特許第6257191号(P6257191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6257191
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】受信装置及び受信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/18 20060101AFI20171227BHJP
   H04B 1/26 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   H04B1/18 K
   H04B1/26 E
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-145379(P2013-145379)
(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公開番号】特開2015-19254(P2015-19254A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年6月3日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】長坂 正史
(72)【発明者】
【氏名】亀井 雅
(72)【発明者】
【氏名】中澤 進
(72)【発明者】
【氏名】田中 祥次
【審査官】 原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−298438(JP,A)
【文献】 特開2005−142759(JP,A)
【文献】 特開平11−122131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/18
H04B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星放送受信アンテナにより受信された衛星放送波を、右旋円偏波及び左旋円偏波に分離する偏波分離部と、
前記右旋円偏波に対して、第1局部発振周波数により右旋中間周波へ周波数変換を行う第1周波数変換部と、
前記左旋円偏波に対して、第2局部発振周波数により左旋中間周波へ周波数変換を行う第2周波数変換部と、
前記左旋中間周波を、第1BS左旋中間周波及びCS左旋中間周波に分波する第1分波器と、
前記第1BS左旋中間周波に対して、第3局部発振周波数により、地上テレビ放送波の周波数より高い周波数範囲の第2BS左旋中間周波へ周波数変換を行う第3周波数変換部と、
前記第2BS左旋中間周波を、前記地上テレビ放送波の周波数より高く前記右旋中間周波の周波数より低い基準周波数より低い周波数を含む第3BS左旋中間周波、及び前記基準周波数より高い周波数を含む第4BS左旋中間周波に分波する第2分波器と、
前記第4BS左旋中間周波に対して、第4局部発振周波数により、前記CS左旋中間周波の周波数より高い周波数範囲の第5BS左旋中間周波へ周波数変換を行う第4周波数変換部と、
前記右旋中間周波、前記CS左旋中間周波、前記第3BS左旋中間周波及び前記第5BS左旋中間周波を合波する合波器と、を備える受信装置。
【請求項2】
前記第2分波器は、前記第3BS左旋中間周波及び前記第4BS左旋中間周波に、少なくともBSチャンネル帯域幅の共通の周波数帯を設ける請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記第2分波器は、前記基準周波数以下でありBSチャンネル帯域の境界である周波数を算出し、第2BS左旋中間周波を、当該境界である周波数よりも低い周波数からなる前記第3BS左旋中間周波、及び当該境界である周波数よりも高い周波数からなる前記第4BS左旋中間周波に分波する請求項1に記載の受信装置。
【請求項4】
前記第3周波数変換部は、前記第3局部発振周波数を示す基準信号を受信する請求項1から請求項のいずれかに記載の受信装置。
【請求項5】
前記第3周波数変換部は、前記合波器により合波された信号を伝送するケーブルを介して、当該信号の受信先から、前記基準信号を受信する請求項に記載の受信装置。
【請求項6】
前記第3周波数変換部は、前記基準信号の周波数を定数倍した値を、前記第3局部発振周波数として用いる請求項に記載の受信装置。
【請求項7】
請求項から請求項のいずれかに記載の受信装置と、
前記基準信号を送信する放送波チューナと、を備える受信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送波の受信装置及び受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星放送では、円偏波が用いられている。現状、衛星基幹放送、いわゆるBS(Broadcasting Satellite)及び東経110度CS(Communications Satellite)は、共に右旋円偏波を用いている。右旋円偏波と左旋円偏波とは共用可能なため、各衛星は、同一周波数で異なる番組の送信が可能である。
【0003】
また、衛星放送は、周波数が高い12GHz帯の電波を用いているため、宅内配線での減衰が大きい。そこで、受信アンテナで受信された放送波は、中間周波数(IF:Intermediate Frequency)に変換され、同軸ケーブルにより受信機まで伝送される。
【0004】
なお、BSでは、放送用周波数として11.7GHz〜12.2GHzが使用され、右旋円偏波用IFとして1032MHz〜1489MHzが使用されている。また、CSでは、放送用周波数として12.25GHz〜12.75GHzが使用され、右旋円偏波用IFとして1595MHz〜2071MHzが使用されている。
【0005】
このような状況において、左旋円偏波に対応した受信装置には、以下のものが提供又は提案されている。
(1)受信機からの電圧制御によりアンテナを切り替え、右旋円偏波又は左旋円偏波の一方を受信するもの。
(2)CSの左旋円偏波を、2100MHz〜2600MHz付近のIF(Intermediate Frequency)に変換して伝送するもの(例えば、非特許文献1参照)。
(3)BSの左旋円偏波を、2000MHz〜2600MHz付近のIFに変換し、CSの左旋円偏波を、2600MHz〜3100MHz付近のIFに変換して伝送するもの(例えば、特許文献1参照)。
(4)CSの左旋円偏波を、1600MHz〜2100MHz付近のIFに変換して伝送するもの(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−305460号公報
【特許文献2】特許3107548号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】武田ほか,“2600MHz伝送システムに使用するBS・110°CS衛星アンテナ”,電子情報通信学会技術研究報告,Vol.109,No.454,AP2009−218,pp.79−83,2010年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、通常、複数の放送波は、1本の同軸ケーブルに重畳されて受信機まで伝送される。したがって、各放送波の中間周波数は、互いに重ならないように変換される必要がある。
しかしながら、上述の提案技術によれば、(1)では右旋円偏波及び左旋円偏波を同時に受信することができない。また、(2)及び(4)では、右旋円偏波及び左旋円偏波を共に受信した場合に、各中間周波の干渉が発生する。
【0009】
また、(3)では、各中間周波の干渉は回避されるものの、CSの左旋円偏波用IFがBSの左旋円偏波のIFより高い周波数となるために、現在想定されている2126MHz〜2602MHzと大きく乖離してしまう。
このように、BS及びCSの左旋円偏波に加えて右旋円偏波が送出された場合への対応が十分ではない。
【0010】
本発明は、BS及びCSの双方で右旋円偏波及び左旋円偏波を送出した場合に、これら複数の放送波を1本のケーブルで伝送可能とする受信装置及び受信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る受信装置は、アンテナにより受信された放送波を、右旋円偏波及び左旋円偏波に分離する偏波分離部と、前記右旋円偏波に対して、第1局部発振周波数により右旋中間周波へ周波数変換を行う第1周波数変換部と、前記左旋円偏波に対して、第2局部発振周波数により左旋中間周波へ周波数変換を行う第2周波数変換部と、前記左旋中間周波を、第1BS左旋中間周波及びCS左旋中間周波に分波する第1分波器と、前記第1BS左旋中間周波に対して、第3局部発振周波数により第2BS左旋中間周波へ周波数変換を行う第3周波数変換部と、前記第2BS左旋中間周波を、基準周波数より低い周波数を含む第3BS左旋中間周波、及び前記基準周波数より高い周波数を含む第4BS左旋中間周波に分波する第2分波器と、前記第4BS左旋中間周波に対して、第4局部発振周波数により第5BS左旋中間周波へ周波数変換を行う第4周波数変換部と、前記右旋中間周波、前記CS左旋中間周波、前記第3BS左旋中間周波及び前記第5BS左旋中間周波を合波する合波器と、を備える。
【0012】
この構成によれば、受信装置は、CS左旋中間周波をCS右旋中間周波の高周波側に配置すると共に、BS左旋中間周波を、他の信号との干渉を回避し分割して配置できる。したがって、受信装置は、BS及びCSの双方で右旋円偏波及び左旋円偏波を受信した場合に、これら複数の放送波を1本の同軸ケーブルで伝送できる。
【0013】
前記第3周波数変換部は、前記第2BS左旋中間周波の周波数範囲を第1の値以上にするための前記第3局部発振周波数を用いてもよい。
【0014】
この構成によれば、受信装置は、BS左旋中間周波を所定の周波数帯の高周波側に配置できるので、BS左旋中間周波を、低周波側の他の放送信号と干渉させずに同一の同軸ケーブルで伝送できる。
【0015】
前記第1の値は、地上テレビ放送波の周波数より高い値であってもよい。
【0016】
この構成によれば、受信装置は、BS左旋中間周波を地上テレビ放送の高周波側に配置できるので、BS左旋中間周波を、地上テレビ放送の信号と干渉させずに同一の同軸ケーブルで伝送できる。
【0017】
前記第4周波数変換部は、前記第5BS左旋中間周波の周波数範囲を第2の値以上にするための前記第4局部発振周波数を用いてもよい。
【0018】
この構成によれば、受信装置は、BS左旋中間周波の一部を所定の周波数帯の高周波側に配置できるので、分波したBS左旋中間周波の一部を、他の中間周波と重ならないように配置して干渉を回避できる。
【0019】
前記基準周波数は、前記右旋中間周波の周波数より低い値であり、前記第2の値は、前記CS左旋中間周波の周波数より高い値であってもよい。
【0020】
この構成によれば、受信装置は、BS左旋中間周波の一部を地上テレビ放送とBS右旋中間周波との間に配置し、残りをCS左旋中間周波の高周波側に配置できるので、BS左旋中間周波を、他の中間周波と重ならないように効率的に配置できる。
【0021】
前記第2分波器は、前記第3BS左旋中間周波及び前記第4BS左旋中間周波に、少なくともBSチャンネル帯域幅の共通の周波数帯を設けてもよい。
【0022】
この構成によれば、受信装置は、分割されたBS左旋中間周波の双方に、少なくともチャンネル帯域幅の共通の周波数帯を設けるので、1つのチャンネルの帯域が分割されることなく、いずれかの中間周波に含められる。したがって、受信装置は、分割位置のチャンネルが復元できなくなるのを防ぐことができる。
【0023】
前記第2分波器は、前記基準周波数以下でありBSチャンネル帯域の境界である周波数を算出し、第2BS左旋中間周波を、当該境界である周波数よりも低い周波数からなる前記第3BS左旋中間周波、及び当該境界である周波数よりも高い周波数からなる前記第4BS左旋中間周波に分波してもよい。
【0024】
この構成によれば、受信装置は、中間周波に使用される周波数帯域幅を縮小できる。
【0025】
前記第3周波数変換部は、前記第3局部発振周波数を示す基準信号を受信してもよい。
【0026】
この構成によれば、受信装置は、BS左旋中間周波の下限を決定するための基準信号を受信するので、地域により異なる使用周波数帯を回避して、BS左旋中間周波を適切な周波数に配置できる。
【0027】
前記第3周波数変換部は、前記合波器により合波された信号を伝送するケーブルを介して、当該信号の受信先から、前記基準信号を受信してもよい。
【0028】
この構成によれば、受信装置は、放送波の伝送用の同軸ケーブルを用いて、基準信号を容易に受信できる。
【0029】
前記第3周波数変換部は、前記基準信号の周波数を定数倍した値を、前記第3局部発振周波数として用いてもよい。
【0030】
この構成によれば、受信装置は、基準信号の周波数を定数倍して局部発振周波数に用いるため、基準信号が放送波の中間周波と干渉するのを回避して、放送波の伝送用の同軸ケーブルを用いて、基準信号を容易に受信できる。
【0031】
本発明に係る受信システムは、前記受信装置と、基準信号を送信する放送波チューナと、を備える。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、複数の放送波が1本のケーブルで伝送可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施形態に係る受信装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る可変周波数変換部における周波数変換例を示す図である。
図3】実施形態に係る第2分波器における周波数分離例を示す図である。
図4】実施形態に係る第4周波数変換部における周波数変換例を示す図である。
図5】実施形態に係る各衛星放送のIF帯域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
本実施形態の受信装置1は、CSの左旋円偏波を、BSの左旋円偏波と同時にIFへ周波数変換した後、CSの右旋円偏波のIFに重なるBSの左旋円偏波のIFを分波して更に周波数変換する。
【0035】
図1は、本実施形態に係る受信装置1の構成を示すブロック図である。
受信装置1は、偏波分離部11と、第1周波数変換部12と、第2周波数変換部13と、第1分波器14と、可変周波数変換部15(第3周波数変換部)と、第2分波器16と、第4周波数変換部17と、合波器18と、サーキュレータ19と、混合器20とを備える。
【0036】
混合器20から出力される放送波の信号は、同軸ケーブルの宅内配線により放送波チューナを備えた受信機3へ伝送される。
また、衛星放送受信アンテナ2を駆動するための電源部21は、受信機3からDC電源の供給を受ける。
【0037】
偏波分離部11は、衛星放送受信アンテナ2により受信された放送衛星(BS及びCS)の電波を、右旋円偏波と左旋円偏波とに分離する。なお、偏波分離部11は、既存の偏波分離の方法を用いることができ、例えば、ハイブリッド回路を用いたもの、又は位相差板を用いたもの等であってよい。
偏波分離された右旋円偏波は、第1周波数変換部12に入力され、左旋円偏波は、第2周波数変換部13に入力される。
【0038】
第1周波数変換部12は、既定の局部発振周波数(Lo=10.678GHz)を用いて、右旋円偏波をIFに周波数変換する。第1周波数変換部12への入力周波数からLoを引いた値が変換後の周波数となる。
これにより、BS及びCSの右旋円偏波の受信信号は、BS右旋円偏波用IF(BS右旋IF)及びCS右旋円偏波用IF(CS右旋IF)となり、合波器18に入力される。
【0039】
第2周波数変換部13は、局部発振周波数(Lo=10.127GHz)を用いて、左旋円偏波をIFに周波数変換する。これにより、CS左旋円偏波用IF(CS左旋IF)がCS右旋IFの次に高い周波数帯(2126MHz〜2602MHz)となる。
このとき、BS左旋円偏波の変換後の周波数は、1602MHz〜2059MHzとなるため、CS右旋IFの周波数と重なる。
【0040】
第1分波器14は、第2周波数変換部13の出力信号である第1BS左旋IFとCS左旋IFとを分波する。CS左旋IFは、合波器18に入力され、第1BS左旋IFは、可変周波数変換部15に入力される。
【0041】
可変周波数変換部15は、周波数逓倍器151と、ミキサ152とを備え、可変の第3局部発振周波数を用いて第1BS左旋IFの周波数変換を行う。
【0042】
周波数逓倍器151は、受信装置1の出力信号を伝送する同軸ケーブルを介して、この信号の受信先である受信機3から、第3局部発振周波数を求めるための基準信号fを受信する。周波数逓倍器151は、この基準信号の周波数を定数倍(例えば、3倍)した値を、第3局部発振周波数(Lo=n×f)としてミキサ152に提供する。このとき、周波数逓倍器151は、不要波の除去と増幅も行う。
【0043】
ミキサ152は、第1分波器14により分波された第1BS左旋IFに対して第3局部発振周波数の信号を掛け合わせ、第2BS左旋IFを出力する。
ここで、第3局部発振周波数は、第2BS左旋IFの周波数範囲を第1の値以上、具体的には、地上デジタルテレビ放送波の周波数より高い値にするように設定される。
【0044】
地上デジタルテレビ放送(地上TV)の周波数割り当ては、470MHz〜710MHzであるが、地域によって、この範囲の一部を使って放送されている。例えば、関東広域の放送周波数範囲は、488MHz〜566MHzである。つまり、関東広域の場合、566MHz(地上TVの上限)〜1032MHz(BS右旋IFの下限)は、テレビ放送に使用されていない。
そこで、まず、可変周波数変換部15は、地域毎に設定される第1の値以上、例えば関東広域の場合、地上TVの上限である566MHzに対してガードバンドを確保して600MHz以上に、BS左旋IFを変換する。
【0045】
図2は、本実施形態に係る可変周波数変換部15における周波数変換例を示す図である。
この例では、入力周波数1602MHz〜2059MHzに対して、基準信号fが取り得る最大値及び最小値を用いた場合の、第3局部発振周波数Lo及び出力周波数の範囲が示されている。なお、周波数逓倍器151において基準信号は3倍されて第3局部発振周波数になるものとする。
【0046】
このように、基準信号fの周波数を297MHz〜377MHzの範囲とすれば、可変周波数変換部15による出力周波数の下限値は、471MHz〜711MHzの範囲となる。基準信号fは、この範囲で、地上TVの地域毎の実際の使用周波数帯に合わせて適宜設定される。
【0047】
また、基準信号fは、受信機3で生成される。受信機3は、導入時に受信可能なチャンネルをスキャンするので、設置地域における地上TVのチャンネル使用状況を把握している。また、受信機3は、ユーザによる郵便番号等の入力により地域を特定し、地上TVのチャンネル割り当てを特定してもよい。
これにより、受信機3は、地域の状況に応じて適切な基準信号fを生成する。
【0048】
ここで、周波数逓倍器151がn=3倍以上の演算を行うことにより、基準信号fは、地上TVの周波数範囲より低い周波数となる。よって、基準信号fは、地上TVの信号との干渉を回避して、同一の同軸ケーブルにより伝送できる。
【0049】
ところで、可変周波数変換部15により変換された第2BS左旋IFは、地上TVの使用周波数帯によっては、高周波側のBS右旋IFと重なってしまい、IFに必要な457MHz及びガードバンドを、地上TVとBS右旋IFとの間の空き領域に確保できない。そこで、受信装置1は、この重なる部分に対して、第2分波器16及び第4周波数変換部17により、更に周波数変換を行う。
【0050】
第2分波器16は、第2BS左旋IFを、基準周波数fより低い周波数を含む成分(第3BS左旋IF)をポートAから取り出し、基準周波数より高い周波数を含む成分(第4BS左旋IF)をポートBから取り出す。
ここで、基準周波数fは、BS右旋IFの周波数より低い値である。
【0051】
また、第2分波器16は、第3BS左旋IF及び第4BS左旋IFに、少なくともBSチャンネル帯域幅の共通の周波数帯(f)を設ける。
具体的には、BSのチャンネル帯域幅は、38.36MHzなので、例えば、f=40MHzと設定し、第2分波器16は、ポートAからは、基準周波数fを下回る成分のみを取り出し、ポートBからは、周波数f−fを超える成分を取り出す。
【0052】
これにより、ポートAとポートBとは、周波数帯域幅fの成分を共通して出力する。したがって、第2分波器16は、ある1つの衛星放送のチャンネルがポートAとポートBとに分かれて復元できなくなるのを防ぐことができる。
【0053】
図3は、本実施形態に係る第2分波器16における周波数分離例を示す図である。
基準信号fを334MHzとした場合、第2分波器16への入力周波数は600MHz〜1057MHzとなる。
【0054】
このとき、基準周波数fを1000MHz、共通の周波数帯域幅fを40MHzとすると、ポートAの出力周波数は600MHz〜1000MHz、ポートBの出力周波数は960MHz〜1057MHzとなる。
なお、f=1000MHzは一例であり、BS右旋IFとの間のガードバンドを適宜設けることにより決定される。
【0055】
第4周波数変換部17は、BS右旋IFと重なる第4BS左旋IFに対して、第4局部発振周波数(Lo=f)により第5BS左旋IFへ周波数変換を行う。
ここで、第4局部発振周波数は、第5BS左旋IFの周波数範囲を第2の値以上、具体的には、CS左旋IFの周波数より高い値にするように設定される。
【0056】
図4は、本実施形態に係る第4周波数変換部における周波数変換例を示す図である。
第2分波器16のポートBからの入力周波数が960MHz〜1057MHzの場合、第4局部発振周波数fを1740とすると、出力周波数は2700MHz〜2795MHzとなり、CS左旋IFよりも高周波側に配置される。
【0057】
周波数変換後の出力周波数は、入力周波数に第4局部発振周波数fを加えた値である。なお、第4局部発振周波数fは、CS左旋IFとの間のガードバンドを適宜設けることにより決定される。
【0058】
図5は、本実施形態に係る各衛星放送のIF帯域を示す図である。
地上TVの帯域のうち、実際に放送で使用している周波数と、BS右旋IFとの間に、第3BS左旋IFが配置される。また、BS右旋IF、CS右旋IF、CS左旋IFの高周波側に、第5BS左旋IFが配置される。
BS左旋IFの一部が低周波側に配置されることにより、IFが配置される周波数の上限が抑えられ、同軸ケーブルでの減衰が低減される。
【0059】
合波器18は、BS右旋IF、CS左旋IF、CS左旋IF、第3BS左旋IF及び第5BS左旋IFを合成し、同軸ケーブルで伝送する。なお、周波数変換により生じるイメージ等の不要波は、合波器18に内蔵されたフィルタにより除去される。
【0060】
サーキュレータ19は、合波器18により合成されたIF信号を受信機3へ伝送し、受信機3から前述の基準信号fを周波数逓倍器151へ伝送する。
【0061】
混合器20は、合波器18により合成された衛星放送信号のIFと、地上TVの信号を合成し、同軸ケーブルで伝送する。衛星放送信号のIFは、地上TVの周波数と重なる部分がないので、UHFアンテナで受信した地上TVの信号と干渉することなく、同一の同軸ケーブルで伝送可能である。
なお、衛星放送信号のIFは、FM放送の周波数とも重ならないため、混合器20は、FM放送の信号を合成してもよい。
【0062】
受信機3は、予め前述の基準周波数f、第4局部発振周波数f、ポートA及びBに共通する周波数帯fの値を保持する。受信機3は、これらの値と、自身が生成する基準信号fに基づいて、BS左旋IFから各チャンネルの周波数を特定して復調することができる。
【0063】
以上のように、本実施形態によれば、受信装置1は、CS左旋IFをCS右旋IFの高周波側に配置すると共に、BS左旋IFを、他の信号との干渉を回避し分割して配置できる。したがって、受信装置1は、BS及びCSの双方で右旋円偏波及び左旋円偏波を受信した場合に、これら複数の放送波を1本の同軸ケーブルで伝送できる。
【0064】
具体的には、受信装置1は、BS左旋IFを地上TVとBS右旋IFとの間、及びCS左旋IFの高周波側に配置できるので、衛星放送信号及び地上TV信号を、同一の同軸ケーブルで伝送できる。さらに、受信装置1は、BS左旋IFを分割することで、IFの配置の上限を低くできるので、同軸ケーブルにおける信号の減衰を低減できる。
【0065】
したがって、受信機3は、右左旋両円偏波の放送を同時に受信できる。さらに、分配器を用いることにより、複数台のチューナでそれぞれ任意の放送を選択し受信できる。これにより、受信装置1は、例えば、ユーザが視聴中の番組とは別の番組を録画する等、柔軟な視聴環境を提供できる。
【0066】
この結果、放送衛星は、左旋円偏波を用いて同一周波数で別番組の放送が可能となり、周波数の有効利用が可能となる。また、受信装置1は、同一の同軸ケーブルで右左旋両円偏波の放送を同時に受信機へ伝送できるので、宅内配線設備の簡素化、及び既存配線の流用が可能となり、コストが低減される。
【0067】
また、受信装置1は、分割されたBS左旋IFの双方に、少なくともチャンネル帯域幅の共通の周波数帯を設けるので、1つのチャンネルの帯域が分割されることなく、いずれかのIFに含められる。したがって、受信装置1は、分割位置のチャンネルが復元できなくなるのを防ぐことができる。
【0068】
また、受信装置1は、BS左旋IFの下限を決定するための基準信号fを受信機3から受信するので、受信機3の設置地域に応じて、BS左旋IFを適切な周波数に配置できる。
このとき、受信装置1は、基準信号fを定数倍して局部発振周波数に用いるため、基準信号fが放送波のIFと干渉するのを回避して、放送波の伝送用の同軸ケーブルを用いて、基準信号fを容易に受信できる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。

前述の実施形態では、第2分波器16は、ポートAとポートBとに共通の周波数帯を設けたが、チャンネルの分断を回避する手段はこれには限られない。
例えば、第2分波器16は、基準周波数(f)以下であり、かつ、BSチャンネル帯域の境界である周波数を算出し、第2BS左旋IFを、この境界の周波数よりも低い周波数からなる第3BS左旋IF、及びこの境界の周波数よりも高い周波数からなる第4BS左旋IFに分波してもよい。これにより、IFに使用される周波数帯域幅が縮小される。
【0070】
受信装置1は、衛星放送受信アンテナ2と一体型であってもよい。また、受信装置1の各部は、複数の装置に分散されてもよい。
【0071】
本実施形態では、主に受信装置の構成と動作について説明したが、本発明はこれに限られず、各構成要素を備え、衛星放送を受信するための方法、又はプログラムとして構成されてもよい。
【0072】
さらに、受信装置の機能を実現するためのプログラムをコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。
【0073】
ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータで読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0074】
さらに「コンピュータで読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時刻の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時刻プログラムを保持しているものも含んでもよい。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 受信装置
2 衛星放送受信アンテナ
3 受信機(放送波チューナ)
11 偏波分離部
12 第1周波数変換部
13 第2周波数変換部
14 第1分波器
15 可変周波数変換部(第3周波数変換部)
16 第2分波器
17 第4周波数変換部
18 合波器
19 サーキュレータ
20 混合器
21 電源部
151 周波数逓倍器
152 ミキサ
図1
図2
図3
図4
図5