特許第6260579号(P6260579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6260579フルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン、表面処理剤及び物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6260579
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】フルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン、表面処理剤及び物品
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/336 20060101AFI20180104BHJP
   C09D 183/06 20060101ALI20180104BHJP
   C09D 183/12 20060101ALI20180104BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   C08G65/336
   C09D183/06
   C09D183/12
   C09K3/18 104
   C09K3/18 102
【請求項の数】8
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2015-93830(P2015-93830)
(22)【出願日】2015年5月1日
(65)【公開番号】特開2016-210854(P2016-210854A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2017年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】酒匂 隆介
(72)【発明者】
【氏名】松田 高至
(72)【発明者】
【氏名】山根 祐治
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−204656(JP,A)
【文献】 特開2015−199906(JP,A)
【文献】 特開2015−196723(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/101185(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/336
C09D 183/06
C09D 183/12
C09K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rfは1価のフルオロオキシアルキル基又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基であり、Yはシロキサン結合又はシリレン基を有してもよい2〜6価の炭化水素基であり、R、R’はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、X、X’はそれぞれ独立に水酸基又は加水分解性基であり、nは1〜3の整数であり、aは0〜3の整数であり、mは1〜5の整数であり、αは1又は2である。)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン。
【請求項2】
前記式(1)のαが1であり、Rf基が下記一般式(2)で表される基であることを特徴とする請求項1に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン。
【化2】
(式中、p、q、r、sはそれぞれ0〜200の整数で、p+q+r+s=3〜200であり、tは1〜3の整数であり、各繰り返し単位は直鎖状でも分岐状であってもよく、各繰り返し単位同士はランダムに結合されていてよい。)
【請求項3】
前記式(1)のαが2であり、Rf基が下記一般式(3)で表される基であることを特徴とする請求項1に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン。
【化3】
(式中、p、q、r、sはそれぞれ0〜200の整数で、p+q+r+s=3〜200であり、tは1〜3の整数であり、各繰り返し単位は直鎖状でも分岐状であってもよく、各繰り返し単位同士はランダムに結合されていてよい。)
【請求項4】
前記式(1)において、Yが、炭素数3〜10のアルキレン基、フェニレン基を含む炭素数8〜16のアルキレン基、炭素数2〜10のアルキレン基相互がシルアルキレン構造又はシルアリーレン構造を介して結合している2価の基、及び2〜4価であるケイ素原子数2〜10個の直鎖状、又はケイ素原子数3〜10個の分岐状もしくは環状のオルガノポリシロキサン残基の結合手に炭素数2〜10のアルキレン基が結合している2〜4価の基からなる群より選ばれる基である請求項1〜3のいずれか1項に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン。
【請求項5】
前記式(1)において、X、X’が、それぞれ水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアルコキシアルコキシ基、炭素数1〜10のアシロキシ基、炭素数2〜10のアルケニルオキシ基及びハロゲン基からなる群より選ばれる請求項1〜4のいずれか1項に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン。
【請求項6】
式(1)で表されるポリマー変性シランが、下記式で表されるものである請求項1〜5のいずれか1項に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン。
【化4】
【化5】
【化6】
(式中、p1は5〜100の整数、q1は5〜100の整数で、p1+q1は10〜105の整数である。)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランを含む表面処理剤。
【請求項8】
請求項7に記載の表面処理剤で表面処理された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランに関し、詳細には、耐候性、保存安定性に優れた被膜を形成するフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン、及び該シランを含む表面処理剤、並びに該表面処理剤で表面処理された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話のディスプレイをはじめ、画面のタッチパネル化が加速している。しかし、タッチパネルは画面がむき出しの状態であり、指や頬などが直接接触する機会が多く、皮脂等の汚れが付き易いことが問題となっている。そこで、外観や視認性をよくするためにディスプレイの表面に指紋を付きにくくする技術や、汚れを落とし易くする技術の要求が年々高まってきており、これらの要求に応えることのできる材料の開発が望まれている。特にタッチパネルディスプレイの表面は指紋汚れが付着し易いため撥水撥油層を設けることが望まれている。しかし、従来の撥水撥油層は撥水撥油性が高く、汚れ拭取り性に優れるが、使用中に防汚性能が劣化してしまうという問題点があった。
【0003】
一般に、フルオロポリエーテル基含有化合物は、その表面自由エネルギーが非常に小さいために、撥水撥油性、耐薬品性、潤滑性、離型性、防汚性などを有する。その性質を利用して、工業的には紙・繊維などの撥水撥油防汚剤、磁気記録媒体の滑剤、精密機器の防油剤、離型剤、化粧料、保護膜など、幅広く利用されている。しかし、その性質は同時に他の基材に対する非粘着性、非密着性であることを意味しており、基材表面に塗布することはできても、その被膜を密着させることは困難であった。
【0004】
一方、ガラスや布などの基材表面と有機化合物とを結合させるものとして、シランカップリング剤が良く知られており、各種基材表面のコーティング剤として幅広く利用されている。シランカップリング剤は、1分子中に有機官能基と反応性シリル基(一般にはアルコキシシリル基等の加水分解性シリル基)を有する。加水分解性シリル基が、空気中の水分などによって自己縮合反応を起こして被膜を形成する。該被膜は、加水分解性シリル基がガラスや金属などの表面と化学的・物理的に結合することにより耐久性を有する強固な被膜となる。
【0005】
そこで、フルオロポリエーテル基含有化合物に加水分解性シリル基を導入したフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランを用いることによって、基材表面に密着し易く、かつ基材表面に、撥水撥油性、耐薬品性、潤滑性、離型性、防汚性等を有する被膜を形成しうる組成物が開示されている(特許文献1〜5:特表2008−534696号公報、特表2008−537557号公報、特開2012−072272号公報、特開2012−157856号公報、特開2013−136833号公報)。
【0006】
該フルオロポリエーテル基含有化合物に加水分解性シリル基を導入したフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランを含有する組成物で表面処理したレンズや反射防止膜は、滑り性、離型性に優れるが、耐摩耗性、耐候性が十分でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2008−534696号公報
【特許文献2】特表2008−537557号公報
【特許文献3】特開2012−072272号公報
【特許文献4】特開2012−157856号公報
【特許文献5】特開2013−136833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、耐摩耗性に優れたフルオロポリエーテル基含有化合物として、下記式
【化1】
(式中、Rfは1価のフルオロオキシアルキル基又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基であり、Yはシロキサン結合又はシリレン基を有してもよい2〜6価の炭化水素基であり、Rは独立に炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、Xは独立に加水分解性基であり、nは1〜3の整数であり、mは1〜5の整数であり、αは1又は2である。)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランを提案しており(特願2014−250460)、該フルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン及び/又はその部分加水分解縮合物を含有する表面処理剤から形成される被膜は、高い撥水撥油性、耐摩耗性を示す。しかし、低温で硬化が可能な半面、高い反応性により保存安定性に劣る場合があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、耐候性、保存安定性に優れた撥水撥油層を形成することができるフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン、及び該シランを含む表面処理剤、並びに該表面処理剤で表面処理された物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を解決すべく鋭意検討した結果、上記フルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランにおいて、水酸基をシリル基で保護した、後述する一般式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランが、耐候性に優れ、かつ保存安定性に優れた撥水撥油層を形成し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
従って、本発明は、下記フルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン、表面処理剤及び物品を提供する。
〔1〕
下記一般式(1)
【化2】
(式中、Rfは1価のフルオロオキシアルキル基又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基であり、Yはシロキサン結合又はシリレン基を有してもよい2〜6価の炭化水素基であり、R、R’はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、X、X’はそれぞれ独立に水酸基又は加水分解性基であり、nは1〜3の整数であり、aは0〜3の整数であり、mは1〜5の整数であり、αは1又は2である。)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン。
〔2〕
前記式(1)のαが1であり、Rf基が下記一般式(2)で表される基であることを特徴とする〔1〕に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン。
【化3】
(式中、p、q、r、sはそれぞれ0〜200の整数で、p+q+r+s=3〜200であり、tは1〜3の整数であり、各繰り返し単位は直鎖状でも分岐状であってもよく、各繰り返し単位同士はランダムに結合されていてよい。)
〔3〕
前記式(1)のαが2であり、Rf基が下記一般式(3)で表される基であることを特徴とする〔1〕に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン。
【化4】
(式中、p、q、r、sはそれぞれ0〜200の整数で、p+q+r+s=3〜200であり、tは1〜3の整数であり、各繰り返し単位は直鎖状でも分岐状であってもよく、各繰り返し単位同士はランダムに結合されていてよい。)
〔4〕
前記式(1)において、Yが、炭素数3〜10のアルキレン基、フェニレン基を含む炭素数8〜16のアルキレン基、炭素数2〜10のアルキレン基相互がシルアルキレン構造又はシルアリーレン構造を介して結合している2価の基、及び2〜4価であるケイ素原子数2〜10個の直鎖状、又はケイ素原子数3〜10個の分岐状もしくは環状のオルガノポリシロキサン残基の結合手に炭素数2〜10のアルキレン基が結合している2〜4価の基からなる群より選ばれる基である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン。
〔5〕
前記式(1)において、X、X’が、それぞれ水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアルコキシアルコキシ基、炭素数1〜10のアシロキシ基、炭素数2〜10のアルケニルオキシ基及びハロゲン基からなる群より選ばれる〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン。
〔6〕
式(1)で表されるポリマー変性シランが、下記式で表されるものである〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン。
【化5】
【化6】
【化7】
(式中、p1は5〜100の整数、q1は5〜100の整数で、p1+q1は10〜105の整数である。)
〔7〕
〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランを含む表面処理剤。
〔8〕
〔7〕に記載の表面処理剤で表面処理された物品。
【発明の効果】
【0012】
本発明の炭素原子に結合した水酸基をシリル基で封止したフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランを含有する表面処理剤は、保存安定性、耐候性に優れた撥水撥油層を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランは、下記一般式(1)で表されるものである。
【化8】
(式中、Rfは1価のフルオロオキシアルキル基又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基であり、Yはシロキサン結合又はシリレン基を有してもよい2〜6価の炭化水素基であり、R、R’はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、X、X’はそれぞれ独立に水酸基又は加水分解性基であり、nは1〜3の整数であり、aは0〜3の整数であり、mは1〜5の整数であり、αは1又は2である。)
【0014】
本発明のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランは、1価のフルオロオキシアルキル基又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基(Rf)と、アルコキシシリル基等の加水分解性シリル基あるいは水酸基含有シリル基(−Si(R)3-n(X)n)が、炭化水素鎖(Y)を介して結合した構造であり、更にポリマー内の炭素原子に結合した水酸基をシリル基(−Si(R’)3-a(X’)a)で保護することにより、耐候性、保存安定性に優れた撥水撥油層を形成し、該撥水撥油層は耐摩耗性に悪影響を与えない。
【0015】
上記式(1)において、αが1の場合、Rfとしては、下記一般式(2)で表される1価のフルオロオキシアルキル基が好ましい。
【化9】
(式中、p、q、r、sはそれぞれ0〜200の整数で、p+q+r+s=3〜200であり、tは1〜3の整数であり、各繰り返し単位は直鎖状でも分岐状であってもよく、各繰り返し単位同士はランダムに結合されていてよい。)
【0016】
上記式(1)において、αが2の場合、Rfとしては、下記一般式(3)で表される2価のフルオロオキシアルキレン基が好ましい。
【化10】
(式中、p、q、r、sはそれぞれ0〜200の整数で、p+q+r+s=3〜200であり、tは1〜3の整数であり、各繰り返し単位は直鎖状でも分岐状であってもよく、各繰り返し単位同士はランダムに結合されていてよい。)
【0017】
上記式(2)、(3)において、p、q、r、sはそれぞれ0〜200の整数、好ましくはpは5〜100の整数、qは5〜100の整数、rは0〜100の整数、sは0〜100の整数であり、p+q+r+s=3〜200、好ましくは10〜100であり、各繰り返し単位は直鎖状でも分岐状であってもよく、各繰り返し単位同士はランダムに結合されていてよい。より好ましくはp+qは10〜105、特に15〜60の整数であり、r=s=0である。p+q+r+sが上記上限値より小さければ密着性や硬化性が良好であり、上記下限値より大きければフルオロポリエーテル基の特徴を十分に発揮することができるので好ましい。
また、tは1〜3の整数であり、好ましくは1又は2であり、Ct2tは直鎖状でも分岐状であってもよい。
【0018】
Rfとして、具体的には、下記のものを例示することができる。
【化11】
【化12】
(式中、p’、q’、r’、s’はそれぞれ1以上の整数であり、その上限は上記p、q、r、sの上限と同じである。uは1〜24、vは1〜24で、u+v=rを満足する数である。各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
【0019】
上記式(1)において、Yはシロキサン結合又はシリレン基を有してもよい2〜6価、好ましくは2〜4価、より好ましくは2価の炭化水素基であり、分子中に結合エネルギーの低い連結基(エーテル結合など)を含まないことで耐候性、耐摩耗性に優れたコーティング膜を与えることができる。
Yとして、具体的には、炭素数3〜10のプロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基等のアルキレン基、炭素数6〜8のフェニレン基等のアリーレン基を含むアルキレン基(例えば、炭素数8〜16のアルキレン・アリーレン基等)、炭素数2〜10のアルキレン基相互がシルアルキレン構造又はシルアリーレン構造を介して結合している2価の基、2〜6価であるケイ素原子数2〜10個、好ましくは2〜5個の直鎖状、分岐状又は環状のオルガノポリシロキサン残基の結合手にアルキレン基が結合している2〜6価の基などが挙げられ、好ましくは炭素数3〜10のアルキレン基、フェニレン基を含む炭素数8〜16のアルキレン基、炭素数2〜10のアルキレン基相互がシルアルキレン構造又はシルアリーレン構造を介して結合している2価の基、2〜4価であるケイ素原子数2〜10個の直鎖状、又はケイ素原子数3〜10個の分岐状もしくは環状のオルガノポリシロキサン残基の結合手に炭素数2〜10のアルキレン基が結合している2〜4価の基であり、更に好ましくは炭素数3〜6のアルキレン基である。
【0020】
ここで、シルアルキレン構造、シルアリーレン構造としては、下記に示すものが例示できる。
【化13】
(式中、R1は炭素数1〜4のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、炭素数6〜10のフェニル基等のアリール基であり、R1は同一でも異なっていてもよい。R2は炭素数1〜4のメチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)等のアルキレン基、炭素数6〜10のフェニレン基等のアリーレン基である。)
【0021】
また、ケイ素原子数2〜10個、好ましくは2〜5個の直鎖状、分岐状又は環状の2〜6価のオルガノポリシロキサン残基としては、下記に示すものが例示できる。
【化14】
【化15】
(式中、R1は上記と同じである。gは1〜9、好ましくは1〜4の整数であり、hは2〜6、好ましくは2〜4の整数、jは0〜8の整数、好ましくは0又は1で、h+jは3〜10、好ましくは3〜5の整数であり、kは1〜3の整数であり、好ましくは2又は3である。)
【0022】
Yの具体例としては、例えば、下記の基が挙げられる。
【化16】
【0023】
上記式(1)において、Xは互いに異なっていてよい水酸基又は加水分解性基である。このようなXとしては、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数1〜10のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基などの炭素数2〜10のアルコキシアルコキシ基、アセトキシ基などの炭素数1〜10のアシロキシ基、イソプロペノキシ基などの炭素数2〜10のアルケニルオキシ基、クロル基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基などが挙げられる。中でもメトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基、クロル基が好適である。
【0024】
上記式(1)において、Rは、炭素数1〜4のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、又はフェニル基であり、中でもメチル基が好適である。
nは1〜3の整数、好ましくは2又は3であり、反応性、基材に対する密着性の観点から3がより好ましい。
mは1〜5の整数であり、1未満だと基材への密着性が低下し、6以上だと末端アルコキシ価が高すぎて性能に悪影響を与えるため、好ましくは1〜3の整数であり、特に1が好ましい。
【0025】
上記式(1)において、X’は互いに異なっていてよい水酸基又は加水分解性基である。このようなX’としては、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数1〜10のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基などの炭素数2〜10のアルコキシアルコキシ基、アセトキシ基などの炭素数1〜10のアシロキシ基、イソプロペノキシ基などの炭素数2〜10のアルケニルオキシ基、クロル基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基などが挙げられる。中でもメトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基、クロル基が好適である。
【0026】
上記式(1)において、R’は、炭素数1〜4のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、又はフェニル基であり、中でもメチル基、エチル基が好適である。
aは0〜3の整数、好ましくは0又は1であり、保存安定性の観点から0がより好ましい。
【0027】
上記式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランとしては、下記式で表されるものが例示できる。なお、各式において、フルオロオキシアルキル基又はフルオロオキシアルキレン基を構成する各繰り返し単位の繰り返し数(又は重合度)は、上記式(2),(3)を満足する任意の数をとり得るものである。
【0028】
【化17】
【0029】
【化18】
【0030】
【化19】
(式中、p1は5〜100の整数、q1は5〜100の整数で、p1+q1は10〜105の整数である。)
【0031】
上記式(1)で表され、αが1の場合のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの調製方法としては、例えば、下記のような方法が挙げられる。
分子鎖片末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーを、溶剤、例えば1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなどのフッ素系溶剤に溶解させ、トリメトキシシラン等の分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物を、ヒドロシリル化反応触媒、例えば塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液存在下、40〜120℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは約80℃の温度で、1〜72時間、好ましくは20〜36時間、より好ましくは約24時間熟成させる。
【0032】
また、上記式(1)で表され、αが1の場合のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの調製方法の別法としては、例えば下記のような方法が挙げられる。
分子鎖片末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーを、溶剤、例えば1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなどのフッ素系溶剤に溶解させ、トリクロロシラン等の分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物を、ヒドロシリル化反応触媒、例えば塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液存在下、40〜120℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは約80℃の温度で、1〜72時間、好ましくは20〜36時間、より好ましくは約24時間熟成させた後、シリル基上の置換基を例えばメトキシ基などに変換する。
【0033】
なお、上記分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物に代えて、加水分解性末端基を有さないSiH基含有有機ケイ素化合物を用いることもでき、この場合、有機ケイ素化合物として、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物を使用する。その際、上記の方法と同様にして分子鎖片末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーと分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物とを反応させた後、該反応物のポリマー末端のSiH基とアリルトリメトキシシラン等の分子中にオレフィン部位と加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物とをヒドロシリル化反応触媒、例えば塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液存在下、40〜120℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは約80℃の温度で、1〜72時間、好ましくは20〜36時間、より好ましくは約24時間熟成させる。
【0034】
ここで、分子鎖片末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーとしては、下記一般式(4)で表されるフルオロオキシアルキル基含有ポリマーが例示できる。
【化20】
(式中、Rf、R’、X’、aは上記と同じである。Zは2価炭化水素基である。)
【0035】
上記式(4)において、Zは2価炭化水素基であり、炭素数1〜8、特に1〜4の2価炭化水素基であることが好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等の炭素数1〜8のアルキレン基、フェニレン基等の炭素数6〜8のアリーレン基を含むアルキレン基(例えば、炭素数7〜8のアルキレン・アリーレン基等)などが挙げられる。Zとして、好ましくは炭素数1〜4の直鎖アルキレン基である。
【0036】
式(4)で表されるフルオロオキシアルキル基含有ポリマーとして、好ましくは下記に示すものが例示できる。なお、各式において、フルオロオキシアルキル基を構成する各繰り返し単位の繰り返し数(又は重合度)は、上記Rf中の式(2)を満足する任意の数をとり得るものである。
【化21】
【化22】
(式中、r1は1〜100の整数であり、p1、q1、p1+q1は上記と同じである。)
【0037】
上記式(4)で表されるフルオロオキシアルキル基含有ポリマーの調製方法としては、例えば、分子鎖片末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーと、シリル化剤とを、塩基の存在下、必要により溶剤を用い、0〜80℃、好ましくは40〜60℃、より好ましくは約50℃の温度で、1〜24時間、好ましくは2〜10時間、より好ましくは約3時間熟成する。
【0038】
また、上記式(4)で表されるフルオロオキシアルキル基含有ポリマーの調製方法の別法としては、例えば、分子鎖片末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーとヒドロシランとを脱水素触媒の存在下、溶剤を用いて0〜60℃、好ましくは15〜35℃、より好ましくは約25℃の温度で、10分〜24時間、好ましくは30分〜2時間、より好ましくは約1時間脱水素反応を行う。
【0039】
ここで、式(4)で表されるフルオロオキシアルキル基含有ポリマーの調製に用いられる分子鎖片末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーとして、具体的には、下記に示すものが挙げられる。
【化23】
【化24】
(式中、r1、p1、q1、p1+q1は上記と同じである。)
【0040】
上記分子鎖片末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーの調製方法としては、例えば、分子鎖片末端に酸フロライド基(−C(=O)−F)を有するパーフルオロオキシアルキル基含有ポリマーと、求核剤としてグリニャール試薬、溶剤として例えば1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、テトラヒドロフランを混合し、0〜80℃、好ましくは50〜70℃、より好ましくは約60℃で、1〜6時間、好ましくは3〜5時間、より好ましくは約4時間熟成する。
【0041】
ここで、パーフルオロオキシアルキル基含有ポリマーは、分子鎖片末端に有する基として、上述した酸フロライドの他に、酸ハライド、酸無水物、エステル、カルボン酸、アミドなども用いることができる。
分子鎖片末端にこれらの基を有するパーフルオロオキシアルキル基含有ポリマーとして、具体的には、下記に示すものが挙げられる。
【化25】
(式中、p1、q1、p1+q1は上記と同じである。)
【0042】
上記分子鎖片末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーの調製に用いられる求核剤としては、アリルマグネシウムハライド、3−ブテニルマグネシウムハライド、4−ペンテニルマグネシウムハライド、5−ヘキセニルマグネシウムハライドなどを用いることができる。また、対応するリチウム試薬を用いることも可能である。
求核剤の使用量は、上記パーフルオロオキシアルキル基含有ポリマーの反応性末端基1当量に対して、2〜5当量、より好ましくは2.5〜3.5当量、更に好ましくは約3当量用いることができる。
【0043】
また、上記分子鎖片末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーの調製に用いられる溶剤としては、フッ素系溶剤として、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)ペンタンなどのハイドロフルオロエーテル(HFE)系溶剤(3M社製、商品名:Novecシリーズ)、完全フッ素化された化合物で構成されているパーフルオロ系溶剤(3M社製、商品名:フロリナートシリーズ)などが挙げられる。更に、有機溶剤として、テトラヒドロフラン、モノエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル系溶剤を用いることができる。
溶剤の使用量は、上記パーフルオロオキシアルキル基含有ポリマー100質量部に対して、10〜300質量部、好ましくは100〜200質量部、更に好ましくは約150質量部用いることができる。
【0044】
続いて、反応を停止し、分液操作により水層とフッ素溶剤層を分離する。得られたフッ素溶剤層を更に有機溶剤で洗浄し、溶剤を留去することで、上記分子鎖片末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーが得られる。
【0045】
式(4)で表されるフルオロオキシアルキル基含有ポリマーの調製に用いられるシリル化剤としては、例えば、シリルハライドやシリルトリフラートなどを用いることができ、具体的には、トリメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド、t−ブチルジメチルクロリド、トリイソプロピルシリルクロリド、トリフェニルシリルクロリド、トリメチルシリルブロミド、トリメチルシリルトリフラート、トリエチルシリルトリフラート、t−ブチルジメチルトリフラート、トリイソプロピルシリルトリフラートなどが挙げられる。また、塩基を使用しない場合、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン、トリメチルシリルイミダゾールを用いてもよい。
シリル化剤の使用量は、分子鎖片末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーの反応性末端基1当量に対して、1〜10当量、より好ましくは1〜4当量、更に好ましくは約2当量用いることができる。
【0046】
式(4)で表されるフルオロオキシアルキル基含有ポリマーの調製に用いられる塩基としては、例えば、アミン類やアルカリ金属系塩基などを用いることができ、具体的には、アミン類では、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、DBU、イミダゾールなどが挙げられる。アルカリ金属系塩基では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、アルキルリチウム、t−ブトキシカリウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミドなどが挙げられる。
塩基の使用量は、分子鎖片末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーの反応性末端基1当量に対して、1〜10当量、より好ましくは1〜4当量、更に好ましくは約2当量用いることができる。
【0047】
式(4)で表されるフルオロオキシアルキル基含有ポリマーの調製に用いられる溶剤としては、フッ素系溶剤として、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどの含フッ素芳香族炭化水素系溶剤、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)ペンタンなどのハイドロフルオロエーテル(HFE)系溶剤(3M社製、商品名:Novecシリーズ)、完全フッ素化された化合物で構成されているパーフルオロ系溶剤(3M社製、商品名:フロリナートシリーズ)などが挙げられる。更に、有機溶剤として、テトラヒドロフラン、モノエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル系溶剤を用いることができる。
溶剤の使用量は、分子鎖片末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマー100質量部に対して、10〜300質量部、好ましくは50〜150質量部、更に好ましくは約100質量部用いることができる。
【0048】
また、式(4)で表されるフルオロオキシアルキル基含有ポリマーの調製に用いられるヒドロシランとしては、トリメチルシラン、トリエチルシラン、t−ブチルジメチルシラン、トリイソプロピルシラン、トリフェニルシランなどが挙げられる。
ヒドロシランの使用量は、分子鎖片末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーの反応性末端基1当量に対して、1〜5当量、より好ましくは1.5〜3当量、更に好ましくは約2当量用いることができる。
【0049】
式(4)で表されるフルオロオキシアルキル基含有ポリマーの調製に用いられる脱水素触媒としては、例えば、ロジウム、パラジウム、ルテニウム等の白金族金属系触媒やホウ素触媒などを用いることができ、具体的には、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属系触媒、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等のホウ素触媒などが挙げられる。
脱水素触媒の使用量は、分子鎖片末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーの反応性末端基1当量に対して、0.01〜0.0005当量、より好ましくは0.007〜0.001当量、更に好ましくは約0.005当量用いることができる。
【0050】
続いて、反応を停止し、分液操作により水層とフッ素溶剤層を分離する。得られたフッ素溶剤層を更に有機溶剤で洗浄し、溶剤を留去することで、式(4)で表されるフルオロオキシアルキル基含有ポリマーが得られる。
【0051】
上記式(1)で表され、αが1の場合のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの調製において、用いられる溶剤としてはフッ素系溶剤が好ましく、フッ素系溶剤としては、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)ペンタンなどのハイドロフルオロエーテル(HFE)系溶剤(3M社製、商品名:Novecシリーズ)、完全フッ素化された化合物で構成されているパーフルオロ系溶剤(3M社製、商品名:フロリナートシリーズ)などが挙げられる。
溶剤の使用量は、分子鎖片末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマー100質量部に対して、10〜300質量部、好ましくは50〜150質量部、更に好ましくは約100質量部用いることができる。
【0052】
また、式(1)で表され、αが1の場合のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの調製において、分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物としては、下記一般式(5)〜(8)で表される化合物が好ましい。
【化26】
(式中、R、X、n、R1、R2、g、jは上記と同じである。R3は炭素数2〜8の2価炭化水素基である。iは2〜9、好ましくは2〜4の整数であり、i+jは2〜9の整数である。)
【0053】
ここで、R3の炭素数2〜8、好ましくは2〜3の2価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、又はこれらの基の2種以上の組み合わせ(アルキレン・アリーレン基等)などが挙げられ、これらの中でもエチレン基、トリメチレン基が好ましい。
【0054】
このような分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物としては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリブトキシシラン、トリイソプロペノキシシラン、トリアセトキシシラン、トリクロロシラン、トリブロモシラン、トリヨードシラン、また以下のような有機ケイ素化合物が挙げられる。
【化27】
【0055】
式(1)で表され、αが1の場合のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの調製において、分子鎖片末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーと分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物とを反応させる際の分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物の使用量は、分子鎖片末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーの反応性末端基1当量に対して、2〜6当量、より好ましくは2.2〜3.5当量、更に好ましくは約3当量用いることができる。
【0056】
また、式(1)で表され、αが1の場合のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの調製において、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物としては、下記一般式(9)〜(11)で表される化合物が好ましい。
【化28】
(式中、R1、R2、g、j、iは上記と同じである。)
【0057】
このような分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物としては、例えば、下記に示すものなどが挙げられる。
【化29】
【0058】
式(1)で表され、αが1の場合のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの調製において、分子鎖片末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーと分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物とを反応させる際の分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物の使用量は、分子鎖片末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーの反応性末端基1当量に対して、5〜20当量、より好ましくは7.5〜12.5当量、更に好ましくは約10当量用いることができる。
【0059】
また、式(1)で表され、αが1の場合のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの調製において、分子中にオレフィン部位と加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物としては、下記一般式(12)で表される化合物が好ましい。
【化30】
(式中、R、X、nは上記と同じである。Vは単結合、又は炭素数1〜6の2価炭化水素基である。)
【0060】
上記式(12)中、Vは単結合、又は炭素数1〜6の2価炭化水素基であり、炭素数1〜6の2価炭化水素基として、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基等のアルキレン基、フェニレン基などが挙げられる。Vとして、好ましくは単結合、メチレン基である。
【0061】
式(1)で表され、αが1の場合のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの調製において、分子鎖片末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーと分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物との反応物と、分子中にオレフィン部位と加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物とを反応させる際の分子中にオレフィン部位と加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物の使用量は、分子鎖片末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーと分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物との反応物の反応性末端基1当量に対して、2〜6当量、より好ましくは2.2〜3.5当量、更に好ましくは約3当量用いることができる。
【0062】
式(1)で表され、αが1の場合のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの調製において、ヒドロシリル化反応触媒としては、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン、アセチレンアルコール類等との錯体等、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属系触媒が挙げられる。好ましくは、ビニルシロキサン配位化合物等の白金系化合物である。
ヒドロシリル化反応触媒の使用量は、分子鎖片末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマー、又はこのポリマーと分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物との反応物質量に対して、遷移金属換算(質量)で0.1〜100ppm、より好ましくは1〜50ppmとなる量で使用する。
【0063】
その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで目的の化合物を得ることができる。
例えば、分子鎖片末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーとして、下記式で表される化合物
【化31】
を使用し、分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物として、トリメトキシシランを使用した場合には、下記式で表される化合物が得られる。
【化32】
【0064】
上記式(1)で表され、αが2の場合のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの調製方法としては、例えば、下記のような方法が挙げられる。
分子鎖両末端にオレフィン部位をそれぞれ2つ有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーを、溶剤、例えば1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなどのフッ素系溶剤に溶解させ、トリメトキシシラン等の分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物を、ヒドロシリル化反応触媒、例えば塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液存在下、40〜120℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは約80℃の温度で、1〜72時間、好ましくは20〜36時間、より好ましくは約24時間熟成させる。
【0065】
また、上記分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物に代えて、加水分解性末端基を有さないSiH基含有有機ケイ素化合物を用いることもでき、この場合、有機ケイ素化合物として、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物を使用する。その際、上記の方法と同様にして分子鎖両末端にオレフィン部位をそれぞれ2つ有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーと分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物とを反応させた後、該反応物のポリマー末端のSiH基とアリルトリメトキシシラン等の分子中にオレフィン部位と加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物とをヒドロシリル化反応触媒、例えば塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液存在下、40〜120℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは約80℃の温度で、1〜72時間、好ましくは20〜36時間、より好ましくは約24時間熟成させる。
【0066】
ここで、分子鎖両末端にオレフィン部位をそれぞれ2つ有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーとしては、下記一般式(13)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーが例示できる。
【化33】
(式中、Rf、Z、R’、X’、aは上記と同じである。)
【0067】
式(13)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーとして、好ましくは下記に示すものが例示できる。なお、各式において、フルオロオキシアルキレン基を構成する各繰り返し単位の繰り返し数(又は重合度)は、上記Rf中の式(3)を満足する任意の数をとり得るものである。
【化34】
(式中、p1、q1、p1+q1は上記と同じである。)
【0068】
上記式(13)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの調製方法としては、例えば、分子鎖両末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーと、シリル化剤とを、塩基の存在下、必要により溶剤を用い、0〜80℃、好ましくは40〜60℃、より好ましくは約50℃の温度で、1〜24時間、好ましくは2〜10時間、より好ましくは約3時間熟成する。
【0069】
また、上記式(13)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの調製方法の別法としては、例えば、分子鎖両末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーとヒドロシランとを脱水素触媒の存在下、溶剤を用いて0〜60℃、好ましくは15〜35℃、より好ましくは約25℃の温度で、10分〜24時間、好ましくは30分〜2時間、より好ましくは約1時間脱水素反応を行う。
【0070】
ここで、式(13)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの調製に用いられる分子鎖両末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーとして、具体的には、下記に示すものが挙げられる。
【化35】
(式中、p1、q1、p1+q1は上記と同じである。)
【0071】
ここで、上記分子鎖両末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの調製方法としては、例えば、分子鎖両末端に酸フロライド基(−C(=O)−F)を有するパーフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーと、求核剤としてグリニャール試薬、溶剤として例えば1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、テトラヒドロフランを混合し、0〜80℃、好ましくは50〜70℃、より好ましくは約60℃で、1〜6時間、好ましくは3〜5時間、より好ましくは約4時間熟成する。
【0072】
ここで、パーフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーは、分子鎖両末端に有する基として、上述した酸フロライドの他に、酸ハライド、酸無水物、エステル、カルボン酸、アミドなども用いることができる。
分子鎖両末端にこれらの基を有するパーフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーとして、具体的には、下記に示すものが挙げられる。
【化36】
(式中、p1、q1、p1+q1は上記と同じである。)
【0073】
上記分子鎖両末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの調製に用いられる求核剤としては、アリルマグネシウムハライド、3−ブテニルマグネシウムハライド、4−ペンテニルマグネシウムハライド、5−ヘキセニルマグネシウムハライドなどを用いることができる。また、対応するリチウム試薬を用いることも可能である。
求核剤の使用量は、上記パーフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの反応性末端基1当量に対して、4〜10当量、より好ましくは5〜7当量、更に好ましくは約6当量用いることができる。
【0074】
また、上記分子鎖両末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの調製に用いられる溶剤としては、フッ素系溶剤として、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)ペンタンなどのハイドロフルオロエーテル(HFE)系溶剤(3M社製、商品名:Novecシリーズ)、完全フッ素化された化合物で構成されているパーフルオロ系溶剤(3M社製、商品名:フロリナートシリーズ)などが挙げられる。更に、有機溶剤として、テトラヒドロフラン、モノエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル系溶剤を用いることができる。
溶剤の使用量は、上記パーフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー100質量部に対して、10〜300質量部、好ましくは100〜200質量部、更に好ましくは約150質量部用いることができる。
【0075】
続いて、反応を停止し、分液操作により水層とフッ素溶剤層を分離する。得られたフッ素溶剤層を更に有機溶剤で洗浄し、溶剤を留去することで、上記分子鎖両末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーが得られる。
【0076】
式(13)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの調製に用いられるシリル化剤としては、例えば、シリルハライドやシリルトリフラートなどを用いることができ、具体的には、トリメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド、t−ブチルジメチルクロリド、トリイソプロピルシリルクロリド、トリフェニルシリルクロリド、トリメチルシリルブロミド、トリメチルシリルトリフラート、トリエチルシリルトリフラート、t−ブチルジメチルトリフラート、トリイソプロピルシリルトリフラートなどが挙げられる。また、塩基を使用しない場合、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン、トリメチルシリルイミダゾールを用いてもよい。
シリル化剤の使用量は、分子鎖両末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの反応性末端基1当量に対して、1〜10当量、より好ましくは1〜4当量、更に好ましくは約2当量用いることができる。
【0077】
式(13)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの調製に用いられる塩基としては、例えば、アミン類やアルカリ金属系塩基などを用いることができ、具体的には、アミン類では、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、DBU、イミダゾールなどが挙げられる。アルカリ金属系塩基では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、アルキルリチウム、t−ブトキシカリウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミドなどが挙げられる。
塩基の使用量は、分子鎖両末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの反応性末端基1当量に対して、1〜10当量、より好ましくは1〜4当量、更に好ましくは約2当量用いることができる。
【0078】
式(13)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの調製に用いられる溶剤としては、フッ素系溶剤として、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどの含フッ素芳香族炭化水素系溶剤、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)ペンタンなどのハイドロフルオロエーテル(HFE)系溶剤(3M社製、商品名:Novecシリーズ)、完全フッ素化された化合物で構成されているパーフルオロ系溶剤(3M社製、商品名:フロリナートシリーズ)などが挙げられる。更に、有機溶剤として、テトラヒドロフラン、モノエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル系溶剤を用いることができる。
溶剤の使用量は、分子鎖両末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー100質量部に対して、10〜300質量部、好ましくは50〜150質量部、更に好ましくは約100質量部用いることができる。
【0079】
また、式(13)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの調製に用いられるヒドロシランとしては、トリメチルシラン、トリエチルシラン、t−ブチルジメチルシラン、トリイソプロピルシラン、トリフェニルシランなどが挙げられる。
ヒドロシランの使用量は、分子鎖両末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの反応性末端基1当量に対して、1〜5当量、より好ましくは1.5〜3当量、更に好ましくは約2当量用いることができる。
【0080】
式(13)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの調製に用いられる脱水素触媒としては、例えば、ロジウム、パラジウム、ルテニウム等の白金族金属系触媒やホウ素触媒などを用いることができ、具体的には、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属系触媒、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等のホウ素触媒などが挙げられる。
脱水素触媒の使用量は、分子鎖両末端に水酸基を有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの反応性末端基1当量に対して、0.01〜0.0005当量、より好ましくは0.007〜0.001当量、更に好ましくは約0.005当量用いることができる。
【0081】
続いて、反応を停止し、分液操作により水層とフッ素溶剤層を分離する。得られたフッ素溶剤層を更に有機溶剤で洗浄し、溶剤を留去することで、式(13)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーが得られる。
【0082】
上記式(1)で表され、αが2の場合のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの調製において、用いられる溶剤としてはフッ素系溶剤が好ましく、フッ素系溶剤としては、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)ペンタンなどのハイドロフルオロエーテル(HFE)系溶剤(3M社製、商品名:Novecシリーズ)、完全フッ素化された化合物で構成されているパーフルオロ系溶剤(3M社製、商品名:フロリナートシリーズ)などが挙げられる。
溶剤の使用量は、分子鎖両末端にオレフィン部位をそれぞれ2つ有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー100質量部に対して、10〜300質量部、好ましくは50〜150質量部、更に好ましくは約100質量部用いることができる。
【0083】
また、式(1)で表され、αが2の場合のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの調製において、分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物としては、下記一般式(5)〜(8)で表される化合物が好ましい。
【化37】
(式中、R、X、n、R1、R2、R3、g、i、jは上記と同じである。)
【0084】
このような分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物としては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリブトキシシラン、トリイソプロペノキシシラン、トリアセトキシシラン、トリクロロシラン、トリブロモシラン、トリヨードシラン、また以下のような有機ケイ素化合物が挙げられる。
【化38】
【0085】
式(1)で表され、αが2の場合のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの調製において、分子鎖両末端にオレフィン部位をそれぞれ2つ有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーと分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物とを反応させる際の分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物の使用量は、分子鎖両末端にオレフィン部位をそれぞれ2つ有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの反応性末端基1当量に対して、2〜6当量、より好ましくは2.2〜3.5当量、更に好ましくは約3当量用いることができる。
【0086】
また、式(1)で表され、αが2の場合のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの調製において、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物としては、下記一般式(9)〜(11)で表される化合物が好ましい。
【化39】
(式中、R1、R2、g、j、iは上記と同じである。)
【0087】
このような分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物としては、例えば、下記に示すものなどが挙げられる。
【化40】
【0088】
式(1)で表され、αが2の場合のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの調製において、分子鎖両末端にオレフィン部位をそれぞれ2つ有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーと分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物とを反応させる際の分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物の使用量は、分子鎖両末端にオレフィン部位をそれぞれ2つ有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの反応性末端基1当量に対して、5〜20当量、より好ましくは7.5〜12.5当量、更に好ましくは約10当量用いることができる。
【0089】
また、式(1)で表され、αが2の場合のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの調製において、分子中にオレフィン部位と加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物としては、下記一般式(12)で表される化合物が好ましい。
【化41】
(式中、R、X、V、nは上記と同じである。)
【0090】
式(1)で表され、αが2の場合のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの調製において、分子鎖両末端にオレフィン部位をそれぞれ2つ有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーと分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物との反応物と、分子中にオレフィン部位と加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物とを反応させる際の分子中にオレフィン部位と加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物の使用量は、分子鎖両末端にオレフィン部位をそれぞれ2つ有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーと分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物との反応物の反応性末端基1当量に対して、2〜6当量、より好ましくは2.2〜3.5当量、更に好ましくは約3当量用いることができる。
【0091】
式(1)で表され、αが2の場合のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの調製において、ヒドロシリル化反応触媒としては、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン、アセチレンアルコール類等との錯体等、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属系触媒が挙げられる。好ましくは、ビニルシロキサン配位化合物等の白金系化合物である。
ヒドロシリル化反応触媒の使用量は、分子鎖両末端にオレフィン部位をそれぞれ2つ有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー、又はこのポリマーと分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物との反応物質量に対して、遷移金属換算(質量)で0.1〜100ppm、より好ましくは1〜50ppmとなる量で使用する。
【0092】
その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで目的の化合物を得ることができる。
例えば、分子鎖両末端にオレフィン部位をそれぞれ2つ有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーとして、下記式で表される化合物
【化42】
を使用し、分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物として、トリメトキシシランを使用した場合には、下記式で表される化合物が得られる。
【化43】
【0093】
本発明は、更に上記フルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランを含有する表面処理剤を提供する。該表面処理剤は、上記フルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの末端加水分解性基を予め公知の方法により部分的に加水分解して水酸基としたもの、即ち上記式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン中のXあるいはX’の加水分解性基の一部を加水分解して水酸基としたものも用いることができる。
【0094】
表面処理剤には、必要に応じて、加水分解縮合触媒、例えば、有機錫化合物(ジブチル錫ジメトキシド、ジラウリン酸ジブチル錫など)、有機チタン化合物(テトラn−ブチルチタネートなど)、有機酸(酢酸、メタンスルホン酸、フッ素変性カルボン酸など)、無機酸(塩酸、硫酸など)を添加してもよい。これらの中では、特に酢酸、テトラn−ブチルチタネート、ジラウリン酸ジブチル錫、フッ素変性カルボン酸などが望ましい。
加水分解縮合触媒の添加量は触媒量であり、通常、フルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン100質量部に対して0.01〜5質量部、特に0.1〜1質量部である。
【0095】
該表面処理剤は、適当な溶剤を含んでよい。このような溶剤としては、フッ素変性脂肪族炭化水素系溶剤(パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタンなど)、フッ素変性芳香族炭化水素系溶剤(1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなど)、フッ素変性エーテル系溶剤(メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)など)、フッ素変性アルキルアミン系溶剤(パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミンなど)、炭化水素系溶剤(石油ベンジン、トルエン、キシレンなど)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)を例示することができる。これらの中では、溶解性、濡れ性などの点で、フッ素変性された溶剤が望ましく、特には、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、パーフルオロトリブチルアミン、エチルパーフルオロブチルエーテルが好ましい。
【0096】
上記溶剤はその2種以上を混合してもよく、フルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランを均一に溶解させることが好ましい。なお、溶剤に溶解させるフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの最適濃度は、処理方法により異なり、秤量し易い量であればよいが、直接塗工する場合は、溶剤及びフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの合計質量に対して0.01〜10質量%、特に0.05〜5質量%であることが好ましく、蒸着処理をする場合は、溶剤及びフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランの合計質量に対して1〜100質量%、特に3〜30質量%であることが好ましい。
【0097】
本発明の表面処理剤は、刷毛塗り、ディッピング、スプレー、蒸着処理など公知の方法で基材に施与することができる。蒸着処理時の加熱方法は、抵抗加熱方式でも、電子ビーム加熱方式のどちらでもよく、特に限定されるものではない。また、硬化温度は、硬化方法によって異なるが、例えば、蒸着処理で施与する場合は、20〜200℃の範囲が望ましい。また、加湿下で硬化させてもよい。硬化被膜の膜厚は、基材の種類により適宜選定されるが、通常0.1〜100nm、特に1〜20nmである。
【0098】
本発明の表面処理剤で処理される基材は特に制限されず、紙、布、金属及びその酸化物、ガラス、プラスチック、セラミック、石英など各種材質のものであってよい。本発明の表面処理剤は、前記基材に撥水撥油性を付与することができる。特に、SiO2処理されたガラスやフイルムの表面処理剤として好適に使用することができる。
【0099】
本発明の表面処理剤で処理される物品としては、カーナビゲーション、携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、PDA、ポータブルオーディオプレーヤー、カーオーディオ、ゲーム機器、眼鏡レンズ、カメラレンズ、レンズフィルター、サングラス、胃カメラ等の医療用器機、複写機、PC、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネルディスプレイ、保護フイルム、反射防止フイルムなどの光学物品が挙げられる。本発明の表面処理剤は、前記物品に指紋及び皮脂が付着するのを防止し、更に傷つき防止性を付与することができるため、特にタッチパネルディスプレイ、反射防止フイルムなどの撥水撥油層として有用である。
【0100】
また、本発明の表面処理剤は、浴槽、洗面台のようなサニタリー製品の防汚コーティング、自動車、電車、航空機などの窓ガラス又は強化ガラス、ヘッドランプカバー等の防汚コーティング、外壁用建材の撥水撥油コーティング、台所用建材の油汚れ防止用コーティング、電話ボックスの防汚及び貼り紙・落書き防止コーティング、美術品などの指紋付着防止付与のコーティング、コンパクトディスク、DVDなどの指紋付着防止コーティング、金型用に離型剤あるいは塗料添加剤、樹脂改質剤、無機質充填剤の流動性改質剤又は分散性改質剤、テープ、フイルムなどの潤滑性向上剤としても有用である。
【実施例】
【0101】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。
【0102】
[実施例1]
反応容器に1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン100g、DBU8.2g(5.4×10-2mol)、下記式(A)
【化44】

で表される化合物100g(2.7×10-2mol)を混合した後、トリメチルクロロシラン5.8g(5.4×10-2mol)を滴下した。続いて、50℃で3時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、メタノールで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(B)
【化45】

で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー90gを得た。
【0103】
1H−NMR
δ0−0.2(−OSi(C33)9H
δ2.4−2.6(−C2CH=CH2)4H
δ5.0−5.2(−CH2CH=C2)4H
δ5.7−5.9(−CH2=CH2)2H
【0104】
反応容器に下記式(B)
【化46】

で表される化合物90g(2.4×10-2mol)、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン90g、トリメトキシシラン9.0g(7.4×10-2mol)、及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液9.0×10-2g(Pt単体として2.4×10-6molを含有)を混合し、80℃で24時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去し、液状の生成物93gを得た。
【0105】
得られた化合物は、NMRにより下記式(C)で表される構造であることが確認された。
【化47】
【0106】
1H−NMR
δ0−0.2(−OSi(C33)9H
δ0.4−0.6(−CH2CH22−Si)4H
δ1.3−1.6(−CH22CH2−Si)4H
δ1.6−1.9(−C2CH2CH2−Si)4H
δ3.3−3.6(−Si(OC33)18H
【0107】
[実施例2]
反応容器に1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン200g、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン0.29g(5.5×10-4mol)、下記式(A)
【化48】

で表される化合物400g(1.1×10-1mol)を混合し、トリエチルシラン14.1g(1.2×10-1mol)をゆっくりと滴下した後、25℃で1時間撹拌した。続いて、水を添加し、分液操作により下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(D)
【化49】

で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー406gを得た。
【0108】
1H−NMR
δ0.5−0.8(−SiC2CH3)2H
δ0.8−1.1(−SiCH23)3H
δ2.4−2.6(−C2CH=CH2)4H
δ5.0−5.1(−CH2CH=C2)4H
δ5.7−5.9(−CH2=CH2)2H
【0109】
反応容器に下記式(D)
【化50】

で表される化合物220g(6.1×10-2mol)、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン220g、トリメトキシシラン22g(1.8×10-1mol)、及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液2.2×10-1g(Pt単体として5.9×10-6molを含有)を混合し、80℃で24時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去し、液状の生成物226gを得た。
【0110】
得られた化合物は、NMRにより下記式(E)で表される構造であることが確認された。
【化51】
【0111】
1H−NMR
δ0.4−0.8(−SiC2CH3,−CH2CH22−Si)6H
δ0.8−1.1(−SiCH23)3H
δ1.4−1.9(−CH22CH2−Si,−C2CH2CH2−Si)8H
δ3.3−3.7(−Si(OC33)18H
【0112】
[実施例3]
反応容器にDBU7.9g(5.2×10-2mol)、下記式(F)
【化52】

で表される化合物100g(2.6×10-2mol)を混合した後、トリメチルクロロシラン5.7g(5.2×10-2mol)を滴下した。続いて、50℃で3時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、メタノールで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(G)
【化53】

で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー95gを得た。
【0113】
1H−NMR
δ0−0.2(−OSi(C33)18H
δ2.4−2.6(−C2CH=CH2)8H
δ5.0−5.2(−CH2CH=C2)8H
δ5.7−5.9(−CH2=CH2)4H
【0114】
反応容器に下記式(G)
【化54】

で表される化合物90g(2.3×10-2mol)、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン90g、トリメトキシシラン8.4g(6.9×10-2mol)、及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液8.4×10-2g(Pt単体として2.3×10-6molを含有)を混合し、80℃で24時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去し、液状の生成物92gを得た。
【0115】
得られた化合物は、NMRにより下記式(H)で表される構造であることが確認された。
【化55】
【0116】
1H−NMR
δ0−0.2(−OSi(C33)18H
δ0.4−0.6(−CH2CH22−Si)8H
δ1.3−1.6(−CH22CH2−Si)8H
δ1.6−1.9(−C2CH2CH2−Si)8H
δ3.3−3.6(−Si(OC33)36H
【0117】
比較例として、以下のポリマーを使用した。
[比較例1]
【化56】
【0118】
[比較例2]
【化57】
【0119】
表面処理剤の調製及び硬化被膜の形成
実施例1〜3で得られたフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン及び比較例1,2のポリマーを、濃度20質量%になるようにNovec 7200(3M社製、エチルパーフルオロブチルエーテル)に溶解させて表面処理剤を調製した。最表面にSiO2を10nm処理したガラス(コーニング社製 Gorilla)に、各表面処理剤7mgを真空蒸着し(処理条件は、圧力:2.0×10-2Pa、加熱温度:700℃)、25℃、湿度40%の雰囲気下で24時間硬化させて膜厚10nmの硬化被膜を形成した。
【0120】
撥水性の評価
[初期撥水性の評価]
上記にて作製した硬化被膜を形成したガラスについて、接触角計Drop Master(協和界面科学社製)を用いて、硬化被膜の水に対する接触角(撥水性)を測定した。初期においては良好な撥水性を示した。結果を表1に示す。
【0121】
[耐候性の評価]
上記にて作製した硬化被膜を形成したガラスに、メタルハライドランプを使用して放射照度770W/m2(波長範囲300〜400nm)でUV光を照射し、160時間照射した後、表面の水に対する接触角(撥水性)を測定した。結果を表1に示す。
連結基にエーテル結合を有する比較例1のポリマーの硬化被膜は、接触角の低下が認められ、耐候性に劣ることがわかる。連結基にエーテル結合はないが、炭素原子に結合した水酸基を有する比較例2のポリマーの硬化被膜に比べ、実施例1〜3のポリマー変性シランの硬化被膜は耐候性の向上が確認できる。
【0122】
保存安定性の評価
実施例1〜3で得られたフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン及び比較例2のポリマーを、濃度0.1質量%になるようにNovec 7200(3M社製、エチルパーフルオロブチルエーテル)(水分量が50ppm)に溶解させた。これを50℃で1か月保存後、GPCで縮合物の生成を調べた。測定条件は以下の通りである。それぞれの縮合物の割合を表2に示す。
比較例2のポリマーは、炭素原子に結合した水酸基の存在により縮合物の生成が確認された。一方、炭素原子に結合した水酸基を封止した実施例1〜3のポリマー変性シランでは、ほとんど縮合物が確認されなかった。
[測定条件]
展開溶媒:ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)−225
流量:1mL/min.
検出器:蒸発光散乱検出器
カラム:東ソー社製 TSKgel Multipore HXL−M
7.8mmφ×30cm 2本使用
カラム温度:35℃
試料注入量:100μL(濃度0.1質量%の溶液)
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】