bは、エアーの供給により内部を加圧すると膨張する一方、エアーの排出により内部を減圧すると収縮する。そして、かかる袋体76bは、支持ユニット73aのベース部73baとシーソー状部材73ssの後端部73ssebとの間に介挿され、これにより、同後端部73ssebに対して回転ドラム30の回転半径方向Dr30の内方から当接している。また、板ばね77は、同回転半径方向Dr30の外方からシーソー状部材73ssの後端部73ssebに当接するように、支持ユニット73aのベース部73baに付設された適宜なステイ部材73basに支持されている。そして、これにより、板ばね77は、シーソー状部材73ssの後端部73ssebに対して回転半径方向Dr30の内方を向いた弾性力を付与している。
【0102】
よって、袋体76bの内部にエアーを供給しつつ、その供給圧力(MPa)を上げる等して袋体76bの内部を加圧すると、同袋体76bの膨張を通して、当該袋体76bは、上記の後端部73ssebに対して回転ドラム30の回転半径方向Dr30の外方を向いた力を付与する。そして、かかる力の大きさが、板ばね77を同回転半径方向Dr30の外方に押し潰すのに必要な力よりも大きくなると、当該板ばね77の弾性力に抗しつつ、後端部73ssebが同回転半径方向Dr30の外方へ移動するようにシーソー状部材73ssが回転して、これにより、その前端部73ssefのアンビルローラー71は、同回転半径方向Dr30の内方へ移動して、その結果、ホーン61の発振面61sとの間の隙間Gは縮小する。
【0103】
他方、袋体76bの内部へのエアーの供給圧力(MPa)を下げる等して袋体76bの内部を減圧すると、同袋体76bの収縮を通して、当該袋体76bが、上記後端部73ssebに対して付与する力が小さくなる。そして、かかる力が、板ばね77を同回転半径方向Dr30の外方に潰すのに必要な力よりも小さくなると、後端部73ssebが同回転半径方向Dr30の内方へ移動するようにシーソー状部材73ssは回転して、これにより、前端部73ssefのアンビルローラー71は、同回転半径方向Dr30の外方へ移動して、その結果、ホーン61との間の隙間Gは拡大する。
【0104】
ちなみに、空気ばね76の袋体76bに圧縮エアーを給排する機構の一例としては、配管等の供給経路(不図示)を介してコンプレッサ等の不図示の圧縮エアー源を袋体76bに連結するとともに、この圧縮エアー源と袋体76bとの間の上記供給経路に、圧力調整弁(不図示)を配置した構成を例示することができる。そして、この構成の場合には、既述の超音波エネルギー調整部が上記の圧力調整弁を制御することによって、隙間Gの大きさが変更される。但し、圧縮エアーを給排する機構は、何等上記に限らない。
【0105】
また、上述では、隙間Gを拡大する方向に力を付与する弾性部材の一例として板ばね77を例示したが、何等これに限らない。例えば皿ばねやコイルばねでも良い。更には、弾性撓み変形する棒状部材であっても良い。例えば、この棒状部材の場合は、当該棒状部材の一端部にてシーソー状部材73ssの後端部73ssebに上記回転半径方向Dr30の外方から当接し、そして、上記一端部以外の2カ所の部分で支持ユニット73aのベース部73baに回転不能に支持されている。そして、上記後端部73ssebに空気ばね76から上記回転半径方向Dr30の外方の力が付与されると、当該棒状部材は弾性撓み変形をして、これにより、隙間Gの大きさが変更される。
【0106】
<<<第3変形例>>>
第3変形例では、アンビルローラー71のCD方向の移動速度値(m/分)を変更することによって、超音波エネルギーの大きさ(J/m)を往路における六枚区間A1a6と四枚区間A1a4とで異ならせている。詳しくは、次の通りである。
先ず、振幅及び挟み込み力の大きさ(N)については、それぞれ、往路における六枚区間A1a6と四枚区間A1a4とで変更せずに一定値に維持している。しかし、アンビルローラー71のCD方向の移動速度値(m/分)にあっては、往路における六枚区間A1a6と四枚区間A1a4とで変更している。より具体的に言えば、往路の六枚区間A1a6では移動速度値(m/分)を小さく設定して、これにより、CD方向に低速で移動するようにしているが、これに対して、往路の四枚区間A1a4では移動速度値(m/分)を、六枚区間A1a6での移動速度値(m/分)よりも大きく設定しており、これにより、CD方向に高速で移動するようにしている。そして、その結果、六枚区間A1a6においてCD方向の単位長さ当たりに投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)は、四枚区間A1a4において投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)よりも大きくされる。
【0107】
かかるアンビルローラー71のCD方向の移動速度値(m/分)の変更は、前述のカム曲線の設定によってなされる。すなわち、この例では、第1実施形態で用いていたコンピュータ等でなる超音波エネルギー調整部に代えて、既述のリブ状のカム51r及びカムフォロワ53、53が、超音波エネルギー調整部として機能している。より具体的には、次の通りである。
先ず、
図8を参照して既述のように、当該カム51rのカム曲線には、回転ドラム30の回転方向Dc30における第1角度範囲Rw1に対応させて前進動作たる往路の移動動作が設定されている。そして、かかる前進動作に六枚区間A1a6での移動動作と四枚区間A1a4での移動動作とが含まれている。よって、
図12Bに示すように、かかる第1角度範囲Rw1に対して六枚区間A1a6の角度範囲Rw6と四枚区間A1a4の角度範囲Rw4とを割り当てる際に、六枚区間A1a6の角度範囲Rw6の大きさθ6を四枚区間A1a4の角度範囲Rw4の大きさθ4で除算した値(=θ6/θ4)が、
図10Aの六枚区間A1a6のCD方向の長さL6を四枚区間A1a4のCD方向の長さL4で除算した値(=L6/L4)よりも大きくなるように設定すれば、六枚区間A1a6での移動速度値(m/分)を四枚区間A1a4での移動速度値(m/分)よりも小さくすることができる。
【0108】
ところで、上述の第1実施形態、及び、第1乃至第3変形例では、レール状のホーン61を回転ドラム30に対して相対移動不能に配置するとともに、アンビルローラー71たるローラー状のアンビル71を、ホーン61よりも回転半径方向Dr30の外方に配置していたが、何等これに限らない。例えば、次のようにしても良い。すなわち、CDに延びたレール状のアンビルを回転ドラム30に対して相対移動不能に固定するとともに、ローラー状のホーン(以下、ホーンローラーと言う)を、アンビルよりも回転半径方向Dr30の外方に配置しても良い。なお、ホーンローラーの構成は、特表平10−513128号に開示されているものと同じであって、当該構成は周知であることから、その詳細な説明については省略する。
【0109】
===第2実施形態===
図13乃至
図17Bは、第2実施形態の超音波溶着装置20bの説明図である。なお、
図13は、超音波溶着装置20bを上方斜め前方から見た概略斜視図であり、
図14は、
図13中のXIV−XIV矢視の概略側面図であり、
図15は、
図13中のXV−XV矢視の概略正面図である。また、
図16は、
図14において基材1aと回転ドラム30とを取り外して示す概略側面図である。更に、
図17Aは、超音波処理ユニット60bを回転半径方向Dr30の外方斜め前方から見た概略斜視図であり、
図17Bは、同ユニット60bを同外方斜め後方から見た概略斜視図である。
【0110】
上述の第1実施形態では、
図5に示すように、超音波処理ユニット60のホーン61は、回転ドラム30に対して相対移動不能となるようにコラム41に固定されていて、これにより、
図6に示すようにCD方向に往復移動動作をしなかった。この点につき、この第2実施形態では、
図16に示すように、アンビルローラー71のCD方向の往復移動動作に連動して、ホーン61bもCD方向に往復移動動作を行う点で上述の第1実施形態と主に相違する。そして、これ以外の点は概ね第1実施形態と同様である。そのため、以下では、この相違点について主に説明し、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付して、その説明については省略する。
【0111】
図16に示すように、この第2実施形態では、アンビルローラー71だけでなく、ホーン61bも支持ユニット73に支持されている。そして、これにより、ホーン61bも、CD方向に往復移動可能とされている。また、アンビルローラー71とホーン61bとは、互いに共同して基材1aを挟み込み可能に構成されている。例えば、この例では、ホーン61bは、支持ユニット73のベース部73bに固定されている一方、アンビルローラー71はシーソー状部材73ssに支持されている。よって、アンビルローラー71と、超音波振動するホーン61bの発振面61bsとが互い共同して基材1aを挟み込んだ状態で同発振面61bsから基材1aに超音波エネルギーを投入しながら、当該アンビルローラー71とホーン61bとの両者がCD方向に往復移動することによって、基材1aには、CD方向に沿った溶着部14が形成される。
【0112】
なお、上述の基材1aに対する超音波溶着処理時には、特に非回転のホーン61bに対して溶着滓が付着・堆積し得るが、この例では、アンビルローラー71だけでなく、ホーン61bも往復移動する。よって、かかる往復移動時にホーン61bは、自身に付着した溶着滓を、基材1aとの当接・摺動によって順次拭き取ることができる。そして、その結果、ホーン61bでの溶着滓の堆積を効果的に防ぐことができる。
【0113】
また、アンビルローラー71とホーン61bの発振面61bsとで基材1aを挟み込む動作の実行は、専らエアシリンダー75によるシーソー状部材73ssの揺動動作を介して、アンビルローラー71が回転ドラム30の回転半径方向Dr30に移動することでなされる。そのため、ホーン61bについては、回転ドラム30の回転半径方向Dr30に動かさずに済ませることができる。そして、これにより、精密機器でなるホーン61bの超音波振動の発振状態の安定化を図ることができる。
【0114】
更に、この第2実施形態でも、
図14に示すように、回転ドラム30は、外周面30sをなす円筒部30を本体としているが、ここで、かかる円筒部30には、アンビルローラー71及びホーン61bのCD方向の往復移動の経路に対応させて、スリット状の切り欠き部30SLがCD方向の後方から前方に延びて形成されている。そして、これにより、かかる切り欠き部30SLの位置は空間となっていて、つまり、円筒部30の内周側と外周側とが連通している。よって、アンビルローラー71及びホーン61bは、円筒部30と何等干渉すること無く、切り欠き部30SLの位置で基材1aを回転ドラム30の回転半径方向Dr30の両側から挟み込みながら速やかにCD方向に往復移動することができる。
【0115】
また、この第2実施形態では、アンビルローラー71と一緒にホーン61bもCD方向に往復移動することから、ホーン61bの形状が、第1実施形態で例示したようなCD方向に延びたレール状である必要はなく、その形状を自由に選択可能である。そのため、この第2実施形態では、
図17Aに示すように、ホーン61bの形状は、回転ドラム30の回転半径方向Dr30に軸方向を向けた略円柱体61bとされている。そして、かかる略円柱体61bにおける円形の端面61bsが、超音波振動する発振面61bsをなしているとともに、当該端面61bsが、回転ドラム30の回転半径方向Dr30の外方を向いていて、これにより、同端面61bsが、アンビルローラー71の周面71sと対向した姿勢で、ホーン61bは支持ユニット73のベース部73bに固定されている。
【0116】
ちなみに、この第2実施形態の超音波溶着装置20bの基本構成については、特開2013−193450号に開示された装置と概ね同じであるため、これ以上の詳しい説明については省略する。
【0117】
また、第1実施形態の第1乃至第3変形例の構成を、この第2実施形態の超音波溶着装置20bに対して適用して実施することについても、当業者であれば、今まで説明してきた内容から十分可能と思われるので、その説明についても省略する。
【0118】
更には、この第2実施形態では、
図17Aに示すように、略円柱体のホーン61bが、アンビルローラー71よりも回転ドラム30の回転半径方向Dr30の内方に配置されていたが、何等これに限らない。例えば、回転半径方向Dr30の配置関係を逆にしても良い。すなわち、アンビルローラー71の方を略円柱体のホーン61bよりも回転半径方向Dr30の内方に配置しても良い。そして、この場合には、シーソー状部材73ssの前端部73ssefにホーン61bが支持され、ベース部73bにアンビルローラー71が支持される。但し、場合によっては、
図18の超音波処理ユニット60cの概略斜視図に示すようにしても良い。すなわち、この例では、アンビルローラー71は、シーソー状部材73ssに支持されている。また、上記のベース部73bには、回転半径方向Dr30の外方にシーソー状部材73ssの位置を越えて張り出してなる張り出し部73bhが設けられており、そして、当該張り出し部73bhにホーン61bが支持されているが、このように構成しても良い。
【0119】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0120】
上述の第1実施形態では、説明し易くする目的で、回転ドラム30の周速値(m/分)を一定の前提で説明していたが、既述のように、実際には、回転ドラム30の周速値が変化することもあり得る。そして、その場合には、回転ドラム30の周速値(m/分)の増減に連動させて、超音波振動の振幅を増減すれば、六枚区間A1a6においてCD方向の単位長さ当たりに投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)と、四枚区間A1a4においてCD方向の単位長さ当たりに投入される超音波エネルギーの大きさ(J/m)との大小関係を、周速値(m/分)の変化によらず、維持することができる。
【0121】
上述の第1実施形態では、
図9に示すように、アンビルローラー71は、周面71sに二条のリブ71r,71rを有し、また、各リブ71rの頂面71rsにそれぞれ複数の突部71p,71p…がパターン状に設けられていたが、何等これに限らない。例えば、
図6に示すレール状のホーン61の発振面61sにCD方向に沿ったリブを二条設け、各リブの頂面にそれぞれ複数の突部をパターン状に設けても良い。更に、場合によっては、アンビルローラー71及びホーン61の両者に、上記のリブ71r及び突部71p,71p…を設けても良い。また、リブ71rは無くても良く、つまり、アンビルローラー71の周面71s又はホーン61の発振面61sに直接複数の突部71p,71p…をパターン状に設けても良い。
【0122】
上述の実施形態では、吸収性物品の一例として、着用対象に装着されてその排泄液を吸収する使い捨ておむつ1を挙げたが、何等これに限らない。すなわち、尿や経血等の排泄液を吸収するものであれば、本発明に係る吸収性物品とすることができる。例えば生理用ナプキンやペットの排泄液を吸収するペットシート等も、本発明に係る吸収性物品の概念に含まれる。
【0123】
上述の実施形態では、積層枚数の異なる部分1a4,1a6として四枚重ねの部分1a4と六枚重ねの部分1a6とを基材1aが有している例を示したが、かかる積層枚数の組み合わせは、何等四枚と六枚とに限らない。例えば、二枚と四枚、又は六枚と八枚等の別の組み合わせでも良い。また、積層枚数の異なる部分は何等上述の如き二カ所である必要はなく、三カ所以上であっても良い。
【0124】
上述の実施形態では、基材1aは、積層枚数が互いに異なる部分1a4,1a6として、四枚重ねの部分1a4と六枚重ねの部分1a6とを有していた。そして、その関係で、横切り区間A1aに四枚区間A1a4と六枚区間A1a6とを設定し、また、四枚区間A1a4と六枚区間A1a6とで、投入すべき超音波エネルギーの大きさ(J/m)を互いに異ならせていたが、何等これに限らない。
【0125】
例えば、この明細書の冒頭で簡単に述べたように、互いの溶着強度が異なる複数の部分1P1BH,1P1C,1P1LHを基材1aに形成する場合には、基材1aが、必ずしも互いの積層枚数が異なる複数の部分を有していなくても良い。すなわち、この場合にも、上記の複数の部分1P1BH,1P1C,1P1LHにそれぞれ対応させて横切り区間A1aに複数の区間A1aB,A1aC,A1aLを設定するとともに、各区間A1aB,A1aC,A1aLでは、投入すべき超音波エネルギーの大きさ(J/m)を互いに異ならせることになる。具体的には次の通りである。
先ず、
図19Aのおむつ1の概略平面図に示すように、当該おむつ1において上記の溶着部14が形成される幅方向の側端部1eを、胴回り開口部側の部分1P1BHと、脚回り開口部側の部分1P1LHと、これらの部分1P1BH,1P1LH同士の間の中央部分1P1Cとの三者に区分した場合に、胴回り開口部側の部分1P1BH及び脚回り開口部側の部分1P1LHについては、おむつ1の装着時等に脚回り開口部1LH,1LHや胴回り開口部1BHが拡大されること等に起因して比較的大きな外力が作用する。そのため、高い溶着強度が必要である。一方、中央部分1P1Cに作用する外力は比較的小さいことから、当該中央部分1P1Cでは低い溶着強度で十分である。
また、
図19Bに示すように、回転ドラム30に巻き付けられたおむつ1の基材1aにおいて、上記の胴回り開口部側の部分1P1BH(第1部分に相当)及び脚回り開口部側の部分1P1BH(第1部分に相当)は、それぞれCD方向の両側に位置しており、中央部分1P1C(第2部分に相当)はCD方向の中央に位置している。よって、この場合には、先ず、これら各部分1P1BH,1P1LH,1P1Cに対応させながら、横切り区間A1aは、CD方向に関して三つの区間A1aB,A1aC,A1aLに区分される。そして、各区間A1aB,A1aC,A1aLをアンビルローラー71が通過する際には、それぞれ各区間A1aB,A1aC,A1aLに対応した超音波エネルギーの大きさ(J/m)で、当該超音波エネルギーが投入される。すなわち、区間A1aB(第1区間に相当)及び区間A1aL(第1区間に相当)では、区間A1aC(第2区間に相当)よりも超音波エネルギーの大きさ(J/m)を大きくして投入することになる。そして、以上のことから、本発明の超音波溶着装置20,20bの処理対象は、何等、互いの積層枚数が異なる複数の部分1a4,1a6を有した基材1aに限るものではないことは、明らかである。
【0126】
上述の実施形態では、回転部材として回転ドラム30を例示したが、何等これに限らない。すなわち、外周面30sで吸収性物品1の基材1aを保持しながら同外周面30sに沿って回転可能な部材であれば、何等問題無く用いることができる。
【0127】
上述の実施形態では、
図3に示すように、シート状部材1aの一例としての基材1aが、搬送方向に連続した連続体であったが、何等これに限らない。例えば、基材1aが、おむつ一つ分の大きさの単票状部材であっても良い。但し、この場合には、回転ドラム30の外周面30sに基材1aを積極的に保持させる機構を設けるのが望ましい。例えば、回転ドラム30の外周面30sに複数の吸気孔を設け、各吸気孔からの吸気によって基材1aを外周面30sに吸着させると良い。
【0128】
上述の第1実施形態では、
図6に示すように、アンビルローラー71に係る支持ユニット73をCD方向に往復移動する駆動機構としてカム機構を例示した。そして、当該カム機構の一例として、既述の円筒部材51の外周面51sに設けられたリブ状のカム51rと、支持ユニット73のベース部73bに設けられて、当該カム51rを前後から挟み込んで係合する一対のカムフォロワ53,53とを例示したが、何等これに限らない。例えば、上記の円筒部材51の外周面51sに、前述のカム曲線で無端状の溝カムを設けるとともに、ベース部73bにカムフォロワを設け、当該カムフォロワを上記の溝カムにはめ込んで係合させても良い。
【0129】
上述の第1実施形態では、
図10Aに示すように、CD方向の往復移動の往路及び復路において横切り区間A1a以外の経路部分Aef,Aeb、すなわち、往路及び復路において横切り区間A1aよりもCD方向の端側に位置する経路部分Aef,Aeb、更に換言すると、往路及び復路において基材1aが無い経路部分Aef,Aebにおいて、ホーン61とアンビルローラー71との挟み込み力の大きさ(N)をどのようにするかについては詳しく述べていなかったが、かかる経路部分Aef,Aebでは、アンビルローラー71をホーン61から離間させて、これにより、前述の挟み込み力たるホーン61への押し付け力の大きさ(N)を零にしても良い。ちなみに、離間させる方法としては、横切り区間A1aよりもCD方向の端側の位置に到達したアンビルローラー71を、回転ドラム30の外周面30sに別途設けられたカム機構によって、回転ドラム30の回転半径方向Dr30の外方に移動すること等が挙げられる。そして、このように離間させれば、超音波振動しているホーン61とアンビルローラー71との金属接触による超音波処理装置20の各種部品の破損や摩耗、金属摩耗粉の発生による基材1aの汚損などを効果的に防ぐことができる。
【0130】
上述の実施形態では、基材1aの搬送方向と交差するCD方向の一例として、搬送方向と直交する方向を例示したが、何等これに限らない。すなわち、CD方向は、搬送方向と直交する方向から多少傾いていても良い。
【0131】
上述の実施形態では、溶着部14に係る搬送方向(回転方向Dc30)の寸法、すなわち、高圧搾部の搬送方向の寸法及び低圧搾部の搬送方向の寸法は、それぞれCD方向に亘って一定値とされているが、何等これに限らず、変動していても良い。
【0132】
上述の実施形態では、回転部材たる回転ドラム30の外周面30sにおいてアンビルローラー71がCD方向に沿って基材1aを横切る区間を「横切り区間A1a」と定義した(
図10Aを参照)。ここで、この横切り区間A1aについて補足すると、当該横切り区間A1aとは、「基材1aが蛇行などせずに回転ドラム30の外周面30sの設計位置に巻き付いている状態において、アンビルローラー71が基材1aをCD方向に横切り始める位置から横切り終える位置までに対応した区間A1a」のことである。つまり、「基材1aが上記の設計位置に巻き付いている状態において、基材1aのCD方向の後端縁1aebと前端縁1aefとで挟まれた区間A1a」のことである。