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特許6257113有機化合物、有機光電子素子および表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6257113
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】有機化合物、有機光電子素子および表示装置
(51)【国際特許分類】
   C07D 239/26 20060101AFI20171227BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20171227BHJP
   C07D 251/24 20060101ALI20171227BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   C07D239/26CSP
   H05B33/14 B
   H05B33/22 B
   H05B33/22 D
   C07D251/24
   C09K11/06 640
   C09K11/06 650
【請求項の数】13
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2016-513852(P2016-513852)
(86)(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公表番号】特表2016-526031(P2016-526031A)
(43)【公表日】2016年9月1日
(86)【国際出願番号】KR2013008692
(87)【国際公開番号】WO2014185598
(87)【国際公開日】20141120
【審査請求日】2016年6月30日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0055938
(32)【優先日】2013年5月16日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514278061
【氏名又は名称】サムスン エスディアイ カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リ,ハン−イル
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ウン−ソン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ドン−ミン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ユイ−ス
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ドン−キュ
(72)【発明者】
【氏名】リ,サン−シン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ユ−ナ
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ソ−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ス−ジン
(72)【発明者】
【氏名】ホン,チン−ソク
【審査官】 松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−246097(JP,A)
【文献】 特開2003−282270(JP,A)
【文献】 特開2005−276801(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/149240(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0048964(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102532105(CN,A)
【文献】 特表2008−531684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される有機化合物:
【化1】
前記化学式1において、
Zはそれぞれ独立して、NまたはCRであり、
Zのうちの少なくとも2つはNであり、トリフェニレン基またはLに連結されたZ含有環の少なくとも2つのZはNであり、
〜R10およびRはそれぞれ独立して、水素、重水素、C1〜C10のアルキル基、C6〜C12のアリール基であり、
Lは置換もしくは非置換のフェニレン基、置換もしくは非置換のビフェニレン基、または置換もしくは非置換のターフェニレン基であり、ここで、置換とは少なくとも1つの水素が重水素、C1〜C4のアルキル基またはフェニル基で置換されたことを意味し、
n1〜n3はそれぞれ独立して、0または1であり、
n1+n2+n3≧1であり、
前記化学式1において、トリフェニレン基に置換された6員環の総数は6個以下である。
【請求項2】
下記化学式1−Iまたは化学式1−IIで表される、請求項1に記載の有機化合物:
【化2】
前記化学式1−Iまたは1−IIにおいて、
Zはそれぞれ独立して、NまたはCRであり、
Zのうちの少なくとも2つはNであり、トリフェニレン基またはLに連結されたZ含有環の少なくとも2つのZはNであり、
〜R10およびRはそれぞれ独立して、水素、重水素、C1〜C10のアルキル基、C6〜C12のアリール基であり、
Lは置換もしくは非置換のフェニレン基、置換もしくは非置換のビフェニレン基、または置換もしくは非置換のターフェニレン基であり、ここで、置換とは少なくとも1つの水素が重水素、C1〜C4のアルキル基またはフェニル基で置換されたことを意味し、
n1〜n3はそれぞれ独立して、0または1であり、
n1+n2+n3≧1である。
【請求項3】
前記Lは折れ(kink)構造の置換もしくは非置換のフェニレン基、折れ構造の置換もしくは非置換のビフェニレン基、または折れ構造の置換もしくは非置換のターフェニレン基である、請求項1または2に記載の有機化合物。
【請求項4】
前記Lは、下記グループ1に挙げられた置換もしくは非置換の基から選択された1つである、請求項3に記載の有機化合物:
【化3】
前記R11〜R38はそれぞれ独立して、水素、重水素、C1〜C4のアルキル基またはフェニル基であり、
*は連結部分である。
【請求項5】
前記有機化合物は、少なくとも2つの折れ構造を有する、請求項1に記載の有機化合物。
【請求項6】
前記有機化合物は、下記化学式1aまたは1bで表される、請求項1に記載の有機化合物:
【化4】
前記化学式1aまたは1bにおいて、
Zはそれぞれ独立して、NまたはCRであり、
Zのうちの少なくとも2つはNであり、トリフェニレン基またはLに連結されたZ含有環の少なくとも2つのZはNであり、
〜R10およびRはそれぞれ独立して、水素、重水素、C1〜C10のアルキル基、C6〜C12のアリール基である。
【請求項7】
前記有機化合物は、下記化学式1c〜1tのうちのいずれか1つで表される、請求項1に記載の有機化合物:
【化5】
【化6】
【化7】
前記化学式1c〜1tにおいて、
Zはそれぞれ独立して、NまたはCRであり、
Zのうちの少なくとも2つはNであり、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基に連結されたZ含有環の少なくとも2つのZはNであり、
〜R10およびRはそれぞれ独立して、水素、重水素、C1〜C10のアルキル基、C6〜C12のアリール基であり、
11〜R14、R17〜R20、R23〜R26およびR36〜R38はそれぞれ独立して、水素、重水素、C1〜C4のアルキル基またはフェニル基である。
【請求項8】
下記グループ2に挙げられた、請求項1に記載の有機化合物。
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【請求項9】
互いに向き合う陽極および陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に位置する少なくとも1層の有機層とを含み、
前記有機層は、請求項1〜のいずれか1項に記載の有機化合物を含む有機光電子素子。
【請求項10】
前記有機層は、発光層を含み、
前記発光層は、前記有機化合物を含む、請求項に記載の有機光電子素子。
【請求項11】
前記有機化合物は、前記発光層のホストとして含まれる、請求項9または10に記載の有機光電子素子。
【請求項12】
前記有機層は、正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、電子輸送層、電子注入層、および正孔阻止層から選択された少なくとも1つの補助層を含み、
前記補助層は、前記有機化合物を含む、請求項9〜11のいずれか1項に記載の有機光電子素子。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか1項に記載の有機光電子素子を含む表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
有機化合物、有機光電子素子および表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機光電子素子(organic optoelectric diode)は、電気エネルギーと光エネルギーを相互転換可能な素子である。
【0003】
有機光電子素子は、動作原理によって、大きく2つに分けられる。一つは、光エネルギーによって形成されたエキシトン(exciton)が電子と正孔に分離され、前記電子および正孔がそれぞれ異なる電極に伝達されながら電気エネルギーを発生する光電素子であり、もう一つは、電極に電圧または電流を供給して、電気エネルギーから光エネルギーを発生する発光素子である。
【0004】
有機光電子素子の例としては、有機光電素子、有機発光素子、有機太陽電池、および有機感光体ドラム(organic photo conductor drum)などが挙げられる。
【0005】
このうち、有機発光素子(organic light emitting diode、OLED)は、近年、平板表示装置(flat panel display device)の需要増加に伴って大きく注目されている。前記有機発光素子は、有機発光材料に電流を加えて電気エネルギーを光に転換させる素子であって、通常、陽極(anode)と陰極(cathode)との間に有機層が挿入された構造からなる。ここで、有機層は、発光層と、選択的に補助層とを含むことができ、前記補助層は、例えば、有機発光素子の効率と安定性を高めるための正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、電子輸送層、電子注入層、および正孔阻止層から選択された少なくとも1層を含むことができる。
【0006】
有機発光素子の性能は、前記有機層の特性によって多くの影響を受け、なかでも、前記有機層に含まれている有機材料によって多くの影響を受ける。
【0007】
特に、前記有機発光素子が大型平板表示装置に適用されるためには、正孔および電子の移動性を高めると同時に、電気化学的安定性を高めることができる有機材料の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一実施形態は、高効率および長寿命の有機光電子素子を実現可能な有機化合物を提供する。
【0009】
他の実施形態は、前記有機化合物を含む有機光電子素子を提供する。
【0010】
さらに他の実施形態は、前記有機光電子素子を含む表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態によれば、下記化学式1で表される有機化合物を提供する。
【0012】
【化1】
【0013】
前記化学式1において、
Zはそれぞれ独立して、NまたはCRであり、
Zのうちの少なくとも1つはNであり、
〜R10およびRはそれぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1〜C10のアルキル基、置換もしくは非置換のC6〜C12のアリール基、またはこれらの組み合わせであり、
Lは置換もしくは非置換のフェニレン基、置換もしくは非置換のビフェニレン基、または置換もしくは非置換のターフェニレン基であり、
n1〜n3はそれぞれ独立して、0または1であり、
n1+n2+n3≧1であり、
前記化学式1において、トリフェニレン基に置換された6員環の総数は6個以下である。
【0014】
他の実施形態によれば、互いに向き合う陽極および陰極と、前記陽極と前記陰極との間に位置する少なくとも1層の有機層とを含み、前記有機層は、前記有機化合物を含む有機光電子素子を提供する。
【0015】
さらに他の実施形態によれば、前記有機光電子素子を含む表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
高効率長寿命の有機光電子素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は一実施形態に係る有機発光素子を示す断面図である。
図2図2は一実施形態に係る有機発光素子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例として提示されるもので、これによって本発明が制限されず、本発明は後述する請求範囲の範疇によってのみ定義される。
【0019】
本明細書において、「置換」とは、別途の定義がない限り、置換基または化合物中の少なくとも1つの水素が、重水素、ハロゲン基、ヒドロキシ基、アミノ基、置換もしくは非置換のC1〜C30のアミン基、ニトロ基、置換もしくは非置換のC1〜C40のシリル基、C1〜C30のアルキル基、C1〜C10のアルキルシリル基、C3〜C30のシクロアルキル基、C3〜C30のヘテロシクロアルキル基、C6〜C30のアリール基、C6〜C30のヘテロアリール基、C1〜C20のアルコキシ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基などのC1〜C10のトリフルオロアルキル基、またはシアノ基で置換されたことを意味する。
【0020】
また、前記置換されたハロゲン基、ヒドロキシ基、アミノ基、置換もしくは非置換のC1〜C20のアミン基、ニトロ基、置換もしくは非置換のC3〜C40のシリル基、C1〜C30のアルキル基、C1〜C10のアルキルシリル基、C3〜C30のシクロアルキル基、C3〜C30のヘテロシクロアルキル基、C6〜C30のアリール基、C6〜C30のヘテロアリール基、C1〜C20のアルコキシ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基などのC1〜C10のトリフルオロアルキル基、またはシアノ基のうちの隣接した2個の置換基が融合して環を形成してもよい。例えば、前記置換されたC6〜C30のアリール基は、隣接した他の置換されたC6〜C30のアリール基と融合して置換もしくは非置換のフルオレン環を形成することができる。
【0021】
本明細書において、「ヘテロ」とは、別途の定義がない限り、1つの官能基内にN、O、S、P、およびSiからなる群より選択されるヘテロ原子を1〜3個含有し、残りは炭素であるものを意味する。
【0022】
本明細書において、「これらの組み合わせ」とは、別途の定義がない限り、2以上の置換基が連結基で結合されているか、2以上の置換基が縮合して結合されていることを意味する。
【0023】
本明細書において、「アルキル(alkyl)基」とは、別途の定義がない限り、脂肪族炭化水素基を意味する。アルキル基は、いずれの二重結合や三重結合を含まない「飽和アルキル(saturated alkyl)基」であってよい。
【0024】
前記アルキル基は、C1〜C30のアルキル基であってよい。より具体的には、アルキル基は、C1〜C20のアルキル基またはC1〜C10のアルキル基であってもよい。例えば、C1〜C4のアルキル基は、アルキル鎖に1〜4個の炭素原子が含まれるものを意味し、メチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、およびt−ブチルからなる群より選択されるものを表す。
【0025】
前記アルキル基は、具体例を挙げると、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを意味する。
【0026】
本明細書において、「アリール(aryl)基」は、環状の置換基のすべての元素がp−オービタルを有しており、これらのp−オービタルが共役(conjugation)を形成している置換基を意味し、モノサイクリック、ポリサイクリック、または融合環ポリサイクリック(つまり、炭素原子の隣接した対を分け合う環)官能基を含む。
【0027】
本明細書において、「ヘテロアリール(heteroaryl)基」は、アリール基内にN、O、S、P、およびSiからなる群より選択されるヘテロ原子を1〜3個含有し、残りは炭素であるものを意味する。前記ヘテロアリール基が融合環の場合、それぞれの環ごとに前記ヘテロ原子を1〜3個含むことができる。
【0028】
より具体的には、置換もしくは非置換のC6〜C30のアリール基および/または置換もしくは非置換のC2〜C30のヘテロアリール基は、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のナフチル基、置換もしくは非置換のアントラセニル基、置換もしくは非置換のフェナントリル基、置換もしくは非置換のナフタセニル基、置換もしくは非置換のピレニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のp−ターフェニル基、置換もしくは非置換のm−ターフェニル基、置換もしくは非置換のクリセニル基、置換もしくは非置換のトリフェニレニル基、置換もしくは非置換のペリレニル基、置換もしくは非置換のインデニル基、置換もしくは非置換のフラニル基、置換もしくは非置換のチオフェニル基、置換もしくは非置換のピロリル基、置換もしくは非置換のピラゾリル基、置換もしくは非置換のイミダゾリル基、置換もしくは非置換のトリアゾリル基、置換もしくは非置換のオキサゾリル基、置換もしくは非置換のチアゾリル基、置換もしくは非置換のオキサジアゾリル基、置換もしくは非置換のチアジアゾリル基、置換もしくは非置換のピリジル基、置換もしくは非置換のピリミジニル基、置換もしくは非置換のピラジニル基、置換もしくは非置換のトリアジニル基、置換もしくは非置換のベンゾフラニル基、置換もしくは非置換のベンゾチオフェニル基、置換もしくは非置換のベンズイミダゾリル基、置換もしくは非置換のインドリル基、置換もしくは非置換のキノリニル基、置換もしくは非置換のイソキノリニル基、置換もしくは非置換のキナゾリニル基、置換もしくは非置換のキノキサリニル基、置換もしくは非置換のナフチリジニル基、置換もしくは非置換のベンズオキサジニル基、置換もしくは非置換のベンズチアジニル基、置換もしくは非置換のアクリジニル基、置換もしくは非置換のフェナジニル基、置換もしくは非置換のフェノチアジニル基、置換もしくは非置換のフェノキサジニル基、置換もしくは非置換のフルオレニル基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基、置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基、置換もしくは非置換のカルバゾリル基、またはこれらの組み合わせであってもよいが、これらに制限されない。
【0029】
本明細書において、正孔特性とは、電場(electric field)を加えた時に電子を供与して正孔を形成できる特性を指すもので、HOMO準位に沿って伝導特性を有し、陽極で形成された正孔の発光層への注入、発光層で形成された正孔の陽極への移動、および発光層での移動を容易にする特性を意味する。
【0030】
また、電子特性とは、電場を加えた時に電子を受けられる特性を指すもので、LUMO準位に沿って伝導特性を有し、陰極で形成された電子の発光層への注入、発光層で形成された電子の陰極への移動、および発光層での移動を容易にする特性を意味する。
【0031】
以下、一実施形態に係る有機化合物を説明する。
【0032】
一実施形態に係る有機化合物は、下記化学式1で表される。
【0033】
【化2】
【0034】
前記化学式1において、
Zはそれぞれ独立して、NまたはCRであり、
Zのうちの少なくとも1つはNであり、
〜R10およびRはそれぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1〜C10のアルキル基、置換もしくは非置換のC6〜C12のアリール基、またはこれらの組み合わせであり、
Lは置換もしくは非置換のフェニレン基、置換もしくは非置換のビフェニレン基、または置換もしくは非置換のターフェニレン基であり、
n1〜n3はそれぞれ独立して、0または1であり、
n1+n2+n3≧1であり、
前記化学式1において、トリフェニレン基に置換された6員環の総数は6個以下である。
【0035】
前記トリフェニレン基に置換された6員環は、前記トリフェニレン基に直接または間接的に連結されたすべての6員環を指すもので、炭素原子、窒素原子、またはこれらの組み合わせからなる6員環を含む。
【0036】
前記有機化合物は、トリフェニレン基の結合位置によって、例えば、下記化学式1−Iまたは化学式1−IIで表されてよい。
【0037】
【化3】
【0038】
前記化学式1−Iまたは1−IIにおいて、
Z、R〜R10およびR、Lおよびn1〜n3は上述した通りである。
【0039】
前記化学式1で表される有機化合物は、トリフェニレン基と、少なくとも1つの窒素含有ヘテロアリール基とを含む。
【0040】
前記有機化合物は、少なくとも1つの窒素を含有する環を含むことにより、電場印加時に電子を受けやすい構造となり、これによって、前記有機化合物を適用した有機光電子素子の駆動電圧を低下させることができる。
【0041】
また、前記有機化合物は、正孔を受けやすいトリフェニレン構造と、電子を受けやすい窒素含有環部分を共に含むことによりバイポーラ(bipolar)構造を形成して、正孔および電子の流れを適切にバランス良くすることができ、これによって、前記有機化合物を適用した有機光電子素子の効率を改善することができる。
【0042】
前記化学式1で表される有機化合物は、アリーレン基および/またはヘテロアリーレン基を中心に少なくとも1つの折れ(kink)構造を有する。
【0043】
前記折れ構造は、アリーレン基および/またはヘテロアリーレン基の2つの連結部分が直線構造をなさない構造をいう。例えば、フェニレンの場合、連結部分が直線構造をなさないオルトフェニレン(o−phenylene)とメタフェニレン(m−phenylene)が前記折れ構造を有し、連結部分が直線構造をなすパラフェニレン(p−phenylene)は前記折れ構造を有しない。
【0044】
前記化学式1において、前記折れ構造は、連結基(L)および/またはアリーレン基/ヘテロアリーレン基を中心に形成されてもよい。
【0045】
例えば、前記化学式1のn1が0の場合、つまり、連結基(L)がない構造では、アリーレン基/ヘテロアリーレン基を中心に折れ構造を形成することができ、例えば、下記化学式1aまたは1bで表される化合物であってよい。
【0046】
【化4】
【0047】
前記化学式1aまたは1bにおいて、ZおよびR〜R10は上述した通りである。
【0048】
例えば、前記化学式1のn1が1の場合には、連結基(L)を中心に折れ構造を形成することができ、例えば、Lは折れ構造の置換もしくは非置換のフェニレン基、折れ構造の置換もしくは非置換のビフェニレン基、または折れ構造の置換もしくは非置換のターフェニレン基であってよい。前記Lは、例えば、下記グループ1に挙げられた置換もしくは非置換の基から選択された1つであってよい。
【0049】
【化5】
【0050】
前記R11〜R38はそれぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1〜C10のアルキル基、置換もしくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC3〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換もしくは非置換のC2〜C30のヘテロアリール基、置換もしくは非置換のアミン基、置換もしくは非置換のC6〜C30のアリールアミン基、置換もしくは非置換のC6〜C30のヘテロアリールアミン基、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルコキシ基、ハロゲン基、ハロゲン含有基、シアノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、フェロセニル基、またはこれらの組み合わせである。
【0051】
前記有機化合物は、好ましくは、少なくとも2つの折れ構造を有してもよく、例えば、2つ〜4つの折れ構造を有してもよい。
【0052】
前記有機化合物は、上述した折れ構造を有することにより、上述したバイポーラ構造の化合物内において、正孔を受けやすいトリフェニレン構造と、電子を受けやすい窒素含有環部分とを適切に区域化(localization)し、共役系の流れを制御することにより、優れたバイポーラ(bipolar)特性を示すことができる。これによって、前記有機化合物を適用した有機光電子素子の寿命を改善することができる。
【0053】
また、化学式1において、コアのトリフェニレン基に置換された炭素原子および/または窒素原子からなる6員環の総数は6個以下を有することにより、蒸着工程時、高い温度によって化合物が熱分解される現象を減少させる効果がある。
【0054】
さらに、前記有機化合物は、前記構造によって、有機化合物のスタッキング(stacking)を効果的に防止して工程の安定性を高めると同時に、蒸着温度を下げることができる。このようなスタッキング防止効果は、前記化学式1の連結基(L)を含む場合により高めることができる。
【0055】
前記有機化合物は、例えば、下記化学式1c〜1tで表される化合物であってよい。
【0056】
【化6】
【0057】
【化7】
【0058】
【化8】
【0059】
前記化学式1c〜1tにおいて、Z、R〜R14、R17〜R20、R23〜R26およびR36〜R38は上述した通りである。
【0060】
前記有機化合物は、例えば、下記グループ2に挙げられた化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0061】
【化9】
【0062】
【化10】
【0063】
【化11】
【0064】
【化12】
【0065】
【化13】
【0066】
【化14】
【0067】
以下、上述した有機化合物を適用した有機光電子素子を説明する。
【0068】
前記有機光電子素子は、電気エネルギーと光エネルギーを相互転換可能な素子であれば特に限定されず、例えば、有機光電素子、有機発光素子、有機太陽電池、および有機感光体ドラムなどが挙げられる。
【0069】
ここでは、有機光電子素子の一例である有機発光素子を、図面を参照して説明する。
【0070】
図1および図2は、一実施形態に係る有機発光素子を示す断面図である。
【0071】
図1を参照すれば、一実施形態に係る有機発光素子100は、互いに向き合う陽極120および陰極110と、陽極120と陰極110との間に位置する有機層105とを含む。
【0072】
陽極120は、例えば、正孔注入が円滑となるように仕事関数の高い導電体で作られ、例えば、金属、金属酸化物、および/または導電性高分子で作られてもよい。陽極120は、例えば、ニッケル、白金、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属、またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnOとAlまたはSnOとSbのような金属と酸化物との組み合わせ;ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン)(polyehtylenedioxythiophene:PEDT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような導電性高分子などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
陰極110は、例えば、電子注入が円滑となるように仕事関数の低い導電体で作られ、例えば、金属、金属酸化物、および/または導電性高分子で作られてもよい。陰極110は、例えば、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、鉛、セシウム、バリウムなどのような金属、またはこれらの合金;LiF/Al、LiO/Al、LiF/Ca、LiF/Al、およびBaF/Caのような多層構造の物質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
有機層105は、上述した有機化合物を含む発光層130を含む。
【0075】
発光層130は、例えば、上述した有機化合物を単独で含んでもよく、上述した有機化合物のうちの少なくとも2種類を混合して含んでもよく、上述した有機化合物と他の化合物を混合して含んでもよい。上述した有機化合物と他の化合物を混合して含む場合、例えば、ホスト(host)とドーパント(dopant)の形態で含まれもよく、上述した有機化合物は、例えば、ホストとして含まれてもよい。前記ホストは、例えば、燐光ホストまたは蛍光ホストであってよく、例えば、燐光ホストであってよい。
【0076】
上述した有機化合物がホストとして含まれる場合、ドーパントは、無機、有機、有無機化合物であってよく、公知のドーパントの中から選択されてもよい。
【0077】
図2を参照すれば、有機発光素子200は、発光層130のほか、正孔補助層140をさらに含む。正孔補助層140は、陽極120と発光層130との間の正孔注入および/または正孔移動性をより高め、電子を阻止することができる。正孔補助層140は、例えば、正孔輸送層、正孔注入層、および/または電子阻止層であってよく、少なくとも1層を含むことができる。上述した有機化合物は、発光層130および/または正孔補助層140に含まれてもよい。
【0078】
また、本発明の一実施形態では、図1または図2において、有機薄膜層105として、追加的に、電子輸送層、電子注入層、正孔注入層などをさらに含む有機発光素子であってもよい。
【0079】
有機発光素子100、200は、基板上に陽極または陰極を形成した後、真空蒸着法(evaporation)、スパッタリング(sputtering)、プラズマメッキ、およびイオンメッキのような乾式成膜法;またはスピンコーティング(spin coating)、スリットコーティング(slit coating)、浸漬法(dipping)、流動コーティング法(flow coating)、およびインクジェット印刷(inkjet printing)のような湿式成膜法などで有機層を形成した後、その上に陰極または陽極を形成して製造することができる。
【0080】
上述した有機発光素子は、有機発光表示装置に適用可能である。
【0081】
以下、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記に記載の実施例は本発明を具体的に例示または説明するためのものに過ぎず、これによって本発明が制限されてはならない。
【実施例】
【0082】
有機化合物の合成
代表合成法
代表合成法は、下記代表反応式の通りである。
【0083】
【化15】
【0084】
中間体の合成
合成例1:中間体I−1の合成
【0085】
【化16】
【0086】
窒素環境下、2−bromotriphenylene(100g、326mmol)をdimethylformamide(DMF)1Lに溶かした後、これに、bis(pinacolato)diboron(99.2g、391mmol)と、(1,1’−bis(diphenylphosphine)ferrocene)dichloropalladium(II)(2.66g、3.26mmol)、そしてpotassium acetate(80g、815mmol)を入れて、150℃で5時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れて、混合物をフィルタした後、真空オーブンで乾燥した。こうして得られた残渣をflash column chromatographyで分離精製して、前記化合物I−1(113g、98%)を得た。
【0087】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C24H23BO2:354.1791,found:354.
Elemental Analysis:C,81%;H,7%。
【0088】
合成例2:中間体I−2の合成
【0089】
【化17】
【0090】
窒素環境下、2−bromotriphenylene(32.7g、107mmol)をtetrahydrofuran(THF)0.3Lに溶かした後、これに、3−chlorophenylboronic acid(20g、128mmol)と、tetrakis(triphenylphosphine)palladium(1.23g、1.07mmol)を入れて撹拌した。水に飽和したpotassium carbonate(36.8g、267mmol)を入れて、80℃で24時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れて、dichloromethane(DCM)で抽出してから、無水MgSO4で水分を除去した後、フィルタし減圧濃縮した。こうして得られた残渣をflash column chromatographyで分離精製して、前記化合物I−2(22.6g、63%)を得た。
【0091】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C24H15Cl:338.0862,found:338.
Elemental Analysis:C,85%;H,5%。
【0092】
合成例3:中間体I−3の合成
【0093】
【化18】
【0094】
窒素環境下、前記化合物I−2(22.6g、66.7mmol)をdimethylformamide(DMF)0.3Lに溶かした後、これに、bis(pinacolato)diboron(25.4g、100mmol)と、(1,1’−bis(diphenylphosphine)ferrocene)dichloropalladium(II)(0.54g、0.67mmol)、そしてpotassium acetate(16.4g、167mmol)を入れて、150℃で48時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れて、混合物をフィルタした後、真空オーブンで乾燥した。こうして得られた残渣をflash column chromatographyで分離精製して、化合物I−3(18.6g、65%)を得た。
【0095】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C30H27BO2:430.2104,found:430.
Elemental Analysis:C,84%;H,6%。
【0096】
合成例4:中間体I−4の合成
【0097】
【化19】
【0098】
窒素環境下、前記化合物I−1(100g、282mmol)をtetrahydrofuran(THF)1Lに溶かした後、これに、1−bromo−2−iodobenzene(95.9g、339mmol)と、tetrakis(triphenylphosphine)palladium(3.26g、2.82mmol)を入れて撹拌した。水に飽和したpotassium carbonate(97.4g、705mmol)を入れて、80℃で53時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れて、dichloromethane(DCM)で抽出してから、無水MgSO4で水分を除去した後、フィルタし減圧濃縮した。こうして得られた残渣をflash column chromatographyで分離精製して、前記化合物I−4(95.1g、88%)を得た。
【0099】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C24H15Br:382.0357,found:382.
Elemental Analysis:C,75%;H,4%。
【0100】
合成例5:中間体I−5の合成
【0101】
【化20】
【0102】
窒素環境下、前記化合物I−4(90g、235mmol)をdimethylformamide(DMF)0.8Lに溶かした後、これに、bis(pinacolato)diboron(71.6g、282mmol)と、(1,1’−bis(diphenylphosphine)ferrocene)dichloropalladium(II)(1.92g、2.35mmol)、そしてpotassium acetate(57.7g、588mmol)を入れて、150℃で35時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れて、混合物をフィルタした後、真空オーブンで乾燥した。こうして得られた残渣をflash column chromatographyで分離精製して、前記化合物I−5(74.8g、74%)を得た。
【0103】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C30H27BO2:430.2104,found:430.
Elemental Analysis:C,84%;H,6%。
【0104】
合成例6:中間体I−6の合成
【0105】
【化21】
【0106】
窒素環境下、前記化合物I−3(50g、116mmol)をtetrahydrofuran(THF)0.5Lに溶かした後、これに、1−bromo−3−iodobenzene(39.4g、139mmol)と、tetrakis(triphenylphosphine)palladium(1.34g、1.16mmol)を入れて撹拌した。水に飽和したpotassium carbonate(40.1g、290mmol)を入れて、80℃で12時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れて、dichloromethane(DCM)で抽出してから、無水MgSO4で水分を除去した後、フィルタし減圧濃縮した。こうして得られた残渣をflash column chromatographyで分離精製して、前記化合物I−6(42.6g、80%)を得た。
【0107】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C30H19Br:458.0670,found:458.
Elemental Analysis:C,78%;H,4%。
【0108】
合成例7:中間体I−7の合成
【0109】
【化22】
【0110】
窒素環境下、前記化合物I−6(40g、87.1mmol)をdimethylformamide(DMF)0.3Lに溶かした後、これに、bis(pinacolato)diboron(26.5g、104mmol)と、(1,1’−bis(diphenylphosphine)ferrocene)dichloropalladium(II)(0.71g、0.87mmol)、そしてpotassium acetate(21.4g、218mmol)を入れて、150℃で26時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れて、混合物をフィルタした後、真空オーブンで乾燥した。こうして得られた残渣をflash column chromatographyで分離精製して、前記化合物I−7(34g、77%)を得た。
【0111】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C36H31BO2:506.2417,found:506.
Elemental Analysis:C,85%;H,6%。
【0112】
合成例8:中間体I−8の合成
【0113】
【化23】
【0114】
窒素環境下、前記化合物I−5(70g、163mmol)をtetrahydrofuran(THF)0.6Lに溶かした後、これに、1−bromo−2−iodobenzene(55.2g、195mmol)と、tetrakis(triphenylphosphine)palladium(1.88g、1.63mmol)を入れて撹拌した。水に飽和したpotassium carbonate(56.3g、408mmol)を入れて、80℃で12時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れて、dichloromethane(DCM)で抽出してから、無水MgSO4で水分を除去した後、フィルタし減圧濃縮した。こうして得られた残渣をflash column chromatographyで分離精製して、前記化合物I−8(68.1g、91%)を得た。
【0115】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C30H19Br:458.0670,found:458.
Elemental Analysis:C,78%;H,4%。
【0116】
合成例9:中間体I−9の合成
【0117】
【化24】
【0118】
窒素環境下、前記化合物I−8(40g、87.1mmol)をdimethylformamide(DMF)0.3Lに溶かした後、これに、bis(pinacolato)diboron(26.5g、104mmol)と、(1,1’−bis(diphenylphosphine)ferrocene)dichloropalladium(II)(0.71g、0.87mmol)、そしてpotassium acetate(21.4g、218mmol)を入れて、150℃で23時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れて、混合物をフィルタした後、真空オーブンで乾燥した。こうして得られた残渣をflash column chromatographyで分離精製して、前記化合物I−9(30.4g、69%)を得た。
【0119】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C36H31BO2:506.2417,found:506.
Elemental Analysis:C,85%;H,6%。
【0120】
合成例10:中間体I−10の合成
【0121】
【化25】
【0122】
窒素環境下、前記化合物I−9(30g、59.2mmol)をtetrahydrofuran(THF)0.3Lに溶かした後、これに、1−bromo−2−iodobenzene(20.1g、71.1mmol)と、tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0.68g、0.59mmol)を入れて撹拌した。水に飽和したpotassium carbonate(20.5g、148mmol)を入れて、80℃で16時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れて、dichloromethane(DCM)で抽出してから、無水MgSO4で水分を除去した後、フィルタし減圧濃縮した。こうして得られた残渣をflash column chromatographyで分離精製して、前記化合物I−10(32.4g、85%)を得た。
【0123】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C36H23Br:534.0983,found:534.
Elemental Analysis:C,81%;H,4%。
【0124】
合成例11:中間体I−11の合成
【0125】
【化26】
【0126】
窒素環境下、前記化合物I−10(30g、56mmol)をdimethylformamide(DMF)0.3Lに溶かした後、これに、bis(pinacolato)diboron(17.1g、67.2mmol)と、(1,1’−bis(diphenylphosphine)ferrocene)dichloropalladium(II)(0.46g、0.56mmol)、そしてpotassium acetate(13.7g、140mmol)を入れて、150℃で25時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れて、混合物をフィルタした後、真空オーブンで乾燥した。こうして得られた残渣をflash column chromatographyで分離精製して、前記化合物I−11(22.8g、70%)を得た。
【0127】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C42H35BO2:582.2730,found:582.
Elemental Analysis:C,87%;H,6%。
【0128】
最終化合物の合成
合成例12:化合物1の合成
【0129】
【化27】
【0130】
窒素環境下、前記化合物I−1(20g、56.5mmol)をtetrahydrofuran(THF)0.2Lに溶かした後、これに、2−chloro−4,6−diphenyl−1,3,5−triazine(15.1g、56.5mmol)と、tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0.65g、0.57mmol)を入れて撹拌した。水に飽和したpotassium carbonate(19.5g、141mmol)を入れて、80℃で20時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れて、dichloromethane(DCM)で抽出してから、無水MgSO4で水分を除去した後、フィルタし減圧濃縮した。こうして得られた残渣をflash column chromatographyで分離精製して、前記化合物1(22.1g、85%)を得た。
【0131】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C33H21N3:459.1735,found:459.
Elemental Analysis:C,86%;H,5%。
【0132】
合成例13:化合物13の合成
【0133】
【化28】
【0134】
窒素環境下、前記化合物I−3(20g、46.5mmol)をtetrahydrofuran(THF)0.2Lに溶かした後、これに、4−chloro−2,6−diphenylpyridine(12.4g、46.5mmol)と、tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0.54g、0.47mmol)を入れて撹拌した。水に飽和したpotassium carbonate(16.1g、116mmol)を入れて、80℃で17時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れて、dichloromethane(DCM)で抽出してから、無水MgSO4で水分を除去した後、フィルタし減圧濃縮した。こうして得られた残渣をflash column chromatographyで分離精製して、前記化合物13(18.9g、76%)を得た。
【0135】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C41H27N:533.2143,found:533.
Elemental Analysis:C,92%;H,5%。
【0136】
合成例14:化合物14の合成
【0137】
【化29】
【0138】
窒素環境下、前記化合物I−3(20g、46.5mmol)をtetrahydrofuran(THF)0.2Lに溶かした後、これに、2−chloro−4,6−diphenylpyrimidine(12.4g、46.5mmol)と、tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0.54g、0.47mmol)を入れて撹拌した。水に飽和したpotassium carbonate(16.1g、116mmol)を入れて、80℃で15時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れて、dichloromethane(DCM)で抽出してから、無水MgSO4で水分を除去した後、フィルタし減圧濃縮した。こうして得られた残渣をflash column chromatographyで分離精製して、前記化合物14(20.4g、82%)を得た。
【0139】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C40H26N2:534.2096,found:534.
Elemental Analysis:C,90%;H,5%。
【0140】
合成例15:化合物15の合成
【0141】
【化30】
【0142】
窒素環境下、前記化合物I−3(20g、46.5mmol)をtetrahydrofuran(THF)0.2Lに溶かした後、これに、2−chloro−4,6−diphenyl−1,3,5−triazine(12.4g、46.5mmol)と、tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0.54g、0.47mmol)を入れて撹拌した。水に飽和したpotassium carbonate(16.1g、116mmol)を入れて、80℃で20時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れて、dichloromethane(DCM)で抽出してから、無水MgSO4で水分を除去した後、フィルタし減圧濃縮した。こうして得られた残渣をflash column chromatographyで分離精製して、前記化合物15(21.2g、85%)を得た。
【0143】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C39H25N3:535.2048,found:535.
Elemental Analysis:C,87%;H,5%。
【0144】
合成例16:化合物24の合成
【0145】
【化31】
【0146】
窒素環境下、前記化合物I−5(20g、46.5mmol)をtetrahydrofuran(THF)0.2Lに溶かした後、これに、2−chloro−4,6−diphenyl−1,3,5−triazine(12.4g、46.5mmol)と、tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0.54g、0.47mmol)を入れて撹拌した。水に飽和したpotassium carbonate(16.1g、116mmol)を入れて、80℃で27時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れて、dichloromethane(DCM)で抽出してから、無水MgSO4で水分を除去した後、フィルタし減圧濃縮した。こうして得られた残渣をflash column chromatographyで分離精製して、前記化合物24(19.7g、79%)を得た。
【0147】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C39H25N3:535.2048,found:535.
Elemental Analysis:C,87%;H,5%。
【0148】
合成例17:化合物33の合成
【0149】
【化32】
【0150】
窒素環境下、前記化合物I−7(20g、39.5mmol)をtetrahydrofuran(THF)0.2Lに溶かした後、これに、2−chloro−4,6−diphenyl−1,3,5−triazine(10.6g、39.5mmol)と、tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0.46g、0.4mmol)を入れて撹拌した。水に飽和したpotassium carbonate(13.6g、98.8mmol)を入れて、80℃で23時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れて、dichloromethane(DCM)で抽出してから、無水MgSO4で水分を除去した後、フィルタし減圧濃縮した。こうして得られた残渣をflash column chromatographyで分離精製して、前記化合物33(17.9g、74%)を得た。
【0151】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C45H29N3:611.2361,found:611.
Elemental Analysis:C,88%;H,5%。
【0152】
合成例18:化合物69の合成
【0153】
【化33】
【0154】
窒素環境下、前記化合物I−9(20g、39.5mmol)をtetrahydrofuran(THF)0.2Lに溶かした後、これに、2−chloro−4,6−diphenyl−1,3,5−triazine(10.6g、39.5mmol)と、tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0.46g、0.4mmol)を入れて撹拌した。水に飽和したpotassium carbonate(13.6g、98.8mmol)を入れて、80℃で32時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れて、dichloromethane(DCM)で抽出してから、無水MgSO4で水分を除去した後、フィルタし減圧濃縮した。こうして得られた残渣をflash column chromatographyで分離精製して、前記化合物69(15.2g、63%)を得た。
【0155】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C45H29N3:611.2361,found:611.
Elemental Analysis:C,88%;H,5%。
【0156】
合成例19:化合物87の合成
【0157】
【化34】
【0158】
窒素環境下、前記化合物I−11(20g、34.3mmol)をtetrahydrofuran(THF)0.15Lに溶かした後、これに、2−chloro−4,6−diphenyl−1,3,5−triazine(9.19g、34.3mmol)と、tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0.4g、0.34mmol)を入れて撹拌した。水に飽和したpotassium carbonate(11.9g、85.8mmol)を入れて、80℃で29時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れて、dichloromethane(DCM)で抽出してから、無水MgSO4で水分を除去した後、フィルタし減圧濃縮した。こうして得られた残渣をflash column chromatographyで分離精製して、前記化合物87(16.3g、69%)を得た。
【0159】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C51H33N3:687.2674,found:687.
Elemental Analysis:C,89%;H,5%。
【0160】
有機発光素子の作製
実施例1
合成例12で得られた化合物1をホストとして用い、Ir(PPy)3をドーパントとして用いて、有機発光素子を作製した。
【0161】
陽極にはITOを1000Åの厚さに使用し、陰極にはアルミニウム(Al)を1000Åの厚さに使用した。具体的には、有機発光素子の製造方法を説明すれば、陽極は、15Ω/cm2の面抵抗値を有するITOガラス基板を50mm×50mm×0.7mmの大きさに切断して、アセトンとイソプロピルアルコールと純水中で、各15分間超音波洗浄した後、30分間UVオゾン洗浄して使用した。
【0162】
前記基板の上部に、真空度650×10−7Pa、蒸着速度0.1〜0.3nm/sの条件で、N4,N4’−di(naphthalen−1−yl)−N4,N4’−diphenylbiphenyl−4,4’−diamine(NPB)(80nm)を蒸着して、800Åの正孔輸送層を形成した。次に、同一の真空蒸着条件で、実施例1で得られた化合物1を用いて、膜厚300Åの発光層を形成し、この時、燐光ドーパントのIr(PPy)3を同時に蒸着した。この時、燐光ドーパントの蒸着速度を調整して、発光層の全体量を100重量%とした時、燐光ドーパントの配合量が7重量%となるように蒸着した。
【0163】
前記発光層の上部に、同一の真空蒸着条件を用いて、Bis(2−methyl−8−quinolinolate)−4−(phenylphenolato)aluminium(BAlq)を蒸着して、膜厚50Åの正孔阻止層を形成した。次に、同一の真空蒸着条件でAlq3を蒸着して、膜厚200Åの電子輸送層を形成した。前記電子輸送層の上部に、陰極としてLiFとAlを順次に蒸着して、有機発光素子を作製した。
【0164】
前記有機発光素子の構造は、ITO/NPB(80nm)/EML(化合物1(93重量%)+Ir(PPy)3(7重量%)、30nm)/Balq(5nm)/Alq3(20nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)の構造で作製した。
【0165】
実施例2
合成例12の化合物1の代わりに、合成例13の化合物13を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0166】
実施例3
合成例12の化合物1の代わりに、合成例14の化合物14を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0167】
実施例4
合成例12の化合物1の代わりに、合成例15の化合物15を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0168】
実施例5
合成例12の化合物1の代わりに、合成例16の化合物24を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0169】
実施例6
合成例12の化合物1の代わりに、合成例17の化合物33を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0170】
実施例7
合成例12の化合物1の代わりに、合成例18の化合物69を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0171】
実施例8
合成例12の化合物1の代わりに、合成例19の化合物87を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0172】
比較例1
合成例12の化合物1の代わりに、下記構造のCBPを使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0173】
比較例2
合成例12の化合物1の代わりに、下記構造のHOST1を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0174】
比較例3
合成例12の化合物1の代わりに、下記構造のHOST2を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0175】
前記有機発光素子の作製に使用されたNPB、BAlq、CBP、Ir(PPy)、HOST1、およびHOST2の構造は、下記の通りである。
【0176】
【化35】
【0177】
評価
実施例1〜8と、比較例1〜3による有機発光素子の電圧に応じた電流密度の変化、輝度変化および発光効率を測定した。
【0178】
具体的な測定方法は下記の通りであり、その結果は表1の通りである。
【0179】
(1)電圧の変化に応じた電流密度の変化の測定
製造された有機発光素子に対して、電圧を0Vから10Vまで上昇させながら、電流−電圧計(Keithley2400)を用いて単位素子に流れる電流値を測定し、測定された電流値を面積で割って、結果を得た。
【0180】
(2)電圧の変化に応じた輝度変化の測定
製造された有機発光素子に対して、電圧を0Vから10Vまで上昇させながら、輝度計(Minolta Cs−1000A)を用いてその時の輝度を測定して、結果を得た。
【0181】
(3)発光効率の測定
前記(1)および(2)から測定された輝度と電流密度および電圧を用いて、同一の電流密度(10mA/cm2)の電流効率(cd/A)を計算した。
【0182】
(4)寿命の測定
輝度(cd/m2)を5000cd/mに維持し、電流効率(cd/A)が90%に減少する時間を測定して、結果を得た。
【0183】
【表1】
【0184】
前記表1によれば、実施例1〜8による有機発光素子は、比較例1〜比較例3による有機発光素子と比較して、発光効率および寿命が顕著に改善されたことを確認することができる。
【0185】
具体的には、実施例1〜8による有機発光素子で使用された化合物は、比較例1〜3による有機発光素子で使用された化合物とは異なり、窒素を含むことで、電子を受けるのに容易な構造を有している。これによって、実施例1〜8による有機発光素子は、比較例1〜3による有機発光素子と比較して、駆動電圧が低くなることを確認することができる。
【0186】
また、実施例1〜8による有機発光素子で使用された化合物は、正孔を受けやすいトリフェニレン構造と、電子を受けやすい窒素含有環部分を共に含むバイポーラ構造を有することにより、正孔と電子の流れを適切にバランス良くすることができ、これによって、実施例1〜8による有機発光素子は、比較例1〜3による有機発光素子と比較して、効率が高いことを確認することができる。
【0187】
さらに、実施例1〜8による有機発光素子で使用された化合物は、正孔を受けやすいトリフェニレン構造と、電子を受けやすい窒素含有環部分とを適切に区域化する構造を有することにより、共役系の流れを制御することができ、これによって、実施例1〜8による有機発光素子は、比較例1または3に比べて、寿命が増加することを確認することができる。なお、実施例14、15、16の場合、比較例2の場合よりも、90%寿命の比較時、約3倍またはそれ以上に向上することが分かり、寿命の増加にもかかわらず、発光効率は1.6倍以上上昇したことを確認することができる。
【0188】
本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能であり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施可能であることを理解することができる。そのため、以上に述べた実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。
図1
図2