特許第6261607号(P6261607)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261607
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】自熱気相脱水素化を行うための反応器
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/24 20060101AFI20180104BHJP
   C07C 11/167 20060101ALI20180104BHJP
   C07C 15/46 20060101ALI20180104BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20180104BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20180104BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   B01J19/24 A
   C07C11/167
   C07C15/46
   C07C11/04
   C07B61/00 300
   B01J35/04 301Z
【請求項の数】20
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-546988(P2015-546988)
(86)(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公表番号】特表2016-508864(P2016-508864A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】EP2013076154
(87)【国際公開番号】WO2014090841
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年12月2日
(31)【優先権主張番号】12196666.7
(32)【優先日】2012年12月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ゲアハート オルベアト
(72)【発明者】
【氏名】カルロス テラエチェ エランス
(72)【発明者】
【氏名】ノアベアト アスプリオン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ヴェック
(72)【発明者】
【氏名】エレン ダールホフ
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭50−003267(JP,B1)
【文献】 米国特許第03475136(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0157737(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0177741(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 8/00、19/24、35/04
C01B 3/26
C07B 61/00
C07C 5/48、11/04、167、15/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノリス(4)として構成された不均一系触媒を介して反応ガス混合気を得るために、酸素含有ガス流(3)を用いて炭化水素含有ガス流(2)の自熱気相脱水素化を行うための、長手方向が縦方向である円筒形の反応器(1)であって、
・前記反応器(1)の内部スペースに1つまたは複数の触媒活性区域(5)が設けられており、各触媒活性区域(5)はそれぞれ、横方向および/または縦方向に重ねられた複数のモノリス(4)から成るパッケージを有し、各触媒活性区域(5)より上流にはそれぞれ、固定の内容物を有する混合区域(6)が設けられており、
・前記反応器(1)の下端部に、脱水素化処理対象の前記炭化水素含有ガス流(2)のための1つまたは複数の供給路(7)が設けられており、
・前記酸素含有ガス流(3)を前記各混合区域(6)へ供給するための、相互に依存せずに調整可能な1つまたは複数の供給路(9)であって、各供給路(9)がそれぞれ1つまたは複数の分配器(10)へ供給する1つまたは複数の供給路(9)が設けられており、
・前記反応器(1)の上端部に、前記自熱気相脱水素化の前記反応ガス混合気のための1つまたは複数の出口路(11)が設けられており、
前記反応器(1)の内壁には全体に絶縁層(13,14,15)が設けられており
A)それぞれ1つまたは複数のマンホール(12)を介して前記反応器の外部から前記1つまたは複数の各触媒活性区域(5)にアクセスできることが保証されているか、
または、
B)前記1つまたは複数の各触媒活性区域(5)が、各触媒活性区域(5)より上流に設けられた、固定の内容物を有する前記混合区域(6)と、相互に依存せずに調整可能である前記1つまたは複数の供給路(9)と、それぞれ1つの供給路(9)により供給される前記1つまたは複数の分配器(10)と一緒に、個別に着脱可能である部品(24)構成している、
ことを特徴とする反応器(1)。
【請求項2】
前記部品(24)は、フランジ(25)を用いて個別に着脱可能である、
請求項1記載の反応器(1)。
【請求項3】
・前記反応器(1)の内部スペースに1つまたは複数の触媒活性区域(5)が設けられており、各触媒活性区域(5)はそれぞれ、横方向および/または縦方向に重ねられた複数のモノリス(4)から成るパッケージを有し、各触媒活性区域(5)より上流にはそれぞれ、固定の内容物を有する混合区域(6)が設けられており、
・前記反応器(1)の下端部に、脱水素化処理対象の前記炭化水素含有ガス流(2)のための1つまたは複数の供給路(7)が設けられており、
・前記酸素含有ガス流(3)を前記各混合区域(6)へ供給するための、相互に依存せずに調整可能な1つまたは複数の供給路(9)であって、各供給路(9)がそれぞれ1つまたは複数の分配器(10)へ供給する1つまたは複数の供給路(9)が設けられており、
・前記反応器(1)の上端部に、前記自熱気相脱水素化の前記反応ガス混合気のための1つまたは複数の出口路(11)が設けられており、
前記1つまたは複数の各触媒活性区域(5)には、それぞれ1つまたは複数のマンホール(12)を介して前記反応器(1)外部からアクセス可能であり、前記反応器(1)の内壁には全体に絶縁層(13,14,15)が設けられている、
請求項1記載の反応器(1)。
【請求項4】
前記絶縁層(13,14,15)は、前記触媒活性区域(5)の領域において2層構造で構成されており、前記反応器(1)の内壁に接している耐圧性の第1層(13)と、当該反応器(1)の内部スペースの方を向いた、膨張マットから成る第2層(14)とを有し、
前記絶縁層(13,14,15)は他の領域では単層構造であり、前記反応器の内部スペースの方を向いた側に金属被覆板を有する耐高温性の繊維マット(15)から成る、
請求項1から3までのいずれか1項記載の反応器(1)。
【請求項5】
前記横方向と縦方向とに重ねられたモノリス(4)から成る前記パッケージは、格子台(16)上に載置されており、
前記格子台(16)に直接接する領域には、当該格子台(16)からの距離がより遠い他のモノリス(4)の通路の断面と比較して大きな断面の通路を有するモノリス(4)の1層または複数層が設けられている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の反応器(1)。
【請求項6】
格子台(16)に直接接している領域に、開放孔の発泡セラミックから成る層が設けられており、
前記発泡セラミックの通流可能な間隙容積は70%から90%である、
請求項1から5までのいずれか1項記載の反応器(1)。
【請求項7】
前記格子台(16)に直接接している領域には、高い気孔率の開放孔の発泡セラミックから成る第1層が設けられており、
前記第1層は、10mmから100mmまでの範囲内であり、
前記第1層の上方に、前記格子台(16)からの距離がより遠い他のモノリス(4)の通路の断面と比較して断面が大きい通路を有するモノリス(4)から成る第2層が設けられている、
請求項5または6記載の反応器(1)。
【請求項8】
最上位の触媒活性区域(5)より上方に、または前記反応器(1)の外部に、熱交換器(17)が設けられており、
脱水素化処理対象の前記炭化水素含有ガス流(2)は供給路(7)を介して前記熱交換器(17)内に導入され、当該熱交換器(17)において、逆流方向の前記反応ガス混合気によって間接的熱交換により加熱され、更に、前記反応器(1)の下端部へ導かれて、当該下端部においてポート(18)を介して前記反応器(1)内に導入され、前記混合区域(6)において前記酸素含有ガス流(3)と混合されることにより、当該反応器(1)において前記自熱気相脱水素化が行われる、
請求項1から7までのいずれか1項記載の反応器(1)。
【請求項9】
前記熱交換器(17)は、フランジ(25)を用いて着脱可能である、
請求項8記載の反応器(1)。
【請求項10】
脱水素化処理対象の前記炭化水素含有ガス流(2)は、2つ以上の場所において熱交換器(17)内に導入される、
請求項1から9までのいずれか1項記載の反応器(1)。
【請求項11】
脱水素化処理対象の前記炭化水素含有ガス流(2)は、質量流量が多い主流と、当該主流より質量流量が少ない1つまたは複数の副流として、前記熱交換器(17)内に導入される、
請求項10記載の反応器(1)。
【請求項12】
前記熱交換器(17)の他に更に、前記脱水素化処理対象の炭化水素含有ガス流(2)を加熱するための1つまたは複数の追加加熱部が設けられている、
請求項8から11までのいずれか1項記載の反応器(1)。
【請求項13】
前記追加加熱部として電気ヒータが設けられている、
請求項12記載の反応器(1)。
【請求項14】
前記電気ヒータは取り外し可能に、差込方式またはマッフルバーナーとして、前記熱交換器(17)から出た後の前記脱水素化処理対象の炭化水素含有ガス流(2)内に設けられる、
請求項13記載の反応器(1)。
【請求項15】
前記反応器(1)において、横方向と縦方向とに重ねられた複数のモノリス(4)から成るパッケージをそれぞれ有する、2つ以上の前記触媒活性区域(5)が設けられている、
請求項1から14までのいずれか1項記載の反応器(1)。
【請求項16】
同一の触媒活性区域(5)の中で、前記各モノリス(4)はそれぞれ異なる触媒活性を有するように構成されている、
請求項1から15までのいずれか1項記載の反応器(1)。
【請求項17】
つ以上の前記各触媒活性区域(5)は、それぞれ異なる触媒活性を有するように構成されている、
請求項15または16記載の反応器(1)。
【請求項18】
前記横方向と縦方向とに重ねられてパッケージを構成する複数のモノリス(4)は、膨張マットまたは鉱物繊維不織布に包まれて、締付具を用いてケーシング内に組み付けられている、
請求項1から17までのいずれか1項記載の反応器(1)。
【請求項19】
各混合区域(6)がそれぞれ管型分配器を有し、
各管型分配器は、
前記反応器(1)の長手方向に対して垂直な平面にて相互に平行に配置された複数の差込パイプ(19)と、
相互に等間隔に配置された複数の混合部材と
から成り、
前記複数の差込パイプ(19)は、1つまたは複数の分配室に連通されており、
前記複数の差込パイプ(19)は、前記差込パイプ(19)から、前記酸素含有ガス流(3)を流出させるための複数の出口を有し、当該複数の出口は相互に等間隔に配置されている、
請求項1から18までのいずれか1項記載の反応器(1)。
【請求項20】
請求項1から19までのいずれか1項記載の反応器(1)を用いて自熱気相脱水素化を行う方法であって、
前記自熱気相脱水素化は、
タン、イソブタン、ブテンを脱水素反応させてブタジエンを生成するか、
エチルベンゼンを脱水素反応させてスチレンを生成するか、または、
エタンを脱水素反応させてエテンを生成する
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノリスとして構成された不均一系触媒を用いて自熱気相脱水素化を行うための反応器と、当該反応器を用いた方法とに関する。
【0002】
セラミック製または金属製のモノリスは、移動用および定置用の排ガス洗浄分野において貴金属触媒用の触媒キャリアとして確立されている。その通路により、流れについて流れ抵抗を小さくすることができると同時に、気体の反応媒質が触媒の外側面に均等に接触するのを実現することができる。このことは、不規則な集合体に比して有利であり、不規則な集合体では、粒子周辺の流れにおいて無数に生じる偏向により大きな圧力損失が生じ、触媒表面が場合によっては均等に使用されないことがある。一般的に、大量の体積流を用いて、かつ高温で断熱反応設定を行う触媒プロセスを行う場合に、モノリスを用いることに関心が寄せられている。これらの特徴は化学製造技術において、とりわけ、400℃から700℃までの温度領域において進行する脱水素反応に当てはまる。
【0003】
触媒技術が進歩したことにより、たとえば米国特許第7034195号明細書に記載されているように、炭化水素の存在下で脱水素反応水素を選択的に燃焼させることができる。このような運転方式は自熱脱水素化と称され、これにより脱水素反応器を直接加熱することができるので、反応混合物を間接的に事前加熱または中間加熱するための面倒な装置は不要となる。このような手法は、たとえば米国特許出願公開第2008/0119673号明細書に記載されている。しかしこの手法は、ペレット形の不均一系触媒において脱水素反応が行われるという重大な欠点を有する。つまり、ペレット状のばら物の流れ抵抗は高いので、反応器断面を大きくしなければならず、これに応じて、触媒活性層における圧力降下を抑えるために流速を遅くしなければならなくなる。この欠点は、非常に高コストの酸素調量分配装置を用いることにより相殺されるが、このことにより、自熱脱水素化の利点が阻害されてしまう。
【0004】
欧州特許出願公開第2506963号明細書には、モノリスとして構成された不均一系触媒において混合反応ガスを受け取って酸素含有ガス流を用いて炭化水素含有ガス流の自熱気相脱水素化を行うための横置き円筒型の反応器が開示されており、当該反応器では、
当該反応器の長手方向に取り外し可能に配置されたハウジングGであって、周方向には気密封止されており、両端面は開放している、円筒形または角柱形のハウジングGによって、当該反応器の内部スペースは、
・上下左右前後に重ねられた複数のモノリスのパッケージがそれぞれ設けられた1つまたは複数の触媒活性区域を有する内側領域Aと、
・前記内部領域Aと同軸に配置された外側領域Bと
に分かれており、各触媒活性区域の上流には、固定の内容物を有する混合区域がそれぞれ設けられており、
・脱水素化処理対象である炭素含有ガス流を前記外側領域B内へ導き、反応器の終端部において当該脱水素化処理対象の炭化水素流を偏向し、整流器を介して前記内部領域A内へ供給するための1つまたは複数の供給路を備えており、
・酸素含有ガス流を前記各混合区域へ供給するための、相互に依存せずに調整可能な1つまたは複数の供給路であって、各供給路がそれぞれ1つまたは複数の分配室へ供給する1つまたは複数の供給路を備えており、かつ、
・当該反応器の終端部において前記自熱気相脱水素化の反応混合物を流出するための出口路であって、前記脱水素化処理対象の炭化水素流を供給するための供給路と同様の出口路を備えている。
【0005】
自熱気相脱水素化の反応ガス混合気を流出させるための出口路が配置されている反応器終端部には、有利には、管群を有する管群型熱交換器が設けられており、この管群内にて自熱気相脱水素化を行うための反応ガス混合気が導かれ、当該管群の各管の間にはスペースが設けられており、このスペース内にて、自熱気相脱水素化の反応ガス混合気の流れとは逆方向に、脱水素化処理対象の炭化水素含有ガス流を流す。
【0006】
欧州特許出願公開第2506963号明細書を基礎とする国際公開第2012/084609号には、安全技術上の観点で改善された反応器が記載されており、同刊行物では、外側領域Bに、自熱気相脱水素化の反応条件下では不活性であるガスが供給され、供給路を介して脱水化素処理対象の炭化水素含有ガス流を熱交換器内へ流入させることにより、反応ガス混合気が逆流方向で間接的熱交換により加熱されて、更に、反応器の、熱交換器とは反対側の終端部へ送られて、ここで反応ガス混合気の方向が変えられて、当該反応ガス混合気は整流器を介して内側領域A内へ流入していき、混合区域内において酸素含有ガス流と混合され、これにより、反応器の内側領域Aにおいて自熱気相脱水素反応が発生する。
【0007】
しかし、上記の反応器の構成は複雑である。これは特に、反応器内部の空間が、内側領域と、当該反応器の長手方向に配置されるハウジングの設置場所である外側領域とに分かれていることによる。
【0008】
上記点に鑑みて本発明の課題は、モノリスとして構成された不均一系触媒を用いて自熱気相脱水素化を行うための反応器であって、上記刊行物より格段に簡素化した構成であり、かつ、必要に応じて当該モノリスを簡単に交換できることを保証する反応器を実現することである。
【0009】
前記課題の解決手段は、モノリスとして構成された不均一系触媒において反応ガス混合気を受け取って酸素含有ガス流を用いて炭化水素含有ガス流の自熱気相脱水素化を行うための円筒形の反応器であって、当該円筒形の長手軸は縦方向であり、
・前記反応器の内部スペースに1つまたは複数の触媒活性区域が設けられており、各触媒活性区域はそれぞれ、横方向および/または縦方向に重ねられた複数のモノリスから成るパッケージを有し、各触媒活性区域より上流にはそれぞれ、固定の内容物を有する混合区域が設けられており、
・前記反応器の下端部に、脱水素化処理対象の炭化水素含有ガス流のための1つまたは複数の供給路が設けられており、
・酸素含有ガス流を前記各混合区域へ供給するための、相互に依存せずに調整可能な1つまたは複数の供給路であって、各供給路がそれぞれ1つまたは複数の分配器へ供給する1つまたは複数の供給路が設けられており、
前記反応器の上端部に、前記自熱気相脱水素化の反応ガス混合気のための1つまたは複数の出口路が設けられており、
前記反応器の内壁には全体に絶縁層が設けられており、
前記1つまたは複数の触媒活性区域には、それぞれ1つまたは複数のマンホールを介して前記反応器の外部からアクセスできることが保証されているか、
または、
・前記1つまたは複数の各触媒活性区域はそれぞれ、
・各触媒活性区域より上流に設けられた、固定の内容物を有する前記混合区域と、
・相互に依存せずに調整可能である前記1つまたは複数の供給路と、
・それぞれ1つの供給路により供給される前記1つまたは複数の分配器であって、個別に着脱可能である部品としてそれぞれ構成された前記1つまたは複数の分配器
を含めた、横方向および/または縦方向に重ねられた複数のモノリスから成るパッケージを含む
ことを特徴とする反応器である。
【0010】
前記個別の部品は、たとえば溶接継目を介して、互いに接合および分離することができる。
【0011】
とりわけ、フランジを用いて前記個別の部品を互いに結合および分離することができる。
【0012】
1つの実施形態では前記課題は、モノリスとして構成された不均一系触媒において混合反応ガスを受け取って酸素含有ガス流を用いて炭化水素含有ガス流の自熱気相脱水素化を行うための円筒形の反応器であって、当該円筒形の長手軸は縦方向であり、
・前記反応器の内部スペースに1つまたは複数の触媒活性区域が設けられており、各触媒活性区域はそれぞれ、横方向および/または縦方向に重ねられた複数のモノリスから成るパッケージを有し、各触媒活性区域より上流にはそれぞれ、固定の内容物を有する混合区域が設けられており、
・前記反応器の下端部に、脱水素化処理対象の炭化水素含有ガス流のための1つまたは複数の供給路が設けられており、
・酸素含有ガス流を前記各混合区域へ供給するための、相互に依存せずに調整可能な1つまたは複数の供給路であって、各供給路がそれぞれ1つまたは複数の分配器へ供給する1つまたは複数の供給路が設けられており、
・前記反応器の上端部に、前記自熱気相脱水素化の反応ガス混合気のための1つまたは複数の出口路が設けられており、
前記1つまたは複数の各触媒活性区域には、それぞれ1つまたは複数のマンホールを介して反応器外部からアクセス可能であり、前記反応器の内壁には全体に絶縁層が設けられている。
【0013】
したがって本発明では、長手方向が縦方向である円筒形の反応器を、すなわち直立型の装置として構成された反応器を提供する。
【0014】
前記モノリスは、当該モノリスの通路内の通流が縦方向に行われるように、触媒活性区域内に組み付けられている。
【0015】
自熱気相脱水素化は、モノリスの形態の不均一系触媒において実施される。
【0016】
ここではモノリスとは、相互に平行に配置された多数の貫通路を有する、一体部品の平行六面体のブロックであって、各通路の断面が約0.36mmから9mmまでと小さい平行六面体ブロックを指す。前記通路は有利には、正方形の断面を有するように形成されており、特に、当該正方形の一辺の長さが0.6mmから3mmまでの範囲内であり、特に有利には1.0mmから1.5mmまでの間の範囲内である。
【0017】
前記モノリスは有利には、支持体材料としてのセラミック材料上に、有利にはいわゆるウォッシュコート法により触媒活性層を成膜したものから成る。
【0018】
モノリス構造に慣用されている材料は、コーディエライト(酸化マグネシウムと酸化シリコンと酸化アルミニウムとから成るセラミック材料であり、その比は2:5:2である)。モノリス構造で市販されている他の材料は、金属、ムライト(酸化シリコンと酸化アルミニウムとを2:3の比で混合した混合酸化物)および炭化シリコンである。これらの材料の比表面積(BET=Brunauer,Emmet および Teller)は、コーディエライトと同様に小さい(たとえば、コーディエライトの比表面積は、典型的には0.7m/gである)。
【0019】
モノリスセラミック部材は、25〜1600cpsiのセル密度(1平方インチあたりのセル数、5〜0.6mmのセルサイズに相当する)のものが入手可能である。より高いセル密度を用いると幾何学的な表面積が拡大し、触媒をより効率的に使用することが可能となる。セル密度が高いことの欠点は、製造プロセスが幾らか困難になること、ウォッシュコート成膜がより困難になること、および、反応器における圧力損失が高くなることである。さらに、通常はセル密度が高くなるとセル壁も薄くなり、このことによりモノリスの機械的安定性も低下する。円筒形の反応器では、モノリスの縁部領域を適宜カットすることにより調整しなければならない。しかし、セル密度が高いモノリスの場合、圧力損失は充填体反応器と比較して非常に小さく抑えられる(通常は1/10)。これは、モノリス通路が真っ直ぐであることに起因する。
【0020】
モノリスセラミック部材を製造するためには、タルクと粘土と、酸化アルミニウムを供給する成分と、二酸化シリコンとの混合物を製造し、当該混合物をミキシングして成形材料を形成し、当該混合物を成形し、原材料を乾燥させ、1200℃から1500℃までの温度で加熱することができる。このようにすると、主にコーディエライトを含有し、かつ低い熱膨張係数を有するセラミックが得られる。一般化して言うと、適切なレオロジー特性と適切な組成とを有するペーストを押出成形してモノリス担体を形成することができる。このペーストは通常、適切な粒径のセラミック粉末と、無機および/または有機の添加剤と、溶剤(水)と、pH値を調整するためのペプタイザ(酸)と、永久バインダ剤(コロイド溶剤またはゾル)とを混合したものから成る。前記添加剤は、ペーストの粘性率を調整するための可塑剤または界面活性剤とするか、または、後で焼却可能な一時的なバインダ剤とすることができる。時々、モノリスの機械的強度を向上させるためにガラス繊維または炭素繊維を添加することもある。前記永久バインダ剤は、モノリスの内部強度を改善するものでなければならない。
【0021】
コーディエライトモノリスは、タルク、カオリン、か焼したカオリン、および酸化アルミニウムから成る原料から製造することができ、これにより、45重量%から55重量%までのSiOと、32重量%から40重量%までのAlと、12重量%から15重量%までのMgOとから成る化合物も一緒に生成される。タルクは、主に水酸化珪酸マグネシウムMgSi10(OH)から成る材料である。タルクは採掘源および純度に応じて、トレモライト(CaMg(SiO)、蛇紋石(3MgO.2SiO,2HO)、アンソフィライト(Mg(OH)(Si11)、マグネサイト(MgCO)、雲母およびクロライト等の他の鉱物と共存させることもできる。
【0022】
押出成形により、たとえばSiC,BC,Si,BN,AlN,Al,ZrO、ムライト、チタン酸アルミニウム、ZrB、サイアロン、ペロブスカイト、炭素およびTiO等の他の材料からモノリスを製造することも可能である。
【0023】
モノリス製品の特性に関して重要なのは、押出成形時のノズルの品質、成形可能な混合物を製造するのに用いられる材料の種類および特性の他に、添加される添加剤、pH値、水分量、および、押出成形時に用いられる力である。押出成形時に使用される添加剤は、たとえばセルロース、CaCl、エチレングリコール、ジエチレングリコール、アルコール、ワックス、パラフィン、酸および耐熱性無機繊維である。水の他に、たとえばケトン、アルコールおよびエーテル等の他の溶剤を用いることも可能である。添加剤を添加することにより、たとえばマイクロクラック形成等のモノリスの特性を改善することができ、これにより温度変化耐性も向上させることができ、また、多孔性の改善、吸収性能を改善しかつ機械的強度を向上させること、または、熱膨張を小さくすることができる。
【0024】
剥き出し状態のこのモノリス構造には、1つまたは複数のセラミック酸化物を含む触媒キャリア層が被膜され、または、触媒作用を示す金属と、他の任意の(促進)要素とを、既にセラミック酸化物担体材料に担持した状態のものを含む触媒層が被膜される。この被膜処理は、ウォッシュコート成膜法により形成される。
【0025】
以下、反応器への組み付けについての有利な実施態様を、詳細に説明する。
【0026】
実施態様1:
反応器において、スペースを置かずに複数のモノリスを横方向と縦方向とに互いに接するように重ね合わせる。その際には、すべてのモノリスにおいて縦方向に通流することを保証しなければならない。
【0027】
製造技術上の理由により、モノリスは凹凸と歪みとを有するので、重ねる際には、直接隣接する各モノリス間に生じるギャップの幅が異なってくる。このことにより、反応ガス混合気の迂回路が生じる。それゆえ、モノリスの外壁にも触媒コーティングを施す必要がある。
【0028】
モノリスは、反応器の曲面に応じてカットすることにより、当該反応器の円筒形の内壁に合わせて調整しなければならない。好適にはこのカットは、反応器に組み付けるためにモノリスを納品する前に既に行う。というのもこのようにすると、付随的に発生するダストや残りかすを貴金属リサイクルにそのまま直接供給できるからである。
【0029】
モノリスは、1層または複数層にわたって、間隔無しで直に重ねて組み付けられるか、または互いにずらされて組み付けられる。有利には5層から30層が重ねて組み付けられ、特に15層から20層が重ねて組み付けられる。
【0030】
1つの有利な実施形態では、各層は互いに回転方向に45°ずらされて配置されて組み付けられることにより、パッケージに一続きの貫通するギャップが生じないようにされる。前記層は有利には、次の層のモノリスの角の点が、その下にある層において4つのモノリスが互いに隣接する点に載るように重ねて設けられる。
【0031】
横方向の層を組み付けるために有利なのは、以下の態様で進めることである:
まず最初に、適切にカットされた枠部材を反応器の内側シェルに取り付け、その次に、各モノリスを外部から内部に入れる。層の中央を埋める最後の4つのモノリスを一緒に挿入し、当該最後の4つのモノリスが、当該層の他の残りのモノリスをもう一度しっかり、縁部領域において反応器内壁に向かって挿入された膨張マット封止部に押し込む。
【0032】
上述の実施形態では、温度監視素子を組み付けるのが困難になってしまう。というのも、この温度監視素子は製造に起因して、モノリスの通路幅よりも大きな厚さになり、このことにより、モノリス内の通流が阻害されてしまうからである。しかし、各モノリス間の各ギャップに温度監視素子を別々に組み付け、この温度監視素子を外部に向かって膨張マット封止部内に引き出し、ここからポートを介して反応器の外側にまで繋ぐという手段がある。温度監視素子を組み付ける他の態様としては、モノリスにスルーホールを形成してサーマルスリーブを挿入し、その後、このサーマルスリーブ内にマルチ熱電対を組み付けるという態様がある。
【0033】
実施態様1a:
以下の実施態様では、モノリス通路を塞ぐことなく、温度監視のために熱電対を簡単に組み付けることができる。こうするためには、実施態様1にて説明したようにモノリスを組み付けるが、その際には、細い金属板スペーサを挿入することによって、上下に直接重なる層間に間隔が確実に空くようにする。この細い金属板スペーサは、たとえば格子の形態で組み付けられるか、または個別部品として組み付けられる。このようにして、互いに重なり合う各モノリス層間に、10mmから50mmまでの範囲の間隔が、有利には10mmから20mmまでの範囲の間隔が空くのが保証される。
【0034】
実施態様2:
実施態様2は実施態様1aに相当する。すなわち当該態様では、モノリスの複数の横方向の層が設けられ、これらの層は、スペーサにより間隔をおいて互いに重なって組み付けられている。この実施態様2が実施態様1aと相違する点は、各層のモノリスが、反応ガス混合気が通流しない側において、膨張マットまたは鉱物繊維不織布マットに挿入されていることにより、互いに封止されていることである。
【0035】
実施態様3:
実施態様3では、横方向および/または縦方向に重なった2つ以上のモノリスのモジュールを前提構成とし、このモノリスモジュールは、マンホール(立入ポート)を介して未だ反応器内に組み付け可能であるように寸法調整しなければならない。各モジュールの周面は、モノリス通路に反応ガス混合気を流すための貫通孔を開けることにより、有利には多結晶ムライト繊維から成るセラミック繊維製の、鉱物繊維不織布内または膨張マット内に包み、締付具を用いて金属製のケーシング内に挿入する。各モジュールを横方向に並べ、かつ、実施態様1aにて説明したように、金属板スペーサを挿入して、層で縦方向に重ねて配置する。
【0036】
反応器は500℃から690℃までの間の温度で、有利には550℃から620℃までの温度で動作し、反応器内の通流は下方から上方に向かって行われる。反応器の動作中には、金属の反応器スリーブはセラミックモノリスよりも大きく膨張するので、これが緩んでしまうことがある。
【0037】
それゆえ本発明では、反応器の内壁の、モノリスがある領域に、耐圧性の絶縁部が被覆され、モノリスは膨張マットを用いて、この耐圧性の絶縁部から封止される。
【0038】
内壁に絶縁被覆を施す利点は、反応器壁の温度が低下し、これにより当該反応器壁の熱膨張が小さくなることである。さらに、反応器温度が低下することにより、反応器外殻部に低コストの材料を選定することができ、膨張マットが縁部領域において発揮すべき封止性能を抑えることができる。
【0039】
実施態様1および1aのモノリスでは、その全表面を、すなわち通路内もモノリス外面も被膜しなければならない。
【0040】
セラミックモノリスのマクロ多孔構造により、ウォッシュコート層の固定が容易になる。ウォッシュコート成膜の手法は2つの手法に分けることができ、マクロ多孔性担体(一部)に、表面積が大きいウォッシュコート材料を充填することができ、または、ウォッシュコートを層として、セラミック担体の気孔内に成膜することができる。このように気孔に充填することにより、モノリスとウォッシュコートとの相互作用が最大になる。というのも、ウォッシュコート層の大部分が担体の気孔内に実際に固定し、モノリス通路の外表面にのみ結合されることがなくなるからである。このような成膜方式は、堆積される材料を溶解したもの(またはゾル)を用いて実施されるか、または、非常に小さいコロイド粒子を含む溶液を用いて実施される。気孔充填を利用した被膜の欠点は、成膜可能なコーティングの量が限られていることである。というのも、気孔はいずれ完全に充填されてしまい、ウォッシュコートにまで接触することが不可能になるからである。
【0041】
モノリスにより、炭化水素の自熱脱水素化を実施するのに有利な前提条件が実現され、特に、不規則にパッケージングされた固定床と比較して反応器の断面を狭くし、かつ、流速を速くすることを実現することができ、これにより、炭化水素を含む主流に、酸素を効率的に段階的に調量することができるようになる。このようにして、不規則にパッケージングされた固定床と比較して反応器断面が小さくなることにより、分配器にかかる機械的負荷と、混合区域の固定内容物にかかる機械的負荷との双方が小さくなる。すなわち、固定する長さが短くなることにより、分配器および混合区域の固定内容物の付着耐久力が弱くなる。さらに、不規則にパッケージングされた固定床の場合のように、反応器内における主流方向が下方向に限定されることはない。
【0042】
停止時間が長くなると、その経過後には、同刊行物にて推奨されている触媒を、通常は簡単に再生することができる。この再生のためにはたとえば、まず最初に第1の再生段において、(有利には)窒素および/または水蒸気によって希釈化した空気を300℃から600℃までの入口温度で(極端な事例では、最大750℃でも)触媒固定床内に流す。前記入口温度はしばしば、500℃から600℃であることが多い。回生ガスによる触媒への堆積量は(再生された後の触媒の総量に対して)たとえば50h−1から10,000h−1にもなることがあり、再生ガスの酸素含有率は0.5体積%から20体積%になることがある。
【0043】
その後、一般的には、その他の点では同じ条件下で、純粋な水素分子を用いて、または、水素分子を不活性ガス(有利には水蒸気および/または窒素)によって希釈化したものを用いて再生することが推奨されている(水素含有率は、1体積%以上にしなければならない)。
【0044】
横方向と縦方向とにおいて間隔をおかずに重ねられてパッケージを成す複数のモノリスは、有利には膨張マットまたは鉱物繊維不織布に包まれ、締付具を用いてケーシング内に挿入される。好適なのは、排ガス触媒用として公知である不織布等の不織布を、前記鉱物繊維不織布として使用することであり、たとえばスリーエム社(登録商標)の担持マットであるインターラム(登録商標)を用いるのが有利である。
【0045】
膨張マットは触媒排ガス洗浄分野において公知であり、たとえば独国特許出願公開第4026566号明細書に記載されている。ここで記載されている膨張マットは基本的に、とりわけバーミキュライト等の雲母を埋め込んだセラミック繊維から成る。雲母の埋め込みにより、温度上昇時には膨張マットは膨張するのが困難になり、このことにより、温度が上昇したときに膨張マットに包まれた物体を特に確実に保持することが可能となる。
【0046】
鉱物不織布または膨張マットは、熱が加わると膨張するように、かつ、通常はセラミックであるモノリスをハウジングから封止するように、特に、ハウジングにおけるモノリスの摩擦と、反応ガス混合気がハウジングの内壁において迂回して流動することとを阻止するように選定される。
【0047】
モノリスを包んだ、縁部領域にある膨張マットによって、モノリスを安定的に位置決めすることができる。というのも、モノリスは熱膨張すると張力を生ずるからである。しかし、誤った用法で使用すると、そのうち、この張力は緩和することがある。それゆえ、締付具を設けるのが有利である。
【0048】
複数のモノリスを横方向および/または縦方向に重ねたものから成るパッケージは、有利には4つ以上の部分パッケージから構成することができ、これらの各部分パッケージにはそれぞれ、金属の表面を個別に設けており、かつ、これらの部分パッケージが反応器の断面を完全に充填し、バイパス路に対して相互に封止可能であるように、前記部分パッケージを組み立てることができるように構成されている。
【0049】
上記実施形態に代えて択一的に、または上記実施形態と併用して、2つ以上の部分パッケージから成るパッケージを、その高さに組み立てることも可能である。
【0050】
好適には、取り扱いを容易にするため、上述の部分パッケージ全てを1つのハウジング内にまとめることができる。
【0051】
横方向および/または縦方向に重ねられたモノリスから成るパッケージは、とりわけ、それぞれ1つの格子台上に配置される。
【0052】
格子台は有利には、反応ガス混合気を流すための通路を塞がないように構成しなければならない。これを確実に阻止するために有利なのは、格子台に直接接する領域に設けられる1つまたは複数の層のモノリスの通路の断面を、当該格子台までの距離がより大きい他のモノリスの通路断面より格段に大きくすることである。通路間の隔壁の厚さは、上方にある通路を当該隔壁が塞がないように薄くしなければならない。
【0053】
これに代えて択一的に、格子台上に1層または複数層の金網を設けることもできる。その際には、格子台上に直接配置された層の網目を幾らか粗くし、モノリスに近い層ほど、その網目を細かくしていく。有利には、網目幅は5mmから15mmまでであり、ワイヤ径は0.2mmから2mmまでである。
【0054】
上記実施形態と併用して、または上記実施形態に代えて択一的に、格子台に直接接する領域に、開放孔の発泡セラミックから成る層を設けることができる。この発泡セラミックの通流可能な間隙の容積は、有利には70%から90%までである。
【0055】
特に好適には、格子台に直接接する領域に、高い気孔率の発泡セラミックから成る第1層を設け、その上に、厚さ50mmの複数のモノリスから構成された第2層を設けることができる。この第2層の通路の断面は、格子台からの距離がより大きい他のモノリスの通路断面よりも大きい。とりわけ、前記第1層の自由間隙の容積は約70%であり、当該第1層の高さは10mmから100mmまでの範囲内、有利には40mmから60mmまでの範囲内である。
【0056】
反応器の内壁全体に、すなわち当該反応器の全長にわたって完全に、絶縁層が設けられている。
【0057】
触媒活性区域の領域では、前記内壁の絶縁層は耐圧性であり、かつ可能な限り気密でなければならない。有利にはこの絶縁層は、触媒活性区域の領域において2層構造で構成されており、反応器の内壁に接している耐圧性の第1層と、反応器の内側スペースの方を向いた、膨張マットから成る第2層とを有する。
【0058】
有利には、反応器の内壁に設けられた前記耐圧層の間に更に、当該耐圧層より格段に薄い、膨張マットから成る他の層を設けることにより、当該耐圧層と反応器の内壁との接触が可能な限り良好になるのを保証する。
【0059】
反応器内壁の他の領域、すなわち分配器の領域と混合区域の領域とにおいては、前記絶縁層は有利には単層構造であり、反応ガス混合気が当該絶縁層内に侵入するのを防止するための金属被覆板を、耐高温性の繊維マットの、反応器の内側スペースの方を向いている側に設けたものから構成されている。前記耐高温性の繊維マットは、とりわけ多結晶のムライト繊維等である。
【0060】
脱水素化処理対象の炭化水素含有ガス流は、反応器の下端部から当該反応器内に導入され、下方から上方に向かって当該反応器内を流れていく。
【0061】
有利には、脱水素化処理対象の炭化水素含有ガス流を事前加熱する。この事前加熱は有利には、反応器において最上位の触媒活性区域の上方に配置されているかまたは当該反応器の外部に配置された熱交換器において行われる。その際には、脱水素化処理対象の炭化水素含有ガス流は供給路を介して熱交換器に導入され、当該熱交換器内において、逆流方向の反応ガス混合気により、間接的な熱交換によって加熱され、その次に、反応器の、当該熱交換器とは反対側の下端部へ導かれてここで方向転換され、ポートを介して当該反応器内へ導入され、混合区域内において酸素含有ガス流と混合され、これにより、反応器内の触媒活性区域において自熱気相脱水素反応が生じる。
【0062】
前記反応器に組み込まれる熱交換器は、とりわけ、逆流運転方式のプレート型熱交換器または管群型熱交換器とすることができる。
【0063】
管群型熱交換器は有利には、耐熱性が高い特殊鋼製、特に、材料番号が1.4541または1.4910である特殊鋼製である。管群型熱交換器の各管の両端は、管板で、有利にはギャップ無しで、背面板溶接によって挿入され、管群型熱交換器の管板の高温側に、耐熱性の特殊鋼を用いて、特に材料番号が1.4841の特殊鋼を用いてプレーティングが施される。特に有利なのは、遊動頭管板型の熱交換器である。
【0064】
有利には、脱水素化処理対象の炭化水素含有ガス流を、2つ以上の場所において熱交換器内に導入することができ、有利には、質量流量がより多い主流と、当該主流より質量流量が少ない1つまたは複数の副流として導入することができる。
【0065】
反応器を始動するために有利なのは、熱交換器をバイパス接続できるようにすることである。
【0066】
以下、反応システムの始動について、すなわち、反応システムを自熱ガス水脱水素化の反応温度まで加熱することについて説明する。
【0067】
最初は当該反応システムは、すなわち反応器、熱交換器および接続路は周辺温度であり、この反応システムを自熱ガス水脱水素化の動作温度にしなければならず、ブタン脱水素化処理の場合には約550℃にしなければならない。
【0068】
ステップ1:反応器を約200℃まで加熱する。
【0069】
前記反応システムは加熱ガスを用いて加熱される。この加熱ガスは、たとえばリサイクルガスまたは窒素とすることができ、フィードラインを介して約230℃で供給される。その際には、熱交換器は周面において短絡(バイパス接続)される。すなわち、加熱ガスは反応器内に直接流入して当該反応器を約200℃まで加熱し、その後、熱交換器の管内のみを通ってこれも加熱し、その後に反応システムから流出していく。熱交換器の管を包囲する外殻スペース内には、加熱ガスは流れない。
【0070】
ステップ2:外殻スペースを洗浄することにより、当該外殻スペースを十分に酸素不含とする。
【0071】
熱交換器の管側の出口に温度測定装置が設けられている。この温度測定装置が約200℃の温度を示すと直ちに、熱交換器のバイパス接続が中止され、加熱ガスを熱交換器内において、周面側にて逆流方向で流す。このようにして外殻スペースを洗浄する。
【0072】
ステップ3:燃焼ガスを用いて反応器内にて燃焼させて、反応システムを更に加熱する。
反応器供給路には1つまたは複数の燃焼ガス供給路が設けられており、これに、対応する混合機構が後置接続されている。燃焼ガスとして特に適しているのは、水素、希ガス、または、脱水素化処理対象の炭化水素である。特に有利なのは水素である。水素は、貴金属含有触媒コーティングにおいて、約200℃に達した時点で既に着火し、とりわけ約550℃である所要動作温度まで反応器を加熱する。こうするためには、酸素含有流、リーンエア、または特に有利には、空気を供給ガスとして供給することができる。燃焼ガスのノズル噴射部から貴金属含有触媒までの距離は、可能な限り短くしなければならない。とりわけ、反応システム内のガス組成が爆発域外になるように、特に、実際の動作条件下でデトネーション域外となるように、使用される燃焼ガスの濃度を制限しなければならない。有利には、最低燃焼ガス濃度も設定され、しかも、反応器の入口における燃焼により実現される温度上昇が、回生熱交換器内の低温の供給ガスの温度を上昇させるのに十分となるように当該最低燃焼ガス濃度を設定しなければならない。水素を燃焼ガスとして使用する場合、水素濃度を約1.4体積%とするのが特に有利である。
【0073】
有利には、前記熱交換器の他に更に、脱水素化処理対象の炭化水素含有ガス流を加熱するための1つまたは複数の追加加熱部を設ける。
【0074】
特に有利なのは、前記追加加熱部として電気ヒータを設けることである。この電気ヒータはとりわけ取り外し可能に、差込方式ヒータまたはマッフルバーナーとして、熱交換器から出た後の脱水素化処理対象の炭化水素含有ガス流内に設けられる。
【0075】
炭化水素含有ガス流は、下方からポートを介して反応器内に流入し、各触媒活性区域より上流において、固定の内容物を有する各混合区域においてそれぞれ整流され、これにより、当該混合区域より下流では、反応器断面全体において平均値との偏差は最大でも±2%となる。
【0076】
酸素含有ガス流は、相互に依存せずに調整可能な1つまたは複数の供給路を介して各混合区域内に供給され、これら各供給路はそれぞれ、1つまたは複数の分配器に供給する。
【0077】
前記分配器はとりわけ、環型分配器またはパラレルロッドディストリビュータとすることができる。
【0078】
酸素含有ガス流が炭化水素含有ガス流に入り込んだ後の滞留時間は非常に短くなければならず、特に60ms未満でなければならないので、混合の程度を向上させるために有利なのは、たとえばミキシングプレート、細長または環状の金属ストリップ等の追加装置である。
【0079】
前記酸素含有ガス流のための供給路は有利には熱補償され、保持片によって反応器壁に固定される。
【0080】
有利には、各混合区域がそれぞれ管型分配器を有し、各管型分配器は、反応器の長手方向に対して垂直な平面にて相互に平行に配置された多数の差込パイプと、相互に等間隔に配置された多数の混合部材とから成り、当該多数の差込パイプは、1つまたは複数の分配室に連通されており、かつ、相互に等間隔に配置された、差込パイプから酸素含有ガス流を流出させるための多数の出口を有する。
【0081】
特に有利なのは、前記混合部材は混合板として形成されていることである。
【0082】
本発明では、作業員が反応器内部スペース内に立ち入るために通れるように寸法調整されたマンホールすなわち立入ポートが設けられており、このマンホールは、反応器外部から前記複数の各触媒活性区域にアクセスできるようにするためのものである。このことにより、反応器が直立型の構成であることと相俟って、装置の一部を取り外す必要なく、装置外部から各触媒活性区域に個別にアクセスすることができる。マンホールを介して簡単に立ち入ることができることにより、各触媒活性パッケージと、これに対応する各格子台とを、個別に取り外したり組み付けたりすることが可能になる。
【0083】
特に時間削減になる簡単な触媒交換を保証できる、モノリスとして構成された不均一系触媒において反応ガス混合気を受け取って酸素含有ガス流を用いて炭化水素含有ガス流の自熱気相脱水素化を行うための、長手軸が縦方向になっている円筒形の反応器の実施形態は、以下の構成となっている:
・前記反応器の内部スペースに1つまたは複数の触媒活性区域が設けられており、各触媒活性区域はそれぞれ、横方向および/または縦方向に重ねられた複数のモノリスから成るパッケージを有し、各触媒活性区域より上流にはそれぞれ、固定の内容物を有する混合区域が設けられており、
・前記反応器の下端部に、脱水素化処理対象の炭化水素含有ガス流のための1つまたは複数の供給路が設けられており、
・酸素含有ガス流を前記各混合区域へ供給するための、相互に依存せずに調整可能な1つまたは複数の供給路であって、各供給路がそれぞれ1つまたは複数の分配器へ供給する1つまたは複数の供給路が設けられており、
・前記反応器の上端部に、前記自熱気相脱水素化の反応ガス混合気のための1つまたは複数の出口路が設けられており、
前記反応器の内壁には全体に絶縁層が設けられており、1つまたは複数の各触媒活性区域へアクセスするためのマンホールは設けられていないが、横方向および/または縦方向に重ねられた複数のモノリスから成るパッケージをそれぞれ含む当該1つまたは複数の各触媒活性区域は、各触媒活性区域より上流に設けられた、固定の内容物を有する混合区域と、相互に依存せずに調整可能である前記1つまたは複数の供給路と、前記1つまたは複数の分配器と共にそれぞれ、個別に着脱可能な部品を成すことにより、前記1つまたは複数の各触媒活性区域へアクセスできることが保証されている。
【0084】
前記実施形態では、たとえば、触媒の不活性化によって前記個別の部品の取り外しが必要になった場合に直ちに、前記個別の部品をそれぞれ、十分に完全に、とりわけ対応するフランジを緩めることにより、個別に取り外すことができる。その際に更に必要な作業は、必要な管継手および測定装置および調整装置を取り外すことだけである。これに応じて、触媒を構成するモノリスまたは触媒を含むモノリスを交換した後、前記個別の部品を再度取り付けることも簡単になる。
【0085】
上記実施形態では準備時間を、マンホールを介して取付が行われる同種の反応器の1/10にまで短縮することができる。
【0086】
その上、マンホールが省略されることにより、連続したモノリスパッケージ間の、触媒が無いスペースを、格段に縮小することができるので、同じ容量でより小さいサイズの反応器を構成することができ、さらに、触媒が無いスペースの容積が縮小されることにより、当該スペースにおける反応ガス混合気の滞留時間も短縮する。このような利点が奏されるのは、制御不能な副反応が生じなくなるか、または副反応が生じる規模が格段に小さくなるからである。
【0087】
本発明はさらに、上記反応器を用いて自熱気相脱水素化を行う方法も対象とする。
【0088】
有利には2つ以上の反応器を使用し、少なくとも1つの反応器を自熱気相脱水素化に使用するときには、同時に少なくとも1つの他の反応器の再生を行う。
【0089】
有利には、前記自熱気相脱水素化は、プロパン、ブタン、イソブタン、ブテンを脱水素反応させてブタジエンを生成すること、または、エチルベンゼンを脱水素反応させてスチレンを生成すること、または、エタンを脱水素反応させてエチレンを生成することである。
【0090】
反応器壁は円筒形であるから、本発明の反応器は技術的に簡単に実現することができ、また、当該円筒形の反応器壁の両端に円状板を使用することができ、これは簡単かつ低コストである。このことにより、反応器を経済的に、圧力サージ耐性に構成することができる。
【0091】
反応器外殻部の内壁全体に絶縁層が設けられていることにより、当該反応器外殻部を製造するのに用いる材料に課される要求を緩和することができ、これにより、材料にかかるコストを抑えることができる。
【0092】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0093】
図1】本発明の有利な実施形態の反応器の概略図である。
図2】本発明の他の1つの有利な実施形態の、熱交換器を組み込んだ反応器を示す図であり、図2Aは細部図である。
図3】本発明の他の1つの有利な実施形態の、熱交換器の周面のバイパス路を用いて加熱するための装置を備えた反応器を示す図である。
図4】本発明の他の1つの実施形態の、反応器の外側に縦方向に配置された熱交換器を備えた反応器を示す図である。
図5】本発明の他の1つの実施形態の、反応器の外側に横方向に配置された熱交換器を備えた反応器を示す図である。
図6】本発明の1つの有利な実施形態の反応器の一部を示す図である。
図7】フランジによって互いに結合された、下方から上方に向かって反応混合物を流す複数の個別の部品を備えている、本発明の一実施形態の反応器の概略図であり、図7Aおよび7Bは細部図である。
図8図7と同様の実施形態の反応器であるが、上方から下方に向かって反応混合物を流す、本発明の一実施形態の反応器の概略図である。
図9】熱交換器を反応器の外側において縦方向に配置した、図7と同様の実施形態の本発明の一実施形態の反応器の概略図である。
【0094】
図面中、同一の符号は同一または対応する構成を示している。
【0095】
図1の概略図は反応器1を示しており、当該反応器1の下端部において、炭化水素含有ガス流2が供給路7を介して当該反応器1に供給される。酸素を含有するガス流3が供給路9を介して各混合区域6内へ導入される。これらの各混合区域6にはそれぞれ触媒活性区域5が接続されており、各触媒活性区域5は、横方向と縦方向とに重ねられた複数のモノリス4から成る。反応ガス混合気は、反応器の上端部においてポート11を介して反応器から流出していく。
【0096】
図2に示した実施形態が図1の実施形態と相違する点は、反応器1の上端部に熱交換器が組み込まれていることである。
【0097】
図2Aの細部図に、1つの触媒活性区域5の技術的な各要素を、酸素含有ガス流3の供給路9およびマンホール12と共に示す。このマンホール12は、当該触媒活性区域5のパッケージのモノリスに確実にアクセスできるようにするためのものである。
【0098】
図3に示した実施形態は更に、熱交換器17の周面のバイパス路を用いて、反応システムを動作温度にまで加熱するための装置も含む。
【0099】
加熱ガス20は、まず最初に下方から反応器1内部を通って上方に向かって流れ、その後、熱交換器17の管内に流れる。反応器の上端部から流出するガス流の温度が約200℃に達すると直ちに、熱交換器17の周面バイパスが中止され、加熱ガスは熱交換器のケーシングスペース内にも流れる。反応器1への加熱ガスの供給管内には、更に熱交換器21が追加されて設けられている。反応システムを更に加熱するためには、混合装置23を介して燃焼ガス22を反応器1の下端部にて導入させる。
【0100】
図4は、本発明の他の1つの実施形態の、反応器1の外側に側方にて縦方向に配置された熱交換器17を備えた反応器1を示す図である。
【0101】
図5は、本発明の他の1つの実施形態の、反応器1の外側に側方にて横方向に配置された熱交換器17を備えた反応器を示す図である。
【0102】
図6の抜粋図には、反応器内壁に絶縁層が設けられている構成が示されている。この絶縁層は触媒活性区域5の領域において2層構造で設けられており、そのうちの1層は、反応器内壁に接している耐圧性材料から成る第1の層13であり、もう1層は、反応器の内側スペースの方を向いた第2の層であり、膨張マットから成る。
【0103】
その他の領域には、単層構造の絶縁層15が設けられている。この1層の絶縁層15は繊維マットから成り、反応器の内側スペースの方を向いた側に金属被覆板を備えている。
【0104】
本抜粋図には、酸素含有ガス流3が分配器10を介して供給されるのが示されており、この分配器10は、多数の差込パイプ19を反応器の長手方向に配置したものから成る。
【0105】
同図にはさらに、格子台16も示している。
【0106】
図7に示した本発明の一実施形態の反応器は、一例として3つの個別に着脱可能な部品24を有する構成となっており、また、図7Aは中間の部品24の細部を示す図であり、図7Bは下方の部品24の細部を示す図である。
【0107】
図8に示した反応器1は図7の反応器1と同様の構成であるが、反応混合物の流れ方向が逆であり、これに応じて、酸素含有ガス流3の供給路9の配置も変更している。
【0108】
図7および8に示した両反応器1は、個別に着脱可能な複数の部品24から構成されている。
【0109】
図9に示された反応器1は、図3に示した反応器1に相当するが、モノリスにアクセスするためのマンホールは設けられておらず、フランジ25を用いて各個別部品24が取り外し可能に互いに結合されている。
【符号の説明】
【0110】
1 反応器
2 炭化水素含有ガス流
3 酸素含有ガス流
4 (1つまたは複数の)モノリス
5 触媒活性区域
6 混合区域
7 ガス流2の供給路
8 外側絶縁部
9 ガス流3の供給路
10 分配器
11 出口路
12 マンホール
13 形状安定性絶縁部
14 封止部
15 保護絶縁部
16 格子台
17 熱交換器
18 ポート
19 差込パイプ
20 加熱ガス
21 追加の熱交換器
22 燃焼ガス
23 混合装置
24 部品
25 フランジ
図1
図2
図2A
図3
図4
図5
図6
図7
図7A
図7B
図8
図9