(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261196
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/022 20060101AFI20180104BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20180104BHJP
C09K 11/80 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
H01S5/022
C09K11/08 Z
C09K11/80CPP
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-123688(P2013-123688)
(22)【出願日】2013年6月12日
(65)【公開番号】特開2014-241361(P2014-241361A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2015年7月24日
【審判番号】不服2017-3676(P2017-3676/J1)
【審判請求日】2017年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】綿谷 和浩
(72)【発明者】
【氏名】塚谷 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎太郎
【合議体】
【審判長】
森 竜介
【審判官】
恩田 春香
【審判官】
近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−162600(JP,A)
【文献】
特開2004−356635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を励起光として発光する励起光源と、上記励起光により励起され、励起光の波長を変換して発光する蛍光体とを備える発光装置であって、
上記蛍光体が、複数の一次粒子で構成された多結晶体二次粒子であり、上記一次粒子の平均粒径が0.1〜5μmであり、上記二次粒子の平均粒径が5〜50μmであり、かつ該二次粒子内部に、径が0.2μm以上で上記二次粒子の径の1/2以下の空孔を有することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
上記蛍光体が、下記組成式(1)
(A1-xBx)3C5O12 (1)
(式中、AはY,Gd及びLuから選ばれる1種類以上の希土類元素、BはCe,Nd及びTbから選ばれる1種類以上の希土類元素、CはAl及びGaから選ばれる1種類以上の元素であり、xは0.002≦x≦0.2である。)
で示されるガーネット相を含有することを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
上記レーザー光が、波長440〜465nmの青色レーザー光であることを特徴とする請求項2記載の発光装置。
【請求項4】
上記蛍光体が、上記レーザー光の発光方向前方に、基材に上記蛍光体を分散させた発光部材として配設されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の発光装置。
【請求項5】
上記発光部材の厚さが0.1mm以上であることを特徴とする請求項4記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般照明、バックライト光源、ヘッドライト光源などの発光装置に関し、特に、励起光源としてレーザー光源を用い、光源から発光したレーザー光を波長変換する蛍光体を備える発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は、現在利用可能な光源の中で最も効率的な光源の一つである。白色LEDは、白熱電球、蛍光灯、CCFLバックライト、ハロゲンランプなどに代わる次世代光源として急激に市場を拡大している。白色LEDを実現する構成の一つとして青色LEDの青色と、青色励起により発光する蛍光体との組合せによるLEDが実用化されている。その中でも現在主流になっているのは青色LEDと黄色発光蛍光体による擬似白色LEDであり、黄色発光蛍光体としては、Y
3Al
5O
12:Ce、(Y,Gd)
3(Al,Ga)
5O
12:Ce、(Y,Gd)
3Al
5O
12:Ce、Tb
3Al
5O
12:Ce、CaGa
2S
4:Eu、(Sr,Ca,Ba)
2SiO
4:Eu、Ca−α−サイアロン:Euなどが知られている。
【0003】
これに対して、近年、光源にレーザーダイオード(LD)を用いた発光装置が、蛍光体発光部をLDから離れた位置に設置できるため、灯具の熱設計や光学設計が容易であり、盛んに、その研究がなされている。例えば、自動車のヘッドライトなどに関し、LEDではなく、よりハイパワーが得られるLDを用いた発光装置が報告されている。
【0004】
しかし、LDを光源に用いた照明装置などの発光装置の課題の一つに、レーザー光のコヒーレンス性に起因するスペックルノイズの問題があり、コヒーレンス低減のための試みがなされているが、発光光が照射されたときに、目視において違和感を与えない程度に十分にスペックルノイズが低減された発光装置にはなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−153879号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】池田善久、「複数のLDと蛍光体を用いた大光量照明光源」、第348回蛍光体同学会講演会予稿集、p.15〜22、2013年、蛍光体同学会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、レーザー光を励起光として、蛍光体によって波長を変換して発光させる発光装置において、光を粗面に照射した際に視覚に対してギラギラとした不自然な感覚を与えるスペックルノイズが低減された、良質な照射光を与える発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、レーザー光を励起光として、蛍光体によって波長を変換して発光させる発光装置において、蛍光体として、複数の一次粒子で構成され、径が0.2μm以上の空孔を有する多結晶体二次粒子を用いることにより、励起光の散乱効率を向上させることができ、スペックルノイズを低減して、良質な照射光を得ることができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、下記の発光装置を提供する。
請求項1:
レーザー光を励起光として発光する励起光源と、上記励起光により励起され、励起光の波長を変換して発光する蛍光体とを備える発光装置であって、
上記蛍光体が、複数の一次粒子で構成された多結晶体二次粒子であり、
上記一次粒子の平均粒径が0.1〜5μmであり、上記二次粒子の平均粒径が5〜50μmであり、かつ該二次粒子内
部に、径が0.2μm以上
で上記二次粒子の径の1/2以下の空孔を有することを特徴とする発光装置。
請求項2:
上記蛍光体が、下記組成式(1)
(A
1-xB
x)
3C
5O
12 (1)
(式中、AはY,Gd及びLuから選ばれる1種類以上の希土類元素、BはCe,Nd及びTbから選ばれる1種類以上の希土類元素、CはAl及びGaから選ばれる1種類以上の元素であり、xは0.002≦x≦0.2である。)
で示されるガーネット相を含有することを特徴とする請求項1記載の発光装置。
請求項3:
上記レーザー光が、波長440〜465nmの青色レーザー光であることを特徴とする請求項2記載の発光装置。
請求項
4:
上記蛍光体が、上記レーザー光の発光方向前方に、基材に上記蛍光体を分散させた発光部材として配設されていることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項記載の発光装置。
請求項
5:
上記発光部材の厚さが0.1mm以上であることを特徴とする請求項
4記載の発光装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レーザー光を励起光として、蛍光体によって波長を変換して発光させる発光装置において、光を粗面に照射した際に視覚に対してギラギラとした不自然な感覚を与えるスペックルノイズが低減され、スペックルコントラストが良好な、良質な照射光を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1の蛍光体粒子の一の断面の電子顕微鏡写真である。
【
図2】実施例1の蛍光体粒子の他の断面の電子顕微鏡写真である。
【
図3】比較例1の蛍光体粒子の断面の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の発光装置は、レーザー光を励起光として発光する励起光源と、励起光により励起され、励起光の波長を変換して発光する蛍光体とを備える。
【0013】
本発明の発光装置には、蛍光体として、複数の一次粒子で構成された多結晶体二次粒子を用いる。この二次粒子は、内部に、径が0.2μm以上、好ましくは0.5μm以上の空孔を有する。二次粒子内部に空孔が存在すると、空孔と粒子本体(結晶部)との界面に入射した光は、その界面で反射を繰り返す。そのため、レーザー光を励起光とした場合であっても、スペックルノイズに影響するレーザー励起光のコヒーレンス性が低下し、インコヒーレンス性が向上する。空孔の径が0.2μm未満の場合、スペックルノイズを低下させる十分な効果が得られない。これは、照射光の散乱が十分に行われないためと考えられる。なお、空孔の径の上限は、蛍光体粒子が、複数の一次粒子で構成された多結晶体二次粒子を形成し得る程度の大きさであるが、あまりに大きいと、空孔の数が減少するなどして、散乱の効果が低下するため、蛍光体粒子(二次粒子)の径の1/2以下(例えば25μm以下)であることが好ましい。
【0014】
蛍光体粒子(二次粒子)の平均粒径は5〜50μmであることが好ましい。また、一次粒子の平均粒径は0.1〜5μmであることが好ましい。0.1μm未満の場合、蛍光体自身の特性が低下するおそれがあり、5μmを超える場合、レーザー光の散乱の効果が低下するおそれがある。蛍光体粒子(二次粒子)の平均粒径は、レーザー回折法による体積累計50%の粒径D50として、また、一次粒子径は、顕微鏡像から計測した一次粒子の径の平均値として求めることができる。
【0015】
上記蛍光体としては、下記組成式(1)
(A
1-xB
x)
3C
5O
12 (1)
(式中、AはY,Gd及びLuから選ばれる1種類以上の希土類元素、BはCe,Nd及びTbから選ばれる1種類以上の希土類元素、CはAl及びGaから選ばれる1種類以上の元素であり、xは0.002≦x≦0.2である。)
で示されるガーネット相を含有する蛍光体が好適である。このガーネット相は、蛍光体粒子における主相であり、蛍光体粒子中、通常99体積%以上がガーネット相であることが好ましい。ガーネット相の割合が少ないと、励起光の吸収率、発光量子効率の低下の要因となる。
【0016】
この蛍光体は、励起光として青色光を用いることにより、例えば、波長が540〜590nmの範囲内に発光の最大強度を有する黄色光を発光する黄色発光蛍光体であり、青色の励起光と共に、白色(擬似白色)を照射する発光装置を構成することができる。
【0017】
本発明の、複数の一次粒子で構成され、空孔を有する多結晶体二次粒子である蛍光体粒子は、例えば、以下の方法で製造することができる。
【0018】
まず、製造する蛍光体粒子の金属種に応じて、単一金属の酸化物、複合酸化物及び混合酸化物から適宜選択し、この酸化物をスラリー状とし、スラリーから粒子を造粒し、得られた造粒粒子を前駆体とする。
【0019】
複合酸化物又は混合酸化物の製造方法は、例えば、以下の方法を挙げることができる。まず、本発明の蛍光体粒子を構成する金属元素(例えば、Y、Gd、Lu、Ce、Nd、Tb、Al、Gaなど)を含む金属塩(硝酸塩、塩化物塩など)から適宜選定して、それらを水溶液とし、該水溶液から共沈物を得、又は上記金属塩と上記金属の酸化物から適宜選定して、それらを水溶液若しくはスラリーとし、該水溶液若しくはスラリーから共沈物を得、得られた共沈物を、大気中800〜1,500℃で焼成することにより、複合酸化物又は混合酸化物を得ることができる。この焼成時間は、通常1〜10時間である。
【0020】
酸化物のスラリーには、必要に応じて分散剤、バインダーなどの有機添加剤を加え、必要に応じて粉砕して、好ましくは平均粒径が0.01〜2.0μmの微粒子のスラリーとする。このスラリーを原料として、スプレードライ法により目的とする粒径の、球形乃至略球形の粒子に成形して造粒粒子(前駆体)を得ることができる。スラリーからの造粒により、個々の造粒粒子間の組成は均一化される。この際、噴霧されるスラリーの乾燥条件をコントロールすることで、内部に空隙の多い造粒粉末を製造することができる。スラリーの乾燥条件としてはスラリーの濃度を5〜20質量%、乾燥雰囲気の温度を溶媒の沸点より60〜90℃高くするのが好ましい。この造粒粒子の大きさは、熱処理後に得られる蛍光体粒子の大きさと同程度のサイズ(例えば、平均粒径として、熱処理後の蛍光体粒子の100〜120%)とすることが好ましい。
【0021】
造粒粒子は、微粒子が圧接されただけの凝集体であり、次に、これを熱処理して焼結粒子又は単一粒子化して蛍光体粒子とする。造粒粒子を熱処理して焼結粒子又は単一粒子化する方法としては、プロパンなどのガスバーナー火炎中、プラズマ中などに造粒粒子を通過させて、溶融する方法が好適である。プラズマ源としては、高周波プラズマ、直流プラズマなどが用いられる。この場合、造粒粒子の全体が一旦完全に溶融するようにして単一粒子を形成してもよく、また、凝集体を構成する個々の微粒子の表面部のみを溶融させて、微粒子同士を接続させる程度に溶融させて、微粒子が強固に連結した焼結粒子として形成してもよい。有機添加剤を含むスラリーから得られた造粒粒子を熱処理する場合、予め大気中、400〜1,700℃で、1〜10時間予備焼成して、有機成分を除去する。溶融冷却粒子を、更に還元雰囲気中で熱処理する場合、還元ガスとしては、H
2+N
2ガス、H
2+Arガスなどが用いられる。還元処理温度は、例えば1,000〜1,800℃、還元処理時間は、例えば1〜20時間とし、蛍光体粒子としての特性を得ることができる十分な温度及び時間で処理される。また、熱処理時の粒子同士の融着を防ぐため、例えば、1,200℃に熱処理後、1,800℃に熱処理するなどの多段処理をしてもよい。
【0022】
レーザー光を発光する励起光源としては、レーザーダイオード(LD)を好適に用いることができ、特に、上記組成式(1)で示されるガーネット相を含有する蛍光体などの青色光により励起されて黄色光を発光する黄色発光蛍光体を用いる場合、波長440〜465nmの青色レーザー光が好適であり、このような青色レーザー光を発光する青色LDを用いることができる。LDは、市販品を用いることができる。
【0023】
本発明の発光装置では、励起光源と蛍光体とが、蛍光体に、励起光源からのレーザー光が照射されるように配設される。蛍光体は、レーザー光が照射される位置、例えば、レーザー光の発光方向前方に、好ましくは基材に蛍光体を分散させた発光部材として配設される。また、LDの収容部材、発光部材の取付部材、反射部材など、発光ダイオード(LED)用いた発光装置で用いられる公知の部材を適宜用いて発光装置を構成することができる。
【0024】
発光部材は、樹脂、ゴムなどの基材と蛍光体とを含むものが好ましく用いられる。基材として用いる樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれを用いてもよい。
【0025】
発光部材には、基材に蛍光体を混合し、分散させて成形した成形体が用いられる。成形は、圧縮成形、押出成形、射出成形などの公知の成形方法が適用でき、粒状、棒状、フィルム状、薄板状などの任意の形状で、適当な大きさに、発光装置の使用目的、形状や、照射態様に合わせて成形したものを用いることができる。発光部材の厚さは、通常0.1mm以上、特に0.5mm以上であることが好ましく、20mm以下、特に10mm以下であることが好ましい。また、基材と蛍光体との混合比率は、成形体として必要な強度を維持できる範囲であればよく、基材の種類によっても異なるが、通常、基材に対する蛍光体の割合が、60質量%以下、特に40質量%以下であることが好ましく、その下限は、特に制限されるものではないが、通常1質量%以上である。
【実施例】
【0026】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0027】
[実施例1]
純度99.9%、平均粒径1.0μmの(Y
2.94Ce
0.06)Al
5O
12のガーネット粉末1,000gを、脱イオン水6,000g、ポリアクリル酸アンモニウム10g、カルボキシメチルセルロース2gと共にボールミルで6時間混合した。得られたスラリーから、遠心噴霧装置を用いて造粒した。造粒時の乾燥温度は180℃とし、乾燥温度が変動しないようにスラリー送液量を調整して造粒を行い、平均粒径21μmの造粒粒子を得た。得られた粒子を1,550℃で2時間、大気中で熱処理し、有機成分を除去した。次に、粒子を直流アークプラズマ中に供給し、直流アークプラズマ中で溶融した後、再び固化した粒子を回収した。更に、この粒子をアルゴン98体積%、水素2体積%の還元雰囲気で、1,400℃で4時間アニールしたところ、青色の励起光で黄色に発光する蛍光体粒子が得られた。
【0028】
この蛍光体粒子をXRDで定性分析したところ、ガーネット相単相であることが確認された。この蛍光体粒子を電子顕微鏡で観察したところ、
図1及び
図2に示されるように、球形又はほぼ球形の形状であり、多結晶体二次粒子の構造を有していた。平均粒径(二次粒子径)はレーザー回折法により、一次粒子径は電子顕微鏡写真より一次粒子20個の平均径として測定した。蛍光体粒子の吸収率、内部量子効率、外部量子効率は、励起波長450nm、発光範囲480〜780nmで積分球を用いて測定した。また、蛍光体粒子を研磨して断面を観察し、
図1及び
図2に示されるように、蛍光体粒子内部に、径が0.2μm以上の空孔が多数存在していることを確認した。蛍光体粒子の評価結果を表1及び表2に示す。
【0029】
次に、得られた蛍光体粒子を用いて、レーザー光を励起光とした発光装置を作製した。励起光源として、青色LDを用いた。青色LDはクラス3B、発光波長445〜450nm、出力1,000mWの青色レーザーを使用した。蛍光体粒子を透明のシリコーン樹脂組成物に対して蛍光体粒子を5質量%分散させて、円盤状に硬化させたものを発光部材とした。不透明の円錐台形状の筒を作製し、小径側に青色LDを、大径側に発光部材を、青色LDからの光が発光部材に照射されるように配置して、これらを筒に取り付けて発光装置とした。この発光装置からの照射光をスクリーンに照射して、スペックルコントラストを目視にて評価した。
【0030】
[比較例1]
純度99.9%、平均粒径1.0μmの酸化イットリウム粉末と、純度99.0%、平均粒径0.5μmの酸化アルミニウム粉末と、純度99.9%、平均粒径0.2μmの酸化セリウム粉末とを、各々、Y:Al:Ce=2.94:5:0.06のモル比で混合し、1,000gの混合粉を得た。得られた混合粉に、更にフラックスとしてフッ化バリウムを20g添加して十分に混合し、アルミナ坩堝に充填し、大気中、1,400℃で5時間熱処理した。得られた焼成体を、ボールミルを用いて水中で解砕し、酸洗浄、水洗、分離、乾燥、分級して、蛍光体粒子を得た。
【0031】
この蛍光体粒子をXRDで定性分析したところ、主相としてガーネット相、第二相としてバリウムとアルミニウムの複合酸化物相を含んでいることが確認された。この蛍光体粒子を電子顕微鏡で観察したところ、
図3に示されるように、不定形形状であり、多結晶体二次粒子の構造を有していなかった。平均粒径、吸収率、内部量子効率及び外部量子効率は、実施例1と同様にして測定した。また、蛍光体粒子を研磨して断面を観察し、
図3に示されるように、蛍光体粒子内部に、径が0.2μm以上の空孔が存在していないことを確認した。蛍光体粒子の評価結果を表1及び表2に示す。
【0032】
次に、得られた蛍光体粒子を用いて、実施例1と同様にして発光装置を作製し、実施例と同様にしてスペックルコントラストを評価した。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
実施例1と比較例1の発光装置のスペックルコントラストを並べて対比すると、実施例1の方が、スペックルノイズが低減されており、スペックルコントラストが良好な、良質な光が照射されることが確認された。