(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261006
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】ポリマーに基づく多層フィルム構造、ライナー、及び方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20180104BHJP
B29C 47/06 20060101ALI20180104BHJP
B65D 81/24 20060101ALI20180104BHJP
B29K 27/12 20060101ALN20180104BHJP
B29L 7/00 20060101ALN20180104BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20180104BHJP
【FI】
B32B27/30 D
B29C47/06
B65D81/24 D
B29K27:12
B29L7:00
B29L9:00
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-557826(P2014-557826)
(86)(22)【出願日】2013年2月15日
(65)【公表番号】特表2015-513480(P2015-513480A)
(43)【公表日】2015年5月14日
(86)【国際出願番号】US2013026413
(87)【国際公開番号】WO2013123378
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2016年2月12日
(31)【優先権主張番号】61/600,304
(32)【優先日】2012年2月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ペセ、ビシュワース ビャンカトラオ
【審査官】
春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−539706(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/108051(WO,A1)
【文献】
特開2008−014324(JP,A)
【文献】
特表平06−511272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
B29C47/06
B65D81/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素含有フルオロポリマー並びに塩素及び酸素含有フルオロポリマーを含むコア層と、
前記コア層の1つの側に結合される外側層であって、過フッ素化フルオロポリマーを含む前記外側層と
を備えることを特徴とする多層フィルム構造。
【請求項2】
前記塩素含有フルオロポリマーがポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)を含み、
前記塩素及び酸素含有フルオロポリマーが、PCTFEの付加による重合中に修飾されるペルフルオロアルコキシ(PFA)を含むことを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム構造。
【請求項3】
前記コア層が前記塩素含有フルオロポリマーと前記塩素及び酸素含有フルオロポリマーとの混合層であることを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム構造。
【請求項4】
前記コア層が、少なくとも1つの塩素含有フルオロポリマー層と、少なくとも1つの塩素及び酸素含有フルオロポリマー層とを含むことを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム構造。
【請求項5】
前記多層フィルム構造を透過する窒素ガスのフラックス速度が7cc/日/m2/atm未満であることを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム構造。
【請求項6】
多層フィルム構造を製造するための方法であって、
複数のフィルム層を押出して、塩素含有フルオロポリマーと塩素及び酸素含有フルオロポリマーとを有するコア層と、前記コア層の1つの側に結合される、過フッ素化フルオロポリマーを含む外側層とを形成することを備える方法。
【請求項7】
塩素含有フルオロポリマーと塩素及び酸素含有フルオロポリマーとを含むコア層と、
前記コア層の1つの側に結合され、過フッ素化フルオロポリマーを含む外側層とを備える多層フィルムライナー壁を有するライナー。
【請求項8】
前記ライナー壁を透過する窒素ガスのフラックス速度が1cc/日/m2/atm未満であることを特徴とする請求項7に記載のライナー。
【請求項9】
前記コア層が、前記塩素含有フルオロポリマーと前記塩素及び酸素含有フルオロポリマーとを含む混合層であることを特徴とする請求項7に記載のライナー。
【請求項10】
前記コア層が、少なくとも1つの塩素含有フルオロポリマー層と、少なくとも1つの塩素及び酸素含有フルオロポリマー層とを含むことを特徴とする請求項7に記載のライナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリマーに基づく多層ガスバリアフィルムに関する。特に、本開示は、比較的良好な耐薬品性及び比較的高いガスバリア特性を有する、ポリマーに基づく又はフルオロポリマーに基づく多層フィルムに関する。より詳しくは、本開示は、例えば、限定ではないが、ライナーに基づく保管及び分注システム用のライナーの製造に使用するための、比較的良好な耐薬品性及び比較的高いガスバリア特性を有する、ポリマーに基づく又はフルオロポリマーに基づく多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの製造プロセスでは、酸、溶媒、塩基、フォトレジスト、スラリー、洗浄用調合物、ドーパント、無機溶液、有機溶液、有機金属溶液、及び生物学的溶液、医薬品、及び放射性化学薬品等の超高純度液体の使用が必要である。そのような応用では、超高純度液体中の粒子の数及びサイズを最小限に抑えることが必要である。特に、超高純度液体は、超小型電子部品製造プロセスの多くの局面で使用されるため、半導体製造メーカは、プロセス化学薬品及び化学薬品取扱装置の厳密な粒子濃度仕様を確立している。製造プロセス中に使用される液体は、高レベルの粒子又は気泡を含有しており、粒子又は気泡は、ケイ素の固体表面に沈着する場合があるため、そのような仕様が必要となる。その結果、これは、製品不良、及び品質低下、及び信頼性低下に結びつく場合がある。
【0003】
したがって、そのような超高純度液体の保管、輸送、及び分注には、保持されている液体に適切な保護を提供することが可能な容器が必要とされる。ATMI社製のNOWPak(登録商標)分注システム等の折畳み式のライナーに基づく容器は、分注中に、ガス又は液体を用いて、容器中の液体を直接にではなく、ライナーを加圧することにより、そのような気液界面を低減することが可能である。詳しくは、そのような分注システムは、一般的にガス圧力インラインの挿入又は分注コネクタの取付けを可能にし、ライナーと外部オーバーパックとの間にある環状空間との流体連通を可能にする加圧ガス入口を備える間接圧力分注コネクタを備える。そのようなシステムでは、加圧液体、ガス、又は他の好適な物質を環状空間に導入し、ライナーをオーバーパック壁から遠ざけるように圧潰させ、それによりライナーの内容物を、間接圧力分注コネクタの液体出口から押出すことができる。
【0004】
そのような圧力分注応用では、ガスは、ライナー材料を透過するか、又はそうでなければ望ましくないことだがライナー材料を介して導入され、それにより保持されている液体が、時間の経過と共に汚染される場合があり、そうなるとガスが溶液に溶け、製造プロセスにおいて、望ましくないことだが、例えば半導体ウェーハ上に気泡として出現することになってしまう。加えて、ライナーに基づくシステムに保管される内容物によっては、ライナーは、高耐薬品性を有する材料で製造される必要がある場合がある。例えば、ペルフルオロアルコキシ(PFA)は、フォトレジスト等の有害物質に対する高い耐薬品性を有することが知られているフルオロポリマーである。しかしながら、上述の間接圧力分注応用等、ガスバリア特性が必要とされる場合、ライナー材料にPFAを使用することには制限がある。ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)は、適度に良好なガスバリア特性を有することが知られているフルオロポリマーである。しかしながら、PCTFEは、耐薬品性が比較的低く、それ自体への溶着性も低い。ポリエチレン又はナイロンを使用して製作された他の従来のライナーは、適度に良好なガスバリア特性を同様に提供するが、比較的低い耐薬品性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当技術分野では、比較的良好な耐薬品性及び比較的高いガスバリア特性を有する、ポリマーに基づく多層ガスバリアフィルム、特にフルオロポリマーに基づく多層フィルムが必要とされている。より詳しくは、例えば、限定ではないが、ライナーに基づく保管及び分注システム用のライナーの製造に使用するための、高いガスバリア特性を有する、ポリマーに基づく又はフルオロポリマーに基づく多層フィルムが必要とされている。多くの場合、そのようなライナーの内容物は、非常に高価な例えば約$2500/L以上の材料が含まれることがある。したがって、耐薬品性のわずかな増加でさえ望ましい場合があり、及び/又は間接圧力分注応用中にライナーへと透過するガスの量を減少させる性能が望ましい場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、1つの実施形態では、比較的高い耐薬品性及び比較的良好なガスバリア特性等の、望ましい又は好ましい特性の組み合わせを備える多層フィルムに関する。詳しくは、本開示の様々な実施形態では、多層フィルムは、比較的高い耐薬品性を有する少なくとも1つの層、及び比較的良好なガスバリア特性を有する少なくとも1つの他の層を含んでいてもよい。より詳しくは、本開示の様々な実施形態では、多層フィルムは、比較的高い耐薬品性を有する少なくとも1つの外側層、及び比較的良好なガスバリア特性を有する、限定ではないが内側層等の、少なくとも1つの他の層を含んでいてもよい。
【0007】
本開示は、別の実施形態では、塩素含有フルオロポリマー並びに塩素及び酸素含有フルオロポリマーのコア層と、そのコア層の1つの側に作用可能に結合される、過フッ素化(perfluorinated)フルオロポリマーを含む外側層とを備える多層フィルム構造に関する。幾つかの実施形態では、塩素含有フルオロポリマーは、PCTFEであってもよく、塩素及び酸素含有フルオロポリマーは、CPT等の、PCTFEの付加による重合中に修飾されるPFAであってもよい。また、多層フィルム構造は、コア層の反対側に作用可能に結合されており、過フッ素化フルオロポリマーを含む第2の外側層を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、外側層の一方又は両方の過フッ素化フルオロポリマーは、PFAであってもよい。コア層は、塩素含有フルオロポリマーと塩素及び酸素含有フルオロポリマーとの混合層であってもよく、又はコア層は、少なくとも1つの塩素含有フルオロポリマー層と、少なくとも1つの塩素及び酸素含有フルオロポリマー層とを有するサンドイッチ構造であってもよい。フィルム構造は、それを通って透過する窒素ガスのフラックス速度が、7cc/日/m
2/atm未満、好ましくは1cc/日/m
2/atm未満になるように構成されている。幾つかの実施形態では、コア層の約60%〜約90%は、塩素含有フルオロポリマーで構成されていてもよく、コア層の約40%〜約10%は、塩素及び酸素含有フルオロポリマーで構成されていてもよい。同様に、多層フィルムの約60%〜約90%は、コア層で構成されていてもよく、多層フィルムの約40%〜約10%は、外側層で構成されていてもよい。多層フィルム構造は、約1ミル〜約7ミル(約0.0254〜約0.1778ミリメートル)の全厚を有してもよい。
【0008】
本開示は、更なる実施形態では、上述のタイプの多層フィルム構造を製造するための方法に関する。本方法は、複数のフィルム層を押出して、塩素含有フルオロポリマー並びに塩素及び酸素含有フルオロポリマーを有するコア層、並びにコア層の1つの側に作用可能に結合されており、過フッ素化フルオロポリマーを有する外側層を形成することを含む。1つの実施形態では、複数のフィルム層を同時押出して、コア層及び外側層を実質的に同時に形成してもよい。塩素含有フルオロポリマーは、PCTFE及び/又はエチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)であってもよい。塩素及び酸素含有フルオロポリマーは、CPT等の、PCTFEの付加による重合中に修飾されるPFAであってもよい。過フッ素化フルオロポリマーは、PFA及び/又はフッ素化エチレンプロピレン(FEP)であってもよい。
【0009】
本開示は、更に別の実施形態では、多層フィルムライナー壁を有するライナーに関する。ライナー壁は、塩素含有フルオロポリマー並びに塩素及び酸素含有フルオロポリマーを有するコア層、並びにコア層の1つの側に作用可能に結合されており、過フッ素化フルオロポリマーを有する外側層を含む。ライナー壁は、それを通って透過する窒素ガスのフラックス速度が、7cc/日/m
2/atm未満になるように構成されていてもよい。コア層は、塩素含有フルオロポリマーと塩素及び酸素含有フルオロポリマーとの混合層であってもよく、又はコア層は、少なくとも1つの塩素含有フルオロポリマー層と少なくとも1つの塩素及び酸素含有フルオロポリマー層とを有するサンドイッチ構造であってもよい。
【0010】
複数の実施形態が開示されているが、本開示の更に他の実施形態は、当業者であれば、本発明の代表的な実施形態が提示及び説明されている以下の詳細な説明から明白になるだろう。本開示の様々な実施形態は、本開示の趣旨及び範囲から全く逸脱せずに、種々の明白な態様において改変が可能であることが理解されるだろう。したがって、図面及び詳細な説明は、その性質が例示であり、限定ではないとみなされるべきである。
【0011】
本明細書には、本開示の様々な実施形態を形成するとみなされる主題を具体的に指摘及び明確に主張する特許請求の範囲が添付されているが、本発明は、添付の図面と合わせて以下の説明から更によく理解されることになると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施形態による多層フィルムの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、新規で優れたポリマーに基づく多層ガスバリアフィルムに関する。詳しくは、本開示は、例えば、限定ではないが、ライナーに基づく保管及び分注システム用のライナーの製造に使用することができる、比較的良好な耐薬品性及び比較的高いガスバリア特性を有する、新規で優れたポリマーに基づく又はフルオロポリマーに基づく多層フィルムに関する。
【0014】
本開示による多層フィルムは、通常のライナー材料の望ましい又は好ましいいくつかの特性の組合せ、例えば、比較的高い耐薬品性及び比較的良好なガスバリア特性を有してもよい。詳しくは、本開示の様々な実施形態では、多層フィルムは、比較的高い耐薬品性を有する少なくとも1つの層、及び比較的良好なガスバリア特性を有する少なくとも1つの他の層を含んでいてもよい。より詳しくは、本開示の様々な実施形態では、多層フィルムは、比較的高い耐薬品性を有する少なくとも1つの外側層、及び比較的良好なガスバリア特性を有する、限定ではないが内側層等の少なくとも1つの他の層を含んでいてもよい。測定の基盤として、圧力分注応用で一般的に使用されている本開示の多層フィルムを透過する窒素(N
2)ガスのフラックス速度は、1つの実施形態では7cc/日/m
2/atm未満、幾つかの場合では好ましくは4cc/日/m
2/atm未満であってもよい。
【0015】
本開示による多層フィルムは、任意の好適な方法により製造することができる。しかしながら、1つの実施形態では、本開示の多層フィルムの様々な実施形態は、多層の材料を実質的に同時に押出しできるような、押出しプロセス又は共押出しプロセスを使用して製造することができる。
【0016】
図1に示されているように、1つの実施形態では、本開示による多層フィルム100は、コア層102及び1つ又は複数の外側層104を含んでいてもよい。コア層102は、比較的良好なガスバリア特性を有するように設計及び製造されていてもよい。上述のように、幾つかの実施形態では、コア層102は、7cc/日/m
2/atm未満の、好ましくは4cc/日/m
2/atm未満の、より好ましくは1cc/日/m
2/atm未満の、コア層を透過するN
2ガスのフラックス速度を有するように設計されていてもよい。1つ又は複数の外側層104は、比較的良好な又は高い耐薬品性を有するように設計又は選択されていてもよい。そのため、コア層102及び1つ又は複数の外側層104で構成される多層フィルム100は、一般的なライナー材料の望ましい又は好ましいいくつかの特性の組み合わせ、例えば比較的高い耐薬品性及び比較的良好なガスバリア特性等を備えていてもよい。
【0017】
1つの実施形態では、コア層102は、材料の混合物であってもよく、又はそれ自体が、複数の材料の多層構造であってもよく、又はその両方の組み合わせであってもよい。任意の好適な数の異なる材料がコア層102に選択されてもよく、混合物ではなく多層構造として製造される場合、コア層は、任意の好適な数の層を有していてもよい。混合コア層材料及び/又は層状コア層材料は、その結果生じるコア層102が、上記で考察されているように、比較的良好な、幾つかの場合には、比較的高いガスバリア特性を有するように、任意の好適な材料から選択されていてもよい。1つの特定の実施形態では、コア層102は、塩素含有フルオロポリマーと塩素及び酸素含有フルオロポリマーの混合物及び/又は層状構造を含んでいてもよい。1つの実施形態では、好適な、塩素含有フルオロポリマーは、限定ではないが、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)であってもよい。同様に、好適な、塩素及び酸素含有フルオロポリマーは、限定ではないが、ダイキンアメリカ社から市販されている修飾ペルフルオロアルコキシ(PFA)であり、一般的に重合中にPFA主鎖にPCTFE側鎖を付加して、それにより標準的PFAのガス及び/又は液体バリア特性を増加させることを含むCPTであってもよい。しかしながら、CPTの製作過程で、PFAの耐薬品特性の一部が、損なわれる。本明細書では、PCTFEとCPTの混合物及び/又はPCTFEとCPTの層状構造が考察されることが多いが、しかしながら、コア層102のPCTFEの代わりに、限定ではないが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、又は液晶ポリマー(LCP)等の、他の好適なポリマー又は材料を使用することができ、PCTFEに関する考察は、限定が目的ではないことが認識される。また、PCTFE(又は他の好適な材料)及びCPTのみが、コア層102を形成する材料である必要はなく、他の材料が、本開示の範囲から逸脱せずに更に導入されていてもよいことが認識される。例えば、1つの実施形態では、コア層102には、ガラス繊維を添加することができる。
【0018】
コア層102のPCTFE(又は他の好適な材料)対CPT(又は他の好適な材料)の比は、特定の応用及び/又は仕様に望ましいように選択することができる。すなわち、コア層は、それぞれ、約0%〜約100%のPCTFEを含んでいてもよく、したがって、約100%〜約0%のCPTを含んでいてもよい。しかしながら、1つの特定の実施形態では、コア層102は、約60%〜約90%のPCTFE及び約40%〜約10%のCPTを含んでいてもよい。更により詳しくは、1つの特定の実施形態では、コア層102は、約80%のPCTFE及び約20%のCPTを含んでいてもよい。一般的に、本明細書で開示されているあらゆる範囲は、指定の終点値を有する明示的に示されている範囲を含むだけでなく、示されている範囲内の個々の値及び部分的範囲も含むと解釈されるべきである。この同じ原理は、1つの数値のみが示されている範囲(「7cc/日/m
2/atm未満」等)にも適用される。更に、そのような解釈は、記載されている範囲又は特徴の幅に関わらず適用されるべきである。
【0019】
PCTFEが、約0.1cc/日/m
2/atmのN
2透過性を有し、CPTが、約0.9cc/日/m
2/atmのN
2透過性を有する場合、1つの実施形態では、PCTFE及びCPTを含む混合コア層は、その結果として、約0.1〜0.9cc/日/m
2/atmの透過性を有する場合がある。混合物ではなく多層構造を含むコア層102の実施形態では、層の数及び/又は各層の厚さは、その結果生じるコア層102のバリア特性に全体的な影響を及ぼす場合がある。例えば、多層フィルムは、一般的に、例えば融解結合により共に保持されている個々のフィルムの幾つかの層で形成されていてもよい。層の数が増加すると共に、バリア特性の有効性も増加する場合がある。同様に、各層の厚さは、層間の接着強度及び多層フィルムの全体的バリア特性に著しい影響を及ぼす場合がある。詳しくは、層の厚さが薄くなれば、個々の層状フィルムの結晶の配列がより良好になり、例えば、ガス分子の経路がより蛇行又は屈曲したものになり、それにより多層フィルムの全体的バリアの強さが増加する。この点で、コア層102は、任意の好適な数の層を含んでいてもよく、各層の任意の厚さが企図されており、ある場合には、その結果生じる多層フィルム100の所望の応用又は仕様に依存する場合がある。1つの特定の実施形態では、コア層102は、最大4096個以上の層を含むことができる。更により詳しくは、1つの実施形態では、コア層102は、3〜128個の層を含んでいてもよい。同様に、各々の個々の層は、限定ではないが、約100ミクロン等の、約1ナノメートルから数ミクロンまでの厚さを有していてもよい。
【0020】
上述のように、多層フィルム100は、1つ又は複数の外側層104を含んでいてもよい。外側層材料は、多層フィルムの少なくとも1つの側が、使用目的に応じて、有害又は腐食性薬品に隣接している場合があるため、外側層104が、比較的良好な、ある場合には比較的高い耐薬品性を有するように、任意の好適な材料から選択することができる。1つの特定の実施形態では、外側層104は、過フッ素化フルオロポリマーを含んでいてもよい。また更なる実施形態では、好適な過フッ素化フルオロポリマーは、限定ではないが、PFAであってもよい。本明細書ではPFAが考察されることが多いが、しかしながら、外側層104のPFAの代わりに、限定ではないが、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)又はエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)等の、他の好適なポリマー又は材料を使用してもよく、PFAに関する考察は、限定が目的ではないことが認識される。また、PFA(又は他の好適な材料)のみが、外側層104を形成する材料である必要はなく、他の材料が、本開示の範囲から逸脱せずに更に導入されていてもよいことが認識される。
【0021】
多層フィルム100は、コア層102の1つの側にのみ外側層104を有していてもよく、又はコア層102の各側に外側層104を有していてもよい。また更なる実施形態では、各外側層104は、それ自体が複数材料の混合物で構成されていてもよく、又は複数材料の層状構造で構成されていてもよく、又はその両方の組み合わせで構成されていてもよい。同様に、各外側層104は、必ずしも他の層の材料と同じ材料で構成される必要はない。
【0022】
多層フィルム100についてコア層102と外側層(1つ又は複数)104との比は、特定の応用及び/又は仕様に望ましいように選択することができる。すなわち、多層フィルム100は、それぞれ、約0%〜約100%のコア層102を含んでいてもよく、したがって、約100%〜約0%の外側層(1つ又は複数)104を含んでいてもよい。しかしながら、1つの特定の実施形態では、多層フィルム100は、約60%〜約90%のコア層102及び約40%〜約10%の外側層(1つ又は複数)104を含んでいてもよい。更により詳しくは、1つの実施形態では、多層フィルム100は、約80%のコア層102及び約20%の外側層(1つ又は複数)104を含んでいてもよい。
【0023】
多層フィルム100の更なる実施形態では、例えば、限定ではないが、目的の仕様を満たすために又は層間の接着を提供するために望ましい又は必要とされる場合、任意の好適な他の層が含まれていてもよい。例えば、ある実施形態では、コア層102は、高割合のPCTFE及び低割合のCPTで構成されていてもよい。PCTFEは、単独では、CPT又はPFAと良好に結合又は積層することができないため、幾つかの実施形態では、コア層102と1つ又は複数の外側層104との間に、1つ又は複数の結合層106を含むことが望ましいか又は有利である場合がある。結合層106は、限定ではないが接着等の所望の特徴を有するか又は提供することができる、任意の好適な材料から選択することができる。ある実施形態では、例えば、コア層102が、PCTFE及びCPTの混合物又は多層構造を含み、外側層(一または複数)104が、コア層のPCTFE対CPTの比又は多層PCTFE−CPTコアの構造に応じて、PFAを含む場合、CPTを含む結合層は、コア層102と外側層(一または複数)104との結合を支援するために、望ましいか又は有利である場合がある。
【0024】
本明細書で開示されている多層フィルム100の様々な実施形態は、任意の好適な厚さを有するように設計又は構成することができ、それは、所望の応用又は仕様に依存する場合がある。同様に、コア層102、外側層(一または複数)104、任意の結合層106、又は任意の他の層の各々は、任意の好適な厚さであってもよく、任意の他の層とは異なる厚さを有していてもよく、それは、この場合も所望の応用又は仕様に依存する場合がある。特定の実施形態では、多層フィルム100全体は、厚さが約1〜約7ミル(約0.0254〜約0.1778ミリメートル)であってもよい。更により詳しくは、幾つかの実施形態では、多層フィルム100全体は、厚さが約3〜約5ミル(約0.0762〜約0.127ミリメートル)であってもよい。
【0025】
上述のように、本明細書で開示されているポリマーに基づく又はフルオロポリマーに基づく多層フィルムの様々な実施形態は、ライナーに基づく保管及び分注システム用のライナーの製造に使用することができる。詳しくは、本明細書で開示されているポリマーに基づく又はフルオロポリマーに基づく多層フィルムの様々な実施形態は、ライナーの外部表面に加えられる圧力分注ガスの透過からライナー内の内容物を保護するために、間接圧力又は圧力支援分注システム又は技術が使用される、ライナーに基づく保管及び分注システム用のライナーの製造に使用することができる。しかしながら、そのような例は、限定ではなく、本明細書で開示されているポリマーに基づく又はフルオロポリマーに基づく多層フィルムの様々な実施形態は、任意の他の好適なポリマーに基づく又はフルオロポリマー基づく物品の製造を含む、任意の好適な目的に使用することができることが認識される。
【0026】
本明細書で開示されているポリマーに基づく又はフルオロポリマーに基づく多層フィルムの様々な実施形態を使用して製造されるライナーは、それらに限定されないが以下のものを含む、任意の好適なタイプ又は構成の、サイズの、及び形状のライナーであってもよい:ピロータイプライナ(又は二次元ライナー)と呼ばれることが多いライナー、一般的にオーバーパック壁により規定されているより剛性のオーバーパックの内側により実質的に一致若しくは嵌合するか又は著しく一致若しくは嵌合さえするように構成されていてもよい三次元又は共形ライナー、並びにこれらに限定されないが、同時ブロー成型(例えば、2つの予備形成体が共にブロー成型される)又は2重ブロー成型(例えば、予備形成体が、金型ではなく外側ライナー又はオーバーパックに直接ブロー成型される)技術が更に使用される場合がある、押出しブロー成型ライナー、射出ブロー成型ライナー、及び伸長ブロー成型ライナーを含むブロー成型ライナー。
【0027】
様々な好適例のライナー及びそれらの製造方法は、以下の文献に非常に詳しく更に記載されている:国際出願第PCT/US11/55558号、名称「Substantially Rigid Collapsible Liner,Container and/or Liner for Replacing Glass Bottles,and Enhanced Flexible Liners」、2011年10月10日出願;国際出願第PCT/US11/55560号、名称「Nested Blow Molded Liner and Overpack and Methods of Making Same」、2011年10月10日出願;国際出願第PCT/US11/64141号、名称「Generally Cylindrically−Shaped Liner for Use in Pressure Dispense Systems and Methods of Manufacturing the Same」、2011年12月9日出願;米国特許仮出願第61/468832号、名称「Liner−Based Dispenser」、2011年3月29日出願;米国特許仮出願第61/525540号、名称「Liner−Based Dispensing Systems」、2011年8月19日出願;米国特許出願第11/915996号、名称「Fluid Storage and Dispensing Systems and Processes」、2006年6月5日出願;国際出願第PCT/US10/51786号、名称「Material Storage and Dispensing System and Method With Degassing Assembly」、2010年10月7日出願;国際出願第PCT/US10/41629号、米国特許第7335721号、米国特許出願第11/912629号、米国特許出願第12/302287号、及び国際出願第PCT/US08/85264号。これらの文献の各々は、参照によりその全体が本明細書に組に込まれる。本開示によるライナーは、これらに限定されないが以下のものを含む、上述の応用のいずれかに開示されている実施形態、特徴、及び/又は強化を含んでいてもよい:可撓性ライナー、剛性折畳み可能ライナー、二次元ライナー、三次元ライナー、溶着ライナー、成型ライナー、ガセットライナー、及び/又は非ガセットライナー、及び/又はひだを含むライナー、及び/又は遮断を制限又は排除する方法を含むライナー、及び例えばATMI社製のNOWpak(登録商標)の商品名で販売されているライナー。更なる実施形態では、本開示によるライナーに基づくシステムは、2006年6月5日に出願された「Fluid Storage and Dispensing Systems and Processes」という名称の米国特許出願第11/915996号に開示されているもの等、NOWPak(登録商標)圧力分注システムと適合するように構成されていてもよい。この文献の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0028】
そのようなライナーの使用例には、限定ではないが、以下のもの等の超高純度の化学薬品又は材料等の材料を輸送、保管、及び/又は分注することが含まれる:酸、溶媒、塩基、フォトレジスト、バンプレジスト、スラリー、界面活性剤、洗浄用配合物、ドーパント、無機溶液、有機溶液、有機金属溶液、TEOS溶液、及び生物学的溶液、DNA及びRNA溶媒及び試薬、医薬品、印刷可能なエレクトロニクス無機及び有機材料、リチウムイオン又は他のバッテリータイプ電解質、ナノ材料(例えば、フラーレン、無機ナノ粒子、ゾル−ゲル、及び他のセラミックを含む)、TARC/BARC(上面反射防止コーティング/底面反射防止コーティング)、放射性化学薬品、及び低分子量ケトン、及び/又は超小型電子部品製造、半導体製造、及び平面パネルディスプレイ製造等の産業で使用される銅化学薬品;殺虫剤/肥料;塗料/光沢剤/溶媒/コーティング材料等;高圧洗浄液;例えば、自動車又は航空産業で使用される潤滑剤;例えば、限定ではないが、調味料、調理油、及び清涼飲料等の食品;生物医学又は研究産業で使用される試薬又は他の物質;例えば、軍により使用される有害物質;ポリウレタン;農薬;工業用化学薬品;化粧用薬品;石油及び潤滑剤;シーラント;健康製品及び口腔衛生製品及び洗面用製品;又は例えば、圧力分注により分注することができるあらゆる他の物質。当業者であれば、そのようなライナーに基づくシステムの有益性、及びライナーを製造するプロセスを認識し、したがって、様々な産業での使用並びに様々な製品の輸送及び分注におけるライナーの好適性を認識するだろう。
【0029】
本開示のライナーに基づくシステムの実施形態は、超高純度であり、及び/又は比較的高価であり、及び幾つかの場合では非常に高価である材料を保管、輸送、及び/又は分注するために使用することができるため、本開示のポリマーに基づく又はフルオロポリマーに基づく多層フィルムの任意の実施形態から製造されるライナーは、そのような実施形態が、ライナーからライナー内容物への圧力ガスの透過を阻害又は実質的に阻害しつつ、その中に保管される場合があるフォトレジスト等の特定の内容物に対する高い耐薬品性を維持するための間接圧力分注応用中に、上記で考察されているように高度に効果的なガスバリア性を提供することができるため、従来のライナーと比べて著しい利点を提供することができる。例えば、本開示のライナーに基づくシステムを用いた使用が企図される幾つかの超高純度材料のコストは、約$2500/L以上であり得る。したがって、内容物へと透過するガス量のわずかな低減でさえ、望ましい場合がある。
【0030】
前述の記載では、本開示の様々な実施形態が、例示及び説明の目的で示されている。それらは、網羅的であること、又は開示されている厳密な形態に本発明を限定することを意図していない。自明な改変又は変更が、上記の教示に照らして可能である。様々な実施形態は、本発明の原理及びその実際の応用の最も良好な例を提供するために、及び当業者が、本発明を様々な実施形態で使用し、企図されている特定の使用に適するように改変を施すことを可能にするために選択及び記載されている。そのような改変及び変更は全て、それらが適正に、法律的に、及び公正に付与された範囲に従って解釈された場合に、添付の特許請求の範囲により決定される本開示の範囲内にある。