特許第6262453号(P6262453)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6262453粒子光学装置での薄片の調製及び可視化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262453
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】粒子光学装置での薄片の調製及び可視化方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20180104BHJP
   H01J 37/26 20060101ALI20180104BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   H01J37/22 501Z
   H01J37/22 501A
   H01J37/26
   H01J37/317 D
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-134745(P2013-134745)
(22)【出願日】2013年6月27日
(65)【公開番号】特開2014-11157(P2014-11157A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2016年6月24日
(31)【優先権主張番号】61/666,178
(32)【優先日】2012年6月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12178060.5
(32)【優先日】2012年7月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ロバート ルース ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ピーター クリスチャン ティエメイエール
(72)【発明者】
【氏名】バルト ヨゼフ ヤンセン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ジー ミラー
(72)【発明者】
【氏名】デイビット フォード
(72)【発明者】
【氏名】イヴァン ラジッチ
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−231720(JP,A)
【文献】 特表2007−534956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/22
H01J 37/26
H01J 37/295
H01J 37/317
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子光学装置を用いて試料を調製及び可視化する方法であって、
当該粒子光学装置は:
前記試料に照射される電子ビームを生成するように排気可能な試料チャンバに設けられる電子鏡筒;
前記試料を透過する電子によって生じる回折パターンの電子像を生成するカメラシステム;及び、
前記試料チャンバ内での前記電子ビームに対する前記試料の位置を設定するマニピュレータ;
を備え、
当該方法は:
前記試料を調製する手順;
前記試料チャンバ内での前記電子ビームに対する前記試料の位置を設定する手順;
前記電子鏡筒を用いて前記カメラシステム上に第1電子像を生成する手順;及び、
前記第1電子像から前記試料が推定される反復収束処理の結果である第1タイコグラフィック像を得る手順;
を有し、
当該粒子光学装置は、前記試料を加工する集束イオンビームを生成するように試料チャンバと接する状態で設けられた集束イオンビーム鏡筒を有し、
前記試料を調製する手順は、前記集束イオンビームに対して前記試料を位置設定する手順、及び、前記集束イオンビームを用いて前記試料を薄くする手順を含み、
前記第1電子像の生成後、前記試料の層が前記集束イオンビームにより除去され、かつ、前記電子鏡筒を用いて第2電子像が生成され、
前記試料の層が除去された後、前記試料の第2タイコグラフィック像が生成され、
前記試料は、少なくとも前記試料が前記集束イオンビームによって薄くされることによって調製されるときから、前記第2電子像が取得されるまでの間真空環境下で保たれ、
前記第1タイコグラフィック像又は該第1タイコグラフィック像を生成する反復集束処理における複数の推定のうちの最初の推定を除く一の推定が、前記第2タイコグラフィック像の再構成用のシード層として用いられる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1及び第2タイコグラフィック像又は前記第1及び第2電子像を用いる前記の除去された層の再構成された像が、前記の除去された層のタイコグラフィック像を生成する、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第2タイコグラフィック像のうちの一が、前記試料での場所依存位相シフトを決定し、かつ、前記位相シフトから前記試料の内部ポテンシャルを位置の関数として導くのに用いられ、
その後ドーパント濃度を導く手順が実行される、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2タイコグラフィック像が、いつ前記試料中の構造が表面に到達するのかを決定するのに用いられる、請求項1乃至のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記イオンビームは、前記試料にわたって走査することが可能な集束イオンビームである、請求項1乃至のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記試料の材料が、極低温での半導体材料、結晶材料、多結晶材料、又は生体材料である、請求項1乃至のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料の複数のタイコグラフィック像を生成する手順をさらに有し、
前記複数のタイコグラフィック像は、前記試料を前記電子ビームに対して様々な向きに設置することによって生成され、
その後前記試料の断層撮影像の3D再構成が行われる、
請求項1乃至のうちいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子光学装置を用いて試料を調製及び可視化する方法に関する。粒子光学装置は、前記試料に照射される電子ビームを生成するように排気可能な試料チャンバに設けられる電子鏡筒、前記試料を透過する電子によって生じる回折パターンの電子像を生成するカメラシステム、及び、前記試料チャンバ内での前記電子ビームに対する前記試料の位置を設定するマニピュレータを備える。
【0002】
当該方法は、前記試料を調製する手順、前記試料チャンバ内での前記電子ビームに対する前記試料の位置を設定する手順、前記電子鏡筒を用いて前記カメラシステム上に電子像を生成する手順、及び、前記電子像から前記試料のタイコグラフィック像を得る手順を有する。前記タイコグラフィック像は、前記試料が推定される反復収束処理の結果である。
【背景技術】
【0003】
係る方法は特許文献1から既知である。この方法を用いた実際の結果は非特許文献1に記載されている。
【0004】
非特許文献1は、どのようにして薄い試料が、試料を透過する電子の回折パターンを取り込むCCDカメラを備える走査型電子顕微鏡(SEM)内で可視化されうるのかについて記載している。SEMは、電子ビーム−この例では30keVの電子ビーム−を生成するように備えられ、かつ、ビームを集束させる対物レンズと試料全体にわたってビームを走査させる偏向器を有する。ビームが試料上に集束されずに、焦点不足の状態で用いられる結果、対物レンズの焦点から約3μm離れた場所となる。そのため、試料でのビーム径は約20〜40nmとなる。試料を透過する電子は、カメラ上に回折像を生成する。試料の複数の重なり領域の回折パターンが多数得られる。回折パターンは、少なくとも0.236nmの半径の情報を表す。
【0005】
回折像は、特許文献1(より具体的には図7図7についての明細書の説明箇所)に記載されたアルゴリズムを用いて試料のタイコグラフィック像を生成するのに用いられる。その結果得られたタイコグラフィック像は、0.236nmの原子の周囲の解像度を示す(非特許文献1の図4を参照のこと)。
【0006】
これは、ビームを試料上のスポットへ集束させるときに到達可能なSEMの解像度である1.2nmよりもはるかに良好であることに留意して欲しい。
【0007】
既知の方法の欠点は、試料が薄くされ、その後SEMへ挿入されなければならないことである。酸化又は少なくとも表面改質が起こりがちである。
【0008】
他の欠点は、試料が厚すぎるときには、その試料が取り出されて、さらに薄くされなければならないことである。
【0009】
さらに他の欠点は、20nm未満の厚さの試料の像を得ることが難しいことである。特にそのような試料の取り扱い及び搬送が難しいため、結果として試料の損傷又は損失が生じる。半導体のサイズが限界を超えて縮小しているので、そのような薄い試料の観察は重要になると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7792246号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】M.J. Humphry他、Nature Communications、第3巻、第730号、2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、これらの問題を解決することを意図している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的のため、本発明による方法は以下の特徴を有する。
− 粒子光学装置は、集束イオンビームを生成するように試料チャンバ上に設けられた集束イオンビーム鏡筒を有する。
− 薄い試料を調製する手順は、前記集束イオンビームに対して前記試料を位置設定する手順、及び、前記集束イオンビームを用いて前記試料を薄くする手順を含む。
− 第1像の生成後、前記試料の層が前記集束イオンビームにより除去され、かつ、前記電子鏡筒を用いて第2電子像が生成される。
− 前記試料の層が除去された後、前記試料の第2タイコグラフィック像が生成される。
− 前記試料は、少なくとも前記試料が前記集束イオンビームによって薄くされることによって調製されるときから、前記第2電子像が取得されるまでの間真空環境下で保たれる。
【0014】
前記試料を大気又はたとえば窒素のようなより不活性な雰囲気に曝露することなく、前記試料のその場で薄くし、可視化し、及びさら薄くして観察を行うことによって、前記試料の表面が変更(改質)される可能性が抑制される。また前記試料が薄くされるときに、前記試料が前記真空チャンバから取り外されないので、たとえば前記真空チャンバ内への前記試料の再挿入に係る問題に直面することなく、非常に薄い試料−たとえば20nm未満−の作製及び可視化が可能である。
【0015】
前記試料が、前記試料チャンバから取り外されずに、マニピュレータと常に接していることが好ましく、それにより前記試料の位置は一般的には数μm以上の精度で分かり、その結果として関心領域の迅速な特定を可能にすることに留意して欲しい。前記試料が前記マニピュレータから取り外されなければならない場合、当該装置内での関心領域の位置が失われ、かつ、前記試料を前記マニピュレータに再度取り付けた後の前記関心領域を見つける手順は、時間の浪費である。
【0016】
本発明の実施例では、前記第1タイコグラフィック像又は該第1タイコグラフィック像を生成する反復処理における複数の推定のうちの一(最初の推定を除く)が、前記第2タイコグラフィック像の再構成用のシード層として用いられる。それにより前記第2電子像から前記第2タイコグラフィック像を生成するのに必要な処理時間が短縮される。
【0017】
前記第2タイコグラフィック像を生成するのに用いられる反復処理において前記第1像(又はその先行像の一)をシードとして用いることによって、前記第2像を得るのに必要な反復回数が少なくなり、結果として処理時間が改善される。
【0018】
またコンピュータ生成像もシード像として用いられて良い。
【0019】
本発明の他の実施例では、前記の除去された層の再構成されたタイコグラフィック像が、前記第1及び第2タイコグラフィック像又は前記第1及び第2電子像を用いることによって生成される。
【0020】
このようにして、前記の除去された層の像が生成される。前記の除去された層はたとえば3〜5nm程度の薄さであり得るので、非常に薄い層の像が生成される。
【0021】
注入損傷に起因するわずかなアーティファクトが生じる恐れがあることに留意して欲しい。従って注入原子を残さないビームの利用が好ましい。また新たに生成された表面層での原子配列の乱れ(はじき出し損傷又はアモルファス層の生成)が、アーティファクトを導入する恐れがある。
【0022】
本発明のさらに他の実施例では、前記像のうちの一が、前記薄片での場所依存位相シフトを決定し、かつ、前記位相シフトから前記薄片の内部ポテンシャルを位置の関数として導くのに用いられる。その後ドーパント濃度を導く手順が実行される。
【0023】
当業者に知られているように、材料−たとえば半導体材料−にドーピングを行う結果、前記材料の内部ポテンシャルが変化する。内部ポテンシャルが変化する結果、前記材料を透過する電子の位相シフトが起こる。タイコグラフィは像の位相情報を表すことができるので、tはまた、前記試料の部分間のドーピングの差異を示すことも可能である。
【0024】
当該方法では、層を除去する必要がなく、本実施例は原則として、さらに薄くすることなく薄片でのドーパント濃度を決定するのに用いることができることに留意して欲しい。
【0025】
本発明のさらに他の実施例では、前記第2像は、端点の決定に用いられる。
【0026】
端点の決定は、いつ前記試料中の構造が表面に到達するのかを決定するとき、すなわち前記試料の厚さを決定するために行われる。
【0027】
本発明のさらに他の実施例では、前記イオンビームは、前記試料にわたって走査することが可能な集束イオンビームである。
【0028】
微細に集束されたイオンビームを前記試料表面に対して平行に走査することによって前記試料を薄くする手順は、周知技術である。
【0029】
本発明のさらに他の実施例では、前記試料の材料は、極低温での半導体材料、結晶材料、多結晶材料、又は生体材料である。
【0030】
極低温での生体試料は、生体材料−たとえば細胞、バクテリア、又はそれらの一部−を研究するときに好ましい。極低温を利用することで、化学的に変更−たとえば埋め込み、浸透等−させることなく生体材料を研究することが可能となる。
【0031】
本発明のさらに他の実施例では、当該方法はさらに、前記薄片の複数のタイコグラフィック像を生成する手順を有する。前記複数のタイコグラフィック像は、前記薄片を前記電子ビームに対して様々な向きに設置することによって生成される。その後前記薄片の断層撮影像の3D再構成が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明による方法を実行する粒子光学装置を概略的に表している。
図2】本発明による方法の実施例による手順を概略的に表している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
ここで図を用いて本発明について説明する。図中、同一の参照番号は対応する部位(構造)を表す。
【0034】
図1は、真空ポンプ(図示されていない)によって排気可能な排気可能な試料チャンバ102を有する装置100を表している。
【0035】
電子ビーム122を生成する電子ビーム鏡筒120が、試料チャンバ102に接する状態で設けられている。電子ビーム鏡筒120は、電子源124、電子ビームを操作するレンズ126-i、電子ビームを偏向及び走査する偏向器128-i、並びに、電子ビームを集束させる対物レンズ130を有する。
【0036】
同様にイオンビーム142を生成するイオンビーム鏡筒140が、試料チャンバ102に接する状態で設けられている。イオンビーム鏡筒140は、イオン源144、イオンビームを操作するレンズ146-i、イオンビームを偏向及び走査する偏向器148-i、並びに、イオンビームを集束させる対物レンズ150を有する。
【0037】
マニピュレータ160が、試料チャンバ102と接する状態で設けられている。試料101は、電子ビーム路内に設けられ得るように、(たとえばクランプ、ビーム誘起堆積、静電接合等によって)このマニピュレータ160と接する状態で設けられて良い。
【0038】
マニピュレータ160は、極低温試料を収容するように極低温にまで冷却されて良いことに留意して欲しい。試料101が存在する位置は、前記試料101の加熱を防止するための極低温シールドによって取り囲まれて良いことに留意して欲しい。
【0039】
カメラ110は、試料122’を透過する電子が衝突するように、試料チャンバ102内に設けられる。典型的にはこのカメラ110は、直接型電子検出器(好適にはCMOSカメラ)だが、ファイバ光学系又は光学素子(レンズ、ミラー)を介してCCD又はCMOSカメラで観察される蛍光スクリーンが用いられても良い。
【0040】
当該装置には、他の検出器−たとえば2次電子検出器及び後方散乱検出器182−と、試料調製中でのエッチングを改善するように試料チャンバ102へ気体を収容する気体注入システムがさらに備えられて良い。
【0041】
一部の部材−たとえばカメラ−は、気体及び/又は大気を試料チャンバ102へ収容するときの損傷を防止するように引っ込めることができる。すべての部材(レンズ、偏向器、検出器)は、当該装置のプログラム可能な制御装置によって制御される。前記制御装置は、検出器の信号を処理して、表示装置上に像を表示する。
【0042】
電子顕微鏡内の偏向器とレンズ(110)は典型的には、磁気偏向器及びレンズである。他方イオンビーム鏡筒は典型的には、静電偏向器とレンズを有する。
【0043】
典型的には当該装置は、どの時点でも電子ビーム又はイオンビームのいずれかを発生させる。ただし電子ビームとイオンビームの両方が同時に用いられることも知られている。
【0044】
図2は、本発明による方法の実施例による手順を概略的に表している。
【0045】
手順202では、試料が当該装置の試料チャンバ内に挿入される。試料片は大きな試料−たとえばウエハ又は極低温の生体組織−の一部であって良い。この場合、試料片は、大きな試料をイオンビームによって加工することによって取り出されて良く、かつ、試料は、たとえばビーム誘起堆積によってマニピュレータに取り付けられて良い。
【0046】
あるいはその代わりに試料は、試料ホルダ−たとえば標準的なTEMグリッド−に既に取り付けられた状態で挿入されて良く、かつ、試料ホルダは機械的にマニピュレータに取り付けられて良い。
【0047】
手順204では、手順206の準備として、試料はイオンビームに対して位置設定される。
【0048】
手順206では、試料は、イオンビームによる加工によって薄くされる。これは典型的には、試料全体にわたってイオンビームを迅速に走査させることによって行われる。気体は、加工速度を改善するように試料チャンバへ収容されて良い。
【0049】
手順208では、そのようにして薄くされた試料が、電子ビームに対して位置設定される。典型的にはこの手順は、試料が電子ビームに対して垂直に再度位置設定されるように、その試料を傾斜させる手順を含む。しかし前記傾斜させる手順は、電子ビーム鏡筒とイオンビーム鏡筒とが互いに相対的に傾斜しているので、冗長な場合もある。位置設定は、試料全体にわたって電子ビームを走査し、複数の補助検出器−たとえば後方散乱検出器182−のうちの一を用いて試料を可視化することによって改善されて良い。よってタイコグラフィック像において可視化される関心領域は、電子ビームによって「インラインで」もたらされうる。
【0050】
手順210では、電子像がカメラを用いて生成される。よってこの像は、試料を透過した電子の情報を含むので、カメラ上で回折パターンを生成する。
【0051】
カメラは典型的には、衝突する電子を直接検出するCMOSカメラ−たとえばFEI社が製造するファルコンCMOS直接型電子検出器−、又は、非特許文献1で特定されたようにたとえばファイバを介して蛍光スクリーンと結合する光学カメラ(CMOS,CCD)である。
【0052】
手順212では、タイコグラフィック像が、手順210で取得された電子像と、手順214で与えられる試料の第1推定(シード像)を用いることによって生成される。この処理の詳細については、特許文献1(特に図7)を参照して欲しい。シード像は、未処理であって良く、又は、試料のこれまでの知見−たとえば同一若しくは同様の試料から得られた像又はたとえば試料の一部のCADモデルから生成された像−に基づいても良い。
【0053】
手順210において第1電子像を取得した後、試料は、手順204に戻ることによってさらに加工されて良い。続いて層は繰り返される手順206において除去されて良い。さらに他の電子像が、繰り返される手順210において取得されて良い。
【0054】
繰り返される手順210において得られる像は、他のタイコグラフィック像を生成するのに用いられて良い。その場合、先に得られたタイコグラフィック像又はその推定のうちの一がシード層として用いられ得ることが好ましい。
【0055】
2つのタイコグラフィック像又は2つの電子像を用いることによって、除去された層のタイコグラフィック像が生成されて良いことに留意して欲しい。
【0056】
前述したように、(複数の)タイコグラフィック像における位相情報は、試料の(場所依存)内部ポテンシャルを決定するのに用いられて良い。これは非特許文献1の図3bに図示されている。試料の組成が既知である(たとえばドーパントDを有するシリコン)と仮定すると、ドーパントDの濃度は、位相情報から得ることができる。
【0057】
連続して傾斜させることによって、試料の3D再構成を得ることができる。ここでシード層も、処理時間を減少させるように、他のタイコグラフィック像から得ることができる。
【符号の説明】
【0058】
100 粒子光学装置
101 試料
102 試料チャンバ
110 カメラシステム
120 電子鏡筒
122 電子ビーム
124 電子源
126-i レンズ
128-i 偏向器
130 対物レンズ
140 イオンビーム鏡筒
142 イオンビーム
144イオン源
146-i レンズ
148-i 偏向器
150 対物レンズ
160 マニピュレータ
図1
図2