特許第6262332号(P6262332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6262332Al−Te−Cu−Zr合金からなるスパッタリングターゲット及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262332
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】Al−Te−Cu−Zr合金からなるスパッタリングターゲット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20180115BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20180115BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20180115BHJP
   B22F 3/14 20060101ALI20180115BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20180115BHJP
   H01L 21/8239 20060101ALI20180115BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20180115BHJP
   H01L 45/00 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   C23C14/34 A
   C22C21/00 N
   B22F1/00 N
   B22F1/00 R
   B22F1/00 L
   B22F3/14 D
   B22F9/04 C
   H01L27/105 448
   H01L45/00 A
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-510100(P2016-510100)
(86)(22)【出願日】2015年2月6日
(86)【国際出願番号】JP2015053326
(87)【国際公開番号】WO2015146311
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2016年9月8日
(31)【優先権主張番号】特願2014-69142(P2014-69142)
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 一輝
(72)【発明者】
【氏名】小井土 由将
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−142543(JP,A)
【文献】 特開2011−124511(JP,A)
【文献】 特開2011−26679(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/026924(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/035695(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34−14/46
C22C 21/00−21/18
C22C 30/02
H01L 27/105−27/11597
H01L 45/00−45/02
H01L 49/00−49/02
B22F 1/00−1/02
B22F 3/14−3/15
B22F 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Teを20at%〜40at%含有し、Cuを5at〜20at%含有し、Zrを5at〜15at%含有し、残部がAlからなり、ターゲット組織中に、Te相、Cu相及びCuTe相が存在しないことを特徴とするAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲット。
【請求項2】
ターゲット組織中に、Al相、CuAl相、TeZr相及びZr相が存在することを特徴とする請求項1記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲット。
【請求項3】
平均粒径が10μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲット。
【請求項4】
純度が3N以上であり、酸素含有量が3000wtppm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲット。
【請求項5】
Si、C、Ti、Hf、V、Nb、Ta、ランタノイド元素、Ge、Zn、Co、Ni、Fe、Mg、Ga、S、Seから選択されるいずれか一種以上に元素を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲット。
【請求項6】
相対密度が90%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲット。
【請求項7】
Cu原料とTe原料を溶解してCuTe合金インゴットを作製する工程、CuTe合金インゴットを粉砕した後、CuTe粉砕粉とZr原料粉をホットプレスしてCuTeZr合金を作製する工程、CuTeZr合金を粉砕した後、CuTeZr粉砕粉とAl原料粉をホットプレスしてCuTeZrAl合金を作製する工程、からなることを特徴とするAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットの製造方法
【請求項8】
CuTe粉砕粉とZr原料粉を300℃〜400℃の温度でホットプレスして、CuTeZr合金を作製することを特徴とする請求項7記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項9】
CuTe粉砕粉とZr原料粉を400℃〜600℃の温度でホットプレスして、CuTeZr合金を作製することを特徴とする請求項7記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項10】
CuTeZr合金を粉砕する工程において、不活性雰囲気又は真空状態で合金を粉砕することを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項11】
Cu原料とTe原料を溶解してCuTe合金インゴットを作製する工程、CuTe合金インゴットを粉砕した後、CuTe粉砕粉とZr原料粉とAl原料粉をホットプレスしてCuTeZrAl合金を作製する工程、からなることを特徴とするAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項12】
CuTe粉砕粉とZr原料粉とAl原料粉を300℃〜600℃の温度でホットプレスしてCuTeZrAl合金を作製することを特徴とする請求項11記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項13】
平均粒径が0.1〜10μmのCuTe粉砕粉、平均粒径が0.1〜10μmのZr原料粉、平均粒径が0.1〜10μmのAl原料粉を用いることを特徴とする請求項7〜12のいずれか一項に記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項14】
CuTe粉砕粉を水素還元することを特徴とする請求項7〜13のいずれか一項に記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項15】
CuTe合金を粉砕する工程において、不活性雰囲気又は真空状態で合金を粉砕することを特徴とする請求項7〜14のいずれか一項に記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Al−Te−Cu−Zr合金からなるスパッタリングターゲット及びその製造方法、特に抵抗変化型材料であるAl−Te−Cu−Zr合金からなる薄膜を形成するためのAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抵抗変化型記録材料として、抵抗変化を利用して情報を記録するTe−Al系材料やTe−Zr系材料からなる薄膜が用いられている。これらの材料からなる薄膜を形成する方法としては、真空蒸着法やスパッタリング法などの一般に物理蒸着法と言われている手段によって行われるのが普通である。特に、操作性や成膜の安定性からマグネロトンスパッタリング法を用いて形成することが多い。
【0003】
スパッタリング法による薄膜の形成は、陰極に設置したターゲットにアルゴンイオンなどの正イオンを物理的に衝突させ、その衝突エネルギーでターゲットを構成する材料を放出させて、対面している陰極側の基板にターゲット材料とほぼ同組成の膜を積層することによって行われる。スパッタリング法による成膜は、処理時間や供給電力等を調整することによって、安定した成膜速度でオングストローム単位の薄い膜から数十μmの厚い膜まで形成できるという特徴を有している。
【0004】
抵抗変化型記録材料であるTe−Al系などの合金膜を形成する場合に、特に問題となるのは、スパッタリング時にターゲット表面にノジュールが発生して、パーティクルやアーキングの原因になることである。特に、Al−Te−Cu−Zr合金ターゲットは、成膜速度の異なる多数の金属成分から構成されているため、ノジュールの発生頻度が多く、パーティクルの発生量も多いという問題があった。そして、このようなターゲットやスパッタリングの際の問題は、記録媒体である薄膜の品質を低下させる大きな原因となっている。
【0005】
従来のTe−Al系スパッタリング用ターゲットとして、例えば、特許文献1には、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、並びに、ランタノイド元素の元素群から選ばれる1種以上の高融点金属元素と、Al、Ge、Zn、Co、Cu、Ni、Fe、Si、Mg、Gaから選ばれる1種以上の元素と、S、Se、Teから選ばれる1種以上のカルコゲン元素とを含むターゲットが開示されている。また、その製造方法として、AlCuZr合金インゴットを作製した後、この合金インゴットを粉砕して、合金粉末とし、この合金粉末にTe粉末と、Ge粉末とを混合して、焼結されることにより、AlCuGeTeZrターゲット材を製造することが開示されている(実施例1参照)。
【0006】
Te−Al系合金からなる焼結体を作製する場合、AlとTeが合金化すると非常に活性でハンドリングが困難なAl−Teが生成されてしまうことがあった。また、Teの蒸気圧が大きいため、高融点のZrとの合成では、組成ずれを生じてしまうことがあった(1000℃におけるTeの蒸気圧100kPa、Zrの蒸気圧1kPa以下)。さらに、構成相のスパッタレート差が大きいため、成膜速度が不均一となって、スパッタリングターゲットの表面にノジュールが形成され、また、それに起因してパーティクルが発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−26679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上記の諸問題点の解決、特にスパッタリングの際の、パーティクルの発生、ノジュールの発生等を効果的に抑制し、さらにターゲット中に含まれる酸素を減少させることのできるAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲット及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明者は鋭意研究を行った結果、スパッタリングターゲットを構成する相のスパッタレート差を小さくすることで、成膜速度を均一とし、また結晶粒を微細化し、さらには酸素の含有量を低減することで、パーティクルの発生、ノジュールの発生を抑制することが可能となり、成膜時の歩留まりを向上できることを見出した。
【0010】
このような知見に基づき、本発明は、
1)Teを20at%〜40at%含有し、Cuを5at〜20at%含有し、Zrを5at%〜15at%含有し、残部がAlからなり、ターゲット組織中に、Te相、Cu相及びCuTe相が存在しないことを特徴とするAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲット、
2)ターゲット組織中に、Al相、CuAl相、TeZr相及びZr相が存在することを特徴とする上記1)記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲット、
3)平均粒径が10μm以下であることを特徴とする上記1)又は2)記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲット、
4)純度が3N以上であり、酸素含有量が3000wtppm以下であることを特徴とする上記1)〜3)のいずれか一に記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲット、
5)Si、C、Ti、Hf、V、Nb、Ta、ランタノイド元素、Ge、Zn、Co、Ni、Fe、Mg、Ga、S、Seから選択されるいずれか一種以上に元素を含有することを特徴とする上記1)〜4)のいずれか一に記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲット、
6)相対密度が90%以上であることを特徴とする上記1)〜5)のいずれか一に記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲット、を提供する。
【0011】
また、本発明は、
7)Cu原料とTe原料を溶解してCuTe合金インゴットを作製する工程、CuTe合金インゴットを粉砕した後、CuTe粉砕粉とZr原料粉をホットプレスしてCuTeZr合金を作製する工程、CuTeZr合金を粉砕した後、CuTeZr粉砕粉とAl原料粉をホットプレスしてCuTeZrAl合金を作製する工程、からなることを特徴とするAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットの製造方法、
8)CuTe粉砕粉とZr原料粉を300℃〜400℃の温度でホットプレスして、CuTeZr合金を作製することを特徴とする上記7)記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットの製造方法、
9)CuTe粉砕粉とZr原料粉を400℃〜600℃の温度でホットプレスして、CuTeZr合金を作製することを特徴とする上記7)記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットの製造方法、
10)CuTeZr合金を粉砕する工程において、不活性雰囲気又は真空状態で合金を粉砕することを特徴とする上記7)〜9)のいずれか一に記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットの製造方法、
11)Cu原料とTe原料を溶解してCuTe合金インゴットを作製する工程、CuTe合金インゴットを粉砕した後、CuTe粉砕粉とZr原料粉とAl原料粉をホットプレスしてCuTeZrAl合金を作製する工程、からなることを特徴とするAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットの製造方法、
12)CuTe粉砕粉とZr原料粉とAl原料粉を300℃〜600℃の温度でホットプレスしてCuTeZrAl合金を作製することを特徴とする上記11)記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットの製造方法、
13)平均粒径が1〜10μmのCuTe粉砕粉、平均粒径が1〜10μmのZr原料粉、平均粒径が1〜10μmのAl原料粉を用いることを特徴とする上記6)〜12)のいずれか一に記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットの製造方法、
14)CuTe粉砕粉を水素還元することを特徴とする上記6)〜13)のいずれか一に記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットの製造方法、
15)CuTe合金を粉砕する工程において、不活性雰囲気又は真空状態で合金を粉砕することを特徴とする上記6)〜14)のいずれか一に記載のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットの製造方法、を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のAl−Te−Cu−Zr合金焼結体スパッタリングターゲットは、スパッタレートの大きいTeとCuを、スパッタレートの小さいAlとZrと合金化させることで、成膜速度を均一化することができ、また、結晶粒が微細化され、酸素含有量が低減されているので、これらを起点とするパーティクルやノジュールの発生を抑制することができるという優れた効果を有する
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の焼結体のFE−EPMAを用いて得られた元素マッピングである。
図2】実施例2の焼結体のFE−EPMAを用いて得られた元素マッピングである。
図3】スパッタリングターゲットのFE−EPMAによる観察個所を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットは、Teを20at%〜40at%含有し、Cuを5at〜20at%含有し、Zrを5at〜15at%含有し、残部がAlからなる構成される。それぞれの組成範囲は、抵抗変化型記録材料としての特性が得られるように定められている。本発明の合金ターゲットは、主成分をAl、Te、Cu、Zrとするもので、記録材料としての諸特性を向上させるために、他の成分を添加することも可能である。
【0015】
本発明のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットは、その組織中に、Te相、Cu相及びCuTe相が存在しないことを特徴とする。Te相、Cu相、CuTe相はスパッタされやすく、成膜速度が速くなるため、このような相が存在しないことで、ターゲット全体における成膜速度を均一にすることができる。また、CuTe相は、前述した通り、非常に活性であるため、このような相が存在しないことで取扱いを容易にすることができる。ここで、「Te相、Cu相及びCuTe相が存在しない」とは、EPMAで2000倍の視野を観察したマッピング像において、各相の面積率が5%未満である場合を意味する。また、偏析の可能性を考慮して、EPMAによる観察個所は、図3に示すような複数の個所とし、少なくともその半数以上の個所において、各相の面積率が5%未満であればよい。
【0016】
本発明のスパッタリングターゲットは、その組織中に、Al相、CuAl相、TeZr相及びZr相が存在することが好ましい。このようにターゲットの構成相間のスパッタレート差を低減することにより成膜速度をより均一にすることができ、それによって、ノジュールの発生やパーティクルの発生を著しく低減することができる。なお、これらの存在は、EPMAによる組織観察によって、確認することができる。
【0017】
本発明のスパッタリングターゲットにおいては、平均粒径が10μm以下であることが好ましい。成膜速度が異なる相から構成される複合材の場合、結晶粒径を小さくすることで、スパッタリングターゲット表面の起伏を低減することができ、これによりノジュールの発生を低減することが可能となる。なお、後述するようにスパッタリングターゲットの結晶粒径は、原料粉末の粒径調整だけでなく、合金インゴットの粉砕条件、ホットプレス条件などによっても、大きく変動するものである。
【0018】
また、本発明のスパッタリングターゲットは、酸素含有量が3000wtppm以下であることが好ましい。このように酸素含有量を低減することにより、それに起因するパーティクルの発生を抑制することができ、さらには、抵抗変化型メモリーなどのデバイスの特性を向上させることが可能となる。また、不純物元素の存在は、デバイス特性を低下させることから、スパッタリングターゲットの純度を3N(99.9%)以上とすることがより好ましい。
【0019】
本発明のスパッタリングターゲットは、主成分をAl、Te、Cu、Zrを主成分とするものであるが、抵抗変化型メモリーなどのデバイスの特性を調整するために、他の成分を添加することができる。例えば、Si、C、Ti、Hf、V、Nb、Ta、ランタノイド元素、Ge、Zn、Co、Ni、Fe、Mg、Ga、S、Seから選択されるいずれか一種以上に元素を添加することができる。これらの添加物は、好ましくは0.1wt%〜5.0wt%で添加することで、デバイス性能を向上させることができる。
【0020】
本発明のスパッタリングターゲットの相対密度は、90%以上であることが好ましい。このような高密度ターゲットを用いることで、良好なスパッタリングを実現することができる。本発明における相対密度は、次式から算出するものとする。
相対密度={(焼結体の密度)/(理論密度)}×100
但し、前記焼結体密度は、焼結体の寸法をノギスで測長し、その体積と測定重量から算出し、理論密度は、下記に示すように、原料の単体密度それぞれに、混合質量比を掛け、得られた値を合計して求める
理論密度=Σ{(各原料の理論密度×混合比)+(各原料の理論密度×混合比)+・・・}
【0021】
本発明のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットは、例えば、以下の方法で作製することができる。
【0022】
(CuTeの合成)
まず、Cu原料、Te原料を準備し、これらの原料を所望の組成比となるように秤量する。次に、これらの原料を石英アンプルに投入し、真空封止を行った後、搖動式合成炉にて合成処理を行う。溶解温度は、CuとTeが十分に溶解するように、1000〜1300℃、とするのが好ましい。溶解後は炉内で冷却する。このとき得られる焼結体の組織は、CuTe相とTe相から構成される。なお、CuTeZrを一度に合成することも考えられるが、Teの蒸気圧が高く、組成ずれを起こすことから、まずCuTeを作製し、その後、Zrを添加することでCuTeZrの合成を行うことが好ましい。
【0023】
次に、合成が完了したCuTe焼結体を粉砕する。粉砕は、スタンプミル、ボールミル、振動ミル、ピンミル、ハンマーミル、ジェットミルなど一般的なものを使用することができる。粉砕粉の酸化を効果的に防止するため、好ましくは真空又は不活性雰囲気で処理することが望ましい。真空又は不活性雰囲気で処理することができない場合には、その後に水素還元することで、酸素含有量を低減することができる。そして、このようにして粉砕したCuTe粉砕粉は篩を用いて粒径0.1〜10μmとすることができる。
【0024】
(CuTeZrの合成)
CuTe粉とZr粉を所望の組成比で混合し、ホットプレスにより焼結、合成する。焼結温度は、固相合成する場合には、300〜400℃とし、液相合成する場合には、400〜600℃(但し、400℃は含まない)とすることができる。また、Zr粉の粒径は、TeとZrとの反応を促進させるために、0.1〜10μmとすることが好ましい。次に、合成が完了したCuTeZr焼結体を粉砕する。粉砕は、前記と同様一般的なものを使用することができる。CuTeZrは水素還元による酸素含有量の低減は難しいため、粉砕粉の酸化を防止するため、真空又は不活性雰囲気で処理することが望ましい。このとき得られる焼結体の組織は、CuTe相、TeZr相及びZr相から構成される。その後、CuTeZrの粉砕粉は、篩を用いて、0.1〜10μmとすることができる。
【0025】
(CuTeZrAlの合成)
CuTeZr粉とAl粉を所望の組成比で混合し、ホットプレスにより焼結、合成する。焼結温度は、CuTeZrとAlとの合成反応を行うために、300〜600℃とするのが好ましい。また、Al粉の粒径は、CuTeZrとの反応を促進させるために0.1〜10μmとすることが好ましい。これにより、Al相、CuAl相、TeZr相及びZr相からなる組織の焼結体を得ることができる。
【0026】
上記の方法以外に、CuTe粉、Zr粉、Al粉を所望の組成比で混合し、300〜600℃の温度でホットプレスして、焼結、合成することができる。CuTeZrを合成してしまうと、前述の通り、水素還元による酸素の低減が図れないため、CuTeZrの合成とCuTeZrAlの合成を一体化し、プロセスを簡略化することにより、酸素混入を効果的に抑制することができる。このような方法で作製した場合でも、得られる焼結体の組織は、Al相、CuAl相、TeZr相及びZr相から構成される。
【0027】
(他の成分の添加)
デバイス性能を向上させるために上記に掲げた添加元素は、以下の工程で添加することが好ましい。Ge、Ga、S、Se及びZnについては、融点が低いため容易に合成ができ、さらに比較的活性が低いため、Cu、Teを溶解するときに、併せて添加することが好ましい。C、Ti、Hf、V、Nb、Ta、ランタノイド元素及びMgについては、融点が高いため合成が難しく、さらに活性が高く脱酸素が困難であるため、CuTe粉にZr粉やAl粉を混合するときに、併せて添加することが好ましい。この他のSi、Co、Ni、Feなどについては、前記いずれの工程においても、適宜添加することができる。
【0028】
以上の方法で合成したCuTeZrAl焼結体、また、他の成分を添加した焼結体を必要に応じて切削、研磨などの機械加工を用いて、所定の形状のスパッタリングターゲットを作製することができる。これにより、上述した特徴を有する本発明のAl−Te−Cu−Zr合金スパッタリングターゲットを作製することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0030】
(実施例1)
純度4NのCu原料、純度5NのTe原料を、Cu:Te=30:70(at%)の組成となるように秤量した。原料には、合成用アンプルに入る大きさのCu線材、Teショットを選択した。次に、溶解中の酸化と外部からのコンタミ防止のため、高純度石英アンプル内に原料を投入し、真空封止した。アンプル選定に際し、温度分布が小さくなるよう、さらには溶湯が均一に混じりやすいように内径80mm、長さ200mmのものを使用した。次に、合金化させるために溶解を実施した。CuとTeとが十分に反応、溶解するように1000℃で4時間保持した。その際、溶湯を均一にするために周期30Hzで搖動させた。溶解終了後は、炉内で室温まで徐冷して、鋳造インゴットを作製した。以上により、純度4Nの高純度CuTeのインゴットが得られた。
【0031】
次に、このインゴットを大気中、スタンプミルで粉砕した。スタンプミル粉砕の際、部材からの汚染を防止するために洗浄なハンマーとポットを準備した。スタンプミル粉砕を効率的に実施するため、1ポットあたりの投入量を400gとし、周期60Hzで1時間粉砕を行った。その後、90μmの篩にて分級を行い、篩下のみ回収した。なお篩上については、次バッチの処理の際に投入し、以降全量について上記処理を行った。このようにして得られた粉末に対して、酸素をさらに低減するために、これに水素還元処理を施した。水素還元は、十分酸素が低減し、ネッキングが大きく進まない条件として、還元温度325℃、保持時間6時間、水素流量5リットル/分とした。このようにしてCuTe粉の酸素含有量を680wtppmから80wtppmに低減できた。
【0032】
次に、最大粒径90μmのCuTe粉、最大粒径10μmのZr粉をCuTe:Zr=83.3:16.7(at%)の組成となるように秤量した。この原料粉を直径480mmのグラファイトダイスに充填して、ホットプレスを行い、焼結体を作製した。焼結条件は、焼結温度325℃(固相反応)、プレス圧力300kgf/cm、保持時間4時間とし、その後さらに、焼結温度400℃(固相反応)、プレス圧力300kgf/cm、保持時間4時間、焼結を行った。なお、いずれの焼結も真空雰囲気で行った。得られた焼結体について、図1にEPMAのマッピング像を示す。図1から焼結体組織がTeZr相とZr相とから構成されることを確認した。
【0033】
次に、この焼結体を酸素10ppm以下のAr雰囲気中で、スタンプミルで粉砕した。粉砕条件は、CuTeインゴットを粉砕したときものと同一とした。その後、90μmの篩にて分級を行い、篩下のみ回収した。なお、篩上については、次バッチの処理の際に投入し、以降全量について上記処理を行った。このようにして得られた最大粒径90μmのCuTeZr粉末と純度4N、平均粒径3μmのAlアトマイズ粉をAl:Te:Cu:Zr=40:35:15:10(at%)の組成となるように秤量した。この原料粉を直径480mmのグラファイトダイスに充填して、ホットプレスを行い、焼結体を作製した。焼結条件は、焼結温度400℃、プレス圧力300kgf/cm、保持時間4時間、アルゴン雰囲気とした。得られた焼結体について、図2にEPMAのマッピング像を示す。図2から焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。
【0034】
以上により、純度3N以上、酸素濃度3000wtppm、相対密度90%、平均粒径8μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。次に、この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、ノジュールや酸化物を原因としたマイクロアーキングが著しく低減し、パーティクル(0.2μm以上)は20個以下と、パーティクル発生率は極めて少なくなった。
【0035】
(実施例2)
CuTe粉とZr粉の混合粉の焼結温度(最高)を400℃から500℃(液相反応)に変更した以外は、実施例1と同様の条件にて焼結体を作製した。これにより、純度3N以上、酸素濃度2900wtppmm、相対密度93%、平均粒径9μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。次に、この焼結体を機械加工して作製したーゲットを実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った結果、パーティクル(0.2μm以上)は18個と極めて少なくなった。
【0036】
(実施例3)
実施例1で作製した粒径90μm以下のCuTe粉をさらにジェットミル粉砕した。粉砕後の最大粒径は5μm、酸素量は680wtppmであった。次に、実施例1と同条件で水素還元を行い、酸素濃度80wtppmの低酸素粉末を得た。このようにして作製した最大粒径5μmで酸素濃度80wtppmのCuTe粉末、最大粒径10μmで酸素濃度5100wtppmのAl粉、最大粒径10μmで酸素濃度8000wtppmのZr粉末を、実施例1と同じ組成となるよう秤量・混合した。この原料粉を直径480mmのグラファイトダイスに充填して、ホットプレスを行い、焼結体を作製した。焼結条件は、実施例1と同様に、焼結温度325℃、プレス圧力300kgf/cm、保持時間4時間とし、その後さらに、焼結温度400℃、プレス圧力300kgf/cm、保持時間4時間、アルゴン雰囲気で焼結を行った。以上により、純度3N以上、酸素濃度1900wtppmm、相対密度94%、平均粒径7μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は25個と極めて少なくなった。
【0037】
(実施例4)
Al、Te、Cu、Zrの組成比を表1に示すように変更したこと以外、実施例1と同様の条件にて焼結体を作製した。これにより、純度3N以上、酸素濃度2700wtppmm、相対密度90%、平均粒径8μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は20個と極めて少なくなった。
【0038】
(実施例5)
Al、Te、Cu、Zrの組成比を表1に示すように変更したこと以外、実施例2と同様の条件にて焼結体を作製した。これにより、純度3N以上、酸素濃度2400wtppmm、相対密度93%、平均粒径9μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は18個と極めて少なくなった。
【0039】
(実施例6)
Cu、Teの溶解時に添加元素としてGaを表1に示される組成となるように添加したこと以外、実施例3と同様の条件にて焼結体を作製した。これにより、純度3N以上、酸素濃度2800wtppmm、相対密度92%、平均粒径6μmのAl−Te−Cu−Zr合金(Gaを含有)焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、CuGa相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は39個と極めて少なくなった。
【0040】
(実施例7)
Cu、Teの溶解時に添加元素としてSを表1に示される組成となるように添加したこと以外、実施例3と同様の条件にて焼結体を作製した。これにより、純度3N以上、酸素濃度2800wtppmm、相対密度90%、平均粒径6μmのAl−Te−Cu−Zr合金(Sを含有)焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、CuS相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は21個と極めて少なくなった。
【0041】
(実施例8)
CuTe粉、Zr粉、Al粉の焼結時に添加元素としてTi粉を表1に示される組成となるように添加したこと以外、実施例3と同様の条件にて焼結体を作製した。このとき、Ti粉は、最大粒径10μm、酸素濃度7900wtppmであった。これにより、純度3N以上、酸素濃度2600wtppmm、相対密度95%、平均粒径8μmのAl−Te−Cu−Zr合金(Tiを含有)焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相、Ti相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は27個と極めて少なくなった。
【0042】
(実施例9)
Cu、Teの溶解時に添加元素としてGeを表1に示される組成となるように添加し、さらに、CuGeTe粉、Zr粉、Al粉の焼結時に添加元素としてC粉を表1に示される組成となるように添加したこと以外、実施例3と同様の条件にて焼結体を作製した。このとき、Ti粉は、最大粒径2μm、酸素濃度3100wtppmであった。これにより、純度3N以上、酸素濃度2700wtppmm、相対密度91%、平均粒径9μmのAl−Te−Cu−Zr合金(Ge、Cを含有)焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、C相、CuAl相、GeTe相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は16個と極めて少なくなった。
【0043】
(実施例10)
Cu、Teの溶解時に添加元素としてSeを表1に示される組成となるように添加し、さらに、CuSeTe粉、Al粉、Zr粉の焼結時に添加元素としてSi粉を表1に示される組成となるように添加したこと以外、実施例3と同様の条件にて焼結体を作製した。このとき、Si粉は、最大粒径2μm、酸素濃度1600wtppmであった。これにより、純度3N以上、酸素濃度2900wtppmm、相対密度91%、平均粒径7μmのAl−Te−Cu−Zr合金(Se、Siを含有)焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、Si相、SeTeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は33個と極めて少なくなった。
【0044】
(比較例1)
平均粒径40μmで酸素濃度100wtppmのCu粉、平均粒径30μmで酸素濃度100wtppmのTe粉、平均粒径40μmで酸素濃度8000wtppmのZr粉、平均粒径40μmで酸素濃度100wtppmのAl粉を、実施例1と同じ組成となるよう秤量・混合した。この原料粉を直径480mmのグラファイトダイスに充填して、ホットプレスを行い、焼結体を作製した。焼結条件は、焼結温度370℃、プレス圧力300kgf/cm、保持時間4時間、アルゴン雰囲気で焼結を行った。以上により、純度3N以上、酸素濃度2600wtppmm、相対密度95%、平均粒径7μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、Cu相、CuTe相、CuTeZr相、TeZr相及びZrとから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は468個と著しく増加していた。
【0045】
(比較例2)
CuTeZr粉とAl粉の混合粉の焼結温度(最高)を400℃から370℃に変更したこと以外、実施例1と同様の条件にて焼結体を作製した。これにより、純度3N以上、酸素濃度3600wtppmm、相対密度83%、平均粒径9μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は221個と増加した。
【0046】
(比較例3)
CuTeZr焼結体を酸素10ppm以下のAr雰囲気で粉砕後、30分間大気中に放置した。その結果、酸素濃度が450wtppmから820wtppmに増加した。このCuTeZr粉を原料粉としたこと以外は、実施例1と同様の条件にて焼結体を作製した。これにより、純度3N以上、酸素濃度3600wtppmm、相対密度95%、平均粒径8μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は309個と増加した。
【0047】
(比較例4)
Al、Te、Cu、Zrの組成比を表1に示すように変更したこと以外、実施例1と同様の条件にて焼結体を作製した。これにより、純度3N以上、酸素濃度3000wtppmm、相対密度90%、平均粒径8μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は54個と少なくなった。しかし、このような組成では、十分なデバイス特性を得ることができなかった。
【0048】
(比較例5)
Al、Te、Cu、Zrの組成比を表1に示すように変更したこと以外、実施例1と同様の条件にて焼結体を作製した。これにより、純度3N以上、酸素濃度2600wtppmm、相対密度92%、平均粒径5μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は35個と少なくなった。しかし、このような組成では、十分なデバイス特性を得ることができなかった。
【0049】
(比較例6)
原料粉であるCuGaTe粉、Zr粉、Al粉の最大粒径を150μmに変更したこと以外は、実施例6と同様の条件にて焼結体を作製した。これにより、純度3N以上、酸素濃度2700wtppmm、相対密度93%、平均粒径15μmのAl−Te−Cu−Zr合金焼結体が得られた。また、焼結体組織がAl相、CuAl相、TeZr相及びZr相とから構成されることを確認した。この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲットを作製し、得られたターゲットを使用してスパッタリングを行った。その結果、パーティクル(0.2μm以上)は134個と増加した。
【0050】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のAl−Te−Cu−Zr系合金焼結体スパッタリングターゲットは、組織を構成する相が少ないため成膜速度を均一にすることができ、また、結晶粒径が微細で、酸素含有量が低減されているので、これらを起点とする、パーティクルの発生、ノジュールの発生を抑制することができるという優れた効果を有する。したがって、本発明は、高品質の抵抗変化型記録材料であるAl−Te系合金からなる薄膜を安定的に供給するのに有用である。
図1
図2
図3