特許第6261952号(P6261952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6261952加速度・速度検出器及び加速度・速度検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261952
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】加速度・速度検出器及び加速度・速度検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/13 20060101AFI20180104BHJP
   G01H 11/02 20060101ALI20180104BHJP
   G01P 15/125 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   G01P15/13 C
   G01H11/02 C
   G01P15/125 V
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-227886(P2013-227886)
(22)【出願日】2013年11月1日
(65)【公開番号】特開2015-87340(P2015-87340A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】黒田 泰介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 敬英
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−010145(JP,A)
【文献】 特開平11−064094(JP,A)
【文献】 特開2003−004522(JP,A)
【文献】 特開2002−350459(JP,A)
【文献】 特開平11−153479(JP,A)
【文献】 特開平09−266688(JP,A)
【文献】 特開平09−121587(JP,A)
【文献】 特開2007−336792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 15/13
G01H 11/02
G01P 15/125
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度・速度検出器であって、
ばねを介してケースに支持されたおもりと、
前記ケースに対する前記おもりの変位を電気信号に変換する変位検出部と、
前記電気信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部の出力に基づいて帰還電流を生成する帰還回路と、
前記帰還電流に基づいて前記おもりに電磁気力を作用させる駆動部と、
出力信号を出力する出力部と
を具備し、
前記駆動部は、
第1駆動コイルと、
第2駆動コイルと
を備え、
前記帰還回路は、
前記増幅部の出力に基づいて前記第1駆動コイルを流れる変位帰還電流を生成する変位帰還回路と、
前記増幅部の出力に基づいて前記第2駆動コイルを流れる速度帰還電流を生成する速度帰還回路と
を備え、
前記速度帰還回路は微分回路を備え、
前記出力部は、前記変位帰還電流と前記速度帰還電流の和電流に基づいて前記出力信号を出力し、
前記出力信号の振動数が閾値振動数より高い場合、前記出力信号は速度情報を示し、
前記出力信号の振動数が前記閾値振動数より低い場合、前記出力信号は加速度情報を示し、
前記閾値振動数をf、前記加速度・速度検出器の、検出された単位加速度当たりの出力電圧である加速度感度をa、前記加速度・速度検出器の、検出された単位速度当たりの出力電圧である速度感度をvとすると、下記式:
a=v/(2πf
が成立する
加速度・速度検出器。
【請求項2】
前記増幅部の出力端子に接続された第1ノードと、
前記出力部に接続された第2ノードと
を更に具備し、
前記第1駆動コイルの一の端子は前記変位帰還回路を介して前記第1ノードに接続され、
前記第1駆動コイルの他の端子は前記第2ノードに接続され、
前記第2駆動コイルの一の端子は前記速度帰還回路を介して前記第1ノードに接続され、
前記第2駆動コイルの他の端子は前記第2ノードに接続される
請求項1に記載の加速度・速度検出器。
【請求項3】
ばねを介してケースに支持されたおもりの前記ケースに対する変位を電気信号に変換する工程と、
前記電気信号に基づいて前記おもりに電磁気力を作用させる工程と、
出力信号を生成する工程と
を具備し、
前記電磁気力は、
第1駆動コイルが発生する第1電磁気力と、
第2駆動コイルが発生する第2電磁気力と
を含み、
前記おもりに前記電磁気力を作用させる工程は、
前記電気信号を増幅して増幅信号を生成する工程と、
前記増幅信号に基づいて、前記第1駆動コイルを流れる変位帰還電流を生成する工程と、
前記増幅信号の微分に基づいて、前記第2駆動コイルを流れる速度帰還電流を生成する工程と
を含み、
前記出力信号を生成する工程は、
前記変位帰還電流と前記速度帰還電流の和電流を生成する工程と、
前記和電流に基づいて前記出力信号を生成する工程と
を含み、
前記出力信号の振動数を判定する工程と、
前記出力信号の振動数が閾値振動数より高い場合に前記出力信号から速度情報を抽出する工程と、
前記出力信号の振動数が前記閾値振動数より低い場合に前記出力信号から加速度情報を抽出する工程と
を含み、
前記閾値振動数をf、検出された単位加速度当たりの出力電圧である加速度感度をa、検出された単位速度当たりの出力電圧である速度感度をvとすると、下記式:
a=v/(2πf
が成立する
加速度・速度検出方法。
【請求項4】
加速度・速度検出器が出力信号を生成する工程と、
前記出力信号の振動数を判定する工程と、
前記出力信号の振動数が閾値振動数より高い場合に前記出力信号から速度情報を抽出する工程と、
前記出力信号の振動数が前記閾値振動数より低い場合に前記出力信号から加速度情報を抽出する工程と
を具備し、
前記加速度・速度検出器は、
ばねを介してケースに支持されたおもりと、
前記ケースに対する前記おもりの変位を電気信号に変換する変位検出部と、
前記電気信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部の出力に基づいて帰還電流を生成する帰還回路と、
前記帰還電流に基づいて前記おもりに電磁気力を作用させる駆動部と
を備え、
前記駆動部は、
第1駆動コイルと、
第2駆動コイルと
を備え、
前記帰還回路は、
前記増幅部の出力に基づいて前記第1駆動コイルを流れる変位帰還電流を生成する変位帰還回路と、
前記増幅部の出力に基づいて前記第2駆動コイルを流れる速度帰還電流を生成する速度帰還回路と
を備え、
前記速度帰還回路は微分回路を備え、
前記出力信号を生成する工程は、
前記変位帰還電流と前記速度帰還電流の和電流を生成する工程と、
前記和電流に基づいて前記出力信号を生成する工程と
を含み、
前記閾値振動数をf、前記加速度・速度検出器の、検出された単位加速度当たりの出力電圧である加速度感度をa、前記加速度・速度検出器の、検出された単位速度当たりの出力電圧である速度感度をvとすると、下記式:
a=v/(2πf
が成立する
加速度・速度検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加速度・速度検出器及び加速度・速度検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、速度と加速度の検出が可能なサーボ型振動検出器を開示している。サーボ型振動検出器は、ケースと、ケース内に設けられた駆動部と、ケースにばねを介して移動可能に設けられた振子と、振子の変位を検出する変位検出部と、変位検出部で振子の零位置からの変位が検出されたとき振子を零位置に戻す電磁気力を駆動部に生じさせる電流を供給可能なサーボアンプとを備える。サーボ型振動検出器は、変位検出部で検出された振子の変位に基づいて設定された変位フィードバック量及び速度フィードバック量を駆動部を介して加速度の入力側の比較器に変位フィードバック及び速度フィードバックとしてフィードバックさせるフィードバック回路を備える。
【0003】
フィードバック回路は、変位フィードバックと速度フィードバックとを互いに独立して行うべく、独立した2系統の回路で構成されている。独立した2系統のフィードバック回路を構成すべく、第1駆動コイルを備えた第1駆動部と、第2駆動コイルを備えた第2駆動部と、第1駆動部に対応する第1変位検出部と、第2駆動部に対応する第2変位検出部と、第1駆動部に対応する第1サーボアンプと、第2駆動部に対応する第2サーボアンプとが設けられている。第1駆動コイルの通電量から振動速度が検出でき、第2駆動コイルの通電量から振子に加えられた加速度の検出ができる。サーボ型振動検出器は、第1駆動コイルの通電量に対応する第1出力電圧を出力する速度出力部と、第2駆動コイルの通電量に対応する第2出力電圧を出力する加速度出力部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3773076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のサーボ型振動検出器では、変位検出部、サーボアンプ、及び出力部がそれぞれ2つずつ設けられているため、機器構成が複雑化するという問題点があった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、簡易な機器構成で加速度と速度の検出が可能な加速度・速度検出器及び加速度・速度検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点による加速度・速度検出器は、ばねを介してケースに支持されたおもりと、前記ケースに対する前記おもりの変位を電気信号に変換する変位検出部と、前記電気信号を増幅する増幅部と、前記増幅部の出力に基づいて帰還電流を生成する帰還回路と、前記帰還電流に基づいて前記おもりに電磁気力を作用させる駆動部と、出力信号を出力する出力部とを具備する。前記駆動部は、第1駆動コイルと、第2駆動コイルとを備える。前記帰還回路は、前記増幅部の出力に基づいて前記第1駆動コイルを流れる変位帰還電流を生成する変位帰還回路と、前記増幅部の出力に基づいて前記第2駆動コイルを流れる速度帰還電流を生成する速度帰還回路とを備える。前記速度帰還回路は微分回路を備える。前記出力部は、前記変位帰還電流と前記速度帰還電流の和電流に基づいて前記出力信号を出力する。
【0008】
本発明の第1の観点による加速度・速度検出器は、前記増幅部の出力端子に接続された第1ノードと、前記出力部に接続された第2ノードとを更に具備することが好ましい。前記第1駆動コイルの一の端子は前記変位帰還回路を介して前記第1ノードに接続される。前記第1駆動コイルの他の端子は前記第2ノードに接続される。前記第2駆動コイルの一の端子は前記速度帰還回路を介して前記第1ノードに接続される。前記第2駆動コイルの他の端子は前記第2ノードに接続される。
【0009】
本発明の第1の観点による加速度・速度検出器において、前記出力信号の振動数が閾値振動数より高い場合に前記出力信号は速度情報を示し、前記出力信号の振動数が前記閾値振動数より低い場合に前記出力信号は加速度情報を示すことが好ましい。
【0010】
本発明の第1の観点による加速度・速度検出器において、前記閾値振動数をf、前記加速度・速度検出器の加速度感度をa、前記加速度・速度検出器の速度感度をvとすると、下記式:
a=v/(2πf
が成立することが好ましい。
【0011】
本発明の第2の観点による加速度・速度検出方法は、ばねを介してケースに支持されたおもりの前記ケースに対する変位を電気信号に変換する工程と、前記電気信号に基づいて前記おもりに電磁気力を作用させる工程と、出力信号を生成する工程とを具備する。前記電磁気力は、第1駆動コイルが発生する第1電磁気力と、第2駆動コイルが発生する第2電磁気力とを含む。前記おもりに前記電磁気力を作用させる工程は、前記電気信号を増幅して増幅信号を生成する工程と、前記増幅信号に基づいて、前記第1駆動コイルを流れる変位帰還電流を生成する工程と、前記増幅信号の微分に基づいて、前記第2駆動コイルを流れる速度帰還電流を生成する工程とを含む。前記出力信号を生成する工程は、前記変位帰還電流と前記速度帰還電流の和電流を生成する工程と、前記和電流に基づいて前記出力信号を生成する工程とを含む。
【0012】
本発明の第2の観点による加速度・速度検出方法は、前記出力信号の振動数を判定する工程と、前記出力信号の振動数が閾値振動数より高い場合に前記出力信号から速度情報を抽出する工程と、前記出力信号の振動数が前記閾値振動数より低い場合に前記出力信号から加速度情報を抽出する工程とを更に具備することが好ましい。
【0013】
本発明の第3の観点による加速度・速度検出方法は、加速度・速度検出器が出力信号を生成する工程と、前記出力信号の振動数を判定する工程と、前記出力信号の振動数が閾値振動数より高い場合に前記出力信号から速度情報を抽出する工程と、前記出力信号の振動数が前記閾値振動数より低い場合に前記出力信号から加速度情報を抽出する工程とを具備する。前記加速度・速度検出器は、ばねを介してケースに支持されたおもりと、前記ケースに対する前記おもりの変位を電気信号に変換する変位検出部と、前記電気信号を増幅する増幅部と、前記増幅部の出力に基づいて帰還電流を生成する帰還回路と、前記帰還電流に基づいて前記おもりに電磁気力を作用させる駆動部とを備える。前記駆動部は、第1駆動コイルと、第2駆動コイルとを備える。前記帰還回路は、前記増幅部の出力に基づいて前記第1駆動コイルを流れる変位帰還電流を生成する変位帰還回路と、前記増幅部の出力に基づいて前記第2駆動コイルを流れる速度帰還電流を生成する速度帰還回路とを備える。前記速度帰還回路は微分回路を備える。
【0014】
前記出力信号を生成する工程は、前記変位帰還電流と前記速度帰還電流の和電流を生成する工程と、前記和電流に基づいて前記出力信号を生成する工程とを含む。前記閾値振動数をf、前記加速度・速度検出器の加速度感度をa、前記加速度・速度検出器の速度感度をvとすると、下記式:
a=v/(2πf
が成立する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易な機器構成で加速度と速度の検出が可能な加速度・速度検出器及び加速度・速度検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1にかかる加速度・速度検出器の概略構成図である。
図2】実施の形態1にかかる加速度・速度検出器のブロック線図である。
図3】実施の形態1にかかる加速度・速度検出器の振動数特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
実施の形態1にかかる加速度・速度検出器1は、振動検出器、特に地震計の用途に好適である。
【0018】
図1は、実施の形態1にかかる加速度・速度検出器1の概略構成図である。図1を参照して、加速度・速度検出器1の構成を説明する。加速度・速度検出器1は、サーボ型加速度・速度検出器として構成される。加速度・速度検出器1は、ケース10と、駆動部20と、可動部30と、変位検出部40と、増幅部50と、帰還回路60と、負荷抵抗65と、出力部66と、ノード71〜73を備える。
【0019】
可動部30は、おもり35と、ばね36と、ダンパー37を備える。おもり35は、ケース10内に移動可能に設けられる。おもり35は、ばね36及びダンパー37を介してケース10に支持される。ばね36及びダンパー37は並列に設けられている。ばね36は、おもり35を付勢する。ダンパー37は、おもり35の速度を減衰する。駆動部20は、ケース10に設けられた駆動コイル21及び22と、おもり35に設けられたマグネット25を備える。マグネット25は、例えば永久磁石である。
【0020】
変位検出部40は、おもり35に設けられた可動極板45と、ケース10に設けられた固定極板46を備える。変位検出部40は、可動極板45及び固定極板46が形成するコンデンサの静電容量に基づいて、ケース10に対するおもり35の変位を検出する。変位検出部40は、ケース10に対するおもり35の変位を電気信号に変換する。変位検出部40の出力端子は、増幅部50の入力端子に接続される。
【0021】
増幅部50は、例えば、サーボアンプである。増幅部50は、変位検出部40が出力した電気信号を増幅して増幅信号を生成する。増幅部50の出力端子はノード71に接続される。帰還回路60は、変位帰還回路61と、速度帰還回路62を備える。速度帰還回路62は、微分回路62aを備える。ノード71は、変位帰還回路61を介して駆動コイル21の一の端子に接続され、速度帰還回路62を介して駆動コイル22の一の端子に接続される。帰還回路60は、増幅部50が出力した増幅信号に基づいて帰還電流を生成する。駆動部20は、帰還電流に基づいておもり35に電磁気力を作用させる。
【0022】
ノード72は、駆動コイル21の他の端子及び駆動コイル22の他の端子に接続される。ノード72はノード73に接続される。ノード73は、負荷抵抗65を介して接地されている。出力部66はノード73に接続される。出力部66は、出力信号を出力する。
【0023】
ここで、記号mは、おもり35の質量を表す。記号kは、ばね36のばね定数を表す。記号λは、ダンパー37の減衰係数を表す。記号Acは、変位検出部40の変位・電圧変換定数を表す。記号Asは、増幅部50のゲインを表す。記号Bl1は、駆動コイル21に対応する力係数を表す。記号Bl2は、駆動コイル22に対応する力係数を表す。記号Rは、負荷抵抗65の抵抗値を表す。
【0024】
図2は、加速度・速度検出器1のブロック線図である。図2を参照して、加速度・速度検出器1の動作を説明する。記号αは、加速度・速度検出器1の入力加速度を表す。このとき、おもり35に慣性力mαが作用する。おもり35に作用する力は、可動部30の特性(ms+λs+k)により、ケース10に対するおもり35の変位yに変換される。ここで、記号sは複素数演算子である。変位検出部40は、変位・電圧変換定数Acに基づいて変位yを変位検出電圧eに変換する。増幅部50は、ゲインAsに基づいて変位検出電圧eを増幅して増幅電圧eを生成する。
【0025】
変位帰還回路61は、増幅部50が出力した増幅電圧eに基づいて、駆動コイル21を流れる変位帰還電流i1を生成する。ここで、変位帰還回路61の伝達関数がG1で表される。駆動コイル21は、変位帰還電流i1に基づいて電磁気力F1を発生する。電磁気力F1は、おもり35を平衡位置に戻すようにおもり35に作用する。
【0026】
速度帰還回路62は、増幅部50が出力した増幅電圧eの微分に基づいて、駆動コイル22を流れる速度帰還電流i2を生成する。ここで、速度帰還回路62の伝達関数がG2で表される。伝達関数G2は、微分回路62aの微分特性を含んでいる。駆動コイル22は、速度帰還電流i2に基づいて電磁気力F2を発生する。電磁気力F2は、ケース10に対するおもり35の相対速度を減衰するようにおもり35に作用する。
【0027】
ノード72は、変位帰還電流i1と速度帰還電流i2の和電流を生成する。負荷抵抗65は、和電流に基づいて出力電圧eを生成する。出力部66は、出力電圧eを出力する。ここで、変位帰還電流i1、速度帰還電流i2、負荷抵抗65の抵抗値R、及び出力電圧eについて、以下の式(1)が成立する。
=(i1+i2)R・・・(1)
【0028】
図3は、加速度・速度検出器1の振動数特性を示すグラフである。縦軸は加速度・速度検出器1の出力信号としての出力電圧e、横軸は振動数である。加速度・速度検出器1の振動数特性が実線で示されている。また、比較のために、速度帰還がない場合の振動数特性が破線で示されている。加速度・速度検出器1は、変位帰還及び速度帰還を同時に掛けることにより、加速度計測範囲と速度計測範囲を併せ持っている。換言すると、出力電圧eの振動数が閾値振動数fより高い場合に出力電圧eは速度情報を示し、出力電圧eの振動数が閾値振動数fより低い場合に出力電圧eは加速度情報を示す。具体的には、出力電圧eは、閾値振動数fより低い周波数範囲では加速度に比例し、閾値振動数fより高い周波数範囲では速度に比例する。
【0029】
したがって、出力電圧eの振動数を判定し、出力電圧eの振動数が閾値振動数fより高い場合に出力電圧eから速度情報を抽出し、出力電圧eの振動数が閾値振動数fより低い場合に出力電圧eから加速度情報を抽出する。加速度・速度検出器1は、加速度と速度の両方を検出することができる。ここで、出力電圧eを情報として記録媒体に記録し、記録された情報に基づいて出力電圧eの振動数の判定、速度情報の抽出、及び加速度情報の抽出を実行してもよい。
【0030】
尚、加速度・速度検出器1の加速度感度a、速度感度v、及び閾値振動数fの間に以下の式(2)の関係が成立する。
a=v/(2πf)・・・(2)
加速度・速度検出器1は加速度感度a及び速度感度vが予め確認(調整)してあるため、加速度感度a及び速度感度vの値から閾値振動数fを求めることができる。例えば、加速度感度aが1591.5 V/(m/s)、速度感度vが200 V(m/s)の場合、閾値振動数fは0.02 Hzである。
【0031】
上述したように、加速度・速度検出器1では、変位検出部40、増幅部50、及び出力部66がそれぞれ1つずつしか設けられていない。したがって、本実施の形態によれば、簡易な機器構成で加速度と速度の検出が可能な加速度・速度検出器及び加速度・速度検出方法が提供される。更に、本実施の形態によれば、組込み機器の小型化、消費電力の削減、及び部品点数の削減が実現される。部品点数が削減されるため、組み立て工数が削減され、低価格化が実現される。
【0032】
動電型速度検出器では固有振動数より低振動数域の速度計測ができないが、本実施の形態によれば、速度計測範囲が固有振動数より低振動数域側に拡大され、検出範囲が広帯域化される。
【0033】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、加速度・速度検出器1は、おもり35がケース10に対して直線移動する直動型でもよく、おもり35がケース10に対して回転移動する搖動型であってもよい。駆動コイル21及び22がケース10側にマグネット25がおもり35側に設けられてもよく、駆動コイル21及び22がおもり35側にマグネット25がケース10側に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…加速度・速度検出器
10…ケース
20…駆動部
21、22…駆動コイル
35…おもり
36…ばね
40…変位検出部
50…増幅部
60…帰還回路
61…変位帰還回路
62…速度帰還回路
62a…微分回路
66…出力部
71〜73…ノード
y…変位
…変位検出電圧
…増幅電圧
…出力電圧
F1、F2…電磁気力
i1…変位帰還電流
i2…速度帰還電流
…閾値振動数
a…加速度感度
v…速度感度
図1
図2
図3