(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6258995
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】遷移金属の回収方法
(51)【国際特許分類】
C22B 34/34 20060101AFI20171227BHJP
C22B 34/24 20060101ALI20171227BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20171227BHJP
C25B 1/00 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
C22B34/34
C22B34/24
C22B7/00 A
C25B1/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-64523(P2016-64523)
(22)【出願日】2016年3月28日
(62)【分割の表示】特願2012-218878(P2012-218878)の分割
【原出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2016-164310(P2016-164310A)
(43)【公開日】2016年9月8日
【審査請求日】2016年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】河村 寿文
【審査官】
酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−036111(JP,A)
【文献】
特開2011−032578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 34/20−34/36,
C25B 1/00,
C25F 3/02,3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nb,Ta及びMo成分の少なくとも1種を含有する原料混合物に対して、
アルコールアミンを含有する電解液を用いて電気分解を行う工程を含む遷移金属の回収方法。
【請求項2】
前記アルコールアミンが、モノエタノールアミン及び/又はトリエタノールアミンである請求項1に記載の遷移金属の回収方法。
【請求項3】
前記電解液中のアルコールアミンの濃度が1〜40mass%である請求項1又は2に記載の遷移金属の回収方法。
【請求項4】
前記電解液の温度を50℃以上に調整して電気分解を行う請求項1〜3のいずれかに記載の遷移金属の回収方法。
【請求項5】
前記電解液のpHが9以上である請求項1〜4のいずれかに記載の遷移金属の回収方法。
【請求項6】
前記電気分解における設定電圧が30V以下であり、設定電流密度が500A/dm2以下である請求項1〜5のいずれかに記載の遷移金属の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属の回収方法に関し、より詳細には、第5族及び/又は第6族遷移金属の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属回収方法としては、通常、当該金属を含有するスクラップを粉砕した後、アルカリ溶解するというプロセスが用いられている。しかしながら、第5族及び第6族遷移金属の回収においては、第5族及び第6族遷移金属が非常に硬く、耐薬品性も高い金属であるため、このような通常のプロセスの適用は非常に困難である。そのため、アルカリ溶融塩等の強力な処理をして酸化することで第5族及び第6族遷移金属を溶解させて回収するのが定法となっている。
【0003】
一方、例えば、モリブデン(第6族遷移金属)使用済みターゲットや端材は、元々高純度であるため、上記のような一般的な処理である、溶融塩処理や粉砕を用いることは、純度を大幅に低下させることになる。従って、当該金属を高純度化するために、多段精製やイオン交換処理等が必要となる等、処理工程が煩雑になる傾向がある。
【0004】
金属を溶解させる手法としては、電解があり、例えば、特許文献1には、電解エッチング処理、または電解酸化膜除去処理の内のいずれかを実施することを目的とした電解加工液組成物として、基本的に、(1)水溶性の電解質、(2)分極向上剤、(3)腐食抑制剤(インヒビター)の内、(1)の水溶性の電解質を基本として、(2)〜(3)のいずれか1種または2種以上を組み合わせて用いることにより、陽極表面近傍に電解溶出した金属イオンと電解液成分によって形成される粘性液体のヤッケ層の成長を抑制して電解することを特徴とする電解エッチング処理方法が開示されている。また、(1)水溶性の電解質として、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸かそれらのアンモニウム、カリウム、またはナトリウム塩、水酸化カリウムの中から選ばれた1種または2種以上、(2)分極向上剤として、アミノカルボン酸とその塩、エタノールアミン類、カルボン酸またはその塩、の中から選ばれた1種または2種以上、(3)腐食抑制剤(インヒビター)として、脱水環化エタノール誘導体を含むアミン化合物、窒素含有ヘテロ環状化台物、チオ尿素誘導体の中から選ばれた1種または2種以上を用いることが開示されている。そして、これによれば、電解エッチング、電解酸化膜除去を含む電解加工を実施する上で、これらの電解加工を極めて有効に実施する電解液組成物を提供することができると記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、0.1重量%以上の燐酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、酢酸、グルコン酸、グリコール酸、コハク酸などステンレス鋼に対して非酸化性に働く酸および硫酸からなる群、ならびに、これら酸のナトリウム、カリウム、アンモニウムなどの各塩の群のうちの一種または二種以上の水溶液に、0.1重量%以上のトリエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびモノエタノールアミンのうちの一種または二種以上を配合することを特徴とするステンレス鋼の電解研磨法に用いる電解液が開示されている。そして、これによれば、ステンレス鋼表面に対する電解研磨法において、交流及び直流及び交直重畳で使用できると共に、オーステナイト系ステンレス鋼だけでなくマルテンサイト系、フェライト系ステンレス鋼でも耐腐食性能を向上させる電解液を提供することができると記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、鉄、タングステン、軽金属、およびこれらの金属の合金から選択される金属の表面を電解液を用いて電解研磨する方法であって、前記電解液は、メタンスルホン酸と、一般式C
nH
2n(OH)
2、n=2〜6で示される脂肪族ジオールおよび一般式C
mH
2m-1OH、m=5〜8で示される脂環式アルコールからなる群から選択される少なくとも一種のアルコール化合物を含むことを特徴とする電解研磨方法が開示されている。そして、これによれば、鉄、タングステン、軽金属およびこれらの合金の表面を電解研磨するのに適した、作業の安全性や環境保護については実質的に無害な方法を提供することができると記載されている。
【0007】
さらに、特許文献4には、電解液中で白金を陽極として電解することで白金を溶出させる電解溶出方法であって、前記電解液は、8〜11.5規定の塩酸溶液であり、電解条件として、液温60〜80℃、電流密度60〜100A/dm2の電流を印加して前記白金電極を溶出させる方法が開示されている。そして、これによれば、化学的に安定であり溶解が溶解ではない白金を、電解法により効率的に溶解させる方法を提供することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−49100号公報
【特許文献2】特開2007−277682号公報
【特許文献3】特開2008−121118号公報
【特許文献4】特開2011−131282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、種々の金属を電解法により溶解させる技術が知られているが、高純度で遷移金属を安価なコストで回収する技術は、未だ改善の余地がある。第5族及びは第6族遷移金属を高純度で回収するには、例えば、無機系溶液の硝酸アンモニウム(硝安)を電解液に用いることが考えられるが、アルカリ性で電解するためには、別途アンモニアを添加して電解液のpHを調整する必要がある。しかしながら、硝安自体、高濃度になると爆発性が高まるため、電解中の濃度管理をする必要がある。さらに、アンモニアも電解温度域で揮発による濃度変化があるため、濃度管理等が必須であり、回収設備、制御設備等でランニングコストがかかる。また、使用済みターゲットや端材などの元々高純度な材料からの遷移金属の回収においては、不純物フリーな処理方法が求められている。
【0010】
そこで、本発明は、安価なコストで、高純度の第5族及び/又は第6族遷移金属を回収する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために、第5族及びは第6族遷移金属の高純度電解が可能な電解液を鋭意検討した結果、アルコールアミンを用いた電解液を見出した。アルコールアミンは、Na、K、Fe及びS等の不純物を含まず、比較的沸点が高く、数%含有した水溶液は安全である。さらに、耐電圧性も高く安定であり、pH依存性も低いため、電解中の制御がしやすく、アンモニアのような揮発による補給も必要ないため、結果的にランニングコストを抑制できる。
なお、特許文献2、3、4の電解液に関する発明において、当該電解液にアミンを用いている。しかしながら、特許文献2では、電解液中に、燐酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、酢酸、グルコン酸、グリコール酸、コハク酸などステンレス鋼に対して非酸化性に働く酸および硫酸からなる群、ならびに、これら酸のナトリウム、カリウム、アンモニウムなどの各塩の群のうちの一種または二種以上の水溶液も含まれており、本発明と構成が異なる。また、特許文献3では、メタンスルホン酸も必須成分として含んでおり、本発明と構成が異なり、さらにメタンスルホン酸が強酸性であり、非常に高価である点で不利である。また、特許文献4では、電解液中に、強酸である塩酸が含まれており、本発明と構成が異なる。
【0012】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、V,Nb,Ta,Cr及びMo成分の少なくとも1種を含有する原料混合物に対して、アルコールアミンを含有する電解液を用いて電気分解を行う工程を含む遷移金属の回収方法である。
【0013】
本発明に係る遷移金属の回収方法は一実施形態において、前記アルコールアミンが、モノエタノールアミン及び/又はトリエタノールアミンである。
【0014】
本発明に係る遷移金属の回収方法は別の一実施形態において、前記電解液中のアルコールアミンの濃度が1〜40mass%である。
【0015】
本発明に係る遷移金属の回収方法はさらに別の一実施形態において、前記電解液の温度を50℃以上に調整して電気分解を行う。
【0016】
本発明に係る遷移金属の回収方法はさらに別の一実施形態において、前記電解液のpHが9以上である。
【0017】
本発明に係る遷移金属の回収方法はさらに別の一実施形態において、前記電気分解における設定電圧が30V以下であり、設定電流密度が500A/dm
2以下である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アルコールアミンを含有する電解液を用いて電気分解することで、安価なコストで、高純度の第5族及び/又は第6族遷移金属を回収する方法を提供することができる。
より具体的には:
(1)処理反応系に、Na、K、Fe及びS等の不純物を含まないことで、純度を下げずに、高純度のまま第5族及び/又は第6族遷移金属を回収することができる。
(2)リサイクル材等から、第5族及び/又は第6族遷移金属の純度が、4N以上の品位のものを得ることができる。
(3)電解液の耐電圧性が高く安定であり、pH依存性も低いため、電解中の制御がしやすく、アンモニアのような揮発による補給も必要ないため、安価なコストで処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態で示す電解槽の一例の模式図である。
【
図2】本発明に係る電解液及び従来の電解液を用いて第5族及び/又は第6族遷移金属のスクラップを電気分解したときの、電解液温度と第5族及び/又は第6族遷移金属の溶解速度との関係を示す図である。
【
図3】電気分解における定電圧と電流効率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る遷移金属の回収方法の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
まず、処理対象となる第5族及び/又は第6族遷移金属成分である、V,Nb,Ta,Cr及びMo成分の少なくとも1種を含有する原料混合物を準備する。当該原料混合物としては、V,Nb,Ta,Cr,Moのスクラップを粉砕した、いわゆるリサイクル材等が挙げられる。本発明の処理対象となるV,Nb,Ta,Cr及びMo成分の少なくとも1種を含有する原料混合物の代表的な品位は、不純物として、Feが0.005mass%、Niが0.003mass%、Cuが0.002mass%の各濃度で存在し、V,Nb,Ta,Cr,Moの純度は、99.99〜99.999mass%である。
【0022】
次に、アノード及びカソード、電解液を備えた電解槽を準備し、これを用いてV,Nb,Ta,Cr及びMo成分の少なくとも1種を含有する原料混合物の電気分解を行う。
電解槽は、特に限定されないが、例えば、
図1に示す構成であってもよい。
図1は、アノードとしてチタンバスケットを用いており、このチタンバスケットの中にV,Nb,Ta,Cr及びMo成分の少なくとも1種を含有する原料混合物が設けられている。チタンバスケットは、本発明のような高電圧、高電流及び高温の電解処理条件で安定である点で好ましい。
【0023】
電解液は、アルコールアミンを含有している。アルコールアミンとしては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、アミノプロパノール、メチルエタノールアミン等が挙げられる。特に、モノエタノールアミン、トリエタノールアミンは安価である点で好ましい。
【0024】
電解液中のアルコールアミンの濃度は、1〜40mass%であるのが好ましい。電解液中のアルコールアミンの濃度が1mass%未満であると、導電性が低くなり過ぎて電気分解が不安定になる。電解液中のアルコールアミンの濃度が40mass%超であると、電解液の種類によっては水への溶解度を超えてしまうし、必要以上に濃度が高くなり、コストの面で不利となる。電解液中のアルコールアミンの濃度は、より好ましくは2〜10mass%である。
【0025】
電気分解の際の電解液の温度は室温でもかまわないが、高温の方が良く、特に50℃以上に調整するのが好ましい。高温である方が電解液の導電性が大きくなるためである。ここで、
図2に、本発明に係る電解液及び従来の電解液を用いてV,Nb,Ta,Cr,Moのスクラップを電気分解したときの、電解液温度とV,Nb,Ta,Cr及びMoの溶解速度との関係を示す。図中、本発明に係る電解液を用いた電解槽で電気分解を行った結果のグラフを本PAT浴と記載し、従来の電解液による電解槽で電気分解を行った結果のグラフを従来浴と記載している。本PAT浴では、電解液としてモノエタノールアミン10%水溶液を用い、10Vの定電圧で電気分解をしている。一方、従来浴では、電解液として硝安及びアンモニアを用い、10Vの定電圧で電気分解をしている。また、V,Nb,Ta,Cr,Moの溶解速度は、電解液が25℃における数値を1.0としたときの相対値としてプロットしている。この図に示すように、従来浴は、電解液の液温が45℃以上になるとアンモニア揮発が激しくなるため事実上それ以上の温度に上げることが困難となる。これに対し、本PAT浴は、高沸点溶媒で構成されているため、水の蒸発温度域以下までは問題無く電気分解でき、結果として50℃以上で溶解速度が大きくなり、生産性が上がる。
【0026】
電解液のpHは、電解液が弱アルカリ性となるように調整され、好ましくは9以上、より好ましくは10以上である。pHが9未満であると、生成したV,Nb,Ta,Cr,Moに係るイオンが溶解していられなくなり、化合物を形成して析出し、結果として電解溶解を阻害してしまう可能性がある。
【0027】
電解液に用いるアルコールアミン類は、耐電圧性・耐電流密度性が高く、生産性のためには電気分解における設定電圧及び設定電流密度はそれぞれ高い方が好ましいが、設備の制約やカソード側へのダメージを考えると、設定電圧は30V以下とし、設定電流密度は500A/dm
2以下とするのが実用的であるため好ましい。参考に、
図3に電気分解における定電圧と電流効率との関係を示す。
図3に示されるように、電圧・電流密度が低いということは、時間当たりの処理量(生産量)が小さくなる。
【0028】
電気分解によってV,Nb,Ta,Cr,Moを電解液に溶解させた後、塩酸、硝酸等で中和して、V,Nb,Ta,Cr,Moを水酸化物として取り出す。この場合、水酸化物の状態で既にV,Nb,Ta,Cr,Moの品位が4N以上と非常に高純度となっている。
【0029】
次に、得られたV,Nb,Ta,Cr,Moの水酸化物を濃縮して金属酸塩化合物とし、必要に応じて加熱・還元することで、高純度の金属酸化物や単体金属として回収する。
【0030】
本発明に係る遷移金属の回収方法は、上述のようにアルコールアミンを含有する電解液を用いて電気分解することで、安価なコストで、高純度の第5族及び/又は第6族遷移金属を回収することができる。具体的には:
(1)処理反応系に、Na、K、Fe及びS等の不純物を含まないことで、純度を下げずに、高純度のまま第5族及び/又は第6族遷移金属を回収することができる。
(2)リサイクル材等から、第5族及び/又は第6族遷移金属の純度が、4N以上の品位のものを得ることができる。
(3)電解液の耐電圧性が高く安定であり、pH依存性も低いため、電解中の制御がしやすく、アンモニアのような揮発による補給も必要ないため、安価なコストで処理することができる。
ここで、アルコールアミンの電解液の耐電圧性が高く安定なのは、明確な理由は不明であるが、おそらく溶解した第5族及び/又は第6族遷移金属がアルコールアミンと配位することで、安定化することが起因していると考えられる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例を説明するが、実施例は例示目的であって発明が限定されることを意図しない。
【0032】
(実施例1)
電解槽のアノードとして、モリブデン(純度100%)のターゲットの小片5.0kgを用いた。
電解槽のカソードとして、チタン板を用いた。
電解槽の電解液として、モノエタノールアミンに純水を加えてモノエタノールアミン濃度が5mass%の、pH11.0の電解液を20L準備した。
これらを用いて、設定電圧10V、電流密度を5A/dm
2とし、100Aの定電流で、温度を60℃に調整して電気分解を10時間行った。
この結果、4N以上の高純度のモリブデンを回収できた。モリブデン溶解量は0.6kgで、電流効率はほぼ100%であった。
【0033】
(実施例2)
電解槽のアノードとして、MoSi
2合金スクラップの小片3.0kgを用いた。
電解槽のカソードとして、チタン板を用いた。
電解槽の電解液として、モノエタノールアミンに純水を加えてモノエタノールアミン濃度が10mass%の、pH11.0の電解液を10L準備した。
これらを用いて、設定電圧10V、電流密度を50A/dm
2とし、500Aの定電流で、温度を60℃に調整して電気分解を2時間行った。
この結果、ケイ素を除いたモリブデンの純度は4N以上となり、高純度のモリブデンを回収できた。モリブデン溶解量は0.59kgで、電流効率はほぼ100%であった。
【0034】
実施例1及び2により、モリブデン及びモリブデン合金に関して、本発明に係る遷移金属の回収方法によれば、安価なコストで、高純度の第5族及び/又は第6族遷移金属を回収できることが示された。ここで、モリブデンは第6族遷移金属であり、第5族及び第6族遷移金属であるV,Nb,Ta,Cr及びMoは、アルコールアミンに対して互いに同様に反応するため、実施例1及び2に基づき、本発明に係る遷移金属の回収方法は、回収対象の遷移金属がV,Nb,Ta,Crであっても、同様に有効であることがわかる。
【0035】
(比較例1)
電解槽のアノードとして、タングステンリサイクル材の不定形端材5kgをチタンバスケットに入れたものを用いた。
電解槽のカソードとして、チタン板を用いた。
電解槽の電解液として、硝酸アンモニウム及びアンモニア水に純水を加えて、硝酸アンモニウム濃度が10mass%且つアンモニア濃度が5mass%の、pH10.6の電解液を10L準備した。
これらを用いて、設定電圧5V、電流密度を5A/dm
2とし、50Aの定電流で、温度を70℃に調整して電気分解を10時間行った。
この結果、タングステン溶解量は0.5kgで電流効率はほぼ90%となり、実施例に比べて低下した。また、電気分解の際にはアンモニア分が揮発するため、随時アンモニア水を電解液に補給しなければならず、非常に手間がかかり、アンモニア供給量も多く、実施例に比べて電気分解の効率面及びコスト面で不利となった。