(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記力状態インジケータの前記第1の状態は、オンのインジケータ灯を含まず、前記力状態インジケータの前記第2の状態は、第1の色のインジケータ灯を含み、前記力状態インジケータの前記力過大状態は、第2の色のインジケータ灯を含み、前記力状態インジケータの前記力逆転状態は、明滅しているインジケータ灯を含む、請求項18に記載のキャリパー。
前記少なくとも1つの力成分は、前記キャリパーの向き及び前記スライダと共に移動するスライダアセンブリの質量に依存する重力成分を含む、請求項1に記載のキャリパー。
【発明を実施するための形態】
【0007】
一態様によれば、信号処理部は、少なくとも第1の動作モードを含み、第1の動作モードでは、力信号を受信し、スライダの各位置に対応する各力を特定するように構成される。複数の各力及び対応するスライダの各位置を含む力データが取得される。信号処理部は、許容可能測定力範囲の最小力閾値を、測定力のユーザ変動から独立した力信号に含まれる少なくとも1つの力成分に対応する補償力を超えるように決定し、少なくとも最小力閾値により定義される許容可能測定力範囲を定義するようにさらに構成される。本明細書において使用される場合、補償力という用語は特定の信号処理を暗示しない。むしろ、補償力は単に、ワークピースに力として必ずしも伝達されない力信号の力成分を含むものと考えられ、したがって、測定中のワークピースへの実際の力が所望の範囲内にあるように、何らかの様式で力信号又は力信号閾値の補償又は調整が必要なことがある。
【0008】
別の態様によれば、いくつかの実施形態では、最小力閾値は、工場での組立時及びユーザがワークピースに力を及ぼさずにスライダを動かして、力データを取得する工程を含む現場での較正処理時のうちの一方の間に、キャリパーに記憶される力較正データに基づく静的閾値である。一実施形態では、信号処理部は、ユーザがスライダを動かしている間に取得される力データを解析して、解析された力データに基づいて最小力閾値を決定し設定するように構成される。一実施形態では、信号処理部は、解析された力データに基づいて補償力を決定し、その補償力に基づいて最小力閾値を設定するように構成される。
【0009】
別の態様によれば、いくつかの実施形態では、最小力閾値は動的閾値であり、信号処理部は、現在の測定手順中に取得された力データを解析して、第1及び第2の測定面の少なくとも一方とワークピースとの接触前データを識別し、その接触前データに基づいて現在の測定手順の最小力閾値を設定するように構成される。
【0010】
いくつかの実施形態では、信号処理部は、外側測定に第1の許容可能測定力範囲を定義し、内側測定に第2の許容可能測定力範囲を定義するように構成される。
【0011】
別の態様によれば、いくつかの実施形態では、許容可能測定力範囲は、最大力閾値よりさらに定義される。いくつかの実施形態では、最大力閾値は静的な閾値であり、他の実施形態では、信号処理部は、最小力閾値に相対して最大力閾値を定義するように構成される。
【0012】
別の態様によれば、いくつかの実施形態では、信号処理部は、現在の測定手順中に取得された力データを解析し、比較的より軟らかいワークピースの場合には最小力閾値に近い値に、比較的より剛性のワークピースの場合には最小力閾値から離れた値に、現在の測定手順の最大力閾値を動的に定義するように構成される。例えば、一実施形態では、信号処理部は、現在の測定手順中に取得された力データを解析し、ワークピースのばね定数を特徴付け、特徴付けられたワークピースばね定数に基づいて、最小力閾値に対する現在の測定手順の最大力閾値を定義するように構成される。
【0013】
別の態様によれば、いくつかの実施形態では、キャリパーは、スライダに配置される力アクチュエータを含み得、力アクチュエータは、ユーザにより変更されて、測定力を変更する寸法を有するばね定数ばねを含む。いくつかの実施形態では、ばね定数ばねは、最大で6N/mm且つ最小で0.25N/mmのばね定数を有する。いくつかの実施形態では、力感知装置は、変形可能部材と、変形可能部材の変形を感知する歪みセンサと、を含み得、力アクチュエータ及び力感知装置は、変形が、ばね定数ばねの変更された寸法に対応するように構成し得る。
【0014】
別の態様によれば、キャリパーは、信号処理部により制御される力状態インジケータを含み、信号処理部は、現在の測定手順中に取得された力データを解析して、力状態インジケータを制御するように構成され、力状態インジケータは、現在の各測定力を許容可能測定力範囲内にあるように増大させなければならないことを示す第1の状態、及び、現在の各測定力が許容可能測定力範囲内にあり、スライダの現在の各指示位置が、信号処理部により使用される基準に従った有効なワークピース測定であることを示す第2の状態を示し得る。許容可能測定力範囲は、最大力閾値によりさらに定義され、力状態インジケータは、第1及び第2の状態とは異なり、現在の各測定力が許容可能測定力範囲を超え、許容可能測定力範囲内にあるように低減しなければならないことを示す力過大状態を示し得る。別の態様によれば、いくつかの実施形態では、力状態インジケータの状態を制御するために信号処理部により使用される基準は、力逆転基準を含み、信号処理部は、取得された力データの解析が、基準に従って力逆転が発生したことを示す場合、第1及び第2の状態とは異なり、スライダの示される現在の各位置が有効なワークピース測定ではないことを示す力状態インジケータの力逆転状態を、力変更動作及び位置変更動作のうちの少なくとも一方が、ユーザにより実行されて、力逆転状態を解除するまで続けさせる。いくつかの実施形態では、信号処理部は、キャリパーのディスプレイを使用して、力逆転状態を解除するために必要な力変更動作及び位置変更動作のうちの少なくとも一方を実行するに当たり、ユーザをガイドするユーザプロンプトを表示するように構成される。特定の一実施形態では、力状態インジケータの第1の状態は、オンのインジケータ灯を含まず、力状態インジケータの第2の状態は、第1の色のインジケータ灯を含み、力状態インジケータの余剰力状態は、第2の色のインジケータ灯を含み、力状態インジケータの力逆転状態は、明滅しているインジケータ灯を含む。
【0015】
別の態様では、補償力の少なくとも1つの力成分は、スケール部材へのスライダの摩擦に依存するスライダ摩擦力成分を含み得る。代替又は追加として、少なくとも1つの力成分は、キャリパーの向き及びスライダと共に移動するスライダアセンブリの質量に依存する重力成分を含み得る。いくつかの実施形態では、キャリパーは、加速度計を含み、信号処理部は、重力成分の特定に当たり、加速度計からの出力を利用する。
【0016】
いくつかの実施形態では、信号処理部は、少なくとも2つの動作モードをキャリパーに提供するように構成し得る。2つのモードのうちの一方は、通常動作モード(例えば、ユーザに、力測定に関連する特別な動作を実行せず、寸法測定を特定するために、力測定を使用する必要がない、従来技術による市販のキャリパーに知られている動作を実質的に提供する)であり得る。そのようなモードは、比較的硬質のワークピースに適し、ユーザは、この場合、測定力に関連する動作に悩む必要がない。2つのモードのうちの他方は、力制御動作モード(例えば、キャリパーが有効測定力状況を示すか、又は有効測定力状況に対応する有効寸法測定を示す動作を提供する)である。力制御動作モードは、略して力モードと呼び得る。
【0017】
本発明の様々な実施形態について後述する。以下の説明は、完全な理解及びこれらの実施形態の可能な説明についての特定の詳細を提供する。しかし、当業者は、多くのこれらの詳細な説明がなくても本発明を実施し得ることを理解するだろう。さらに、周知の構造又は機能については、様々な実施形態の関連する説明を不必要に曖昧にしないように、詳細に示さず、又は説明しないことがある。以下に提示される説明において使用される用語は、本発明の特定の具体的な実施形態の詳細な説明と併せて使用されている場合であっても、最も広義の妥当な様式で解釈されることが意図される。
【0018】
図1は、単方向力センサを有するハンドツール型キャリパー100の第1の例示的な実施形態の分解組立図である。この例では、キャリパー100は、磁気式又は電磁誘導式のセンサアセンブリ158を含み、スケールトラック126(それぞれの切り欠き部が示される)を含むスケール基板125が、細長いスケール部材102に沿った溝127内に位置決めされる。他の実施形態では、他の種類のセンサアセンブリ158(例えば、容量式)を利用してもよいことが理解されるだろう。スライダアセンブリ170は、スライダ130に取り付けられた電装部160を含む。センサアセンブリ158は電装部160内に含まれる。キャリパー100の全体の機械的構造及び物理的動作は、本願と同じ譲受人に譲渡された米国特許第5,901,458号等の特定の従来の電子キャリパーの機械的構造及び物理的動作と同様であり、この特許を参照により本明細書に援用する。スケール部材102は、様々な溝及び/又は概して矩形の断面に組み込まれる他の特徴を含み得る剛性又は半剛性のバーである。スケール基板125は溝127に固く結合し得、スケールトラック126はスケール要素を含み得、スケール要素は、既知の電子キャリパーに使用され、先に援用したRE37490号特許及び5,901,458号特許並びに本願と同じ譲受人に譲渡された米国特許第6,400,138号に記載されるのと同様に、電装部160に含まれるセンサアセンブリ158の対応する要素(図示せず)と協働し、米国特許第6,400,138号を参照により本明細書に援用される。
【0019】
一対のジョー108及び110が、スケール部材102の第1の端部近傍に一体形成される。対応する対のジョー116及び118がスライダ130に形成される。ワークピースの外寸は、ワークピースをジョー108及び116の一対の係合面114間に配置することにより測定される。同様に、ワークピースの内寸は、ジョー110及び118の一対の係合面122をワークピースの対向する内面に当接して配置することにより測定される。ゼロ位置と称されることもある位置において、係合面114は互いに当接し、係合面122は位置合わせされ、キャリパー100により測定される外寸及び内寸は両方とも、ゼロと示し得る。
【0020】
測定された寸法はデジタルディスプレイ144に表示し得、デジタルディスプレイ144は、キャリパー100の電装部160のカバー140内に搭載される。電装部160は、押しボタンスイッチ141(例えば、「原点」スイッチ)」、力状態インジケータ142(例えば、2つ又は3つの色灯)、及び信号処理・表示回路基板150も含み得る。より詳細に後述するように、押しボタンスイッチ141は、一実施態様では、力閾値を設定するためにプロセスの一環として利用し得、力状態インジケータ142は、力閾値信号を提供するために利用し得る(例えば、力が所望の測定範囲内にある場合には「緑」、力が所望の測定範囲を超えた場合には「赤」)。信号処理・表示回路基板150は、加速度計156及び読み取りヘッド信号処理・制御回路159を含み得る。より詳細に後述するように、いくつかの実施形態では、加速度計156からの出力を、少なくとも1つの力成分の特定に利用し得る。いくつかの実施形態では、加速度計からの出力を利用して、キャリパーが有効な力測定の正確な向きにない場合を判断し得、その場合、警告信号をユーザに提供し得る。
図1に示されるように、信号処理・表示回路基板150の底面は、スケール部材102の片側でスライダ130の上面に当接するように搭載し得る。
【0021】
力測定アセンブリ180がスライダ130に搭載される。この特定の実施形態では、力測定アセンブリ180は力感知装置を含み、この特定の実施形態では、力感知装置は歪み測定アセンブリ181により提供され、力測定アセンブリ180は、この特定の実施形態では、力アクチュエータアセンブリ182を含む。歪み測定アセンブリ181は、歪みセンサ183、歪み要素184、及び歪み要素アクチュエータ186を含む。歪みセンサ183は、歪み要素アクチュエータ186と係合することにより歪み要素184が湾曲する際、該歪み要素184に与えられる歪みの量を示す電気信号を生成する。歪み要素アクチュエータ186は、力アクチュエータアセンブリ182又はその一部に機械的に結合される。力アクチュエータアセンブリ182は、サムホイール191、力アクチュエータ本体192、ガイドロッド/軸受194、及び力アクチュエータ用のばね定数ばね196を含む。ユーザがサムホイール191を押して、スライダ130をスケール部材102の第1の端部に向けて移動させると、歪み要素アクチュエータ186が前方に押されて、歪み要素184をさらに湾曲させ、歪みセンサ183はこれを電気信号に変換する。
【0022】
力アクチュエータ用のばね定数ばね196は、スライダ130のガイドロッド/軸受穴195内に受けられるガイドロッド/軸受194の周囲に配置される。ユーザがサムホイール191を押して、スライダ130をスケール部材102の第1の端部に向けて移動させると、力アクチュエータ用のばね定数ばね196が圧縮される。より詳細に後述するように、力アクチュエータ用のばね定数ばね196の利用により、より広範な位置にわたって、より緩やかに力を増大又は低減させることができる。重要なことは、これが、測定プロセス中に所望量の力を提供するように制御を及ぼそうとする場合、ユーザにより正確な制御及びよりよい「感覚」を生じさせるということである。
【0023】
図2は、双方向力センサを有するハンドツール型キャリパー200の第2の例示的な実施形態の分解組立図である。その他の点では、キャリパー200はキャリパー100と同様であり得、そのため、重要な違いのみについて
図2に関して説明する。キャリパーの特定の部分は、双方向力センサの様々な構成要素をより明確に示し得るように、
図2から省かれている。
【0024】
キャリパー200とキャリパー100との主な違いは、ガイドロッド/軸受194が力アクチュエータ用のばね定数ばね296の2つの部分296Aと296Bとの間をつないでいることであり、力アクチュエータ用のばね定数ばね296もまた、いくつかの実施形態では、2つの別個のばねであり得る。
図2に示されるように、2つの力アクチュエータ用のばね定数ばね296A及び296Bは、ガイドロッド/軸受194の周囲に配置され、ガイドロッド/軸受194に固定される仕切り296C(例えば、Cクリップリング)に当接する。この構成では、ユーザがサムホイール191を押して、スライダ130をスケール部材102の第1の端部に向けて移動させると、力アクチュエータ用のばね定数ばね296Aが、
図1の力アクチュエータ用のばね定数ばね196の動作と同様に、圧縮する(例えば、ワークピースの外寸を測定する場合)。しかし、ユーザがサムホイール191を逆方向に移動させると(すなわち、スケール部材102の逆端部に向けてスライダ130の方向を逆にする)、アクチュエータばね定数ばね296Bが圧縮する(例えば、ワークピースの内寸を測定する場合)。このようにして、双方向測定構成が、ばね定数ばね296A及び296Bを用いて達成される。
【0025】
一構成例では、キャリパー200の全般動作は以下のように説明し得る。キャリパーは、ゼロセット位置において開始し得る。ゼロセット位置において、キャリパーは一般に、双方向測定範囲の中間にあり、ここで、力アクチュエータ用のばね定数ばね296A及び296Bはそれぞれ、おおよそ等しく付勢される。歪み要素184も、ゼロセット位置においてその範囲の中間付近に付勢される。ユーザがサムホイール191を押して、ばね定数ばね296Aを圧縮する場合、限度位置L−外測に達し得る。限度位置L−外測は、外側測定力限度に対応し得る(例えば、ワークピースの外寸を測定する場合)。例えば、圧縮されたばね296Aは、その密着高さに達し得、加えられる力の増大に伴う歪み要素184のさらなる偏向を阻止し、意味のある力測定を阻止する。同様に、ユーザがサムホイール191を逆方向に移動させる場合、限度位置L−内測に達し得る。限度位置L−内測は、内側測定限度に対応し得る(例えば、ワークピースの内寸を測定する場合)。一実施態様では、限度位置L−外側及びL−内測は、ばね296A、296B、及び/又は歪み要素184がいつ望ましくない範囲に入るかに従って決定し得る。望ましくない範囲は、ばねがおおよそ密着高さに達しているため、力の感度が比較的ないか、又は出力が許容できないほど非線形になりつつあるポイントに達するばねにより定義し得る。一実施形態では、他のいかなる力限度にも達していない場合、限度位置L−外側又はL−内測に到達すると、歪み要素から、「赤」力状態インジケータ灯142の作動を引き起こして、力が所望の測定範囲を超えたことを示す出力を生成し得る(例えば、キャリパー信号処理において実施されるトリガ限度に基づいて)。
【0026】
図2の双方向測定構成が、2つの力アクチュエータ用のばね定数ばね296A及び296Bを用いて達成されるものとして示されるが、他の構成を実施してもよいことが理解されるだろう。例えば、代替の実施形態では、両端部が取り外せないように取り付けられた単一の力アクチュエータ用のばね定数ばねを利用してもよい。そのような構成では、同じばねを引っ張るか、又は押すことにより、必要な力を達成することができる。測定がワークピースの外寸の測定である特定の一例の説明では、そのようなばねは、3N〜5Nの範囲の力を用いて2mm〜4mm圧縮することができる。ワークピースの内寸の測定の場合、ばねは、3N〜5Nの範囲の力で2mm〜4mm伸ばすことができる。一般に、そのような実施形態及び/又は
図2の実施形態に関して、特定の実施態様では、本発明者は、特定の人間工学特徴を提供するために、0.25N/mm〜6N/mmの範囲を有するばねの使用が望ましいと判断した。制御された力を加えながらキャリパーを使うとき、一般に片手のいくつかの指でキャリパースケールを把持し(したがって、キャリパーに対して手の大部分を固定する)、1本の指はスライダも包み得、そして親指を手に対して移動させて、力アクチュエータをスライダに対して調整し得ることを理解されたい。したがって、手の他の部分に対する親指の好都合の移動量が制限される。一般に、0.25N/mm限度により、有用な量の力変動を、手の他の部分に対する親指の好都合で快適な移動量内で提供し得ることが保証され、その一方で、測定力を受けて曲がったり、且つ/又はクリープが生じるおそれがあるワークピースに対しても、上限6N/mmにより、親指の小さな動きでの力変動が、ユーザが容易で安定した制御にとって高感度すぎると感じるほど大きくはないことが保証される。換言すれば、本発明者は、このばね定数範囲が、望ましい測定感触をユーザに提供することを発見した。レバー、ギア、又は他の既知の機械要素の使用を通して、他の実施形態では他のばね定数(例えば、0.05N/mm〜20N/mmの範囲内)を使用し得るように、指の変位と力との関係を変更し得ることが理解されるだろう。いくつかの実施形態では、他のばねタイプ(例えば、弾性ポリマー材料)を使用して、ばね定数ばねを提供し得る。
【0027】
図3は、力アクチュエータ用のばね定数ばね296Aのばね定数よりも高いワークピースばね定数を有する、ワークピース310を測定する
図2のハンドツール型キャリパーの分解組立図である。
図3に示されるように、ワークピース310は、ジョー108に向かって移動しているジョー116に係合され、且つ/又はジョー116により圧縮される。ワークピース310の圧縮量は、寸法DISPwpにより示され、これは、ワークピースが圧縮される際のワークピースの変位量を示す。アクチュエータ本体192の対応する移動及びアクチュエータばね定数ばね296Aの圧縮(ワークピースの圧縮の増分を提供する力の増分を提供する)は、寸法DISPactにより示される。以下の式は、寸法、加えられる力、及び各ばねのばね定数の間の様々な関係を示す。
DISPact=ΔF/Kact (式1)
DISPwp=Δmeas=ΔF/Kwp (式2)
DISPact/DISPwp=[ΔF/Kact]/[ΔF/Kwp]=Kwp/Kact (式3)
【0028】
式1に示されるように、アクチュエータの変位DISPactは、力差ΔFをアクチュエータばねの定数Kactで割ったものに等しい。式2に示されるように、ワークピースDISPwpの圧縮変位は、測定差Δmeasに等しく、Δmeasは、力差ΔFをワークピースの圧縮定数Kwpで割ったものに等しい。式3に示されるように、アクチュエータの全体変位DISPactを、ワークピースの圧縮変位DISPwpで割ったものは、ワークピースの圧縮定数Kwpを、アクチュエータばねの圧縮のばね定数Kactで割ったものに等しい。
【0029】
式1〜3の上記関係から、いくつかの実施形態では、アクチュエータばね296A及び296Bが、予期されるワークピースばね定数よりも低いこと(すなわち、ワークピースばね定数圧縮定数Kwpよりも低いアクチュエータばね定数圧縮定数Kact)が望ましい。非常に剛性が高い硬質の金属製ワークピースの場合、そのようなワークピースはあまり圧縮されず、加えられる力を上手く制御する必要がないため、高い力アクチュエータばね定数又はさらに剛性の高い力アクチュエータが許容可能であり得る。しかし、これは、加えられる測定力に応じた測定寸法まで圧縮される軟らかいワークピースには当てはまらない。そのようなワークピースの場合、アクチュエータばね296A及び296Bのばね定数は、測定再現性及び人間工学的考察の両方により重要である。これらは一般に、上で概説したように、サムホイール191のユーザによる移動に対する「親指感度」の変位許容差に関連する。換言すれば、サムホイール191の移動が、許容可能な「測定感覚」をユーザに提供することを保証することが望ましい。上述したように、特定の一実施態様例では、力アクチュエータ用のばね定数ばね296A及び296Bが0.25N/mm〜6N/mmの範囲内にあることが望ましいことがある(例えば、特定の一実施態様例では、0.6N/mmばねが許容可能な測定感覚を提供した)。
【0030】
図4A及び
図4Bは、硬質及び軟質ワークピースのそれぞれの測定データ及び関連する考慮事項を示すグラフ400A及び400Bである。
図1に関して上述したように、特定の実施態様では、信号をユーザに提供して、測定力読み取り値が所望の範囲に入ったときを示し得る(例えば、所望の測定力範囲に入ると、
図1の力状態インジケータ142において緑色光を提供し得る)。さらに、いくつかの実施態様では、大きすぎる力が加えられている場合、別のインジケータを提供することが望ましいこともある(例えば、
図1の力状態インジケータ142において赤色光を提供して、大きすぎる力が加えられているとき(力過大状態)を示す)。これに関して、許容可能な測定力範囲の最小力閾値(下限値)を確立し得(例えば、緑色光を作動せる)、最大力閾値(上限値)を確立得る(例えば、赤色光を作動させる)。
図4Aに示されるように、最小力閾値TminOは、いくつかの実施形態では、力測定データポイントでの接触前変動を超えるレベルに設定し得、接触前変動はワークピースとの接触前に生じ、一般に、スライダの摩擦力(そして、いくつかの場合では、重力)を表す。最大力閾値TmaxHwpは、キャリパーの力感知範囲内にあるレベルに設定し得、予期される「硬質」ワークピースが過度に変形しない許容可能な力レベルの上限を示す。寸法RangeHwpは、最小力閾値TminOでの測定と最大力閾値Tmax−Hwpでの測定との測定位置差を示す。一般に、
図4Aに示されるような硬質ワークピース(すなわち、高ばね定数ワークピース)の場合、Tmaxを比較的高く設定して、広範囲の許容可能測定力を提供し得、TminとTmaxとの間のいかなる力もなお、所望の再現性範囲DRep内(例えば、いくつかの実施形態では、測定値の下位1~2ビット内又はこれら未満)の測定を生成し得る。逆に、
図4Bに関してより詳細に後述するように、軟質(すなわち、軟らかい)ワークピースの場合、測定に同様の所望の再現性DRepを達成するために、異なるTmaxを利用する必要があり得る。
【0031】
図4Aに示される硬質ワークピースの場合よりも軟らかいワークピースの場合、
図4Bに示されるように、ワークピースと接触すると、力曲線の傾きは大きく異なる。換言すれば、ばね定数がより低く、力曲線の傾きがより漸次的であるため、仮に最大力閾値Tmax−Hwpが、
図4Aの硬質ワークピースに利用されたものと同じレベルである場合、ワークピースはキャリパーのジョー内ではるかに大きく圧縮/変形することになり得、それにより、力変動による測定変化はより大きい。
図4Bに示されるように、寸法RangeCwpは、最小力閾値TminOでの測定と、「硬質ワークピース」最大力閾値TmaxCHwpでの測定との測定位置差を示す。RangeCwpが所望の再現性DRepを超えてしまうことが分かり得る。
図4Aにおいて達成された所望の再現性DRepを達成するために、より低い最大力測定閾値TmaxCwpを利用し得る。より低い最大力閾値Tmax−Cwpを利用することにより、より望ましい再現性Range’Cwpを達成し得、これは所望の再現性DRepにおおよそ一致する。この説明に基づいて、使いやすさの考慮と正確性の考慮とのバランスをとるために、いくつかの実施形態では、力キャリパーが、硬質ワークピース及び軟らかいワークピースのそれぞれに適する異なる最大力基準を有する少なくとも2つの測定モードを有することが有利であり得ることが分かるだろう。
図5及び
図6に関してより詳細に後述するように、軟質、又は軟らかいワークピースの最大力閾値の設定に、様々な技法を利用し得る。信号力レベルとは対照的に、許容可能測定力範囲が、寸法測定が許容可能なことを示す基準として好ましいことがあることを理解し得る。そのような場合、ユーザは、示される許容可能(且つ/又は非許容)範囲内の様々な力を適用し得、ディスプレイにおいて変化する測定の感度をリアルタイムで観測し得、一般に、所望の測定値を読み取るために馴染みがあり直観的に理解可能なようにキャリパーを操作し得る。
【0032】
図5は、比較的軟らかいワークピースに関連する理想化された測定データ並びに関連する信号処理及び動作の検討を示すグラフ500である。
図5においてポイントAに示されるように、力は加えられておらず、測定位置は開始位置にある。ユーザが、アクチュエータ(例えば、力アクチュエータアセンブリ182’)を通して力の付与を開始して、スライダを移動させると、スライダの摩擦力をまず克服しなければならず、そのために、グラフはポイントBに移る。ポイントBからCまで、スライダはワークピースに向かって移動し、この間のスライダ移動中のデータポイントは、ジョーとワークピースとの接触前の微小な力変動の平均レベルがTcompであることを示しており、この力変動の主な成分は、この例では、スライダの摩擦力である。ポイントCにおいて、ワークピースに接触し、力が増大する。ポイントDにおいて、力閾値TminOまで力が増大し、許容可能測定力範囲のインジケータが作動し得る(例えば、緑色光を
図1の力状態インジケータ142において提供し得る)。ポイントDとEとの間で、ユーザは、アクチュエータ力を増大させることにより、引き続き、軟らかいワークピースをキャリパーのジョーに押し付け、力が増大するにつれて、位置読み取り値を増大させる。ポイントEにおいて、力閾値TmaxCwpまで力が増大し、非許容測定力範囲のインジケータが作動し得る(例えば、赤色光を
図1の力状態インジケータ142において提供し得る)。ポイントEとE’との間で、ユーザはアクチュエータ力を増大させないが、この特定の例では、ワークピースクリープが生じるおそれがある(すなわち、力が一定に保たれる場合であっても、ワークピースが圧縮され続ける)。
【0033】
ポイントE’とFとの間で、ユーザは、アクチュエータ力を低減し始め得、この力低減はなお、逆方向への摩擦力を克服せず、摩擦力範囲内の「力緩和」を構成する範囲内にあるため、関連する位置変化を有さないことがある。しかし、変位を伴わない力低減をポイントFにおいて感知し得、いくつかの実施形態及び/又は特定の場合では、さらに後述する実施形態等の力逆転信号処理モードを始動させ得る。ポイントFとGとの間では、ユーザはアクチュエータ力を引き続き低減し得、これは、ポイントGまで関連する位置変化を有さないことがあり、摩擦力は逆方向において克服され、スライダは逆方向に移動を開始する。ポイントGとHとの間では、ユーザは、アクチュエータ力を低減し続け得、次に、逆方向にアクチュエータ力を提供し得(正から負の力極性への変化)、キャリパーのジョー内の軟らかいワークピースは、元の形状に戻り始め、アクチュエータ力が低減されるにつれて、位置読み取り値を低減させる。ワークピースに残りの「セット」がないと仮定すると、ポイントHにおいて、ジョーはワークピースから離れ、スライダはポイントJに向かって移動し、ユーザはアクチュエータ(例えば、力アクチュエータアセンブリ182’)を通して比較的一貫した負極性の力を及ぼして、スライダを移動させ、該スライダ移動中のデータポイントは、接触前の微小な力変動の平均レベルがTcomp−negであることを示しており、この例では、主な成分はここでも、スライダの摩擦力である。
【0034】
従来技術によるキャリパーに関連して考慮されないいくつかのポイントを
図5に関連して考慮し得る。第1の「力/変位曲線」がポイントCとEとの間で観測され、この曲線が部分的にスライダの移動履歴に依存することを理解されたい(例えば、ポイントCには、おおよそ力レベルTcompにおいて図の左から連続して近づく)。逆に、この例では、摩擦の影響により、ポイントCとEとの間とおおよそ同じ力範囲である、ポイントE(又はF)とポイントGの間で第2の力/変位曲線が観測され、力TminOにおいて、例えば、2つの大きく異なる位置測定値が、第1及び第2の力/変位曲線から取得し得る。これらの位置測定値の潜在的な差は、摩擦力(この特定の例では、共におおよそTcompにTcomp−negに加えたものに等しい)と、軟らかいワークピースのばね定数との関係に依存し得る。場合によっては、この差は、所望の再現性よりも大きくなり得る(例えば、比較的より軟らかいワークピース及び/又は比較的高い摩擦の場合)。したがって、いくつかの実施形態では、信号処理が、これらの2つの力/変位曲線を区別し、「許容可能測定力の閾値又は範囲」を所望のワークピース測定を示すための基本のみとして単に示すだけではないことが望ましい。これ及び下に概説する他の理由により、いくつかの実施形態では、信号処理電子回路は、対になった力データサンプルと位置データサンプルの履歴(例えば、一実施形態では、所定の長さの常時更新されるシーケンス)を保持し得、力逆転感知・指示ルーチンを含む。
【0035】
信号処理電子回路は、履歴(例えば、時間期間、移動量、又はこれら両方に基づく頻度)を頻繁に解析し、その解析に基づいて様々な動作を統制するように構成し得る。例えば、いくつかの実施形態では、信号処理電子回路は、閾値TminOを超えることを検出するルーチンを含むとともに、「TminO」を超えるデータを解析してワークピースばね定数を特定する「ばね定数」特定ルーチンを含み、力及び位置は、連続サンプル間で力及び位置変化との一貫した関係を有する(例えば、両方とも、
図5のDとEとの間の塗りつぶされていない四角データポイントで示されるように増大する)。
図5に示されるように、上で概説したように適格な(例えば、力に関してTminOを超え、力と位置変化との一貫した関係を有する)データから特定されるワークピースばね定数に基づいて、所望の再現性又は許容差を使用して、その特定のワークピースばね定数に所望の「自動的にカスタマイズされる」力上限TmaxCwpを決定し得る。これをリアルタイム(又は準リアルタイム)で行い得、それにより、ユーザが新しい軟らかいワークピースを圧縮する際であっても、固定の力上限閾値を使用するのではなく、おおよそ、自動的にカスタマイズされた力上限TmaxCwpを超える場合、非許容可能測定力範囲のインジケータを作動させ得る(例えば、赤色光を
図1の力状態インジケータ142において提供し得る)ことが理解されるだろう。図示の例では、力上限TmaxCwpは、[(TmaxCwp)−(TminO)]
*[ワークピースばね定数]=所望の再現性であるように設定される。当然、上で概説した動的な力上限ではなく、固定の力上限閾値、動的若しくは固定のTminOに対する固定力量での、又はユーザにより入力される力上限閾値での力上限閾値、或いは固定の現場又は工場で較正又は再較正される閾値を、力キャリパーの様々な他の実施形態又は動作モードで使用してもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、信号処理電子回路は、閾値TminOを超えていることを検出するルーチンを含むとともに、連続サンプル間での力と位置変化との予期される関係の変化について、TminOを超えるデータを監視する「力逆転」ルーチンを含み得る。例えば、データポイントDとEとの間の複数の連続データ(例えば、
図5の塗りつぶされていない四角のデータポイント)を解析することにより、ルーチンは、力及び位置の両方が、サンプル間で正方向(又は極性)に有意な量だけ変化する関係を特定し得る。逆に、E’とFとの間(そしてGに続く)では、力は大きく低減し(変化の前の極性が逆転する)、その一方で、位置は、
図5のE’、F、及びGの間の塗りつぶされた四角いデータポイントで示されるように、大きく変化しない。したがって、これらの差に基づいて、ルーチンは、第2の力/変位曲線に対応するE’とF(及び/又はそれを超えて)の間での逆転力変化極性を特定し得、それに従って信号処理動作及び/又はユーザへの表示を変更し得る。そのようなルーチンでは、力状態インジケータを使って有効な測定条件であるか否かを示すために、許容可能力範囲内にある力信号の単純な基準(許容可能力範囲の上限/下限を示す基準)に加えて、有効なワークピース測定のために満たさなければならない別の基準(力逆転が生じたことを判断するための基準)も適用される。いくつかの実施形態では、力逆転ルーチンの基準は、上で概説された原理により、特定されたワークピースばね定数、及び/又は所望の再現性、及び/又は摩擦若しくは補償力の量、及び/又は逆転前のワークピースの見掛け圧縮量の考慮を含み得る。したがって、いくつかの実施形態では、力逆転基準は、いくつかのワークピース及び/又は測定手順中、力逆転の場合に力逆転表示を表示させ得、その他の手順中には表示させ得ない。
【0037】
TmaxCwpが力逆転前に超えられていない場合、位置読み取り値はなお所望の再現性又は許容限度内にあり得るため、信号処理動作及び/又はユーザへの表示を変更する必要がないことがあることが理解されるだろう。しかし、この場合、実際の再現性はいくらか、第1及び第2の力/変位曲線での測定を区別できないことにより劣化し得る。逆に、
図5を参照して分かり得るように、力がTmaxCwpを超えた場合、第2の力/変位曲線に沿って、力範囲インジケータは必ずしも、単純にTmaxCwp未満に戻る力に基づいて再び許容可能(例えば、緑色)に切り替える必要はない。例えば、軟らかいワークピースの場合、
図5に示されるように、摩擦量に応じて、E’とGとの間の垂直線に対応する「無効力範囲」寸法は、力読み取り値がTmaxCwp未満に戻るにも拘わらず永続し得る(例えば、ポイントFとF’との間の「有効力範囲」内で)。したがって、いくつかの実施形態では、信号処理電子回路は、閾値TmaxCwpを超えることを検出し、「範囲外」表示をオンにするルーチンを含み得るとともに、閾値TmaxCwpが特定のばね定数及び/又は摩擦力で超える場合、力がTminOとTmaxCwpとの間の元の「許容可能範囲」に戻りつつあるにも拘わらず、「範囲内」表示(例えば、緑色インジケータ灯)を差し止め、且つ/又はエラー状況を示し、且つ/又はユーザに特定の行動をとるように促す「力逆転」ルーチンを含む。例えば、一実施形態では、力がこのようにして逆転する場合、且つ/又はユーザがスライダをある方向に移動させて、第1の力/変位曲線に戻ることができる(例えば、矢印プロンプトの方向に移動することにより)位置を達成すべきことを示すプロンプト(例えば、矢印)がキャリパーディスプレイに提供される場合、第3の色灯(例えば、黄色)が提供されるか、又は点滅光が作動する。そのような一実施形態では、第1の力/変位経路に沿った第1の位置読み取り値(例えば、TminOを超える最初のデータポイント)は特にメモリに保持され、位置が最終的にこの値未満になった場合(例えば、ポイントHにおいて)、新しいプロンプト及び/又は表示(例えば、インジケータ灯がオフになり、且つ/又は矢印が消えて通常表示になるか、又は矢印が方向を逆にする)が、ユーザが再びスライダを移動させて、ワークピースに近付け、第1の力/変位曲線に沿った所望の測定を達成し得ることを示す。
【0038】
上述したように、信号処理電子回路は、対になった力データサンプルと位置データサンプルの履歴を保持し得、履歴を頻繁に解析し、その解析に基づいて様々な動作を統制し得る。例えば、いくつかの実施形態では、信号処理電子回路は、位置が大きく変化していない(例えば、最後の力変化が、最後の位置変化に鑑みて最小ばね定数に予期される量未満である)か、又は所定若しくは最近解析された力ノイズレベル、若しくは摩擦レベル等の範囲外にない間、位置が大きな量、変化しているか、又は高速で変化していることを検出するルーチンを含む。この状況は、
図5のBとCとの間、又は別の場合では
図5のHとJとの間に示される接触前データポイントに対応する。この状況が所定数のデータポイントにわたって満たされる場合は常に、信号処理ルーチンは平均値(又は中央値、又は最大、又は他の所望の値)を計算し得、この値がTcomp(又は移動方向に応じてTcomp−neg)に使用される。そのような場合、ルーチンは、接触前データポイントの散乱(例えば、3標準偏差又は最も極端な力データポイントを少し超えてなど)に基づいて、Tcomp又はTcomp−negに相対してノイズ閾値を決定することもできる。一実施形態では、TminO(及び/又はその逆極性の相手方のTminO−neg)の動的な値を自動的に、対応するノイズ閾値又はそれをわずかに超えて設定し得る。あるいは、ノイズ閾値は、Tcomp(又はTcomp−neg)に使用すべき代表的な値としてみなすことができ、TminO(及び/又はその逆極性の相手方のTminO−neg)の動的な値を自動的に、Tcomp(又はTcomp−neg)又はそれをわずかに超えて設定し得る。当然、力キャリパーの様々な他の実施形態又は動作モードにおいて、上で概説した動的な値ではなく、工場で較正されたか、又はユーザにより入力されるか、又は現場での較正若しくは再較正手順により確立される固定値をTcomp(又はTcomp−neg)に使用してもよい。
【0039】
接触前移動方向逆転が、大きな位置変化なしで「B〜C」データ力レベルと「H〜J」データ力レベルとの間をジャンプする力変化を生み出すことが理解されるだろう。信号処理電子回路は、この状況を検出して、適切なデータポイントでTcomp又はTcomp−negの特定を開始し終了するルーチンを含み得る。いくつかの実施形態及び/又は動作モードでは、信号処理電子回路はTcomp又はTcomp−negを自動的に更新し得る。当然、いくつかの実施形態及び/又は動作モードでは、信号処理電子回路は、Tcomp又はTcomp−negを、工場において決定されるか、ユーザにより決定されるか、又は単一の現場較正に基づいて決定される固定レベルに設定し得る。
【0040】
いずれの場合でも、Tcomp(又はTcomp−neg)が、ワークピースと接触していない場合に存在し、ワークピースに対する測定力が増大する際に変化しないという点で、測定力から独立した力成分であることが理解されるだろう。したがって、ワークピースに加えられる実際の力に関連する1つ又は複数の測定力閾値(例えば、許容可能力範囲限度)を設定するために、独立力成分Tcomp(及び/又はTcomp−neg)及び、いくつかの実施形態では関連するノイズを推定し、これらの「補償力」に対してそのような力限度を設定することが望ましい。別の言い方をすれば、ユーザがワークピースに加える力の量の変動に依存しないこれらの「補償力」を使用して、力測定閾値を設定し、ワークピースに実際に加えられる測定力成分を統制し、寸法測定のために関連付けられた許容可能力範囲を示し得る。
【0041】
許容可能力下限TminOに関して、様々な実施形態では、Tcompに相対して設定することが望ましい。例えば、上で概説したように、いくつかの実施形態では、TminOを、Tcompをわずかに超えて、且つ/又は摩擦ノイズが大きい場合には、「摩擦力ノイズ」マージンを設けて若しくはこのマージンをわずかに超えて設定することが望ましいことがある。これは、比較的より軟らかいワークピースの場合に特に望ましいことがあり、その理由は、より軟らかいワークピースが比較的低いワークピース変形及び/又はクリープに対応するためである。比較的剛性のあるワークピース(例えば、金属ブロック)の場合、TminOを、Tcomp及び/又は「摩擦力ノイズ」マージンを大きく超えて設定することが望ましいことがあり、その理由は、この場合、ワークピース変形及び再現性が損なわれないためであり、TminOを独立力成分からより広いマージンで設定することにより、不要な高感度力範囲表示等なしで、ワークピースをキャリパージョーに対してより容易又はロバストに位置合わせすることに関して、ユーザ経験をよりよくすることができ得る。
【0042】
非常に軟らかいワークピースの場合、キャリパーが許容可能な測定力範囲及び有効なワークピース測定に関連する追加の動作、モード、並びに/或いはルーチン及び/又は特徴を含むことが望ましいことがある。非常に軟らかいワークピースの場合、TminOのTcompを超えるマージンを小さく設定しても、TminOにおいて大きなワークピース変形が生じるおそれがある(例えば、薄い壁のプラスチック管)。又は、別の場合では、TminOでの非常に軟らかいワークピース測定再現性は、力信号の摩擦力成分の「ランダム」な変動(摩擦「ノイズ」)により不良であり得、これは、TminO(及び他の力レベル)でワークピースに実際に加えられる力及びその結果生じるワークピース変形をその「摩擦ノイズ」に対応して変動させる。この状況は、上で概説したデータのいくつかに基づいて代表的な測定を計算する「超軟質」ワークピースモード又は信号処理ルーチンを含むことにより改良することができる。上述したように、キャリパーは、力及び位置が、力及び位置の変化との一貫した関係を有する、「TminOを超える」データを解析して、ばね定数を特定する「ばね定数」特定ルーチンを含み得る。例えば、いくつかのデータポイントに基づいて、ばね定数である傾きを有する最良近似力/変位線を特定し得る。これも上で示したように、Tcompは複数のデータポイントに基づいて決定してもよい。理想的な場合、Tcompに対応する最良近似力/変位線上の点が、ワークピースに正に接触するが、ワークピースが変形しないようにワークピースに加えられる力がおおよそゼロである場所にあることが理解されるだろう。これは、ワークピースの真の寸法を近似する。Tcomp及び最良近似力/変位線は両方とも複数のデータポイントに基づくため、最良近似力/変位線上の「ゼロ力」測定の再現性は、TminO等における1回の測定から向上する。したがって、いくつかの実施形態では、データは、許容可能測定力範囲内で収集し得、許容可能測定力範囲は、この動作モード及び/又はルーチンのために固定範囲であってもよく、拡大されるか、又は所定の固定範囲であってもよく、上で概説した(又は同様の原理に基づく)処理を実行し得る。次に、ユーザは、対応する動作モード又は検索動作(例えば、キャリパーの対応するボタン又は一連のボタンを押す)等に基づいて、「ゼロ力」測定を検索し、且つ/又は表示し得る。当然、様々な実施形態では、キャリパーは、ユーザが望む場合には、ゼロ力レベル(Tcompに対応する)ではなく、代表的な柔らかいワークピース測定の検索に使用すべき別の力レベルを入力又は定義することができるように構成し得る。
【0043】
上の説明は、キャリパーを開き、ワークピースの「内側」寸法を測定することに対応する、増大する力及び位置測定に関連するポイントC〜Hの周囲の力/変位曲線を参照する。キャリパーを閉じ、ワークピースの「外側」寸法を測定することに対応する、逆極性の力の増大(
図5での「−」力)及び低減する位置測定に関連する類似の力/変位曲線が、ポイントCとHとの間のデータと同様に見えるが、ポイントCがポイントHとJとの間の線に一致した状態で180度回転することが理解されるだろう。上で概説した様々な原理、挙動、及びルーチンを、キャリパーを閉じ、ワークピースの「外側」寸法を測定する場合に同様の動作を提供するように適宜構成し得ることが理解されるだろう。TminOについて説明したものと同様の考慮事項に従ってTminO−negを設定し得、他の同様の閾及び値についても同様であることが理解されるだろう。
【0044】
図6は、1つ又は複数の測定力閾値を設定する全体ルーチン600の例示的な一実施形態を示す流れ図である。ブロック610において、力信号が受信され、スライダの各位置に対応する各力が示される。ブロック620において、スライダの各位置に対応する複数の各力を含む力データが取得される。ブロック630において、力データが解析されて、測定力から独立した少なくとも1つの力成分を含む補償力が推定される(例えば、
図5を参照して上で概説したように、接触前データを解析することにより)。ブロック640において、1つ又は複数の測定力閾値が、補償力に相対して設定される。
【0045】
図6に関して上述したように力測定読み取り値を取得することにより、測定精度の向上を達成し得ることが理解されるだろう。そのような技法により対処される一側面は、キャリパーの摺動力(例えば、
図5の補償力Tcompにより示されるような)が一般に経時変動し得る(例えば、通常使用又はユーザが変更することにより)ことである。そのような場合、いずれの工場設定の最小/最大力閾値ももはや、示されるワークピース測定力を補正するために必要な正しい力成分を表さない。上述したように力測定読み取り値を取得し、閾値を設定することにより(新しい較正として、又は各測定手順に伴って動的に)、力が変化したかもしれず、且つ/又は異なる軟質レベルのワークピースが測定中である状況において、より正確な測定が生成される。
【0046】
本明細書に記載される力測定アセンブリは、歪み測定アセンブリ及び力アクチュエータアセンブリを含む。他の種類の力センサが本明細書において開示されるいくつかの特徴に適合し、ケース又はより単純にはサムホイールアセンブリ等を通してユーザが及ぼす力を感知するように構成し得ることが理解されるだろう。本明細書において開示される歪み測定アセンブリ及び/又は力アクチュエータアセンブリは、人間工学的に有利であり得るが、意図されるすべての実施形態において必要とされるわけではない。したがって、構成自体により除外される場合を除き、力の適用並びに信号処理及びルーチン等に関する様々な教示をそのような構成に適用し得、様々な実施形態において、本明細書において開示される特徴のすべて又はいくつかを組み合わせ得、本明細書において概説される付随する特徴及び利点の多くが保持されることを理解されたい。
【0047】
上記から、本発明の特定の実施形態が本明細書において例示のために説明されたが、本発明の範囲から逸脱せずに様々な変更を行い得ることが理解されるだろう。フローチャートのステップ及び本明細書において他の様式で説明される動作及びルーチンを様々な方法で変更し得ることを当業者は理解するだろう。より詳細には、ステップの順序を再構成し得、ステップを並列に実行し得、ステップを省略し得、他のステップを含み得、ルーチンの様々な組み合わせ又は省略を行い得る等である。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲による以外、限定されない。