特許第6259394号(P6259394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6259394ポリ(メタ)アクリレートの製造方法、これにより得られたポリ(メタ)アクリレート、モノマー組成物、その硬化物、およびこれを含むプリント配線板
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  • 特許6259394-ポリ(メタ)アクリレートの製造方法、これにより得られたポリ(メタ)アクリレート、モノマー組成物、その硬化物、およびこれを含むプリント配線板 図000019
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6259394
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】ポリ(メタ)アクリレートの製造方法、これにより得られたポリ(メタ)アクリレート、モノマー組成物、その硬化物、およびこれを含むプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20171227BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20171227BHJP
   C08G 18/02 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   C08F2/44 B
   C08F2/48
   C08G18/02 020
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-507875(P2014-507875)
(86)(22)【出願日】2013年3月25日
(86)【国際出願番号】JP2013058634
(87)【国際公開番号】WO2013146705
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2015年11月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-81942(P2012-81942)
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】崔 城豪
(72)【発明者】
【氏名】志村 優之
(72)【発明者】
【氏名】依田 健志
(72)【発明者】
【氏名】宇敷 滋
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−212516(JP,A)
【文献】 特表2004−513197(JP,A)
【文献】 米国特許第04117235(US,A)
【文献】 国際公開第2011/085856(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/062292(WO,A1)
【文献】 特開2002−174892(JP,A)
【文献】 特開2012−153818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/02
C08F2/38−2/50
C08F4/00
C08F4/28−4/40
C08F20/10−20/40
C08F120/10−120/40
C08F220/10−220/40
H05K1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネートと反応しうる官能基を持たない(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに、多官能イソシアネートを添加して得られたモノマー組成物(但し、カルボキシル基を含有するバインダーポリマーを含まない)を、140℃から170℃で加熱することにより、前記(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを重合させることを特徴とするポリ(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項2】
前記モノマー組成物に、さらに光重合開始剤を添加して、活性エネルギー線を照射することにより前記(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを光硬化させた後、前記加熱により前記(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを重合させることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の製造方法に用いられることを特徴とするモノマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(メタ)アクリレートの製造方法、特に、イソシアネートの存在下に(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを重合させることによるポリ(メタ)アクリレートの製造方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、上記製造方法により得られるポリ(メタ)アクリレート、これを含む硬化性組成物、その硬化物、およびこれを有するプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリ(メタ)アクリレート樹脂(アクリル樹脂)は、高い透明性・耐衝撃性があり、熱可塑形成・着色が容易なことから、無機ガラスの代用品として建築物や乗物の窓材等に用いられる他、電気・電子機器、日用品、事務用品等における部品として種々の用途に適用されている。
【0004】
アクリル樹脂は、(メタ)アクリレートに、紫外線または電子線等の活性エネルギー線を照射することによりラジカルを発生するラジカル発生剤を添加して、ラジカル重合(架橋反応)に付すことによって製造することできる。また、(メタ)アクリレートに過酸化物を添加して加熱することによるラジカル重合によっても、ポリ(メタ)アクリレートを製造することができる。
【0005】
これらの具体例としては、例えば特許文献1に、(メタ)アクリレートと、光重合開始剤とを含む紫外線硬化型樹脂組成物が開示されている。特許文献1では、樹脂組成物に対して高圧水銀灯にて紫外線を照射することにより、樹脂の硬化が行われる旨が記載されている。
【0006】
さらに、特許文献2には、ヒンダードアミン化合物と、有機過酸化物との存在下に、(メタ)アクリレートを加熱により硬化させることにより得られるラジカル型接着組成物が記載されており、150℃以下の低温で(メタ)アクリレートを硬化させている。
【0007】
この他、特許文献3では、水酸基を有する(メタ)アクリレート、ブロックイソシアネート、光重合開始剤を含む配合物について、光硬化、およびその後の熱硬化を行なう方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61−31449号
【特許文献2】特開2008−94913号
【特許文献3】2004−513197号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1によると、光ラジカル発生剤の利用による重合がおこなわれており、これによると反応速度を上昇させるものの硬化度が低い。その影響により得られた硬化物は、密着性や耐薬品性が必ずしも十分には得られていない。
【0010】
また、特許文献2のアクリレートの製造では過酸化物が用いられる。過酸化物は危険物であるため、扱いが容易ではない。
【0011】
この他、アクリレートは、単に加熱することによっても、自己重合(単独重合)反応を生ずるが、アクリロイル基は熱には比較的安定であるため、約200℃以上の加熱が必要とされる。この場合には、エネルギー効率の面で検討の余地があるのみならず、アクリレートを含む組成物を使用する対象としての基材の耐熱性も問題となる。
【0012】
さらに、特許文献3では、(メタ)アクリレートが重合の一成分として用いられているが、水酸基を有することが必須とされている。すなわち、(メタ)アクリレートの水酸基とイソシアネートとの反応が先行し、(メタ)アクリレートの単独重合が生ずることはない。
【0013】
なお、引用文献3にも開示されているように、イソシアネートはウレタンや尿素誘導体等の製造の原料であり、水酸基、アミン、フェノール、チオールなどと容易に反応することが知られているが、ポリ(メタ)アクリレートの製造反応における適用については一切報告がない。
【0014】
しかるに、本発明は、密着性、硬度、耐薬品性、耐熱性、および絶縁性等の物理的特性に優れたポリ(メタ)アクリレートを迅速な反応により得ることが可能な製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
更に、本発明は、ポリ(メタ)アクリレートの製造方法に用いられるモノマー組成物、その硬化物、およびこれを含むプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を解決するため、本発明のポリ(メタ)アクリレートの製造方法は、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに、イソシアネート基を有する化合物を添加して得られたモノマー組成物を、140℃から170℃で加熱することにより、(メタ)アクリロイ
ル基を有するモノマーを重合させることを特徴とする。
【0017】
この方法により、密着性、硬度、耐薬品性、耐熱性、および絶縁性等の物理的特性等に優れたポリ(メタ)アクリレートが製造可能となる。
【0018】
更に、本発明により、製造されたポリ(メタ)アクリレートを含むことを特徴とするモノマー組成物が得られる。
【0019】
このモノマー組成物は、常温で反応する官能基を含まないため、保存安定性に優れる。
本発明のモノマー組成物は、熱硬化、光硬化、またはその双方により、密着性、耐薬品性、および耐熱性等の物理的特性に優れた硬化物(ポリ(メタ)アクリレート)とされるため、例えば、プリント配線板印刷用のインキまたはプリント配線板の被覆として適用可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の製造方法によると、イソシアネートの存在下に、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを比較的低温、短時間で単独重合させることが可能であり、これにより密着性、硬度、耐薬品性、耐熱性、および絶縁性等の物理的特性に優れたポリ(メタ)アクリレートの硬化物ないし塗膜を得ることができる。
【0021】
更に、本発明のモノマー組成物は、常温では重合反応が生じないため、一液型として安定に保存可能である。モノマー組成物は、プリント配線板に塗布して、硬化させることにより密着性、硬度、耐薬品性、耐熱性、および絶縁性等の物理的特性に優れたプリント配線板用絶縁材料とされ、着色顔料等を添加すればインキ組成物としてプリント配線板の印刷用に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のモノマー組成物と比較用の物質の示差走査熱量曲線を示す図である。
図2】本発明のモノマー組成物を異なる温度に加熱した際の赤外分光法による吸光度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明では、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー((メタ)アクリレートともいう)と、イソシアネートとの混合物をモノマー組成物として、これを所定温度にて所定時間加熱することにより、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが単独重合し、ポリ(メタ)アクリレートが製造される。
【0024】
また、(メタ)アクリレートの単独重合は、通常200℃以上の加熱により生ずるが、本発明のモノマー組成物では、これを140℃〜170℃、好ましくは150℃〜170℃にて15秒〜1000秒加熱することにより、これに含まれる(メタ)アクリレートの重合が生ずる。140℃未満では、(メタ)アクリレートの重合が不十分となり、170℃を上回るとモノマー組成物の施与対象である基板に熱的な悪影響を与える可能性が生ずる。140℃〜170℃の温度範囲で15秒〜1000秒加加熱することにより(メタ)アクリロイル基のほぼすべての二重結合が開き、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが架橋した状態となる。
【0025】
本発明におけるポリ(メタ)アクリレート生成反応は、イソシアネートと(メタ)アクリレートが共存している状態で加熱をすると、(メタ)アクリロイルの存在がイソシアネートの3量化反応を促進し、イソシアネートの3量化反応が、(メタ)アクリロイル基の活性を高める結果生ずるものと考えられる。
【0026】
また、本発明では、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが、イソシアネートと反応しうる官能基を持たないことが好ましい。一般に、イソシアネートは、OHやNH2等のイソシアネートに対して活性な水素原子を有する化合物と反応するが、(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基とは反応しない。このため、(メタ)アクリレートとイソシアネートとを反応させる場合には、活性水素原子を有する(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートが使用される。
【0027】
しかしながら、(メタ)アクリレートの重合を優先させるために、本発明の方法またはモノマー組成物には、さらに他の成分としても、イソシアネートと反応しうる官能基を有する化合物が一切含まれないことが好ましい。
【0028】
また、イソシアネートの3量化反応により局所的に発生する熱も、(メタ)アクリレートの重合が進行を助けると考えられる。
【0029】
本発明の反応機構により得られた反応生成物から得られる塗膜は、高い密着性、耐薬品性、耐熱性等の総合的に優れた物理的特性を有するため、種々の用途において極めて有効に使用される。
【0030】
また、イソシアネートの3量化では、トリアジン環構造を有するイソシアヌレートが形成される。トリアジン環構造を含む化合物から構成される塗膜ないし硬化物は、耐熱性と絶縁性に優れるため、耐熱材料、絶縁材料のとしても有用である。
【0031】
また、三官能性以上のイソシアネートを用いた場合にも、トリアジン骨格を持ったネットワーク構造が形成される。このようなネットワーク構造を有する材料は、これを含む塗膜ないし硬化物の耐熱性や耐薬品などを向上させる効果を有する。
【0032】
このように、本発明の方法によると、ポリ(メタ)アクリレートと、イソシアネートの三量体等のオリゴマーと、を含む反応混合物が生じ、この反応混合物が硬化することにより密着性、硬度、耐薬品性、耐熱性、および絶縁性に優れた塗膜が構成される。
【0033】
[(メタ)アクリロイル基を有するモノマー]
本発明では、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーは、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する。また、(メタ)アクリロイル基含有モノマーはイソシアネートと反応しうる官能基を持たない化合物であることが好ましい。
【0034】
ここで、イソシアネートと反応しうる官能基とは、活性水素原子を有する官能基であり、例えばOH基、NH基、NH基、SH基、およびCOOH基が挙げられる。本発明で用いられる(メタ)アクリロイル基を有するモノマーはこれらの官能基を持たないことが好ましい。
【0035】
本発明で用いられる(メタ)アクリレートは、例えば、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート、および1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1.6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等の二官能(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等の三官能(メタ)アクリレート、およびジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の四官能以上の(メタ)アクリレートを含む多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0036】
(メタ)アクリレート化合物で市販されているものの製品名としては、例えば、ネオマー DA−600(三洋化成工業社製)、アロニックス M−309、M−7100、M309、(東亞合成社製)、A−DCP(新中村化学工業社製)、1.6HX−A(共栄化学工業社製)FA−125(日立化成工業社製)等が挙げられる。
【0037】
上記(メタ)アクリロイル基を有するモノマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0038】
本発明では、多官能(メタ)アクリロイル基含有モノマー、特に三官能以上の(メタ)アクリロイル基含有モノマーを用いることが好ましく、これにより、基板等の基材に対して本発明のモノマー組成物を塗布し、硬化することにより得られた硬化物(硬化後の塗膜)の耐熱性、硬度、および耐薬品性が極めて良好となる。
【0039】
[イソシアネート基を含有する化合物]
本発明では、イソシアネート基を含有する化合物として、脂肪族/脂環式イソシアネート、芳香族イソシアネート、およびブロックイソシアネートを使用することができる。
【0040】
本発明では多官能イソシアネートを用いることが好ましい。多官能イソシアネートを用いると、トリアジン骨格を持ったネットワーク構造をとるため、さらに耐熱性や耐薬品性等が向上するからである。
【0041】
これら脂肪族/脂環式イソシアネート、芳香族イソシアネートの配合量は、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー100質量部に対して2〜100質量部、好ましくは2〜50質量部である。
【0042】
また、ブロックイソシアネートの配合量は、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー100質量部に対して2〜200質量部である。2質量部より少ないと充分な熱硬化性が得られず、密着性、耐薬品性、耐熱性が得られない。200質量部を超えるとアクリロイルモノマーの含有量が少なくなり、紫外線硬化性が劣る。
【0043】
上記脂肪族/脂環式イソシアネート化合物としては、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDIまたはHMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルシクロヘキサン2,4−(2,6)−ジイソシアネート(水素化TDI)、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水素化MDI)、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、N,N’,N’’−トリス(6−イソシアネート、ヘキサメチレン)ビウレットなどがある。
【0044】
上記芳香族イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)などを挙げることができる。
【0045】
本発明では、これらのイソシアネートのいずれかを単独で用いても、2種類以上を用いてもよい。
【0046】
この他、1、6-ヘキサメチレンジイソシアネートのトリマー、イソホロンジイソシアネートのトリマーを用いてもよい。
【0047】
また、本発明の製造方法におけるモノマー組成物の一液化、およびシェルフライフの観点から、イソシアネート化合物は、公知のブロック化剤(封止剤)でブロックされたブロックイソシアネートを用いることが好ましい。
【0048】
ブロックイソシアネートで市販されているものの製品名としては、例えば、BI7961、BI7992(何れもBaxenden社製)、MF−K60X(旭化成ケミカルズ社製)、VPLS2253、BL4265SN(何れも住化バイエルウレタン社製)等が挙げられる。
【0049】
[ブロック化剤]
ブロック化剤としては、例えば、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、イソブタノールなどのアルコール類、フェノール、クロルフェノール、クレゾール、キシレノール、p−ニトロフェノールなどのフェノール類、p−t−ブチルフェノール、p−sec−ブチルフェノール、p−sec−アミノフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノールなどのアルキルフェノール類、3−ヒドロキシピリジン、8−ヒドロキシキノリン、8−ヒドロキシキナルジンなどの塩基性窒素含有化合物、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン化合物、アセトアミド、アクリルアミド、アセトアニリドなどの酸アミド類、コハク酸イミド、マレイン酸イミドなどの酸イミド類、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール等のピラゾール類、2−ピロリドン、ε−カプロラクタムなどのラクタム類、アセトキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトアルドキシムなどのケトンまたはアルデヒドのオキシム類、エチレンイミン、重亜硫酸塩などがあげられる。
【0050】
ブロックイソシアネートとしては、活性メチレン化合物およびピラゾール類の少なくとも何れか1種でブロックされたブロック化イソシアネートが好ましく、マロン酸ジエチルおよび3,5−ジメチルピラゾールの少なくとも何れか1種でブロックされたブロック化イソシアネートがより好ましく、3,5−ジメチルピラゾールでブロックされたブロック化イソシアネートが特に好ましい。
【0051】
上記ブロック剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよく、単独または2種類以上のブロック剤でブロックした複数種類のブロックイソシアネートを用いてもよい。
【0052】
[光重合開始剤]
また、本発明で使用されるモノマー組成物は、更に光重合開始剤を含んでもよい。光重合開始剤としては、エネルギー線の照射により、(メタ)アクリレートを重合させることが可能なものであれば、特に制限はなく、ラジカル重合開始剤が使用できる。
【0053】
光ラジカル重合開始剤としては、光、レーザー、電子線等によりラジカルを発生し、ラジカル重合反応を開始する化合物であれば全て用いることができる。当該光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;リボフラビンテトラブチレート;2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;2,4,6−トリス−s−トリアジン、2,2,2−トリブロモエタノール、トリブロモメチルフェニルスルホン等の有機ハロゲン化合物;ベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類またはキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0054】
上記光ラジカル重合開始剤は、単独でまたは複数種を混合して使用することができる。
【0055】
また更に、これらに加え、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類などの光開始助剤を使用することができる。また、可視光領域に吸収のあるCGI−784等(BASFジャパン社製)のチタノセン化合物等も、光反応を促進するために光ラジカル重合開始剤に添加することもできる。尚、光ラジカル重合開始剤に添加する成分はこれらに限られるものではなく、紫外光もしくは可視光領域で光を吸収し、(メタ)アクリロイル基等の不飽和基をラジカル重合させるものであれば、光重合開始剤、光開始助剤に限らず、単独であるいは複数併用して使用できる。
【0056】
光重合開始剤の配合量は、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー100質量部に対して0.5〜15質量部、より好ましくは0.5〜10質量部、さらに好ましくは1〜10質量部である。
【0057】
光重合開始剤で市販されているものの製品名としては、例えば、イルガキュア907、イルガキュア127(何れもBASFジャパン社製)等が挙げられる。
【0058】
[他の添加剤]
本発明のモノマー組成物には、必要に応じて消泡・レベリング剤、チクソトロピー付与剤・増粘剤、カップリング剤、分散剤、難燃剤等の添加剤を含有させることができる。
【0059】
消泡剤・レベリング剤としてはシリコーン、変性シリコーン、鉱物油、植物油、脂肪族アルコール、脂肪酸、金属石鹸、脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等の化合物等が使用できる。
【0060】
チクソトロピー付与剤・増粘剤としては、カオリナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、ベントナイト、タルク、マイカ、ゼオライト等の粘度鉱物や微粒子シリカ、シリカゲル、不定形無機粒子、ポリアミド系添加剤、変性ウレア系添加剤、ワックス系添加剤などが使用できる。
【0061】
消泡・レベリング剤、チクソトロピー付与剤・増粘剤を添加することにより硬化物の表面特性および組成物の性状の調整を行うことができる。
【0062】
カップリング剤としては、アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、アセチル等であり、反応性官能基としてビニル、メタクリル、アクリル、エポキシ、環状エポキシ、メルカプト、アミノ、ジアミノ、酸無水物、ウレイド、スルフィド、イソシアネート等である例えば、ビニルエトキシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル・トリス(β―メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシラン等のビニル系シラン化合物、γ−アミノプロピルトリメトキシラン、Ν―β―(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ユレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シラン化合物、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β―(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ系シラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シラン化合物、Ν―フェニル―γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のフェニルアミノ系シラン化合物等のシランカップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイル化チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラ(1,1−ジアリルオキシメチルー1−ブチル)ビスー(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等のチタネート系カップリング剤、エチレン性不飽和ジルコネート含有化合物、ネオアルコキシジルコネート含有化合物、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデシル)ベンゼンスルホニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ジオクチル)ホスフェートジルコネート、ネオアルコキシトリス(ジオクチル)ピロホスフェートジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノ)エチルジルコネート、ネオアルコキシトリス(m−アミノ)フェニルジルコネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル)ブチル,ジ(ジトリデシル)ホスフィトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリネオデカノイルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ドデシル)ベンゼン−スルホニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ホスファトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ピロ−ホスファトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(N−エチレンジアミノ)エチルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(m−アミノ)フェニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリメタクリルジルコネート(、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリアクリルジルコネート、ジネオペンチル(ジアリル)オキシ,ジパラアミノベンゾイルジルコネート、ジネオペンチル(ジアリル)オキシ,ジ(3−メルカプト)プロピオニックジルコネート、ジルコニウム(IV)2,2−ビス(2−プロペノラトメチル)ブタノラト,シクロジ[2,2−(ビス2−プロペノラトメチル)ブタノラト]ピロホスファト−O,O等のジルコネート系カップリング剤、ジイソブチル(オレイル)アセトアセチルアルミネート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等のアルミネート系カップリング剤等が使用できる。
【0063】
分散剤としては、ポリカルボン酸系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合系、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸部分アルキルエステル系、ポリエーテル系、ポリアルキレンポリアミン系等の高分子型分散剤、アルキルスルホン酸系、四級アンモニウム系、高級アルコールアルキレンオキサイド系、多価アルコールエステル系、アルキルポリアミン系等の低分子型分散剤等が使用できる。
【0064】
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水和金属系、赤燐、燐酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、モリブデン化合物系、臭素化合物系、塩素化合物系、燐酸エステル、含燐ポリオール、含燐アミン、メラミンシアヌレート、メラミン化合物、トリアジン化合物、グアニジン化合物、シリコンポリマー等が使用できる。
【0065】
更に、本発明のモノマー組成物には、有機バインダー成分を添加することができる。また、重合速度や重合度を調整するためには、重合禁止剤、重合遅延剤を添加することも可能である。
【0066】
本発明のモノマー組成物には、着色を目的として、着色顔料や染料等を添加しても良い。着色顔料や染料等としては、以下のようなカラ−インデックスで表される公知慣用のものが使用可能である。
【0067】
例えば、Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、60、Solvent Blue 35、63、68、70、83、87、94、97、122、136、67、70、Pigment Green 7、36、3、5、20、28、Solvent Yellow 163、Pigment Yellow 24、108、193、147、199、202、110、109、139、179、185、93、94、95、128、155、166、180、120、151、154、156、175、181、1、2、3、4、5、6、9、10、12、61、62、62:1、65、73、74、75、97、100、104、105、111、116、167、168、169、182、183、12、13、14、16、17、55、63、81、83、87、126、127、152、170、172、174、176、188、198、Pigment Orange 1、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、61、63、64、71、73、Pigment Red 1、2、3、4、5、6、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、112、114、146、147、151、170、184、187、188、193、210、245、253、258、266、267、268、269、37、38、41、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53:1、53:2、57:1、58:4、63:1、63:2、64:1、68、171、175、176、185、208、123、149、166、178、179、190、194、224、254、255、264、270、272、220、144、166、214、220、221、242、168、177、216、122、202、206、207、209、Solvent Red 135、179、149、150、52、207、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet 13、36、PigmentBrown 23、25、PigmentBlack 1、7等が挙げられる。これら着色顔料・染料等は、モノマー組成物100質量部に対して、0.01〜5質量部添加することが好ましい。また、本発明のモノマー組成物をマーキング用に用いる場合には、視認性を確保するためにルチル型やアナターゼ型の酸化チタンを添加すると好ましい。この場合は、モノマー組成物100質量部に対して、1〜20質量部添加することが好ましい。これら着色顔料・染料等は単独や2種以上の併用で使用できる。
【0068】
更に、本発明のモノマー組成物には、粘度調整のため溶剤を用いてもよいが、硬化後の膜厚低下を防ぐために、添加量は少ないことが好ましい。また、粘度調整のための溶剤は含まないことがより好ましい。
【0069】
本発明のモノマー組成物が光重合開始剤を含む場合には、紫外線、電子線、化学線等の活性エネルギー線を照射することにより(メタ)アクリレートを光硬化させ、その後、上述のように加熱をすることにより(メタ)アクリレートを重合させることができる。
【0070】
従って、基板等の基材に塗布されたモノマー組成物を、光照射による光硬化と、次いで加熱による熱硬化による二段階で硬化させることにより、作業性および前記硬化物の一般的な諸特性が向上する。
【0071】
本発明では、モノマー組成物の本硬化に際して、公知の加熱手段、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の加熱炉を使用することができる。
【0072】
本発明の製造方法により製造されたポリ(メタ)アクリレートは、透明性、可塑性、耐衝撃性、密着性、耐薬品性、耐熱性、および絶縁性等に優れることから種々の用途に適用可能である。例えば、建築物や車両等乗物の窓材等に用いられる他、電気・電子機器、日用品、事務用品等にも適用可能であり、特に、耐衝撃性、密着性、耐薬品性、耐熱性、および絶縁性が必要な製品、例えばプリント配線板に用いられることが好ましい。
【0073】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成および実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【実施例】
【0074】
I.熱硬化試験
[実施例1〜11、および比較例1〜4]
表1に示す割合で各成分を配合し、これをディゾルバーで攪拌して本発明のモノマー組成物および比較モノマー組成物を得た。
【0075】
[ゲルタイム測定]
本発明のモノマー組成物に対し、ゲル化試験機(日新科学社製ゲル化試験機)を用いて以下のように所定の温度で加熱し、ゲル化するまでの時間を測定した。結果を表1に記載する。
実施例1〜8: 150℃
実施例9〜11: 170℃
比較例1: 150℃
比較例2〜4: 170℃
【0076】
【表1】
【0077】
表中の各材料の配合量は質量部を単位とする。
【0078】
ゲルタイムとは、モノマー組成物の加熱を開始してから、材料が流動性を失い固化するまでの時間をいう(ゲル化試験機により測定、秒を単位とする)。
【0079】
なお、表1に記載の材料の詳細は以下の通りである。
【0080】
アクリレート1:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)
東亞合成社製 M-309
【化1】
【0081】
アクリレート2:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート
新中村化学社製 A-DCP


【化2】
【0082】
アクリレート3:1.6-ヘキサンジオールジアクリレート
共栄社化学社製 1.6HX−a
【化3】
【0083】
アクリレート4:ネオペンチルグリコールジアクリレート
日立化成工業社製 FA-125M

【化4】
【0084】
イソシアネート1:m−キシリレンジイソシアネート
【化5】
【0085】
イソシアネート2:イソホロンジイソシアネート
【化6】
【0086】
イソシアネート3:1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート
【化7】
【0087】
ブロックイソシアネート1:Baxenden社製 BI7961「
固形分70% NCO分 10.2%
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体をジメチルピラゾールでブロックしたもの

【化8】
【0088】
【化9】
【0089】
ブロックイソシアネート2:Baxenden社製 BI7992
固形分70% NCO分 9.2%
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのトリマーをジメチルピラゾールと(活性メチレン化合物)ジエチルマロネートでブロックしたもの
【化10】
【0090】
【化11】
【0091】
ブロックイソシアネート3:旭化成ケミカルズ社製 MF−K60X
固形分60% NCO分 6.6%
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを活性メチレン化合物でブロックしたもの
【0092】
ブロックイソシアネート4:住化バイエルウレタン社製 VPLS2253
固形分75% NCO分 10.5%
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのトリマーをジメチルピラゾールでブロックしたもの
【0093】
ブロックイソシアネート5:住化バイエルウレタン社製 BL4265SN
固形分65% NCO分 8.1%
イソホロンジイソシアネートのトリマーを、メチルエチルケトンオキシムでブロックしたもの
【化12】
【0094】
【化13】
【0095】
ゲルタイム測定により、実施例1〜8の組成物では150℃を行う場合、21秒〜590秒、にてアクリレートの重合が完了することがわかる。
【0096】
一方、イソシアネートを含まない比較例1においては、1000秒以上の試験においてもゲル化は起こらなかった。
【0097】
また、実施例9〜11の組成物でも最大926秒でゲル化が生じ、重合反応が完了している。一方、比較例2〜4ではこれよりも長時間である2000秒以上試験を行なってもゲル化は起こらなかった。このことより、アクリロイルとイソシアネートの共存化では低温で反応が起きているが、イソシアネート不存在下では反応が生じないことがわかる。
【0098】
[DSCデータの測定]
実施例1および比較例1の組成物について、セイコーインスツル社製EXSTARを用い、示差走査熱量測定(DSC)を行った。得られたDSC曲線を図1に示す。
【0099】
この結果、実施例1によるトリメチロールプロパントリアクリレートとイソシアネート(m-キシリレンジイソシアネートとの組成物の発熱ピークは、比較例1によるトリメチロールプロパントリアクリレートのみの発熱ピークよりも、低温側にシフトしており、低温での硬化が可能とされることがわかる。
【0100】
このDSC測定結果は、実施例1および比較例1で生じ得る重合のピークを間接的に示すものであり、上述のゲルタイム測定結果とも一致しているため、ゲル化によりアクリレートの重合が生じていると結論づけることができる。
【0101】
[赤外分光光度の測定]
実施例1の組成物について、パーキンエルマージャパン社製Spectrum100を用い、赤外分光法(IR Spectroscopy)による吸光度(absorption)を測定した。なお、マクロATRユニットとして、smiths Dura Sampl IRIIを用いた。
【0102】
この測定は、まず、実施例1の組成物を2枚のKBr板にスパチュラにより塗布し、一方を空気中80℃にて30分間加熱し(サンプル1)、他方を空気中150℃30分間加熱したもの(サンプル2)について行われた。
【0103】
サンプル1について得られたIRチャートを図2の上段に、サンプル2について得られたIRチャートを図2の下段に示す。
【0104】
サンプル1および2のIRチャートを比較すると、イソシアネート基を示す2260cm−1付近のピークが、サンプル1(80℃加熱)では顕著であるが、サンプル2(150℃加熱)では大幅に減少している。
【0105】
更に、アクリロイル基を示す1406cm−1付近のピークも、サンプル1(80℃加熱)では顕著であるが、サンプル2(150℃加熱)では大幅に減少している。
【0106】
これによりイソシアネートとアクリル基は加熱で消費されていることがわかる。
【0107】
また、1721cm−1付近のカルボニルのピークは、サンプル1(80℃加熱)よりも、サンプル2(150℃加熱)では増大していることが観察される。
【0108】
これはイソシアネート基が3量体化してカルボニル基を生成したことを示唆している。
【0109】
図1図2に示した測定結果を併せて考察すると、イソシアネートとアクリレートが共存している状態で加熱することにより、イソシアネートの3量化が起こり、その3量化の反応に伴い、アクリレートの重合が生じていると言える。
【0110】
II.光熱併用硬化試験
[実施例12、13、および比較例5]
1.紫外線照射工程
表2に示す割合で各成分を配合し、これをディゾルバーで攪拌して本発明のモノマー組成物および比較モノマー組成物を得た。
【0111】
【表2】
【0112】
なお、表2に記載の材料の詳細は以下の通りである。
アクリレート1:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)
東亞合成社製 M-309
光重合開始剤1:BASFジャパン社製 イルガキュア907
光重合開始剤2:BASFジャパン社製 イルガキュア127
イソシアネート1:m−キシリレンジイソシアネート
ブロックイソシアネート2:ブロックイソシアネート2:Baxenden社製 BI7992
固形分70% NCO分 9.2%(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを活性メチレン化合物でブロックしたもの)
レベリング剤:ビックケミー・ジャパン社製 BYK−307
【0113】
[試験用サンプルの作成]
A.紫外線照射サンプル:FR−4/10μ
本発明のモノマー組成物および比較モノマー組成物を150mm×95mm×1.6mmのFR-4銅張り積層板(基板)に、バーコーターにより厚さ10μmになるように塗布した未硬化サンプルを、各試験用に多数作成した。これらの未硬化サンプルに、高圧水銀灯にて、積算光量150mJ/cm2の紫外線を照射した。
紫外線照射工程後の各サンプル(紫外線照射サンプル:FR−4/10μ)を、下記の密着性試験、鉛筆硬度硬度試験、耐薬品性試験、耐熱試験に付した。試験結果を表3に記載する。
B.紫外線照射・加熱サンプル:FR−4/10μ
紫外線照射サンプル:FR−4/10μを、熱風循環式乾燥炉により150℃で30分間加熱して、紫外線照射・加熱後のサンプル(紫外線照射・加熱サンプル:FR-4/10μ)を得た。このサンプルを下記の密着性試験、鉛筆硬度硬度試験、耐薬品性試験、および耐熱試験に付した。試験結果を表4に記載する。
C.紫外線照射・加熱サンプル::Bクーポン/40μ
本発明のモノマー組成物および比較モノマー組成物を、IPC B−25テストパターンのクシ型電極Bクーポン(基板)に厚さ40μmになるように塗布して、上記と同様の紫外線照射、次いで上記と同様の加熱を行うことにより、紫外線照射・加熱のサンプル:Bクーポン/40μを得た。これを下記の絶縁性試験に付した。
上記各サンプルについて以下に示す特性試験を行った。
【0114】
[1.密着性試験]
各サンプルの塗膜表面にカッターナイフで1mm間隔、縦横11本の切れ目を入れて、塗膜表面の縦横の切れ目に囲まれた100のカット区画上にセロハンテープを貼付し、剥離して、テープにより引きはがされずにFR-4に残存している塗膜のカット区画の数を調べた。
【0115】
[2.鉛筆硬度試験]
各サンプルを作製し、JISK5400に従い、三菱鉛筆製Hi-uniを用いて鉛筆硬度試験を測定した。
具体的には、鉛筆の木部を削りとり、芯は5〜6mmの長さにした。芯先端を研磨紙で平滑に研磨しで円形の断面を得た鉛筆を使用した。この鉛筆を、サンプル表面に対して45度の角度で保持し、サンプル表面に施される加重1kgとして、45度の角度で塗膜を引っかいた。塗膜が基板まで達しなかった鉛筆の最大の硬度を表2に記載した。
【0116】
[3.耐薬品性試験]
各サンプルを、10%の硫酸水溶液に室温で30分浸漬させ、これを取り出した後に水洗・乾燥させた。乾燥後の各サンプルについて、塗膜の状態を目視評価後、セロテープ(登録商標)でピーリングを行い、以下のとおり評価した。
○:塗膜の状態に全く変化がない。
×:塗膜に浮き、はがれがある。または、セロテープ(登録商標)に大きく転写するはがれがある。
【0117】
[4.耐熱試験]
各サンプルにロジン系フラックス(サンワ化学社製SF−270)を塗布して、260℃のはんだ槽に10秒間浸漬した。各サンプルをはんだ層から取り出して自然冷却した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで洗浄し、乾燥した。この試験を3回繰返した後、各試験片の塗膜の状態を目視評価後、セロテープ(登録商標)でピーリングを行い、以下のとおり評価した。
○:塗膜の状態に全く変化がない。
△:目視では変化が無いが、セロテープ(登録商標)ピーリングでは若干のはがれがある。
×:塗膜に浮き、はがれがある。または、セロテープ(登録商標)に大きく転写するはがれがある。
【0118】
[5.絶縁性試験]
先に述べた紫外線照射サンプル:Bクーポン/40μに、DC500Vのバイアスを印加し、絶縁抵抗値を測定した。以下のとおり評価した。
○:絶縁抵抗値≧100GΩ
×:絶縁抵抗値<100GΩ
【0119】
A.紫外線照射サンプル:FR-4/10μについての試験結果
(密着性試験、鉛筆硬度試験、耐薬品性試験、および耐熱性試験)
【表3】
B.紫外線照射・加熱サンプル:FR-4/10μについての試験結果
(密着性試験、鉛筆硬度硬度試験、耐薬品性試験、および耐熱試験)
C.紫外線照射・加熱サンプル:Bクーポン/40μについての試験結果(絶縁性試験)
【0120】
【表4】
−:未評価
【0121】
上記表4から明らかなように、本発明の製造方法により得られた塗膜・硬化物は密着性、硬度、耐薬品性、耐熱性および絶縁性の全てにおいて優れた性能を有する。
【0122】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成および実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
図1
図2