特許第6261520号(P6261520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6261520内部フィルタエレメントを備えたアンモニア酸化反応器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261520
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】内部フィルタエレメントを備えたアンモニア酸化反応器
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/26 20060101AFI20180104BHJP
   B01J 19/24 20060101ALI20180104BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20180104BHJP
   B01J 23/50 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   C01B21/26 E
   B01J19/24 Z
   B01J23/42 M
   B01J23/50 M
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-560938(P2014-560938)
(86)(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公表番号】特表2015-511929(P2015-511929A)
(43)【公表日】2015年4月23日
(86)【国際出願番号】US2013027367
(87)【国際公開番号】WO2013133992
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2016年2月5日
(31)【優先権主張番号】61/606,651
(32)【優先日】2012年3月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ロバート エイ. フォックス
【審査官】 延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/046675(WO,A1)
【文献】 特開平08−040710(JP,A)
【文献】 特開昭62−017010(JP,A)
【文献】 特表2004−528159(JP,A)
【文献】 米国特許第05401483(US,A)
【文献】 特表平05−504230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C01B 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化中に放出され得る触媒の存在下での一酸化窒素へのアンモニアの酸化のための反応容器であって、該反応容器は、
反応器本体であって、上部、下部および中間部を有し、前記上部および前記中間部は協働してキャビティを画成しており、該キャビティにおいてアンモニアは触媒作用によって酸化させられて一酸化窒素を提供する、反応器本体と、
該反応器本体を横切って延びており、前記下部を前記キャビティから分割しているフィルタプレートと、
該フィルタプレートに設けられた内部フィルタエレメントであって、該内部フィルタエレメントは、内部体積を画成するフィルタケージと、該フィルタケージに隣接して配置されかつ前記フィルタプレートから前記キャビティ内へ上方へ突出したフィルタ媒体と、を含み、前記内部フィルタエレメントは、酸化中に放出された前記触媒を捕捉する、内部フィルタエレメントと、を備えることを特徴とする、反応容器。
【請求項2】
前記フィルタ媒体は、セラミックを含む、請求項1記載の反応容器。
【請求項3】
前記キャビティにおいて前記内部フィルタエレメントの上方に配置された熱除去装置をさらに備える、請求項1または2記載の反応容器。
【請求項4】
前記フィルタ媒体は、前記フィルタケージの前記内部体積に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の反応容器。
【請求項5】
前記内部フィルタエレメントはさらに、複数の内部フィルタエレメントとして規定される、請求項1から4までのいずれか1項記載の反応容器。
【請求項6】
前記内部フィルタエレメントはさらに、フィルタベースと、取付ガスケットとを含み、前記フィルタベースは、前記フィルタケージと前記フィルタプレートとの間に配置されておりかつ前記フィルタケージを前記フィルタプレートに結合しており、前記取付ガスケットは、前記フィルタプレートと前記フィルタベースとの間に配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の反応容器。
【請求項7】
前記内部フィルタエレメントが、前記キャビティ内に配置され、かつセラミックを含むフィルタ媒体を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の反応容器
【請求項8】
前記フィルタ媒体は、0.1〜10μmの有効フィルタサイズを有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の反応容器。
【請求項9】
酸化中に放出され得る触媒の存在下でアンモニアを一酸化窒素に酸化させる方法であって、該方法は、
反応器本体を含む反応容器を提供し、
前記反応器本体は、上部、下部および中間部を含み、
前記上部および前記中間部は協働してキャビティを画成しており、
該キャビティ内に内部フィルタエレメントを提供し、
前記キャビティ内の触媒の存在下でアンモニアを酸化させ、一酸化窒素を形成し、
アンモニアを酸化させるステップの間に放出された触媒を前記内部フィルタエレメントによって内部でろ過し、
前記放出された触媒を前記内部フィルタエレメントから収集し、
前記反応器本体の前記中間部から前記反応器本体の前記下部を解離し、
前記反応器本体の前記下部を、前記キャビティから前記内部フィルタエレメントを取り出すために十分な高さまで下降させることを含み、放出された触媒を前記内部フィルタエレメントから収集する前記ステップは、前記反応器本体の前記下部を下降させる前記ステップの後に行われることを特徴とする、触媒の存在下でアンモニアを一酸化窒素に酸化させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、触媒の存在下でアンモニアを一酸化窒素に酸化するための反応容器を提供する。特に、本開示は、アンモニアを一酸化窒素に酸化する間に放出された触媒を収集する内部フィルタエレメントを有する反応容器を提供する。
【0002】
発明の背景
硝酸は、硝酸アンモニウム、硝酸カリウムまたはニトロリン酸塩の形式における窒素肥料または有機肥料を製造するために使用される。硝酸は、火薬、プラスチック工業および化学工業においても使用される。
【0003】
硝酸(NHO3)は、一酸化窒素を発生するためのアンモニアの触媒燃焼によって製造される。このプロセスは、一般的に3つのステップで行われる。第1のステップはアンモニアの酸化である。アンモニアの酸化は、使用される作動条件に応じて93〜98%の範囲の収率で、触媒の存在下で行われる。
【0004】
第2のステップは、燃焼水の凝縮および一酸化窒素の酸化である。第2のステップは、二酸化窒素、四酸化窒素または両者の混合物を生じ得る。第3のステップは、二酸化窒素および四酸化窒素の吸収および固定を含む。第1および第2のステップの反応中間生成物および生成物は、本来的に商業的に実現性があり得る。つまり、第1および第2のステップは、硝酸が望ましくないとしても、様々な生成物を形成するために使用されてよい。
【0005】
アンモニア酸化プロセスの第1のステップにおいて使用される触媒は、概して、貴金属ガーゼの形式である。アンモニアの酸化により生じる高温のために、貴金属ガーゼはしばしば細分され、その粒子は、反応容器に存在する気体材料に浮遊させられる。この“金属損失”は、概して、反応条件の過酷性とともに増大する。例えば、金属損失の量は、概して、温度および生産速度が高まるにつれて増大する。
【0006】
この金属損失は、貴金属ガーゼの高いコストのために、アンモニア酸化プロセスの経済的実現可能性に対する実質的な金銭的影響を有する。さらに、金属損失は、アンモニア酸化反応器の下流にある後続の反応容器において利用される下流の触媒材料の毒作用を生じ得る。
【0007】
金属損失の問題に対する1つの解決手段は、アンモニア酸化反応容器の下流に外部フィルタハウジングおよびろ過装置を提供することであった。これらの外部フィルタハウジング構成は、圧力降下を生じ、既に混み合ったプラント設備において追加のスペースを必要とする。別の解決手段は、貴金属ガーゼにすぐ隣接した位置における繊維材料の使用であった。あいにく、この位置におけるこのような繊維材料の使用は、効率的なろ過を達成せず、必須の周期的メンテナンスの間に繊維材料を保守するために、閉鎖空間進入作業を必要とする。
【0008】
開示の概要および利点
触媒の存在下でアンモニアを一酸化窒素に酸化するための反応容器が提供される。触媒は、酸化中に放出され得る。反応容器は、上部、下部および中間部を有する反応器本体を有する。上部および中間部は協働してキャビティを画成しており、このキャビティにおいて、アンモニアが触媒作用により酸化され、一酸化窒素を提供する。内部フィルタエレメントは、内部体積を画成したフィルタケージと、フィルタケージの周囲に配置されたフィルタ媒体とを有する。内部フィルタエレメントは、アンモニアの酸化中に放出された触媒を収集する。
【0009】
本開示の様々な実施の形態は、コンパクトな設計を提供し、これは、既存の反応器容器設計との継目のない一体化を可能にする。内部フィルタエレメントは反応容器内に配置されているので、貴重なスペースが節約され、効率が高まる。本開示の実施の形態は、高められたろ過をも達成し、これは、コスト回収の増大および下流の触媒の毒作用の減少につながる。本開示の実施の形態は、閉鎖空間進入作業なしに反応容器の保守を可能にする。
【0010】
発明の性質および目的を理解するために、添付の図面に関連した以下の詳細な説明が参照されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の1つの実施の形態によるアンモニアの酸化のための反応容器の断面図である。
図2】本発明の1つまたは複数の実施の形態による反応容器の下部を支持する取外しフレームの斜視図である。
図3】1つまたは複数の実施の形態による、図1の反応容器の内部および内部フィルタエレメントの平面図である。
図4】1つまたは複数の実施の形態による、図1の内部フィルタエレメントの分解図である
【0012】
発明の詳細な説明
触媒の存在下でアンモニアを一酸化窒素に酸化するための反応容器10が提供される。図1を参照すると、反応容器10は、上部12、下部14および中間部16を有する反応器本体11を有する。通常、反応容器10は概して円筒状である。しかしながら、反応容器10はその他の形状であってもよい。上部12および下部14は概してドーム状であるが、その他の形状および構成を有してもよい。フランジ接合部が、上部12と中間部16とを接合していてもよい。加えて、フランジ接合部が、中間部16と下部14とを接合していてもよい。別の実施の形態において、反応容器10は、別個の接合部を有することなく一体化された上部12と中間部16とを有してもよい。反応容器10の下部14は、反応容器10の容易なアクセスおよびメンテナンスを可能にするために、反応容器10から容易に取外し可能であるべきである。したがって、下部14は、このことを念頭に置いて寸法決めおよび固定されるべきである。
【0013】
反応容器10は、1〜20m、または2〜10m、または3〜9mの高さを有してもよい。これに代えて、反応容器10は、アンモニアが入ってくるプロセスに適したその他の高さを有することができる。反応容器10は、1〜5mの直径を有してもよい。これに代えて、反応容器10は、アンモニアが入ってくるプロセスに適したその他の直径を有することができる。
【0014】
反応容器10は、高い腐食条件および900℃を超える温度に耐えることができる材料から成ってよい。例えば、反応容器10は、ステンレス鋼から成ってよい。反応容器10が、腐食に耐えるその他の適切な材料から製造され得ることも考えられる。
【0015】
反応容器10は、オシャッツ(Oschatz)反応器などのアンモニア酸化反応器と類似の設計を有してもよい。その他のタイプのアンモニア酸化反応器が本開示に関連して使用されてもよい。さらに、本明細書において提示された概念およびコンセプトにしたがって慣用の反応器設計を変更することも本開示の範囲である。
【0016】
下部14は、内部体積を画成する円錐形を有してよい。円錐形は、ろ過されたガスが下部14を通過するときの圧力降下を最小限に減じることに寄与する。これに代えて、下部14は、円筒形、半球などの、ろ過されたガスの効率的な移送を可能にするその他の形状および構成を有してもよい。
【0017】
上部12および中間部16は協働してキャビティ18を画成しており、このキャビティにおいて、アンモニアが触媒作用により酸化され、一酸化窒素を提供する。反応容器10は、少なくとも1つの入口20と、少なくとも1つの出口22とを有してよい。入口20は、通常、反応容器10の上部12に配置されており、入口20を通過する材料をキャビティ18に進入させる。反応容器10は、複数の入口20を有してもよい。入口20は、流入空気、気化されたアンモニアおよびその他の成分をキャビティ18へ進入させてよい。入口20は、効率的な材料の移送を可能にする様々な取付具およびコネクタを有してよい。例えば、入口20は、複数のノズル、または代替的なガス分配システム、例えば、反応キャビティ18においてガスを均一に分配するために使用される平行プレートガス分配システムなどを有してもよい。
【0018】
出口22は、フィルタプレート24の下方において、反応容器10の下部14に配置されていてよい。出口22は、ろ過されたガスを反応容器10から排出させる。出口22は、さらなる処理のための様々な下流のユニットオペレーションに接続されていてよい。
【0019】
反応容器10は、反応器本体11を横切って延びた、キャビティ18から下部14を分割するフィルタプレート24をも有する。フィルタプレート24は、反応器本体11の内部寸法と協働する形状および寸法を有していてよく、これにより、触媒を含んだガスが、内部フィルタエレメント26を通過せずにフィルタプレート24をバイパスすることを防止する。フィルタプレート24は、円筒状であってよく、反応容器10に存在する条件に適した材料から製造されていてよい。例えば、フィルタプレート24は、ステンレス鋼から成ってよい。フィルタプレート24は、ガスが通過しないように中実材料から成ってよい。しかしながら、後述するように、フィルタプレート24は、ガスの意図的な通過を許容する様々なチャネルを有してもよい。下部14は、シールまたはガスケットを用いて反応容器10に取り付けられていてよい。シールまたはガスケットは、触媒を含んだガスが、内部フィルタエレメント26を通過せずにキャビティ18と下部14との間を通過することを防止する。シールまたはガスケットは、反応容器の腐食および高温条件に耐えることができる材料から成ってよい。1つの実施の形態において、シールまたはガスケットは、金属、天然ゴムまたは合成ゴム、または耐熱性ポリマから成る。
【0020】
言い換えれば、1つの実施の形態において、フィルタプレート24は、下部14の最も上側の領域を画成しており、これにより、キャビティ18を下部14から分割している。“キャビティ18を下部14から分割している”とは、触媒を含んだガスがまず内部フィルタエレメント26を通過することなくキャビティ18と下部14との間を通過することを防止する機械的な分割が生ぜしめられていることを意味する。すなわち、フィルタプレート24は、触媒を含んだガスの流れを下部へ通過させる。
【0021】
下部14が反応容器10から落下したときにフィルタプレート24も下降させられるようにフィルタプレート24は下部14に結合されている。下部14は反応容器10から容易に取り外されてよく、これにより、フィルタプレート24は、内部フィルタエレメント26とともに、閉鎖空間進入作業を必要とすることなく容易に保守される。
【0022】
図2を参照すると、反応容器10からの下部14の下降を容易にするために、取外しフレーム27が使用されてもよい。取外しフレーム27は、反応容器10からの下部14の下降を容易にするために十分な強度を有する複数の異なる材料、例えば、金属、木材またはプラスチックから成ってよい。取外しフレーム27は、下部14に係合するための複数の横方向支持体と、下部14の下端部が取外しフレーム27よりも下方へ延びないようにするために十分な鉛直方向フレームとを有してよい。1つの実施の形態において、取外しフレーム27は、反応容器10の下部14に係合し、下部14の重量を支持するように構成されている。取外しフレーム27に係合し、取外しフレーム27を、下部14に係合するために適した高さまで持ち上げるために、フォークリフトまたは同様の機構が使用されてもよい。下部14が取外しフレーム27によって係合されると、下部14を反応容器10から解離させることができ、その後、下部14およびフィルタプレート24を反応容器10から取り外すために取外しフレーム27を下降させることができる。フィルタプレート24は下部14とともに下降させられるので、内部フィルタエレメント26も下降させられ、これにより、内部フィルタエレメント26の保守を可能にする位置に配置される。
【0023】
別の実施の形態において、反応容器10は、フィルタプレート24ではなく、代替的な構成において取り付けられた内部フィルタエレメント26を有する。例えば、内部フィルタエレメント26は、構造的クロスメンバ、取付金具、懸吊ケーブルなどの様々な支持手段からキャビティ18内へ吊すことができる。これに代えて、内部フィルタエレメント26を、フィルタプレート24を使用せずに反応容器の下部に支持させることができる。このような実施の形態において、内部フィルタエレメント26は、通常、セラミックから成る。
【0024】
図2を参照すると、反応容器10は、フィルタプレート24に取り付けられた内部フィルタエレメント26を有してよい。内部フィルタエレメント26は、酸化中に放出された触媒を収集する。内部フィルタエレメント26は、フィルタプレート24の上側に配置され、ファスナ、フランジ、接着剤、インターロッキングタブなどの様々な方法でフィルタプレート24に取り付けられるまたは固定されてよい。
【0025】
図3を参照すると、フィルタプレート24は、反応容器10に設けられた内部フィルタエレメント26の数と少なくとも等しい複数の出口ポート32を有している。すなわち、3つの内部フィルタエレメント26が設けられている場合、フィルタプレート24は少なくとも3つの出口ポート32を有しており、内部フィルタエレメント26の内部体積38が出口ポート32の上方に配置されるようになっている。内部フィルタエレメント26の中心は、通常、出口ポート32の中心と整合させられている。出口ポート32は、内部フィルタエレメント26の寸法と相補的な寸法および形状を有してよく、これにより、触媒を含んだガスは、内部フィルタエレメントを通過して内部体積38に入り、次いで、出口ポート32を通過し、次いで、反応容器10の下部14に進入する。例えば、出口ポートは、円形、楕円形または多角形であってよい。
【0026】
内部フィルタエレメント26は、反応容器10によって発生された触媒を含むガスの量を受容するように寸法決めされていてよい。1つの特定の実施の形態では、内部フィルタエレメント26は、100〜1000平方フィートの活性ろ過面積を有する。これに代えて、内部フィルタエレメント26は、300〜600平方フィートの活性ろ過面積、または400〜500平方フィートの活性ろ過面積を有してもよい。内部フィルタエレメント26が、特に示されていないその他の大きさの活性ろ過面積を有してもよいと考えられる。
【0027】
内部フィルタエレメント26は、0.2〜2.5mの高さを有してもよい。これに代えて、内部フィルタエレメント26は、反応容器10およびキャビティ18の寸法、ならびに内部フィルタエレメント26によって処理される触媒含有ガスの量に応じて、0.5〜2m、または0.7〜1.5mの高さを有してもよい。
【0028】
1つまたは複数の実施の形態において、内部フィルタエレメント26はさらに複数の内部フィルタエレメント26として規定される。言い換えれば、反応容器10は、2つ以上の内部フィルタエレメント26を有してもよい。1つの特定の実施の形態において、反応容器10は、1〜10個の内部フィルタエレメント26を有してもよい。別の特定の実施の形態において、反応容器10は、2〜5個の内部フィルタエレメント26を有してもよい。
【0029】
1つの内部フィルタエレメント26が使用される場合、内部フィルタエレメント26はフィルタプレート24における様々な位置に配置されてよく、例えば、中央に配置されるか、またはずれた位置に配置されてよい。これに代えて、複数の内部フィルタエレメント26が使用される場合、複数の内部フィルタエレメントを、フィルタプレート24において様々なパターンで配置することができ、またはランダムに位置決めされてもよい。1つの実施の形態において、複数の内部フィルタエレメント26を等間隔の配列で、または複数の内部フィルタエレメント26による触媒含有ガスの効率的なろ過を許容する代替的な配列で位置決めすることができる。例えば、複数のフィルタエレメント26を、フィルタプレート24の中心から半径方向外方へ延びた対称的な星形の配列に位置決めすることができる。
【0030】
図4を参照すると、1つの実施の形態において、内部フィルタエレメント26は、フィルタゲージ28と、フィルタ媒体30とを有する。フィルタ媒体30をフィルタケージ28によって構造的に支持することができるか、またはフィルタ媒体30は、フィルタケージ28が不要となるように十分な内部または外部の構造的剛性を有してもよい。
【0031】
再び図1を参照すると、フィルタケージ28は、フィルタプレート24から上方へ突出しており、内部体積38を画成している。内部体積38とは、フィルタケージ28とフィルタ媒体30とによってほぼ取り囲まれた体積を意味する。
【0032】
フィルタケージ28は、様々な形状および構成を有してよい。1つの実施の形態において、フィルタケージ28は円筒形である。フィルタケージ28は、フィルタ媒体30を支持および固定するために構造的に十分であるワイヤケージから成ってよい。フィルタケージ28は、フィルタ媒体30を固定するように設計されていてよい。フィルタケージ28は、300℃を超える温度の高い腐食環境において通常生じる劣化に耐えることもでき、触媒含有ガスをフィルタケージに通過させる様々な寸法の穴を有する金属またはプラスチック材料から成ってよい。
【0033】
フィルタ媒体30は、フィルタケージ28に隣接して配置されてもよい。例えば、十分な構造的支持が提供される限り、フィルタ媒体30を、フィルタケージ28の内部または外部に配置するか、またはフィルタケージ28と絡み合わせることができる。1つの特定の実施の形態において、フィルタ媒体30はフィルタケージ28の内部体積38に配置されている。別の実施の形態において、フィルタ媒体30は、補助フィルタ支持体に配置されており、フィルタケージ28の内部体積38に配置されている。フィルタ媒体30がフィルタケージ28の外部に設けられている場合、フィルタ媒体30はフィルタケージ28に取り付けられていてよく、フィルタケージ28がフィルタ媒体に構造的支持を提供するようになっている。
【0034】
フィルタ媒体30がフィルタケージ28と絡み合わされている場合、フィルタ媒体30の少なくとも一部分がフィルタケージ28の内部体積に配置されていてよく、フィルタ媒体30の少なくとも一部分がフィルタケージ28の外部に配置されていてよい。
【0035】
1つの内部フィルタエレメント26に複数のフィルタ媒体部分を設けることができるように、フィルタ媒体30を別個の部分において設けることができる。1つの実施の形態において、フィルタ媒体30の部分は、内部フィルタエレメント26を形成するように互いに上下に積み重ねることができる。複数のフィルタ媒体部分が使用される場合、個々の部分はシールリングによって分割されていてよい。シールリングは、フィルタ媒体部分に隣接し、触媒含有ガスがフィルタ媒体30をバイパスしないことを保証する。フィルタ媒体部分の数は、1つのフィルタ媒体30において1〜10、または2〜5であり得ると考えられる。
【0036】
過剰な圧力降下を生じることなく十分なろ過を提供することができる限り、本明細書に記載された反応容器10とともに使用するためには、多くの異なるフィルタ媒体30が十分であり得る。フィルタ媒体30は、300℃を超える温度の高い腐食環境に耐えることもできなければならない。1つの特定の実施の形態において、フィルタ媒体30はセラミック材料から成る。フィルタ媒体30は、フィルタ媒体30が0.1μmの小ささの触媒材料をろ過することができるような形式で組み立てられかつ方向づけられたセラミック繊維から成ってよい。
【0037】
1つまたは複数の構成において、フィルタ媒体30はプリーツを有してよい。しかしながら、反応容器10において使用するためには、プリーツを有さないフィルタ媒体30も適切であり得る。フィルタ媒体30は、0.1〜10μmの有効フィルタサイズを有してもよい。これに代えて、フィルタ媒体30は、0.1〜5、または0.1〜3μmの有効フィルタサイズを有してもよい。有効フィルタサイズとは、フィルタ媒体30によって有効にかつ確実に捕捉することができる粒子のサイズを言う。
【0038】
図4を参照すると、内部フィルタエレメント26は、さらに、フィルタベース40と、取付ガスケット42とを有してよい。フィルタベース40は、フィルタケージ28とフィルタプレート24との間に配置されており、フィルタケージ28をフィルタプレート24に結合している。取付ガスケット42は、フィルタプレート24とフィルタベース40との間に直接的または間接的に配置されている。取付ガスケット42は、内部フィルタエレメント26とフィルタプレート24との間にシールを形成しており、これにより、触媒含有ガスの全てが、フィルタプレート24と内部フィルタエレメント26との間の結合部を通って漏れることなく、反応容器10の下部14に進入するために内部フィルタエレメント26を通過しなければならないことを保証する。フィルタベース40は、フランジまたはその他の適切な締結システムによってフィルタプレート24に結合されている。取付ガスケット42は、300℃を超える温度の高い腐食環境に耐えることができる限り、例えば天然ゴムまたは合成ゴム、金属、または高温ポリマなどの様々な材料から製造することができる。
【0039】
内部フィルタエレメント26は、フィルタキャップ44を有してもよい。フィルタキャップ44は、内部フィルタエレメント26の上部と協働し、触媒含有ガスが内部フィルタエレメント26の上部を通ってフィルタ媒体30をバイパスしないことを保証する。
【0040】
再び図1を参照すると、キャビティ18は触媒材料34を有してもよい。1つの実施の形態において、触媒材料34は触媒ガーゼから成る。その他の構成においては、触媒材料34は、流入空気および気化アンモニアが触媒材料34と接触し、アンモニアの酸化につながるための、十分な表面積を提供するその他の構成を成していてもよい。
【0041】
触媒材料34は、一酸化窒素へのアンモニアの触媒酸化を可能にするものである。すなわち、本明細書に記載された反応容器10に関連して様々な触媒材料34が使用されてよい。1つの特定の実施の形態において、触媒材料34はプラチナから成る。これに代えて、触媒材料34は、プラチナ、ロジウム、パラジウムおよびそれらの組合せから成ってよい。さらにこれに代えて、触媒材料34は、アンモニアの触媒酸化を可能にするのに適したその他の成分から成ってもよい。
【0042】
触媒材料34は、支持フレーム36によってキャビティ18内の所定の位置に保持されていてよい。触媒材料34は、キャビティ18内の様々な位置に配置されていてよい。支持フレーム36は、流入空気および気化アンモニアが少なくとも部分的に触媒材料に接触するように、流入空気および気化アンモニアに関して最適な位置に触媒材料34を配置するために反応容器18を横切って延びていてよい。支持フレーム36は、単純なガーダ支持配列、バスケット、ケーブル、またはその他の支持システムを含んでよい。
【0043】
上述のように、反応容器10は、流入空気および気化アンモニアをキャビティ18に進入させる少なくとも1つの入口20を有する。流入空気は、キャビティ18へ移送される前に圧縮および冷却されてよい。流入空気は、50〜1000℃、100〜500℃、150〜250℃の温度でキャビティ18に進入してよい。
【0044】
液体アンモニアは、酸化のために反応容器10のキャビティ18へ移送される前に気化される。液体アンモニアは、熱交換器または代替的な加熱手段によって気化させられてよい。
【0045】
流入空気および気化アンモニアは、同時に触媒材料34に接触しながらキャビティ18内で十分に混合させられる。触媒材料の存在下で混合が生じるので、気化アンモニアの酸化はほとんど瞬間的であり得る。アンモニアの酸化の発熱性質は、反応容器10内の温度を、900℃を超える温度にまで上昇させ得る。
【0046】
中間部16は、ガスがろ過される前にキャビティ18における触媒含有ガスから熱を除去するために使用される少なくとも1つの熱除去装置46を有する。触媒含有ガスの温度は900℃を超える恐れがあるので、ガスは、通常、内部フィルタエレメント26を通過する前に冷却される。熱除去装置46は、触媒材料34のすぐ下方かつ内部フィルタエレメント26のすぐ上方に配置されている。“内部フィルタエレメントの上方”とは、熱除去装置46の少なくとも一部が、内部フィルタエレメント26よりも高い相対高さにあることを意味する。熱除去装置46全体が内部フィルタエレメント26の上部の上方に位置するように熱除去装置46を配置することもできることが認められるべきである。高温の触媒含有ガスが熱除去装置46に接触すると、高温の触媒含有ガスは、内部フィルタエレメント26に進入する前に150〜350℃、またはほぼ200℃の温度に冷却される。
【0047】
1つの実施の形態において、熱除去装置46は図1に示したように複数の熱除去コイルから成る。複数の熱除去コイルは、熱除去装置の熱伝達面積を最大化するようにパンケーキ配向で配置されていてよい。熱除去装置46は、最適な熱伝達速度を保証するために循環機構に接続されていてもよい。熱除去装置46によって捕捉された熱は、リサイクルされ、蒸気を発生するなどの様々な補助プロセスのために利用することができる。熱除去装置は、熱伝達媒体として流体を利用してよい。
【0048】
上述の反応をさらに説明すると、流入空気および気化アンモニアが触媒材料34と接触すると、亜硝酸ガスが形成される。亜硝酸ガスは、一酸化窒素、水蒸気および残留窒素を含む。亜硝酸ガスがその他の成分を含んでもよいと考えられる。亜硝酸ガスが形成され、触媒材料34が亜硝酸ガスに浮遊させられた後、冷却された触媒含有ガスは、鉛直方向下方へキャビティ18を通ってフィルタプレート24に向かって流れる。冷却された触媒含有ガスがフィルタプレート24に到達すると、冷却された触媒含有ガスが内部フィルタエレメント26をまず通過することなく下部14の内部体積を通過しないように、冷却された触媒含有ガスは逸らされる。すなわち、冷却された触媒含有ガスは、内部フィルタエレメント26を通過し、次いで、下部14に進入する。冷却された触媒含有ガスが内部フィルタエレメント26を通過すると、浮遊させられた触媒材料が、後の処理および回収のためにフィルタ媒体30に捕捉される。下部に存在するガスは、実質的に触媒材料を含まず、下部に存在するガスの総重量に基づいて10、5、3、1、0.5、0.1、0.01または0.001質量%未満の触媒材料を含む。
【0049】
上述のように、冷却された触媒含有ガスが内部フィルタエレメント26を通過した後、ろ過されたガスが生成される。1つの可能な実施の形態において、ろ過されたガスは、亜硝酸ガスおよび水蒸気を含んでいる。亜硝酸ガスは、一酸化窒素、二酸化窒素、窒素、およびその他の窒素含有化合物を含んでよい。ろ過されたガスは、高温のろ過されたガスを生じるために、ろ過されたガスから余分な熱を除去するために一連の冷却器を通過させられてよい。ある実施の形態においては、ろ過されたガスは、さらなる処理のために第2の反応容器へ移送される。
【0050】
別の実施の形態において、再び図1を参照すると、酸化窒素を発生するためのアンモニアの酸化および二酸化窒素の還元のためのシステムが提供される。システムは、上述のようにアンモニアの酸化のための第1の反応容器10を有する。第1の反応容器10は、触媒作用によってアンモニアを酸化し、一酸化窒素を発生する。第1の反応容器10は、キャビティ18に提供された、セラミックから成るフィルタ媒体30を含む内部フィルタエレメント26をも有する。システムは、二酸化窒素の還元のための第2の反応容器をも有する。第2の反応容器は、二酸化窒素の還元を可能にするために適している限り、様々な構成および設計を有してよい。第2の反応容器は、第1の反応容器10と流体接続されており、第1の反応容器10の下流に位置する。第2の反応容器は、NO2還元触媒を有する。
【0051】
NO2還元触媒は、1つまたは複数の実施の形態において銀から成ってよい。銀は、純粋形式(99または99.9質量Ag)または合金形式であってよい。これに代えて、NO2還元触媒は、二酸化窒素の還元反応を触媒するために適したその他の材料から成ってよい。第1の反応容器10は内部フィルタエレメント26を有しているので、触媒材料は下流へ搬送されず、これにより、第2の反応容器に進入しない。したがって、NO2還元触媒は、実質的に、第1の反応容器10からの触媒材料によって毒作用を受けることはない。
【0052】
内部フィルタエレメント26から貴金属を回収するために、様々な方法および機器が利用されてよい。内部フィルタエレメント26を反応容器10から周期的に取り外し、触媒材料を収集するために処理することができる。内部フィルタエレメント26が反応容器10から取り外されると、フィルタ媒体30に蓄積した触媒材料を除去するためにフィルタ媒体30を処理することができる。例えば、気化、沈殿、ろ過、機械的分離、真空収集およびその他の方法によって貴金属がフィルタ媒体30から回収され得る。
【0053】
この開示は、新規の反応器の構成に限定されないことが認められるべきである。このような反応容器の既存の下部を取り外し、本開示の下部16、フィルタプレート24および内部フィルタエレメント26を反応容器に取り付けることによって、内部フィルタエレメント26を有するように既存の反応容器を改装することができる。内部フィルタエレメント26、下部14およびフィルタプレート24を有することによって、改装された反応容器は、触媒含有ガスを効率的にろ過することができる。さらに、下部14、すなわちフィルタプレート24および内部フィルタエレメント26を1つの一体のピースにとして、改装された反応容器の下部から下降させることによって、閉鎖空間進入作業なしに、改装された反応容器および内部フィルタエレメント26を容易に保守することができる。下部14が反応容器10から降下させられると、フィルタ媒体30を交換することができる。
【0054】
触媒の存在下でアンモニアを一酸化窒素に酸化する方法も提供される。触媒は、酸化中に放出される恐れがある。この方法は、反応器本体を有する反応容器を提供することを含む。反応器本体は、上部、下部および中間部を有する。上部および中間部は協働してキャビティを画成している。方法は、キャビティ内に内部フィルタエレメントを提供し、キャビティにおける触媒の存在下でアンモニアを酸化させて一酸化窒素を形成することも含む。方法は、内部フィルタエレメントにより、アンモニアを酸化するステップの間に放出された触媒を内部でろ過し、内部フィルタエレメントから、放出された触媒を収集することをさらに含む。
【0055】
1つまたは複数の実施の形態において、方法は、反応器本体の中間部から反応器本体の下部を解離させ、反応器本体の下部を、内部フィルタエレメントをキャビティから取り出すために十分な高さまで下降させるステップをも含んでよい。ある実施の形態においては、内部フィルタエレメントから、放出された触媒を収集するステップは、反応器本体の下部を下降させる前記ステップの後に行われる。
【0056】
触媒を内部でろ過するとは、ガスを反応容器の内部体積の外部へ搬送することなく触媒含有ガスがろ過されることを意味する。その代わりに、触媒含有ガスは、キャビティ内に配置された内部フィルタエレメントを通過させられる。
【0057】
典型的な実施の形態を参照して発明を説明したが、発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が加えられてよく、前記実施の形態の要素の代わりに均等物が代用されてよいことが理解されるであろう。加えて、発明の基本的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を発明の開示に適応させるために、多くの変更がなされてよい。本発明を実施するために考えられた最良の形態として開示された特定の実施の形態に発明は限定されないが、発明は、添付の請求項の範囲に該当する全ての実施の形態を含むことが意図されている。
図1
図2
図3
図4