【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0030】
(実施例1)
純度4NのCu原料、純度5NのTe原料を、Cu:Te=30:70(at%)の組成となるように秤量した。原料には、合成用アンプルに入る大きさのCu線材、Teショットを選択した。次に、溶解中の酸化と外部からのコンタミ防止のため、高純度石英アンプル内に原料を投入し、真空封止した。アンプル選定に際し、温度分布が小さくなるよう、さらには溶湯が均一に混じりやすいように内径80mm、長さ200mmのものを使用した。次に、合金化させるために溶解を実施した。CuとTeとが十分に反応、溶解するように1000℃で4時間保持した。その際、溶湯を均一にするために周期30Hzで搖動させた。溶解終了後は、炉内で室温まで徐冷して、鋳造インゴットを作製した。以上により、純度4Nの高純度CuTeのインゴットが得られた。
【0031】
次に、このインゴットを大気中、スタンプミルで粉砕した。スタンプミル粉砕の際、部材からの汚染を防止するために洗浄なハンマーとポットを準備した。スタンプミル粉砕を効率的に実施するため、1ポットあたりの投入量を400gとし、周期60Hzで1時間粉砕を行った。その後、90μmの篩にて分級を行い、篩下のみ回収した。なお篩上については、次バッチの処理の際に投入し、以降全量について上記処理を行った。このようにして得られた粉末に対して、酸素をさらに低減するために、これに水素還元処理を施した。水素還元は、十分酸素が低減し、ネッキングが大きく進まない条件として、還元温度325℃、保持時間6時間、水素流量5リットル/分とした。このようにしてCuTe粉の酸素含有量を680wtppmから80wtppmに低減できた。
【0032】
次に、最大粒径90μmのCuTe粉、最大粒径10μmのZr粉をCuTe:Zr=83.3:16.7(at%)の組成となるように秤量した。この原料粉を直径480mmのグラファイトダイスに充填して、ホットプレスを行い、焼結体を作製した。焼結条件は、焼結温度325℃(固相反応)、プレス圧力300kgf/cm
2、保持時間4時間とし、その後さらに、焼結温度400℃(固相反応)、プレス圧力300kgf/cm
2、保持時間4時間、焼結を行った。なお、いずれの焼結も真空雰囲気で行った。得られた焼結体について、
図1にEPMAのマッピング像を示す。
図1から焼結体組織がTeZr相とZr相とから構成されることを確認した。
【0033】
次に、この焼結体を酸素10ppm以下のAr雰囲気中で、スタンプミルで粉砕した。粉砕条件は、CuTeインゴットを粉砕したときものと同一とした。その後、90μmの篩にて分級を行い、篩下のみ回収した。なお、篩上については、次バッチの処理の際に投入し、以降全量について上記処理を行った。このようにして得られた最大粒径90μmのCuTeZr粉末と純度4N、平均粒径3μmのAlアトマイズ粉をAl:Te:Cu:Zr=40:35:15:10(at%)の組成となるように秤量した。この原料粉を直径480mmのグラファイトダイスに充填して、ホットプレスを行い、焼結体を作製した。焼結条件は、焼結温度400℃、プレス圧力300kgf/cm
2、保持時間4時間、アルゴン雰囲気とした。得られた焼結体について、
図2にEPMAのマッピング像を示す。
図2から焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。
【0034】
以上により、純度3N以上、酸素濃度3000wtppm、相対密度90%、平均粒径8μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。次に、この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、ノジュールや酸化物を原因としたマイクロアーキングが著しく低減し、パーティクル(0.2μm以上)は20個以下と、パーティクル発生率は極めて少なくなった。
【0035】
(実施例2)
CuTe粉とZr粉の混合粉の焼結温度(最高)を400℃から500℃(液相反応)に変更した以外は、実施例1と同様の条件にて焼結体を作製した。これにより、純度3N以上、酸素濃度2900wtppmm、相対密度93%、平均粒径9μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。次に、この焼結体を機械加工して作製したーゲットを実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った結果、パーティクル(0.2μm以上)は18個と極めて少なくなった。
【0036】
(実施例3)
実施例1で作製した粒径90μm以下のCuTe粉をさらにジェットミル粉砕した。粉砕後の最大粒径は5μm、酸素量は680wtppmであった。次に、実施例1と同条件で水素還元を行い、酸素濃度80wtppmの低酸素粉末を得た。このようにして作製した最大粒径5μmで酸素濃度80wtppmのCuTe粉末、最大粒径10μmで酸素濃度5100wtppmのAl粉、最大粒径10μmで酸素濃度8000wtppmのZr粉末を、実施例1と同じ組成となるよう秤量・混合した。この原料粉を直径480mmのグラファイトダイスに充填して、ホットプレスを行い、焼結体を作製した。焼結条件は、実施例1と同様に、焼結温度325℃、プレス圧力300kgf/cm
2、保持時間4時間とし、その後さらに、焼結温度400℃、プレス圧力300kgf/cm
2、保持時間4時間、アルゴン雰囲気で焼結を行った。以上により、純度3N以上、酸素濃度1900wtppmm、相対密度94%、平均粒径7μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は25個と極めて少なくなった。
【0037】
(実施例4)
Al、Te、Cu、Zrの組成比を表1に示すように変更したこと以外、実施例1と同様の条件にて焼結体を作製した。これにより、純度3N以上、酸素濃度2700wtppmm、相対密度90%、平均粒径8μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は20個と極めて少なくなった。
【0038】
(実施例5)
Al、Te、Cu、Zrの組成比を表1に示すように変更したこと以外、実施例2と同様の条件にて焼結体を作製した。これにより、純度3N以上、酸素濃度2400wtppmm、相対密度93%、平均粒径9μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は18個と極めて少なくなった。
【0039】
(実施例6)
Cu、Teの溶解時に添加元素としてGaを表1に示される組成となるように添加したこと以外、実施例3と同様の条件にて焼結体を作製した。これにより、純度3N以上、酸素濃度2800wtppmm、相対密度92%、平均粒径6μmのAl−Te−Cu−Zr合金(Gaを含有)焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、CuGa相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は39個と極めて少なくなった。
【0040】
(実施例7)
Cu、Teの溶解時に添加元素としてSを表1に示される組成となるように添加したこと以外、実施例3と同様の条件にて焼結体を作製した。これにより、純度3N以上、酸素濃度2800wtppmm、相対密度90%、平均粒径6μmのAl−Te−Cu−Zr合金(Sを含有)焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、CuS相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は21個と極めて少なくなった。
【0041】
(実施例8)
CuTe粉、Zr粉、Al粉の焼結時に添加元素としてTi粉を表1に示される組成となるように添加したこと以外、実施例3と同様の条件にて焼結体を作製した。このとき、Ti粉は、最大粒径10μm、酸素濃度7900wtppmであった。これにより、純度3N以上、酸素濃度2600wtppmm、相対密度95%、平均粒径8μmのAl−Te−Cu−Zr合金(Tiを含有)焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相、Ti相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は27個と極めて少なくなった。
【0042】
(実施例9)
Cu、Teの溶解時に添加元素としてGeを表1に示される組成となるように添加し、さらに、CuGeTe粉、Zr粉、Al粉の焼結時に添加元素としてC粉を表1に示される組成となるように添加したこと以外、実施例3と同様の条件にて焼結体を作製した。このとき、Ti粉は、最大粒径2μm、酸素濃度3100wtppmであった。これにより、純度3N以上、酸素濃度2700wtppmm、相対密度91%、平均粒径9μmのAl−Te−Cu−Zr合金(Ge、Cを含有)焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、C相、CuAl相、GeTe相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は16個と極めて少なくなった。
【0043】
(実施例10)
Cu、Teの溶解時に添加元素としてSeを表1に示される組成となるように添加し、さらに、CuSeTe粉、Al粉、Zr粉の焼結時に添加元素としてSi粉を表1に示される組成となるように添加したこと以外、実施例3と同様の条件にて焼結体を作製した。このとき、Si粉は、最大粒径2μm、酸素濃度1600wtppmであった。これにより、純度3N以上、酸素濃度2900wtppmm、相対密度91%、平均粒径7μmのAl−Te−Cu−Zr合金(Se、Siを含有)焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、Si相、SeTeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は33個と極めて少なくなった。
【0044】
(比較例1)
平均粒径40μmで酸素濃度100wtppmのCu粉、平均粒径30μmで酸素濃度100wtppmのTe粉、平均粒径40μmで酸素濃度8000wtppmのZr粉、平均粒径40μmで酸素濃度100wtppmのAl粉を、実施例1と同じ組成となるよう秤量・混合した。この原料粉を直径480mmのグラファイトダイスに充填して、ホットプレスを行い、焼結体を作製した。焼結条件は、焼結温度370℃、プレス圧力300kgf/cm
2、保持時間4時間、アルゴン雰囲気で焼結を行った。以上により、純度3N以上、酸素濃度2600wtppmm、相対密度95%、平均粒径7μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、Cu相、CuTe相、CuTeZr相、TeZr相及びZrとから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は468個と著しく増加していた。
【0045】
(比較例2)
CuTeZr粉とAl粉の混合粉の焼結温度(最高)を400℃から370℃に変更したこと以外、実施例1と同様の条件にて焼結体を作製した。これにより、純度3N以上、酸素濃度3600wtppmm、相対密度83%、平均粒径9μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は221個と増加した。
【0046】
(比較例3)
CuTeZr焼結体を酸素10ppm以下のAr雰囲気で粉砕後、30分間大気中に放置した。その結果、酸素濃度が450wtppmから820wtppmに増加した。このCuTeZr粉を原料粉としたこと以外は、実施例1と同様の条件にて焼結体を作製した。これにより、純度3N以上、酸素濃度3600wtppmm、相対密度95%、平均粒径8μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は309個と増加した。
【0047】
(比較例4)
Al、Te、Cu、Zrの組成比を表1に示すように変更したこと以外、実施例1と同様の条件にて焼結体を作製した。これにより、純度3N以上、酸素濃度3000wtppmm、相対密度90%、平均粒径8μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は54個と少なくなった。しかし、このような組成では、十分なデバイス特性を得ることができなかった。
【0048】
(比較例5)
Al、Te、Cu、Zrの組成比を表1に示すように変更したこと以外、実施例1と同様の条件にて焼結体を作製した。これにより、純度3N以上、酸素濃度2600wtppmm、相対密度92%、平均粒径5μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は35個と少なくなった。しかし、このような組成では、十分なデバイス特性を得ることができなかった。
【0049】
(比較例6)
原料粉であるCuGaTe粉、Zr粉、Al粉の最大粒径を150μmに変更したこと以外は、実施例6と同様の条件にて焼結体を作製した。これにより、純度3N以上、酸素濃度2700wtppmm、相対密度93%、平均粒径15μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は134個と増加した。
【0050】
【表1】