特許第6261057号(P6261057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6261057
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】選択増幅装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/10 20060101AFI20180104BHJP
【FI】
   H01S3/10 D
   H01S3/10 Z
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-174793(P2016-174793)
(22)【出願日】2016年9月7日
【審査請求日】2017年5月15日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「マイクロチップレーザーの開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平等 拓範
(72)【発明者】
【氏名】ヤヒア ヴァンサン
【審査官】 村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−074593(JP,A)
【文献】 特開2002−099007(JP,A)
【文献】 特開2011−176358(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0018287(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00−3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチモードのレーザー光に含まれる特定モードのレーザー光を選択して増幅する装置であり、
前記マルチモードのレーザー光を発生する発振用利得媒質と、
増幅用利得媒質と、
前記増幅用利得媒質に入力すると反転分布状態を生成する増幅用励起光を発生する増幅用励起光発生装置を備えており、
前記レーザー光の光軸と前記増幅用励起光の光軸が一致する関係で、前記レーザー光と前記増幅用励起光が前記増幅用利得媒質に入力し、
前記増幅用利得媒質中において、前記増幅用励起光の実効的ビーム直径が前記特定モードのレーザー光の実効的ビーム直径以下の関係にあり、
前記特定モードのレーザー光を選択的に増幅したレーザー光を出力する選択増幅装置。
【請求項2】
前記発振用利得媒質と前記増幅用利得媒質が一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の選択増幅装置。
【請求項3】
前記増幅用利得媒質が一対の端面を備えており、
前記マルチモードのレーザー光が一方の端面から前記増幅用利得媒質に入力し、前記増幅用励起光が他方の端面から前記増幅用利得媒質に入力することを特徴とする請求項1または2に記載の選択増幅装置。
【請求項4】
前記特定モードが基本モードであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの1項に記載の選択増幅装置。
【請求項5】
前記増幅用励起光の横断面がリング状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの1項に記載の選択増幅装置。
【請求項6】
前記発振用利得媒質と前記増幅用利得媒質が、単結晶または多結晶性セラミックであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの1項に記載の選択増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、マルチモードのレーザー光に含まれる特定モードのレーザー光を選択して増幅する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
レーザー光発生装置が発生するレーザー光には、低次モードから高次モードに至る複数のモードが含まれている場合が多い。用途によっては、基本モードのみが高強度であり、高次モードは低強度なレーザー光が必要とされることがある。基本モードのみが優越的なレーザー光が得られれば、レーザー光を処理する光学系の設計・設定が容易化される。あるいは、集光径を小さくして単位面積当たりの強度を高めるといったことが可能となる。レーザー微細加工、レーザー計測、あるいは光通信技術などの多くの技術分野で、特定の次数または次数帯のモードのみが優越的なレーザー光が必要とされることがある。
【0003】
基本モードから高次モードに至る複数モードを含むマルチモードのレーザー光から基本モードが優越的なレーザー光を得るために、レーザー光の伝播経路にアイリスを挿入し、基本モード以外のレーザー光をカットする手法が取り得る。図1は、その手法を説明しており、半導体レーザー装置2から放出された励起光4によって励起された発振用利得媒質6から放出されるレーザー光8は、基本モードのレーザー光8aの他に、高次モードのレーザー光8bを含んでいる。発振用利得媒質6から放出された基本モードのレーザー光8aはほとんど拡がらないで進行するのに対し、高次モードのレーザー光8bは拡がりながら進行する。アイリス10には、拡がらないで進行するレーザー光は通過し、拡がりながら進行するレーザー光を遮蔽する開口が形成されている。開孔を通過したレーザー光8cは、基本モードが優越的なレーザー光となる。本明細書では、基本モードから高次モードに至る複数モードを含むマルチモードのレーザー光から特定のモードが優越的なレーザー光を得ることを、モードクリーニングという。図1に示したように、開孔を有するアイリス10を利用することによって、基本モードにクリーニングすることができる。ただしこの手法では、開口を通過した後のレーザー光8cの周囲に回析光8dが付随してしまう。基本モードのみが優越的なレーザー光のみを得ることができないので、本来のモードクリーニングということはできない。なお、参照番号12,14,16で示す図は、光ビームの該当位置における横断面を観測することで得られる明暗パターンを示している。
【0004】
図2の光学系によると、回析光の発生を抑制しながらモードクリーニングすることができる。図2の光学系では、集光レンズ18とコリメートレンズ20を追加する。集光レンズ18とアイリス10とコリメートレンズ20の組み合わせによって、フーリエ変換過程(イメージリレー)を経ると、回析光の発生を避けることができる。ただし、この技術では、強いレーザー光を取り扱う場合に、集光点においてエアブレイクダウンが発生する。高強度レーザー光の集光点でエアブレイクダウンが発生しないようにするためには、集光点を真空環境に置く必要があり、窓22,26を備えた真空容器24が必要となる。図2の手法では、レーザー光発生装置を小型化しても、それとは別に大きな真空容器24を必要とし、レーザー光発生装置を小型化する利点を享受できない。なお、参照番号12,28で示す図は、光ビームの該当位置における横断面を観測することで得られる明暗パターンを示しており、参照番号30は、モードクリーニングされた基本モードのレーザー光を示している。
【0005】
特許文献1に、ファイバテーパあるいはファイバコイルのようなモードフィルタを利用してモードクリーニングする技術が開示されている。特許文献1の技術は、ファイバテーパあるいはファイバコイルといった特殊なファイバを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許公報5818630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書では、アイリスもフーリエ変換用光学系も真空容器も特殊ファイバも利用しないでモードクリ−ニングする技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示する選択増幅装置は、マルチモードのレーザー光に含まれる特定モードのレーザー光を選択して増幅する。この選択増幅装置は、マルチモードレーザー光を発生する発振用利得媒質と、増幅用利得媒質と、増幅用利得媒質に入力すると反転分布状態を生成する増幅用励起光を発生する増幅用励起光発生装置を備えている。増幅用利得媒質には、マルチモードレーザー光と増幅用励起光の双方が入力する。その際に、マルチモードレーザー光の光軸と増幅用励起光の光軸が一致する関係とする。また、増幅用利得媒質中における増幅用励起光の実効的ビーム直径が、増幅用利得媒質中における特定モード(選択的に増幅したい次数)のレーザー光の実効的ビーム直径以下の関係とする。ここでいう実効的ビーム直径は、光電力の99%が含まれるビーム直径のことをいう。例えば、特定モードが基本モードであって、その基本モードのレーザー光の1/eビーム半径がwである場合、基本モードのレーザー光の実効的ビーム直径は、π×wとなる(Siegmanの著書「LASERS」p.666 参照)。増幅用励起光が高次モードのレーザー光である場合、増幅用励起光の実効的ビーム直径は、1/eビーム直径にほぼ等しい。
上記の関係にあると、増幅用利得媒質から特定モードのレーザー光を選択的に増幅したレーザー光が出力される。
【0009】
発振用利得媒質と増幅用利得媒質は、別体であってもよいが、一体であってもよい。共通の利得媒質の一部を発振用利得媒質に利用し、他の一部を増幅用利得媒質に利用することができる。
【0010】
マルチモードレーザー光の光軸と増幅用励起光の光軸は一致していることが必要であるが、それらの進行方向は同一方向であってもよいし、逆方向であってもよい。例えば、増幅用利得媒質が一対の端面を備えており、マルチモードレーザー光が一方の端面から増幅用利得媒質に入力し、増幅用励起光が他方の端面から増幅用利得媒質に入力する関係にしてもよい。
【0011】
マルチモードレーザー光は、増幅用利得媒質中を単行するものであってもよいし、往復するものであってよい。増幅されたレーザー光が、前記した他方の端面から放出されるようにしてもよいし、前記した一方の端面から放出されるようにしてもよい。
増幅用励起光もまた、増幅用利得媒質中を単行するものであってもよいし、往復するものであってよいし、複数回往復するものであってもよい。増幅用励起光が、前記した一方の端面から放出されるようにしてもよいし、前記した他方の端面から放出されるようにしてもよい。増幅用利得媒質から放出された増幅用励起光を再び増幅用利得媒質に戻す光学系を備えていてもよい。
【0012】
増幅用利得媒質中における増幅用励起光の実効的ビーム直径が、増幅用利得媒質中における基本モードのレーザー光の実効的ビーム直径以下の関係にすれば、基本モードのレーザー光を選択的に増幅したレーザー光を出力することができる。
【0013】
例えば、TEMnm(n,mは0から始まる。n,mの値が大きいほど高次モード)の次数を持つレーザー光のみを増幅したい場合がある。この場合、増幅用利得媒質中における(n,m)次モードのレーザー光のビーム空間分布と、増幅用利得媒質中における増幅用励起光のビーム空間分布とが重なり合うようにすれば、(n,m)の次数を持つレーザー光を選択して増幅することができる。例えばTEM00モードであれば基本ガウシャンモード(以降、基本モード)となるため、中心部が明るくて横断面が丸い形状の増幅用励起光で増幅する。TEM01*のモードであれば、横断面がリング状のビーム空間分布となる。この場合は、横断面がリング状の増幅用励起光で増幅する。必要な次数のモードは増幅し、不必要な次数のモードは増幅しないことによって、必要な次数のモードと不必要な次数のモードとのコントラストを高めることができる。これは等価的にレーザー光をクリーニングした事になる。複数モードが混入しているレーザー光の特定モードを選択的に増幅する事で、モードクリーニングしたレーザー光を得ることができる。つまり、マルチモードレーザー光からTEM00モードが優越的なレーザー光を得るためには、マルチモードレーザー光の中心部だけを選択的に増幅すればよい。マルチモードレーザー光からTEM01*モードが優越的なレーザー光を得るためには、リング状の増幅用励起光で励起すればよい。
【0014】
発振用利得媒質と増幅用利得媒質の材質・組成には特に制約されない。反転分布状態が得られて誘導放出現象が生じるものであればよい。例えば、単結晶または多結晶性セラミック等の固体であってもよい。固体の利得媒質を利用すると装置構成が簡単化される。さらに非線形光学媒質による光パラメトリック光増幅でも同様の効果が期待される。
【発明の効果】
【0015】
本明細書に開示する技術によると、特定モードが優越的な高強度レーザー光が得られ、レーザー光の品質が向上する。例えば、レーザー加工機、エンジンのレーザー点火装置、テラヘルツ波発生装置、高調波発生やパラメトリック発生などの非線形波長変換装置、計測機器あるいは医療器具等に利用するレーザー光の単位面積当たりのパワーを増加させることができる。あるいは、光通信に利用可能な情報量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】基本モードを選択する従来装置を説明する。
図2】基本モードを選択する別の従来装置を説明する。
図3】実施例1の選択増幅装置を説明する。
図4】実施例2の選択増幅装置を説明する。
図5】実施例3の選択増幅装置を説明する。
図6】実施例4の選択増幅装置を説明する。
図7】実施例5の選択増幅装置を説明する。
図8】実施例6の選択増幅装置を説明する。
図9】実施例7の選択増幅装置を説明する。
図10】実施例7の選択増幅装置が利用する増幅装置を説明する。
図11】実施例7の選択増幅装置が利用する別の増幅装置を説明する。
図12】マルチモードレーザー光と増幅用励起光の光軸からの距離と強度の関係を示す。
図13】増幅用励起光の持続時間と利得の関係を示す。
図14】増幅用励起光の持続時間と選択増幅後のビームプロファイルを示す。
図15】増幅用励起光の持続時間と選択増幅後のビームプロファイルを示す。
図16】選択増幅前と選択増幅後のビームプロファイルを示す。
図17】利得とコントラストの関係を示す。
図18】利得と選択増幅されたレーザー光のビーム直径の関係を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に説明する実施例の特徴を先に列記する。
(特徴1)マルチモードレーザー光が増幅用利得媒質を単行する(通過する)。
(特徴2)マルチモードレーザー光が増幅用利得媒質を往復する。
(特徴3)増幅用励起光が増幅用利得媒質を単行する(通過する)。
(特徴4)増幅用励起光が増幅用利得媒質を往復する。
(特徴5)マルチモードレーザー光と増幅用励起光が同一面から増幅用利得媒質に入力する。
(特徴6)マルチモードレーザー光と増幅用励起光が反対面から増幅用利得媒質に入力する。
(特徴7)レーザー光のビーム半径wないしビーム直径は、その定義より、光強度の空間分布に関する二次モーメントとして定義される。従って、基本モードのレーザー光の光軸上での光強度に対して、光軸から半径方向にwだけ隔てた位置での光強度が1/eとなる場合、基本モードのレーザー光のビーム半径はwとなる。
ただし、基本ガウシャンモードの場合、光軸から1/e半径を超えてもレーザー光の強度は直ぐにはゼロにならず、ガウス分布する。例えば、基本モードのレーザー光を、直径が2wのピンホールに通した場合、多くの成分を失ってしまう。99%の光電力を得るために必要な穴の直径は、π×wとなる(Siegmanの著書「LASERS」p.666 参照)。
レーザー光増幅では、より高次の(換言すればビーム品質が劣悪な)光を用いて、品質の高い、すなわち特定モードの光強度を強くする。すなわち、増幅用励起光には、高次モードのレーザー光使われる。なお、高次モード光の場合、強度分布の境界は急峻に変化するため、2次モーメントの定義に従うなら、1/e半径において、基本モードのような裾を引かず、急激に光強度は低下する(図12, C21またはC22参照)。
上記の考察から、本明細書でいう基本モードのレーザー光の実効的ビーム直径は、基本モード成分の99%を含む直径(π×w)をいう。それに対して増幅用励起光の実効的ビーム直径は、1/e直径にほぼ等しい。増幅用励起光の実効的ビーム直径を2.15×wとすると、増幅用励起光の実効的ビーム直径を(2.15×w)は基本モードのレーザー光の実効的ビーム直径(3.14×w)より小さい関係となり、基本モードを選択増幅する。
(特徴8)基本モードのレーザー光の実効的ビーム直径(3.14×w)に対して、増幅用励起光の実効的ビーム直径を2.3×w以下とする。特徴7の場合とほぼ同じコントラストが得られる。
(特徴9)増幅用励起光の実効的ビーム直径を、1.43×wとする。増幅用励起光の実効的ビーム直径(1.43×w)は、基本モードのレーザー光の実効的ビーム直径(3.14×w)より小さく、基本モードを選択増幅する。
(特徴10)基本モードのレーザー光の実効的ビーム直径(3.14×w)に対して、増幅用励起光の実効的ビーム直径を1.57×w以下とする。特徴9の場合とほぼ同じコントラストが得られる。
(特徴11)パルス状の増幅用励起光で増幅用利得媒質を励起した状態でパルス状のマルチモードレーザー光を増幅用利得媒質に入力する。
(特徴12)増幅利得を2以上とする。
【実施例】
【0018】
(実施例1の選択増幅装置)
図3において、参照番号2は、発振用励起光4を放出する半導体レーザー装置である。参照番号6は発振用励起光4が入力すると励起されて(反転分布状態が発達して)レーザー光8を放出する発振用利得媒質である。
【0019】
発振用利得媒質6の左端面は、発振用励起光4を反射せず、レーザー光8を反射する膜でコートとされている。参照番号52は、発振用励起光4を反射し、レーザー光8の一部を反射して一部を反射しないミラーである。発振用利得媒質6の左端面とミラー52とによって、レーザー共振系が構成されている。ミラー52から、レーザー光8が右向きに進行する。レーザー光8はマルチモードレーザー光である。レーザー共振系の中に、PBS(Polarized Beam Splitter)50が挿入されており、λ/2板54から右側に進行するマルチモードレーザー光8は直線偏光している。8αに示す記号は、偏光面が紙面に垂直であることを示す。なお、発振用利得媒質6の右側の端面は、発振用励起光4もレーザー光8も反射しない膜でコートされており、PBS50は発振用励起光4もレーザー光8も反射しない材質で形成されている。なお、発振用利得媒質6の右端面を、発振用励起光4を反射してレーザー光8を反射しない膜でコートしてもよく、その場合は、PBS50とミラー52の発振用励起光4に対する反射特性に制約がなくなる。
PBS56とPBS58は、偏光面が紙面に垂直なレーザー光8を反射する。レーザー光8は、λ/4板60を通過し、増幅用利得媒質62に入力する。
【0020】
参照番号32は、増幅用励起光34を放出する半導体レーザー装置であり、増幅用励起光34は、増幅用利得媒質62に入力する。レーザー光8と増幅用励起光34は、両者の光軸が一致した状態で、反対側の端面から、増幅用利得媒質62に入力する。
増幅用利得媒質62の左端面は、増幅用励起光34を反射しないでレーザー光8を反射する膜でコートされており、右側端面は、増幅用励起光34を反射してレーザー光8を反射しない膜でコートされている。レーザー光8は増幅用利得媒質62の左端面で反射して増幅用利得媒質62内を往復し、増幅用励起光34は増幅用利得媒質62の右端面で反射して増幅用利得媒質62内を往復する。増幅用利得媒質62中を、レーザー光8も往復すれば、増幅用励起光34も往復する。増幅のゲインが高く得られる。
【0021】
増幅用利得媒質62内における、基本モードのレーザー光8の実効的ビーム直径と、増幅用励起光34の実効的ビーム直径の関係は、図12を参照して後記するように、前者>後者の関係にある。増幅用利得媒質62を進行する間に、マルチモードのレーザー光8のうちの基本モードが選択的に増幅される。増幅された基本モードのレーザー光40は、増幅用利得媒質62の右端面から右側に進行する。レーザー光8,40は、λ/4板60を合計して2回通過することから、λ/4板60から右側に進行するレーザー光40は、偏光面が90°回転する。40βに示す記号は、偏光面が紙面に平行であることを示す。偏光面が紙面に平行なレーザー光40(40β)は、PBS58で反射されずに直進する。PBS58から右側に進行するレーザー光40(40β)は、マルチモードレーザー8に含まれる基本モードを選択的に増幅したレーザー光である。図3の装置は、マルチモードレーザー光8に含まれる基本モードのみを選択的に増幅したレーザー光40(40β)を出力する。
【0022】
図3(b)に示すように、利得媒質5の一部を発振用利得媒質6に利用し、他の一部を増幅用利得媒質62に利用することができる。すなわち、発振用利得媒質6と増幅用利得媒質62を一体化してもよい。
【0023】
(実施例2)
図4に示す実施例2の選択増幅装置では、発振用利得媒質6の左端面とミラーによって構成されるレーザー共振系の中に、Qスイッチとして動作する可飽和吸収体64が挿入されており、可飽和吸収体64の右端面からパルスレーザー光8Aが放出される。本実施例では可飽和吸収体64の右端面に、図3のミラー52に対応する膜がコートされている。なお、説明すみの部材には、同じ参照番号を付することによって、重複説明を省略する。
半導体レーザー装置32Aはパルス状の電圧で駆動され、パルス状の増幅用励起光34Aを発生する。パルス状の増幅用励起光34Aは、増幅用利得媒質62に入力する。パルス状レーザー光8Aのパルス幅(持続時間)は、パルス状増幅用励起光34Aのパルス幅(持続時間)に比して短い。また、パルス状増幅用励起光34Aによる励起開始時刻から可飽和吸収体64の透過度が低下するまでの時間は制御可能となっている。パルス状増幅用励起光34Aによって励起を開始し、それによって増幅用利得媒質62に反転分布状態を発達させ、反転分布状態が発達した状態でパルス状レーザー光8Aを入力して誘導放出を起こして増幅する。パルス状増幅用励起光34Aの励起開始時刻からパルス状レーザー光8Aの入力時刻までの時間差が長いほど強い反転分布状態が発達し、増幅時の利得(ゲイン)が高くなる。ここでいうゲインは、増幅後のレーザー光のエネルギーを、増幅前の基本モードのレーザー光のエネルギーで除した値をいう。なお、図4に示す添え字Aは、パルス状であることを示す。
【0024】
本実施例では、パルス状増幅用励起光34Aの励起開始時刻からパルス状レーザー光8Aの入力時刻までの時間差を変えながら利得(ゲイン)を計測した。そのために、外部からの刺激によって透過度が低下する可飽和吸収体64を用いた。すなわち、能動型のQスイッチを用いた。実用用途に用いる際には、受動Qスイッチとして動作する可飽和吸収体64を用いることができる。
図4(b)に示すように、本実施例でも、利得媒質5の一部を発振用利得媒質6に利用し、他の一部を増幅用利得媒質62に利用することができる。すなわち、発振用利得媒質6と増幅用利得媒質62を一体化してもよい。
【0025】
図4に示す実施例を用いて行った実験結果を次に示す。
図12のカーブC1は、増幅用利得媒質62中を進行するレーザー光8のビームプロファイルを示し、横軸は光軸からの距離であり、縦軸は単位面積当たりの強度を示す。単位体積当たりの強度は、光軸上での値を1.00に規格化したものである。図示の直径φ1は、その直径内に基本モード成分の99%が含まれる直径であり、本実施例では2040μmであった。
ビーム直径の定義方法に複数種類があり得る。基本ガウシャンビームの場合、ISOによって1/e半径を計測することが推奨されており、業界はそれに習っている。1/e半径は、レーザー光の光軸から離れた位置における単位面積当たりの光強度が、光軸上における単位面積当たりの光強度の1/eとなる距離のことである。本実施例では、650μmであった。基本モード成分は、1/e半径の外側にも広がっており、基本モード成分の99%が含まれる半径は、1/e半径よりも広い。基本モード成分の99%が含まれる実効的ビーム直径φ1は、π×(1/e半径)の関係にある。本実施例では、1/e半径を計測し、それから基本モードの実効的ビーム直径(φ1)を求めた。なおφ1=π×(1/e半径)の関係にあることは、Anthony E. Siegman 教授の「LASERS」という書籍等に記載されている。
【0026】
図12のカーブC21は、第1の実験で用いた第1の増幅用励起光のビームプロファイルを示す。実験では、増幅用励起光34を放出する半導体レーザー装置32と増幅用利得媒質62の間に直径900ミクロンの光ファイバを用い、その光ファイバによって導かれた増幅用励起光34を拡径光学系を通して増幅用利得媒質62に入力した。光ファイバによって導かれたビームプロファイルはガウシアン分布とならず、光軸から所定距離だけ離れた位置で急速に減衰する。増幅用励起光34の99%が含まれる直径φ21は、1400μmであった。すなわち、基本モードのレーザー光の実効的ビーム直径がπ×wであるのに対し、増幅用励起光の実効的ビーム直径を2.15×wとした。
【0027】
第1実験で用いた増幅用励起光34の実効的ビーム直径φ21(1400μm)は、基本モードのレーザー光の実効的ビーム直径φ1(2040μビームm)よりも細い。この場合、基本モードのレーザー光のうち増幅用励起光34の実効的ビーム直径φ21内に存在するレーザー光のみが選択的に増幅される。
【0028】
後記する第2実験では。半導体レーザー装置32と増幅用利得媒質62の間に直径600ミクロンの光ファイバを用い、その光ファイバによって導かれた増幅用励起光34を拡径光学系を通して増幅用利得媒質62に入力した。図12のカーブC22は、第2の実験で用いた第2の増幅用励起光のビームプロファイルを示す。この実験に用いた増幅用励起光34の99%が含まれる直径φ22は、930μmであった。すなわち、基本モードのレーザー光の実効的ビーム直径がπ×wであるのに対し、増幅用励起光の実効的ビーム直径を1.43×wとした。第2実験で用いた増幅用励起光34の実効的ビーム直径φ22(930μm)は、基本モードのレーザー光の実効的ビーム直径φ1(2040μm)よりも細い。そのために、基本モードのレーザー光のうち増幅用励起光34の実効的ビーム直径φ22内に存在するレーザー光のみが選択的に増幅される。
【0029】
図13は、パルス状増幅用励起光34Aの励起開始時刻からパルス状レーザー光8Aの入力時刻までの時間差(励起時間)と、利得(ゲイン)の関係を示している。カーブC4は、増幅用励起光34の直径φ22=930μmの場合の計測結果を示し、カーブC5は、増幅用励起光34の直径φ21=1400μmの場合の計測結果を示している。φ22=930μmの場合の方がφ21=1400μmの場合より、単位面積当たりの強度が高いので、利得も高い。カーブC4,C5から明らかに、励起時間が長いほど、利得は上昇する。励起時間とともに反転分布状態が発達していく。ただし、励起時間が上位準位寿命に達すると、それ以上には反転分布状態が発達せず、利得が飽和する。
【0030】
図14は、直径φ21が1400μmの増幅用励起光34で選択増幅した後のレーザー光40Aの横断面をCCDカメラで撮影した結果を示している。図中のtpは、パルス状の増幅用励起光34Aの励起開始時刻からパルス状レーザー光8Aの入力時刻までの時間差(つまり増幅時のゲイン)を示す。tpが長いほどゲインが大きい。
図15は、直径φ22が930μmの増幅用励起光34で選択増幅した後のレーザー光40Aの横断面をCCDカメラで撮影した結果を示している。図15(b)は、tp=ゼロの場合(すなわち増幅前の)マルチモードレーザー光8Aの横断面を示し、中心の高強度領域152の周囲に高次のレーザー光範囲154が存在する。図15(c)は、tp=500μ秒(図13からゲインは3.2倍程度)の場合の増幅後レーザー光40Aの横断面を示す。図15(b)では存在した高次モードの照射範囲154が無くなっており、高次モードのクリーニングが実行されたことが分かる。また、中心の高強度領域156の大きさが、図15(b)の152よりも縮小している。これは、図12のカーブC1のすそ野に含まれる高次成分がクリーニングされたことに対応する。図15(b)(c)から明らかに、選択増幅することで、モードのクリーニングが進むことが分かる。また、図14図15におけるtpに関する変化から、増幅のゲインを上げるほど、モードクリーニングが効率的に進行することが分かる。また、図13図14の比較から、増幅用励起光の実効的ビーム直径を細く絞るほど、モードクリーニングが効率的に進行することが分かる。基本モードのみを取り出すためには、増幅用励起光34の実効的ビーム直径を細くし、ゲインを上げるのが有利である。
【0031】
図16は、増幅前後のレーザー光のビームプロファイルを示す。(A)は増幅用励起光34の直径φ21=1400μmの場合を示し、(B)は増幅用励起光34の直径φ22=930μmの場合を示している。カーブC1は、増幅前のレーザー光8のビームプロファイルを示し、図12のカーブC1に等しい。C7〜C9と、C10〜C12は、選択増幅後のレーザー光40Aのビームプロファイルを示している。選択増幅することによって裾部分におけるカーブが、径の増大とともに減衰するカーブに変化する。図15の(b)と(c)において、中心の高強度領域が152から156に収縮するのに対応する。その変化は、増幅用励起光の実効的ビーム直径が細く、利得(ゲイン)が上昇するほど顕著になる。
【0032】
図16のグラフからコントラストを計測した。コントラストは、選択増幅前のレーザー光のビームプロファイルC1において光軸から離れた最初のピークが存在する位置(C6の位置)における「選択増幅前のレーザー光の単位面積当たりの強度/選択増幅後のレーザー光の単位面積当たりの強度」とした。(A)のグラフでは、利得を1.95から2.92に増大させることによって、コントラストが5から16.7に上昇した。基本モードのレーザー光の実効的ビーム直径(π×w)に対して増幅用励起光の実効的ビーム直径を2.15×wとした場合には、ゲインを2以上とすることによってコントラストが明瞭になる。なお増幅用励起光の実効的ビーム直径を2.3×wとした場合も、ゲインを2以上とすることによって、コントラストが明瞭化した。
(B)のグラフでは、利得を2.34から3.32に増大させることによって、コントラストが5から250まで上昇した。基本モードのレーザー光の実効的ビーム直径(π×w)に対して増幅用励起光の実効的ビーム直径を1.43×wとした場合には、ゲインを2以上とすることによってコントラストが顕著に明瞭化される。なお増幅用励起光の実効的ビーム直径を1.57×wとした場合も、ゲインを2以上とすることによって、コントラストが顕著に明瞭化した。
【0033】
図17は、ゲインとコントラストの関係を示している。図17の縦軸は、前に示したコントラストを示しており、上方ほどコントラストが明瞭であることになる。実験に用いたビームは、必ずしも左右対称でないことから、光軸の左側と右側にそれぞれについて計測した。カーブC16は、930μmの増幅用励起光によって得られる右側コントラストを示し、ゲインの増大に伴って明瞭化する。カーブC14は、930μmの増幅用励起光によって得られる左側コントラストを示し、ゲインの増大に伴って明瞭化する。カーブC15は、1400μmの増幅用励起光によって得られる右側コントラストを示し、ゲインの増大に伴って明瞭化する。カーブC13は、1400μmの増幅用励起光によって得られる左側コントラストを示し、ゲインの増大に伴って明瞭化する。C15とC16の比較、ならびにC13とC14の比較から明らかに、同じゲインであれば、増幅用励起光の直径が細いほどコントラストは明瞭化される。
【0034】
図18は、選択増幅後のレーザー光40Aの直径を示している。カーブC17とC18は、1/e直径を示している。それに対して、カーブC19とC20は半値直径を示している。半値直径は、単位面積当たりの強度が光軸上の強度の半値となる直径である。カーブC17とC19は、増幅用励起光が1400μmの場合を示し、カーブ18とC20は、増幅用励起光が930μmの場合を示している。増幅用励起光が細いほど、また利得が高いほど、選択増幅後のレーザー光は光軸の周りに集中し、高次モードが除去される。
【0035】
(実施例3)
図5に示す実施例3では、増幅用利得媒質38内をレーザー光8,40が単行する。この場合、装置構成が簡単化される。
【0036】
発振用励起光4の波長とレーザー光8の波長は相違する。発振用利得媒質6の上端面は、発振用励起光4を反射せず、レーザー光8を反射する膜でコートされており、発振用利得媒質6の下端面は、発振用励起光4を反射し、レーザー光8の一部が反射して一部が透過する膜でコートされている。また増幅用励起光34の波長とレーザー光8の波長は相違する。ミラー36は、レーザー光8を反射し、増幅用励起光34を反射しない。増幅用利得媒質38の左端面は、レーザー光8と増幅用励起光34を反射しない膜でコートされており、増幅用利得媒質38の右端面は、増幅用励起光34を反射し、レーザー光8を反射しない膜でコートされている。発振用利得媒質6に形成されているレーザー共振系は、基本モードを中心にして発振するように設計されているが、高次モードのレーザー光も放出される。
【0037】
増幅用利得媒質38に入力するマルチモードのレーザー光8の光軸と増幅用励起光34の光軸は一致している。レーザー光8の実効的ビーム直径は増幅用励起光34の実効的ビーム直径よりも大きい。増幅用利得媒質38のうち、増幅用励起光34が通過する範囲は励起され、反転分布状態となっている。そこにレーザー光8が入力すると誘導放出が生じ、レーザー光8よりも高強度の光40が放出される。上記現象は、増幅用励起光34とレーザー光8の双方が入力する範囲で生じる。レーザー光8のうち、増幅用励起光34の実効的ビーム直径よりも小さな直径内に含まれるレーザー光は、増幅用励起光34と増幅用利得媒質38によって増幅される。選択されたモードが増幅されたレーザー光40が増幅用利得媒質38から放出される。
【0038】
(実施例4)
図6を参照して実施例4を説明する。図6に示す実施例では、増幅用利得媒質42の右端面が、増幅用励起光34とレーザー光8を反射しない膜でコートされている。そのために、増幅用利得媒質42の右端面から、選択増幅されたレーザー光40と、増幅用利得媒質42を通過した増幅用励起光34が放出される。ミラー44は、選択増幅されたレーザー光40を反射して増幅用励起光34を反射しないことから、選択増幅されたレーザー光40と増幅用励起光34を分離する。
実施例3と4を比較すると、実施例3では、増幅用励起光34が増幅用利得媒質38を往復するのに対し、実施例4では、増幅用励起光34が増幅用利得媒質42を単行する。前者では増幅用利得媒質38中に強い反転分布が発達するのに対し、後者では得られる反転分布が弱い。前者の方が、大きなゲインの増幅が可能となる。また前者は、選択増幅されたレーザー光40と増幅用励起光34を分離するミラー44を必要としない。
【0039】
(実施例5)
実施例3と4では、レーザー光8と増幅用励起光34が同一方向から増幅用利得媒質42に入力するが、反対方向から入力してもよい。
図7に示すように、レーザー光8は左側から増幅用利得媒質46に入力し、増幅用励起光34は右側から増幅用利得媒質46に入力する。ミラー48は、増幅用励起光34を反射して選択増幅されたレーザー光40を反射しないことから、ミラー48の右側では、選択増幅されたレーザー光40のみが得られる。
【0040】
(実施例6)
この技術によると、基本モードにクリーニングするだけでなく、TEMnm(0から始まり、nやmの値が大きいほど高次モード)における特定の次数帯のレーザー光を選択増幅することもできる。その場合は、図8に示すように、横断面がリング状の増幅用励起光34Bを用いる。増幅用励起光がリング状であると、特定の次数帯(例えばTEM01*)に属するレーザーを選択して増幅することができる。
【0041】
(実施例7)
選択増幅されたレーザー光をさらに増幅することもできる。図9は、図3または図4の選択増幅装置で選択増幅されたレーザー光40を増幅器72に入力し、増幅器72でさらに増幅されたレーザー光88をPBS58から取り出す装置を示している。参照番号74は増幅器72のための励起光を示している。増幅器72の右側端面は、レーザー光40を反射して励起光74を反射しない膜でコートされており、左側端面は、レーザー光40を反射せずに励起光74を反射する膜でコートされている。レーザー光40も励起光74も増幅器72内を往復する。
なお、図9では図示しないが、増幅器72とPBS58の間にはλ/4板が配置されており、PBS58から右進するレーザー光の偏光面と、PBS58に向けて左進するレーザー光の偏光面が90°回転する関係にする。それによって、増幅器72でさらに増幅されたレーザー光88のみがPBS58から下向きに進行する。
【0042】
図10は、増幅器72の一例を示す。増幅用利得媒質板80と、それを冷却する透明放熱板78が交互に積層されている。この増幅器72は、増幅用励起光74を入力して反転分布が生じた状態でレーザー光40が入力すると誘導放出現象が生じてレーザー光88を放出する。そのレーザー光88はレーザー光40より高強度であり、増幅されている。なお、増幅器72の詳細は、特願2016−116603号に添付した明細書に記載されている。例えば、増幅用利得媒質板80にはNd:YAGが利用でき、透明放熱板78にはサファイアが利用できる。その場合、両者の端面に特殊なコーティングを施す必要を無くすことができる。両端に位置する増幅用利得媒質板80は空気に晒せばよい。また、レーザー光40と増幅用励起光74の実効的ビーム直径を調整することによって、増幅器72でさらにモードクリーニングするようにしてもよい。
【0043】
図11は、増幅器72の他の例を示し、増幅用利得媒質板80に、その側面から増幅用励起光84を入力する。側面から入射するために、モードを選択して増幅することはできないが、モードクリーニングされたレーザー光40を増幅するので、図11の増幅器を増幅器72に利用することができる。
【0044】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の
変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0045】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0046】
2:半導体レーザー装置(レーザー光発振用)
4:発振用励起光
6:発振用利得媒質
8:マルチモードレーザー光
8a:基本モード
8b:高次モード
8c:アイリスを通過したレーザー光
8d:回析光
10:アイリス
12:アイリス通過前のレーザー光の横断面図。
14:アイリス通過直後のレーザー光の横断面図。
16:進行後のレーザー光の横断面図。
18:集光レンズ
20:コリメートレンズ
22:窓
24:真空容器
26:窓
28:アイリス通過直後のレーザー光の横断面図。
30:基本モードのレーザー光
32:半導体レーザー装置(増幅用)
34:増幅用励起光
36:ミラー
38:増幅用利得媒質
40:モードクリーニングされて増幅された基本モードのレーザー光
42:増幅用利得媒質
44:ミラー
46:増幅用利得媒質
48:ミラー
50:PBS( Polarized Beam Splitter )
52:ミラー
54:λ/2板
56:PBS
58:PBS
60:λ/4板
62:増幅用利得媒質
64:可飽和吸収体(Qスイッチ)
70:選択された次数のモードが増幅されたレーザー光
72:レーザー光増幅装置
74:増幅用励起光
78:透明放熱板
80:増幅用利得媒質
82:増幅用利得媒質
84:増幅用励起光
88:多段増幅された基本モードのレーザー光
【要約】      (修正有)
【課題】マルチモードレーザー光から特定モードのレーザー光を選択して増幅する。
【解決手段】マルチモードレーザー光8Aと増幅用励起光34Aの両者を、両者の光軸が一致する関係で、増幅用利得媒質62に入力する。増幅用利得媒質62中において、増幅用励起光の実効的ビーム直径が特定モードのレーザー光の実効的ビーム直径以下の関係とする。その結果、増幅用励起光34Aの照射範囲を進行する特定モード以下のレーザー光が選択的に増幅される。モードクリーニングしたレーザー光40Aが出力される。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18