特許第6257612号(P6257612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6257612ヒドラゾン部分を含有する有機色素及びそれらの色素増感太陽電池における使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6257612
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】ヒドラゾン部分を含有する有機色素及びそれらの色素増感太陽電池における使用
(51)【国際特許分類】
   C09B 26/02 20060101AFI20171227BHJP
   H01G 9/20 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   C09B26/02 ZCSP
   H01G9/20 113A
【請求項の数】8
【全頁数】58
(21)【出願番号】特願2015-519445(P2015-519445)
(86)(22)【出願日】2013年6月26日
(65)【公表番号】特表2015-528836(P2015-528836A)
(43)【公表日】2015年10月1日
(86)【国際出願番号】IB2013055252
(87)【国際公開番号】WO2014006544
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2016年6月23日
(31)【優先権主張番号】12174953.5
(32)【優先日】2012年7月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】イングマー ブルーダー
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト ゼント
(72)【発明者】
【氏名】シモーナ ウルニカイテ
(72)【発明者】
【氏名】タダス マリナウスカス
(72)【発明者】
【氏名】マリテ ダスケヴィツィエネ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィタウタス ゲタウティス
【審査官】 安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−120543(JP,A)
【文献】 特開2008−177137(JP,A)
【文献】 特表2012−507169(JP,A)
【文献】 特開2004−146421(JP,A)
【文献】 特開平06−097476(JP,A)
【文献】 特開平01−168070(JP,A)
【文献】 特開平06−097479(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1453266(CN,A)
【文献】 特開平05−295362(JP,A)
【文献】 特開2006−076894(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/008468(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102010045797(DE,A1)
【文献】 特開2002−020248(JP,A)
【文献】 特開2003−107762(JP,A)
【文献】 特開2003−162076(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/045253(WO,A1)
【文献】 Lygaitis, Ramunas et.al.,Hole-transporting hydrazones,Chemical Society reviews,英国,The Royal Society of Chemistry,2008年,vol.37 No.(4),770-788
【文献】 Synthetic Metals,2009年,159,223-227
【文献】 Kharkharov, A. A. et.al.,Absorption spectra and structure of molecules. VI.,Журнал Общей Химии (Zhurnal Obshchei Khimii),SU,1959年,vol.29,3042-3048
【文献】 Synthetic Metals,2007年,157,968-973
【文献】 Synthetic Metals,2005年,155,599-605
【文献】 Synthetic Metals,2003年,138,457-461
【文献】 Synthetic Metals,2009年,159,1695-1700
【文献】 Organic Letters,2006年,8(11),2221-2224
【文献】 Chemistry Letters,2000年,(11),1298-1299
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 26/02
H01G 9/20
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】
[式中、
100及びR200は、それぞれ独立して、水素、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接しない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキル、C5〜C7−シクロアルキル、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル又はアリールオキシ−C1〜C10−アルキルであり、
Dは、少なくとも1つの炭素−炭素もしくは炭素−ヘテロ原子の二重結合及び/又は少なくとも1つの縮合していないもしくは縮合した炭素環もしくは複素環を含有するm価の供与体部分であり、
Aは、少なくとも1つの炭素−炭素もしくは炭素−ヘテロ原子の二重結合及び/又は少なくとも1つの縮合していないもしくは縮合した炭素環もしくは複素環を含有する受容体部分であり、
mは、1、2又は3の値であり、
かつ供与体部分D及び受容体部分Aは、互いにπ−共役しており、
ここで、一般式Iにおける供与体部分Dが、
m=1の場合に、
【化2】
[式中、
110、R120及びR130は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接しない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキル、C5〜C7−シクロアルキル、C1〜C10−アルコキシ、C1〜C10−アルキルアミノ、ジ(C1〜C10−アルキル)アミノ、C1〜C10−アルキルアミノスルホニルアミノ、ジ(C1〜C10−アルキル)アミノスルホニルアミノ、C1〜C10−アルキルスルホニルアミノ、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル又は−NHCOR170もしくは−NHCOOR170の基であり、
140、R150及びR160は、それぞれ独立して、水素、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接しない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキル、C5〜C7−シクロアルキル、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキルであり、又はR140及びR160又はR150及びR160が隣接する炭素原子に結合している場合に、これらの対の基が、これらが結合される炭素原子と一緒に、1つのCH2基が酸素原子に置き換えられていてよい5員環又は6員環を形成してよく、
170は、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、又はC2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキルであり、かつm=2のときで2つの部分の場合に、互いに独立して異なってよく、
210、R220、R230及びR240は、それぞれ独立して、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接しない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキル、C5〜C10−シクロアルキルであり、又はR210及びR220及び/又はR230及びR240は、それらが結合される窒素原子と一緒に、窒素原子に隣接しない1つのCH2基が酸素原子に置き換えられていてよい5員環又は6員環を形成し、又はNR210220及びR110が隣接する炭素原子に結合する場合に、R110及びR210又はR110及びR220は、部分NR210220の窒素原子及び部分NR210220及びR110が結合する炭素原子と一緒に、窒素原子に隣接しない1つのCH2基が酸素原子に置き換えられていてよい5員環又は6員環を形成し、その5員環又は6員環は、他の5員又は6員の飽和又は不飽和の環と縮合してよく、
250及びR260は、それぞれ独立して、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接しない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキル、C5〜C7−シクロアルキル、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル又はアリールオキシ−C1〜C10−アルキルであり、
かつ
ZはO又はSである]からなる群から選択され、
m=2の場合に、
【化3】
[式中、R170は、前記の意味を有し、かつ2つの部分の場合に、互いに独立して異なってよい]からなる群から選択され、
並びに、m=3の場合に、
【化4】
[式中、R170は前記の意味を有する]からなる群から選択され、及び
一般式Iにおける受容体部分Aが、式Ia:
【化5】
[式中、A*は、
【化6】
からなる群から選択される部分を示し、
*は、式Iaの基の二重結合が結合する位置を示し、
310及びR320は、それぞれ独立して、水素、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキル、又はC5〜C7−シクロアルキルであり、
330は、水素、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキル、部分的にフッ素化されたC1〜C10−アルキル、過フッ素化されたC1〜C10−アルキル、C5〜C7−シクロアルキル、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル又はアリールオキシ−C1〜C10−アルキルであり、
340は、水素、NO2、CN、COR350、COOR350、SO2350又はSO3350であり、
350は、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、又はC2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキルであり、
410は、水素、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよく、かつヒドロキシル、メルカプト、ハロゲン、シアノ、ニトロ、−COOM及び/又は−COOR420によって一置換又は多置換されていてよいC1〜C10−アルキル、C5〜C7−シクロアルキル、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、又は−NHCOR420もしくは−N(COR4202の基であり、ここで後者の2つのR420は同一又は異なってよく、
Xは、独立して、CH又はNであり、
Yは、O、C(CN2)、C(CN)(COOM)又はC(CN)(COOR420)であり、
Mは、アルカリ金属カチオン又は[NR4204+であり、かつ
420は、水素、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、又はC2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキルである]の基である]の化合物。
【請求項2】
一般式Iにおいて、
100が、水素又はC1〜C4−アルキルであり、かつ
200が、アリール又はC2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接しない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキルである、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
一般式Iにおける供与体部分Dが、
m=1の場合に、
【化7】
からなる群から選択され、
m=2の場合に、
【化8】
からなる群から選択され、
並びにm=3の場合に、
【化9】
からなる群から選択され、
かつ、110、R120、R130、R140、R150、R160、R170、R210、R220、R230、R240及びR250は、請求項1に定義した通りの意味を有する
請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
一般式Iにおける供与体部分Dが、
m=1の場合に、
部分:
【化10】
[式中、
110は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキル、C5〜C7−シクロアルキル、C1〜C10−アルコキシ、C1〜C10−アルキルアミノ、ジ(C1〜C10−アルキル)アミノ、C1〜C10−アルキルアミノスルホニルアミノジ(C1〜C10−アルキル)アミノスルホニルアミノ、C1〜C10−アルキルスルホニルアミノ、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル又は−NHCOR170もしくは−NHCOOR170の基であり、
170は、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、又はC2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキルであり、かつ
210及びR220は、それぞれ独立して、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキル、C5〜C10−シクロアルキルであり、又はR210及びR220は、それらが結合される窒素原子と一緒に、窒素原子に隣接していない1つのCH2基が酸素原子に置き換えられてよい5員環又は6員環を形成し、又はNR210220及びR110が隣接する炭素原子に結合する場合に、R110及びR210又はR110及びR220は、部分NR210220の窒素原子及び部分NR210220及びR110が結合される炭素原子と一緒に、窒素原子に隣接しない1つのCH2基が酸素原子に置き換えられてよい5員環又は6員環を形成し、その5員環又は6員環は、他の5員又は6員の飽和又は不飽和の環と縮合していてよい]であり、
m=2の場合に、
【化11】
[式中、R170は前記の意味を有する]からなる群から選択され、
並びにm=3の場合に、
部分
【化12】
である、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
一般式Iにおける受容体部分Aが、
【化13】
[式中、
340は、水素、NO2、CN、COR350、COOR350、SO2350又はSO3350であり、
350は、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、又はC2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキルであり、
410は、水素、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよく、かつヒドロキシル、メルカプト、ハロゲン、シアノ、ニトロ、−COOM及び/又は−COOR420によって一置換又は多置換されていてよいC1〜C10−アルキル、C5〜C7−シクロアルキル、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、又は−NHCOR420もしくは−N(COR4202の基であり、ここで後者の2つのR420は同一又は異なってよく、
Mは、アルカリ金属カチオン又は[NR4204+であり、かつ
420は、水素、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、又はC2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキルである]である、
請求項1からまでのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
一般式Iにおける受容体部分Aが、
【化14】
[式中、
340は、水素、NO2、CN、COR350、COOR350、SO2350又はSO3350であり、
350は、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、又はC2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキルであり、
410は、アリール、又はC2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよく、かつヒドロキシル、−COOM又は−COOR420によって末端で置換されているC1〜C10−アルキルであり、
Mは、アルカリ金属カチオン又は[NR4204+であり、かつ
420は、水素、又はC2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキルである]である、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の式Iの化合物の、色素増感太陽電池の製造のための使用。
【請求項8】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の式Iの化合物を含む色素増感太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式I
【化1】
[式中、R100及びR200は、互いに独立して、水素、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接しない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキル、C5〜C7−シクロアルキル、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル又はアリールオキシ−C1〜C10−アルキルであり、Dは、少なくとも1つの炭素−炭素もしくは炭素−ヘテロ原子の二重結合及び/又は少なくとも1つの縮合していないもしくは縮合した炭素環もしくは複素環を含有するm価(m=1、2又は3)供与体部分であり、Aは、少なくとも1つの炭素−炭素もしくは炭素−ヘテロ原子の二重結合及び/又は少なくとも1つの縮合していないもしくは縮合した炭素環もしくは複素環を含有する受容体部分であり、かつ供与体部分D及び受容体部分Aは、互いにπ−共役している]の化合物に関する。
【0002】
さらに、本発明は、色素増感太陽電池を製造するための式Iの化合物の使用に、及び式Iの化合物を含む色素増感太陽電池に関する。
【0003】
太陽電池における太陽エネルギーの電気エネルギーへの直接変換は、半導体材料の内部光効果、すなわち光子の吸収による電子正孔対の発生、及びp−n共役又はショットキー接触での陰電荷キャリア及び正電荷キャリアの分離に基づく。生じた光電圧は、外部回路における光電流をもたらすことができ、太陽電池はその力を伝える。
【0004】
金属酸化物の薄層又は薄膜は、安価な固体半導体材料(n−半導体)を構成することが公知であるが、しかしそれらの吸収は、大きいバンドギャップのために、典型的に電磁スペクトルの可視領域内でない。太陽電池における使用のために、金属酸化物を、したがって、太陽光の波長範囲で、すなわち300〜2000nmで吸収し、かつ電子励起状態で、半導体の伝導バンド中に電子を注入する、光増感剤と組み合わせる。さらに太陽電池中で使用され、かつ対電極で還元される酸化還元系を使用して、電子を増感剤に再利用し、そして再生される。
【0005】
太陽電池において使用するための特定の目的は、ナノ結晶多孔質層の形で使用される、半導体酸化亜鉛、二酸化物及び特に二酸化チタンである。これらの層は、増感剤で被覆した大きい表面積を有し、その結果、太陽光の高い吸収が得られる。
【0006】
半導体材料として二酸化チタンを基礎とする色素増感太陽電池(DSC)は、例えばUS−A−4 927 721号、Nature 353, p. 737−740(1991)及びUS−A−5 350 644号において、並びにNature 395, p. 583−585(1998)及びEP−A−1 176 646号においても記載されている。これらの太陽電池は、溶解した形で存在する増感剤及びヨウ素/ヨウ化物酸化還元系、又はスピロビフルオレンを基礎とする非晶質有機p−伝導体として、酸基によって二酸化チタン層に結合されている、遷移金属錯体、特にルテニウム錯体の単分子膜を含有する。
【0007】
分子増感剤としてのルテニウム錯体は、液体電解質を基礎とする装置における優れた太陽から電気へのパワー変換効率(PCE)を示し、その際、PCEは、以下によって示されるような標準AM1.5G完全太陽光下で11%を越える。
【0008】
近年、金属を有さない有機染料は、それらがあらゆる毒性又は高価な金属を含まないように大いに注意を払い、かつそれらの特性は、容易な構造改質により簡単に変化される。さらに、それらは、一般に、Ru(II)ポリピリジルと比較した場合に非常に高い減衰係数を有し、正孔輸送材料、例えば、G. K. Mor、S. Kim、M. Paulose、O. K. Varghese、K. Shankar、J. Basham及びC. A. Grimes、Nano Lett.、2009、9、4250によって示されているP3HT、又はH. J. Snaith、A. J. Moule、C. Klein、K. Meerholz、R. H. Friend、M. Graetzel、Nano Lett.、2007、7、3372によって示されているスピロ−MeOTADとの組合せでの固体状態のDSCにおける使用に優れている。
【0009】
US−A−6 359 211号は、二酸化チタン半導体に対する安全のためにアルキレン基により結合したカルボキシル基を有するシアニン、オキサジン、チアジン及びアクリジン染料を記載している。
【0010】
増感剤としてペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸誘導体が、日本の文献JP−A−10−189065号、2000−243463号、2001−093589号、2000−100484号及び10−334954号において、並びにNew J. Chem. 26、p. 1155−1160(2002)において考察されている。
【0011】
現在最も広範に考察されている金属を有さない増感剤は、シアノアクリレートアンカー基を呈する染料を含む。例えば、Kim, S.;Lee, J.K.; Kang, S.O.; Yum, J.H.; Fantacci, S.; DeAngelis, F.; Di Censo, D.; Nazeerruddin, M.K.; Gratzel, M. JACS 2006, 128, 16701は、
【化2】
の化合物を記載していており、及びSolar Energy Materials & Solar Cells 2009、93、1143は、
【化3】
の化合物を記載している。
【0012】
ナフタレンモノイミドアンカー基を有する染料は、文献WO 2008/132103号A1において記載されている。
【0013】
現在のところ、DSCのために最も効率的な金属を有さない有機染料は、D−π−A(供与体部分 − π−共役架橋部分 − 受容体部分)構造に基づく。この構造で、新たな染料構造を設計し、吸収スペクトルを広げ、エネルギーレベルを調整し、かつ分子内電荷分離を完全にすることが可能である。
【0014】
π−共役架橋によって連結された電子供与体及び受容体部分を特徴付ける有機染料を使用するDSCは、液体電解質で〜10%の効率、及び固体HTMで6%までに達し、前者について
によって、及び後者について
によって示されている。
【0015】
広い範囲の供与体が調査されており、例えばテトラヒドロキノリン、インドリン、クマリン、トリアリールアミン、ヘテロアントラセン、カルバゾール、N,N−ジアルキルアニリン及びフルオリン誘導体である。これらの染料の大部分は、π−共役架橋として種々の長さのチオフェン誘導体又はエテニル断片を含み、例えば
において記載されている。
【0016】
それらの架橋単位は、非常に効率的であると示されるが、しかしながら、それらの合成は、通常、オルガノチン試薬、オルガノリチウム試薬、又はオルガノマグネシウム試薬、高価なパラジウム触媒又はニッケル触媒、厳密な無水物、及び酸素を有さない条件を含む。
【0017】
ヒドラゾン誘導体は、一方で、それらの安い費用、単純な合成、及び早い電荷輸送能について知られており、R. Lygaitis、V. Getautis、J. V. Grazulevicius、Chem. Soc. Rev. 2008、37、770によって示されている。
【0018】
ヒドラゾン部分を含む他の染料は、P. Shen、X. Liu、S. Jiang、Y. Huang、L. Yi、B. Zhao、S. Tan、Org. Electronics、12(2011)、1992〜2002及びP. Shen、X. Liu、S. Jiang、L. Wang、L. Yi、D. Ye、B. Zhao、S. Tan、Dyes並びにPigments、92(2012)、1042〜1051において記載されている。これらの文献において、ヒドラゾン部分は、しかしながら、π−共役架橋を構成せず、むしろ供与体部分の一部として機能する。
【0019】
前記の点で、本発明の主題は、DSC、及び有利には長期間の安定性に対して非常に良好な手段での非常に良好な量子効率に対する良好さを有するsDSCにおける適用のために、さらに効率的な、D−π−A構造に基づく金属を有さない有機染料を提供することである。
【0020】
従って、式I
【化4】
[式中、R100及びR200は、それぞれ独立して、水素、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接しない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキル、C5〜C7−シクロアルキル、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル又はアリールオキシ−C1〜C10−アルキルであり、Dは、少なくとも1つの炭素−炭素もしくは炭素−ヘテロ原子の二重結合及び/又は少なくとも1つの縮合していないもしくは縮合した炭素環もしくは複素環を含有するm価の供与体部分であり、Aは、少なくとも1つの炭素−炭素もしくは炭素−ヘテロ原子の二重結合及び/又は少なくとも1つの縮合していないもしくは縮合した炭素環もしくは複素環を含有する受容体部分であり、かつ供与体部分D及び受容体部分Aは、互いにπ−共役している]の化合物が合成される。
【0021】
本明細書の記載内容において、C1〜C10−アルキルは、直鎖又は分枝鎖のアルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル及びn−デシルを意味すると解されるべきである。好ましい基は、メチル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル及び2−エチルヘキシルであり、挙げた基において、場合により、1つ以上の水素原子についてフッ素原子に置き換えられることが可能であり、その結果これらの基は、部分的にフッ素化又は過フッ素化されてもよい。
【0022】
2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接しない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキルは、例えば2−メトキシエチル、2−メトキシプロピル及び3−メトキシプロピル、2−エトキシエチル、2−エトキシプロピル及び3−エトキシプロピル、2−プロポキシエチル、2−プロポキシプロピル及び3−プロポキシプロピル、2−ブトキシエチル、2−ブトキシプロピル及び3−ブトキシプロピル、3,6−ジオキサヘプチル、並びに3,6−ジオキサオクチルである。
【0023】
1〜C10−アルコキシ基、C1〜C10−アルキルアミノ基、ジ(C1〜C10−アルキル)アミノ基、C1〜C10−アルキルアミノ−スルホニルアミノ基、ジ(C1〜C10−アルキル)アミノスルホニルアミノ基、及びC1〜C10−アルキルスルホニルアミノ基は、前記C1〜C10−アルキル基から相応して誘導され、ここで、ジ(C1〜C10−アルキル)アミノ基の場合に、同一又は異なるC1〜C10−アルキル基がアミノ基上に存在してよい。例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、n−ヘプトキシ、n−オクトキシ、2−エチルヘキソキシ、n−ノノキシ及びn−デコキシ、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n−ブチルアミノ、イソブチルアミノ、sec−ブチルアミノ、tert−ブチルアミノ、n−ペンチルアミノ、n−ヘキシルアミノ、n−ヘプチルアミノ、n−オクチル−アミノ、2−エチルヘキシルアミノ、n−ノニルアミノ及びn−デシルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ(n−プロピル)アミノ、ジイソプロピルアミノ、ジ(n−ブチル)アミノ、ジイソブチルアミノ、ジ(sec−ブチル)アミノ、ジ(tert−ブチル)アミノ、ジ(n−ペンチル)アミノ、ジ(n−ヘキシル)アミノ、ジ(n−ヘプチル)アミノ、ジ(n−オクチル)アミノ、ジ(2−エチルヘキシル)アミノ、ジ(n−ノニル)アミノ及びジ(n−デシル)アミノ、並びに相応する混合ジアルキルアミノ基、例えばメチルエチルアミノとメチル−n−デシルアミノ、エチル−n−プロピルアミノとエチル−n−デシルアミノ等、並びにメチルアミノスルホニルアミノ、エチルアミノスルホニルアミノ、n−プロピル−アミノスルホニルアミノ、イソプロピルアミノスルホニルアミノ、n−ブチルアミノスルホニルアミノ、イソブチルアミノスルホニルアミノ、sec−ブチルアミノスルホニルアミノ、tert−ブチルアミノスルホニルアミノ、n−ペンチルアミノスルホニルアミノ、n−ヘキシルアミノスルホニルアミノ、n−ヘプチルアミノスルホニルアミノ、n−オクチルアミノスルホニルアミノ、2−エチルヘキシルアミノスルホニルアミノ、n−ノニルアミノスルホニルアミノ及びn−デシルアミノスルホニルアミノ、ジメチルアミノスルホニルアミノ、ジエチルアミノスルホニルアミノ、ジ(n−プロピル)アミノスルホニルアミノ、ジイソプロピルアミノスルホニルアミノ、ジ(n−ブチル)アミノスルホニルアミノ、ジイソブチルアミノスルホニルアミノ、ジ(sec−ブチル)アミノスルホニルアミノ、ジ(tert−ブチル)アミノスルホニルアミノ、ジ(n−ペンチル)アミノスルホニルアミノ、ジ(n−ヘキシル)アミノスルホニルアミノ、ジ(n−ヘプチル)アミノスルホニルアミノ、ジ(n−オクチル)アミノスルホニルアミノ、ジ(2−エチルヘキシル)アミノスルホニルアミノ、ジ(n−ノニル)アミノスルホニルアミノ及びジ(n−デシル)アミノスルホニルアミノ、並びに相応する混合ジアルキルアミノ基を含む基、例えばメチルエチルアミノスルホニルアミノとメチル−n−デシルアミノスルホニルアミノ、エチル−n−プロピルアミノスルホニルアミノとエチル−n−デシルアミノスルホニルアミノ等、n−ノニル−n−デシル−アミノスルホニルアミノまで、並びにメチルスルホニルアミノ、エチルスルホニルアミノ、n−プロピルスルホニルアミノ、イソプロピルスルホニルアミノ、n−ブチルスルホニルアミノ、イソブチルスルホニルアミノ、sec−ブチルスルホニルアミノ、tert−ブチルスルホニルアミノ、n−ペンチルスルホニルアミノ、n−ヘキシルスルホニルアミノ、n−ヘプチルスルホニルアミノ、n−オクチルスルホニルアミノ、2−エチルヘキシルスルホニルアミノ、n−ノニルスルホニルアミノ及びn−デシルスルホニルアミノを含む。
【0024】
5〜C7−シクロアルキルは、特にシクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルを意味すると解される。
【0025】
本発明の記載内容において、アリールは、特に炭素原子6〜30個、有利には炭素原子6〜18個の基礎骨格を有するアリール基、アリール単位又アリール基であり、かつ非置換であるか置換されていてよい単環式又は多環式芳香族炭化水素基を含む。アリールは、有利には、フェニル、トリル、キシリル、メシチル、ドリル(duryl)、ナフチル、キノリニル、フルオレニル、カルバゾールイル、アントラセニル、フェナントレニル、スチルビル(stilbyl)、4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル又はナフチルであり、より有利には、フェニル又はナフチルであり、その際、これらのアリール基は、置換される場合に、一般に、ハロゲン、C1〜C10−アルキル、C1〜C10−アルコキシ、シアノ、ニトロ、−C(Ra)=N−NRab、−SO2NRab、−NHSO2ab、−CONRab及び−CO2aからなる基の群から選択される、1個、2個、3個、4個又は5個の、有利には1個、2個又は3個の置換基を有してよく、ここで、C1〜C10−アルコキシ基は、前記で挙げたC1〜C10−アルキル基に由来する。Ra及びRbは、有利には、それぞれ独立して、水素、アリール、有利にはフェニル、又はC2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接しない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキルである。
【0026】
アリール−C1〜C10−アルキル及びアリールオキシ−C1〜C10−アルキル基は、アリール基又はアリールオキシ基によって直鎖又は分枝鎖アルキル鎖の1つの水素原子を形式的に置換することによる、前記で挙げたアルキル及びアリール基に由来する。好ましい基は、ここで、ベンジル及び直鎖アリールオキシ−C1〜C10−アルキルであり、その際、C2〜C10−アルキル基の場合に、アリールオキシ基は、有利には末端に結合されている。
【0027】
本発明の記載内容において、Mの定義としてのアルカリ金属カチオンは、有利には、リチウム、ナトリウム、セシウム又はカリウムであり、より有利にはナトリウムである。
【0028】
本発明の記載内容において、ハロゲンは、フッ素、塩素、ホウ素又はヨウ素を示し、特にフッ素及び塩素を示す。
【0029】
一般式において、
100が、水素又はC1〜C4−アルキルであり、かつ
200が、アリール、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接しない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキルである、
式Iの化合物が好ましい。
【0030】
さらに、前記の選択に関しても、一般式Iにおける供与体部分Dが、
m=1の場合に、
【化5】
[式中、
110、R120及びR130は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接しない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキル、C5〜C7−シクロアルキル、C1〜C10−アルコキシ、C1〜C10−アルキルアミノ、ジ(C1〜C10−アルキル)アミノ、C1〜C10−アルキルアミノ又はジ(C1〜C10−アルキル)アミノスルホニルアミノ、C1〜C10−アルキルスルホニルアミノ、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル又は−NHCOR170又は−NHCOOR170の基であり、
140、R150及びR160は、それぞれ独立して、水素、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接しない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキル、C5〜C7−シクロアルキル、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキルであり、又はR140及びR160又はR150及びR160が隣接する炭素原子に結合している場合に、これらの対の基が、それらが結合される炭素原子と一緒に、1つのCH2基が酸素原子に置き換えられていてよい5員環又は6員環を形成してよく、
170は、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、又はC2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接しない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキルであり、
210、R220、R230及びR240は、それぞれ独立して、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接しない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキル、C5〜C10−シクロアルキルであり、又はR210及びR220及び/又はR230及びR240は、それらが結合される窒素原子と一緒に、窒素原子に隣接しない1つのCH2基が酸素原子に置き換えられていてよい5員環又は6員環を形成し、又はNR210220及びR110が隣接する炭素原子に結合する場合に、R110及びR210又はR110及びR220は、部分NR210220の窒素原子及び部分NR210220及びR110が結合する炭素原子と一緒に、窒素原子に隣接しない1つのCH2基が酸素原子に置き換えられていてよい5員環又は6員環を形成し、その5員環又は6員環は、他の5員又は6員の飽和又は不飽和の環と縮合してよく、
250及びR260は、それぞれ独立して、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接しない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキル、C5〜C7−シクロアルキル、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル又はアリールオキシ−C1〜C10−アルキルであり、
かつ
ZはO又はSである]からなる群から選択され、
m=2の場合に、
【化6】
[式中、R170は、前記の意味を有し、かつ2つの部分の場合に、互いに独立して異なってよい]からなる群から選択され、
並びに、m=3の場合に、
【化7】
[式中、R170は前記の意味を有する]からなる群から選択される化合物が好ましい。
【0031】
さらに、R100及びR200に関する前記選択に関しても、一般式Iにおける供与体部分Dが、
m=1の場合に、
【化8】
からなる群から選択され、
m=2の場合に、
【化9】
からなる群から選択され、
並びにm=3の場合に、
【化10】
からなる群から選択される化合物が好ましく、可変部は前記の意味を有する。
【0032】
100及びR200に関連する前記選択に関しても、一般式Iにおける供与体部分Dが、
m=1の場合に、
部分:
【化11】
[式中、
110は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキル、C5〜C7−シクロアルキル、C1〜C10−アルコキシ、C1〜C10−アルキルアミノ、ジ(C1〜C10−アルキル)アミノ、C1〜C10−アルキルアミノ−又はジ(C1〜C10−アルキル)アミノスルホニルアミノ、C1〜C10−アルキルスルホニルアミノ、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル又は−NHCOR170もしくは−NHCOOR170の基であり、
170は、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、又はC2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキルであり、
かつ
210及びR220は、それぞれ独立して、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキル、C5〜C10−シクロアルキルであり、又はR210及びR220は、それらが結合される窒素原子と一緒に、窒素原子に隣接していない1つのCH2基が酸素原子に置き換えられてよい5員環又は6員環を形成し、又はNR210220及びR110が隣接する炭素原子に結合する場合に、R110及びR210又はR110及びR220は、部分NR210220の窒素原子及び部分NR210220及びR110が結合される炭素原子と一緒に、窒素原子に隣接しない1つのCH2基が酸素原子に置き換えられてよい5員環又は6員環を形成し、その5員環又は6員環は、他の5員又は6員の飽和又は不飽和の環と縮合してよい]であり、
m=2の場合に、
【化12】
[式中、R170は前記の意味を有する]からなる群から選択され、
並びにm=3の場合に、
部分
【化13】
である、化合物が特に好ましい。
【0033】
さらに、供与体部分D及びR100及びR200に関する前記選択に関しても、一般式Iにおける受容体部分Aが、式Ia:
【化14】
[式中、A*は、
【化15】
からなる群から選択される部分を示し、
*は、式Iaの基の二重結合が結合する位置を示し、
310及びR320は、それぞれ独立して、水素、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキル、又はC5〜C7−シクロアルキルであり、
330は、水素、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキル、部分的にフッ素化されたC1〜C10−アルキル、過フッ素化されたC1〜C10−アルキル、C5〜C7−シクロアルキル、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル又はアリールオキシ−C1〜C10−アルキルであり、
340は、水素、NO2、CN、COR350、COOR350、SO2350又はSO3350であり、
350は、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、又はC2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキルであり、
410は、水素、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよく、かつヒドロキシル、メルカプト、ハロゲン、シアノ、ニトロ、−COOM及び/又は−COOR420によって一置換又は多置換されていてよいC1〜C10−アルキル、C5〜C7−シクロアルキル、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、又は−NHCOR420又は−N(COR4202の基であり、ここで後者の2つのR420は同一又は異なってよく、
Xは、独立して、CH又はNであり、
Yは、O、C(CN2)、C(CN)(COOM)又はC(CN)(COOR420)であり、
Mは、アルカリ金属カチオン又は[NR4204+であり、かつ
420は、水素、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、又はC2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキルである]の基である化合物が好ましい。
【0034】
さらに、供与体部分D及びR100及びR200に関する前記選択に関しても、一般式Iにおける受容体部分Aが、
【化16】
[式中、
340は、水素、NO2、CN、COR350、COOR350、SO2350又はSO3350であり、
350は、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、又はC2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキルであり、
410は、水素、C2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよく、かつヒドロキシル、メルカプト、ハロゲン、シアノ、ニトロ、−COOM及び/又は−COOR420によって一置換又は多置換されていてよいC1〜C10−アルキル、C5〜C7−シクロアルキル、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、又は−NHCOR420又は−N(COR4202の基であり、ここで後者の2つのR420は同一又は異なってよく、
Mは、アルカリ金属カチオン又は[NR4204+であり、かつ
420は、水素、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、又はC2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキルである]である化合物が好ましい。
【0035】
特に、供与体部分D及びR100及びR200に関する前記選択に関しても、一般式Iにおける受容体部分Aが、
【化17】
[式中、
340は、水素、NO2、CN、COR350、COOR350、SO2350又はSO3350であり、
350は、アリール、アリール−C1〜C10−アルキル、アリールオキシ−C1〜C10−アルキル、又はC2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキルであり、
410は、アリール、又はC2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよく、かつヒドロキシル、−COOM又は−COOR420によって末端で置換されているC1〜C10−アルキルであり、
Mは、アルカリ金属カチオン又は[NR4204+であり、かつ
420は、水素、又はC2−アルキルの場合に1つの酸素原子で及びC3〜C10−アルキルの場合に1つの酸素原子で又は2つの隣接していない酸素原子で中断されていてよいC1〜C10−アルキルである]である化合物が好ましい。
【0036】
製造の結果として、個々の場合に、明確に示された化合物が得られないが、しかし、むしろそれらの異性体化合物、又は異性体の混合物を得ることも可能である。本発明に従って、一般式Iの異性体化合物又は式Iの相応する好ましい化合物及び特に好ましい化合物の異性体、並びに異性体の混合物も、従って含まれる。
【0037】
一般式Iの化合物の製造は、当業者に公知のよく確立された経路に従う。典型的に、m個のアルデヒド断片(m=1、2又は3)を有する供与体部分を、ヒドラジン誘導体又は式
【化18】
と反応させて、所望のヒドラゾンを提供する。
【0038】
式Ia
【化19】
の受容体部分を含む好ましい化合物について、好ましい経路は、
フルオロ−ベンズアルデヒドとヒドラゾンとを、式
【化20】
に従って反応させ、そしてさらに、得られたアルデヒドと部分A*の基礎となるC−H酸性化合物とを反応させることを含む。
【0039】
前記の例示したA*部分A01〜A08に関して、これらの抽出物化合物は、
【化21】
である(同じ順序で)。
【0040】
本発明による化合物の製造のさらなる詳細を、実施例の段落から得ることができる。
【0041】
本発明の記載内容における請求も、色素増感太陽電池を製造するための、式Iの化合物及びそれらの前記選択物の使用である。
【0042】
本発明よる他の請求は、式Iの化合物及びそれらの前記選択物を含む色素増感太陽電池である。
【0043】
DSCは、一般に、次の要素を含む:導電性層(作用電極又は陽極の一部又はそれらを形成する)、一般に半導性金属酸化物及び感光性色素を含む感光層、電荷移動層、及び他の導電性層(対電極又は陰極の一部又はそれらを形成する)。
【0044】
sDSCの構成のさらなる詳細に関して、特に、WO 2012/001628号A1を参照でき、参照をもって本明細書に完全に組み込まれたものとする。
【0045】
実施例
A)本発明による化合物の製造
材料及び方法
化学物質を、Aldrich及びTCI Europeから購入し、そしてさらなる精製なしに受け取ったまま使用した。2−ヨードフルオレン(S. H. Lee、T. Nakamura、T. Tsutsui、Org. Lett. 2001、3、2005)、9,9−ジメチル−2−ヨードフルオレン(C. H. Huang、S. H. Yang、K. B. Chen、C. S. Hsu、J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 2006、44、519)、及びN,N−ビス(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)アニリン(H. Doi、M. Kinoshita、K. Okumoto、Y. Shirota、Chem. Mater. 2003、15、1080)を、引用文献に従って合成した(4−[ビス(4−メチルフェニル)−アミノ]ベンズアルデヒドをTCI Europeから購入した)。
【0046】
1H及び13C NMRスペクトルを、Varian Unity Inova(300MHz)分光計で室温で得た。全てのデータを、δ(ppm)でのケミカルシフトとして得て、(CH34Si(TMS、0ppm)を内部基準として使用した。反応生成物の経過を、ALUGRAM SIL G/UV254プレート上でTLCによって監視し、そしてI2又はUV光で現像した。シリカゲル(等級9385、230〜400メッシュ、60Å、Aldrich)を、カラムクロマトグラフィーのために使用した。元素分析をExeter Analytical CE−440 Elementalで実施した。IR−分光法を、Perkin Elmer Spectrum BX II FT−IR Systemで、KBrペレットを使用して実施した。質量スペクトル(MS)を、Aligent 110(VLを備えたMSシリーズ)装置で記録した。UVスペクトルを、Perkin Elmer Lambda 35分光計で記録した。CHCl3中で調査した染料の10-4M溶液及び1mmの内部幅を有するマイクロセルを使用した。
【0047】
A1) 染料D1〜D9の製造
一般化方法
アルデヒド1とフェニルヒドラジンとの縮合で、ヒドラゾン2を得て
【化22】
ヒドラゾン2を、経路A)に従って、4−フルオロベンズアルデヒドとのアリール化反応に使用して化合物3を得るか、
経路A)
【化23】
又は、経路B)に従って、1−ブロモプロパンとアルキル化反応させ、そしてアルキル化中間体4をVilsmeier−Haack法によりホルミル化して、化合物5を得た。
経路B)
【化24】
【0048】
最終的に、アルデヒド3及び5とローダニン−3−酢酸との縮合で、染料ID−1276(D1)、ID−1261(D2)、ID−1300(D3)、ID−1332(D4)、ID−1464(D5)及びID−1509(D7)を、及びローダミン−3−安息香酸との縮合で、染料ID−1465(D6)を、それぞれ得た。反応経路における可変部Rは、特定の合成方法から明確に採用される前の可変部Rを示す。
【0049】
染料D1の製造
4−(4,4’−ジメチルジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド−N−4−(3−カルボキシメチル−4−オキソ−2−チオオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イリデンメチル)フェニル−N−フェニルヒドラゾン
【化25】
【0050】
化合物3(0.76g、1.54mmol;双方の基Rが4−メチルフェニルにあたる)、ローダニン−3−酢酸(0.35g、1.85mmol)及び酢酸アンモニウム(0.03g、0.46mmol)の混合物を、酢酸(5.0mL)中で3時間還流した。その後、水(15mL)を添加し、そしてその抽出をクロロホルムで行った。その有機層を、無水Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、そして溶剤を蒸発させた。その粗生成物を、7:18(v/v)のアセトン/ヘキサン、続いて7:1:17(v/v)のアセトン/メタノール/トルエンを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、染料D1を暗赤色の固体として収集した(0.46g、45%)。
【0051】
【0052】
染料D2の製造
a) 4−(4,4’−ジメチルジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド−N−フェニル−N−プロピルヒドラゾン(D2−1;双方の基Rが4−メチルフェニルにあたる化合物4に相応する)
【化26】
【0053】
無水テトラヒドロフラン(3mL)と1−ブロモプロパン(1mL)との混合物中で溶解した化合物2(1.45g、3.70mmol;双方の基Rが4−メチルフェニルにあたる)の還流混合物に、粉末化KOH(0.62g、11.11mmol)及び無水Na2SO4(0.21g、1.48mmol)を、1時間毎に等しい割合で3回添加した。3.5時間後に、その反応混合物を酢酸エチルで、そして中性になるまで蒸留水で抽出した。その有機層を、無水Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、そして酢酸エチルを取り出した。残りを、2−プロパノールとn−ヘキサン(1:1)との混合物で洗浄して、黄色い固体として化合物D2−1を得た(1.53g、96%)。
【0054】
【0055】
b) 4−(4,4’−ジメチルジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド−N−(4−ホルミル)フェニル−N−プロピルヒドラゾン(D2−2)
【化27】
【0056】
オキシ塩化リン(0.16mL、1.73mmol)を、DMF(0.85mL、11.04mmol)に、混合物の温度を約5℃まで上げずに滴加した。DMF(2.15mL)中で17(0.50g、1.15mmol)の溶液を添加し、そして得られた混合物を60℃で30分間加熱した。温かい反応混合物を、氷水に注ぎ、酢酸ナトリウム(0.42g、5.19mmol)水溶液を添加することによって中和し、そして酢酸エチルで抽出した。その有機層を、無水Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、そして溶剤を蒸発させた。その粗生成物を、1.5:2:20(v/v)のアセトン/ジエチルエーテル/ヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、化合物D2−2を黄色い固体として収集した(0.18g、34%)。
【0057】
【0058】
c) 4−(4,4’−ジメチルジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド−N−4−(3−カルボキシメチル−4−オキソ−2−チオオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イリデンメチル)フェニル−N−プロピルヒドラゾン(D2)
【化28】
【0059】
D2−2(0.165g、0.35mmol)、ローダニン−3−酢酸(0.08g、0.11mmol)及び酢酸アンモニウム(0.01g、0.11mmol)の混合物を、酢酸(0.6mL)中で30分間還流した。その後、水(10mL)を添加し、そしてその抽出を酢酸エチルで行った。合した有機層を、水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、そして濾過した。溶剤の蒸発後に、その粗生成物を、23:2(v/v)のトルエン/メタノールを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、染料D2を暗赤色の固体として収集した(0.18g、80%)。
【0060】
【0061】
染料D3の製造
a) 4−[ビス(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)アミノ]ベンズアルデヒド(D3−1;双方の基Rが9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イルにあたる化合物1に相応する)
【化29】
【0062】
オキシ塩化リン(1.30mL、14.13mmol)を、DMF(1.1mL、14.13mmol)に、混合物の温度を約5℃まで上げずにポーション毎に添加した。そして、N,N−ビス(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)アニリン(4.50g、9.42mmol)を添加し、得られた混合物を90℃で4時間加熱した。温かい反応混合物を、氷水に注ぎ、そして、酢酸ナトリウム(3.47g、42.39mmol)水溶液を添加することによって中和した。酢酸エチル及び蒸留水で抽出した後に、その有機層を、無水Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、そして溶剤を蒸発させた。その粗生成物を、3:22(v/v)のアセトン/n−ヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、化合物D3−1を黄色い固体として収集した(4.20g、88%)。
【0063】
【0064】
b) 4−[ビス(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)アミノ]ベンズアルデヒド−N−フェニルヒドラゾン(D3−2;双方のRが9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イルにあたる化合物2に相応する)
【化30】
【0065】
トルエン(10mL)及び2−プロパノール(2mL)の混合物中で溶解した化合物D3−1(3.50g、6.91mmol)に、フェニルヒドラジン(1.00mL、10.16mmol)を添加した。その混合物を、アリールアルデヒドD3−1が消失するまで還流した(TLC、v/vでのアセトン/n−ヘキサン、1:4)。反応が完了した後に、溶剤を減圧下で取り出した。2−プロパノール(15mL)及びトルエン(4mL)の混合物を添加することで形成した20の黄色い結晶(3.58g、87%)を濾過し、そして2−プロパノールで洗浄した。粗生成物を、追加の精製なしに次の工程において使用した。
【0066】
c) 4−[ビス(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)アミノ]ベンズアルデヒド−N−(4−ホルミルフェニル)−N−フェニルヒドラゾン(D3−3;双方のRが9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イルにあたる化合物3に相当する)
【化31】
【0067】
化合物D3−2(3.19g、5.36mmol)、4−フルオロベンズアルデヒド(1.73mL、16.10mmol)及びK2CO3(4.45g、32.20mmol)の混合物を、25mLの無水DMF中でアルゴン雰囲気下で16時間還流した。室温まで冷却した後に、30mLの蒸留水を添加し、そして抽出を酢酸エチルで行った。その有機層を、水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥し、そして濾過した。溶剤の蒸発後に、その粗生成物を、10:1:14(v/v)のトルエン/酢酸エチル/n−ヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、化合物D3−3を黄色の固体として収集した(2.10g、56%)。
【0068】
【0069】
d) 4−[ビス(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)アミノ]ベンズアルデヒド−N−4−(3−カルボキシメチル−4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イリデンメチル)フェニル−N−フェニルヒドラゾン(D3)
【化32】
【0070】
化合物D3−3(0.70g、1.00mmol)、ローダニン−3−酢酸(0.23g、1.2mmol)及び酢酸アンモニウム(0.02g、0.29mmol)の混合物を、酢酸(7mL)中で3.5時間還流した。その後、20mLの水を添加し、そしてその抽出を酢酸エチルで行った。その有機層を、蒸留水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥し、そして濾過した。溶剤の蒸発後に、その粗生成物を、トルエン、続いて23:2(v/v)のトルエン/メタノールを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、染料D3を暗赤色の固体として収集した(0.58g、67%)。
【0071】
【0072】
染料D4の製造
a) 4−[ビス(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)アミノ]ベンズアルデヒド−N−フェニル−N−プロピルヒドラゾン(D4−1;双方の基Rが9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イルにあたる化合物4に相応する)
【化33】
【0073】
化合物2(3.05g、5.11mmol;双方の基Rが9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イルにあたる)の還流混合物に、無水THF(5mL)中で1−ブロモプロパン(2.77mL、30.66mmol)、粉末化KOH(1.06g、18.89mmol)及び無水Na2SO4(0.40g、2.81mmol)を、1時間毎に3回等しい割合で添加した。3.5時間後に、その反応混合物を酢酸エチルで、そして中性になるまで蒸留水で抽出した。その有機層を、無水Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、そして酢酸エチルを取り出した。その粗生成物を、3:22(v/v)のアセトン/n−ヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、化合物D4−1を黄色い固体として収集した(3.01g、92%)。
【0074】
【0075】
b) 4−[ビス(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)アミノ]ベンズアルデヒド−N−4−ホルミルフェニル−N−プロピルヒドラゾン(D4−2)
【化34】
【0076】
オキシ塩化リン(1.06mL、11.60mmol)を、DMF(5.70mL、74.07mmol)に、混合物の温度を約5℃まで上げずに滴加した。そして、DMF(14.5mL)中で22(5.00g、7.84mmol)の溶液を添加し、そして得られた混合物を60℃で50分間加熱した。温かい反応混合物を、氷水に注ぎ、酢酸ナトリウム(2.85g、34.80mmol)水溶液を添加することによって中和し、そして酢酸エチルで抽出した。その有機層を、無水Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、そして溶剤を蒸発させた。その粗生成物を、3:22(v/v)のアセトン/ヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、化合物D4−2を黄色い固体として収集した(1.16g、22%)。
【0077】
【0078】
c) 4−[ビス(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)アミノ]ベンズアルデヒド−N−4−(3−カルボキシメチル−4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イリデンメチル)フェニル−N−プロピルヒドラゾン(D4)
【化35】
【0079】
23(0.58g、0.88mmol)及びローダニン−3−酢酸(0.20g、1.05mmol)の混合物を、酢酸(3.0mL)中で2時間還流した。その後、水(15mL)を添加し、そしてその抽出を酢酸エチルで行った。その有機層を、蒸留水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥し、濾過し、そして溶剤を濾過した。その粗生成物を、トルエン、続いて23:2(v/v)のトルエン/メタノールを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、染料D4を暗赤色の固体として収集した(0.43g、58%)。
【0080】
【0081】
染料D5の製造
a) 4−(ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド−N−フェニルヒドラゾン(D5−1;双方の基Rがフェニルにあたる化合物2に相応する)
【化36】
【0082】
化合物D5−1を、Urnikaite S.、Daskeviciene M.、Malinauskas T.、Jankauskas V.、Getautis V.、Monast. Chem.、2009、140(12)、2005−2007に従って製造した。
【0083】
b) 4−(ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド−N−(4−ホルミル)フェニル−N−フェニルヒドラゾン(D5−2;双方の基Rがフェニルにあたる化合物3に相応する)
【化37】
【0084】
1(3.00g、8.25mmol)、4−フルオロベンズアルデヒド(2.66ml、24.76mmol)及びK2CO3(6.80g、49.52mmol)の混合物を、25mLの無水DMF中でアルゴン雰囲気下で15時間還流した。室温まで冷却した後に、30mLの蒸留水を添加し、そして抽出を酢酸エチルで行った。その有機層を、蒸留水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして濾過した。溶剤の蒸発後に、その粗生成物を、10:1:14(v/v)のトルエン/酢酸エチル/ヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、化合物D5−2を黄色の固体として収集した(1.98g、52%)。
【0085】
【0086】
c) 4−(ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド−N−4−(3−カルボキシメチル−4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イリデンメチル)フェニル−N−フェニルヒドラゾン(D5)
【化38】
【0087】
化合物D5−2(0.31g、0.67mmol)、ローダニン−3−酢酸(0.15g、0.80mmol)及び酢酸アンモニウム(0.015g、0.20mmol)の混合物を、酢酸(4.0mL)中で4.5時間還流した。その後、10mLの水を添加し、そしてその抽出をクロロホルムで行った。その有機層を、蒸留水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥し、そして濾過した。溶剤の蒸発後に、その粗生成物を、10:1:14(v/v)のトルエン/酢酸エチル/ヘキサン、続いて23:2(v/v)のトルエン/メタノールを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、染料D5を暗赤色の固体として収集した(0.28g、67%)。
【0088】
【0089】
染料D6の製造
a) 4−(4,4’−ジメチルジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド−N−フェニルヒドラゾン(D6−1;双方の基Rが4−メチルフェニルにあたる化合物2に対応)
【化39】
【0090】
トルエン(10mL)及び2−プロパノール(2mL)中で溶解した化合物1(3.50g、6.91mmol;双方の基Rが4−メチルフェニルにあたる)に、フェニルヒドラジン(1.00mL、10.16mmol)を添加した。その混合物を、化合物1が消失するまで還流した(TLC、アセトン:n−ヘキサン=1:4)。反応の終わりで、その混合物を室温まで冷却した。放置して形成された黄色い結晶を濾過し、そして2−プロパノールとn−ヘキサンの混合物(1:1)で洗浄して、相応する化合物D6−2を得て(4.03、89%)、さらなる精製なしに次の反応において使用した。
【0091】
b) 4−(4,4’−ジメチルジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド−N−(4−ホルミルフェニル)−N−フェニルヒドラゾン(D6−3;双方の基Rが4−メチルフェニルにあたる化合物3に相応する)
【化40】
【0092】
D6−2(3.27g、8.35mmol)、4−フルオロベンズアルデヒド(2.69ml、25.07mmol)及びK2CO3(6.93g、50.14mmol)の混合物を、無水DMF(25mL)中でアルゴン雰囲気下で24時間還流した。室温まで冷却した後に、蒸留水(30mL)を添加し、そしてその混合物を、酢酸エチルで抽出し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、そして溶剤を蒸発させた。その粗生成物を、10:1:14(v/v)のトルエン/酢酸エチル/n−ヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、化合物D6−3を黄色い固体として収集した(2.76g、67%)。
【0093】
【0094】
c) 4−(4,4’−ジメチルジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド−N−4−[3−(4−カルボキシ)フェニル−4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イリデンメチル]フェニル−N−フェニルヒドラゾン(D6)
【化41】
【0095】
D6−3(0.30g、0.61mmol)、4−(4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾリジン−3−イル)安息香酸(0.18g、0.73mmol)及び酢酸アンモニウム(0.017g、0.22mmol)の混合物を、酢酸(3.0mL)中で6時間還流した。反応の終わりで、その混合物を室温まで冷却した。放置して形成された結晶を濾過し、そして2−プロパノールで洗浄した。その粗生成物を、2:23(v/v)のメタノール/トルエンを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、染料D6を暗赤色の固体として収集した(0.196g、72%)。
【0096】
【0097】
染料D7の製造
a) 4−(4−メチルジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド−N−フェニルヒドラゾン(D7−1;1つの基Rがフェニルにあたり、他の基Rが4−メチルフェニルにあたる化合物2に相応する)
【化42】
【0098】
トルエン(30mL)及び2−プロパノール(5mL)中で溶解した4−[(4−メチルジフェニル)アミノ]ベンズアルデヒド(6g、20.88mmol)に、フェニルヒドラジン(3.00mL、31.32mmol)を添加した。その混合物を、アリールアルデヒドが消失するまで還流した(TLC、アセトン:n−ヘキサン=3:22)。反応の終わりで、その混合物を室温まで冷却した。放置して形成された黄色い結晶を濾過し、そして2−プロパノールとn−ヘキサンの混合物(1:1)で洗浄して、相応するフェニルヒドラゾンD7−1を得て(6.26、80%)、さらなる精製なしに次の反応において使用した。
【0099】
b) 4−(4−メチルジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド−N−(4−ホルミル)フェニル−N−フェニルヒドラゾン(D7−2)
【化43】
【0100】
化合物D7−1(2.65g、7.02mmol)、4−フルオロベンズアルデヒド(1.63mL、15.19mmol)及びK2CO3(4.0g、28.94mmol)の混合物を、20mLの無水DMF中でアルゴン雰囲気下で12時間還流した。室温まで冷却した後に、40mLの蒸留水を添加し、そして抽出を酢酸エチルで行った。その有機層を、水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥し、そして濾過した。溶剤の蒸発後に、その粗生成物を、1:24(v/v)のアセトン/n−ヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、化合物D7−2を黄色の固体として収集した(2.35g、70%)。
【0101】
【0102】
c) 4−(メチルジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド−N−4−(3−カルボキシメチル−4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イリデンメチル)フェニル−N−フェニルヒドラゾン(D7)
【化44】
【0103】
D7−2(1.20g、2.49mmol)、ローダニン−3−酢酸(0.57g、2.99mmol)及び酢酸アンモニウム(0.06g、0.75mmol)の混合物を、酢酸(15mL)中で3.5時間還流した。その後、水(40ml)を添加し、そしてその抽出を酢酸エチルで行った。その有機層を、水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥し、そして濾過した。溶剤の蒸発後に、その粗生成物を、23:2(v/v)のトルエン/メタノールを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、染料D7を暗赤色の固体として収集した(0.45g、28%)。
【0104】
【0105】
A2) 染料D8及びD9の製造
染料D1〜D7の製造に類似して、ジアルデヒドと相応するヒドラジン誘導体との縮合でジヒドラゾンを得て、それをアリール化反応(4−フルオロベンズアルデヒドでの)又はアルキル化反応(1−ブロモノナンでの)において使用し、そして得られたアルキル化中間体を、Vilsmeier−Haack反応させ、そしてモノホルミル化ジヒドラゾンを単離した。最終的に、得られたアルデヒドとローダニン−3−酢酸との縮合で、染料ID−1370(D8)及びID−1492(D9)を得た。
【0106】
詳細な合成方法を以下に示す。
【0107】
染料D8の製造
a) 4−(4−ホルミル−4’−メチルジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド(D8−1)
【化45】
【0108】
化合物D8−1を、Getautis V.、Daskeviciene M.、Malinauskas T.、Stanisauskaite A.、Stumbraite J.、Molecules 2006、11、64−71に従って製造した。
【0109】
b) 4−(4−ホルミル−4’−メチルジフェニルアミノ)ベンズアルデヒドビス(N−フェニルヒドラゾン)(D8−2)
【化46】
【0110】
テトラヒドロフラン(8mL)及び2−プロパノール(22mL)中で溶解した化合物D8−1(2.76g、8.75mmol)に、フェニルヒドラジン(2.15mL、21.88mmol)を添加した。その混合物を、アルデヒドが消失するまで還流した。反応の完了後に、その混合物を室温まで冷却し、そして放置して形成された結晶を濾過し、2−プロパノールで洗浄して、化合物D8−2(4.03g、93%)を得て、さらなる精製なしに次の工程で使用した。
【0111】
b) 4−(4−ホルミル−4’−メチルジフェニルアミノ)ベンズアルデヒドビス[N−(4−ホルミル)フェニル−N−フェニルヒドラゾン](D8−3)
【化47】
【0112】
D8−2(2.80g、5.65mmol)、4−フルオロベンズアルデヒド(1.82mL、16.95mmol)及びK2CO3(4.68g、33.89mmol)の混合物を、21mLの無水DMF中でアルゴン雰囲気下で20時間還流した。室温まで冷却した後に、30mLの蒸留水を添加し、そして抽出を酢酸エチルで行った。その有機層を、水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥し、そして濾過した。溶剤の蒸発後に、その粗生成物を、3:3:19(v/v)のアセトン/ジエチルエーテル/n−ヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、13を黄色の固体として収集した(1.39gm35%)。
【0113】
【0114】
c) 4−(4−ホルミル−4’−メチルジフェニルアミノ)ベンズアルデヒドビス[N−4−(3−カルボキシメチル−4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イリデンメチル)フェニル−N−フェニルヒドラゾン](D8)
【化48】
【0115】
D8−3(0.95g、1.35mmol)、ローダニン−3−酢酸(0.62g、2.19mmol)及び酢酸アンモニウム(0.06g、0.81mmol)の混合物を、酢酸(20mL)中で22時間還流した。その後、水(30mL)を添加し、そしてその抽出をトルエンで行った。その有機層を、無水Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、そして溶剤を蒸発させた。その粗生成物を、7:18(v/v)のアセトン/n−ヘキサン、続いて3:22(v/v)のトルエン/メタノールを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製して、溶出物として、染料D8を暗赤色の固体として収集した(0.26g、19%)。
【0116】
【0117】
染料D9の製造
a) 4−(4−ホルミルジフェニルアミノ)ベンズアルデヒドビス(N−フェニルヒドラゾン)(D9−1)
【化49】
【0118】
トルエン(50mL)中で溶解したD8−1(11.55g、38.32mmol)に、フェニルヒドラジン(9.0mL、91.97mmol)を添加した。その混合物を、アルデヒドが消失するまで還流した(TLC、アセトン:n−ヘキサン=7:18)。反応の終わりで、その混合物を室温まで冷却した。放置して形成された結晶を濾過し、そして2−プロパノールで洗浄して、化合物D9−1を得て(15.0g、82%)、さらなる精製なしに次の反応において使用した。
【0119】
b) 4−(4−ホルミルジフェニルアミノ)ベンズアルデヒドビス(N−ノニル−N−フェニルヒドラゾン)(D9−2)
【化50】
【0120】
化合物D9−1(5.0g、10.38mmol)の還流混合物に、無水THF(30mL)中での1−ブロモノナン(15.0mL、78.78mmol)、粉末化KOH(1.92g、34.22mmol)及び無水Na2SO4(0.60g、4.22mmol)を、1時間毎に3回等しい割合で添加した。19時間後に、その反応混合物を酢酸エチルで、そして中性になるまで蒸留水で抽出した。その有機層を、無水Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、そして酢酸エチルを取り出した。その粗生成物を、未反応の1−ブロモノナンを収集するためにn−ヘキサンを使用し、続いて3:22(v/v)のトルエン/n−ヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、化合物D9−2を黄色い固体として収集した(6.72g、88%)。
【0121】
【0122】
c) 4−[(N−ノニル−N−フェニルヒドラジン−2−イルメチル)ジフェニルアミノ]ベンズアルデヒド−N−(4−ホルミル)フェニル−N−ノニルヒドラゾン(D9−3)
【化51】
【0123】
オキシ塩化リン(0.47mL、5.07mmol)を、DMF(2.85mL、37.03mmol)に、混合物の温度を約5℃まで上げずに滴加した。DMF(6.0mL)中でD9−2(2.48g、3.38mmol)の溶液を添加し、そして得られた混合物を60℃で2時間加熱した。温かい反応混合物を、氷水に注ぎ、酢酸ナトリウム(1.25g、15.23mmol)水溶液を添加することによって中和し、そして酢酸エチルで抽出した。その有機層を、無水Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、そして溶剤を蒸発させた。その粗生成物を、3:22(v/v)のジエチルエーテル/n−ヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、化合物D9−3を黄色い固体として収集した(0.21g、9%)。
【0124】
【0125】
d) 4−[(N−ノニル−N−フェニルヒドラジン−2−イルメチル)ジフェニルアミノ]ベンズアルデヒド−N−4−(3−カルボキシメチル−4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イリデンメチル)フェニル−N−ノニルヒドラゾン(D9)
【化52】
【0126】
D9−3(0.16g、0.21mmol)、ローダニン−3−酢酸(0.05g、0.25mmol)及び酢酸アンモニウム(0.05g、0.06mmol)の混合物を、酢酸(3.5mL)中で3時間還流した。その後、水(15ml)を添加し、そしてその抽出を酢酸エチルで行った。その有機層を、無水Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、そして溶剤を蒸発させた。その粗生成物を、1:24(v/v)のメタノール/トルエンを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、染料D9を暗赤色の固体として収集した(0.08g、41%)。
【0127】
【0128】
A3) 染料D10〜D12の製造
染料D10の製造
a) 4−(ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド−N−(7−クロロキノリン−4−イル)ヒドラゾン(D10−1)
【化53】
【0129】
トルエン(15mL)中で溶解した4−(ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド(1.0g、3.66mmol;双方の基Rがフェニルにあたる化合物1に相応する)に、メタノール(30ml)中で溶解した7−クロロ−4−ヒドラジノキノリン(1.0g、5.16mmol)を添加した。その混合物を、アリールアルデヒドが消失するまで還流した(TLC、アセトン:n−ヘキサン=7:18)。その後、その混合物を室温まで冷却した。放置して形成された9の黄色い結晶(1.41g、86%)を、濾過し、そして2−プロパノールとn−ヘキサンの混合物(1:2)で洗浄した。粗生成物を、追加の精製なしに次の工程において使用した。
【0130】
b) 4−(ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド−N−(4−ホルミル)フェニル−N−(7−クロロキノリン−4−イル)ヒドラゾン(D10−2)
【化54】
【0131】
D10−1(1.41g、3.15mmol)、4−フルオロベンズアルデヒド(1.0mL、9.32mmol)及びK2CO3(2.60g、18.81mmol)の混合物を、20mLの無水DMF中でアルゴン雰囲気下で1.5時間還流した。その後、その混合物を室温まで冷却し、水(30mL)を添加し、そしてその抽出をクロロホルムで行った。その有機層を、水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥し、そして濾過した。溶剤の蒸発後に形成された明るいオレンジ色の結晶を濾過し、そして2−プロパノールで洗浄して、相応するアリールアルデヒドD10−2を得た(1.13g、65%)。
【0132】
【0133】
c) 4−(ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド−N−4−(3−カルボキシメチル−4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イリデンメチル)フェニル−N−(7−クロロ−4−キノリン−4−イル)ヒドラゾン(D10)
【化55】
【0134】
D10−2(0.4g、0.72mmol)、ローダニン−3−酢酸(0.17g、0.87mmol)及び酢酸アンモニウム(0.02g、0.22mmol)の混合物を、酢酸(3mL)中で50分間還流した。反応の終わりで、その混合物を室温まで冷却した。放置して形成された暗いオレンジ色の結晶を濾過し、そして水、メタノール及び最終的にジエチルエーテルで洗浄して、染料D10を得た(0.4g、76%)。
【0135】
【0136】
染料D11の製造
a) 1−フェニル−3−プロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−カルバルデヒド(D11−1)
【化56】
【0137】
化合物D11−1を、T. Malinauskas、J. Stumbraite、V. Getautis、V. Gaidelis、V. Jankauskas、G. Juska、K. Arlauskas、K. Kazlauskas、Dyes and Pigments 81(2009)131−136に従って製造した。
【0138】
b) 1−フェニル−3−プロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−カルバルデヒド−N−フェニルヒドラゾン(D11−2)
【化57】
【0139】
2−プロパノール(25mL)中で溶解した化合物D11−2(5.00g、17.77mmol)に、フェニルヒドラジン(2.31mL、21.31mmol)を添加した。その混合物を、1時間、アリールアルデヒドが消失するまで還流した(TLC、v/vでのジエチルエーテル/n−ヘキサン、2:3)。反応の終わりで、その混合物を室温まで冷却した。放置して形成された黄色い結晶を濾過し、そして2−プロパノールとn−ヘキサンの混合物(1:2)で洗浄して、相応するフェニルヒドラゾン25を得て(6.5g、99%)、さらなる精製なしに次の反応において使用した。
【0140】
c) 1−フェニル−3−プロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−カルバルデヒド−N−(4−ホルミル)フェニル−N−フェニル−ヒドラゾン(D11−3)
【化58】
【0141】
化合物D11−2(6.5g、16.86mmol)、4−フルオロベンズアルデヒド(3.14g、25.29mmol)及びK2CO3(6.99g、50.58mmol)の混合物を、無水DMF(35mL)中でアルゴン雰囲気下で20時間還流した。室温まで冷却した後に、蒸留水(30mL)を添加し、そしてその混合物を、酢酸エチルで抽出し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、そして溶剤を蒸発させた。その粗生成物を、2:23(v/v)のアセトン/n−ヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、化合物D11−3を黄色い固体として収集した(5.28g、64%)。
【0142】
【0143】
d) 1−フェニル−3−プロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−カルバルデヒド−N−4−カルボキシメチル−4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イリデンメチル)フェニル−N−フェニルヒドラゾン(D11)
【化59】
【0144】
化合物D11−3(0.99g、2.03mmol)、ローダニン−3−酢酸(0.46g、2.43mmol)及び酢酸アンモニウム(0.05g、0.61mmol)の混合物を、酢酸(3.0mL)中で2時間還流した。その後、水(15mL)を添加し、そしてその抽出をクロロホルムで行った。その有機層を、無水Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、そして溶剤を蒸発させた。その粗生成物を、2:23(v/v)のメタノール/トルエンを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、染料D11を暗赤色の固体として収集した(0.81g、61%)。
【0145】
【0146】
染料D12の製造
a) 1,2,3,3a,4,8b−ヘキサヒドロ−4−[4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル]シクロペンタ[b]インドール−7−カルボキシアルデヒド(D12−1)
【化60】
【0147】
出願された日本の特許明細書JP 2010−083767号に従って製造した。
【0148】
b) 1,2,3,3a,4,8b−ヘキサヒドロ−4−[4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル]シクロペンタ[b]インドール−7−カルボキシアルデヒド−N−フェニルヒドラゾン(D12−2)
【化61】
【0149】
トルエン(8mL)及び2−プロパノール(4mL)の中で溶解した化合物D12−1(1.50g、3.39mmol)に、フェニルヒドラジン(0.40mL、4.08mmol)を添加した。その混合物を、2.5時間、アリールアルデヒドが消失するまで還流した(TLC、トルエン)。反応の終わりで、その混合物を室温まで冷却した。放置して形成された黄色い結晶を濾過し、そして2−プロパノールで洗浄して、相応するフェニルヒドラゾンD12−2を得て(1.42g、79%)、さらなる精製なしに次の反応において使用した。
【0150】
c) 1,2,3,3a,4,8b−ヘキサヒドロ−4−[4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル]シクロペンタ[b]インドール−7−カルボキシアルデヒド−N−(4−ホルミル)フェニル−N−フェニルヒドラゾン(D12−3)
【化62】
【0151】
化合物D12−2(1.3g、2.45mmol)、4−フルオロベンズアルデヒド(0.45g、3.7mmol)及びK2CO3(1.02g、7.34mmol)の混合物を、無水DMF(25mL)中でアルゴン雰囲気下で5時間還流した(TLC、トルエン)。室温まで冷却した後に、蒸留水(30mL)を添加し、そしてその混合物を、酢酸エチルで抽出し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、そして溶剤を蒸発させた。その粗生成物を、2:2:21(v/v)のアセトン/THF/n−ヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、化合物D12−3を黄色い固体として収集した(0.86g、55%)。
【0152】
【0153】
d) 1,2,3,3a,4,8b−ヘキサヒドロ−4−[4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル]シクロペンタ[b]インドール−7−カルボキシアルデヒド−N−4−(3−カルボキシメチル−4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾリジン−5−イリデン−メチル)フェニル−N−フェニルヒドラゾン(D12)
【化63】
【0154】
化合物D12−3(0.205g、0.32mmol)、ローダニン−3−酢酸(0.074g、0.39mmol)及び酢酸アンモニウム(0.015g、0.19mmol)の混合物を、酢酸(3.0mL)中で6.5時間還流した。その後、水(15mL)を添加し、そしてその抽出をクロロホルムで行った。その有機層を、無水Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、そして溶剤を蒸発させた。その粗生成物を、47:3(v/v)のトルエン/メタノールを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出物として、染料D12を暗赤色の固体として収集した(0.125g、48%)。
【0155】
【0156】
B) DSCの製造及び特徴付け
一般的な方法及び材料
(固体状態の)DSCの製造:TiO2ブロッキング層を、フッ素でドープした二酸化スズ(FTO)で覆ったガラス基材上で噴霧熱分解を使用して製造した(B. Peng、G. Jungmann、C. Jager、D. Haarer、H. W. Schmidt、M. Thelakkat、Coord. Chem. Rev. 2004、248、1479を参照)。次に、テルピネオールで希釈したTiO2ペースト(Dyesol)を、スクリーン印刷によって適用し、1.7μmの膜厚で得た。そして、全てのフィルムを、45分間450℃で焼結させ、続いて、TiCl4の40mM水溶液中で60℃で30分間処理し、続いてさらに焼結させた。TiO2層を有する製造した試料を、エタノール中で、添加剤2−(p−ブトキシフェニル)アセトヒドロキサム酸(“ADD3”)、2−(p−ブトキシフェニル)アセトヒドロキサム酸ナトリウム塩(“ADD1”)又は2−(p−ブトキシフェニル)アセトヒドロキサム酸テトラブチルアンモニウム塩(“ADD2”)の5mMの溶液で前処理した(これらの添加剤は、WO 2012/001628号A1の52〜53頁でそれぞれ“実施例番号5”、“実施例番号6”及び“実施例番号10”として記載されている)。そして電極を、CH2Cl2中で0.5mMの染料溶液中で染色した。スピロ−MeOTADを、20mMのLi(CF3SO22Nも含むDCM(200mg/mL)中での溶液からスピンコーティングにより適用した。デバイスの加工を、対電極として200nmの銀の蒸発により仕上げた。sDSCの活性面積を、これらの接触のサイズ(0.13cm2)により測定し、そしてセルを測量のために同一の面積の隙間で覆った。全てのセルについての電流電圧特性を、1000W/m2、AM 1.5G条件(LOT ORIEL 450 W)下で、Keithley 2400で測定した。電流変換効率に対する入射光子(incident photon to current conversion efficiency’s(IPCE))を、追加の白い背景光イルミネーションを使用してActon Research Monochromatorで得た。
【0157】
試料を、重水素ランプを有する石英モノクロメータからの単色光で照射した。入射光ビームの出力は、(2〜5)・10-8Wであった。−300Vの負電圧を、試料基材に供給した。照射のために4.5×15mm2のスリットを有する対電極を、試料表面から8mmの距離に置いた。対電極を、光電流の測定のために、開いた入力状態で作用するBK2−16タイプの電位計の入力に連結した。10-15〜10-12Aの強い光電流が、照射下で回路において流れた。光電流Jは、入射光光子エネルギーhνに強く依存する。J0.5=f(hν)依存性をプロットした。通常、入射光量子エネルギーに対する光電流の依存性は、J0.5と閾値に近いhνとの直線関係によりよく記載されている(E. Miyamoto、Y. Yamaguchi、M. Yokoyama、Electrophotography 1989、28、364及びM. Cordona、L. Ley、Top. Appl. Phys. 1978、26、1を参照)。この依存性の直線部分を、hν軸に外挿し、Jp値を、遮断点での光子エネルギーとして測定した。
【0158】
種々の染料及び添加剤でのDSCの結果を、以下の表1において提供する。
【0159】
【表1】