特許第6261594号(P6261594)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261594
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】ハロゲン化合物を含むポリウレタン
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/38 20060101AFI20180104BHJP
   C08G 18/18 20060101ALI20180104BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20180104BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20180104BHJP
   H01B 3/30 20060101ALI20180104BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20180104BHJP
【FI】
   C08G18/38
   C08G18/18
   C08G18/48
   C08G18/00 L
   C08G18/00 M
   H01B3/30 B
   C08G101:00
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-531508(P2015-531508)
(86)(22)【出願日】2013年8月19日
(65)【公表番号】特表2015-531419(P2015-531419A)
(43)【公表日】2015年11月2日
(86)【国際出願番号】EP2013067232
(87)【国際公開番号】WO2014040824
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2016年8月18日
(31)【優先権主張番号】12184330.4
(32)【優先日】2012年9月13日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】13166517.6
(32)【優先日】2013年5月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】オテロ マルチネツ,イラン
(72)【発明者】
【氏名】ハディク,ウド
(72)【発明者】
【氏名】ハゲン,クリスティアン
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−48795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/38
C08G 18/00
C08G 18/18
C08G 18/48
H01B 3/30
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリイソシアネート、
(b)イソシアネートに対して反応性の基を有する高分子化合物、
(c)組み込み可能なアミン触媒であってイソシアネートに対して反応性の基(複数可)に加えて、メチル基及びエチル基から相互に独立して選択される2個の基を有し、並びにもう一つの有機部分も有する1個以上の第三級脂肪族アミノ基を有する組み込み可能なアミン触媒触媒、
(d)2〜15個の炭素原子を有し、酸素、窒素、及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、且つ少なくとも1個の臭素及び/又は塩素原子を含む脂肪族炭化水素、並びに任意に
(e)発泡剤、
(f)鎖延長剤及び/又は架橋剤、並びに
(g)助剤及び/又は添加剤
を混合し、反応混合物を得る工程、及び前記反応混合物から、その反応を完了させてポリウレタンを得る工程によってポリウレタンを製造する方法であって、
前記脂肪族炭化水素(d)が、リン酸エステル、ポリホスフェート、ホスホン酸エステル又は亜リン酸エステルを含まないことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記脂肪族炭化水素(d)が、1個以上の塩素原子を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脂肪族炭化水素(d)が、ポリイソシアネート(a)に対して反応性の基を有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記脂肪族炭化水素(d)が、リン原子を含まない請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記脂肪族炭化水素(d)が、少なくとも30質量%の塩素原子及び/又は臭素原子を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記脂肪族炭化水素(d)の比率が、前記成分(a)〜(g)の総質量に基づいて、3質量%未満である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
イソシアネートに対して反応性の基を有する前記高分子化合物(b)が、ポリエーテルポリオールを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記組み込み可能な触媒が、イソシアネートに対して反応性のある1〜2個の基を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリウレタンが、20〜850g/Lの平均密度を有するポリウレタンフォームである請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリウレタンフォームが、150〜500g/Lの平均密度を有するインテグラルポリウレタンフォームである請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリウレタンが、20〜100g/Lの平均密度を有する軟質ポリウレタンフォームである請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリウレタンが、850g/Lを超える平均密度を有する緻密なポリウレタンである請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリウレタンが、ケーブルシースである請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法によって製造され得るポリウレタン。
【請求項15】
請求項14に記載のポリウレタンの輸送機関の内装における使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)ポリイソシアネート、(b)イソシアネートに対して反応性の基を有する高分子化合物、(c)触媒、(d)2〜15個の炭素原子を有し、酸素、窒素、及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、且つ少なくとも1個の臭素及び/又は塩素原子を含む脂肪族炭化水素、(e)任意に発泡剤、(f)任意に鎖延長剤及び/又は架橋剤、並びに(g)任意に助剤及び/又は添加剤の混合により、反応混合物を得る工程、及び前記反応混合物から、その反応を完了させてポリウレタンを得る工程によって得られるポリウレタンであって、前記脂肪族炭化水素(d)が、リン酸エステル、ポリホスフェート、ホスホン酸エステル又は亜リン酸エステルを含まない、ポリウレタンに関する。本発明は、さらにそのようなポリウレタンを製造する方法、及びそれらの、輸送機関(conveyance)の内装における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンの特徴は、それが多用途であることである。これらの材料は、頻繁に、特に自動車構造、例えば、自動車の外殻において、スポイラー、ルーフ要素、又はスプリング要素として、また、自動車の内装被覆材において、ルーフ被覆材、ドア被覆材、ケーブル絶縁体、ハンドル、制御ボタン、シートクッション材、若しくはカーペットに使用されるフォーム裏張りとして、又は計器パネル等のその他の部品に使用されるものに使用される。自動車部門、特に自動車の内装において、使用されるポリウレタンは、厳密な要件が課せられる。したがって、これらは自動車の寿命、それぞれの応用部門においてポリウレタンが毎日の使用にそれらの機能、例えば、クッション性、消音性、触覚性、又は安定化性を提供することによる機能を維持するだけでなく、事故の場合の、例えば機械的衝撃の減衰である、安全に関するそれらの機能を提供する目的を通じて変化しない、優れた機械的特性に対する要求がある。
【0003】
自動車で広まっている関連する温度及び湿度条件は、極端であり、ポリウレタンの老化を加速する:−10℃以下、及び60℃より高い、又は実に日射中100℃より高い領域の温度に達し得る。関連する相対湿度は、最高で100%まであり得る。
【0004】
これらの極端な温度及び湿度条件における別の要求は、自動車の内装に使用されるポリウレタンは、揮発性化合物の放出をほとんど起こさないことである。これらはほとんど揮発性アミン触媒の使用に由来する。放出を低減するために、前記揮発性アミン触媒が、完全に又はある程度、組み込み可能な触媒に置き換えられる。これらの化合物は、ポリウレタン反応を触媒するが、同時に、イソシアネート基に対して反応性の基をも有し、そのため、前記触媒はポリウレタンの中へ完全に組み込まれることになる。しかしながら、前記組み込み可能な触媒は、大部分は、結果として得られるポリウレタンの機械的特性、特に熱老化、又は高水分レベルでの熱老化後の、すなわち自動車の内装において良く見られる条件の種類の下での、機械的特性を損なう。
【0005】
これは、特にポリウレタンフォーム(これらは緻密なポリウレタン(compact polyurethane)よりも、かなり大きい表面積を有する)に当てはまる。
【0006】
ポリウレタンの製造における、塩素化化合物の使用は知られている:例として、WO2009/065826は、インテグラルポリウレタンフォーム(integral polyurethane foam)の製造における塩素化パラフィンの使用を記載する。ここで、塩素化パラフィンは、大容量の部品、例えば、ポリエステロール及び鎖延長材としてモノエチレングリコールに基づくハイヒールの女性用靴における、コアチャーリング(core charring)の回避に役に立つ。ポリウレタンフォームの製造において、発泡剤としてのハロゲン化短鎖炭化水素の使用もまた、知られており、例としては、フルオロクロロカーボン(FCCs)である。それらがオゾン層に有害な性質を有しているので、現在、フルオロクロロカーボンの使用は、禁止されている。塩素化パラフィンもまた、発がん性があると疑われ、したがって、本質的に、もはや使用されないか、又は既に禁止されている場合もある。
【0007】
ポリウレタンにおけるリン系難燃剤の使用もまた知られている。前記有機リン難燃剤は、主にリン酸エステル、ホスホン酸エステル、又は亜リン酸エステルに基づく。前記エステルの有機部分は、主に脂肪族又は芳香族炭化水素を含み、ハロゲン化化合物でもあり得る。これらの化合物のポリウレタンマトリクスへの結合は、大部分は不十分であり、そのため、これらの材料は放出を増加し、そして望ましくない臭いを引き起こす。前記難燃剤に基づく老化特性における改善についての記載はない。
【0008】
US3,746,970もまた、鉱酸、及びトルエンジアミンの粗、未蒸留ホスゲン化生成物と共に、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、トリブロモフェノール、2−ブロモプロパン、2−ブロモプロパノール、1,2−ジブロモプロパン、2,3−ジブロモプロペン、2,3−ジブロモプロパノール、2−クロロプロパン、2−クロロプロパノール、1,2−ジクロロプロパン、2,3−ジクロロプロペン、及び2,3−ジクロロプロパノール等のハロゲン源の使用を開示する。粗トルエンジイソシアネートの悪影響は、ハロゲン源及び鉱酸の組合せの使用によって、相殺される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2009/065826
【特許文献2】US3,746,970
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、特に高温、及び/又は高水分含量を伴う高温で、ポリウレタンの老化特性を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、(a)ポリイソシアネート、(b)イソシアネートに対して反応性の基を有する高分子化合物、(c)触媒、(d)2〜15個の炭素原子を有し、酸素、窒素、及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、且つ少なくとも1個の臭素及び/又は塩素原子を含む脂肪族炭化水素、(e)任意に発泡剤、(f)任意に鎖延長剤及び/又は架橋剤、並びに(g)任意に助剤及び/又は添加剤の混合により、反応混合物を得る工程、及び前記反応混合物から、その反応を完了させてポリウレタンを得る工程によって得られるポリウレタンであって、前記脂肪族炭化水素(d)が、リン酸エステル、ポリホスフェート、ホスホン酸エステル又は亜リン酸エステルを含まない、ポリウレタンによって達成された。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の目的のため、用語、ポリウレタンは、公知のポリイソシアネート重付加生成物の全てを対象とする。これらは、イソシアネート及びアルコールに由来する付加物を含み、それらはまた、イソシアヌレート構造、アロファネート構造、尿素構造、カルボジイミド構造、ウレトンイミン構造、又はビユーレット構造を含み得る、変性ポリウレタンを含み、且つそれらはその他のイソシアネート付加物を含み得る。本発明のこれらのポリウレタンは、特に、熱硬化性樹脂等の緻密なポリイソシアネート重付加物、例えば軟質フォーム、半硬質フォーム、硬質フォーム、又はインテグラルフォーム等のポリイソシアネート重付加物に基づくフォーム、並びにポリウレタンコーティング及びバインダも含む。本発明の目的のため、用語ポリウレタンはまた、ポリウレタン及びその他のポリマーを含むポリマーブレンドも、並びに前記ポリマーブレンドから作製されたフォームも対象とする。本発明のポリウレタンは、以下に説明されるポリウレタン単位成分(a)〜(g)と一緒に如何なるその他のポリマーを含まないポリウレタンフォーム、又は緻密なポリウレタンであることが好ましい。
【0013】
本発明の目的のため、用語、ポリウレタンフォームは、DIN7726に従うフォームを対照とする。関連のある本発明の軟質ポリウレタンフォームは、15kPa以下、好ましくは1〜14kPa、特に4〜14kPaの、DIN53 421/DIN EN ISO604に従う10%圧縮での圧縮応力、又は圧縮強度を示す。本発明の半硬質ポリウレタンフォームは、15kPaより大きく、80kPa未満のDIN53 421/DIN EN ISO604に従う10%圧縮での圧縮応力を示す。本発明の半硬質ポリウレタンフォーム及び軟質ポリウレタンフォームは、DIN ISO4590に従って、好ましくは85%より大きく、特に好ましくは90%より大きい連続気泡ファクター(open-cell factor)を有する。本発明の軟質ポリウレタンフォーム及び半硬質ポリウレタンフォームに関するさらなる詳細は、「Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane」[Plastics handbook,volume 7,Polyurethanes],Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 5に見出される。
【0014】
本発明の硬質ポリウレタンフォームは、80kPa以上、好ましくは120kPa以上、特に好ましくは150kPa以上である10%圧縮での圧縮応力を有する。さらに、前記硬質ポリウレタンフォームは、DIN ISO4590に従って、80%より大きく、好ましくは90%より大きい独立気泡ファクター(closed-cell factor)を有する。本発明の硬質ポリウレタンフォームに関するさらなる詳細は、「Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane」[Plastics handbook,volume 7,Polyurethanes],Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 6に見出される。
【0015】
本発明の目的において、用語、弾性ポリウレタンフォームは、DIN53 577に従って、厚さの50%までの短時間の変形の後、10分後にその初期の厚さの2%を超えて残留変形を示さない、DIN7726に従うポリウレタンフォームを対象とする。ここで関連する材料は、硬質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、又は軟質ポリウレタンフォームであり得る。
【0016】
インテグラルポリウレタンフォームは、成形プロセスの理由で、中心部よりも高い密度を有する周辺域を有する、DIN7726に従うポリウレタンフォームを含む。ここで、全体の膜(overall envelope)の密度は、中心部及び周辺域に渡って平均で好ましくは100g/Lより大きい。本発明の目的のため、インテグラルポリウレタンフォームは、硬質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、又は軟質ポリウレタンフォームも含み得る。本発明のインテグラルポリウレタンフォームに関するさらなる詳細は、「Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane」[Plastics handbook,volume 7,Polyurethanes],Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 7に見出される。
【0017】
ここで、本発明のポリウレタンは、ポリイソシアネート(a)を、イソシアネートに対して反応性の基を有する高分子化合物(b)、任意に触媒(c)、2〜15個の炭素原子を有し、酸素、窒素、及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、且つ少なくとも1個の臭素及び/又は塩素原子を含む脂肪族炭化水素(d)、並びに任意に発泡剤(e)、鎖延長剤(f)、並びにその他の助剤及び添加剤(g)と混合し、反応混合物を得る工程、及び前記材料から、その反応を完了させる工程によって得られる。
【0018】
ここで好ましい一実施形態において、本発明のポリウレタンは、20〜850g/Lの平均密度を有するポリウレタンフォームであり、好ましくは半硬質ポリウレタンフォーム、又は軟質ポリウレタンフォーム、又は硬質ポリウレタンフォームであり、特に好ましくは弾性軟質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、又は弾性インテグラルポリウレタンフォームである。弾性インテグラルポリウレタンフォームは、好ましくは中心部及び周辺域に渡って平均で150〜500g/Lの密度を有する。軟質ポリウレタンフォームは、好ましくは10〜100g/Lの平均密度を有する。半硬質ポリウレタンフォームは、好ましくは70〜150g/Lの平均密度を有する。
【0019】
別の好ましい実施形態において、ポリウレタンは、好ましくは850g/Lを上回る、好ましくは900〜1400g/L、特に好ましくは1000〜1300g/L の密度を有する緻密なポリウレタンである。ここで、緻密なポリウレタンは、本質的に、発泡剤の添加なしで得られる。製造プロセスの理由でポリオール中に含まれる例えば、水等の少量の発泡剤は、ここでは発泡剤であるとは考えない。緻密なポリウレタンを製造するための反応混合物は、0.2質量%未満、特に好ましくは0.1質量%未満、特に0.05質量%未満の水を含む。
【0020】
ここで、本発明のポリウレタンは、好ましくは、輸送手段、例えば、船舶、航空機、トラック、自動車、又はバス等、特に好ましくは自動車又はバスに、特に自動車の内装に使用される。これらの自動車及びバスの内装は、以下、自動車の内装(automobile interior)と称する。ここで、潜在的用途は:シートクッション材としての軟質ポリウレタンフォーム、ドアサイド要素、又は計器パネル用のバックフォーミングとしての半硬質ポリウレタンフォーム、ハンドル、制御ノブ、又はヘッドレストとしてのインテグラルポリウレタンフォーム、及び例として、ケーブルシースとしての緻密なポリウレタンがある。
【0021】
本発明のポリウレタンを製造するために使用されるポリイソシアネート成分(a)は、ポリウレタンを製造するための公知のポリイソシアネートの全てを含む。これらは、先行技術から知られる、脂肪族の、脂環式の、芳香族の二官能、又は多官能イソシアネート、及びそれらの任意の望ましい混合物も含む。例としては、ジフェニルメタン2,2’−、2,4’−、及び4,4’−ジイソシアネート、モノマージフェニルメタンジイソシアネートの混合物、及びより大きな数の環を有するジフェニルメタンジイソシアネート同族体(ポリマーMDI)の混合物、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びそのオリゴマー、トリレン2,4−又は2,6−ジイソシアネート(TDI)、及びこれらの混合物、テトラメチレンジイソシアネート及びそのオリゴマー、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びそのオリゴマー、並びにナフチレンジイソシアネート(NDI)、並びにそれらの混合物である。
【0022】
トリレン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート(TDI)又はこれらの混合物、モノマージフェニルメタンジイソシアネート、及び/又はより大きな数の環を有するジフェニルメタンジイソシアネート同族体(ポリマーMDI)及びこれらの混合物を使用することが好ましい。その他の可能性のあるイソシアネートは、例として、「Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane」 [Plastics handbook,volume 7,Polyurethanes], Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 3.2及び3.3.2に示される。
【0023】
ポリイソシアネート成分(a)は、ポリイソシアネートプレポリマーの形態で使用され得る。これらのポリイソシアネートプレポリマーは、上述のポリイソシアネート(成分(a−1))を、過度に、例えば30〜100℃、好ましくは約80℃の温度で、イソシアネートに対して反応性の基を有する高分子化合物(b)(成分(a−2))、及び/又は鎖延長剤(c)(成分(a−3))と反応させ、イソシアネートプレポリマーを得ることによって得られる。
【0024】
イソシアネートに対して反応性の基を有する高分子化合物(a−2)及び鎖延長剤(a−3)は、当業者に知られており、例として、「Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane」 [Plastics handbook,volume 7,Polyurethanes], Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 3.1に記載されている。したがって、例として、イソシアネートに対して反応性の基を有する使用される高分子化合物(a−2)もまた、イソシアネートに対して反応性の基を有する、以下に(b)として記載される高分子化合物を含む。
【0025】
イソシアネートに対して反応性の基を有する使用される高分子化合物(b)は、イソシアネートに対して反応性の少なくとも2個の水素原子を有するいずれの公知の化合物、例えば、2〜8個の官能基を有し、400〜15000g/molの数平均モル質量を有するものを含み得る。したがって、例として、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びそれらの混合物の群から選択される化合物を使用することが可能である。
【0026】
ポリエーテルポリオールは、例として、プロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシド等のエポキシドから、又はテトラヒドロフランから、活性水素を含む開始化合物、例えば脂肪族アルコール、フェノール、アミン、カルボン酸、水、又は天然源、例えば砂糖、ソルビトール、又はマンニトールと共に、触媒の使用を伴って、製造される。ここで、基本的な触媒、又は複合金属シアン化物触媒(double-metal cyanide catalyst)については、例えば、PCT/EP2005/010124、EP90444、又はWO05/090440に記載されるように、言及され得る。
【0027】
ポリエステルオールは、例えば、脂肪族、又は芳香族ジカルボン酸から、及び多価アルコール、ポリチオエーテルポリオール、ポリエステルアミド、水酸化ポリアセタール及び/又は水酸化脂肪族ポリカーボネートから、好ましくはエステル化触媒の存在下で製造される。その他の可能性のあるポリオールは、例として、「Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane」 [Plastics handbook,volume 7,Polyurethanes], Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 3.1に記載されている。
【0028】
記載されたポリエーテルオール(ポリエーテルポリオール)及びポリエステルオール(ポリエステルポリオール)と一緒に使用され得るその他の材料は、ポリマーポリエーテルオール又はポリマーポリエステルオールとも称される、充填ポリエーテルオール又はポリエステルオールである。そのような化合物は、好ましくは、例えば、アクリロニトリル、スチレン、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、及び/又はアクリルアミド等のオレフィンモノマーからなる熱可塑性樹脂から作製される分散粒子を含む。それらの製造は、例えば、DE111 394、US3 304 273、US3 383 351、US3 523 093、 DE1 152 536、DE1 152 537、WO2008/055952、 及びWO2009/128279に記載されている。
【0029】
本発明の特に好ましい一実施形態において、成分(b)はポリエーテルオールを含み、さらに好ましくはポリエステルオールを含まない。
【0030】
触媒(c)ポリオール(b)、及び任意に鎖延長剤及び架橋剤(f)、並びに化学的発泡剤(e)の、有機の任意に変性された、ポリイソシアネート(a)との反応を大いに加速させる。ここで、触媒(c)は、組み込み可能なアミン触媒を含む。これらは、少なくとも1個、好ましくは1〜8個、特に好ましくは1〜2個のイソシアネートに対して反応性の基を有し、その基の例としては、第一級アミン基、第二級アミン基、ヒドロキシ基、アミド、又は尿素基であり、好ましくは第一級アミン基、第二級アミン基、ヒドロキシ基である。組み込み可能なアミン触媒は、主に低放出(low-emission)ポリウレタンを製造するために使用され、これらは、特に自動車の内装部門において使用される。そのような触媒は、公知であり、例として、EP1888664に記載されている。これらの材料は、イソシアネートに対して反応性の基(複数可)に加えて、1個以上の第三級アミノ基を有する化合物を含む。組み込み可能な触媒の第三級アミノ基は、好ましくは部分当たり1〜10個の炭素原子を有する、特に好ましくは部分当たり1〜6個の炭素原子を有する、少なくとも2個の脂肪族炭化水素部分を有する。前記第三級アミノ基が、メチル部分(メチル基)、及びエチル部分(エチル基)から相互に独立して選択される2個の部分(基)、並びにもう一つの有機部分(有機基)も有することが特に好ましい。使用され得る組み込み可能な触媒は、例として、ビスジメチルアミノプロピル尿素、ビス(N,N−ジメチルアミノエトキシエチル)カーバメイト、ジメチルアミノプロピル尿素、N,N,N−トリメチル−N−ヒドロキシエチルビス(アミノプロピルエーテル)、N,N,N−トリメチル−N−ヒドロキシエチルビス(アミノエチルエーテル)、ジエチルエタノールアミン、ビス(N,N−ジメチル−3−アミノプロピル)アミン、ジメチルアミノプロピルアミン、3−ジメチルアミノプロピル−N,N−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン、ジメチル−2−(2−アミノエトキシエタノール)、及び(1,3−ビス(ジメチルアミノ)−プロパン−2−オール)、N,N−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)−N−イソプロパノールアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)−2−ヒドロキシエチルアミン、N,N,N−トリメチル−N−(3−アミノプロピル)ビス(アミノエチル)エーテル、3−ジメチルアミノイソプロピルジイソプロパノールアミン、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0031】
ポリウレタンを製造するために、従来型の触媒を、組み込み可能なアミン触媒と一緒に使用することも可能である。例として、2,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン等のアミジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、N−メチル−、N−エチル−、及びN−シクロヘキシルモルフォリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルブタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルジアミノエチルエーテル、ビス(ジメチルアミノプロピル)尿素、ジメチルピペラジン、1,2−ジメチルイミダゾール、1−アザビシクロ[3.3.0]オクタン、及び好ましくは1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の第三級アミン、並びにトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチル−、N−エチルジエタノールアミン、及びジメチルエタノールアミン等のアルカノールアミン化合物について言及され得る。また、有機金属化合物、好ましくは、例えば酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、エチルヘキサン酸スズ(II)、及びラウリン酸スズ(II)等の有機カルボン酸のスズ(II)塩、例えば二酢酸ジブチルスズ、二ラウリン酸ジブチルスズ、マレイン酸ジブチルスズ、及び二酢酸ジオクチルスズ等の有機カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩等の、有機スズ化合物、並びにネオデカン酸ビスマス(III)、2−エチルヘキサン酸ビスマス、及びオクタン酸ビスマス等のビスマスカルボン酸塩、又はそれらの混合物を使用することも可能である。前記有機金属化合物は、単独で、又は好ましくは強塩基性アミンと組み合わせて使用され得る。成分(b)がエステルを含む場合、アミン触媒だけを使用することが好ましい。特に好ましい実施形態において、使用される触媒(c)は、組み込み可能な触媒だけを含む。
【0032】
触媒(c)が使用される場合、これらは、例として、成分(b)の質量に基づいて、触媒、又は触媒の組み合わせの形態で、0.001〜5質量%、特に0.05〜2質量%の濃度で使用され得る。
【0033】
使用される成分(d)は、2〜15個、好ましくは3〜10個、更に好ましくは3〜6個、特に3〜4個の炭素原子を有し、酸素、窒素、及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、且つ少なくともの1個の臭素及び/又は塩素原子、好ましくは2、3、又は4個の臭素及び/又は塩素原子、特に好ましくは2又は3個の臭素及び/又は塩素原子を含む1個以上の脂肪族炭化水素を含む。別の好ましい実施形態において、化合物(d)は、1個のみの臭素又は塩素原子を有する。好ましくは、脂肪族炭化水素(d)は、臭素及び/又は塩素原子として塩素を含む。ここで、臭素及び/又は塩素原子、特に好ましくは塩素の含有量は、それぞれの場合で成分(d)の総質量に基づいて、好ましくは少なくとも20質量%、特に好ましくは少なくとも30質量%、特に少なくとも40質量%である。脂肪族炭化水素(d)は、第一級炭素原子に結合した少なくとも1個の臭素及び/又は塩素原子を含む。
【0034】
ここで、脂肪族炭化水素(d)は、直鎖、分岐、又は環状であり得、好ましくは直鎖、又は分岐である。ここで、前記ヘテロ原子は、末端であり得、又は鎖の中央の架橋原子(bridging atom)であり得る。鎖の中央のヘテロ原子の例としては、エーテル基−O−、チオエーテル基−S−、及び第三級窒素基である。少なくとも1個のヘテロ原子が、鎖の中央に存在する場合、エーテル基が含まれることが好ましい。脂肪族炭化水素(d)は架橋原子に代えて、又は架橋原子に加えて、イソシアネート基に対して反応性の水素原子を有する少なくとも1個の基を含む。そのような基の例としては、−SH基、−NH基、NH2基、及び−OH基である。化合物(d)は少なくとも1個のOH基、特に1個の第二級OH基を有することが特に好ましい。脂肪族炭化水素(d)は、−OH基に加えて、架橋原子、特に好ましくは少なくとも1個のエーテル基を有することが、さらに好ましい。特に好ましい一実施形態において、臭素及び/又は塩素原子と、ヘテロ原子との間に3個以下の炭素原子、好ましくは2個以下の炭素原子がある。特に、化合物(d)は、OH基、好ましくは第二級OH基を、臭素又は塩素原子を有する炭素原子に隣接した炭素原子上に含む。ここで、脂肪族炭化水素(d)は、リン酸エステル、ポリホスフェート、ホスホン酸エステル又は亜リン酸エステルを含まず、そして脂肪族炭化水素(d)は、リン原子を含まないことが好ましい。
【0035】
好ましくは本発明の脂肪族炭化水素(d)は、標準条件下で、少なくとも100℃、特に好ましくは少なくとも120℃、特に少なくとも150℃の沸点を有する。
【0036】
好ましい脂肪族炭化水素(d)の例としては、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,1,1−トリクロロ−2−メチル−2−プロパノール1/2水和物、2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール、2−(2−クロロエトキシ)エタノール、ビス(2−(2−クロロエトキシ)エチル)エーテル、1,2−ジクロロ−3−プロパノール、3−クロロ−1−プロパノール、3−クロロ−2,2,ジメチル−1−プロパノール、1−クロロ−2−プロパノール、2−クロロ−1−プロパノール、3−ブロモ−1−プロパノール、4−クロロ−1−ブタンジオール、5−クロロ−1−ペンタノール、及び6−クロロ−1−ヘキサノールである。1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,2−ジクロロ−3−プロパノール、1−クロロ−2−プロパノール、及び3−クロロプロパノール、特に1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1−クロロ−2−プロパノール、及び3−クロロプロパノールが特に好ましい。
【0037】
成分(d)の比率は、成分(a)〜(g)の総質量に基づいて、0より大きく、3質量%未満、特に好ましくは0.1〜2.5質量%、さらに好ましくは0.2〜2質量%、特に0.3〜1.5質量%であることが特に好ましい。特に好ましい一実施形態において、成分(d)の比率は、成分(a)〜(g)の総質量に基づいて、成分(d)に含まれる臭素及び/又は塩素原子の全体が、0.1〜1.0質量%、特に好ましくは0.15〜0.8質量%、特に0.2〜0.6質量%であるようになっている。
【0038】
本発明のポリウレタンは、本質的に、鉱酸の使用なしで製造される。鉱酸は、リン酸、塩酸、硫酸、又は硝酸等の無機酸である。ここで、「本質的に鉱酸の使用なしで」は、例えば、製造プロセスの結果として含まれる少量は除かれていることを意味する。鉱酸の含有量は、それぞれの場合で成分(a)〜(g)の総質量に基づいて、好ましくは0.5質量%未満、特に好ましくは0.1質量%未満、さらに好ましくは0.05質量%未満、さらにいっそう好ましくは0.01質量%未満、特に0.001質量%未満である。また、リン酸エステル、ポリホスフェート、ホスホン酸エステル又は亜リン酸エステルの含有量は、成分(a)〜(g)の総質量に基づいて、0.5質量%未満、特に好ましくは0.1質量%未満、さらに好ましくは0.05質量%未満、さらにいっそう好ましくは0.01質量%未満、特に0.001質量%未満である。
【0039】
本発明のポリウレタンが、ポリウレタンフォームと意図されている場合、本発明の反応混合物はまた、発泡剤(e)も含む。ここで、ポリウレタンの製造用に知られている如何なる発泡剤を使用することも可能である。これらは化学的及び/又は物理的な発泡剤を含み得る。そのような発泡剤は、例として、「Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane」[Plastics handbook,volume 7,Polyurethanes],Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 3.4.5に記載されている。ここで、用語、化学的発泡剤は、イソシアネートとの反応により、ガス状の生成物を形成する化合物を対象とする。そのような発泡剤の例としては、水及びカルボン酸である。ここで、用語、物理的発泡剤は、ポリウレタン製造のための出発材料中に溶解されているか、又は乳化されており、ポリウレタン形成の条件下で、気化する化合物を対象とする。例として、これらは、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、及び例えば、ペルフルオロヘキサン等のペルフルオロ化されたアルカン、フルオロクロロカーボン、及びエーテル、エステル、ケトン、アセタール、及び/又は液体二酸化炭素等のその他の化合物を含む。ここで、発泡剤の任意の望ましい量が使用され得る。前記発泡剤の使用される量は、好ましくは結果として得られるポリウレタンフォームの密度が、10〜850g/L、特に20〜800g/L、特に25〜500g/Lであるようになっている。
【0040】
使用され得る鎖延長剤、及び架橋剤(f)は、少なくとも2個のイソシアネートに対して反応性の基を有し、且つ400g/mol未満のモル質量を有し、用語、鎖延長剤は、イソシアネートに対して反応性の2個の水素原子を有する分子に使用され、用語、架橋剤は、イソシアネートに対して反応性の2個より多い水素を有する分子に使用される。しかしながら、ここで、鎖延長剤又は架橋剤を、含めないことも可能である。しかしながら、鎖延長剤、架橋剤、或いはそれらの任意の混合物の添加は、硬度等の機械的特性を改善するために有利であることを示し得る。
【0041】
鎖延長剤、及び/又は架橋剤(f)が使用される場合、ポリウレタン知られている鎖延長剤、及び/又は架橋剤が、使用され得る。これらは、好ましくはイソシアネートに対して反応性の官能基を有する低分子量化合物で、例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、グリコール、及びジアミンである。他の可能性のある低分子量の鎖延長剤、及び/又は架橋剤は、例として、「Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane」[Plastics handbook,volume 7,Polyurethanes],Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 3.2、及び3.3.2に記載されている。
【0042】
さらに、助剤、及び/又は添加剤(g)が使用され得る。ここで、ポリウレタンの製造用に知られている如何なる助剤及び添加剤を使用することも可能である。例として、界面活性剤物質、泡安定剤、気泡調整剤、離型剤、フィラー、染料、顔料、難燃剤、加水分解安定剤、静真菌性物質、及び静菌性物質等について、言及され得る。そのような物質は知られており、例として、「Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane」[Plastics handbook,volume 7,Polyurethanes],Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 3.4.4、及び3.4.6〜3.4.11に記載されている。
【0043】
本発明のポリウレタンの製造における一般的な手順は、ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)、2〜15個の炭素原子を有し、酸素、窒素、及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、且つ少なくとも1個の臭素及び/又は塩素原子を含む脂肪族炭化水素(d)、並びに任意に発泡剤(e)、及び鎖延長剤及び/又は架橋剤(f)が、ポリイソシアネート(a)のNCO基の、成分(b)、(c)、(d)、並びに任意に(e)及び(f)の反応性水素原子の全体に対する等量比が、0.75〜1.5:1、好ましくは0.80〜1.25:1となるような量で反応される。発泡プラスチックが、イソシアヌレート基を少なくともある程度含む場合、ポリイソシアネート(a)において使用されるNCO基の、成分(b)、(c)、(d)、並びに任意に(e)及び(f)の反応性水素原子の全体に対する比は、通常1.5〜20:1、好ましくは1.5〜8:1である。ここで、1:1の比が、100のイソシアネートインデックスに相当する。
【0044】
本発明のポリウレタンを製造するための具体的な出発物質(a)〜(g)は、目的が、本発明のポリウレタンとして、熱可塑性ポリウレタン、軟質フォーム、半硬質フォーム、硬質フォーム、又はインテグラルフォームを製造することにある場合で、それぞれ、量的、及び質的な条件において、僅かに異なる。したがって、例として、発泡剤は、緻密なポリウレタンの製造のためには、使用されず、熱可塑性ポリウレタンは、主に、厳密に二官能性の出発物質を使用する。また、例えば、少なくとも2個の反応性水素原子を有する比較的高い分子量の化合物の官能性及び鎖長によって、本発明のポリウレタンの弾性及び硬度を変えることが可能である。そのような改善をすることは当業者に知られている。
【0045】
緻密なポリウレタンを製造するための出発材料は、例として、EP0989146又はEP1460094に記載され、軟質フォームを製造するための出発材料は、PCT/EP2005/010124及びEP1529792に記載されており、半硬質フォームを製造するための出発材料は、「Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane」[Plastics handbook,volume 7,Polyurethanes],Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 5.4に記載されており、硬質フォームを製造するための出発材料は、PCT/EP2005/010955に記載されており、そしてインテグラルフォームを製造するための出発材料は、EP364854、US5506275、又はEP897402に記載されている。そして、各々の場合に、2〜15個の炭素原子を有し、酸素、窒素、及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、且つ少なくとも1個の臭素及び/又は塩素原子を含む脂肪族炭化水素(d)が、前記文献に記載された出発材料へ添加される。
【0046】
本発明は、さらに、(a)ポリイソシアネート、(b)イソシアネートに対して反応性の基を有する高分子化合物、(c)任意に触媒、(d)2〜15個の炭素原子を有し、酸素、窒素、及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、且つ少なくとも1個の臭素及び/又は塩素原子を含む脂肪族炭化水素、(e)任意に発泡剤、(f)任意に鎖延長剤及び/又は架橋剤、並びに(g)任意に助剤及び/又は添加剤を混合し、反応混合物を得る工程、及び前記反応混合物から、その反応を完了させてポリウレタンを得る工程によって、本発明のポリウレタンを製造する方法であって、前記脂肪族炭化水素(d)が、リン酸エステル、ポリホスフェート、ホスホン酸エステル又は亜リン酸エステルを含まない方法を提供する。
【0047】
本発明のポリウレタンは、特に140℃で7日間の熱老化、又は120℃、100%相対湿度でオートクレーブにおいて、5時間の3サイクルの高水分レベルでの熱老化における、優れた老化性能を示す。脂肪族炭化水素(d)を使用することによって、特に引張強度、並びに最大引張ひずみも改善することが可能であった。ここで、熱老化、及び高水分レベルでの熱老化は、DIN EN ISO2440に従って実行した。本発明の別の有利な点は、脂肪族炭化水素(d)が、ポリオールとの非常に良好な相溶性を有していることである。したがって、本発明の脂肪族炭化水素(d)を含むポリオール成分は、通常、2成分プロセスにおける保存において、非常に良好な安定性を有する。本発明の別の有利な点は、熱老化の期間でほとんど変色がないことである。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を用いて、本発明を説明する。
【0049】
[出発材料]
ポリオールA:84質量%のプロピレンオキシド含有量及び14質量%のエチレンオキシド含有量を有する、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドに基づき、OH価35mgKOH/g、及び官能性2.7を有するポリエーテルオール、
ポリオールB:担体ポリオールとしてのポリオールA中、45%固体含有量(スチレン−アクリロニトリル)を有するグラフトポリオール
ポリオールC:78質量%のプロピレンオキシド含有量及び21質量%のエチレンオキシド含有量を有する、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドに基づき、OH価27mgKOH/g、及び官能性2.5を有するポリエーテルオール、
BOD: 1,4−ブタンジオール
MEG: モノエチレングリコール
Isopur SA−21050: 黒色ペースト(ISL−CHemie製)
Polycat 15: 触媒(Air Products製)
Jeffcat ZF10: 触媒(Huntsman製)
Jeffcat DPA: 触媒(Huntsman製)
DABCO: トリエチレンジアミン
【0050】
塩素化合物
Cl1: 1,3−ジクロロ−2−プロパノール
Cl2: 2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール
Cl3: 2−(2−クロロエトキシ)エタノール
Cl4: ビス(2−(2−クロロエトキシ)エチル)エーテル
Cl5: TCPP
Cl6: 3−クロロ−1−プロパノール
Cl7: 3−クロロ−2,2−ジメチル−1−プロパノール
Cl8: 1−クロロ−2−プロパノール
Cl9: Cerechlor S45(塩素化C15−C17パラフィン、45%Cl(INEOS製))
Br1: 3−ブロモ−1−プロパノール
イソシアネートA: 27.8のNCO含有量を有するカルボジイミド−変性4,4’−MDI
【0051】
混合物Aを、以下の成分の混合により製造した:
79.9質量部のポリオールA
4.8質量部のポリオールB
8.1質量部のMEG
5.0質量部のIsopur SA−21050
0.6質量部の水
0.8質量部のPolycat 15
0.8質量部のJeffcat ZF10
表1に従って、0.25−2.0質量部のハロゲン化合物Cl1〜Cl9、又はBr1。
【0052】
混合物A、及びイソシアネート成分A、並びに表1に従って塩素化合物を、102のイソシアネートインデックスで、互いに混合し、密閉金型へ詰め、平均密度380g/Lの成形品を得た。
【0053】
イソシアネートB:27.1のNCO含有量を有する、85部のカルボジイミド−変性4,4’−MDIと、15部の高分子ジフェニルメタンジイソシアネートPMDIとの混合物
【0054】
混合物Bを、以下の成分の混合により調製した:
85.3質量部のポリオールA
10.0質量部のポリオールC
2.5質量部の水
1.5質量部のトリエタノールアミン
0.2質量部のJeffcat DPA
0.5質量部のJeffcat ZF10
0.5質量部のCl1。
【0055】
混合物B、及びイソシアネート成分Bを104.5のイソシアネートインデックスで、互いに混合し、密閉金型へ詰め、平均密度137g/Lの成形品を得た。
【0056】
イソシアネートC: 24.6のNCO含有量を有する、85部の変性4,4’−MDIと、15部の高分子ジフェニルメタンジイソシアネートPMDIとの混合物
混合物Cを、以下の成分の混合により調製した:
86.6質量部のポリオールA
11.0質量部のBDO
0.1質量部の水
0.3質量部のDABCO
2.0質量部のIsopur SA−21050
表3に従って、0.4〜1.0質量部の塩素化合物。
【0057】
混合物C、及びイソシアネート成分C、並びに表4に従って塩素化合物を、103のイソシアネートインデックスで、互いに混合し、密閉金型へ詰め、平均密度800g/Lの成形品を得た。
【0058】
機械的特性のために測定された数値は、以下の標準に従う手順を使用して測定した。
【0059】
【表1】
【0060】
熱老化、及び高水分含量での熱老化のための手順は、標準DIN EN ISO2440に従った。
【0061】
表1:塩素化合物の添加なし(対照)、及びそれぞれの場合、混合物Aの総質量に基づいて、質量部で規定された、指示濃度での各塩素化合物Cl1〜Cl9及びBr1の添加ありで、結果として得られたインテグラルフォームの、140℃で7日間の熱老化前、及び後の機械的特性。
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
表2:塩素化合物の添加なし(対照)、及び混合物Bの総質量に基づいて、0.5質量部で、塩素化合物Cl1の添加ありで、結果として得られた半硬質フォームの、140℃で7日間の熱老化前、及び後の機械的特性。
【0065】
【表4】
【0066】
表3:塩素化合物の添加なし(対照)、及びそれぞれの場合、混合物Cの総質量に基づいて、質量部で規定された、指示濃度での各塩素化合物Cl1及びCl3の添加ありで、結果として得られたインテグラルフォームの、150℃で14日間の熱老化前、及び後の機械的特性。
【0067】
【表5】
【0068】
表4:それぞれの場合、混合物Aの総質量に基づいて、質量部で規定された、指示濃度での各塩素化合物Cl1及びCl4の添加ありで、結果として得られたインテグラルフォームの、オートクレーブ中で、120℃、及び100%湿度で、5時間の3サイクルの高水分レベルでの熱老化前、及び後の機械的特性。
【0069】
【表6】