(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アニオン性基含有ポリマーがマイクロリアクターを用いたリビング重合により重合されたものである請求項1〜5のいずれかに記載の水性顔料分散液用混練物の製造方法。
請求項1〜8のいずれかに記載の水性顔料分散液用混練物の製造方法によって水性顔料分散液用混練物を得る工程と、当該水性顔料分散液用混練物を水溶性溶剤中に分散させて、水性顔料分散液を得る工程とを有する水性顔料分散液の製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(顔料)
本発明で使用する顔料は、特に限定はなく、水性インクジェットインクにおいて通常使用される有機顔料あるいは無機顔料を使用することができる。また未処理顔料、処理顔料のいずれでも適用することができる。また、プラスチックを被記録材とする印刷の場合ではイエローインク、シアンインク、マゼンタインク、ブラックインク等のほか、視認性を高める目的から白色インクも使用される。
【0016】
これらの使用される顔料は特に限定はなく、通常水性インクジェット記録用インク用の顔料として使用されているものが使用できる。具体的には、水や水溶性有機溶剤に分散可能であり、公知の無機顔料や有機顔料が使用できる。無機顔料としては例えば、酸化鉄、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラック等がある。また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。
【0017】
例えば、ブラックインクに使用される顔料としては、カーボンブラックとして、三菱化学社製のNo.2300、No.2200B、No.900、No.960、 No.980、No.33、No.40、No,45、No.45L、No.52、HCF88、MA7、MA8、MA100、等が、コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、Raven700等が、キャボット社製のRegal 400R、Regal 330R、Regal 660R、Mogul L、Mogul 700、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400等が、デグサ社製のColor Black FW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、Printex 35、同U、同V、同1400U、Special Black 6、同5、同4、同4A、NIPEX150、NIPEX160、NIPEX170、NIPEX180等が挙げられる。
【0018】
また、イエローインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、174、180、185等が挙げられる。
【0019】
また、マゼンタインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、146、168、176、184、185、202、209、等が挙げられる。
【0020】
また、シアンインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:3、15:4、16、22、60、63、66等が挙げられる。
【0021】
また、白インクに使用される顔料の具体例としては、アルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸塩、微粉ケイ酸、合成珪酸塩、等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等があげられる。また、前記無機白色顔料が各種表面処理方法で表面処理されていてもよい。
【0022】
前記顔料は、混合物中に35質量%以上、好ましくは40質量%以上配合される。一般に水性顔料分散液を希釈して、一定顔料濃度のインク組成物を得るため、水性顔料分散液中の濃度を極力上げて生産することは、より多くのインク組成物を製造できることから生産効率上有利となる。しかし、顔料濃度を上げることは、水性顔料分散液の保存安定性が悪化するため、実質的には顔料の分散安定性、水性顔料分散液用混練物等の安定性確保の点から、60質量%以下、好ましくは50質量%以下とされる。
さらに顔料(Pigment)と後述の分散剤として使用する一般式(1)で表されるポリマー(Resin)の質量比率に関しては、樹脂は顔料表面を安定に被覆するのに必要な量、存在していれば十分であり、それをこえる樹脂の含有はむしろ好ましくない。樹脂が過剰量存在すると、水性顔料分散液やインク組成物を作製したときに、顔料に吸着しない遊離の樹脂が増加するため、特にインクジェット記録用インク組成物として使用したときに該樹脂がインクノズルに固着してインク吐出不良の原因となりやすく、特にサーマルジェットプリンターにおいてはこの吐出不良の問題が発生する危険性が高い。
そのため、本発明の水性顔料分散液用混練物の製造において、樹脂/顔料の質量比率は1/10〜2/1、好ましくは 1/10〜1/1となる様にすると好ましい。樹脂に対して顔料の配合比率が少なすぎると前記の問題点が発生し易く、顔料の配合比率が多すぎると顔料が樹脂によって充分に被覆されず、分散安定性、長期保存安定性が低下するおそれがある。
【0023】
(一般式(1)で表されるポリマー)
本発明で使用するアニオン性基含有ポリマーは、具体的には一般式(1)で表されるポリマーである。
【0024】
【化2】
(1)
【0025】
一般式(1)中、A
1は有機リチウム開始剤残基を表す。有機リチウム開始剤として具体的にはメチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム(n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、iso−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなど)、ペンチルリチウム、へキシルリチウム、メトキシメチルリチウム、エトシキメチルリチウムなどのアルキルリチウム;ベンジルリチウム、α−メチルスチリルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム、1,1−ジフェニルヘキシルリチウムなどのベンジルリチウム;ビニルリチウム、アリルリチウム、プロペニルリチウム、ブテニルリチウムなどのアルケニルリチウム;エチニルリチウム、ブチニルリチウム、ペンチニルリチウム、ヘキシニルリチウムなどのアルキニルリチウム;
【0026】
フェニルエチルリチウムなどのアラルキルリチウム;フェニルリチウム、ナフチルリチウムなどのアリールリチウム;2−チエニルリチウム、4−ピリジルリチウム、2−キノリルリチウムなどのヘテロ環リチウム;トリ(n−ブチル)マグネシウムリチウム、トリメチルマグネシウムリチウムなどのアルキルリチウムマグネシウム錯体などが挙げられる。
【0027】
前記一般式(1)中、A
2は顔料への吸着を目的とした疎水ブロックであり、スチレン系モノマーおよび/またはビニルピリジン系モノマー残基の繰り返し単位を表し、即ちスチレン系モノマーおよび/またはビニルピリジン系モノマーを単独重合または共重合して得たポリマーである。
スチレン系モノマーとして具体的には、スチレン、スチレン誘導体(p−ジメチルシリルスチキシスチレン、p−tert−ブチルジメチルシロキシスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレンなど)、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレンなどがあげられる。
またビニルピリジン系モノマーとしては、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどがあげられる。これらのモノマーは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
前記一般式(1)中、A
3は分散安定性を付与するための親水ブロックであり、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステルモノマー残基の繰り返し単位を表し、即ち(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステルモノマーを単独重合または共重合して得た、アニオン性基等の親水性基を有するポリマーである。
なお本発明において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸の総称を表し、(メタ)アクリル酸エステルモノマーとは、アクリル酸エステルモノマーとメタクリル酸エステルモノマーの総称を表す。
【0029】
(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸iso−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル、(メタ)アクリル酸n−トリデシル、(メタ)アクリル酸n−ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−tert−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピル、メタクリル酸ペンタフルオロプロピル、メタクリル酸オクタフルオロペンチル、メタクリル酸ペンタデカフルオロオクチル、メタクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロニトリル、
【0030】
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール−ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレンオキサイド基含有(メタ)アクリル単量体、等があげられる。これらのモノマーは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
前記A
3は、前記(メタ)アクリル酸を単独重合または共重合して得る他、前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーを単独重合または共重合させて得たアニオン性基を有さないポリマーのエステル結合を加水分解してカルボキシル基を発現させることでも得ることができる。
【0032】
前記一般式(1)で表されるポリマーは、リビングラジカル重合、リビングアニオン重合等のリビング重合により製造することが好ましい。特にブロックを明確にすることが分散体の安定性の上で有利であることから、リビングアニオン重合により製造することが好ましい。
リビングアニオン重合法としては、マイクロリアクターにより重合する方法があげられる。マイクロリアクターは、重合開始剤とモノマーの混合性が良好であるため、反応が同時に開始し、温度が均一で重合速度を揃えることができるため、製造される重合体の分子量分布を狭くできる。また同時に、成長末端が安定であるためブロック共重合体を製造することが容易になる。また、反応温度の制御性が良好であるため副反応を抑えることが容易である。
【0033】
(マイクロリアクターを使用したリビングアニオン重合)
具体的態様の一例をマイクロリアクターの模式図である
図1を参照しながら説明する。第一のモノマーと重合を開始させる重合開始剤とを、それぞれチューブリアクターP1及びP2(
図1中7及び8)から、複数の液体を混合可能な流路を備えるT字型マイクロミキサーM1(
図1中1)に導入し、T字型マイクロミキサーM1内で、第一のモノマーをリビングアニオン重合し第一の重合体を形成する(工程1)。
【0034】
次に、得られた第一の重合体をT字型マイクロミキサーM2(
図1中2)に移動させ、同ミキサーM2内で、得られた重合体の成長末端を、チューブリアクターP3(
図1中9)から導入された反応調節剤である1,1−ジフェニルエチレンによりトラップし、反応調節を行う(工程2)。
【0035】
次に、前記T字型マイクロミキサーM2内の反応調節を行った第一の重合体を、T字型マイクロミキサーM3(
図1中3)に移動させ、同ミキサーM3内で、チューブリアクターP4から導入された第二のモノマーと、前記反応調節を行った第一の重合体とを、連続的にリビングアニオン重合を行う(工程3)。
その後メタノールで反応をクエンチすることで、アニオン性基の無いブロック共重合体を製造する。
【0036】
マイクロリアクターを使用したリビングアニオン重合法においては、使用するモノマーが水酸基、酸基等の官能基を有する場合、リビングアニオン重合ではそのまま重合することは困難であるため、何らかの基により保護した状態で重合し、その後保護基を外すことが好ましい。
従って、マイクロリアクターを使用したリビングアニオン重合法では、前記A
3は、前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーを単独重合または共重合させて得たアニオン性基を有さないポリマーを合成後、エステル結合を加水分解してカルボキシル基を発現させる方法で得る。
【0037】
本発明の一般式(1)で表されるポリマーは、前記第一のモノマーとしてスチレン系モノマー及び/またはビニルピリジン系モノマーを使用し、前記開始剤として有機リチウム開始剤により反応させることで、前記A
2の疎水ブロック部となるポリマーを得る。次に、前記反応調整剤として1,1−ジフェニルエチレンを使用して成長末端の反応性を調整した後、前記第二のモノマーとして(メタ)アクリル酸エステルモノマーを反応させてポリマーを得る。この後、該ポリマーが有するエステル結合の一部または全部を加水分解させてカルボキシル基を発現させることで、前記A
3の親水ブロックが得られる。
【0038】
前記ポリマーのエステル結合の一部または全部を加水分解させてカルボキシル基を発現させる方法を詳細に述べる。
エステル結合の加水分解反応は、酸性条件下でも塩基性条件下でも進行するが、エステル結合を有する基によって条件がやや異なる。例えばエステル結合を有する基がメトキシカルボニル基等の第1級アルコキシカルボニル基又はイソプロポキシカルボニル基等の第2級アルコキシカルボニル基の場合は、塩基性条件下で加水分解を行うことでカルボキシル基に変換できる。この際、塩基性条件下とする塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物などが挙げられる。この反応は定量的に進行する。
【0039】
また、エステル結合を有する基が、t−ブトキシカルボニル基等の第3級アルコキシカルボニル基の場合は、酸性条件下で加水分解を行うことにより、カルボキシル基に変換できる。この際、酸性条件下とする酸性化合物としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸;トリフルオロ酢酸等のブレステッド酸;トリメチルシリルトリフラート等のルイス酸などが挙げられる。この反応は定量的に進行する。t−ブトキシカルボニル基の酸性条件下で加水分解の反応条件については、例えば、「日本化学会編第5版 実験化学講座16 有機化合物の合成IV」に開示されている。
【0040】
さらに、t−ブトキシカルボニル基をカルボキシル基に変換する方法として、上記の酸に代えて、陽イオン交換樹脂を用いた方法も挙げられる。前記陽イオン交換樹脂としては、例えば、ポリマー鎖の側鎖にカルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)等の酸基を有する樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリマー鎖の側鎖にスルホ基を有する強酸性が陽イオン交換樹脂は、反応の進行を速くできることから好ましい。本発明で使用できる陽イオン交換樹脂の市販品としては、例えば、オルガノ株式会社製強酸性陽イオン交換樹脂「アンバーライト」等が挙げられる。この陽イオン交換樹脂の使用量は、効果的に加水分解できることから、前記一般式(1)で表されるポリマー100質量部に対し、0.01〜10質量部の範囲が好ましく、0.1〜5質量部の範囲がより好ましい。
【0041】
また、エステル結合を有する基が、ベンジルオキシカルボニル基等のフェニルアルコキシカルボニル基の場合は、水素化還元反応を行うことにより、カルボキシル基に変換できる。この際、反応条件としては、室温下、酢酸パラジウム等のパラジウム触媒の存在下で、水素ガスを還元剤として用いて反応を行うことにより定量的にフェニルアルコキシカルボニル基をカルボキシル基に変換できる。
【0042】
上記のように、エステル結合を有する基の種類によってカルボキシル基への変換の際の反応条件が異なるため、例えばA
3の原料としてt−ブチル(メタ)アクリレートを用いた場合、例えばn−ブチル(メタ)アクリレートを併用し共重合して得られたポリマーはt−ブトキシカルボニル基とn−ブトキシカルボニル基とを有することになる。ここで、t−ブトキシカルボニル基が加水分解する酸性条件下では、n−ブトキシカルボニル基は加水分解しないことから、t−ブトキシカルボニル基のみを選択的に加水分解してカルボキシル基へ変換が可能となる。したがって、A
3の原料モノマーである(メタ)アクリル酸エステルモノマーを適宜選択することにより親水ブロック(A
3)の酸価の調整が可能となる。
【0043】
また、上記ポリマーにおいて、疎水ブロック(A
2)と親水ブロック(A
3)は、明確に分離されている方が、得られる水性顔料分散体の安定性において有利である。疎水ブロック(A
2)と親水ブロック(A
3)のモル比A
2:A
3は、100:5〜100:500の範囲が好ましい。A
3の比率がA
2の100に対して5に満たない場合、顔料の分散安定性やインクジェット吐出時の吐出安定性に劣る傾向にある。一方A
3の比率がA
2の100に対して500を超えてくると、ポリマーの親水性が高くなりすぎ、記録媒体が紙等の場合であると中へ浸透しやすくなり、発色性が低下する。比率は、中でも、A
2:A
3=100:5〜100:450であることが好ましい。
【0044】
また、上記ポリマーの重量平均分子量は1500〜10000が好ましく、1500〜8000がなお好ましく、1500〜4500の範囲が最も好ましい。重量平均分子量が1500に満たない場合、分子鎖による立体障害が少なくなり得られる水性顔料分散体の安定性が低下することがある。重量平均分子量が10000を超える場合は、顔料凝集体への浸透性が弱くなり顔料の凝集体の解砕性が低くなる傾向にあり、顔料分散が容易に行うことが困難となり分散粒子径が大きくなり発色性が低下するおそれがある。
重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィー)によって測定されるポリスチレン換算の値とする。
【0045】
また、上記ポリマーの酸価は、40〜400mgKOH/gが好ましく、更に好ましくは40〜300mgKOH/gである。酸価が40mgKOH/gを満たない場合、顔料の分散安定性、インクジェット吐出時の吐出安定性が充分ではない。一方酸価が400mgKOH/gを超える場合、ポリマーの親水性が高まり、記録媒体中へ浸透しやすくなるため発色性が低下する。
なお、発明におけるポリマーの酸価は、ポリマーの下記酸価測定方法による酸価とした。
【0046】
[酸価の測定方法]
JIS試験方法K 0070−1992に準拠して測定した。メタノールとトルエンの混合溶媒に試料0.1gを溶解させ、フェノールフタレインを指示薬として、0.1M水酸化カリウムアルコール溶液で滴定することにより求めた。
【0047】
(塩基性化合物)
前記ポリマーと塩基性化合物とを混合することにより、水性顔料分散液用混練物と水との親和性が向上し、水性顔料分散液の製造時に、水性顔料分散液用混練物が水中に速やかに分散し、製造効率が向上する。また、水性顔料分散液中の樹脂被覆顔料粒子の分散状態がより安定となり、分散安定性、長期保存安定性も向上する。
また、混練時に塩基性化合物を配合すると、塩基性化合物と前記ポリマーとの相互作用によって樹脂が溶解状態または膨潤状態になりやすく、顔料が樹脂に充分に被覆されやすい状態で混練することができる。そのため、混練中に顔料が微粉砕され、粗大粒子が減少しやすくなり、後の工程で粗大粒子を除去する工程を省略でき、収率が向上するという効果も得られる。
【0048】
塩基性化合物としては、無機系塩基性化合物、有機系塩基性化合物のいずれも用いることができる。アルカリ強度を調整し易い点において、無機系塩基性化合物がより好ましい。有機系塩基性化合物としてはアミンなどが挙げられる。例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどの一般的なアミンを例示することができる。アミンの場合は一般に液体状であるので、そのままの形態で用いることができる。
無機系塩基性化合物としては、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム;カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩、カルシム、バリウムなどのアルカリ土類金属の炭酸塩;などを例示することができる。
中でも、前記ポリマーの中和によって該樹脂の分散性を高めるに効果的であるため、強アルカリのものが好ましく、具体的には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物が好ましい。
なお、無機系塩基性化合物は混合性向上の点などから、通常、20〜50質量%濃度程度の水溶液の形態で用いられる。
【0049】
塩基性化合物の配合量は、前記ポリマーの中和率が20%以上、好ましくは40%以上となる様に設定されることが、水溶性溶剤中の分散速度の向上、分散安定性、長期保存安定性の点から好ましい。上限値は特に限定しないが、実質的には、長期保存時に分散安定性があり、ゲル化しないためにも、200%以下、好ましくは120%以下とされる。
さらに塩基性化合物は、混練する前に、混合物に配合する他の配合成分とともに一括混合して混合物としておくことが好ましい。
例えば混合物は、予め前記ポリマーと水と塩基性化合物を混合して樹脂水溶液を作製しておき、これを顔料等の他の配合成分に添加するなどして、複数段階に分けて混合し、製造することもできるが、塩基性化合物と他の配合成分を一括配合して混練用の混合物を作製するほうが、該樹脂の顔料の表面への吸着が効率的に進行する点で好ましい。
なお、ここで中和率とは、下記の式によって計算される値である。
【0050】
【数1】
【0051】
(水溶性有機溶剤)
本発明の水性顔料分散液用混練物を製造するにあたっては、ある程度の溶剤存在下で混練することが好ましい。溶剤が存在しないと充分に混練することができなかったり、顔料の表面が濡れないため、樹脂による被覆が不充分となるおそれがある。そこで、水性顔料分散液用混練物に水溶性有機溶剤を配合すると、この水溶性有機溶剤にて前記ポリマーを溶解、一部溶解若しくは膨潤させることにより、顔料の粒子の表面に樹脂の均一な被膜を形成することができる。その結果、水性顔料分散液とインク組成物において分散安定性をさらに向上させることができる。
なお、塩基性化合物の水溶液を用いたり、塩基性化合物がアミンの様に液体状の場合には、これらが上記の溶剤の役割を果たすため、水溶性有機溶剤を敢えて添加する必要がない場合もある。
【0052】
水溶性有機溶剤としては、公知のものを特に制限なく使用することができる。
例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールテトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;
ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、およびこれらと同族のジオールなどのジオール類;
ラウリン酸プロピレングリコールなどのグリコールエステル;
ジエチレングリコールモノエチル、ジエチレングリコールモノブチル、ジエチレングリコ11111ールモノヘキシルの各エーテル、プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、およびトリエチレングリコールエーテルを含むセロソルブなどのグリコールエーテル類;
メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、および
これらと同族のアルコールなどのアルコール類;
あるいは、スルホラン;γ−ブチロラクトンなどのラクトン類;N−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンなどのラクタム類;グリセリンおよびその誘導体など、水溶性有機溶剤として知られる他の各種の溶剤などを挙げることができる。
これらの水溶性有機溶剤は1種または2種以上混合して用いることができる。
水溶性有機溶剤の選択は、使用する樹脂によって決まるが、ある程度の溶解性を持つものが好ましく、樹脂の溶解性によりその添加量が調整される。
【0053】
中でも、水性顔料分散液やインク組成物において、湿潤剤、乾燥防止剤としての役割も果たすため、高沸点、低揮発性で、高表面張力の常温で液体の多価アルコール類が好ましく、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類が好ましい。グリコール類は一般的にインク組成物に含まれている場合が多く、最終製品中に残留しても問題がない。
特に本発明の製造方法においては塩基性化合物の存在下で混練するため、水溶性有機溶剤として、特に樹脂の溶解力の高いものは不要である。
【0054】
なお、水溶性有機溶剤は、使用する樹脂によっても異なるが、通常は仕込みの混合物中に10〜50質量%、好ましくは20〜40質量%配合される。その添加量は、樹脂量の1/2〜5倍程度であり、好ましくは樹脂量の1〜4倍程度である。水溶性有機溶剤の量が樹脂量の1/2未満では樹脂を溶解、部分溶解、または膨潤させることができず、顔料の分散安定性が低下するおそれがある。また5倍を超えると混練用混合物粘度が低下し、十分な混練が行えないため、顔料の分散性が低下し、インク組成物において、吐出不良等の画質低下を生じさせるおそれがある。なお、上述の様に、塩基性化合物などに由来して溶剤の役割を果たすものが他に配合されている場合には、これを考慮して水溶性有機溶剤の配合量を決定すると好ましい。
また、水溶性有機溶剤は顔料に対して、質量比で1/5倍以上、好ましくは 1/3〜1倍配合すると好ましい。これにより、樹脂が常に半溶解もしくは膨潤状態となりつつ混練工程が進行し、顔料表面への樹脂被覆が良好に行われる。1/5倍未満では、混練初期に顔料の表面を充分に濡らすことができなかったり、樹脂を溶解、部分溶解、または膨潤させることができず、その効果を充分に得ることができないおそれがある。
【0055】
(混練方法)
本発明の製造方法は、顔料分散剤として前記一般式(1)で表されるポリマーを使用し、顔料と塩基性化合物と共に閉鎖系の混練装置で混練し、固形分含有比率が50〜80質量%である常温で固練りの顔料混練物を製造する、いわゆる混練法である。
【0056】
混練法とは前記特許文献1に記載されている方法であり、閉鎖型の混練機で混練を行うことから不純物の混入が非常に少ない方法である。
この方法は、水溶性溶剤に直接顔料を分散させるのではなく、まず、顔料を樹脂などとともに混練した後に水溶性溶剤に分散する。よってこの混練時に顔料が微粉砕されるため、粗大粒子を減少させることができる。
なお、このとき、上述の様に塩基性化合物を添加するため、塩基性化合物と前記ポリマーとの相互作用によって混練物の混練粘度が上昇し、高い剪断力によって混練が進行し粗大粒子が著しく減少する。そのため、この粗大粒子を除去する工程を省略することができ、製造効率が向上するとともに収率を向上させることができる。
【0057】
混練開始から終了までの間、該混合物中に常に一定量の水溶性有機溶剤が存在することで、混練初期に顔料の表面を濡らした水溶性有機溶剤が、当該溶剤によって好ましくは溶解、膨潤あるいは部分溶解したアニオン性基含有ポリマーに置き換えられ、顔料のアニオン性基含有ポリマーによる被覆がスムーズに進行し、アニオン性基含有ポリマーで十分に被覆された顔料を得ることができるものと推定している。また、混練終了後においても溶剤が混練開始時とほぼ同量残っており、混練後の混合物の溶解、分散を極めて短時間に進行させることができる。
【0058】
混練法で使用する閉鎖型の混練機は、撹拌槽と、一軸あるいは多軸の撹拌羽根を備えた混練機を用いると好ましい。撹拌羽根の数は特に限定しないが、高い混練作用を得るためには二つ以上の攪拌羽根のものが好ましい。
この様な構成の混練機を用いると、水性顔料分散液用混練物を製造した後、これを同一撹拌槽中で直接水溶性溶剤で希釈し分散させて、水性顔料分散液を製造することができる。なお、実質的に質量が変化しないとは、好ましくは混練前の混合物の仕込み量に対して混練中あるいは混練後の混練物の重さが好ましくは90質量%以上の範囲で維持されていることとする。
【0059】
混練法で使用する密閉可能な撹拌槽と1軸または多軸の撹拌羽根とを備えた閉鎖型の混練機は、例えば、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサーなどが例示される。本発明においては、前記混練機がプラネタリーミキサーであることが好ましい。プラネタリーミキサーは、互いに自転と公転を行う2軸の撹拌羽根を使用して、撹拌槽中の混練物を撹拌、混練する構造を有しており、撹拌槽中に撹拌羽根の到達しないデッドスペースが少ない。また、羽根の形状が肉厚で、高負荷をかけることができるが、一方では撹拌羽根を撹拌槽中で回す通常の撹拌機の様に使用することも出来る。このため高負荷領域から低負荷領域まで、混練対象にすることができる被混練物の幅が広く、混練終了後の混練物に、そのまま水と水溶性有機溶剤の一方あるいは両方を添加して希釈、撹拌、分散の全てを、混練物をプラネタリーミキサーから取り出さずに、該同じミキサーの中で行うことができる。
【0060】
混練法では、顔料とアニオン性基含有ポリマーからなる固形分比率が高い状態で混練するため、混練物の混練状態に依存して粘度が広い範囲で変化するが、プラネタリーミキサーは低粘度から高粘度まで広範囲に対応することが可能である。
具体的には、前記混合物中の固形分比率は、高いほうが、混練中の混練物の粘度を高く保ち、混練中に、混練機によって混練物にかけられるシェア(剪断力)を大きくして、混練物中の顔料の粉砕と顔料のアニオン性基含有ポリマーによる被覆を同時に進行させることができる。このような観点から、固形分比率は40質量%以上が好ましく、50質量%以上がなお好ましい。
また、粘度を高く一定に保つ観点からも、後述の混練方法は、閉鎖型の混練機を使用し、混練中の前記混合物の質量が混練前の仕込量に対して、好ましくは90質量%以上の範囲で維持されるように混練する。
【0061】
前記顔料の前記混合物に対する仕込み量は、なるべく多くすることで、混練物の不揮発分の顔料濃度を高くすることができる。このような観点から仕込み量は、前記混合物全量に対して35質量%以上とすることが好ましく、40質量%以上であることがなお好ましい。また仕込み量を多くすることで相対的にアニオン性基含有ポリマー仕込み量を減らすことができ、顔料の被覆に寄与しない余剰のアニオン性基含有ポリマーを低減することができる。また前記顔料と前記ポリマーの含有比率は、質量比で10/0.5〜10/20であることが好ましく、より好ましくは10/0.5〜10/10である。
【0062】
前記水溶性有機溶剤は、質量比で顔料の1/5以上使用することが好ましく、1/3以上使用することが最も好ましい。水溶性有機溶剤を質量比で顔料の1/3以上使用することにより、混練工程における開始時から終了時に至るまで、常に一定量の溶剤の存在のもとに混練を進行させることができる。これにより、常にアニオン性基含有ポリマーを溶解状態に保持する事はもとより、アニオン性基含有ポリマーによっては半溶解もしくは膨潤状態に保持しつつ混練工程を進行させることができ、顔料表面への樹脂被覆が良好に行われると推定される。
【0063】
混練法で好ましく使用される水溶性有機溶剤としては、揮発しにくい媒体を使用するのが好ましく、高沸点、低揮発性で、高表面張力の多価アルコール類が好ましく、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類が好ましい。
【0064】
より強固な被覆状態の着色剤を得たいときは、混練物に水溶性有機溶剤を添加、混合、撹拌して液体化、低粘度化し水溶性有機溶剤中に樹脂に被覆された顔料を分散させる混合工程を行うことが好ましい。混合工程では、水溶性有機溶剤の添加を一括で行うことにより一度に液体化を行ってもよいが、全添加量を分割して添加し、添加後の撹拌で混合物全体が均一になってから後にその次の撹拌を行うようにすることが均一な液体化の実現のためには好ましい。あるいはこのように水溶性有機溶剤を分割して添加した場合に、必要となる混合工程の時間全体にわたって、少量の水溶性有機溶剤を連続して添加してもよい。特に水溶性有機溶剤を添加、混合、撹拌するときの混合物の容量が大きく、撹拌した水溶性有機溶剤が一様に混合するための期間が係る場合には、水溶性有機溶剤を分割して添加したり、少量ずつ連続添加することが好ましい。
前記水溶性有機溶剤の添加により、混合物の固形分比は低下し高粘度の液体となる。
【0065】
(水性顔料分散液の製造方法)
水性顔料分散液用混練物は、通常、常温で固練りの堅練品である。通常は、この水性顔料分散液用混練物を水溶性溶媒及び/または水中に分散させて水性顔料分散液を製造する。
【0066】
(水溶性溶媒及び/または水)
本発明で使用する水溶性溶媒及び/または水は、水単独で使用してもよいし、水と水溶性溶媒からなる混合溶媒でもよい。水溶性溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、等のケトン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−メトキシエタノール、等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、等のアミド類が挙げられ、とりわけ炭素数が3〜6のケトン及び炭素数が1〜5のアルコールからなる群から選ばれる化合物を用いるのが好ましい。
また、その他、水性に溶解しうる水溶性有機溶剤も使用することができる。例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、およびこれらと同族のジオールなどのジオール類;ラウリン酸プロピレングリコールなどのグリコールエステル;ジエチレングリコールモノエチル、ジエチレングリコールモノブチル、ジエチレングリコールモノヘキシルの各エーテル、プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、およびトリエチレングリコールエーテルを含むセロソルブなどのグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、およびこれらと同族のアルコールなどのアルコール類;あるいは、スルホラン;γ−ブチロラクトンなどのラクトン類;N−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンなどのラクタム類;グリセリンおよびその誘導体など、水溶性有機溶剤として知られる他の各種の溶剤などを挙げることができる。これらの水溶性有機溶剤は1種または2種以上混合して用いることができる。
中でも、高沸点、低揮発性で、高表面張力のグリコール類やジオール類等多価アルコール類が好ましく、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類が好ましい。
【0067】
分散機は、公知のものを用いることができ、例えば、メディアを用いたもではペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミルなどを挙げられる。またメディアを用いないものとしては、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機などがあげられるが、これらの中でもメディアを用いた分散機は分散能力が高いため好ましい。なお分散後に必要に応じて水溶性溶剤で濃度調整を行っても良い。
また、必要に応じて水性顔料分散液調整時に、さらにアルカリ剤など各種公知の添加剤を配合することができ、アルカリ剤を添加すると分散安定性などが向上し好ましい。
なお、用いる分散機などの種類によっては、分散機で分散(本分散)を行う前に、必要に応じて水性顔料分散液用混練物に水溶性溶剤を添加し、混合、希釈して、前記分散機で処理するのに適した粘度に調整すると好ましい(以下、この粘度調整されたものを粘度調整物と呼ぶ場合がある)。
例えばサンドミルを用いる時には、固形分濃度で10〜40質量%となる様に希釈し、数十〜数百センチポイズの粘度に調整した後にサンドミルを駆動させて分散を行うと好ましい。
【0068】
本発明においては、例えば上述の撹拌槽と撹拌羽根を備えた混練機で混練を行って混練物を得た後、この撹拌槽内の混練物に水溶性溶媒及び/または水を添加し、混合することにより、粘度調整を行うことができる。したがって、混練物の製造から粘度調整までをひとつの装置で連続的に行うことができ、製造効率を向上させることができる。なお、水性顔料分散液用混練物を粘度調整のため希釈するときは、混練物温度を落とさないうちに希釈操作を行うことが、分散効率と生産効率を上げるために好ましく、例えばプラネタリーミキサー等の混練装置を用いて作製した混練物の攪拌を継続しつつ、60度以上の温純水を少量ずつ添加して行うことが好ましい。
【0069】
なお、撹拌槽内で所定の粘度まで調整した後、さらに撹拌槽から取り出して、水溶性溶剤と混合して粘度調整を行って粘度調整物とし、これをさらに水溶性溶媒及び/または水にて分散させて水性顔料分散液とすることもできる。
【0070】
(インクジェット記録用水性インク)
インク組成物は、上述の様にして得られた水性顔料分散液をさらに水で希釈し、バインダー樹脂を加え、必要に応じて湿潤剤(乾燥抑止剤)、浸透剤、あるいはその他の添加剤を添加して、インクを調製することができる。インク組成物中に含有される顔料濃度は2〜10質量%程度が好ましい。
インクの調整の際には、粗大粒子が、ノズル詰まり、その他の画像特性を劣化させる原因になるため、インク調製後に、遠心分離、あるいは濾過処理等により粗大粒子を除去することが好ましい。
【0071】
(湿潤剤)
前記湿潤剤は、インクの乾燥防止を目的として添加する。乾燥防止を目的とする湿潤剤のインク中の含有量は3〜50質量%であることが好ましい。
本発明で使用する湿潤剤としては特に限定はないが、水との混和性がありインクジェットプリンターのヘッドの目詰まり防止効果が得られるものが好ましい。例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、等が挙げられる。中でも、プロピレングリコール、1,3−ブチルグリコールを含むことが安全性を有し、かつインク乾燥性、吐出性能に優れた効果が見られる。
【0072】
(浸透剤)
前記浸透剤は、被記録媒体への浸透性改良や記録媒体上でのドット径調整を目的として添加する。
浸透剤としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、エチレングリコールヘキシルエーテルやジエチレングリコールブチルエーテル等のアルキルアルコールのエチレンオキシド付加物やプロピレングリコールプロピルエーテル等のアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
インク中の浸透剤の含有量は0.01〜10質量%であることが好ましい。
【0073】
(界面活性剤)
前記界面活性剤は、表面張力等のインク特性を調整するために添加する。このために添加することのできる界面活性剤は特に限定されるものではなく、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられ、これらの中では、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0074】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられ、これらの具体例として、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩などを挙げることができる。
【0075】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、等を挙げることができ、これらの中では、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーが好ましい。
【0076】
その他の界面活性剤として、ポリシロキサンオキシエチレン付加物のようなシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルのようなフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸、ラムノリピド、リゾレシチンのようなバイオサーファクタント等も使用することができる。
【0077】
これらの界面活性剤は、単独で用いることもでき、又2種類以上を混合して用いることもできる。また、界面活性剤の溶解安定性等を考慮すると、そのHLBは、7〜20の範囲であることが好ましい。界面活性剤を添加する場合は、その添加量はインクの全質量に対し、0.001〜2質量%の範囲が好ましく、0.001〜1.5質量%であることがより好ましく、0.01〜1質量%の範囲であることがさらに好ましい。界面活性剤の添加量が0.001質量%未満の場合は、界面活性剤添加の効果が得られない傾向にあり、2質量%を超えて用いると、画像が滲むなどの問題を生じやすくなる。
【0078】
また、必要に応じて防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0079】
前記インクジェット記録用インクに占める顔料量は、充分な画像濃度を得る必要性と、インク中での顔料の分散安定性を確保するために、10〜30質量%であることが好ましい。
【0080】
(記録媒体)
インクジェット記録用インクの記録媒体としては特に限定はなく、複写機で一般的に使用されているコピー用紙(PPC紙)等の吸収性の記録媒体、インクの吸収層を有する記録媒体、インクの吸収性を有しない非吸水性の記録媒体、インクの吸水性の低い難吸収性の記録媒体などがありうる。本発明のインクジェット記録用インクは、特に吸収層を有する記録媒体、非吸水性の記録媒体、難吸収性の記録媒体に記録した際に、発色性が良好という特徴も有する。
【0081】
吸収性の記録媒体の例としては、例えば普通紙、布帛、ダンボール、木材等があげられる。また吸収層を有する記録媒体の例としては、インクジェット専用紙等があげられ、この具体例としては、例えば、株式会社ピクトリコのピクトリコプロ・フォトペーパー等が挙げられる。
【0082】
インクの吸収性を有しない非吸水性の記録媒体の例には、例えば食品用の包装材料に使用されているもの等を使用することができ、公知のプラスチックフィルムが使用できる。具体例としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ナイロン等のポリアミド系フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリ乳酸フィルム等の生分解性フィルム等が挙げられる。特にポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミド系フィルムが好ましく、さらにポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロンが好ましい。またバリア性を付与するためのポリ塩化ビニリデン等のコーティングをした上記フィルムでもよいし、必要に応じてアルミニウム等の金属、あるいはシリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層を積層したフィルムを併用してもよい。
【0083】
前記プラスチックフィルムは、未延伸フィルムであってもよいが、1軸もしくは2軸方向に延伸されたものが好ましい。さらにフィルムの表面は、未処理であってもよいが、コロナ放電処理、オゾン処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、グロー放電処理等、接着性を向上させるための各種処理を施したものが好ましい。
前記プラスチックフィルムの膜厚は用途に応じて適宜変更されるが、例えば軟包装用途である場合は、柔軟性と耐久性、耐カール性を有しているものとして、膜厚が10μm〜100μmであることが好ましい。より好ましくは10μm〜30μmである。この具体例としては、東洋紡株式会社のパイレンなどが挙げられる。
【0084】
インクの吸水性の低い難吸収性の記録媒体には、印刷本紙などのアート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙などが使用できる。これら難吸収性の記録媒体は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものであり、王子製紙(株)製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙(株)製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙(株)製の「OKコートL」及び日本製紙(株)製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」及び日本製紙(株)製の「オーロラコート」等のコート紙(A2、B2)、王子製紙(株)製の「OK金藤+」及び三菱製紙(株)製の「特菱アート」等のアート紙(A1)等が挙げられる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の例において「部」及び「%」は特に断りがない限り質量基準である。
【0086】
(合成例1 一般式(1)で表されるポリマーの合成例)
重合開始剤としてn-ブチルリチウムと第一のモノマーとしてスチレンとを
図1におけるチューブリアクターP1及びP2とから、
図1におけるT字型マイクロミキサーM1に導入し、リビングアニオン重合させ重合体を形成させた。
次に、得られた重合体を
図1におけるチューブリアクターR1を通じて
図1におけるT字型マイクロミキサーM2に移動させ、該重合体の成長末端を、
図1におけるチューブリアクターP3から導入した反応調整剤(1,1、−ジフェニルエチレン)によりトラップした。
次いで、第二のモノマーとしてメタクリル酸tert−ブチルエステルを
図1に示すチューブリアクターP4からT字型マイクロミキサーM3に導入し、
図1におけるチューブリアクターR2を通じて移動させた前記重合体と、連続的なリビングアニオン重合反応を行った。その後メタノールで反応をクエンチしてブロック共重合体(PA−1)を製造した。
【0087】
この際、マイクロリアクター全体を恒温槽に埋没させることで、反応温度を24℃に設定した。また、マイクロリアクターに導入するモノマーおよび反応調整剤はテトラヒドロフラン(THF)で溶解し、またn-ブチルリチウムは市販の2.6Mヘキサン溶液をヘキサンで希釈し、その希釈濃度及び導入速度により、ブロック共重合体(PA−1)のmol比を以下の通り調整した。
【0088】
ブロック共重合体(PA−1)のmol比
重合開始剤/第一モノマー/反応調整剤/第二モノマー=1.0/13.5/1.0/7.5
【0089】
得られたブロック共重合体(PA−1)は、陽イオン交換樹脂で処理することでメタクリル酸tert−ブチルエステル残基のt−ブトキシカルボニル基を加水分解し、カルボキシル基に変換した。反応溶液を減圧下で留去し、得られた固体を粉砕して、ポリマー(P−1)の粉体を得た。
ポリマー(P−1)の重量平均分子量は2742、酸価は145mgKOH/gであった。
【0090】
(合成例2〜12)
合成例1と同様の方法で、モノマー種類・導入量等を調節してポリマー(P−2)〜(P−12)を製造し、表1〜表2に纏めた。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
表中、
BuLiはノルマルブチルリチウムを表し、
Stはスチレンを表し、
DPEは1,1−ジフェニルエチレンを表し、
tBMAはメタクリル酸tert−ブチルエステルを表し、
nBMAはメタクリル酸n−ブチルエステルを表す。
【0094】
(合成例13 比較例用ポリマーの合成例)
(ランダムポリマーの調整方法)
撹拌装置、滴下装置、還流装置を有する反応容器にメチルエチルケトン100部を仕込み、撹拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら加温しメチルエチルケトンの還流状態とした後、滴下装置からスチレン74部、アクリル酸11部、メタクリル酸15部および重合開始剤(和光純薬工業社製/「V−75」)8部の混合液を2時間かけて滴下した。なお滴下の途中より反応系の温度を80℃に保った。
滴下終了後、同温度でさらに25時間反応を続けた。なお、反応の途中において、原料の消費状況を確認しながら、適宜、重合開始剤を追加した。反応終了後、メチルエチルケトンを減圧下で留去し、得られた固体を粉砕して、ポリマー(P−13)の粉体を得た。
ポリマー(P−13)の重量平均分子量は9000で、酸価は185mgKOH/gであった。
【0095】
(合成例14 比較例用ポリマーの合成例)
(A
2、A
3が直接連結したブロックポリマーの調製方法)
攪拌子を入れた500mLのナス型シュレン中に、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下PGMEAと略す)を200g、スチレンを16.9g、RAFT剤として2-シアノプロパン-2-イルN-メチル-N- (ピリジン-4-イル)カルバモジチオアートを16mmol入れた後、フラスコ内の溶液中に200mL/分で1分間窒素を液中バブリングしながら吹き込んだ。次にこのフラスコを80℃の湯浴上に置き、フラスコ内温を80℃まで昇温した。 80℃に達してから10分後、PGMEA20gと重合開始剤2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)4mmolからなる溶液を一気にフラスコ内に供給した後、温度を保持しながら5時間撹拌し、反応溶液を室温まで冷却して反応を停止した。次いで、このフラスコ中にスチレン5.61g、アクリル酸8.1gを吹き込み、再び80℃の湯浴上に置き、フラスコ内温を80℃まで昇温した。 80℃に達してから10分後、PGMEA20gと重合開始剤AIBN4mmoからなる溶液を一気にフラスコ内に供給した後、温度を保持しながら5時間撹拌した。次いで、PGMEA20gとAIBN8mmolからなる溶液を一気にフラスコ内に供給し、温度を保持しながら2時間攪拌し、反応溶液を室温まで冷却して反応を停止した。このときの反応溶液中の残存単量体量を定量し、重合率を求めた。 GPCで分子量の測定を行ったところ、数平均分子量(Mn)=2300、重量平均分子量(Mw)=2,875、分散度(Mw/Mn)=1.25であった。また、酸価の測定を行ったところ160であった(P−14)。
【0096】
<実施例1>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigment(DIC社製:C.I.ピグメント15:3)50部、樹脂(P−1)15部を容量0.8LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社愛工舎製)に仕込み、ジャケット温度を80℃に加温し、自転回転数:80rpmで混合した。その後、ジエチレングリコール22部、34%水酸化カリウム水溶液6部を添加し、1時間混練を行った。
続いて、容器内の混練物に、撹拌を継続しながらイオン交換水150部を徐々に加えた後、ジエチレングリコール29部、イオン交換水62部の混合液を加え混合した。
この水性顔料分散体の固形分濃度は20.2%、顔料濃度は15.0%であった。
【0097】
<実施例2>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigment(DIC社製:C.I.ピグメント15:3)50部、樹脂(P−2)15部を容量0.8LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社愛工舎製)に仕込み、ジャケット温度を80℃に加温し、自転回転数:80rpmで混合した。その後、ジエチレングリコール22部、34%水酸化カリウム水溶液8部を添加し、1時間混練を行った。
続いて、容器内の混練物に、撹拌を継続しながらイオン交換水150部を徐々に加えた後、ジエチレングリコール29部、イオン交換水60部の混合液を加え混合した。
この水性顔料分散体の固形分濃度は20.3%、顔料濃度は15.0%であった。
【0098】
<
比較例3>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigment(DIC社製:C.I.ピグメント15:3)50部、樹脂(P−3)15部を容量0.8LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社愛工舎製)に仕込み、ジャケット温度を80℃に加温し、自転回転数:80rpmで混合した。その後、ジエチレングリコール22部、34%水酸化カリウム水溶液6部を添加し、1時間混練を行った。
続いて、容器内の混練物に、撹拌を継続しながらイオン交換水150部を徐々に加えた後、ジエチレングリコール29部、イオン交換水62部の混合液を加え混合した。
この水性顔料分散体の固形分濃度は20.1%、顔料濃度は15.0%であった。
【0099】
<
比較例4>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigment(DIC社製:C.I.ピグメント15:3)50部、樹脂(P−4)15部を容量0.8LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社愛工舎製)に仕込み、ジャケット温度を80℃に加温し、自転回転数:80rpmで混合した。その後、ジエチレングリコール22部、34%水酸化カリウム水溶液6部を添加し、1時間混練を行った。
続いて、容器内の混練物に、撹拌を継続しながらイオン交換水150部を徐々に加えた後、ジエチレングリコール29部、イオン交換水62部の混合液を加え混合した。
この水性顔料分散体の固形分濃度は20.2%、顔料濃度は15.0%であった。
【0100】
<実施例5>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigment(DIC社製:C.I.ピグメント15:3)50部、樹脂(P−1)10部を容量0.8LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社愛工舎製)に仕込み、ジャケット温度を80℃に加温し、自転回転数:80rpmで混合した。その後、ジエチレングリコール22部、34%水酸化カリウム水溶液4部を添加し、1時間混練を行った。
続いて、容器内の混練物に、撹拌を継続しながらイオン交換水150部を徐々に加えた後、ジエチレングリコール29部、イオン交換水69部の混合液を加え混合した。
この水性顔料分散体の固形分濃度は18.4%、顔料濃度は15.0%であった。
【0101】
<実施例6>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigment(DIC社製:C.I.ピグメント15:3)50部、樹脂(P−1)20部を容量0.8LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社愛工舎製)に仕込み、ジャケット温度を80℃に加温し、自転回転数:80rpmで混合した。その後、ジエチレングリコール22部、34%水酸化カリウム水溶液9部を添加し、1時間混練を行った。
続いて、容器内の混練物に、撹拌を継続しながらイオン交換水150部を徐々に加えた後、ジエチレングリコール29部、イオン交換水55部の混合液を加え混合した。
この水性顔料分散体の固形分濃度は21.9%、顔料濃度は15.0%であった。
【0102】
<実施例7>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigment(DIC社製:C.I.ピグメント15:3)50部、樹脂(P−5)15部を容量0.8LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社愛工舎製)に仕込み、ジャケット温度を80℃に加温し、自転回転数:80rpmで混合した。その後、ジエチレングリコール22部、34%水酸化カリウム水溶液5部を添加し、1時間混練を行った。
続いて、容器内の混練物に、撹拌を継続しながらイオン交換水150部を徐々に加えた後、ジエチレングリコール29部、イオン交換水64部の混合液を加え混合した。
この水性顔料分散体の固形分濃度は20.0%、顔料濃度は15.0%であった。
【0103】
<実施例8>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigment(DIC社製:C.I.ピグメント15:3)50部、樹脂(P−6)15部を容量0.8LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社愛工舎製)に仕込み、ジャケット温度を80℃に加温し、自転回転数:80rpmで混合した。その後、ジエチレングリコール22部、34%水酸化カリウム水溶液6部を添加し、1時間混練を行った。
続いて、容器内の混練物に、撹拌を継続しながらイオン交換水150部を徐々に加えた後、ジエチレングリコール29部、イオン交換水62部の混合液を加え混合した。
この水性顔料分散体の固形分濃度は20.2%、顔料濃度は15.0%であった。
【0104】
<実施例9>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigment(DIC社製:C.I.ピグメント15:3)50部、樹脂(P−7)15部を容量0.8LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社愛工舎製)に仕込み、ジャケット温度を80℃に加温し、自転回転数:80rpmで混合した。その後、ジエチレングリコール22部、34%水酸化カリウム水溶液6部を添加し、1時間混練を行った。
続いて、容器内の混練物に、撹拌を継続しながらイオン交換水150部を徐々に加えた後、ジエチレングリコール29部、イオン交換水63部の混合液を加え混合した。
この水性顔料分散体の固形分濃度は20.1%、顔料濃度は15.0%であった。
【0105】
<実施例10>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigment(DIC社製:C.I.ピグメント15:3)50部、樹脂(P−8)15部を容量0.8LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社愛工舎製)に仕込み、ジャケット温度を80℃に加温し、自転回転数:80rpmで混合した。その後、ジエチレングリコール22部、34%水酸化カリウム水溶液5部を添加し、1時間混練を行った。
続いて、容器内の混練物に、撹拌を継続しながらイオン交換水150部を徐々に加えた後、ジエチレングリコール29部、イオン交換水63部の混合液を加え混合した。
この水性顔料分散体の固形分濃度は20.1%、顔料濃度は15.0%であった。
【0106】
<実施例11>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigment(DIC社製:C.I.ピグメント15:3)50部、樹脂(P−9)15部を容量0.8LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社愛工舎製)に仕込み、ジャケット温度を80℃に加温し、自転回転数:80rpmで混合した。その後、ジエチレングリコール22部、34%水酸化カリウム水溶液9部を添加し、1時間混練を行った。
続いて、容器内の混練物に、撹拌を継続しながらイオン交換水150部を徐々に加えた後、ジエチレングリコール29部、イオン交換水60部の混合液を加え混合した。
この水性顔料分散体の固形分濃度は20.4%、顔料濃度は15.0%であった。
【0107】
<実施例12>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigment(DIC社製:C.I.ピグメント15:3)50部、樹脂(P−10)15部を容量0.8LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社愛工舎製)に仕込み、ジャケット温度を80℃に加温し、自転回転数:80rpmで混合した。その後、ジエチレングリコール22部、34%水酸化カリウム水溶液13部を添加し、1時間混練を行った。
続いて、容器内の混練物に、撹拌を継続しながらイオン交換水150部を徐々に加えた後、ジエチレングリコール29部、イオン交換水56部の混合液を加え混合した。
この水性顔料分散体の固形分濃度は20.8%、顔料濃度は15.0%であった。
【0108】
<実施例13>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigment(DIC社製:C.I.ピグメント15:3)50部、樹脂(P−11)15部を容量0.8LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社愛工舎製)に仕込み、ジャケット温度を80℃に加温し、自転回転数:80rpmで混合した。その後、ジエチレングリコール22部、34%水酸化カリウム水溶液6部を添加し、1時間混練を行った。
続いて、容器内の混練物に、撹拌を継続しながらイオン交換水150部を徐々に加えた後、ジエチレングリコール29部、イオン交換水62部の混合液を加え混合した。
この水性顔料分散体の固形分濃度は20.1%、顔料濃度は15.0%であった。
【0109】
<実施例14>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigment(DIC社製:C.I.ピグメント15:3)50部、樹脂(P−12)15部を容量0.8LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社愛工舎製)に仕込み、ジャケット温度を80℃に加温し、自転回転数:80rpmで混合した。その後、ジエチレングリコール22部、34%水酸化カリウム水溶液6部を添加し、1時間混練を行った。
続いて、容器内の混練物に、撹拌を継続しながらイオン交換水150部を徐々に加えた後、ジエチレングリコール29部、イオン交換水62部の混合液を加え混合した。
この水性顔料分散体の固形分濃度は20.2%、顔料濃度は15.0%であった。
【0110】
<比較例1>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigment(DIC社製:C.I.ピグメント15:3)50部、樹脂(P−13)15部を容量0.8LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社愛工舎製)に仕込み、ジャケット温度を80℃に加温し、自転回転数:80rpmで混合した。その後、ジエチレングリコール22部、34%水酸化カリウム水溶液8部を添加し、1時間混練を行った。
続いて、容器内の混練物に、撹拌を継続しながらイオン交換水150部を徐々に加えた後、ジエチレングリコール29部、イオン交換水60部の混合液を加え混合した。
この水性顔料分散体の固形分濃度は20.3%、顔料濃度は15.0%であった。
【0111】
<比較例2>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigment(DIC社製:C.I.ピグメント15:3)50部、樹脂(P−14)15部を容量0.8LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社愛工舎製)に仕込み、ジャケット温度を80℃に加温し、自転回転数:80rpmで混合した。その後、ジエチレングリコール22部、34%水酸化カリウム水溶液7部を添加し、1時間混練を行った。
続いて、容器内の混練物に、撹拌を継続しながらイオン交換水150部を徐々に加えた後、ジエチレングリコール29部、イオン交換水61部の混合液を加え混合した。
この水性顔料分散体の固形分濃度は20.2%、顔料濃度は15.0%であった。
【0112】
前記実施例および比較例で作成した水性顔料分散液に対して以下の項目を測定して評価を行った。結果を表3及び表4に示す。
【0113】
<体積平均粒径>
実施例、比較例で作成した水性顔料分散体を5000倍に希釈し、マイクロトラックUPA−150(リーズ&ノースロップ社製)で測定を行った。測定値は3度測定した平均値を取った。
【0114】
<粗大粒子数>
実施例、比較例で作成した水性顔料分散体を2000倍に希釈し、アキュサイザー780APS(インターナショナル・ビジネス社製)にて測定を行った。粗大粒子数は希釈前の水性顔料分散液1ml当たりの粒子数に換算した。表中の粒子数には(×10
9個/ml)の単位を用いている。
【0115】
<吐出性・発色性>
インクジェットの吐出特性および印刷物の印字濃度を測定するために、実施例および比較例で作成した水性顔料分散体を用いて、以下の評価用インクジェット記録用水性インクを作成した。水性顔料分散体は最終的な顔料濃度が1.2質量%となるように、全量が100部の以下の配合において、各実施例、比較例における水性顔料分散体の顔料濃度に合わせて調整した。
水性顔料分散液 約3部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 8部
2−ピロリドン 8部
クリセリン 3部
サーフィノール440(エアープロダクツジャパン製) 0.5部
純水 残量
【0116】
作成した各インクジェット記録用インクをインクジェットプリンター(EPSON社製EM−930C)を用いて試験した。インクをカートリッジに充填後ノズルチェックパターンを印刷した。更に単色モードでA4用紙1枚の340cm
2の範囲に印刷濃度設定100%の印刷をした後に、再度ノズルチェックテストパターンを印刷し、試験前後のノズルの状態を比較し、ノズル欠けが増加するかどうかをチェックし、吐出性の評価とした。
さらに、印刷濃度100%の印刷面の濃度を「SpectroScan」(X-Rite社製)で測定し発色性の評価とした。
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】
【0119】
表中、PB.15:3は、フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigment(DIC社製:C.I.ピグメント15:3)を表す。
【0120】
この結果、一般式(1)で表されるポリマーを使用した実施例1〜14は、いずれも、粗大粒子数が少なく、発色性、吐出性に優れた顔料分散体及びインクが得られた。比較例1はランダム共重合体を使用した例であるが、粗大粒子数が大きく、吐出性が不良であった。