特許第6255247号(P6255247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6255247
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20171218BHJP
【FI】
   H01L21/304 643A
   H01L21/304 643C
   H01L21/304 648G
   H01L21/304 648K
   H01L21/304 648L
   H01L21/304 631
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-3922(P2014-3922)
(22)【出願日】2014年1月14日
(65)【公開番号】特開2015-133399(P2015-133399A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】桑名 一孝
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−205015(JP,A)
【文献】 特開2010−205865(JP,A)
【文献】 特開2004−349501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持テーブルと、被加工物を加工する加工手段と、該加工手段で加工された被加工物の被加工面に洗浄液とエアーとを混合させた噴霧を噴射させる2流体洗浄ノズルと、該2流体洗浄ノズルから噴射される該噴霧で被加工物を洗浄する洗浄機構と、該洗浄機構で噴射する該噴霧を制御する制御手段と、を備えた加工装置であって、
該洗浄機構は、
該2流体洗浄ノズルとエアーを供給するエアー供給源との間のエアー配管に配設されるエアー絞り弁と、
該エアー絞り弁で絞られた配管口径を流れるエアーの流量を測定するエアー流量計と、
該2流体洗浄ノズルと洗浄液を供給する洗浄液供給源との間の洗浄液配管に配設される洗浄液絞り弁と、
該2流体洗浄ノズルから該洗浄液絞り弁までの該洗浄液配管の内部圧力を測定する洗浄液圧力計と、
該エアー流量計で測定したエアー流量値と該洗浄液圧力計で測定した洗浄液圧力値とを電気信号に変換する変換器と、から少なくとも構成され、
該制御手段は、
予め測定して、該エアー配管を流れるエアー流量に対する該洗浄液配管を流れる洗浄液流量と該洗浄液配管の内部圧力との相関関係を表す相関関係図を格納する記憶部と、
該変換器で電気信号に変換された該エアー流量値と該洗浄液圧力値と該相関関係図とを用いて該2流体洗浄ノズルから噴射される洗浄液の流量を算出する算出部とを備えた加工装置。
【請求項2】
請求項1記載の加工装置において測定する該エアー流量をエアー圧力に置き換えて、以下のように構成され、
洗浄機構に、該2流体洗浄ノズルから該エアー絞り弁までのエアー配管の内部圧力を測定するエアー圧力計を含み、
相関関係図が、予め測定して、該エアー配管の内部圧力に対する該洗浄液配管を流れる洗浄液流量と該洗浄液配管の内部圧力との相関関係を表しており
該算出部は、該変換器で電気信号に変換された該エアー圧力値と該洗浄液圧力値と該相関関係図とを用いて該2流体洗浄ノズルから噴射される洗浄液の流量を算出する加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2流体洗浄ノズルを備えた加工装置に関し、特に、加工によって生じる加工屑を2流体洗浄ノズルで洗浄する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2流体洗浄ノズルを備えた加工装置において、2流体洗浄ノズルによって生成される噴霧中の液滴の粒径は、エアーと洗浄液との混合比によって決められる。粒径の大きい液滴よれば、大きな加工屑を除去するのに適しているが、微細な加工屑を除去するのには適していない。一方、粒径の小さい液滴によれば、微細な加工屑を除去するのに適しているが、大きな加工屑を除去するのには適していない。加工屑の大きさは加工状況により異なるので、加工によって生じる加工屑の大きさに応じて液滴の粒径を変更することが望ましい。
【0003】
一般に、液滴の粒径を確認するのは困難であるため、エアーの流量と洗浄液の流量を計測することで液滴の粒径を予測することができる。2流体洗浄においては、エアーの流量に対して洗浄液の流量が非常に小さいため、洗浄液の流量を高精度に測定する場合、超音波式やコリオリ式の流量計を用いる必要がある(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−093147号公報
【特許文献2】特開2002−168672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載の流量計によれば、微量な洗浄液の流量を高精度に測定できるものの、これらの流量計は高価であるため、加工装置に適用するのは困難であった。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、加工条件に応じて、加工屑を除去するのに適した粒径の液滴を安価な構成で生成することができる加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加工装置は、被加工物を保持する保持テーブルと、被加工物を加工する加工手段と、加工手段で加工された被加工物の被加工面に洗浄液とエアーとを混合させた噴霧を噴射させる2流体洗浄ノズルと、2流体洗浄ノズルから噴射される噴霧で被加工物を洗浄する洗浄機構と、洗浄機構で噴射する噴霧を制御する制御手段と、を備えた加工装置であって、洗浄機構は、2流体洗浄ノズルとエアーを供給するエアー供給源との間のエアー配管に配設されるエアー絞り弁と、エアー絞り弁で絞られた配管口径を流れるエアーの流量を測定するエアー流量計と、2流体洗浄ノズルと洗浄液を供給する洗浄液供給源との間の洗浄液配管に配設される洗浄液絞り弁と、2流体洗浄ノズルから洗浄液絞り弁までの洗浄液配管の内部圧力を測定する洗浄液圧力計と、エアー流量計で測定したエアー流量値と洗浄液圧力計で測定した洗浄液圧力値とを電気信号に変換する変換器と、から少なくとも構成され、制御手段は、予め測定して、エアー配管を流れるエアー流量に対する洗浄液配管を流れる洗浄液流量と洗浄液配管の内部圧力との相関関係を表す相関関係図を格納する記憶部と、変換器で電気信号に変換されたエアー流量値と洗浄液圧力値と相関関係図とを用いて2流体洗浄ノズルから噴射される洗浄液の流量を算出する算出部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、測定されたエアー流量値及び洗浄液圧力値から相関関係図を基にして洗浄液流量を算出することができる。よって、洗浄液流量を直接測定することなく洗浄液流量を得ることができるため、高価な流量計を設ける必要がない。また、相関関係図から目標の洗浄液流量に対応した洗浄液圧力を予測することができるため、洗浄液流量が目標の洗浄液流量になるように、洗浄液流量を調整することができる。この結果、エアーと洗浄液との混合比が調整され、加工条件に応じて2流体洗浄ノズルから噴射される噴霧中の液滴の粒径を変化させることができる。このように、加工屑の大きさに応じて、所望の粒径の液滴を安価な構成で生成することができる。
【0009】
また、本発明の上記加工装置は、上記加工装置において測定するエアー流量をエアー圧力に置き換えて、以下のように構成され、洗浄機構に、2流体洗浄ノズルからエアー絞り弁までのエアー配管の内部圧力を測定するエアー圧力計を含み、相関関係図が、予め測定して、エアー配管の内部圧力に対する洗浄液配管を流れる洗浄液流量と洗浄液配管の内部圧力との相関関係を表しており算出部は、変換器で電気信号に変換されたエアー圧力値と洗浄液圧力値と相関関係図とを用いて2流体洗浄ノズルから噴射される洗浄液の流量を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エアー流量及び洗浄液圧力から洗浄液流量を算出することにより、加工条件に応じて、加工屑を除去するのに適した粒径の液滴を安価な構成で生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る加工装置の斜視図である。
図2】本実施の形態に係る洗浄機構のエアー流量に対する洗浄液圧力と洗浄液流量との相関関係図である。
図3】本実施の形態の変形例に係る洗浄機構のエアー圧力に対する洗浄液圧力と洗浄液流量との相関関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
従来、エアーと洗浄液とを混合し、エアーの圧力を利用して被加工物を2流体洗浄する洗浄方法が知られている。この洗浄方法において、エアーと洗浄液とが混合されることで生成される噴霧中の液滴の粒径は、エアー流量及び洗浄液流量を測定することで予測することができる。しかしながら、洗浄液流量はエアー流量に対して非常に小さく、洗浄液流量を高精度に測定するには超音波式やコリオリ式の高価な流量計を用いなければならなかった。
【0013】
本件出願人は、2流体洗浄ノズルでエアーと洗浄液とを混合しながら噴射する際に、エアー流量の影響を受けて洗浄液圧力と洗浄液流量とが変化することに着目し、エアー流量に対する洗浄液圧力と洗浄液流量との相関関係を発見した。すなわち、本発明の骨子は、エアー流量に対する洗浄液圧力と洗浄液流量との相関関係に基づいて洗浄液流量を算出し、算出された洗浄液流量を基にエアーと洗浄液との混合比を調整することで、加工屑を除去するのに適した粒径の液滴を得ることである。
【0014】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係る加工装置について説明する。図1は、本実施の形態に係る加工装置の斜視図である。以下の説明においては、2流体洗浄ノズル及び洗浄機構を備えた研削装置について説明するが、この構成に限定されない。本実施の形態に係る2流体洗浄ノズル及び洗浄機構は、被加工物を加工する装置であれば、どのような加工装置に適用されてもよく、例えば、切削装置にも適用可能である。
【0015】
図1に示すように、加工装置1は、保持テーブル3に保持された被加工物Wの表面(被加工面)を2流体洗浄しながら研削するように構成されている。なお、被加工物Wとしては、シリコンやGaAsなどの半導体材料で構成される半導体ウエーハの他に、セラミック、ガラス、サファイヤなどの無機材料で構成される無機材料ウエーハ等が用いられる。
【0016】
加工装置1は、略直方体形状の基台2を有しており、基台2の上面にはX軸方向に延在する矩形状の開口部21が設けられている。開口部21の後方には、基台2の上面から垂直に立ち上がるように、支柱部24が配置されている。開口部21は、保持テーブル3を支持するテーブル支持台22及び蛇腹状の防水カバー23で覆われている。支柱部24は、直方体形状を有しており、支柱部24の前面には、研削手段移動機構4を介して研削手段5が設けられている。また、研削手段5の前方には、被加工物Wを洗浄する洗浄機構6が設けられている。
【0017】
テーブル支持台22は、平面視略正方形状を有しており、テーブル支持台22の上面には、保持テーブル3が支持されている。また、テーブル支持台22は、基台2内に設けられた不図示の駆動機構に接続されており、この駆動機構から供給される駆動力によって、開口部21内をX軸方向にスライド移動する。これにより、保持テーブル3は、加工前後の被加工物Wを供給又は回収する載せ替え位置と、研削手段5と被加工物Wとが対向する研削位置との間をスライド移動する。
【0018】
防水カバー23は、被加工物Wの研削加工時に発生する研削屑や洗浄液等が基台2内へ侵入することを防止する。防水カバー23は、テーブル支持台22の前部及び後部に取り付けられると共に、その移動位置に応じて伸縮可能に設けられている。
【0019】
保持テーブル3は、円盤形状を有し、不図示の回転手段によって円盤中心を軸に回転可能になっている。保持テーブル3の上面には、被加工物Wを吸着保持する吸着面31が設けられている。吸着面31は、例えば、ポーラスセラミック材により構成されており、基台2内に配置された不図示の吸引源に接続されている。被加工物Wは、吸着面31に生じる負圧によって保持テーブル3に吸引保持される。
【0020】
研削手段移動機構4は、支柱部24の前面において上下方向(Z方向)に延びる一対のガイドレール41と、ガイドレール41に沿ってスライド可能に設置されたモータ駆動のZ軸テーブル42とを有している。Z軸テーブル42の前面には研削手段5が設けられている。Z軸テーブル42の背面には、不図示のナット部が形成されており、ナット部にはガイドレール41に沿って延在するボールネジ43が螺合されている。そして、ボールネジ43の一端に設けられた駆動モータ44が回転駆動されることで、研削手段5がZ軸テーブル42と共にガイドレール41に沿ってスライド移動される。
【0021】
研削手段5は、スピンドル51と、スピンドル51を回転可能に支持するスピンドルハウジング52とを備えている。スピンドル51の下端には研削ホイール53が取り付けられており、研削ホイール53の下面には複数の研削砥石54が環状に配列されている。研削砥石54は、例えば、ダイヤモンド砥粒をメタルボンドやレンジボンド等の結合剤で固めたダイヤモンド砥石で構成される。
【0022】
洗浄機構6は、エアー及び洗浄液を混合させた噴霧を2流体洗浄ノズル7から噴射させ、噴霧によって被加工物Wの表面を洗浄するように構成されている。また、洗浄機構6は、2流体洗浄ノズル7を所定の高さに位置付ける昇降機構61を備えている。昇降機構61は、略直方体形状のシリンダ本体611と、シリンダ本体611の下面から突出する一対のピストンロッド612と、ピストンロッド612の下端に設けられる移動ブロック613とを備えている。移動ブロック613の下面には、2流体洗浄ノズル7が設けられている。ピストンロッド612が伸縮することにより、2流体洗浄ノズル7は移動ブロック613と共にZ軸方向に移動される。
【0023】
2流体洗浄ノズル7は、例えば、内部混合式の2流体ノズルで構成される。2流体洗浄ノズル7は、洗浄機構6から供給されるエアー及び洗浄液を2流体洗浄ノズル7の内部で混合し、先端から被加工物Wの表面に向かって噴霧を噴射するように構成されている。なお、2流体洗浄ノズル7は、この構成に限定されない。2流体洗浄ノズル7は、例えば、2流体洗浄ノズル7の外部でエアー及び洗浄液を混合する外部混合式の2流体ノズルで構成されてもよい。
【0024】
また、洗浄機構6は、2流体洗浄ノズル7にエアーを供給するエアー供給源62と、エアー供給源62及び2流体洗浄ノズル7を接続するエアー配管63とを有している。エアー配管63には、エアー流量を調整するエアー絞り弁631が配設され、エアー絞り弁631の下流側のエアー配管63には、エアー流量計632及びエアー圧力計633が設けられている。エアー流量計632は、エアー絞り弁631で絞られた配管口径を流れるエアーの流量を測定する。すなわち、エアー流量計632は、エアー絞り弁631を通過した後のエアーの流量を測定する。エアー圧力計633は、2流体洗浄ノズル7からエアー絞り弁631までのエアー配管63の内部圧力を測定する。
【0025】
また、洗浄機構6は、2流体洗浄ノズル7に洗浄液を供給する洗浄液供給源64と、洗浄液供給源64及び2流体洗浄ノズル7を接続する洗浄液配管65とを有している。洗浄液配管65には、洗浄液流量を調整する洗浄液絞り弁651が配設されており、洗浄液絞り弁651の下流側の洗浄液配管65には、洗浄液圧力計652が設けられている。洗浄液圧力計652は、2流体洗浄ノズル7から洗浄液絞り弁651までの洗浄液配管65の内部圧力を測定する。
【0026】
さらに、洗浄機構6は、エアー流量計632、エアー圧力計633及び洗浄液圧力計652によって測定されたエアー流量値、エアー圧力値及び洗浄液圧力値を電気信号に変換する変換器66を備えている。変換器66によって電気信号に変換されたエアー流量値、エアー圧力値及び洗浄液圧力値は、後述する制御手段8の取得部82に送られる。
【0027】
また、加工装置1には、加工装置1の各部を統括制御する制御手段8が設けられている。制御手段8は、各種処理を実行するプロセッサやメモリ等により構成される。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶媒体を含んで構成される。メモリの一部となる記憶部81には、エアー流量又はエアー圧力に対する洗浄液圧力と洗浄液流量との相関関係を表す相関関係図が格納されている。なお、相関関係図の詳細は後述する。また、制御手段8は、変換器66で電気信号に変換されたエアー流量値、エアー圧力値及び洗浄液圧力値を取得する取得部82と、取得した各値及び相関関係図を用いて2流体洗浄ノズル7から噴射される洗浄液の流量を算出する算出部83とを備えている。
【0028】
このように構成された加工装置1では、先ず、保持テーブル3に吸引保持された被加工物Wが研削手段5の下方の研削位置に移動される。そして、昇降機構61によって2流体洗浄ノズル7の先端が所定の高さに位置調整され、2流体洗浄ノズル7から被加工物Wの表面に向かって噴霧が噴射される。また、スピンドル51によって研削砥石54が高速回転されている状態で研削手段5が下降され、保持テーブル3上の被加工物Wが回転しながら被加工物Wの表面に研削砥石54が接触される。これによって、被加工物Wの表面が研削加工される。このとき、研削加工によって生じる研削屑は、噴霧中の液滴が被加工物Wの表面に衝突することで生じる衝撃波や、被加工物Wの表面に沿って液滴が流れることによって除去される。
【0029】
本実施の形態に係る加工装置1においては、加工条件に応じて所望の粒径の液滴を生成するため、研削加工が実施される前に予め、エアー流量及び洗浄液流量が調整される。先ず、エアー及び洗浄液が供給された状態で、エアー流量計632によってエアー流量が、エアー圧力計633によってエアー圧力が、洗浄液圧力計652によって洗浄液圧力が、それぞれ測定される。測定されたエアー流量値、エアー圧力値及び洗浄液圧力値は、変換器66によって電気信号に変換される。電気信号に変換されたエアー流量値、エアー圧力値及び洗浄液圧力値は、制御手段8の取得部82に送られる。
【0030】
取得部82にエアー流量値、エアー圧力値及び洗浄液圧力値が送られると、算出部83によって相関関係図を基に洗浄液流量が算出される。また、相関関係図を基に、目標の洗浄液流量に対応した洗浄液圧力を予測することができる。そして、洗浄液圧力計652の示す値が、目標の洗浄液流量に対応した洗浄液圧力値になるようにエアー絞り弁631及び洗浄液絞り弁651が制御され、エアー流量及び洗浄液流量が調整される。これにより、エアーと洗浄液との混合比が調整され、加工条件に応じて所望の粒径の液滴を生成することができる。
【0031】
次に図1から図2を参照して、加工条件に応じて、噴霧中の液滴の粒径を変化させる方法について説明する。本実施の形態においては、エアー流量及び洗浄液圧力を事前に測定したところ、図2に示すような相関関係図が作成された。図2は、本実施の形態に係る洗浄機構のエアー流量に対する洗浄液圧力と洗浄液流量との相関関係図である。図2において、縦軸は洗浄液圧力(洗浄液配管の内部圧力)を示し、横軸は洗浄液流量を示している。図2の相関関係図上に示された3つの直線は、上からエアー流量が100L/min、90L/min、80L/minのときの洗浄液圧力と洗浄液流量との相関関係を表している。なお、以下の説明においては、大きい粒径の液滴と小さい粒径の液滴を生成する場合について説明する。
【0032】
被加工物Wを荒研削するときには、加工屑の大きさは仕上げ研削に比べて大きくなると想定される。一般に、エアー流量に対する洗浄液流量の割合が高い程、液滴の粒径は大きくなるため、大きな加工屑を除去するのに適した粒径の液滴を生成する場合には、エアー流量を下げると共に、洗浄液流量を上げることが考えられる。一方、被加工物Wを仕上げ研削するときには、加工屑の大きさは荒研削に比べて小さくなると想定される。小さな加工屑を除去するのに適した粒径の液滴を生成する場合には、エアー流量を上げると共に、洗浄液流量を下げることが考えられる。エアーと洗浄液との混合比は、例えば、液滴の粒径が、研削時に生じる研削屑の平均粒径の約10倍になるように調整される。
【0033】
例えば、目標のエアー流量を80L/min、目標の洗浄液流量を100mL/minとする。先ず、エアー及び洗浄液が供給された状態で、エアー流量及び洗浄液圧力が測定される。測定されたエアー流量値及び洗浄液圧力値から、相関関係図を基に洗浄液流量が算出される。そして、洗浄液圧力計652の示す値が、目標の洗浄液流量に対応した洗浄液圧力値(110kPa)になるようにエアー絞り弁631及び洗浄液絞り弁651が制御される。この結果、エアー流量は80L/minに、洗浄液流量は100mL/minに調整され、エアーと洗浄液との混合比が決定される。
【0034】
一方、目標のエアー流量を100L/min、目標の洗浄液流量を30mL/minとした場合を考える。この場合、エアー流量及び洗浄液圧力の測定結果を基に洗浄液流量が算出された後、洗浄液圧力計652の示す値が、目標の洗浄液流量に対応した洗浄液圧力値(130kPa)になるようにエアー絞り弁631及び洗浄液絞り弁651が制御される。この結果、エアー流量は100L/minに、洗浄液流量は30mL/minに調整され、エアーと洗浄液との混合比が決定される。このように、エアーと洗浄液との混合比を調整することにより、加工条件に応じて液滴の粒径を変化させることができる。
【0035】
以上のように、本実施の形態に係る加工装置1によれば、測定されたエアー流量値及び洗浄液圧力値から相関関係図を基にして洗浄液流量を算出することができる。よって、洗浄液流量を直接測定することなく洗浄液流量を得ることができるため、高価な流量計を設ける必要がない。また、相関関係図から目標の洗浄液流量に対応した洗浄液圧力を予測することができるため、洗浄液流量が目標の洗浄液流量になるように、洗浄液流量を調整することができる。この結果、エアーと洗浄液との混合比が調整され、加工条件に応じて2流体洗浄ノズル7から噴射される噴霧中の液滴の粒径を変化させることができる。このように、加工屑の大きさに応じて、所望の粒径の液滴を安価な構成で生成することができる。
【0036】
次に、図3を参照して、加工条件に応じて液滴の粒径を変化させる方法の変形例について説明する。変形例においては、本実施の形態に係る加工装置1で測定されるエアー流量をエアー圧力に置き換えても、洗浄液流量を算出することができる。図3は、本実施の形態の変形例に係る洗浄機構のエアー圧力に対する洗浄液圧力と洗浄液流量との相関関係図である。図3において、縦軸は洗浄液圧力(洗浄液配管の内部圧力)を示し、横軸は洗浄液流量を示している。図3の相関関係図上に示された3つの直線は、上からエアー圧力が200kPa、230kPa、260kPaのときの洗浄液圧力と洗浄液流量との相関関係を表している。なお、変形例においては、本実施の形態に係る加工装置において測定されるエアー流量をエアー圧力に置き換えた点で本実施の形態と相違する。
【0037】
例えば、目標となるエアー圧力及び洗浄液流量を、それぞれ230kPa、60mL/minとする。この場合、エアー圧力計633で測定されたエアー圧力値と、洗浄液圧力計652で測定された洗浄液圧力値から、図3に示す相関関係図を基に洗浄液流量が算出される。そして、洗浄液圧力計652の示す値が、目標の洗浄液流量に対応した洗浄液圧力値(120kPa)になるようにエアー絞り弁631及び洗浄液絞り弁651が制御される。この結果、エアー圧力は230kPaに、洗浄液流量は60mL/minに調整され、エアーと洗浄液との混合比が決定される。このように、変形例においても、任意の粒径の液滴を生成することができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0039】
例えば、上記した実施の形態においては、昇降機構61がエアシリンダによって駆動される構成としたが、この構成に限定されない。昇降機構61は、モータ駆動のアクチュエータで構成されてもよい。
【0040】
また、上記した実施の形態において、エアー絞り弁631及び洗浄液絞り弁651が自動制御される構成としたが、この構成に限定されない。エアー絞り弁631及び洗浄液絞り弁651は、手動で調整されてもよい。
【0041】
また、上記した実施の形態において、相関関係図は、予め測定された結果を基に作成される構成としたが、この構成に限定されない。相関関係図は、加工時の実際の測定結果を記憶部81に格納し、格納された測定結果を基に作成されてもよい。このように記憶部81に複数の測定結果を蓄積して学習させることによって、装置毎に精度の高い相関関係図を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上説明したように、本発明は、加工条件に応じて、加工屑を除去するのに適した粒径の液滴を安価な構成で生成することができるという効果を有し、特に、研削加工で生じる加工屑を2流体洗浄ノズルで洗浄する加工装置に有用である。
【符号の説明】
【0043】
W 被加工物
1 加工装置
3 保持テーブル
5 研削手段(加工手段)
6 洗浄機構
61 昇降手段
611 シリンダ本体
612 ピストンロッド
613 移動ブロック
62 エアー供給源
63 エアー配管
631 エアー絞り弁
632 エアー流量計
633 エアー圧力計
64 洗浄液供給源
65 洗浄液配管
651 洗浄液絞り弁
652 洗浄液圧力計
66 変換器
7 2流体洗浄ノズル
8 制御手段
81 記憶部
82 取得部
83 算出部
図1
図2
図3