(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
前記ポリエーテルポリオール(A−1)は、塗布後の適度な溶融粘度及び適度なオープンタイムを付与し、優れた接着性、防水性、柔軟性及び耐落下衝撃性を発現するうえで必須の成分であり、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキサイド変性ポリプロピレングリコール等を用いることができる。これらのポリエーテルポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0011】
前記ポリエーテルポリオール(A−1)の数平均分子量としては、接着性(特に、初期接着強度及び最終接着強度)をより一層向上でき、オープンタイムをより調製しやすい点から、500〜5,000の範囲であることが好ましく、700〜4,500の範囲であることがより好ましい。なお、前記ポリエーテルポリオール(A−1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0012】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0013】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0014】
前記ポリエーテルポリオール(A−1)のガラス転移温度(Tmg)としては、耐落下衝撃性をより一層向上できる点から、−70〜0℃の範囲であることが好ましく、−50〜−10℃の範囲であることがより好ましい。なお、前記ポリエーテルポリオール(A−1)のガラス転移温度は、JIS K 7121−1987に準拠し、DSCにより測定した値を示し、具体的には、示差走査型熱量計装置内に前記(A−1)を入れ、(Tmg+50℃)まで昇温速度10℃/分で昇温した後、3分間保持し、その後急冷し、得られた示差熱曲線から読み取った中間点ガラス転移温度(Tmg)を示す。
【0015】
前記結晶性ポリエステルポリオール(A−2)は、優れた防水性、接着性(特に、初期接着強度)、オープンタイム及び耐落下衝撃性を付与するうえで必須の成分であり、例えば、水酸基を有する化合物と多塩基酸との反応物を用いることができる。なお、本発明において、結晶性とは、JIS K 7121に準拠したDSC(示差走査熱量計)測定において、結晶化熱あるいは融解熱のピークを確認できるものを示し、非晶性とは、前記ピークを確認できないものを示す。
【0016】
前記水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも結晶性を高め、防水性及び接着性をより一層向上できる点から、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオールを用いることが好ましい。
【0017】
前記多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等を用いることができる。これらの多塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0018】
前記結晶性ポリエステルポリオール(A−2)の数平均分子量としては、防水性及び接着性の点から、500〜6,000の範囲であることが好ましく、1,000〜5,000の範囲であることがより好ましい。なお、前記結晶性ポリエステルポリオール(A−2)の数平均分子量は、前記ポリエーテルポリオール(A−1)の数平均分子量と同様に測定して得られた値を示す。
【0019】
また、前記結晶性ポリエステルポリオール(A−2)のガラス転移温度としては、接着性(特に、初期接着強度)をより一層向上できる点から、40〜130℃の範囲であることが好ましい。なお、前記結晶性ポリエステルポリオール(A−2)のガラス転移温度は、前記ポリエーテルポリオール(A−1)と同様に測定して得られた値を示す。
【0020】
前記結晶性ポリエステルポリオール(A−2)の使用量としては、柔軟性、接着性及びオープンタイムの点から、前記ポリエーテルポリオール(A−1)100質量部に対して、30〜500質量部の範囲であることが好ましく、50〜400質量部の範囲であることがより好ましい。
【0021】
また、前記結晶性ポリエステルポリオール(A−2)としては、ポリカプロラクトンポリオールを用いることもできる。前記ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、前述の水酸基を有する化合物とε−カプロラクトンとを反応させたものを用いることができる。
【0022】
前記(A−2)として、ポリカプロラクトンポリオールを用いる場合には、数平均分子量が20,000〜200,000の範囲であることが好ましい。
【0023】
前記ポリカーボネートポリオール(A−3)は、ポリアミドに対する優れた接着性を付与するうえで必須の成分であり、例えば、炭酸エステル及び/又はホスゲンと、前述の水酸基を有する化合物とを反応させて得られるものを用いることができる。
【0024】
前記炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネート等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記ポリカーボネートポリオール(A−3)の数平均分子量としては、接着性の点から、500〜5,000の範囲であることが好ましく、1,000〜4,000の範囲であることがより好ましい。なお、前記ポリカーボネートポリオール(A−3)の数平均分子量は、前記ポリエーテルポリオール(A−1)の数平均分子量と同様に測定して得られた値を示す。
【0026】
前記ポリカーボネートポリオール(A−3)のガラス転移温度としては、耐落下衝撃性及び接着性をより一層向上できる点から、−30〜20℃の範囲であることが好ましい。なお、前記ポリカーボネートポリオール(A−3)のガラス転移温度は、前記ポリエーテルポリオール(A−1)と同様に測定して得られた値を示す。
【0027】
前記ポリカーボネートポリオール(A−3)の使用量としては、接着性の点から、前記ポリエーテルポリオール(A−1)100質量部に対して、50〜1,000質量部の範囲であることが好ましく、100〜800質量部の範囲であることがより好ましい。
【0028】
前記ポリオール(A)は、前記ポリエーテルポリオール(A−1)、前記結晶性ポリエステルポリオール(A−2)及び前記ポリカーボネートポリオール(A−3)を必須成分として含有するが、更に非晶性ポリエステルポリオール(A−4)を含有することが好ましい。前記非晶性ポリエステルポリオール(A−4)を含有することにより、接着性及び耐落下衝撃性を損なうことなく、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物のチキソ性を低減させ、後述するディスペンサー等の微小口径を有する吐出装置を用いた場合でも優れた吐出性を得ることができる。
【0029】
前記非晶性ポリエステルポリオール(A−4)としては、例えば、水酸基を有する化合物と多塩基酸との反応物を用いることができる。
【0030】
前記水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びそのアルキレンオキサイド付加物等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、接着性(特に、初期接着強度)及び吐出性をより一層向上できる点から、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を用いることが好ましい。また、前記アルキレンオキサイドの付加モル数としては、2〜10モルの範囲が好ましく、4〜8モルの範囲が更に好ましい。
【0031】
前記多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、ダイマー酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を用いることができる。これらの多塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、接着性(特に、初期接着強度)及び吐出性をより一層向上できる点から、セバシン酸、イソフタル酸を用いることが好ましい。
【0032】
前記非晶性ポリエステルポリオール(A−4)の数平均分子量としては、接着性(特に、初期接着強度)及び吐出性をより一層向上できる点から、500〜5,000の範囲であることが好ましく、1,000〜4,000の範囲がより好ましく、1,000〜3,000の範囲が更に好ましい。
【0033】
前記非晶性ポリエステルポリオール(A−4)のガラス転移温度としては、接着性(特に、初期接着強度)及び吐出性をより一層向上できる点から、−50〜−10℃の範囲であることが好ましい。なお、前記非晶性ポリエステルポリオール(A−4)のガラス転移温度は、前記ポリエーテルポリオール(A−1)のガラス転移温度と同様に測定した値を示す。
【0034】
前記非晶性ポリエステルポリオール(A−4)の使用量としては、接着性(特に、初期接着強度)及び吐出性の点から、前記ポリエーテルポリオール(A−1)100質量部に対して、10〜500質量部の範囲であることが好ましく、50〜300質量部の範囲がより好ましい。
【0035】
前記ポリオール(A)は、必要に応じて、ポリアクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ダイマージオール等のその他のポリオールを含有してもよい。
【0036】
前記キシリレンジイソシアネート(B)は、特にポリアミドへの接着性及び耐落下衝撃性を付与するうえで必須の成分であり、例えば、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネートを用いることができる。これらのキシリレンジイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、原料入手の容易性の点から、m−キシリレンジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0037】
前記ウレタンプレポリマーを得る際には、必要に応じて、前記キシリレンジイソシアネート(B)と共にその他のポリイソシアネートを併用してもよい。
【0038】
前記その他のポリイソシアネートとしては、例えば、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、反応性や接着性等の観点から、ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0039】
前記ウレタンプレポリマーは、前記ポリオール(A)と前記キシリレンジイソシアネート(B)とを反応させて得られるものであり、空気中やウレタンプレポリマーが塗布される基材中に存在する水分と反応して架橋構造を形成するイソシアネート基を有するものである。このイソシアネート基が湿気硬化することにより、接着性が発現する。
【0040】
前記ウレタンプレポリマーの製造方法としては、例えば、前記キシリレンジイソシアネート(B)の入った反応容器に、前記ポリオール(A)の混合物を滴下した後に加熱し、前記キシリレンジイソシアネート(B)の有するイソシアネート基が、前記ポリオール(A)の有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造する方法が挙げられる。
【0041】
前記ウレタンプレポリマーを製造する際には、前記キシリレンジイソシアネート(B)が有するイソシアネート基と前記ポリオール(A)が有する水酸基の当量比([イソシアネート基/水酸基])が、1.1〜5の範囲であることが接着性及び耐落下衝撃性の点から好ましく、1.5〜3の範囲であることがより好ましい。
【0042】
以上の方法によって得られたウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率(以下、「NCO%」と略記する。)としては、接着性をより一層向上できる点から、1.5〜8%の範囲であることが好ましく、1.7〜5の範囲がより好ましく、1.8〜3の範囲が更に好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマーのNCO%は、JIS K1603−1に準拠し、電位差滴定法により測定した値を示す。
【0043】
前記ウレタンプレポリマーの粘度としては、125℃における溶融粘度が、1,000〜50,000mPa・sの範囲であることが好ましく、2,000〜10,000mPa・sの範囲であることがより好ましく、4,200〜7,000mPa・sの範囲が更に好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマー125℃における溶融粘度は、コーンプレート粘度計(ICI製)で測定した値を示す。
【0044】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、前記ウレタンプレポリマーを必須成分として含有するが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0045】
前記その他の添加剤としては、例えば、硬化触媒、光安定剤、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、充填材、染料、顔料、シランカップリング剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、速硬化性をより一層向上できる点から、硬化触媒を用いることが好ましい。
【0046】
前記硬化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等の窒素原子を有する化合物;酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫等の金属塩;ジブチル錫ジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫マーカブチド、ジブチル錫チオカルボキシレート、ジブチル錫ジマレエート、ジオクチル錫マーカブチド、ジオクチル錫チオカルボキシレート等の有機金属化合物;下記一般式(1)で示される化合物などを用いることができる。これらの硬化触媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、接着性及び耐落下衝撃性を損なうことなく、速硬化性をより一層向上できる点から、下記一般式(1)で示される化合物を用いることが好ましい。
【0047】
【化1】
(式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、nはそれぞれ独立に1〜6の整数を表す。)
【0048】
前記硬化触媒としては、上記一般式(1)で示される化合物の中でも、速硬化性をより一層向上できる点から、2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル、ジ(2,6−ジメチルモルホリノエチル)エーテルを用いることが好ましい。
【0049】
前記硬化触媒の使用量としては、速硬化性の点から、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.001〜5質量部の範囲であることが好ましく、0.05〜2質量部の範囲がより好ましい。
【0050】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を用いて得られた接着剤は、ポリアミドを始めとする各種基材への接着性、耐落下衝撃性、防水性、柔軟性、速硬化性、塗布作業性(吐出性)、塗布後の保型性及びオープンタイムに優れるものであり、繊維ボンディング・建材ラミネーション用途のみならず、光学用部材の貼り合せに好適に用いることができる。
【0051】
前記光学部材の貼り合せに用いられる態様としては、例えば、携帯電話、パソコン、ゲーム機、テレビ、カーナビ、カメラスピーカー等のシール剤が挙げられる。
【0052】
前記貼り合せを行う場合には、例えば、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を50〜130℃の範囲で加熱溶融し、該組成物を基材の上に塗布し、次いで該組成物の上にもう一方の基材を貼り合せて積層体を得ることができる。
【0053】
前記基材としては、例えば、ガラス、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ノルボルネン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、脂環式ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、PC(ポリカーボネート)、PBT(ポリブチレンテレフタラート)、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、乳酸ポリマー、ABS樹脂、AS樹脂等から得られるものを用いることができる。また、前記基材は、必要に応じて、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理等を行ってもよい。
【0054】
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を前記基材に塗布する方法としては、例えば、ロールコーター、スプレーコーター、T−タイコーター、ナイフコーター、コンマコーター等を用いる方法;ディスペンサー、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷等の方式により塗布する方法等が挙げられる。特に後者の塗布方式によれば、前記基材上の塗布したい箇所に前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を精密少量塗布することができるので、打ち抜き加工等のロスを生じることがないため好ましい。また、この塗布方式によれば、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を、点状、線状、三角状、四角状、丸状、曲線等の様々な形状を前記基材上に連続的又は断続的に形成することができる。
【0055】
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を用いた接着剤層の厚みは、用いられる用途に応じて設定することができるが、概ね10μm〜5mmの範囲で好ましく設定することができる。
【0056】
前記貼り合せ後の熟成条件としては、概ね、温度20〜80℃、相対湿度50〜90%、0.5〜5日間の範囲で適宜決定することができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0058】
[
参考例1]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四ツ口フラスコに、ポリカーボネートポリオール(旭化成ケミカルズ株式会社製「デュラノールT4672」、数平均分子量;2,000、Tmg;10℃、以下「T4672」と略記する。)60質量部、ポリテトラメチングリコール(数平均分子量;2,000、Tmg;−50℃、以下「PTMG2000」と略記する。)10質量部、結晶性PEs−1(1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とを反応させたもの、Tmg;65℃、数平均分子量;3,500)15質量部を仕込み、100℃減圧条件下で水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、容器内温度70℃に冷却後、キシリレンジイソシアネート(以下、「XDI」と略記する。)13.2質量部とオクチル酸錫0.03質量部を加え、100℃まで昇温して、NCO基含有率が一定となるまで約3時間反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得て、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物とした。
【0059】
[
参考例2〜3、実施例
1〜
4、比較例1〜4]
ポリオールの種類及び/又は量、ポリイソシアネートの種類及び/又は量を表1〜2に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。
【0060】
[実施例
5]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四ツ口フラスコに、T4672を30質量部、PTMG2000を10質量部、結晶性PEs−1を27質量部を仕込み、非晶性PEs−1(ビスフェノールAのアルキレンオキサイド6モル付加物とイソフタル酸とセバシン酸とを反応させたもの、Tmg;10℃、数平均分子量;2,000)を20質量部を仕込み、100℃減圧条件下で水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、容器内温度70℃に冷却後、XDIを13質量部とオクチル酸錫0.03質量部を加え、100℃まで昇温して、NCO基含有率が一定となるまで約3時間反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。次いで、2,2’−ジモルホリノジエチルエーテルを0.15質量部加え、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。
【0061】
[接着性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を120℃に溶融させて、ロールコーターにて200μm厚みのコロナ処理PET上に100μmにて塗布し、ポリアミドシート(厚さ2mm)を貼り合せて、それぞれ23℃、65%RHの恒温槽に3日間放置し、その後180℃剥離強度(N/inch)をJIS K−7311に準拠して測定した。
【0062】
[耐落下衝撃性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を120℃に溶融し、120℃に予め加熱された内径0.6mmのディスペンサーニードル(「VALVE MASTER ME−5000VT」、武蔵エンジニアリング製)を用いて吐出圧力:0.3MPa、速度:50mm/秒にて、ポリアミドシート(厚さ2mm:5cm×5cm)上に、4cm×4cmの正方形を描くように塗布して、次いで、アクリル板を貼り合せ、23℃、65%RHの条件下で3日間放置した。
次いで、デュポン式落下衝撃試験機にてアクリル板から撃芯を介して、荷重:300g、高さ:30cmで衝撃を5回与える条件にて、基材の剥がれの発生の有無を目視観察し、以下のように判断した。
「T」:剥がれが発生しなかった。
「F」:剥がれが発生していた。
【0063】
[吐出性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を120℃に溶融し、120℃に予め加熱された0.6mmΦ内径のディスペンサーニードル(「VALVE MASTER ME−5000VT」、武蔵エンジニアリング製)を用いて吐出圧力:0.3MPa、速度:50mm/秒にて10秒吐出した際の塗布量(g)により、吐出性を以下のように判断した。
「A」;0.4g以上0.5g未満
「B」;0.1g以上0.4g未満
「C」;0.1g未満
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
表1〜2中の略語について説明する。
・「T5652」;ポリカーボネートポリオール(旭化成ケミカルズ株式会社製「デュラノールT5652」、Tmg;−10℃、数平均分子量;2,000)
・「PPG2000」;ポリプロピレングリコール、Tmg;−56℃、数平均分子量;2,000
・「結晶性PEs−2」;1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸とを反応させたもの、数平均分子量;2,000、Tmg;45℃
【0067】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物である実施例1〜
5は
、接着性及び耐落下衝撃性に加え、吐出性にも優れることが分かった。
【0068】
一方、比較例1は、ウレタンプレポリマーの原料として、ポリエーテルポリオール(A−1)を含有しない態様であるが、ポリアミドに対する接着性及び耐落下衝撃性が不良であった。
【0069】
比較例2は、ウレタンプレポリマーの原料として、ポリカーボネートポリオール(A−3)を含有しない態様であるが、ポリアミドに対する接着性が不良であった。
【0070】
比較例3及び4は、ウレタンプレポリマーの原料として、キシリレンジイソシアネート(B)の代わりにジフェニルメタンジイソシアネートを用いた態様であるが、耐落下衝撃性が不良であった。