【文献】
生井準人ら他5名,自己組織化材料の半導体微細パターニングへの応用,JSR TECHNICAL REVIEW,2012年,No.119,p.7-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
荷電粒子源から放出される荷電粒子ビームを走査する走査偏向器と、試料に対する前記荷電粒子ビームの走査によって得られる荷電粒子を検出する検出器と、当該検出器の出力を積算して画像を形成する制御装置を備えた荷電粒子線装置において、
当該制御装置は、前記荷電粒子ビームの走査に基づいて得られる画像を評価し、前記荷電粒子ビームの走査によって自己組織化リソグラフィ技術に用いられる高分子化合物に含まれる特定のポリマーを収縮させるまで、前記荷電粒子ビームの走査と画像の評価を繰り返し、前記特定のポリマーを収縮させたときの前記荷電粒子ビームの走査条件を、積算用画像取得用の走査前の前記荷電粒子ビームの走査条件として設定することを特徴とする荷電粒子線装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、DSA法による微細パターンを模式的に示したものである。
図1(a)は、パターン生成の基板となるシリコンウェハ101を示している。
図1(b)にて、101の上にリソグラフィ技術によって所望の微細パターンの繰り返しピッチよりも広い広ピッチパターン102を生成する。その後、
図1(c)にて複合ポリマー材110を塗布する。適切な熱処理(アニール)により、110はパターン102をガイドとして特定方向へ自己整列する。110は2種類の異なるポリマー111とポリマー112の繰り返しで構成されている。
図1(d)で、一方のポリマー(例えば112)を選択除去することにより、ガイドパターン102よりもピッチの狭い狭ピッチパターン103を生成することができる。
【0020】
熱処理後、エッチング前に相分離が適正に行われたか否かを判定することは、適正な高分子材料が選択されたか、アニールの条件が適切であったか等を早期に知る上で重要であるが、
図1(c)に例示するように、高分子材料内には複数のポリマーが含まれているのにも関わらず、表面が平坦であるため、走査電子顕微鏡では高コントラストの画像が得られない。発明者らは上記のような状況に基づいて、DSAパターンの検査・計測を行うSEMが備えるべき構成の一つは、コントラスト強調のための表面処理であることを新たに見出した。パターンの測定や検査では、パターンの不良をできるだけ早く検知することが時間的・経済的コストを低減するために重要であり、
図1(d)のステップを経ず
図1(c)の段階で実施するほうが好ましい。この状態では、ポリマー111とポリマー112に高低差がなく、通常のSEM観察は難しい。さらに、ポリマー111とポリマー112の質量密度にも大きな違いがなく、質量密度の差を利用したコントラストも得られない。また、ポリマー111とポリマー112の電気特性は共に絶縁体である場合が多く、帯電電位差を利用した電位コントラストも得られない。
【0021】
以下に説明する実施例では、DSA法により生成された狭ピッチパターンの観察のために、荷電粒子線をあらかじめ被観察領域に照射してから観察を行う方法およびその装置を提供する。あらかじめ被観察領域に荷電粒子線を照射することで、一対のポリマー(
図1の111と112)の一方を体積減少させることが可能となる。この方法により、ポリマー表面にパターン形状に応じた段差を形成することが可能となり、高精度な計測・検査が実施できる。また、被観察領域にあらかじめ照射する荷電粒子線は、その後の観察に使用する荷電粒子線と同一であることを一つの特徴とする。
【実施例1】
【0022】
高コントラスト信号に基づくDSAパターンの高コントラスト信号測定を可能とする走査電子顕微鏡の一例を図面を用いて説明する。
図2は、走査電子顕微鏡(SEM)の概略図を示している。電子源201は制御電源231により、試料に対して負電位に保持されている。引出電極202は、前記制御電源231に重畳した正電圧電源232により、電子源201よりも正電位に設定され、電子線220を引き出す。電子線220は集束レンズ203と対物レンズ208を経て観察試料210上へ照射される。観察試料210上での電子線220の直径は、レンズ制御回路233および238によって適切に制御される。また、電子線220の電流量は、ファラデーカップ205によって検知し、電流計測手段235にて計測される。電子線220は偏向制御回路237によって動作する偏向器207によって観察視野を走査される。電子線220を試料210から退避させるときには、ブランカ電源234を用いてブランカ204を動作させる。試料210から発生した信号電子は、対物レンズ208よりも電子源201側に設置されたインレンズ検出器206あるいは、特定方向に設置された斜方検出器209によって検出される。インレンズ検出器は試料から様々な方向へ出射した低速の信号電子を効率よく検出することで、表面段差のエッジ部を強調するエッジコントラスト像の取得に適した検出器を与える。一方、斜方検出器209は、試料の特定方向へ出射した高エネルギーの信号電子を検出するのに適している。
【0023】
DSA法で作成されたパターンを観察するにあたり、試料ステージ211に観察試料210を載せ、対物レンズ208の下へ搬送する。観察部位をあらかじめ電子線220で走査し、一方のポリマーを体積減少させて表面段差を形成する。このプロセスを加工のための照射と呼ぶことにする。その上で、再度電子線220で観察部位を走査し、インレンズ検出器206の信号を信号処理装置236で画像化して顕微鏡像を取得する。この際、加工のための照射が十分であれば、DSA法によるパターンのエッジ部に段差が形成され、得られる顕微鏡画像には二種類のポリマーの境界に明確なエッジコントラストが顕われる。このエッジ線を利用することで、被観察試料上のパターン寸法の高精度計測、あるいは被観察試料上のパターン形状の欠陥検査が実施できる。
【0024】
自己組織化リソグラフィ技術に用いられる高分子化合物に対し、荷電粒子を照射して当該高分子化合物を形成する複数のポリマーの内、特定のポリマーを他のポリマーに対して大きく収縮させた後に、当該他のポリマーを含む領域に荷電粒子ビームの走査によって得られる信号に基づいて、前記他のポリマーの複数のエッジ間の寸法測定を行う上記構成によれば、DSAパターンの高精度な評価を迅速に行うことが可能となる。
【0025】
図17は、SEM1701を含むパターン測定システムの一例を示す図であり、当該システムは主にSEM1701、SEM1701を制御する制御装置1702、制御装置1702に所望の装置条件を設定するための光学条件設定装置1703.及びSEMによる測定条件を設定するための設定装置1704からなる。設定装置1704に設けられた表示装置には、例えば
図15に例示するようなGUI(Graphical User Interface)画面が表示可能となっている。
図15に例示するGUI画面には、パターン(Pattern)の種類を入力するための入力ウィンドウ1501、測定のためのビーム走査の前のビーム照射条件を入力するための入力ウィンドウ1502が設けられている。本実施例の場合、電位コントラスト(Voltage Contrast)、コンタクトホール観察(Contact Hole(C/H) Observation)、上述の一方のポリマーの体積を減少させて、他方のポリマーのエッジを強調するエッジ強調(Edge Enhancement)の3つから予備走査(Pre−Scan)モードの選択が可能となっている。
【0026】
電位コントラストモードの予備走査では、視野内に含まれる素子を帯電させるためのビームコンデョションによるビーム走査が行われる(第1の走査モード)。コンタクトホール観察モードの予備走査では、試料表面のレジストを正に帯電させるためのビーム走査が行われる(第2の走査モード)。そして、エッジ強調モードの予備走査では、1のポリマーを縮小させるための走査が行われる(第3の走査モード)。
【0027】
この3つの走査モードの内、第3の走査モードだけが試料を帯電させることを目的としない走査モードとなる。本実施例ではこのようなDSAパターン測定用の予備照射条件を設定するためのウィンドウが設けられたGUI画面について説明する。
【0028】
以上のように予備走査には種々の種類があり、ビームコンディションも異なるため、例えば
図16に例示するように走査モードごとに、パターンの種類ごとのビームコンデョションを記憶するデータベースを用意しておき、パターンの種類と走査モードの選択に基づいて、ビーム条件を読み出せるようにしておけば、予備走査条件の選択が容易になる。また、このようなデータベースを用意し、未知の試料を測定したときの条件を更新するようにすれば、過去の設定条件を容易に設定することが可能となる。
図15に例示するGUI画面にて予備走査の際の視野の大きさ(FOV(Field Of View))、照射時間(Exposure Time)、ビーム電流(Beam Current)、試料へのビームの到達エネルギー(Landing Energy)、及びフレーム(Frame)数の選択と、パターンの種類、及び予備走査モードの選択を行い、
図16に例示するようなデータベースを更新するようにしても良い。
【0029】
データベースは、光学条件設定装置1703に内蔵されるメモリ1705に登録され、設定装置1704による設定によってSEM1701の光学条件として設定される。光学条件設定装置1703内に設けられた演算処理部1706には、測定のためのビーム条件を設定する光学条件設定部1707、メモリ1705に登録されたデータベース、或いは設定装置1704にて設定された設定条件に基づいて、予備走査条件を設定する予備照射条件設定部1708、後述する予備照射を停止する条件を求める輝度条件抽出部1709、及び測定のためのビーム走査に基づいて、プロファイル波形を形成し、パターンの寸法を測定するパターン測定部1710が含まれている。
【0030】
以上のような構成によれば、加工に基づいて顕在化したエッジを用いた測定を高精度に行うことが可能となる。
【0031】
図3は、DSAパターンの断面とSEM画像との関係を示す図である。
図3aでは、加工のための照射実施前のDSAパターンとSEM像である。2種類のポリマー301と302の間に表面段差がないことに対応して、SEM像のコントラストがついていない。
図3bは、ビーム照射により、ポリマー302を体積縮小させた場合である。体積縮小しないポリマー301の側壁から多くの信号電子が発生し、ポリマー301とポリマー302の境界に明確な強信号領域(ホワイトバンド)303を形成する。これにより、DSAパターンの計測・検査が可能になる。
図3cは、本発明の方法を用いるが、体積縮小が不十分な場合を示している。この場合、ポリマー301の側壁からの信号電子量が十分でなく、ホワイトバンド304も弱い。より具体的には、一番端のポリマー302が充填されていない部分に接するエッジ305と比較して、十分な加工が施されたパターンエッジのホワイトバンド303より、加工が不十分なパターンエッジ304の信号が弱いことが、
図3のパターンの拡大図からもわかる。
【0032】
特に未知の試料の場合、十分な計測精度を確保するためには、加工のための照射が十分かどうか、判定する方法の採用が望ましい。
【0033】
図14は加工から測定に至るまでの工程を示すフローチャートである。以下の処理は、光学条件設定装置1703によって設定された設定条件に基づいて、制御装置1702がSEM1701を制御することによって実行する。まず、加工と加工が適正に行われているか否かの確認のためのビーム走査を行い(ステップ1401)、加工状態モニタ用のプロファイルを形成する(ステップ1402)。ここでエッジ部の輝度をモニタし、ピークトップとピークボトムの輝度差を判定する(ステップ1403)。ここでその値が所定値未満である場合にはステップ1401に戻り、所定値以上である場合は、寸法測定用のビーム走査を行う(ステップ1404)。このステップ1404におけるビーム走査の結果得られた荷電粒子に基づいてプロファイルを形成し(ステップ1405)、形成されたプロファイルを用いたパターンの寸法測定を実行する(ステップ1406)。
【0034】
ある特定の素子が選択的に帯電する場合等と異なり、予備照射が進むにつれて、エッジとそれ以外の部分の輝度信号が相対的に異なってくるため、エッジ部分とそれ以外の部分との相対的な違いの推移を評価することによって、適正な加工終点を求めることが可能となる。また、輝度情報はピークの高さの比較ではなく、例えばピーク幅の変化を評価するようにしても良い。なお、寸法測定用に形成するプロファイルには、加工モニタ用のプロファイル信号を含めないようにすることによって、高精度な寸法測定が可能となる。
【0035】
なお、後述するように、加工モニタのための荷電粒子検出と、パターン寸法測定のための荷電粒子検出を同時に行う場合は、測定用のプロファイル形成の際に選択的に加工終了後の信号を用いるようにしても良いし、加工終了後に検出器の出力信号を受け入れるようにしても良い。
【0036】
図4は、
図3と同じ観察対象をビーム光軸に対して斜め方向に配置された斜方検出器209にて検出された荷電粒子に基づいて形成した画像を示す図である。斜方検出器209による画像では、検出器の方向にその法線方向を向けた試料傾斜面は明るく、検出器とは反対方向にその法線方向を向けた試料面は暗く画像化される。換言すれば検出器側に面する断面を持つエッジは明るくなり、検出器側とは逆に面する断面を持つエッジは暗くなる。
【0037】
図4aは加工のためのビーム照射実施前のDSAパターンのSEM像である。2種類のポリマー401と402との間には表面段差がないので、斜方検出器の検出に基づくSEM像であったとしてもコントラストはつかない。
図4bおよび
図4cはビーム照射による加工によって、ポリマー402を体積縮小させた場合のSEM画像である。
【0038】
体積縮小しないポリマー401の側壁のうち、斜方検出器の方向に面した側壁部分やポリマー402の一部は明るく、反対向きの側壁およびポリマー402の一部は暗く画像化される。なお、
図4ではポリマー上部の輝度403、加工が十分になされたときの検出器側に対面する断面部分の輝度404、加工が十分になされたときの検出器側とは逆の方向に対面する断面部分の輝度405、加工が不十分なときの検出器側に対面する断面部分の輝度406、加工が不十分なときの検出器側とは逆の方向に対面する断面部分の輝度407を、異なる表示形態で表現している。
【0039】
この明るい部分と暗い部分の明るさ差が大きいほど表面段差が深く、明るさ差が小さいほど表面段差が浅いことから、斜方検出器の画像を用いて、加工のための照射が十分か判断することができる。より具体的には、制御装置によって、特定方向に配置された斜方検出器の信号出力に基づいて、輝度を横軸、検出数を縦軸とするヒストグラムを形成し、所定の輝度を持つヒストグラム内の2つのピークの輝度差が所定値以上となったときに、加工が完了したと判断するようにすることが考えられる。また、加工が進むにつれて検出器側に面する断面が明るくなるため、検出器側のエッジ部分の輝度が所定値以上となったときに、加工が完了したと判定するようにしても良い。但し、エッジ部分の輝度は断面の形状やポリマーの材質によっても異なるため、暗い部分と明るい部分の輝度の相対比に基づいて判定を行う手法の方がより高精度に加工終了検出を行うことが可能となる。
【0040】
高精度に加工終了検出を行うことによって、測定の長時間化や過剰なビーム照射を行うことなく、高精度な測定を実現することが可能となる。また、測定用の検出器と加工モニタ用の検出器を別に設けることによって、加工後、即座に測定に移行することも可能となる。
【0041】
上述の加工量判定において、必ずしもパターンの側壁方向と斜方検出器の方位が一致しない場合が想定される。斜方検出器として、異なる方位に対応する複数個の斜方検出器を設置しても良い。
図5は、4方位に独立した斜方検出器を配置した例である。電子線220により試料210から発生した信号電子501a、501b、501c、501dは、その出射方向に応じてそれぞれ斜方検出器502a、502b、502c、502dにて検出される。あるいは、それぞれ単一の検出面を有する検出器を複数分割した検出素子(半導体検出器、マルチチャネルプレート、アバランシェ型ホトダイオード、CCD)を用いても良い。
図6は、4素子に分割した検出素子を配置した斜方検出器の例である。信号電子は、その出射方向に応じて素子601a、601b、601c、601dのいずれかにて検出される。
【0042】
さらに、加工のための照射をより効率的に行うために、レンズ制御回路233あるいは238を使用して観察時の電子線と異なる試料上の直径を有するように変更できる、また、制御電源231を利用して観察時の電子線と異なるエネルギーで照射することも可能である。同様に、電流量、走査速度、走査領域なども、加工を効率的に行うため、観察時とは異なる設定をすることができる。
【実施例2】
【0043】
これまでの説明では主に、測定のためのビーム、或いは測定のためのビームのビーム条件を変えたビームを用いて、測定前の加工を行うことについて説明したが、以下に、測定用のビームのビーム源とは異なるビーム源を荷電粒子線装置内に設け、当該異なるビーム源を用いて加工を行う例について説明する。
【0044】
本実施例では、試料面に対して垂直な方向から加工用ビームを照射すべく、加工用ビーム源を試料面に沿って平行に形成する例について説明する。加工用のビーム源を荷電粒子線装置内に設けるためには、測定用のビーム源から放出されるビーム軌道以外の位置に配置する必要がある。例えば、加工用のビーム源を測定用のビームのビーム軌道に対して斜めの位置に配置した場合、ビームが試料表面に対して斜めの方向から照射されることになるため、ポリマーは不均一に除去され、検査・計測の誤差が発生する可能性がある。
【0045】
また、観察部位に対して垂直にビームを照射するために、斜方から導入したビームを偏向器により屈曲させて観察部位へ導くことも考えられるが、屈曲のための偏向器は、一般に観察用電子線に収差を発生させるため、表面処理と観察とを同時に実施する場合、分解能の劣化を引き起こす。分解能の劣化は、狭ピッチパターン計測の測定精度を低下させてしまう可能性がある。
【0046】
また、フラッドガン等の他の電子源を設けようとすると、真空チャンバが大型化してしまう可能性もある。
【0047】
本実施例では、観察に使用する第一の荷電粒子線と、被観察領域にあらかじめ照射する第二の荷電粒子線とは同一でない構成を主に説明する。また、前記第一の荷電粒子線による観察と前記第二の荷電粒子線の照射を同時に実施する例についても併せて説明する。さらにまた、前記第一の荷電粒子線の放出源(第一の荷電粒子線源)は、前記第二の荷電粒子線の放出源(第二の荷電粒子線源)とその粒子線光軸を同一とする例についても説明する。
【0048】
光軸を同一とすることで、狭ピッチパターンに対して偏りなく荷電粒子を照射して加工することが可能になり、かつ加工と観察を試料移動せずに実施できるため、真空チャンバを小型化できる。また、加工用ビームの放出源から放出されるビームは、試料面に対し垂直であり、加工用のビームと測定用のビームは同軸となるため、偏向器の偏向による分解能低下のない加工、測定を行うことが可能になる。
【0049】
本実施例によれば、DSA法によって形成された表面段差がなく質量密度に差が少ない分子ポリマーの配列であっても、高い視認性で分子境界を認識できる荷電粒子線装置を提供することができる。また、分解能を維持したまま、短時間で効率よく均質にポリマーを体積減少させることができ、微細パターンの高精度な検査・計測が可能になる。
【0050】
以下図面を用いて、本実施例の具体例を説明する。
図7は、走査電子顕微鏡(SEM)の概略図を示している。電子源701は制御電源731により、試料に対して負電位に保持されている。引出電極702は、前記制御電源731に重畳した正電圧電源732により、電子源701よりも正電位に設定され、電子線720を引き出す。電子線720は集束レンズ703と対物レンズ708を経て観察試料710上へ照射される。観察試料710上での電子線720の直径は、レンズ制御回路733および738によって適切に制御される。また、電子線720の電流量は、ファラデーカップ705によって検知し、電流計測手段735にて計測される。電子線720は偏向制御回路737によって動作する偏向器707によって観察視野を走査される。電子線720を試料710から退避させるときには、ブランカ電源734を用いてブランカ704を動作させる。試料710から発生した信号電子は、検出器706によって検知され、信号処理装置736で画像化して顕微鏡像を取得する。
【0051】
試料710と対物レンズ708の間には、面状電子源709が配置され、制御電源739によってその動作がコントロールされる。面状電子源は、もっぱらDSAパターンに対して加工のための照射を行うものとする。面状電子源709は観察のための電子源701と光軸を共有している。
図8は同軸配置された面状原子源709の具体的な形態を示している。
【0052】
面状電子源709は円盤形状をなし中央に孔を有する円環型である。特に中央の孔と電子線720が共通の軸を持つことをもって、二つの電子源709と701が同軸配置されているとみなす。試料710の観察部位付近が均等加工できればよいので、面状電子源709の外径部は円形以外であっても本発明の特徴を損なうものではない。
図8に示す通り、面状電子源709は放出面802と引き出し面803からなる。制御電源739は、面状電子源709の加速電圧を定める高圧電源805と、引き出し面803と放出面802の間の電位差を定め、電子線を引き出す高圧電源806からなる。
【0053】
図7の構成では、試料から発生する信号電子の大部分が面状電子源709に遮られ、検出器706まで届く電子の数はわずかである。この場合、
図9に示すように、面状電子源709の外側に斜方検出器901を設置してもより。特に、第一の実施例で述べたとおり、斜方検出器による観察パターンのエッジ部検出が重要であるから、この斜方検出器901を主要な検出器とすることができる。
【0054】
あるいは、
図10に示す通り、面状電子源709を対物レンズ708および検出器706よりも電子源701側に設置してもよい。本構成により、信号電子1001の効率的な検出が実現できる。この場合、面上電子源709が試料710を見込む角度が狭くなり、照射電子量が減ってしまう可能性がある。対物レンズ708あるいは別途付加するレンズによって面状電子源709からの照射電流を効率的に試料710へ導く必要がある。
【0055】
あるいは、
図11に示す通り、面状電子源709の配置する高さを、信号電子1101の集束点1102と同一になるように配置する構成も可能である。集束点1102が十分小さく、面状電子源709の中央の孔を通過することができる。この方法により、面状電子源709を検出器709よりも試料708側へ近づけて配置することが可能になり、照射電流を効率的に試料710へ導くことができる。
【実施例3】
【0056】
更に、他の実施例について図面を用いて説明する。
図12は、走査電子顕微鏡(SEM)の概略図を示している。電子源1201は制御電源1231により、観察試料1211に対して負電位に保持されている。前記試料1211に対する前記電子源1201の電位をVP(<0)とする。引出電極1202は、前記制御電源1231に重畳した正電圧電源1232により、電子源1201よりも正電位VP1に設定され、電子線1220を引き出す。電子線1220は集束レンズ1203と対物レンズ1208を経て前記試料1211上へ照射される。観察試料1211上での電子線1220の直径は、レンズ制御回路1233および1238によって適切に制御される。また、電子線1220の電流量は、ファラデーカップ1205によって検知し、電流計測手段1235にて計測される。電子線1220は偏向制御回路1237によって動作する偏向器1207によって観察視野を走査される。電子線1220を試料1211から退避させるときには、ブランカ電源1234を用いてブランカ1204を動作させる。
【0057】
試料1211から発生した信号電子は、対物レンズ1208よりも電子源1201側に設置されたインレンズ検出器1206あるいは、特定方向に設置された斜方検出器1214によって検出され、信号処理装置1236あるいは1244で画像化して顕微鏡像を取得する。前記斜方検出器1214と前記試料1211の間には、エネルギーフィルタ1213が配置されている。エネルギーフィルタ1213のしきい電圧は、高圧電源1243によって制御される。
【0058】
試料1211と対物レンズ1208の間には、面状電子源1209が配置される。面状電子源1209の電位は、制御電源1239によって制御される。前記試料1211に対する面状電子源1209の電位をVFとする。さらに面状電子源1209はメッシュ状の引き出し面1210を有する。この引き出し面1210は、制御電源1239に重畳した高圧電源1240によって、面状電子源1209に対する引き出し面1210の電位VF1が制御される。面状電子源1209から試料1211へ照射される電子線は、専らDSAパターンに対して加工のための照射を行う。面状電子源1209から試料1211へ照射を行わないとき、前記面状電子源1209と前記試料1211の間にブランカを設置することも原理的には可能である。しかし、照射面積が大きく、ブランカによる電子線偏向には困難が伴うため、前記電位差VFを十分小さくするか正の値にして試料へ到達する電子数と低減させる方法、あるいは前記電位差VF1を十分小さくするか負の値にして面状電子源1209から放出される電子数と低減させる方法を用いる。
【0059】
次に
図13を用いて、面状電子源1209による加工のための電子線照射と、SEM画像の取得を同時に行う方法について述べる。
図13は、
図12に示した面状電子源と斜方検出器の詳細に示したものである。なお、必ずしも斜方検出器を使用する必要はなく、インレンズ検出器1206による類似の構成による実施も可能である。
【0060】
加工のための照射とSEM画像の取得を同時に行う場合、電子線1220だけでなく、加工のために照射された電子線1303も試料1211から信号電子1304を発生させる。SEM画像の空間分解能は、電子線1220の試料1211上における直径で決まる。加工のための電子線1303の空間的な広がりは、電子線1220の直径よりも十分大きいため、加工のための電子線1303が発生させる信号電子は高い空間分解能を与えることはできず、両電子線によって発生させられた信号電子が同時に検出されるとSEM画像の分解能は劣化する。この問題を避けるため、電子源1201の電位VPを面状電子源1209の電位VFよりも負電位に設定する(VP<VFとする)。
【0061】
これにより、観察のための電子線1220が、試料1211に入射する際に有する運動エネルギーは、加工のための電子線1303が、試料1211に入射する際に有する運動エネルギーよりも大きくなる。従って、観察のための電子線1220によって発生した信号電子の最大エネルギーEPは、加工のための電子線1303によって発生した信号電子の最大エネルギーEFよりも必ず大きくなる(EP>EF)。
【0062】
次に前記エネルギーフィルタ1213のしきい電圧Ethを、EP>Eth>EFとなるように選んでおけば、斜方検出器1214に検出されるフィルタ後の信号電子1305は、観察のための電子線1220によって発生させられた電子のみから構成されることになる。以上の方法により、像質を劣化させることなく、加工と観察を同時に効率よく実施することができる。
【実施例4】
【0063】
以下に説明する実施例は、主に試料パターンに荷電粒子線を走査して、試料の検査や測定を行う荷電粒子線装置に関する。観察する試料パターンはブロックコポリマーおよびブレンドされたポリマーがガイドパターンに誘導組織化によって形成されるコンタクトホールやビアパターンである。
【0064】
一般的な半導体デバイスでは回路パターンを複数層に渡って形成する。それら各層の回路パターンを接続するためにビアやコンタクトホールが形成される。ビアやコンタクトホールは下層のトランジスターと回路配線、その他の素子と回路配線、配線同士などさまざまな接続に用いられる。従来のビアパターンやコンタクトホールを製造する工程では設計データで決められた位置およびサイズでリソグラフィとエッチングを順に実施する方法が一般的である。最新の液浸リソグラフィとドライエッチングでは約30nm前後のビアパターンの形成が可能であるが22nmノード以降のビアパターンを解像するためには従来の光学式リソグラフィを用いることは難しくなってきている。このような半導体デバイスパターンの微細化の根本的な問題に対して2重露光や超解像技術、EUV露光や電子線露光などさまざまな取り組みがなされているが現時点で全面的に製造コストや技術レベルの点で量産の要求を満たしていない。
【0065】
ブロックコポリマーやブレンドされたポリマーによる誘導組織化を用いたパターンニング技術は高価な露光装置を用いることなく微細なパターンの形成が可能である。特にガイドとなるホールパターンを用いたDSAホールの形成においてはパターンの位置を制御しながら微細なホールパターンを生成することが可能となってきている。
【0066】
基板上に光学リソグラフィとエッチングによって形成されたガイドとなるホールパターンにブロックコポリマーやブレンドされたポリマーを塗布してアニールすると誘導組織化現象によって円筒状にポリマーが分離する。その後、現像によって一方のポリマーが取り除かれ、エッチング工程を経てホールのパターニングが完成する。
【0067】
誘導組織化後の状態において現像の代わりに荷電粒子線を照射することによって荷電粒子線に反応しやすいポリマー成分(例えばPMMAなど)がシュリンク現象によってパターニングされる。このように現像前に荷電粒子線を照射する検査装置によっても局所的に分離したDSAパターン画像を得ることができる。
【0068】
このようにして得られた画像からDSAホールの径やガイドパターンと形成されたDSAホールの位置ずれなどを計測して評価することができる。
【0069】
評価結果に問題なければ現像工程を実施し、エッチング工程を経てホールパターンが形成される。評価結果がよくなければリワークを実施したり前の工程の製造装置の条件を変更して再度パターンを形成する。このように荷電粒子線による微細なホールパターンの計測や評価によって得られた情報を製造装置へフィードバックすることで半導体工程の歩留まりや品質の向上が図れる。
【0070】
測長SEMなどの半導体工程の検査に使用される荷電粒子線装置では自動運転のためにあらかじめ走査フレーム枚数など決定しておく必要がある。DSA工程のパターンでは電子線を照射することでパターンエッジが観察できるようになるがシュリンク現象などの荷電粒子線とポリマー成分との相互作用は一般に不安定であるため、積算フレーム数の一意に決定することが困難である。このため登録したテンプレートを用いたテンプレートマッチング等によってパターン位置を検出することが困難となる。
【0071】
本方式において荷電粒子線装置の特性上、信号ノイズ比は低く、少ない加算信号によって信号とノイズを分離してパターンエッジを検出することは難しい。
【0072】
DSA工程では前述のように一定時間、荷電粒子線を照射しないと画像が安定しないため、最適な画像取得前の電子線照射時間を決めることが困難である。
【0073】
登録したテンプレートを用いてパターン検出する場合でもDSA工程で観察されるパターンが荷電粒子線の照射によって変化しやすいことから位置ずれ発生させる可能性があった。
【0074】
DSA工程においてガイドパターンと形成されたDSAパターンの位置ずれを計測してモニタすることが求められる。
【0075】
以下の実施例では、ブロックコポリマーやブレンドされたポリマーによる誘導組織化後の状態で荷電粒子線を走査し、走査箇所から放出される荷電粒子から得られる情報と評価基準に基づいてパターン位置を認識し、計測する走査電子顕微鏡について説明する。また、電子線を照射することによってDSA工程のパターンからの信号や画像の変化を捉えて評価値に基づいて積算フレーム数などの条件を決定する手法についても説明する。
【0076】
評価値を信号強度や画像の輝度変化、エッジ先鋭度やエッジ連続性を適切に組み合わせて使うことで計測範囲やパターン位置を検出する例についても説明する。
【0077】
パターンエッジ信号とノイズを分離する目的でDSAパターン荷電粒子線照射初期段階の画像からあらかじめ分散値などのノイズレベルを計測しておき、評価基準として用いる例についても説明する。
【0078】
ガイドパターンのエッジやDSAパターンの輝度が安定する時間をDSA工程のパターンからの信号や画像の変化を捉えて決定する例についても説明する。
【0079】
テンプレートを登録してパターン検出する場合でもDSA工程の不安定なパターン信号を使わず、エッチング後のガイドパターン画像や設計データから生成される疑似画像をテンプレートとして登録し、パターン検出に用いる例についても説明する。
【0080】
上記構成によれば、ブロックコポリマーやブレンドされたポリマーによる誘導組織化後の状態でパターン位置を認識し、計測することが可能となる。本方式では計測範囲は自動で設定される。
【0081】
荷電粒子線装置の自動運転時にDSA工程のパターンを撮像する際、適切なフレーム数やプリドーズ時間を決定することができる。また、複数の評価値を用いることで安定したパターン位置検出や計測が可能となる。さらにDSAパターン荷電粒子線照射初期段階の画像からノイズレベルを計測しておきパターンエッジ信号とノイズを分離することでパターンの誤検出を減らすことができる。
【0082】
テンプレートを登録して自動運転する場合は、エッチング後のガイドパターン画像や設計データから生成される疑似画像をテンプレートとして登録し、パターン検出に用いることで安定したパターン検出が可能となる。
【0083】
図18は走査型電子顕微鏡の構成概要のブロック図である。全体制御部1825はユーザーインターフェース1828から作業者によって入力された電子の加速電圧、ウェーハ111の情報、観察位置情報などを基に、電子光学系制御装置1826、ステージ制御装置1827を介して、装置全体の制御を行っている。ウェーハ1811は図示されない試料搬送装置を介して、試料交換室を経由した後試料室1813にあるステージ1812上に固定される。
【0084】
電子光学系制御装置1826は全体制御部1825からの命令に従い高電圧制御装置1815、第一コンデンサレンズ制御部1816、第二コンデンサレンズ制御部1817、二次電子信号増幅器1818、アライメント制御部1819、偏向信号制御部1822、対物レンズ制御部1821を制御している。
【0085】
引出電極1802により電子源1801から引き出された一次電子線1803は第一コンデンサレンズ1804、第二コンデンサレンズ1806、対物レンズ1810により収束され試料1811上に照射される。途中電子線は絞り1805を通過し、アライメントコイル1808によりその軌道を調整され、また、偏向信号増幅器1820を介して偏向信号制御部1822から信号を受けた偏向コイル1809により試料上を二次元的に走査される。ウェーハ1811への一次電子線1803の照射に起因して、試料1811から放出される二次電子1814は二次電子検出器1807により捕捉され、二次電子信号増幅器1818を介して二次電子像表示装置1824の輝度信号として使用される。二次電子像表示装置1824の偏向信号と、偏向コイルの偏向信号とは同期しているため、二次電子像表示装置1824上にはウェーハ1811上のパターン形状が忠実に再現される。
【0086】
また、パターンの寸法計測に使用する画像を作成するため、二次電子信号増幅器1818から出力される信号を画像処理プロセッサ1823内でAD変換し、デジタル画像データを作成する。さらにデジタル画像データから二次電子プロファイルを作成する。本実施例では画像処理プロセッサ1823のような演算装置を用いて、後述するような積算対象となる画像データの選択が行われる。また、演算装置や制御部を含めて単に制御装置と称することもある。
【0087】
作成された二次電子プロファイルから計測する範囲を、手動、もしくは一定のアルゴリズムに基づいて自動選択し、選択範囲の画素数を算出する。一次電子線1803により走査された観察領域の実寸法と当該観察領域に対応する画素数から試料上での実寸法を計測する。
【0088】
なお、以上の説明では荷電粒子線装置の一例として、電子線を用いる走査型電子顕微鏡を例にとって説明したが、これに限られることはなく、例えばイオンビームを用いるイオンビーム照射装置であってもよい。
【0089】
図19にガイドパターン付きDSAホールパターン計測に用いられる代表的なパターン画像の模式
図1900を示す。DSAホールパターン画像の模式
図1900には4つのガイドパターン付きDSAホールパターン(1901、1902、1903、1904)がある。ガイドとなるホールパターン(1911、1912、1913、1914)は一般に従来の光学式の露光装置によるリソグラフィ工程とエッチング工程によって形成される。通常DSAホールパターン(1921、1922、1923、1924)はブロックコポリマーやブレンドされたポリマーを塗布した後、アニール工程でポリマーが分離することによって誘導組織化される。その後、現像によって1つのポリマーが取り除かれエッチング工程を経てパターニングが完成する。しかしながら誘導組織化後の現像の代わりに電子線を照射することによって電子線に反応しやすいポリマー(例えばPMMAなど)がシュリンク現象によってもDSAホールのエッジが見えるようになる。このように現像前に電子線を照射する検査装置によっても局所的(検査点のみ)に分離したDSAパターン画像を得ることができる。なお、以下ではブロックコポリマーについて記載しているがブレンドされたポリマーに関しても同様である。
【0090】
図20はブロックコポリマーを塗布したDSAホールパターンに電子線を照射した場合にDSAホールが映像化される様子をフレームごとの画像を示した模式図である。電子線照射前の画像2000から徐々にガイドパターンとDSAホールパターンが現れてくる様子を示す(2000、2010、2020、2030、2040、2050)。電子線を照射した直後の画像2000ではガイドパターンもDSAホールもほとんど観察できない。電子線を十分照射した画像2050ではガイドパターンホールのエッジ2052とブロックコポリマーが分離した後のDSAホールパターンのボトム部2053がはっきりと観察できるようになる。ここではホールパターンのフレーム画像ごとの図を示したがラインパターンの場合は1ラインスキャンごとの信号プロファイルでもよい。またフレームを加算平均した画像を数枚おきに使用してもよい。
【0091】
図21は
図20で説明したフレームごとの画像において、前後の画像の差分を計算した画像である。差画像2110はフレーム画像2
010から2
000を引いて求めた画像であり、同様に差画像2120はフレーム画像2
020から2
010を、差画像2130はフレーム画像2
030から2
020をそれぞれ引いて求めている。差画像2150はフレーム画像2050からフレーム画像2040を引いて求めているがその輝度値は0に近い値となっている。これはフレーム画像2050とフレーム画像2040でほとんど変化がなかったことを示している。本特許ではこの変化を捉えてフレーム数やガイドパターン位置およびDSAパターン位置を検出する。このように同じ対象物に対するビーム走査の過程で抽出された複数の画像間の比較を行うことによって、適正な装置条件の選択が可能となる。異なるフレーム数によって得られた複数の画像は、基本的には同じ対象物であり、言わば自己相関評価を行っていることになる。例えば、予め参照画像を用意しておき、その参照画像との比較に基づいて装置条件を選択する場合等に比較して、高精度な評価を行うことが可能となる。
【0092】
図22は
図20のフレーム画像から求めた評価値(例えば画素分散)をプロットしたグラフ2200である。プロット点2210は
図20の画像2000の評価値であり、プロット点2211は画像2010の評価値である。以下、同様にプロット点2212は画像2020の評価値、プロット点2213は画像2030の評価値、プロット点2214は画像2040の評価値、プロット点2215は画像2050の評価値である。電子線を照射して徐々にパターンが鮮明になるにつれて評価値が大きくなり(2211、2212)、十分に電子線が照射されると評価値の変化は飽和している(2213、2214、2215)様子が分かる。
【0093】
図21の差画像から求めた評価値(例えば輝度積算値)をプロットしたものを
図23に示す。プロット点2310は
図21の画像2110の評価値であり、プロット点2311は画像2120の評価値である。以下、プロット点2312は画像2130の評価値、プロット点2313は画像2140の評価値、プロット点2314は画像2150の評価値である。電子線が照射される始めた直後は画像の変化が大きいためプロット点23610やプロット点2311の評価値は大きい値となっている。画像の変化が飽和する後半(プロット点2312、プロット点2313、プロット点2314)では徐々に一定の評価値に収束していることが分かる。
【0094】
以上のような電子線の照射によるブロックコポリマーが分離してく様子を捉えた評価値を利用してガイドパターンとDSAホールパターンの位置を検出する手順を
図24に示す。
【0095】
ステージ1812を駆動して計測パターンの存在するウェーハ上の位置へ視野を移動する(S2401)。倍率等の撮像条件を設定した後(S2402)、電子線をスキャンしながら(S2403)画像を取得する(S2404)。取得した画像は画像処理プロセッサ1823に転送され、画像処理プロセッサ1823において各画像に対する評価値を計算する(S2405)。評価値は例えば画像分散値や微分画像の画素値の総和などを使用する。対象とする領域は全画素値でもよいし、パターンを認識した後のエッジ部の画素値を選択的に使用して計算してもよい。
【0096】
各画像の評価値に対してあらかじめ決めておいたしきい値に対する条件に従ってスキャン、画像取得、評価値の計算を繰り返す(S2406)。評価値がしきい値に対して判定条件を満たした場合、積算画像を作成する(S2407)。
図22の場合、しきい値2240以上となったフレーム数の区間2250の評価値2213、2214、2215に対するフレーム画像2030、2040、2050を加算平均した画像を出力する。
【0097】
図23の差画像から求められた評価値を使う場合、しきい値2340以下となったフレーム数2330以降の区間2350に含まれるフレーム画像2030、2040、2050を加算平均した画像を出力する。
【0098】
即ち、
図24の例では、シュリンク量が所定の値以下となるまでのフレーム数が、特定ポリマーを収縮、及びその経過をモニタするためのものであり、それ以降のフレームによって得られる信号が、測定用画像を形成するための積算対象となる。このような条件を制御装置内等に設けられた記憶媒体に、DSAパターンの種類に関連付けて記憶させておくことによって、後に対象パターンに応じた適切な装置条件を読み出すことが可能になる。
【0099】
次にガイドパターン中心およびDSAホールパターン中心を検出する方法を説明する。まず
図22において、しきい値2240以下となったフレーム数の区間2260または
図23のしきい値2340以上となったフレーム区間2360に対する
図23の評価値2310、2311、2312に対応する差画像を積算した
図25のような画像25800を作成する。ガイドパターン部のエッジ25802およびDSAホールパターン部2503のように電子線照射による輝度値の変化が大きい部分がパターンエッジとして輝度が高くなる。
【0100】
差画像の累積加算画像25800からホールパターンの中心位置を検出する(S2408)。中心位置の検出にはブロブ抽出後の重心や一般化ハフ変換によってガイドパターンのエッジとDSAパターンのエッジを別々に検出することができる(S2409)(S2410)。ブロブを解析することでエッジの連続性を評価値とすることも可能である。画像の空間微分から微分強度を算出して、エッジ位置における微分強度のばらつきを評価値とすることも可能である。エッジの連続性、微分強度のばらつきを評価値として用いる方法はラインパターンでも応用が可能である。また一般化ハフ変換によればハフ空間の累積値を評価値として用いることができる。
【0101】
ホールパターン中心を検出する別の方法としては、あらかじめ登録しておいたパターンのテンプレートとのマッチング等でホールパターンの中心位置を検出することもできる。この場合、あらかじめ登録する画像は電子線を十分に照射後の画像2050のような画像をテンプレートとして使用する。
【0102】
図22で説明した評価値は画素分散であったがテンプレートマッチングを実行する場合は相関値を評価値として使用することもできる。
【0103】
テンプレートを用いたホールパターン中心を検出する別の方法として
図26に示すようなテンプレートに設計データから生成したエッジ輪郭線2601やポリマー塗布前のガイドパターンの画像2602を使用することもできる。設計データを用いる場合はパターンのエッジ情報のみとなるので積算した差画像2600とマッチングを実施して中心位置を検出する。ポリマー塗布前のガイドパターン画像を使用する場合もソーベルフィルタなどの微分フィルタを適用したエッジ強調画像2603をテンプレートとして使用し差画像2500とマッチングを実施して中心位置を検出する。中心位置を検出した後、測長カーソルを配置し(S2411)、測長を実行する(S2412)。
図20のように画像内に複数のパターンが含まれる場合はすべてのパターンに対して(S2409)〜(S2412)を実施する。中心位置と測長カーソルとの位置関係を予め登録しておくことによって、測長対象となるホールのエッジ部分に正確に測長ボックスを設定することが可能となる。
【0104】
図24のフローにおいて撮像条件をあらかじめ記憶しておき、自動運転時に再現してスキャンを実行することもできる。この場合、
図22のしきい値2240以下となったフレーム数2230または
図23のしきい値2340以上となったフレーム区間630からプリドーズするフレーム数やフレーム数から換算した時間を撮像条件としてすることも可能である。
【0105】
DSAパターンのエッジ強度が弱く検出が困難な場合の検出について
図27に示す。まず、ガイドパターン(2702)のみをエッジ検出しガイドパターンの重心を求め(2704)、その重心を基準として放射状にDSAパターンのエッジを検出する(
図27)。角度方向を横軸に半径方向を縦軸にしてグラフを描くと2705のようになり、この波のうねりを検出すればエッジのばらつきを評価することが可能である。エッジが安定していない場合、2705のようにエッジ位置のばらつきが大きいいが、2706、2708のようにエッジが安定してくるとエッジの変化が緩やかになる(2707,2709)。このようにエッジのばらつきをモニタすることで、パターンが安定してきてから画像積算を開始することが可能である。
【0106】
これまで説明したDSAパターンの計測に関して、計測に必要なパラメータを設定するユーザーインターフェースの例を
図28に示す。評価値しきい値は、
図22(2230)、
図23(2330)で積算開始枚数を設定するしきい値として設定する。自動判定を実行する場合はAuto(2802)にチェックをつけ、手動で設定するにはそのしきい値を設定する(2803)。Frame数は
図22(2250),
図23(2350)における計測画像の積算Frame数を設定する。自動で実行する場合は、Auto(2805)、手動で実行する場合はManual(2806)を設定する。Pattern Information(2807)では、ガイドパターン(2808)、DSAパターン(2809)の最小許容サイズ、最大許容サイズ、ガイドパターンとDSAパターンの重心ずれ許容値(2810)を設定する。これらの値が許容値範囲外の場合は計測エラーとすればパターンサイズ、ずれ量をリアルタイムモニタできる。