(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1に記載のササミ取り工程は、食鳥屠体が静止した状態でないと、チャックの先端でササミ先端の筋部を把持することができない。このため、特許文献1に記載のササミ取り工程は、食鳥屠体が静止した状態でないと実施できない。よって、従来のササミ取り工程では、処理能力を上げるには限界がある。
【0006】
また、チャックでササミ先端の筋部を把持する場合、筋部の把持はピンポイントで掴むため、把持の成功率が必ずしも高くない。しかも、チャックで烏口骨などの骨を砕いてしまう虞があり、骨が砕かれると、ササミに骨片が混入する虞がある。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一つの実施形態は、ササミを採取する処理能力を向上させ、且つササミに骨片が混入する虞がないササミ採取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくとも一つの実施形態に係わるササミ採取装置は、
中抜きされ且つ脚部及び胸肉が分離された食鳥屠体からササミを採取する装置であって、前記食鳥屠体を支持しながら移動する固定治具と、
前記固定治具の搬送方向の左右両側に配置されるササミ採取本体部と、
移動する前記固定治具に対して前記ササミ採取本体部を接近する方向に移動させる第1移動手段と、
移動する前記固定治具に対して退避する方向に前記ササミ採取本体部を移動させる第2移動手段と、を有し、
前記ササミ採取本体部には、前記固定治具への接近時に、前記固定治具に支持された前記食鳥屠体の前記ササミの長手方向から前記ササミの下方に挿入される挟持下板と、前記ササミの上方に上下方向に移動可能に支持された挟持上板とを備えて、前記挟持下板及び前記挟持上板により前記ササミを挟持する挟持具が設けられ、
前記挟持具の前記挟持下板及び前記挟持上板により前記ササミを挟持した状態で、前記固定治具の搬送方向前側への移動及び前記第2移動手段による前記ササミ採取本体部の前記固定治具に対して退避する方向への移動によって、前記食鳥屠体から前記ササミを分離するように構成される。
【0009】
上記ササミ採取装置によれば、ササミ採取本体部と第1移動手段と第2移動手段とを有し、ササミ採取本体部には、挟持下板及び挟持上板により構成されてササミを挟持する挟持具が設けられることで、挟持具の挟持下板及び挟持上板によりササミを挟持した状態で、コーンの搬送方向前側への移動及び第2移動手段によるササミ採取本体部のコーンに対して退避する方向への移動によって、食鳥屠体からササミを分離することができる。よって、ササミの採取時に食鳥屠体を支持する固定治具を停止させることなく、固定治具が移動している状態のままでササミを採取することができ、ササミ採取の処理能力を向上させることができる。
【0010】
また、ササミの採取時には、一対の挟持下板及び挟持上板で挟むという人手による採取方法に近い方法でササミを採取するので、ササミを傷付けることなく確実に採取することができる。よって、ササミを採取する成功率を向上させることができる。また、挟持具の挟持下板をササミの長手方向に対して幅方向からササミの下方に挿入し、挟持具の挟持上板をササミの上方に配置し、挟持下板に対して挟持上板を下方へ移動させて挟持下板に対して挟持上板上間にササミを挟持することで、ササミ周辺の骨を砕く虞を低減することができる。よって、骨片がササミに混入する虞を無くすことができる。
【0011】
また、幾つかの実施形態では、
前記挟持具の前記挟持上板は、前記挟持下板の上方に対向配置されて該挟持下板に対して接近する方向及び離反する方向に前記挟持上板を移動させる開閉機構部を介して支持されているように構成される。
【0012】
この場合、挟持具の挟持上板は、挟持下板の上方に対向配置されて開閉機構部を介して該挟持下板に対して接近する方向及び離反する方向に移動するので、ササミを挟持上板及び挟持下板によって上下から挟むことができる。よって、ササミの略全体を挟持することができ、ササミを傷付けることなくより確実に採取することができる。
【0013】
また、幾つかの実施形態では、
前記第1移動手段は、前記挟持具の先端部が前記固定治具に支持された前記食鳥屠体の前記ササミの長手方向に対して幅方向を向くように、前記ササミ採取本体部に設けられている。
【0014】
この場合、第1移動手段は、挟持具の先端部が固定治具に支持された食鳥屠体のササミの長手方向に対して幅方向を向くように、ササミ採取本体部に設けられているので、挟持具の挟持下板をササミの下方に挿入させる際に、挟持下板の先端部の全体を同時に挿入させることができる。よって、挟持下板及び挟持上板によって、ササミの長手方向全体を確実に挟持することができる。
【0015】
また、幾つかの実施形態では、
前記第2移動手段は、前記挟持具の先端部が前記固定治具に支持された前記食鳥屠体の前記ササミの長手方向に対して幅方向を向いた状態のままで、前記ササミ採取本体部を前記固定治具に対して退避する方向に移動させるように構成されている。
【0016】
この場合、第2移動手段は、挟持具の先端部が固定治具に支持された食鳥屠体のササミの長手方向に対して幅方向を向いた状態のままで、ササミ採取本体部を固定治具に対して退避する方向に移動させるので、ササミを食鳥屠体から迅速に採取することができる。よって、ササミ採取の処理能力をより向上させることができる。
【0017】
また、幾つかの実施形態では、
前記第1移動手段は、前記ササミ採取本体部が、平面視において前記固定治具の搬送方向に対して鋭角を有する方向を向いて前記固定治具に接近移動するように構成されている。
【0018】
この場合、第1移動手段は、ササミ採取本体部を、平面視において固定治具の搬送方向に対して鋭角を有する方向を向いて前記固定治具に接近移動させるので、挟持具によってササミを把持した状態でササミ採取本体部を退避させると、ササミ採取本体部は固定治具の搬送方向後側へ移動するとともに、固定治具の幅方向外側へ離反するように移動する。このため、固定治具に支持された食鳥屠体のササミを食鳥屠体から引き裂いて分離することができ、人手による採取方法により近い方法でササミを採取することができる。よって、ササミを傷付けることなくより確実に採取することができる。
【0019】
また、幾つかの実施形態では、
前記挟持具の前記挟持下板は、
前記
ササミ採取本体部に設けられた回動支点を中心として上下方向に揺動自在に支持されるとともに、
移動する前記固定治具に支持された前記食鳥屠体との接触時に上方向成分の反力を受けると、前記回動支点を中心として前記挟持下板を退避回動させる退避機構部に接続されているように構成される。
【0020】
この場合、挟持具の挟持下板は、
ササミ採取本体部に設けられた回動支点を中心として上下方向に揺動自在に支持され、且つ移動する固定治具に支持された食鳥屠体との接触時に上方向成分の反力を受けると、回動支点を中心として挟持下板を上方へ退避回動させる退避機構部に接続されているので、挟持具が食鳥屠体に過大な力が作用する事態を未然に防止することができ、食鳥屠体が傷つく虞を無くすことができる。
【0021】
また、幾つかの実施形態では、
前記ササミを挟持した前記挟持具が前記固定治具から退避する退避経路に設けられ、前記挟持具の退避移動時に該挟持具の前記挟持下板に対して前記挟持上板が開いた状態で、前記挟持下板上に載置されているササミに対して附勢して前記挟持具から前記ササミを分離させるササミ分離手段が設けられているように構成される。
【0022】
この場合、ササミ分離手段は、ササミを挟持した挟持具が固定治具から退避する退避経路に設けられ、挟持具の退避移動時に該挟持具の挟持下板に対して挟持上板が開いた状態で、挟持下板上に載置されているササミに対して附勢して挟持具からササミを分離する。このため、採取したササミを挟持具から容易に排出することができ、ササミ分離作業の作業効率をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態によれば、ササミを採取する処理能力を向上させ、且つササミに骨片が混入する虞がないササミ採取装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係るササミ採取装置及び食鳥屠体を搬送する搬送装置の部分平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るササミ採取装置及び食鳥屠体を搬送する搬送装置の部分正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るササミ採取装置の左斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るササミ採取装置の右斜視図である。
【
図5】ササミ採取装置を示し、同図(a)は、ササミ採取装置の正面図であり、同図(b)はササミ採取装置の右側面図であり、同図(c)はササミ採取装置の左側面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るササミ採取装置の作動を制御する制御装置のブロック図である。
【
図7】ササミ把持装置がコーンに接近したササミ把持位置に移動したときのササミ把持装置及びコーンの平面図である。
【
図8】ササミ把持装置がササミ把持位置に移動したときのササミ把持装置及びコーンの前側の側面図である。
【
図9】挟持具の挟持板下がコーンに支持された食鳥屠体に当接して反力を受けたときに挟持具が退避動した様子を示すササミ把持装置の前側の側面図である。
【
図10】ササミ把持装置がササミ把持位置に移動して挟持具が閉じた状態にあるときのササミ把持装置の前側の側面図である。
【
図11】ササミ把持装置がササミ退避位置に移動したときのササミ把持装置の平面図である。
【
図12】ササミ把持装置がササミ退避位置に移動して挟持具が開いた状態にあるときのササミ把持装置の前側の側面図である。
【
図13】本発明の他の実施形態に係るササミ採取装置の左斜視図である。
【
図14】本発明の他の実施形態に係るササミ採取装置の右斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のササミ把持装置の実施形態を
図1〜
図14を用いて説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0026】
先ず、本発明の一実施形態に係るササミ採取装置を説明する前に、食鳥屠体を搬送する搬送装置について説明する。
図1は、ササミ採取装置30がコーン12に対して離反した位置(以下、「ササミ退避位置Pt」と記す。)にあるときのササミ採取装置30及び搬送装置1の部分平面図であり、
図2は、ササミ採取装置30がササミ退避位置Ptにあるときのササミ採取装置30及び搬送装置1の部分正面図である。
【0027】
搬送装置1は、
図1(部分平面図)及び
図2(部分正面図)に示すように、矢印a方向に一定速度で移動するチェーンコンベア10を有している。チェーンコンベア10にはその搬送方向に沿って等間隔に複数の円錐形状のコーン12(固定治具)が取り付けられている。コーン12はリンク機構14により搬送方向前方又は後方へ任意の角度で傾斜可能に構成されている。チェーンコンベア10の始端部(不図示)に位置するコーン12には、中抜きされかつ脚部が分離された食鳥屠体が載置される。
【0028】
コーン12には、リンク機構18によりコーン先端側とコーン基端側との間を移動可能なフック16が設けられている。フック16は、食鳥屠体がコーン12に載置された後に、食鳥屠体の胸骨中央を係止して食鳥屠体をコーン12に固定する。食鳥屠体は複数のコーン12の夫々に載置固定された状態で搬送され、搬送中にチェーンコンベア10に面して搬送方向に順々に配置された複数の処理部で解体・脱骨処理される。コーン12に固定された食鳥屠体は、先ず、食鳥屠体から手羽付き胸肉を分離する処理工程が行われる。この手羽付き胸肉分離工程が行われると、コーン12には手羽付き胸肉が分離された食鳥屠体ガラ(以下「ワークW」という。)が残される。
【0029】
手羽付き胸肉分離工程が行われると、ワークWに対して、肋骨hとササミtとの間を筋入れして分離するササミ横筋入れ工程が行われる。このササミ横筋入れ工程では、コーン12は搬送方向前方に略水平方向に近い角度に傾斜される。この状態で肋骨hの胸側部位が上になり、肋骨hの上に2個のササミtが左右に並んで配置され、ワークWのササミtと肋骨hとの間に一対の切断刃(図示せず)が挿入されてササミtと肋骨hとが分離される。
【0030】
ササミtと肋骨hとが分離されると、ヤゲン筋入れ工程が行われる。ヤゲン筋入れ工程では、肋骨hの中央にあるヤゲンの両側のヤゲンとササミtとの間に一対のスクレーパを挿入して、ヤゲンとササミtとを分離する。そして、ササミ縦筋入れ工程によって、鎖骨とササミtとが分離される。鎖骨とササミtとが分離されると、ワークWからササミtを採取するササミ取り工程が行われる。ササミ取り工程では、ササミ採取装置30によってササミtの採取が行われる。
【0031】
次に、ササミ採取装置30について、
図1、
図3、
図4、
図5を参照しながら説明する。
図3は、ササミ採取装置の斜め左側矢視の左斜視図であり、
図4は、ササミ採取装置の斜め右側矢視の右斜視図であり、
図5(a)は、ササミ採取装置の正面図であり、
図5(b)はササミ採取装置の右側面図であり、
図5(c)はササミ採取装置の左側面図である。
図1に示すように、ササミ採取装置30は、移動するコーン12の搬送方向の左右両側に配置されている。
【0032】
ササミ採取装置30は、
図1、
図3(左斜視図)、
図4(右斜視図)に示すように、ササミtを挟持するための挟持具32と、挟持具32を取り付けた移動本体部40と、移動するコーン12に対して挟持具32の先端部32aをコーン12の幅方向に向けた姿勢のままで移動本体部40をコーン12に接近動させ及び退避動させる移動機構部50と、挟持具32を開閉させる開閉機構部60と、ササミ採取時にワークWから挟持具32に上方向成分の反力を受けたときに、挟持具32を上方へ退避させる退避機構部70と、移動機構部50及び開閉機構部60の作動を制御して、移動するコーン12に対して移動本体部40を接近動させて挟持具32によってササミtを挟持させた後に、移動本体部40をコーン12から退避させてササミtを採取させる制御装置80(
図6参照)と、を備える。
【0033】
挟持具32は、移動本体部40の下部に水平方向に設けられた軸部41を回動支点として上下方向に揺動自在に支持された挟持下板33と、挟持下板33の上方に対向配置されて挟持下板33に対して接近動及び離反動可能に設けられた挟持上板35とを有してなる。挟持下板33は、平面視において長方形状に形成され、挟持下板33の長手方向はコーン12の進行方向に沿って延びている。挟持下板33の上面33aには、長手方向に所定間隔を有して挟持下板33の短手方向に延びる複数の突起33bが設けられている。この突起33bは、挟持下板33上に載置されるササミtとの接触面積を小さくして、ササミtが挟持下板33上に付着し難くする。
【0034】
挟持下板33の短手方向他端部には、ボルト34を介して連結板36が取り付けられ、連結板36の上面の中央部には、上方へ突出する突出部37が設けられている。この突出部37の上部が移動本体部40に設けられた軸部41に回動自在に支持されている。このため、挟持下板33は、軸部41を回動中心とした上下方向に揺動自在である。挟持下板33の短手方向他端部には、退避機構部70が接続されている。
【0035】
退避機構部70は、
図4、
図5(a)(正面図)、
図5(b)(右側面図)に示すように、通常は挟持下板33を水平方向に維持し、挟持下板33がコーン12に支持されたワークW(食鳥屠体ガラ)との接触時に上方向成分の力(反力)を受けると、挟持下板33を上方へ退避回動させる退避シリンダ71を有して構成される。退避シリンダ71は、ロッド側端部が下方へ向いた状態で移動本体部40に取り付けられた一対のブラケット42を介して支持されている。退避シリンダ71は、そのシリンダチューブ71aが一対のブラケット42間に設けられた軸部43に回動自在に支持され、シリンダロッド71bの先端部が連結板36の他端側の突出して取り付けられた突出板部38の上端部に回動自在に接続されている。退避シリンダ71は複動式エアシリンダであり、方向切替弁72(
図6参照)による空気圧の給排制御により伸縮可能である。
【0036】
退避シリンダ71は、全縮小状態で挟持下板33を水平方向に維持するように配設されている。このため、退避シリンダ71によって挟持下板33を水平方向に維持した状態で、挟持下板33に上方向成分の力が作用すると、連結板36及び突出板部38が軸部41を回動支点として時計方向に回動して、退避シリンダ71は伸長する。このとき、退避シリンダ71のロッド側室に存在する空気はシリンダロッド71bの伸長とともに圧縮されて退避シリンダ71の伸長動を許容する。従って、挟持下板33は軸部41を回動支点として上方へ回動する。これと同時に、後述する挟持上板35も軸部41を回動支点として上方へ回動する。従って、ワークWに過大な力が作用する虞を未然に防止することができる。
【0037】
挟持上板35は、
図3、
図5(c)(左側面図)に示すように、挟持下板33の上面33aに対向して配置され、平面視において長方形状に形成され、側面視において上方へ凸状に湾曲形成されている。挟持上板35には、長手方向に所定間隔を有して短手方向に延びる複数の長孔部35aが設けられている。これらの長孔部35aは、挟持上板35及び挟持下板33でササミtを挟持したときに、ササミtが長孔部35aに引っ掛かって挟持具32から容易に抜脱されるのを抑える。
【0038】
挟持上板35は、連結板36の端部に突設されて上方へ延びる支持板39の上下方向中間部に設けられた軸部61を回動支点として上下方向に回動自在に支持された腕部63の先端部に固定されている。腕部63には、軸部61に対して先端部と反対側へ延びる連結腕部63aが設けられている。支持板39の上部には、一対のブラケット64を介してロッド側端部が下方へ向いた開閉シリンダ65のシリンダチューブ65aが回動自在に支持されている。開閉シリンダ65のシリンダロッド65bの先端部は、連結腕部63aの先端部に回動自在に接続されている。開閉シリンダ65は複動式エアシリンダであり、方向切替弁66(
図6参照)による空気圧の給排制御により伸縮可能である。方向切替弁66は電磁式の方向切替弁であり、後述する制御装置80によって作動が制御される。
【0039】
この開閉シリンダ65が伸縮すると、軸部61を回動支点として腕部63が上下方向に回動して、挟持下板33に対して挟持上板35を接近動及び離反動させて、挟持具32を開閉させることができる。即ち、腕部63及び開閉シリンダ65によって、挟持下板33に対して挟持上板35を接近動及び離反動させて、挟持具32を開閉可能な開閉機構部60を構成している。このため、挟持具32は、開閉シリンダ65の圧縮空気の弾性力によってワークWのササミtを弾性的に挟持することができる。
【0040】
移動本体部40は、上下方向に延びる支柱部44を有してなる。支柱部44は、四角柱状に形成され、下端部には、連結板36を回動自在に支持する軸部41が設けられている。支柱部44の上端部には外側へ拡開するフランジ部44aが設けられている。このフランジ部44aには、移動本体部40をコーン12に対して接近動及び退避動させる移動機構部50(
図3参照)が接続される。
【0041】
移動機構部50は、
図1に示すように、支柱部44の上部に設けられたフランジ部44aに固定されたモータケーシング51と、モータケーシング51に内蔵されたサーボモータ52(
図6参照)と、サーボモータ52の出力軸に結合されたボールネジ53とを有して構成されている。ボールネジ53は、チェーンコンベア10のコーン12の搬送方向に対して鋭角(図面では45°)の角度を有して配置されている。サーボモータ52の作動により、2個のササミ採取装置30、30は、コーン12の矢印a方向の移動と同期して矢印b方向及び矢印c方向に移動して、
図7に示すササミ把持位置Psに到達する。ササミ採取装置30、30は、ササミ把持位置Psに到達後、挟持具32でササミtを把持した後、サーボモータ52の作動で元のササミ退避位置Ptに戻る。
【0042】
次に、制御装置80について、
図1、
図6〜
図12を参照しながら説明する。制御装置80には、
図6に示すように、コーン12がササミ把持位置Psの手前の所定位置に移動したことを検知する近接センサ81と、移動機構部50のサーボモータ52と、開閉シリンダ65への空気の給排制御を行う方向切替弁66と、退避シリンダ71への空気の給排制御を行う方向切替弁72と、が電気的に接続されている。
【0043】
近接センサ81は、
図1に示すように、チェーンコンベア10の経路に面した位置に設けられている。本実施形態では、チェーンコンベア10の経路の右側に近接センサ81が設けられている。近接センサ81の位置は、コーン12の搬送速度、ササミ採取装置30のコーン12側への接近速度、ササミ採取装置30のササミ退避位置Pt、ササミ把持位置Ps等を考慮して設定される。なお、近接センサ81は、チェーンコンベア10の経路の左側に設けられてもよい。近接センサ81によってコーン12が検出されると、近接センサ
81の検出信号は制御装置
80(
図6参照)に送られて、制御装置80はサーボモータ52を駆動させる。サーボモータ52が駆動すると、
図7(平面図)に示すように、コーン12の移動と同期して、ササミ採取装置30、30はコーン12の搬送方向に対して45°の角度を有してコーン12に接近動してササミ把持位置Psまで移動する。なお、ササミ採取装置30のササミ把持位置Psへの接近移動の始動時には、制御装置80は、方向切替弁66を介して開閉シリンダ65を伸長させて挟持具32を開いた状態する。
【0044】
ササミ採取装置30がササミ把持位置Psに移動すると、
図8(前側面図)に示すように、ササミ把持位置Psにおいて、左右に配置された2個のササミ採取装置30、30の夫々の挟持具32の挟持下板33がワークWの2個のササミtの夫々の肋骨hとササミtとの間に挿入され、挟持上板35はササミtの上方に位置する。なお、
図9(前側面図)に示すように、ササミ採取装置30がササミ把持位置Psに移動したときに、挟持下板33がワークWに当接してワークWから上方方向成分を有した大きな反力を受けると、退避シリンダ71のクッション作用で挟持具32は軸部41を回動支点として上方へ回動してワークWから上方へ退避させることができる。このため、ワークWが損傷する虞を未然に防止することができる。
【0045】
ササミ採取装置30がササミ把持位置Psに移動して挟持下板33が肋骨hとササミtとの間に挿入されると、制御装置80は、
図10(前側面図)に示すように、開閉シリンダ65に繋がる方向切替弁66の作動を制御して開閉シリンダ65を縮小動させる。従って、挟持具32の挟持上板35は下方へ回動して、挟持下板33及び挟持上板35によってササミtが把持される。
【0046】
挟持下板33及び挟持上板35によってササミtが把持されると、
図6及び
図11(平面図)に示すように、制御装置80はサーボモータ52を作動させて、ササミ採取装置30をササミ把持位置Psから退避動させる。ササミ採取装置30の退避動時に、コーン12の搬送と相まって、ササミtは肋骨hから分離される。その後、ササミ採取装置30の退避時に、開閉シリンダ65の方向切替弁66を制御して、開閉シリンダ65を伸長動させて挟持具32を開いた状態にする(
図12参照)。従って、ササミtは挟持具32による挟持状態から開放されて挟持下板33上に載置された状態となり、ササミ採取装置30がササミ退避位置Ptに接近すると、ササミtは後退経路に設けられたササミ排出バー90に当たって挟持下板33から落下する。
【0047】
ササミ排出バー90は、
図11及び
図12に示すように、ササミ退避位置Ptにおいて、挟持具32の挟持下板33及び挟持上板35間に挿入可能であるとともに、挟持下板33の上面33aの上方に位置するように配設されている。ササミ排出バー90は、上下方向に配置された支持板91に結合され、支持板91は左右方向に配置された連結板92とボルト93で結合されている。ボルト93は支持板91形成された長孔91aに挿入され、長孔91aに対するボルト93の締結位置を調整することで、ササミ排出バー90は上下方向に位置調整可能になっている。
【0048】
また、連結板92は固定部位(不図示)にボルト(不図示)で固定されている。このボルトは連結板92に形成された長孔92aに挿入されて、ササミ排出バー90は左右方向にも位置調整が可能になっている。
【0049】
このように、本実施形態によれば、ササミ採取装置30は、ササミtを上下方向から把持可能な挟持下板33及び挟持上板35を有する挟持具32を用いて構成され、人手による採取方法に近い方法でササミtを採取する。このため、ササミtを傷付けることなく、確実に採取することができるとともに、ササミtを把持する成功率を高めることができる。また、コーン12に支持されたワークWが搬送中であっても、ササミ採取装置30をコーン12の移動に同期させることで、ササミtを確実に採取することができる。このため、多数のワークWからササミtを連続的に採取することができ、処理能力を向上させることができる。
【0050】
また、挟持具32には、退避シリンダ71が設けられているので、挟持具32がワークWに過大な力を付与する虞がない。このため、ササミ周辺の骨が破損する虞がなくなり、採取したササミtに骨が混じる虞を無くすことができる。
【0051】
また、挟持具32の退避経路にササミ排出バー90が配設されているので、挟持具32からササミtを容易に分離でき、作業効率をさらに向上させることができる。
【0052】
また、挟持下板33の上面33aに突起33bが設けられているので、挟持下板33に対するササミtの付着力を低減でき、ササミtを挟持具32から容易に排出することができる。
【0053】
なお、前述した実施態様では、ササミ採取装置30の退避経路にササミ排出バー90を配設した場合を示したが、ササミ排出バー90の代わりに、清浄水噴射ノズルを配設してもよい。清浄水噴射ノズルは、挟持具32がササミtを挟持して退避経路上を戻ってきたときに、挟持具32を開いた状態にして、清浄水噴射ノズルから清浄水をササミtに噴射して当てることで、ササミtを挟持具32から容易に排出することができる。また、清浄水をササミtに当てることで、同時にササミtを洗浄することができる。
【0054】
また、挟持具32の挟持下板33の上面33aに低摩擦材からなる被覆膜を形成するようにしてもよい。これによって、挟持下板33の上面33aに対するササミtの付着力を低下させことができ、挟持具32を開いたとき、ササミtを容易に落下させることができる。
【0055】
また、前述した実施形態では、挟持具32の挟持上板35に複数の長孔部35aが設けられ、挟持下板33に複数の突起33bが設けられた場合を示したが、
図13及び
図14に示すように、挟持上板35の下面及び挟持下板33の上面にエンボス加工を施した複数の凸部33cを設けてもよい。本実施形態では、凸部33cは楕円状に形成されて千鳥状に設けられた場合を例にしている。凸部33cは、楕円形状の他に、円形状、矩形状等でもよい。また、複数の凸部33cは、千鳥状に設けられる他に、互いに同一間隔を有して設けられてもよい。このように、挟持上板35の下面及び挟持下板33の上面に複数の凸部33cを設けることで、挟持上板35及び挟持下板33によってササミt(
図12参照)を挟持した状態で挟持具32の退避移動時に、ササミtが複数の凸部33cに引っ掛かって挟持具32からの抜脱を抑えることができる。従って、食鳥屠体からササミtを確実に採取することができる。
【0056】
また、本実施形態では、挟持上板35は腕部63の先端側に取り付けられた支持部材67に溶接等によって接続されている。支持部材67は、腕部63の延びる方向に対して支柱部44側に直交する方向に延びる。このように、挟持上板35が支持部材
67を介して腕部63に取り付けられることで、腕部63に対する挟持具32の配置の自由度を高めることができる。