(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
装着時に着用者の腹側に配される腹側部と、前記着用者の背側に配される背側部と、前記着用者の股間に配される股下部とを有した吸収性物品を、前記股下部にて二つ折りして前記腹側部と前記背側部とを重ね合わせた状態で、前記腹側部と前記背側部とを横方向の各端部でそれぞれ接合することにより、胴回り開口部と一対の脚回り開口部とが形成されたパンツ型の吸収性物品であって、
前記腹側部と前記背側部とを接合するために前記横方向の前記各端部に形成された各接合部は、それぞれ、前記胴回り開口部の方から前記脚回り開口部の方へと延在しており、
前記各接合部のうちの少なくとも一方の接合部のうちで前記脚回り開口部に最も近い第1部分の接合強度は、前記接合部のうちで前記第1部分と前記胴回り開口部との間に位置する所定部分の接合強度よりも小さく、
前記接合部は、前記第1部分の前記胴回り開口部側に隣り合う第2部分を有し、
前記第2部分の接合強度は、前記第1部分の接合強度と前記所定部分の接合強度との間の大きさであり、
前記接合部のうちで前記胴回り開口部に最も近い第3部分の接合強度は、前記所定部分の接合強度よりも小さく、
前記接合部は、前記第3部分の前記脚回り開口部側に隣り合う第4部分を有し、
前記第4部分の接合強度は、前記第3部分の接合強度と前記所定部分の接合強度との間の大きさであることを特徴とするパンツ型の吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
装着時に着用者の腹側に配される腹側部と、前記着用者の背側に配される背側部と、前記着用者の股間に配される股下部とを有した吸収性物品を、前記股下部にて二つ折りして前記腹側部と前記背側部とを重ね合わせた状態で、前記腹側部と前記背側部とを横方向の各端部でそれぞれ接合することにより、胴回り開口部と一対の脚回り開口部とが形成されたパンツ型の吸収性物品であって、
前記腹側部と前記背側部とを接合するために前記横方向の前記各端部に形成された各接合部は、それぞれ、前記胴回り開口部の方から前記脚回り開口部の方へと延在しており、
前記各接合部のうちの少なくとも一方の接合部のうちで前記脚回り開口部に最も近い第1部分の接合強度は、前記接合部のうちで前記第1部分と前記胴回り開口部との間に位置する所定部分の接合強度よりも小さいことを特徴とするパンツ型の吸収性物品である。
【0013】
このようなパンツ型の吸収性物品によれば、接合部のうちで脚回り開口部に最も近い第1部分の接合強度を、上記の所定部分の接合強度よりも小さくしている。よって、接合部の接合強度を全体として吸収性物品の装着に耐え得る大きさに保ちながらも、接合部のうちで脚回り開口部側に位置する上記第1部分を起点として、腹側部と背側部とを容易に引き剥がすことが可能とになる。すなわち、脚回り開口部を起点として腹側部と背側部とを容易に引き剥がすことができる。
【0014】
かかるパンツ型の吸収性物品であって、
前記接合部は、前記第1部分の前記胴回り開口部側に隣り合う第2部分を有し、
前記第2部分の接合強度は、前記第1部分の接合強度と前記所定部分の接合強度との間の大きさであるのが望ましい。
【0015】
このようなパンツ型の吸収性物品によれば、第2部分の接合強度は、第1部分の接合強度と所定部分の接合強度との間の大きさとされている。そのため、接合部のうちで脚回り開口部の近傍に位置する部分の接合強度は、脚回り開口部に近づくに従って小さくなっている。よって、接合部のうちで脚回り開口部側に位置する上記第1部分を起点として腹側部と背側部とを円滑に引き剥がすことができる。
【0016】
かかるパンツ型の吸収性物品であって、
前記接合部のうちで前記胴回り開口部に最も近い第3部分の接合強度は、前記所定部分の接合強度よりも小さいのが望ましい。
【0017】
このようなパンツ型の吸収性物品によれば、胴回り開口部に最も近い第3部分の接合強度を、上記の所定部分の接合強度よりも小さくしている。よって、何らかの原因に基づいて、接合部のうちで脚回り開口部に最も近い上記第1部分を起点として腹側部と背側部とを引き剥がし難い場合には、即座に、胴回り開口部に最も近い上記第3部分を起点とする引き剥がしに切り替えることができて、これにより、吸収性物品を速やかに脱がすことができる。
【0018】
かかるパンツ型の吸収性物品であって、
前記接合部は、前記第3部分の前記脚回り開口部側に隣り合う第4部分を有し、
前記第4部分の接合強度は、前記第3部分の接合強度と前記所定部分の接合強度との間の大きさであるのが望ましい。
【0019】
このようなパンツ型の吸収性物品によれば、第4部分の接合強度は、第3部分の接合強度と所定部分の接合強度との間の大きさとされている。そのため、接合部のうちで胴回り開口部の近傍に位置する部分の接合強度は、胴回り開口部に近づくに従って小さくなっている。よって、接合部のうちで胴回り開口部側に位置する上記第3部分を起点として腹側部と背側部とを円滑に引き剥がすことができる。
【0020】
かかるパンツ型の吸収性物品であって、
前記第1部分の接合強度は、前記第3部分の接合強度よりも小さいのが望ましい。
【0021】
このようなパンツ型の吸収性物品によれば、脚回り開口部に最も近い上記第1部分の接合強度は、胴回り開口部に最も近い上記第3部分の接合強度よりも小さくされている。よって、脚回り開口部を起点として腹側部と背側部とを速やかに引き剥がすことができる。
【0022】
かかるパンツ型の吸収性物品であって、
前記腹側部及び前記背側部において前記脚回り開口部をなす部分の坪量(g/m
2)は、前記腹側部及び前記背側部において前記胴回り開口部をなす部分の坪量(g/m
2)よりも小さいのが望ましい。
【0023】
このようなパンツ型の吸収性物品によれば、脚回り開口部を起点として容易に吸収性物品を腹側部と背側部とに分断して、速やかに吸収性物品を脱がすことができる。
すなわち、仮に、何らかの原因に基づいて、接合部にのうちで脚回り開口部に最も近い上記第1部分を起点として腹側部と背側部とを引き剥がすことが困難な場合には、腹側部及び背側部において脚回り開口部をなす部分の坪量(g/m
2)が小さいことに基づいて、当該部分又はその近傍部分を比較的容易に破ることができる。そして、これにより、脚回り開口部を起点として速やかに吸収性物品を腹側部と背側部とに分断することができる。
【0024】
かかるパンツ型の吸収性物品であって、
前記各接合部のうちのどちらの接合部も、それぞれ、前記第1部分と前記所定部分とを有しているのが望ましい。
【0025】
このようなパンツ型の吸収性物品によれば、横方向の各端部に形成された各接合部のうちのどちらの接合部についても、それぞれ、接合部のうちで脚回り開口部側に位置する第1部分を起点として、腹側部と背側部とを容易に引き剥がすことが可能となる。よって、引き剥がす作業者が、二つの脚回り開口部のうちのどちらの開口部を選んだ場合でも、同作業者は、腹側部と背側部とを容易に引き剥がすことができて、これにより、当該作業者は、速やかに吸収性物品を脱がすことができる。
【0026】
===本実施形態===
図2は、本実施形態のパンツ型の吸収性物品の一例としてのパンツ型の使い捨ておむつ1の概略斜視図である。
図3Aは、展開状態のおむつ1を肌側から見た概略平面図であり、
図3Bは、
図3A中のB−B矢視の概略図である。
図4は、展開状態のおむつ1を分解して示す概略斜視図である。
図5は、展開状態の外装シート11を非肌側から見た概略平面図である。
【0027】
なお、以下の説明では、おむつ1が着用者に装着された際に、当該着用者の肌側に位置すべき側のことを単に「肌側」と言い、他方、着用者の非肌側に位置すべき側のことを単に「非肌側」と言う。
【0028】
図3Aに示すように、このおむつ1は、例えば2ピースタイプのおむつ1である。すなわち、同おむつ1は、尿などの排泄液を吸収する例えば平面視略長方形形状の吸収性本体3を第1部品として有し、そして、上記吸収性本体3の非肌側面を覆って設けられておむつ1の外装をなす平面視略砂時計形状の外装シート11を第2部品として有している。
【0029】
図3A、
図3B、及び
図4に示すように、吸収性本体3は、排泄液を吸収する吸収性コア3cを有する。吸収性コア3cは、パルプ繊維等の液体吸収性繊維や高吸収性ポリマー等の液体吸収性粒状物を、所定形状の一例としての平面視略砂時計形状に成形したものである。なお、かかる吸収性コア3cは、必要に応じてティッシュペーパー等の液透過性の被覆シートで被覆されていても良い。
【0030】
かかる吸収性コア3cの肌側面には、当該面を全面に亘って覆うように不織布等の液透過性のトップシート4が設けられており、同様に、同吸収性コア3cの非肌側面には、当該面を全面に亘って覆うようにフィルム等の液不透過性の防漏シート5が設けられている。ここで、この例では、どちらのシート4,5も、平面視略長方形形状に形成されており、また、どちらのシート4,5も、吸収性コア3cの外形輪郭から全周に亘って外方に飛び出している。そして、トップシート4において飛び出した部分と防漏シート5において飛び出した部分とが、互いに接着や溶着等によって接合されており、その結果、平面視略長方形形状の吸収性本体3が形成されている。
【0031】
なお、不図示であるが、かかる吸収性本体3の幅方向の両端部に対して、それぞれ、同本体3の長手方向に沿って弾性部材としての糸ゴムを設けても良い。かかる糸ゴムは、吸収性本体3及び外装シート11における脚回り開口部1HLの近傍部分に伸縮性を付与するものである。よって、かかる糸ゴムは、トップシート4と防漏シート5との間に介挿されつつ、自然長から2〜4倍等の所定倍率まで伸長された状態でホットメルト接着剤等の接着剤により両シート4,5に固定される。
【0032】
また、場合によっては、尿の横漏れを防止する目的で防漏壁部(不図示)を吸収性本体3に設けても良い。かかる防漏壁部は、立体ギャザーとも呼ばれるものであり、不織布等の柔軟なシートを材料として、吸収性本体3の肌側面等の両端部にそれぞれ起立するように設けられる。但し、かかる防漏壁部は、周知構成である。そのため、これ以上の説明については省略する。
【0033】
外装シート11は、
図5の展開状態においては、平面視略砂時計形状の柔軟なシートであり、同シート11は、互いに直交する三方向として、厚さ方向と長手方向と幅方向とを有している。また、当該外装シート11は、長手方向に関して三つの部分11a,11b,11cに区分される。すなわち、外装シート11は、着用者の腹側に配される腹側部11aと、着用者の背側に配される背側部11bと、着用者の股間に配される股下部11cとに区分される。なお、当然ながら、股下部11cは、腹側部11aと背側部11bとの間に位置しており、これにより、当該股下部11cは、平面視略砂時計形状において幅方向に括れた形状の部分11cとなっている。
【0034】
図4に示すように、かかる外装シート11は、一枚のシート12を本体とするか、或いは複数枚のシートを積層一体化した積層シートを本体とし、この例では、一枚のシート12を本体としている。なお、この本体となるシート12の材料には、熱可塑性樹脂繊維を含む不織布や熱可塑性樹脂フィルム等が使用され、この例では、15(g/m
2)の坪量のSMS不織布(スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド不織布)が使用されているが、何等これに限らない。
【0035】
また、
図4及び
図5に示すように、この例では、同シート12における腹側部12a及び背側部12bに対しては、それぞれ、当該シート12の非肌側面に別のシート13a,13bが接着又は溶着等によって接合されているが、股下部12cについては、別のシートが接合されていない。但し、何等これに限らず、股下部12cにも別のシートが接合されていても良く、更には、股下部12cの別のシートが、腹側部12aの別のシート13a及び背側部12bの別のシート13bと一体であっても良い。また、当該別のシート13a,13bの材料には、熱可塑性樹脂繊維を含む不織布や熱可塑性樹脂フィルム等が使用され、この例では、熱可塑性樹脂繊維を含む17(g/m
2)の坪量のスパンボンド不織布が使用されているが、何等これに限らない。
【0036】
なお、以下では、外装シート11の本体となる上記シート12のことを「本体シート12」と言い、本体シート12における腹側部12aに接合される上記別のシート13aのことを「腹側部外面シート13a」と言い、本体シート12における背側部12bに接合される上記別シート13bのことを「背側部外面シート13b」という。
【0037】
ここで、
図4及び
図5に示すように、本体シート12と腹側部外面シート13aとの間、及び本体シート12と背側部外面シート13bとの間には、それぞれ、弾性部材の一例としての糸ゴム15,15…が介挿されている。かかる糸ゴム15,15…は、外装シート11の腹側部11a及び背側部11bに対して幅方向の伸縮性を付与するものである。そのため、当該糸ゴム15,15…は、自然長から2〜4倍等の所定倍率まで伸長された状態で幅方向に沿って配置されつつ、ホットメルト接着剤等の接着剤により展開状態の各シート12,13a,13bに固定されている。かかる糸ゴム15,15…は、本体シート12の長手方向に並んで互いの間に間隔をあけながら複数本配置されており、これにより、腹側部11a及び背側部11bのそれぞれについて上記長手方向の広範囲に亘って伸縮性が付与されている。
【0038】
また、
図4に示すように、腹側部外面シート13a及び背側部外面シート13bは、それぞれ本体シート12における長手方向の端縁部12eLa,12eLbよりも外方に飛び出すように設けられており、そして、各シート13a,13bにおいて本体シート12から外方に飛び出した部分13ap,13bpについては、長手方向の内方に折り返されていて、これにより、
図3Bに示すように、当該飛び出した部分13ap,13bpは、本体シート12の肌側面に重ね合わせられている。そして、これにより、胴回り開口部1HBとなる端縁部11HBa,11HBbは、腹側部外面シート13aの折り返し部13ak及び背側部外面シート13bの折り返し部13bkによって形成されていて、つまり、当該折り返し部13ak,13bkによって、本体シート12の端縁部12eLa,12eLbは覆われている。よって、本体シート12の端縁部12eLa,12eLbによって着用者の肌が傷つけられることは防止されている。なお、この例では、
図3A及び
図3Bを参照して明らかなように、本体シート12の肌側面に重ね合わせられた上記の飛び出した部分13ap,13bpは、更に吸収性本体3の長手方向の各端部3ea,3ebも肌側から覆っているが、何等これに限るものではない。すなわち、覆わなくても良い。
【0039】
図3A及び
図4に示すように、かかる外装シート11の肌側面、すなわち本体シート12の肌側面における幅方向の中央位置には、前述の吸収性本体3が互いの長手方向を揃えた状態で固定されている。また、吸収性本体3の長手方向の長さ及び幅方向の長さは、それぞれ、当該吸収性本体3が外装シート11の内側に概ね収まるような長さとされている。
【0040】
そして、
図3Aの如く吸収性本体3が固定された外装シート11は、股下部11cにて二つ折りされて腹側部11aと背側部11bとが重ね合わせられる。そして、この重ね合わせられた状態において、腹側部11aと背側部11bとが幅方向の各端部でそれぞれ接合されることにより、
図2に示すような胴回り開口部1HBと一対の脚回り開口部1HL,1HLとが形成されたパンツ型のおむつ1の形態にされる。
【0041】
なお、以下では、同
図2の如くパンツ型にされたおむつ1の三次元形状の方向について、以下のように定義する。先ず、外装シート11の幅方向と平行な方向のことを「横方向」と言う。また、外装シート11の長手方向と平行な方向のことを「縦方向」と言う。横方向と縦方向とは直交している。また、横方向と縦方向との両者と直交する方向のことを「前後方向」と言う。なお、前後方向の前方が、着用者の前側たる腹側であり、同前後方向の後方が、着用者の後側たる背側である。また、おむつ1を装着した際には、上記の縦方向は上下方向を向くことから、縦方向のことを「上下方向」とも言う。ちなみに、上下方向で言えば、脚回り開口部1HLは、胴回り開口部1HBよりも下方に位置している。更に、横方向のことを「左右方向」とも言う。
【0042】
上述の接合は、超音波溶着処理やヒートシール処理などで行われ、この例では、超音波溶着処理でなされている。そして、かかる接合に伴って、外装シート11の腹側部11aにおける横方向の各端部には、それぞれ接合部jが縦方向に沿って形成されており、同様に外装シート11の背側部11bにおける横方向の各端部にも、それぞれ接合部jが縦方向に沿って形成されている(
図2)。なお、これら腹側部11aの接合部jと背側部11bの接合部jとは一体となっていて、上記の端部において表裏の位置関係にある謂わば同じものである。そのため、以下の説明では、区別しない。
【0043】
図6Aは、接合部jの概略拡大図であり、
図6Bは、
図6A中のB―B矢視の概略図である。上述のように、接合部jは、縦方向に関しては、胴回り開口部1HBの方から脚回り開口部1HLの方へと延在している。詳しくは、接合部jは、前後方向(
図6Aでは紙面を貫通する方向)にへこんで形成された複数の溶着部jm,jm…を縦方向に並んで有し、複数の溶着部jm,jm…は、所定の規則性を有した溶着パターンで形成されている。例えば、この例では、各溶着部jmは、それぞれ縦方向に隣り合う溶着部jmとの間に間隔をあけながら、横方向に長い略長方形に形成されている。
【0044】
そして、本実施形態では、接合部jのうちで縦方向の最下方に位置する溶着部jm、すなわち、接合部jのうちで脚回り開口部1HLに最も近い溶着部jm(第1部分に相当し、以下では、溶着部jmbとも言う)の接合強度(N)を、縦方向の中央部に位置する複数の各溶着部jm(所定部分に相当し、以下では、溶着部jmcとも言う)の接合強度(N)よりも小さくしている。また、ここで言う「接合強度」とは、縦方向に沿って腹側部11aと背側部11bとを引き剥がす際に必要な外力の大きさ(N)のことである。
よって、かかるおむつ1によれば、縦方向の中央部に位置する複数の各溶着部jmc,jmc…の大きな接合強度に基づいて、接合部jの接合強度を全体としておむつ1の装着に耐え得る大きさに保ちながらも、縦方向の最下方に位置する溶着部jmbを起点として、比較的小さな外力でもって、腹側部11aと背側部11bとの接合を解くことができる。そして、その結果、脚回り開口部1HL側から腹側部11aと背側部11bとを速やか且つ容易に引き剥がすことができる。
【0045】
また、この例では、横方向たる左右の各端部にそれぞれ形成されたどちらの接合部j,j(
図2)についても、
図6Aに示すように縦方向の最下方に位置する溶着部jmbの接合強度が、縦方向の中央部に位置する複数の各溶着部jmc,jmc…の接合強度よりも小さくされている。よって、おむつ交換の作業者が、
図2の左右二つの脚回り開口部1HL,1HLのうちのどちらの開口部1HLを選んだ場合でも、腹側部11aと背側部11bとを容易に引き剥がすことができて、これにより、当該作業者は、速やかにおむつ1を脱がすことができる。但し、何等これに限るものではない。すなわち、横方向たる左右の各端部のうちのどちらか一方の端部の接合部jだけが、上述のような仕様とされていても良い。
【0046】
なお、溶着部jmbの接合強度(N)は、例えば溶着部jmcの接合強度(N)の5%〜70%の値から選択され、望ましくは、同接合強度(N)の10%〜50%の値から選択されると良く、より望ましくは、同接合強度(N)の20%〜40%の値から選択されると良い。
【0047】
また、最下方の溶着部jmbと接合強度(N)を対比すべき縦方向の中央部に位置する複数の各溶着部jmcの個数としては、例えば2ヶ〜20ヶであっても良いし、或いは、5ヶ〜15ヶであっても良い。更に言えば、上述では、最下方の溶着部jmbの接合強度(N)を、縦方向の中央部に位置する複数の各溶着部jmc,jmc…の接合強度(N)よりも小さくしていたが、何等これに限らない。例えば、場合によっては、接合部jが有する溶着部jm,jm…のうちで最下方の溶着部jmbを除く全て溶着部jm,jm…の接合強度(N)よりも、当該最下方の溶着部jmbの接合強度(N)を小さくしても良い。
【0048】
かかる接合部jにおける接合強度(N)の縦方向の分布は、例えば次のようにして測定することができる。先ず、接合部jを切断しないように注意しながら、おむつ1から外装シート11の横方向の端部を縦方向に長い帯状に切り離し、これにより、
図7に示すような縦方向に長い帯状の測定用サンプルSを作成する。そして、同測定用サンプルSの縦方向の下端部に溶着部jmが形成されていない部分Njmが存在する場合には、当該溶着部jmが形成されていない部分Njmを腹側部11aと背側部11bとに分けて、これらを一対の摘みとして使用する。すなわち、一対の摘みのうちの一方の摘みを、不図示の引っ張り試験機(例えば、株式会社島津製作所製AUTOGRAPH(型式AG−1kNI))が具備する一方のヘッドにチャックし、他方の摘みを同試験機の他方のヘッドにチャックする。ここで、一方のヘッドは、試験機に移動不能に固定された固定ヘッドであり、他方のヘッドは、固定ヘッドの下方に同軸に設けられて上下方向に移動可能な移動ヘッドである。そして、固定ヘッドに設けられたロードセルによって同ヘッドに作用する引っ張り荷重値(N)を計測しながら、300(mm/分)の一定の移動速度値で移動ヘッドを固定ヘッドから下方に離間させていく。すると、これにより、測定用サンプルSの腹側部11aと背側部11bとが順次引き剥がされていき、つまり、引き剥がされる位置が、測定用サンプルSにおける下端部から上端部へと縦方向に順次移動していくが、当該位置が最終的に上端部に至ると、測定用サンプルSは腹側部11aと背側部11bとに完全に引き剥がされた分離状態となって、そうなれば、測定は終了する。
【0049】
ちなみに、測定用サンプルSの縦方向の下端部の端まで溶着部jmが形成されている場合には、当該下端部に一対の摘みを形成し難いが、そのような場合には、測定用サンプルSの縦方向の上端部の幾つかの溶着部jm,jmを犠牲にしつつ同上端部に一対の摘みを形成し、これにより、当該上端部から下端部へと引き剥がすようにしても良い。
【0050】
ところで、望ましくは、
図6Aの接合部jのうちで縦方向の最上方に位置する溶着部jm、すなわち、接合部jのうちで胴回り開口部1HBに最も近い溶着部jm(第3部分に相当し、以下では、溶着部jmtとも言う)の接合強度(N)についても、縦方向の中央部に位置する複数の各溶着部jmc,jmc…の接合強度(N)よりも小さくしていると良い。
【0051】
そして、このようにしていれば、何らかの事情で脚回り開口部1HLからの引き剥がしが困難な場合には、即座に胴回り開口部1HBからの引き剥がしに切り替えることができて、これにより、おむつ1を速やかに脱がすことができる。
【0052】
なお、その場合に、脚回り開口部1HLに最も近い溶着部jmbの接合強度(N)と、胴周り開口部1HBに最も近い溶着部jmtの接合強度(N)との大小関係については、互いに同値にしても良いし、前者の方を小さくしても良い。ちなみに、前者の方を小さくすれば、脚回り開口部1HLから引き剥がし易くなる。
【0053】
ところで、
図6Aの例では、接合強度(N)を小さくすべき縮小対象の溶着部jmb(jmt)の面積(m
2)を、縮小対象ではない溶着部jmcの面積(m
2)よりも小さくすること、並びに、同縮小対象の溶着部jmb(jmt)の単位面積当たりの接合力(N/m
2)を、縮小対象ではない溶着部jmcの単位面積当たりの接合力(N/m
2)よりも小さくすることの両方によって、縮小対象の溶着部jmb(jmt)の接合強度(N)を、縮小対象ではない溶着部jmcの接合強度(N)よりも小さくしているが、何等これに限らない。すなわち、縮小対象の溶着部jmb(jmt)の接合強度(N)が、縮小対象ではない溶着部jmcの接合強度(N)よりも小さくなっていれば、何等上述に限らない。
例えば、縮小対象の溶着部jmb(jmt)の面積と、縮小対象ではない溶着部jmcの面積とを互いに同値にした場合には、縮小対象の溶着部jmb(jmt)の単位面積当たりの接合力(N/m
2)を、縮小対象ではない溶着部jmcの単位面積当たりの接合力(N/m
2)よりも小さくすることよって、縮小対象の溶着部jmb(jmt)の接合強度(N)を、縮小対象ではない溶着部jmcの接合強度(N)よりも小さくしても良い。或いは、縮小対象の溶着部jmb(jmt)の単位面積当たりの接合力(N/m
2)と、縮小対象ではない溶着部jmcの単位面積当たりの接合力(N/m
2)とを互いに同値にした場合には、縮小対象の溶着部jmb(jmt)の面積(m
2)を、縮小対象ではない溶着部jmcの面積(m
2)よりも小さくすることよって、縮小対象の溶着部jmb(jmt)の接合強度(N)を、縮小対象ではない溶着部jmcの接合強度(N)よりも小さくしても良い。
但し、この例のように、縮小対象の溶着部jmb(jmt)の面積(m
2)を小さくするとともに、その単位面積当たりの接合力(N/m
2)も小さくした方が、当該縮小対象の溶着部jmb(jmt)の接合強度(N)を確実に小さくすることができるため、好ましい。
【0054】
また、場合によっては、胴周り開口部1HBでも腹側部11aと背側部11bとを円滑に引き剥がせないこともあり得る。そして、その場合には、おむつ交換の作業者は、外装シート11自体を破ることによっておむつ1を脱がすことになるが、この点につき、この例では、
図6Bに示すように、前述の外装シート11に係る腹側部外面シート13a及び背側部外面シート13bの胴周り開口部1HBでの折り返しに起因して、外装シート11において脚回り開口部1HLをなす部分11HLの坪量(g/m
2)の方が、同外装シート11において胴周り開口部1HBをなす部分11HBの坪量(g/m
2)よりも小さくなっている。よって、おむつ交換の作業者は、脚回り開口部1HLから外装シート11自体を比較的容易に破ることができて、その結果、おむつ1の交換作業の停滞を防ぐことができる。
【0055】
更に、この例では、
図6Aのように脚回り開口部1HLに最も近い一つの溶着部jmbの接合強度(N)だけを小さくしていたが、この接合強度を小さくする対象の溶着部jmの数は、何等一つに限らず、複数にしても良い。例えば、
図8に示すように、この脚回り開口部1HLに最も近い溶着部jmbを第1溶着部jmb(第1部分に相当)とした場合に、この第1溶着部jmbの胴回り開口部1HL側に隣り合う溶着部jm(第2部分に相当し、以下では、第2溶着部jmb2とも言う)の接合強度を、第1溶着部jmbと同じように、縦方向の中央部の複数の各溶着部jmc,jmc…よりも小さくしても良い。
【0056】
更には、これら第1溶着部jmb及び第2溶着部jmb2の接合強度(N)を互いに同じ大きさに揃えても良いが、揃えなくても良い。例えば、第2溶着部jmb2の接合強度を、第1溶着部jmbの接合強度と、縦方向の中央部に位置する複数の各溶着部jmcの接合強度との間の大きさにしても良い。そして、このようにしていれば、脚回り開口部1HLの近傍に位置する少なくとも二つの溶着部jmb,jmb2については、接合強度が、脚回り開口部1HLに近い位置の溶着部jmほど小さくなっている。よって、腹側部11aと背側部11bとの引き剥がしを脚回り開口部1HLから円滑に行うことができる。
【0057】
なお、脚回り開口部1HLの近傍の溶着部jmb,jmb2について述べた上記の内容は、胴回り開口部1HBの近傍に位置する溶着部jmについても同様である。すなわち、以前に
図6Aを参照しながら、胴回り開口部1HBに最も近い一つの溶着部jmtの接合強度を小さくしても良いと述べたが、この接合強度を小さくする対象の溶着部jmの数は、何等一つに限らず、複数にしても良い。例えば、この胴回り開口部1HBに最も近い溶着部jmtを第3溶着部jmt(第3部分に相当)とした場合に、この第3溶着部jmtの脚回り開口部1HL側に隣り合う溶着部jm(第4部分に相当し、以下では、第4溶着部jmt4とも言う)の接合強度を、第3溶着部jmtと同じように小さくしても良い。
【0058】
更には、これら第3溶着部jmt及び第4溶着部jmt4の接合強度(N)を互いに同じ大きさに揃えても良いが、揃えなくても良い。例えば、第4溶着部jmt4の接合強度を、第3溶着部jmtの接合強度と、縦方向の中央部に位置する複数の各溶着部jmcの接合強度との間の大きさにしても良い。そして、このようにしていれば、胴回り開口部1HBの近傍に位置する少なくとも二つの溶着部jmt,jmt4については、接合強度が、胴回り開口部1HBに近い位置の溶着部jmほど小さくなっている。よって、腹側部11aと背側部11bとの引き剥がしを胴回り開口部1HBから円滑に行うことができる。
【0059】
このような溶着部jm,jm…を有した接合部jの形成は、適宜な不図示の超音波溶着装置によって実現される。超音波溶着装置は、超音波エネルギーを溶着対象部分に投入することによって、溶着対象部分を摩擦発熱して溶着する。そして、溶着した部分が溶着部jm,jm…として外装シート11上に残存する。
かかる超音波溶着装置は、例えば、上記の縦方向に対応する方向(以下、CD方向とも言う)に延びたレール状のホーンを有する。ホーンは、超音波振動を行う発振面を有する。発振面は、CD方向に延びた帯状平面をなしており、その法線方向に20〜35kHz等の所定周波数で超音波振動する。また、同装置は、ホーンの上記帯状平面をCD方向に転がり可能なローラー状のアンビル(以下、アンビルローラーと言う)を有している。アンビルローラーの外周面には、前述の溶着部jm,jm…の形成パターンに対応させて複数の突部が設けられている。そして、パンツ型にすべく二つ折り状態された外装シート11の縦方向がCD方向に揃うように、外装シート11がホーンの発振面たる帯状平面上に載置されるとともに、ホーンが超音波振動をしている間に、アンビルローラーがCD方向に沿って外装シート11を横断することによって、接合部jとして複数の溶着部jm,jm…が外装シート11に形成されるが、ここで、この横断時には、CD方向に単位長さ当たりに投入される超音波エネルギー(J/m)が、外装シート11のうちで脚回り開口部1HLに最も近い部分で小さくなるように調整される。そして、これにより、脚回り開口部1HLに最も近い溶着部jmbの接合強度(N)が選択的に小さくされる。なお、超音波エネルギー(J/m)の大きさを変更する方法としては、超音波振動の振幅を変更すること、ホーンへのアンビルローラーの押し付け力を変更すること、ホーンとアンビルローラーとの間の間隔を変更すること等を例示することができる。
【0060】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0061】
上述の実施形態では、
図2の接合部jが有する複数の溶着部jm,jm…の一例として、
図6Aに示すように横方向に長い略長方形の溶着部jmを例示したが、溶着部jmの形状は何等これに限らない。例えば、楕円形でも良いし円形でも良い。また、複数の溶着部jm,jm…が全体として形作る溶着パターンについても、何等上述したような溶着部jm,jm…が縦方向に並んでなる単純な縦並びパターンに限らない。例えば、円形の溶着部が格子状に並んでなる格子状パターンであっても良いし、或いは、溶着部が接合部jにおける縦方向の略全長に亘って帯状に連続してなるベタ状パターンであっても良いし、これら以外のパターンでも良い。
【0062】
上述の実施形態では、第1部品としての吸収性本体3を非肌側から第2部品としての平面視略砂時計形状の外装シート11で覆ってなる2ピースタイプのおむつ1を例示したが、何等これに限らない。例えば、本発明に係る前述の接合部jを、所謂3ピースタイプのおむつに対して形成しても良い。詳しくは次の通りである。
先ず、
図9に示すように、同おむつは、第1部品として着用者の股間に配される吸収性本体3を有し、第2部品として同着用者の腹側に配される腹側帯部材21aを有し、第3部品として同着用者の背側に配される背側帯部材21bを有している。また、
図9の展開状態では、腹側帯部材21aと背側帯部材21bとが互いの間に間隔をあけて平行に並んだ状態で、これらの間に吸収性本体3が掛け渡されつつ、同吸収性本体3の長手方向の各端部3ea,3ebがそれぞれ最寄りの帯部材21a,21bに接合固定されており、その外観形状は平面視略H形状をなしている。そして、この展開状態から、吸収性本体3が長手方向の略中央部で二つ折りされるとともに、この二つ折りの状態において互いに重ね合わせられる帯部材21a,21b同士が、上記長手方向と直交する幅方向(横方向に相当)の各端部にて接合されると、これら帯部材21a,21b同士が環状に繋がって、これにより、胴周り開口部及び一対の脚周り開口部が形成されたおむつとなる。そして、かかる接合に対しても、前述の接合部jを適用可能である。なお、各帯部材21a,21bは、熱可塑性樹脂繊維を含む不織布等の柔軟なシートを材料として形成される。また、吸収性本体3の構成は、前述したものと概ね同じであるので、その説明については省略する。