(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
290℃で、せん断速度200(1/s)での溶融粘度をηAとし、290℃で、せん断速度2000(1/s)での溶融粘度をηBとしたとき、下記式(1)を満たすノルボルネン系重合体を成形してなる光学レンズであって、
前記ノルボルネン系重合体が、
テトラシクロドデセン系単量体を開環重合し、水素化して得られるノルボルネン系開環重合体水素化物、
テトラシクロドデセン系単量体及びテトラシクロドデセン系単量体と開環共重合可能な単量体を開環重合し、水素化して得られるノルボルネン系開環重合体水素化物、
テトラシクロドデセン系単量体を付加重合して得られる付加重合体、並びに、
テトラシクロドデセン系単量体及びテトラシクロドデセン系単量体と付加共重合可能な単量体を付加重合して得られる付加重合体
から選ばれる少なくとも一種であり、
厚みが均一のレンズであれば1.0mm以下、厚みが不均一の偏肉レンズであれば、レンズ部最薄部の厚みが0.5mm以下である光学レンズ。
(ηA−ηB)/ηB×100<60 (1)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の光学用重合体は、特定の溶融粘度のパターンを持つ。
【0027】
(1)光学用重合体
光学用重合体は、290℃で、せん断速度200(1/s)の溶融粘度をηA、290℃で、せん断速度2000(1/s)の溶融粘度をηBとしたとき、(ηA−ηB)/ηB×100の値は60未満であり、好ましくは50未満、より好ましくは40未満である。(ηA−ηB)/ηB×100の値は0に近いほど好ましく、(ηA−ηB)/ηB×100の値が大きいと、溶融粘度のせん断速度依存性が高くなり(流動曲線の傾きが大きい)、薄肉レンズを成形したときに反ゲート側にウェルドラインが発生するおそれがあるため、好ましくない。
【0028】
光学用重合体の種類としては、透明性を有すれば特に限定されないが、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノルボルネン系重合体などが例示される。
【0029】
これらのなかでも、耐熱性、透明性、低吸水性、低複屈折性に優れることからノルボルネン系重合体が好ましい。
【0030】
(2)ノルボルネン系重合体
ノルボルネン系重合体は、ノルボルネン骨格を有する単量体であるノルボルネン単量体を重合してなるものであり、開環重合によって得られるものと、付加重合によって得られるものに大別される。
【0031】
ここでノルボルネン単量体を含む重合性単量体は、ノルボルネン単量体のみからなるものであっても良く、ノルボルネン単量体及びこれと開環又は付加共重合可能な単量体との混合物であっても良い。
【0032】
開環重合によって得られるものとして、ノルボルネン単量体の開環重合体及びノルボルネン単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体、ならびにこれらの水素化物などが挙げられる。
【0033】
付加重合によって得られるものとしてノルボルネン単量体の付加重合体及びノルボルネン単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン単量体の開環重合体水素化物およびノルボルネン単量体の付加重合体が、耐熱性、機械的強度等の観点から好ましい。
【0034】
<ノルボルネン単量体>
ノルボルネン単量体としては、テトラシクロドデセン系単量体の他、ノルボルネン系単量体、ジシクロペンタジエン系単量体、メタノテトラヒドロフルオレン系単量体、などが挙げられる。
【0035】
テトラシクロドデセン系単量体としては、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン(テトラシクロドデセン)、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8,9−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−エチル−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−エチリデン−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンなどが例示される。
【0036】
ノルボルネン系単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メトキシルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチル5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンなどが例示される。
【0037】
ジシクロペンタジエン系単量体としては、トリシクロ[4.3.0
1,6.1
2,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)、2−メチルジシクロペンタジエン、2,3−ジメチルジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロキシジシクロペンタジエンなどが例示される。
【0038】
メタノテトラヒドロフルオレン系単量体としては、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3−エン(慣用名メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、1,4−メタノ−8−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−8−クロロ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−8−ブロモ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンなどが例示される。
【0039】
これらのノルボルネン単量体は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
テトラシクロドデセン系単量体以外の単量体としては、光学レンズの複屈折を良化する観点から、メタノテトラヒドロフルオレン系単量体が好ましい。メタノテトラヒドロフルオレン系単量体の量は、全単量体中、通常10〜90重量%、好ましくは50〜90重量%、より好ましくは60〜80重量%、である。メタノテトラヒドロフルオレン系単量体が少なすぎると、光学レンズの複屈折が悪化する恐れがある。
【0041】
また、テトラシクロドデセン系単量体以外の単量体としては、ガラス転移温度を調整するのが容易なことから、ノルボルネン系単量体が好ましい。ノルボルネン系重合体の量は、通常0〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは3〜10重量%である。ノルボルネン系単量体が多すぎると、ノルボルネン系単量体の耐熱性(ガラス転移温度)が低下しすぎる恐れがある。
【0042】
更にテトラシクロドデセン系単量体以外の単量体としては、ジシクロペンタジエン系単量体が挙げられる。ジシクロペンタジエン系重合体の量は、通常0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%である。ジシクロペンタジエン系重合体が多すぎると、光学レンズの複屈折が悪化する恐れがある。
【0043】
これらの中でも、テトラシクロドデセン系単量体の量が15〜50重量%、メタノテトラヒドロフルオレン系単量体の量が10〜90重量%、ノルボルネン系重合体の量が1〜15重量%(但し、テトラシクロドデセン系単量体とメタノテトラヒドロフルオレン系単量体とノルボルネン系単量体の合計量は100重量%)であるノルボルネン系重合体が、薄肉成形性、成形体の複屈折、及び成形体の耐熱性のバランスに優れたノルボルネン系開環重合体水素化物を与えるため、好ましい。
【0044】
<ノルボルネン単量体の開環重合体>
ノルボルネン単量体の開環重合体、又はノルボルネン単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体は、単量体成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
【0045】
ノルボルネン単量体と開環共重合可能なその他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体などを挙げることができる。
【0046】
<ノルボルネン単量体の開環重合体水素化物>
ノルボルネン単量体の開環重合体水素化物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0047】
<ノルボルネン単量体の付加重合体>
ノルボルネン単量体の付加重合体、又はノルボルネン単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体は、これらの単量体を、公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて重合させて得ることができる。
【0048】
ノルボルネン単量体と付加共重合可能なその他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
【0049】
これらの、ノルボルネン単量体と付加共重合可能なその他の単量体は、2種以上を組み合わせて使用することができる。ノルボルネン単量体とこれと付加共重合可能なその他の単量体とを付加共重合する場合は、付加重合体中のノルボルネン単量体由来の構造単位と付加共重合可能なその他の単量体由来の構造単位との割合が、重量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは60:40〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
【0050】
これらの中でも、耐熱性、機械的強度、成形性等の観点から、ノルボルネン単量体とこれと付加共重合可能なその他の単量体とを付加共重合することが好ましく、ノルボルネン単量体とエチレンとの付加共重合体が特に好ましい。
【0051】
<炭素数14〜40のα−オレフィン存在下、ノルボルネン単量体を重合するノルボルネン系重合体>
好ましいノルボルネン系重合体は、炭素数14〜40のα−オレフィン存在下、ノルボルネン単量体を重合することで製造することができる。
【0052】
炭素数14〜40のα−オレフィンは、炭素数が14〜40であれば特に限定されない。炭素数14〜40のα−オレフィンの具体例としては、3−メチルテトラデセン、4−メチルテトラデセン、10−メチルテトラデセン、5−シクロヘキシルヘキサデセン等のアルキル鎖に1以上の置換基を有する1置換オレフィン:1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコサセン、1−ドコセン、1−テトラコンテン等の直鎖α−オレフィン等が挙げられる。炭素数16〜30の直鎖α−オレフィンが特に好ましい。
【0053】
また、炭素数14〜40のα−オレフィン量由来の構造単位は、ノルボルネン単量体と共重合可能なその他の単量体の合計量100重量部に対して、好ましくは0.5〜5.0重量部、より好ましくは1.0〜4.0重量部、特に好ましくは1.3〜3.0重量部含有されていることが好ましい。炭素数14〜40のα−オレフィン量由来の構造単位の量が多すぎると、ガラス転移温度が低下しすぎる恐れがあり、少なすぎると成形体のゲート付近の複屈折が悪化する恐れがある。
【0054】
例えば、直鎖α−オレフィンとして炭素数20のα−オレフィン(1−エイコセン)存在下、ノルボルネン単量体を重合した例を下記に示す。
【0057】
(式中R
1〜R
3はアルキル基を示し、Mtlは重合触媒を示す。)
【0058】
化1はノルボルネン単量体の開環重合体水素化物の分子末端にα−オレフィン由来の構造単位が導入される例を示したものである。重合反応が進行した重合触媒の活性末端とα−オレフィンが反応(連鎖移動反応)すると、α−オレフィン由来の構造末端に重合触媒の活性末端が生じる。続いてこの活性末端とモノマーとで重合反応が進行させた後に、オレフィンの水素化を行うと、分子末端にα−オレフィン由来の構造単位が導入されることがわかる。
【0059】
化2は同様にノルボルネン単量体とエチレンの付加共重合体の分子末端に、α−オレフィン由来の構造単位が導入される例を示したものである。
【0060】
<連鎖移動剤>
ノルボルネン系重合体は一般的に、分子量調整するために連鎖移動剤(分子量調節剤ともいう)存在下、ノルボルネン単量体を重合することにより製造される。連鎖移動剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエン等のスチレン類;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエーテル類;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;グリシジルメタクリレート等酸素含有ビニル化合物;アクリルアミド等の窒素含有ビニル化合物;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジエン、又は1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン等を挙げることができる。これらの中で、分子量調節のし易さから、α−オレフィン類が好ましい。
【0061】
上記炭素数14〜40のα−オレフィンも連鎖移動剤として作用するものである。
【0062】
ノルボルネン単量体を重合する際の好ましい連鎖移動剤は、上記炭素数14〜40の直鎖α−オレフィンを2種以上組み合わせても良いし、炭素数14〜40の直鎖α−オレフィンと、炭素数4〜12のα−オレフィン又はスチレン類などのその他の連鎖移動剤を組み合わせても良い。尚、連鎖移動剤として、炭素数14〜40のα−オレフィン以外の連鎖移動剤(その他の連鎖移動剤)を用いる場合、その他の連鎖移動剤は、炭素数14〜40のα−オレフィンと混合して添加しても良いし、炭素数14〜40のα−オレフィンとは別に添加しても良い。
【0063】
連鎖移動剤の添加量は、所望の分子量を持つ共重合体を得るに足る量であればよく、(連鎖移動剤):(ノルボルネン単量体)のモル比で、通常、1:50〜1:1,000,000、好ましくは1:100〜1:5,000、より好ましくは1:300〜1:3,000である。
【0064】
炭素数14〜40のα−オレフィン存在下で、ノルボルネン単量体を重合する場合の全連鎖移動剤量は、炭素数14〜40のα−オレフィンとその他の連鎖移動剤の量の合計となる。
【0065】
<重合する形態>
ノルボルネン単量体を重合する形態に、格別制限はないが、一括重合法(予め重合触媒又はノルボルネン単量体を全量添加した溶媒中に、重合触媒又はノルボルネン単量体を一括添加して重合を行う方法)、単量体逐次加法(少なくとも重合触媒を含む溶媒中にノルボルネン単量体を連続添加して重合を進めていく方法)等が挙げられ、特に単量体逐次添加法を用いると、連鎖構造が、よりランダムになるので好ましい。
【0066】
炭素数14〜40のα−オレフィンの添加方法としては、予め反応溶媒に当該α−オレフィンを全量添加しておいても良いし、ノルボルネン単量体と同時に当該α−オレフィンを逐次添加していく方法が挙げられ、特にノルボルネン単量体と同時に当該α−オレフィンを逐次添加していく方法が光学素子の光学有効面が広く、且つ高温で成形しても光学素子にシルバーストリークが発生しづらく、好ましい。
【0067】
<重合温度>
ノルボルネン単量体の重合温度は、通常−50℃〜250℃、好ましくは−30℃〜200℃、より好ましくは−20℃〜150℃の範囲である。重合圧力は、通常0〜50kg/cm
2、好ましくは0〜20kg/cm
2の範囲である。重合時間は、重合条件により適宜選択されるが、通常30分〜20時間、好ましくは1〜10時間の範囲である。
【0068】
<ノルボルネン系重合体の数平均分子量(Mn)>
ノルボルネン系重合体の数平均分子量(Mn)は、通常5,000〜100,000、好ましくは6,000〜70,000であり、より好ましくは7,000〜60,000である。重量平均分子量(Mw)は、通常10,000〜350,000、好ましくは12,000〜245,000、より好ましくは14,000〜210,000である。分子量は、シクロヘキサンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定され、標準ポリイソプレン換算値として表す。分子量が、これらの範囲にあるとき機械的強度と成形性とのバランスに優れる。分子量の分布(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4の範囲である。
【0069】
<ノルボルネン系重合体の溶融粘度>
ノルボルネン系重合体は、290℃で、せん断速度200(1/s)の溶融粘度をηA、290℃で、せん断速度2000(1/s)の溶融粘度をηBとしたとき、(ηA−ηB)/ηB×100の値は60未満であることが好ましい、より好ましくは50未満、特に好ましくは40未満である。
【0070】
(ηA−ηB)/ηB×100の値が大きいと、溶融粘度のせん断速度依存性が高くなり(流動曲線の傾きが大きい)、薄肉レンズを成形したときに反ゲート側にウェルドラインが発生する恐れがある。
【0071】
ノルボルネン系重合体の(ηA−ηB)/ηB×100の値は、テトラシクロドデセン系単量体の量、並びにノルボルネン系重合体の分子量を適宜調整することで調整できる。
【0072】
ノルボルネン系重合体の分子量が、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレン換算の重量平均分子量で、好ましくは20,000〜30,000、特に好ましくは22,000〜28,000、より好ましく23,000〜26,000の範囲であるときに、(ηA−ηB)/ηB×100の値(溶融粘度のせん断速度依存性が高くなる恐れがある)が好適である。
【0073】
テトラシクロドデセン系単量体の量は、好ましくは15〜50重量%、より好ましくは20〜40重量%である。テトラシクロドデセン系単量体が少なすぎると、(ηA−ηB)/ηB×100の値が大きくなるおそれがある。(溶融粘度のせん断速度依存性が高くなる恐れがある)。また、テトラシクロドデセン系単量体が多すぎると、ノルボルネン系重合体の溶媒への溶解性が悪くなったり、複屈折が悪化する恐れがある。
【0074】
<ノルボルネン系重合体のガラス転移温度(Tg)>
ノルボルネン系重合体のガラス転移温度(Tg)は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常100〜160℃、好ましくは120〜150℃、特に好ましくは130〜145℃の範囲であるときに、耐熱性と成形加工性とが高度にバランスし、好適である。
【0075】
これらのノルボルネン系重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
<添加剤>
光学用重合体には、必要に応じて公知の添加剤を発明の効果が損なわれない範囲で含有させることができる。添加剤としては、例えば、充填剤、酸化防止剤、光安定剤、離型剤、難燃剤、抗菌剤添加剤としては、例えば、充填剤、酸化防止剤、光安定剤、離型剤、難燃剤、抗菌剤、木粉、カップリング剤、可塑剤、着色剤、滑剤、シリコーンオイル、発泡剤、界面活性剤、離型剤などの各種添加剤を配合することができる。光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)が好ましい。離型剤としては、多価アルコールの脂肪酸エステルが好ましい。
【0077】
光学用重合体に各種添加剤を含有させる方法は、特に限定されず、濾過後の光学用重合体溶液に添加する方法や、溶融ブレンドする方法など任意の方法を採用することができる。具体的な方法としては、例えば、光学用重合体と各種添加剤を、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等を用いて混合し、次いで、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、ロール等を用いて溶融混練する方法;濾過後の光学用重合体の溶液に、各種添加剤を混合した後、溶剤等の揮発成分を除去する方法;などが挙げられる。
【0078】
(3)光学素子
必要に応じて各種添加剤を含む本発明の光学用重合体を成形して、光学素子を得る。
【0079】
成形方法としては、公知の成形手段、例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、インフレーション成形法などを用いて、前記光学用重合体を成形することによって得られる。これらのうち、透明性に優れた光学部品を得ることができるので射出成形法が好ましい。成形体の形状は板状、レンズ形状、ディスク形状、フィルム形状、シート状、プリズム状などの各種用途に応じて適宜選択できる。
【0080】
<射出成形>
射出成形の条件としては、樹脂温度は光学用重合体のガラス転移温度(Tg)によって変わりえるが200〜350℃の範囲が好ましい。これ以下だと流動性が低いため転写性が出ない。350℃以上だと樹脂の劣化が始まり、ヤケ不良や金型汚れなど発生する。流動性が確保される範囲で低い方が成形品の密度分布を小さくすることができる。より低複屈折を必要とする場合は該範囲で高温になる程優れる。両者のバランスによって樹脂温度を設定する。230℃〜330℃がより好ましく、250〜320℃が特に好ましい。
【0081】
金型温度は、ガラス転移温度より低い範囲でできるだけ高い温度が好ましい。光学用重合体のガラス転移温度‐20℃〜ガラス転移温度‐3℃の範囲が好ましい。これより低いと転写性や複屈折に問題が生じ、これ以上だと成形サイクルタイムが長くなり生産性が落ちる可能性がある。転写性と複屈折に問題が無い範囲で金型温度を下げた方が生産性の点で優れる。
【0082】
計量工程の条件は特に限定しないが、スクリュ回転数は10〜100rpm、背圧は3〜10MPaが一般的である。ヤケが発生しない程度にスクリュ回転数は高く、気泡が発生しない程度に背圧は高い方が良い。
【0083】
射出速度は、一段でも多段射出でも良い。射出速度はスクリュの前進速度が2〜100mm/秒で成形するのが一般的である。2mm/秒以下だと射出時に固化して充填できない恐れがある。射出速度が速すぎるとジェッティング等の外観不良が起こる恐れがある。
【0084】
保圧工程の圧力は好ましくは20MPa以下、より好ましくは10MPa、特に好ましくは5MPaである。保圧工程の圧力が高いと、光学歪みが高くなる恐れがあり、低いとスプル詰まりなどの成形不良が起こる恐れがある。スプル詰まりなどが起こらない範囲で低い圧力をかけておくのが好ましい。
【0085】
保圧時間もゲートシールあるいはスプル詰まりが発生しない程度の短い時間で制御するのが好ましい。
【0086】
冷却工程では、冷却時間は長ければ長いほうが金型内でのアニール効果により光学特性は優れるが、サイクルタイムが長くなるため生産性と光学特性のバランスを見ながら適切に定めるのが良い。
【0087】
<用途>
本発明の光学素子は、光学有効面の面精度、複屈折に優れ、フレネルレンズ、レンチキュラ−レンズ、fθレンズ、携帯電話カメラ用レンズ等の光学レンズ:回折格子、プリズム、ブルーレーザー用光ディスク、ブルーレーザー用光ディスク等の光学素子に好適に用いることができる。これらの中でも光学レンズに好ましく、小径薄肉偏肉形状の光学レンズにより好ましいことから携帯電話カメラ用レンズに最適である。
【0088】
好ましい光学素子である光学レンズにおいて、その好適な大きさは、外径をL1としたとき、好ましくは10mm以下、より好ましくは7mm以下、特に好ましくは5mm以下である。
【0089】
好ましい光学素子である光学レンズにおいて、そのレンズ部(光学有効面)の形状としては、凸面を円と近似した際の曲率半径をR1、凹面を円と近似した際の曲率半径をR2としたとき、R1>R2(R1/R2>1)が好ましく、R1/R2≧1.4がより好ましく、R1/R2≧1.6が特に好ましく、R1/R2≧1.8が更に好ましい。R1>R2の場合のレンズ形状を
図1に、R1<R2の場合のレンズ形状を
図2に示す。
【0090】
好ましい光学素子である光学レンズにおいて、その好適な厚みは、厚みが均一のレンズであれば、好ましくは1.00mm以下、より好ましくは0.5mm以下であり、特に好ましくは0.30mm以下である。厚みが不均一の偏肉レンズであれば、エッジ部の厚みをT1、レンズ部最厚部の厚みをT2、レンズ部最薄部の厚みをT3としたとき、レンズ部最薄部の厚さ(T3)が、好ましくは0.50mm以下、より好ましくは0.30mm以下であり、特に好ましくは0.20mm以下であり、エッジ部の厚み(T1)が、好ましくはT1/T3≧1.5、より好ましくはT1/T3≧2.0、特に好ましくはT1/T3≧2.5であり、レンズ部最厚部(T2)が、好ましくはT1/T2≧1.5、より好ましくはT1/T2≧2.0、特に好ましくはT1/T2≧2.5である。
【実施例】
【0091】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明する。本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、部及び%は、特に断りがない限り、重量基準である。
【0092】
以下に各種物性の測定法を示す。
(1)分子量
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(MWD)はシクロヘキサンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による、標準ポリイソプレン換算値として測定した。
GPCは、東ソー社製HLC8120GPCを用いた。
標準ポリイソプレンとしては、東ソー社製標準ポリイソプレン、Mw=602、1390、3920、8050、13800、22700、58800、71300、109000、280000の計10点を用いた。
測定は、カラムとして東ソー社製TSKgelG5000HXL、TSKgelG4000HXL及びTSKgelG2000HXLを3本直列に繋いで用い、流速1.0ml/分、サンプル注入量100μml、カラム温度40℃の条件で行った。
【0093】
(2)水素添加率(炭素−炭素二重結合残存率)
水素添加後の、主鎖及び環状炭化水素構造の水素添加率は、NMR測定により求めた。
【0094】
(3)ガラス転移温度(Tg)
ガラス転移温度は示差走査熱量分析計(DSC6220SII、ナノテクノロジー社製)を用いて、JISK6911に基づき昇温速度10℃/minの条件で測定した。
【0095】
(4)溶融粘度
ツインキャピラリー・レオメーター Rheologic5000(CEAST社製)を用いて測定した。
【0096】
(5)薄肉レンズの成形性評価
薄肉成形性は、凸面の曲率半径が5.73mm、凹面の曲率半径が3.01mm、大きさが直径4.5mm、レンズ部分の直径が3mm、レンズの中心厚が0.20mmのレンズを形成する金型(
図3)を用い、射出成形機(FANUC ROBOSHOT(登録商標)α100B、ファナック社製)で樹脂温度300℃、型温Tg−5℃、保圧400Paで成形品を10個作成した。
【0097】
〔複屈折評価〕
(1)表1での複屈折評価
得られた成形品を複屈折計(王子計測器社製;KOBRA(登録商標)−CCD/X)により測定し、レンズ中心部の、測定波長650nmでのレタデーションの値によって比較した。レタデーションの値は小さいほど低複屈折性に優れていることを意味し、20未満をA、20以上40未満をB、40以上60未満をC、60以上をDとした。
【0098】
(2)表2、3での複屈折評価
得られた成形品を複屈折計(王子計測器社製、製品名「KOBRA(登録商標)−CCD/X」)により測定し、測定波長650nmでのレタデーションの値の平均値によって比較した。
ゲート方向レンズ中心より1.8mmをRe測定点[A]としてレタデーション値をRe[A]とし、レンズ中心部をRe測定点[B]としてレタデーション値をRe[B]とした。
Re[A]の測定値が50nm未満をA、50nm以上100nm未満をB、100nm以上をDとした。
Re[B]の測定値が30nm未満をA、30nm以上60nm未満をB、60nm以上をDとした。
レタデーションの値は小さいほど低複屈折性に優れていることを意味する。
【0099】
〔ウェルドライン評価〕
得られた成形品を顕微鏡により観察し、反ゲート方向に生じたウェルドライン長さの測定を行った。ウェルドラインの長さが0.1mm未満ならA、0.1mm以上0.3mm未満ならB、0.3mm以上0.5mm未満ならC、0.5mm以上ならD、とした。
【0100】
〔シルバーストリーク発生評価〕
以下の判定基準で評価を行った。10回の射出成形で得られた成形品を目視により観察し、シルバーストリークが全く見られない場合をA、1〜2サンプルで見られる場合をB、3〜4サンプルで見られる場合をC、5サンプル以上で見られる場合をDとした。
【0101】
[実施例1]
乾燥し、窒素置換した重合反応器に、メタノテトラヒドロフルオレン(以下、「MTF」と略記)70重量%、テトラシクロドデセン(以下、「TCD」と略記)22重量%、及びノルボルネン(以下、「NB」と略記)8重量%からなる単量体混合物7部(重合に使用する単量体全量に対して1%)、脱水したシクロヘキサン1,600部、1−ヘキセン0.6部、ジイソプロピルエ−テル1.3部、イソブチルアルコール0.33部、トリイソブチルアルミニウム0.84部並びに六塩化タングステン0.66%シクロヘキサン溶液30部を入れ、55℃で10分間攪拌した。
【0102】
次いで、反応系を55℃に保持し、攪拌しながら、前記重合反応器中に前記単量体混合物693部と六塩化タングステン0.77%シクロヘキサン溶液72部を各々150分かけて連続的に滴下し、さらに滴下終了後30分間攪拌した後にイソプロピルアルコール1.0部を添加して重合反応を停止させた。ガスクロマトグラフィーによって重合反応溶液を測定したしたところ、モノマーの重合体への転化率は100%であった。
【0103】
次いで、上記重合体を含有する重合反応溶液300部を攪拌器付きオートクレーブに移し、シクロヘキサン100部および珪藻土担持ニッケル触媒(日揮化学社製;「T8400RL」、ニッケル担持率58%)2.0部を加えた。オートクレーブ内を水素で置換した後、180℃、4.5MPaの水素圧力下で6時間反応させた。
【0104】
水素化反応終了後、珪藻土(昭和化学工業社製、「ラヂオライト(登録商標)♯500」)を濾過床として、加圧濾過器(IHI社製;「フンダフィルタ−」)を使用し、圧力0.25MPaで加圧濾過して、無色透明な溶液を得た。
【0105】
次いで、得られた溶液に、前記水素添加物100部当り、酸化防止剤として、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;「イルガノックス(登録商標)1010」)0.5部を加えて溶解させた。
【0106】
この溶液をフィルター(キュノーフィルター社製;「ゼータプラス(登録商標)30H」、孔径0.5〜1μm)で濾過した後、濾液を金属ファイバー製フィルター(ニチダイ社製、孔径0.4μm)にて濾過して異物を除去した。
【0107】
次いで、上記で得られた濾液を、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮機に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、水冷後、ペレタイザー(長田製作所社製;「OSP−2」)でカッティングしてノルボルネン系重合体のペレットを得た。
【0108】
このノルボルネン系重合体の分子量はMw=24,000、Mw/Mn=1.75であり、水素化率は99.9%、Tgは140℃であった。
得られたペレットを用いて薄肉レンズの整形評価した結果を表1に示す。
【0109】
[実施例2]
単量体混合物の組成をMTF65重量%、TCD30重量%、及びNB5重量%とし、1−ヘキセンを0.55重量部にした以外は実施例1と同様にしてノルボルネン系重合体を得た。
【0110】
重合反応溶液のモノマーのポリマーへの転化率は99.9%であった。得られたノルボルネン系重合体の分子量はMw=25,000、Mw/Mn=1.72であり、水素化率は99.9%、Tgは145℃であった。
得られたペレットを用いて薄肉レンズの整形評価した結果を表1に示す。
【0111】
[実施例3]
1−ヘキセンを0.45重量部にした以外は実施例2と同様にしてノルボルネン系重合体を得た。
【0112】
重合反応溶液のモノマーのポリマーへの転化率は99.9%であった。得られたノルボルネン系重合体の分子量はMw=29,000、Mw/Mn=1.88であり、水素化率は99.9%、Tgは145℃であった。
得られたペレットを用いて薄肉レンズの整形評価した結果を表1に示す。
【0113】
[実施例4]
単量体混合物の組成をエチリデンノルボルネン(以下、「ETD」と略記)20重量%、ジシクロペンタジエン(以下、「DCP」と略記)80重量%、及びNB8重量%とした以外は実施例3と同様にしてノルボルネン系重合体を得た。
【0114】
重合反応溶液のモノマーのポリマーへの転化率は99.9%であった。得られたノルボルネン系重合体の分子量はMw=28,500、Mw/Mn=2.12であり、水素化率は99.9%、Tgは105℃であった。
得られたペレットを用いて薄肉レンズの整形評価した結果を表1に示す。
【0115】
[実施例5]
単量体混合物の組成をMTF40重量%、TCD35重量%、及びDCP25重量%とし、1−ヘキセンを0.55重量部にした以外は実施例3と同様にしてノルボルネン系重合体を得た。
【0116】
重合反応溶液のモノマーのポリマーへの転化率は99.9%であった。得られたノルボルネン系重合体の分子量はMw=29,500、Mw/Mn=2.22であり、水素化率は99.9%、Tgは141℃であった。
得られたペレットを用いて薄肉レンズの整形評価した結果を表1に示す。
【0117】
[実施例6]
単量体混合物の組成をMTF49量%、TCD46重量%、及びNB6重量%とした以外は実施例1と同様にしてノルボルネン系重合体を得た。
【0118】
重合反応溶液のモノマーのポリマーへの転化率は99.9%であった。得られたノルボルネン系重合体の分子量はMw=25,500、Mw/Mn=1.71であり、水素化率は99.9%、Tgは145℃であった。
得られたペレットを用いて薄肉レンズの整形評価した結果を表1に示す。
【0119】
[実施例7]
単量体混合物の組成をMTF45量%、TCD25重量%、及びNB20重量%とした以外は実施例1と同様にしてノルボルネン系重合体を得た。
【0120】
重合反応溶液のモノマーのポリマーへの転化率は99.9%であった。得られたノルボルネン系重合体の分子量はMw=26,500、Mw/Mn=1.64であり、水素化率は99.9%、Tgは98℃であった。
得られたペレットを用いて薄肉レンズの整形評価した結果を表1に示す。
【0121】
[比較例1]
単量体混合物の組成をMTF80量%、TCD10重量%、及びNB10重量%とした以外は実施例1と同様にしてノルボルネン系重合体を得た。
【0122】
重合反応溶液のモノマーのポリマーへの転化率は99.9%であった。得られたノルボルネン系重合体の分子量はMw=25,500、Mw/Mn=1.72であり、水素化率は99.9%、Tgは134℃であった。
得られたペレットを用いて薄肉レンズの整形評価した結果を表1に示す。
【0123】
[比較例2]
単量体混合物の組成をMTF39量%、TCD55重量%、及びNB5重量%とした以外は実施例1と同様にして重合反応及び水素添加反応を行った。水素化反応終了後、珪藻土(「ラジオライト♯500」)を濾過床として、加圧濾過器(石川島播磨重工社製;「フンダフィルタ−」)を使用し、圧力0.25MPaで加圧濾過したが、詰りが発生して濾液が得られなかった。
【0124】
[比較例3]
1−ヘキセンを0.40重量部にした以外は実施例2と同様にしてノルボルネン系重合体を得た。
【0125】
重合反応溶液のモノマーのポリマーへの転化率は99.9%であった。得られたノルボルネン系重合体の分子量はMw=31,000、Mw/Mn=1.95であり、水素化率は99.9%、Tgは145℃であった。
得られたペレットを用いて薄肉レンズの整形評価した結果を表1に示す。
【0126】
[比較例4]
単量体混合物の組成をMTF45量%、TCD10重量%、及びジシクロペンタジエン45重量%とした以外は実施例1と同様にしてノルボルネン系重合体を得た。
【0127】
重合反応溶液のモノマーのポリマーへの転化率は99.9%であった。得られたノルボルネン系重合体の分子量はMw=25,500、Mw/Mn=1.92であり、水素化率は99.9%、Tgは130℃であった。
得られたペレットを用いて薄肉レンズの整形評価した結果を表1に示す。
【0128】
【表1】
【0129】
[考察]
表1の結果から以下のことがわかる。
(ηA−ηB)/ηB×100が高いと、ウェルドライン評価が悪い(比較例1,3,4)。(比較例2は濾液得られず。)
【0130】
(ηA−ηB)/ηB×100が低いほど、ウェルドライン評価が良くなる傾向にある(実施例1〜7)。
【0131】
Mwが低下するほど、(ηA−ηB)/ηB×100が低下してウェルドライン評価及び複屈折評価が良くなる傾向にある(実施例2及び3と比較例3との対比)。
【0132】
テトラシクロドデセン系単量体(TCD)が多くなるほど、(ηA−ηB)/ηB×100が低下してウェルドライン評価及び複屈折評価が良くなる傾向にある(実施例2と比較例1との対比、実施例7と比較例4との対比)。
【0133】
メタノテトラヒドロフルオレン系単量体(MTF)が多くなるほど、複屈折評価が良くなる傾向にある(実施例1〜7)。
【0134】
[実施例8〜17、比較例5]
乾燥し、窒素置換した重合反応器に、表2で示したノルボルネン単量体混合物7部(重合に使用する単量体全量に対して1%)、脱水したシクロヘキサン1,600部、表2で示した連鎖移動剤種及び量、ジイソプロピルエ−テル1.3部、イソブチルアルコール0.33部、トリイソブチルアルミニウム0.84部並びに六塩化タングステン0.66%シクロヘキサン溶液30部を入れ、55℃で10分間攪拌した。
【0135】
次いで、反応系を55℃に保持し、攪拌しながら、前記重合反応器中に前記単量体混合物693部と六塩化タングステン0.77%シクロヘキサン溶液72部を各々150分かけて連続的に滴下し、さらに滴下終了後30分間攪拌した後にイソプロピルアルコール1.0部を添加して重合反応を停止させた。ガスクロマトグラフィーによって重合反応溶液を測定したしたところ、モノマーの重合体への転化率は100%であった。
【0136】
次いで、上記重合体を含有する重合反応溶液300部を攪拌器付きオートクレーブに移し、シクロヘキサン100部および珪藻土担持ニッケル触媒(日揮化学社製、製品名「T8400RL」、ニッケル担持率58%)2.0部を加えた。オートクレーブ内を水素で置換した後、180℃、4.5MPaの水素圧力下で6時間反応させた。
【0137】
水素化反応終了後、珪藻土(昭和化学工業社製、製品名「ラヂオライト(登録商標)♯500」)を濾過床として、加圧濾過器(IHI社製、製品名「フンダフィルタ−」)を使用し、圧力0.25MPaで加圧濾過して、無色透明な溶液を得た。
【0138】
次いで、得られた溶液に、前記水素添加物100部当り、酸化防止剤として、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、製品名「イルガノックス(登録商標)1010」)0.5部を加えて溶解させた。
【0139】
この溶液をフィルター(キュノーフィルター社製、製品名「ゼータプラス(登録商標)30H」、孔径0.5〜1μm)で濾過した後、濾液を金属ファイバー製フィルター(ニチダイ社製、孔径0.4μm)にて濾過して異物を除去した。
【0140】
次いで、上記で得られた濾液を、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所製)を用いて、温度260℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮機に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、水冷後、ペレタイザー(長田製作所製、製品名「OSP−2」)でカッティングしてノルボルネン系重合体のペレットを得た。
【0141】
ノルボルネン系重合体の分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)、溶融粘度を表2に示した。すべてのノルボルネン系重合体の水添率は99%以上であった。
【0142】
【表2】
【0143】
[考察]
表2の結果から以下のことがわかる。
分子末端にC14〜40のα−オレフィン由来の構造単位を持たないノルボルネン系重合体は、Re[A]の値が悪い(実施例14〜17)。
【0144】
分子末端にC14〜40のα−オレフィン由来の構造単位を持つノルボルネン系重合体は、Re[A]の値がよい(実施例8〜13)。
【0145】
(ηA−ηB)/ηB×100の値が60未満であるノルボルネン系重合体はウェルドライン評価が良好である(実施例8〜17)。
【0146】
[実施例18、19]
ノルボルネン単量体と連鎖移動剤を表3で示した割合で混合した「単量体−連鎖移動剤混合物」を調製した。
【0147】
さらに乾燥し、窒素置換した重合反応器に、予め調製した「単量体−連鎖移動剤混合物」7部(重合に使用する単量体全量に対して1%)、脱水したシクロヘキサン1,600部、ジイソプロピルエ−テル1.3部、イソブチルアルコール0.33部、トリイソブチルアルミニウム0.84部並びに六塩化タングステン0.66%シクロヘキサン溶液30部を入れ、55℃で10分間攪拌した。
【0148】
次いで、反応系を55℃に保持し、攪拌しながら、前記重合反応器中に「単量体−連鎖移動剤混合物」693部と六塩化タングステン0.77%シクロヘキサン溶液72部を各々150分かけて連続的に滴下し、さらに滴下終了後30分間攪拌した後にイソプロピルアルコール1.0部を添加して重合反応を停止させた。ガスクロマトグラフィーによって重合反応溶液を測定したしたところ、モノマーの重合体への転化率は100%であった。
【0149】
次いで、上記重合体を含有する重合反応溶液300部を攪拌器付きオートクレーブに移し、シクロヘキサン100部および珪藻土担持ニッケル触媒(日揮化学社製、製品名「T8400RL」、ニッケル担持率58%)2.0部を加えた。オートクレーブ内を水素で置換した後、180℃、4.5MPaの水素圧力下で6時間反応させた。
【0150】
水素化反応終了後、珪藻土(昭和化学工業社製、製品名「ラヂオライト(登録商標)♯500」)を濾過床として、加圧濾過器(IHI社製、製品名「フンダフィルタ−」)を使用し、圧力0.25MPaで加圧濾過して、無色透明な溶液を得た。
【0151】
次いで、得られた溶液に、前記水素添加物100部当り、酸化防止剤として、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASFジャパン社製、製品名「イルガノックス(登録商標)1010」)0.5部を加えて溶解させた。
【0152】
この溶液をフィルター(キュノーフィルター社製、製品名「ゼータプラス(登録商標)30H」、孔径0.5〜1μm)で濾過した後、濾液を金属ファイバー製フィルター(ニチダイ社製、孔径0.4μm)にて濾過して異物を除去した。
【0153】
次いで、上記で得られた濾液を、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所製)を用いて、温度260℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮機に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、水冷後、ペレタイザー(長田製作所製、製品名「OSP−2」)でカッティングしてノルボルネン系重合体のペレットを得た。
【0154】
ノルボルネン系重合体の分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)、溶融粘度を表2に示した。すべてのノルボルネン系重合体の水素添加率は99%以上であった。
結果を表3に示す。
【0155】
【表3】
【0156】
[考察]
表3の結果から、重合性単量体と連鎖移動剤とを逐次添加(連続的滴下)した場合に、成形体にシルバーストリークが発生しないことが分かる(実施例18、19)。