【実施例】
【0082】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0083】
(実施例1)
導電性炭素膜の被覆に使用するCVD装置として、反応ガス導入口、キャリアガス導入口を備え、内径200mm、長さ3mの回転式円筒炉を備えたロータリーキルンを準備した。原料粒子として平均粒子径8μmの一般式SiO
x(x=0.98)で表される酸化珪素粒子20kgをタンクに仕込み、窒素雰囲気下、炉内を1050℃まで昇温、保持した。
【0084】
その後、原料粒子を1.0Kg/hの速度で炉に投入し、さらに反応ガスとしてメタン12L/min、キャリアガスとして窒素15L/minを導入した。この時、炉内圧は20Pa陽圧になるように調整した。このCVDプロセスにより、酸化珪素粒子表面に導電性炭素膜を形成し、珪素系活物質粒子を製造した。この珪素系活物質粒子をA1とする。実施例及び後述する比較例の導電性炭素膜の形成条件を、下記の表1にまとめる。
【0085】
得られた珪素系活物質粒子(A1)において、導電性炭素膜は、珪素系活物質粒子に対し4.6質量%含まれていた。また、導電性炭素膜は、ラマンスペクトルから測定(装置 堀場製作所製ラマン顕微鏡 XploRa、解析ソフトLabSpecを用いて測定)される、カーボンのdバンドのピーク強度I
dと、gバンドのピーク強度I
gの比(I
d/I
g)の値が1.43であった。また、珪素系活物質粒子の圧縮体積抵抗率0.6Ωcmであった。また、X線回折(Cu−Kα)の回折線の広がりを元に算出した珪素微結晶の結晶子の結晶子径が4.5nmであった。
【0086】
また、珪素系活物質粒子の導電性炭素膜に含まれている炭素系化合物を抽出するため、上記粒子(A1)100gを1Lセパラフラスコに仕込み、トルエン500gを加え、攪拌機にて撹拌した。トルエン還流下、3時間抽出を行った後、粒子をろ別し、トルエン層を濃縮することにより、炭素系化合物(A2)を33mg得られた。これにより、珪素系活物質粒子に対する炭素系化合物の含有量は、330質量ppmと算出できた。
【0087】
続いて、炭素系化合物(A2)をテトラヒドロフランに溶解させ、GPC測定を行い、その分子量をポリスチレン標準より作成した検量線から算出した。その結果を
図1に示す。GPCチャートが、いくつかのピークを示していることから、分子量の異なる成分の混合物であることがわかる。最も分子量の大きいピークは重量平均分子量で1378に相当した。全ピークから得られる重量平均分子量は840であった。
【0088】
また、この炭素系化合物(A2)をTMS(テトラメチルシラン)含有重クロロホルムに溶解させ、核磁気共鳴スペクトル測定装置(ブルカーバイオスピン社製 AVANCEIII400MHz)にて
1H−NMRスペクトルを測定した。その結果を
図2に示す。
図2に示す、0.6〜1.6ppmに観測されているピークは、脂肪族炭化水素基に由来するものと帰属でき、また、7.3〜9.2ppmに観測されているピークは、芳香族炭化水素基に由来するものである。0ppmのピークはTMS、7.2ppm付近のピークは、クロロホルムの残留ピークである。
【0089】
次に、炭素系化合物(A2)を含む珪素系活物質粒子(A1)を負極活物質として用い、以下のような電極作製、コインセル作製、電池評価、ガス発生評価を行った。
【0090】
<電極作製>
上記で作製した珪素系活物質粒子(A1)を90質量%とポリイミド(新日本理化製リカコートEN−20)を10質量%(固形分換算)で混合し、さらにN−メチルピロリドンを加えてスラリーとした。このスラリーを厚さ11μmの銅箔の片面に塗布し、100℃で30分乾燥後、ローラープレスにより電極を加圧成形し、この電極を300℃で2時間真空乾燥した。その後、面積が2cm
2となるように円形カットし、負極とした。
【0091】
さらに、コバルト酸リチウム94質量%とアセチレンブラック3質量%、ポリフッ化ビニリデン3質量%を混合し、さらにN−メチルピロリドンを加えてスラリーとし、このスラリーを厚さ16μmのアルミ箔に塗布した。このアルミ箔に塗布したスラリーを、100℃で1時間乾燥後、ローラープレスにより電極を加圧成形し、この電極を120℃で5時間真空乾燥した後、面積が2cm
2となるように円形カットし、正極とした。
【0092】
<コイン型電池作製>
作製した負極及び正極、LiPF
6をエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=1:1(体積比)の混合溶液に1mol/Lの濃度となるよう溶解させた非水電解液、厚さ20μmのポリプロピレン製微多孔質フィルムのセパレータを用いて評価用コイン型リチウムイオン二次電池を作製した。
【0093】
<電池評価>
作製したコイン型リチウムイオン二次電池を一晩室温で放置した後、二次電池充放電試験装置((株)ナガノ製)を用いて充放電を行った。まずテストセルの電圧が4.2Vに達するまで0.5CmAの定電流で充電を行い、4.2Vに達した後は、セル電圧を4.2Vに保つように電流を減少させて充電を行い、電流値が0.1CmA相当まで充電を行った。放電は0.5CmA相当の定電流で行い、セル電圧が2.5Vに達した時点で放電を終了し、以上の操作によって初回充放電容量及び初回充放電効率を求めた。さらに、以上の充放電試験を繰り返し、評価用リチウムイオン二次電池の100サイクル後の充放電試験を行った。評価結果は、初期からの放電維持率が85%以上をA、75〜85%未満をB、65〜75%未満をCと表記した。評価結果は表1に記載した。
【0094】
<ガス発生試験>
珪素系活物質粒子(A1)を1.0gと、1M LiPF
6のEC:DEC=1:1電解液1.0gとを、露点−50℃以下のドライルーム内にて、ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(GC:アジレント製6890N、ヘッドスペース:アジレント製7697Aを使用)の専用バイアルに仕込み、封止した。このバイアルを60℃にて1週間保管後、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーにセットし、打ち込み量1mLにて測定を行った。標準サンプルにて検量線を引き、換算した発生ガス体積が2.0μL未満をA、2.0〜3.5μLをB、3.5〜5.0μLをC、5.0μLより多いものをDとした。試験結果は表1に記載した。
【0095】
(実施例2)
ロータリーキルン、酸化珪素粒子は実施例1で使用したものと同じものを用い、炉内温度970℃、反応ガスとしてメタン21L/min、キャリアガスとして窒素14L/minを炉内に導入しながら、1.5kg/hの速度で粉体粒子を炉内に投入した。この間、炉内圧力は6Pa陽圧を保った。このCVDプロセスにより、酸化珪素粒子表面に導電性炭素膜を形成し、珪素系活物質粒子を製造した。この珪素系活物質粒子をB1とする。
【0096】
得られた珪素系活物質粒子(B1)において、導電性炭素膜は、珪素系活物質粒子に対し3.2質量%含まれていた。また、導電性炭素膜は、ラマンスペクトルから測定される、カーボンのdバンドのピーク強度I
dと、gバンドのピーク強度I
gの比(I
d/I
g)の値は1.03であった。また、珪素系活物質粒子の圧縮体積抵抗率0.9Ωcmであった。またX線回折(Cu−Kα)の回折線の広がりを元に算出した珪素微結晶の結晶子の結晶子径が3.1nmであった。また、
1H−NMRスペクトルにおいて、0.6〜1.6ppm及び、7.3〜9.2ppmの両方の範囲にピークを有していた。
【0097】
また、実施例1と同様の手順で珪素系活物質粒子(B1)100gから、炭素系化合物(B2)を抽出した。その結果、炭素系化合物(B2)は51mg得られた。これにより、珪素系活物質粒子に対する炭素系化合物の含有量は、510質量ppmと算出できた。
【0098】
続いて、炭素系化合物(B2)を、実施例1と同様の手順で、GPC測定を行ったところ、重量平均分子量は1030であった。このような珪素系活物質粒子(B1)を負極材として使用して、実施例1と同様、電極作製、コインセル作製、電池評価、ガス発生評価を行った。その結果を表1に示す。
【0099】
(実施例3)
原料粒子として使用する酸化珪素粒子と、CVDプロセス条件の条件を変更したこと以外は、実施例1と同様に、コインセル作製を作製し、電池評価、ガス発生評価を行った。
【0100】
原料粒子としては、平均粒子径4μmの一般式SiO
x(x=1.03)で表される酸化珪素粒子を使用した。また、ロータリーキルンの炉内温度1140℃、反応ガスとしてメタン11L/min及びエタン2L/min、キャリアガスとして窒素10L/minを炉内に導入しながら、1.8kg/hの速度で粉体粒子を炉内に投入した。このCVDプロセスにより、酸化珪素粒子表面に導電性炭素膜を形成し、珪素系活物質粒子を製造した。この珪素系活物質粒子をC1とする。
【0101】
得られた珪素系活物質粒子(C1)において、導電性炭素膜は、珪素系活物質粒子に対し7.2質量%含まれていた。また、導電性炭素膜は、ラマンスペクトルから測定される、カーボンのdバンドのピーク強度I
dと、gバンドのピーク強度I
gの比(I
d/I
g)の値は1.35であった。また、珪素系活物質粒子の圧縮体積抵抗率0.3Ωcmであった。またX線回折(Cu−Kα)の回折線の広がりを元に算出した珪素微結晶の結晶子の結晶子径が9.8nmであった。また、
1H−NMRスペクトルにおいて、0.6〜1.6ppm及び、7.3〜9.2ppmの両方の範囲にピークを有していた。
【0102】
また、実施例1と同様の手順で珪素系活物質粒子(C1)100gから、炭素系化合物(C2)を抽出した。その結果、炭素系化合物(C2)は23mg得られた。これにより、珪素系活物質粒子に対する炭素系化合物の含有量は、230質量ppmと算出できた。
【0103】
続いて、炭素系化合物(C2)を、実施例1と同様の手順で、GPC測定を行ったところ、重量平均分子量は920であった。このような珪素系活物質粒子(C1)を負極材として使用して、実施例1と同様、電極作製、コインセル作製、電池評価、ガス発生評価を行った。その結果を表1に示す。
【0104】
(実施例4)
原料粒子として使用する酸化珪素粒子と、CVDプロセス条件の条件を変更したこと以外は、実施例1と同様に、コインセル作製を作製し、電池評価、ガス発生評価を行った。
【0105】
実施例4では、原料粒子としては、平均粒子径4μmの一般式SiO
x(x=0.99)で表される酸化珪素粒子を使用した。また、ロータリーキルンの炉内温度1080℃、反応ガスとしてエタンを10L/min、キャリアガスとして窒素14L/minを炉内に導入しながら、1.2kg/hの速度で粉体粒子を炉内に投入した。このCVDプロセスにより、酸化珪素粒子表面に導電性炭素膜を形成し、珪素系活物質粒子を製造した。この珪素系活物質粒子をD1とする。
【0106】
得られた珪素系活物質粒子(D1)において、導電性炭素膜は、珪素系活物質粒子に対し6.2質量%含まれていた。また、導電性炭素膜は、ラマンスペクトルから測定される、カーボンのdバンドのピーク強度I
dと、gバンドのピーク強度I
gの比(I
d/I
g)の値は1.01であった。また、珪素系活物質粒子の圧縮体積抵抗率2.8Ωcmであった。またX線回折(Cu−Kα)の回折線の広がりを元に算出した珪素微結晶の結晶子の結晶子径が5.3nmであった。また、
1H−NMRスペクトルにおいて、0.6〜1.6ppm及び、7.3〜9.2ppmの両方の範囲にピークを有していた。
【0107】
また、実施例1と同様の手順で珪素系活物質粒子(D1)100gから、炭素系化合物(D2)を抽出した。その結果、炭素系化合物(D2)は36mg得られた。これにより、珪素系活物質粒子に対する炭素系化合物の含有量は、360質量ppmと算出できた。
【0108】
続いて、炭素系化合物(D2)を、実施例1と同様の手順で、GPC測定を行ったところ、重量平均分子量は400であった。このような珪素系活物質粒子(D1)を負極材として使用して、実施例1と同様、電極作製、コインセル作製、電池評価、ガス発生評価を行った。その結果を表1に示す。
【0109】
(実施例5)
原料粒子として使用する酸化珪素粒子と、CVDプロセス条件の条件を変更したこと以外は、実施例1と同様に、コインセル作製を作製し、電池評価、ガス発生評価を行った。
【0110】
原料粒子としては、平均粒子径6μmの一般式SiO
x(x=0.97)で表される酸化珪素粒子を使用した。また、ロータリーキルンの炉内温度920℃、反応ガスとしてメタンを16L/min、キャリアガスとして窒素8L/minを炉内に導入しながら、1.2kg/hの速度で粉体粒子を炉内に投入した。このCVDプロセスにより、酸化珪素粒子表面に導電性炭素膜を形成し、珪素系活物質粒子を製造した。この珪素系活物質粒子をE1とする。
【0111】
得られた珪素系活物質粒子(E1)において、導電性炭素膜は、珪素系活物質粒子に対し4.2質量%含まれていた。また、導電性炭素膜は、ラマンスペクトルから測定される、カーボンのdバンドのピーク強度I
dと、gバンドのピーク強度I
gの比(I
d/I
g)の値は1.16であった。また、珪素系活物質粒子の圧縮体積抵抗率0.8Ωcmであった。またX線回折(Cu−Kα)の回折線の広がりを元に算出した珪素微結晶の結晶子の結晶子径が2.2nmであった。また、
1H−NMRスペクトルにおいて、0.6〜1.6ppm及び、7.3〜9.2ppmの両方の範囲にピークを有していた。
【0112】
また、実施例1と同様の手順で珪素系活物質粒子(E1)100gから、炭素系化合物(E2)を抽出した。その結果、炭素系化合物(E2)は26mg得られた。これにより、珪素系活物質粒子に対する炭素系化合物の含有量は、260質量ppmと算出できた。
【0113】
続いて、炭素系化合物(E2)を、実施例1と同様の手順で、GPC測定を行ったところ、重量平均分子量は5000であった。このような珪素系活物質粒子(E1)を負極材として使用して、実施例1と同様、電極作製、コインセル作製、電池評価、ガス発生評価を行った。その結果を表1に示す。
【0114】
(比較例1)
CVDプロセス条件の条件を変更したこと以外は、実施例1と同様に、コインセル作製を作製し、電池評価、ガス発生評価を行った。
【0115】
比較例1では、ロータリーキルンの炉内温度1180℃、反応ガスとしてメタン12L/min、キャリアガスとして窒素15L/minを炉内に導入しながら、1.0kg/hの速度で粉体粒子を炉内に投入した。このCVDプロセスにより、酸化珪素粒子表面に導電性炭素膜を形成し、珪素系活物質粒子を製造した。この珪素系活物質粒子をF1とする。
【0116】
得られた珪素系活物質粒子(F1)において、導電性炭素膜は、珪素系活物質粒子に対し5.6質量%含まれていた。また、導電性炭素膜は、ラマンスペクトルから測定される、カーボンのdバンドのピーク強度I
dと、gバンドのピーク強度I
gの比(I
d/I
g)の値は1.51であった。また、珪素系活物質粒子の圧縮体積抵抗率0.5Ωcmであった。またX線回折(Cu−Kα)の回折線の広がりを元に算出した珪素微結晶の結晶子の結晶子径が12.0nmであった。また、
1H−NMRスペクトルにおいて、0.6〜1.6ppm及び、7.3〜9.2ppmの両方の範囲にピークを有していた。
【0117】
また、実施例1と同様の手順で珪素系活物質粒子(F1)100gから、炭素系化合物(F2)を抽出した。その結果、炭素系化合物(F2)は15mg得られた。これにより、珪素系活物質粒子に対する炭素系化合物の含有量は、150質量ppmと算出できた。
【0118】
続いて、炭素系化合物(F2)を、実施例1と同様の手順で、GPC測定を行ったところ、重量平均分子量は320であり400未満であった。このような珪素系活物質粒子(F1)を負極材として使用して、実施例1と同様、電極作製、コインセル作製、電池評価、ガス発生評価を行った。その結果を表1に示す。
【0119】
(比較例2)
原料粒子として使用する酸化珪素粒子と、CVDプロセス条件の条件を変更したこと以外は、実施例1と同様に、コインセル作製を作製し、電池評価、ガス発生評価を行った。
【0120】
原料粒子としては、平均粒子径4μmの一般式SiO
x(x=1.03)で表される酸化珪素粒子を使用した。また、ロータリーキルンの炉内温度850℃、反応ガスとしてプロパン9L/min、キャリアガスとして窒素15L/minを炉内に導入しながら、1.2kg/hの速度で粉体粒子を炉内に投入した。このCVDプロセスにより、酸化珪素粒子表面に導電性炭素膜を形成し、珪素系活物質粒子を製造した。この珪素系活物質粒子をG1とする。
【0121】
得られた珪素系活物質粒子(G1)において、導電性炭素膜は、珪素系活物質粒子に対し4.8質量%含まれていた。また、導電性炭素膜は、ラマンスペクトルから測定される、カーボンのdバンドのピーク強度I
dと、gバンドのピーク強度I
gの比(I
d/I
g)の値は0.88であった。また、珪素系活物質粒子の圧縮体積抵抗率2.5Ωcmであった。またX線回折(Cu−Kα)の回折線の広がりを元に算出した珪素微結晶の結晶子の結晶子径が1.8nmであった。また、
1H−NMRスペクトルにおいて、0.6〜1.6ppm及び、7.3〜9.2ppmの両方の範囲にピークを有していた。
【0122】
また、実施例1と同様の手順で珪素系活物質粒子(G1)100gから、炭素系化合物(G2)を抽出した。その結果、炭素系化合物(G2)は62mg得られた。これにより、珪素系活物質粒子に対する炭素系化合物の含有量は、620質量ppmと算出できた。
【0123】
続いて、炭素系化合物(G2)を、実施例1と同様の手順で、GPC測定を行ったところ、重量平均分子量は220であり400未満であった。このような珪素系活物質粒子(G1)を負極材として使用して、実施例1と同様、電極作製、コインセル作製、電池評価、ガス発生評価を行った。その結果を表1に示す。
【0124】
(比較例3)
原料粒子として使用する酸化珪素粒子と、CVDプロセス条件の条件を変更したこと以外は、実施例1と同様に、コインセル作製を作製し、電池評価、ガス発生評価を行った。
【0125】
原料粒子としては、平均粒子径6μmの一般式SiO
x(x=1.01)で表される酸化珪素粒子を使用した。また、ロータリーキルンの炉内温度1000℃、反応ガスとしてメタンを8L/min、キャリアガスとして窒素4L/minを炉内に導入しながら、1.5kg/hの速度で粉体粒子を炉内に投入した。このCVDプロセスにより、酸化珪素粒子表面に導電性炭素膜を形成し、珪素系活物質粒子を製造した。この珪素系活物質粒子をH1とする。
【0126】
得られた珪素系活物質粒子(H1)において、導電性炭素膜は、珪素系活物質粒子に対し3.1質量%含まれていた。また、導電性炭素膜は、ラマンスペクトルから測定される、カーボンのdバンドのピーク強度I
dと、gバンドのピーク強度I
gの比(I
d/I
g)の値は1.23であった。また、珪素系活物質粒子の圧縮体積抵抗率2.1Ωcmであった。またX線回折(Cu−Kα)の回折線の広がりを元に算出した珪素微結晶の結晶子の結晶子径が4.1nmであった。また、
1H−NMRスペクトルにおいて、0.6〜1.6ppm及び、7.3〜9.2ppmの両方の範囲にピークを有していた。
【0127】
また、実施例1と同様の手順で珪素系活物質粒子(H1)100gから、炭素系化合物(H2)を抽出した。その結果、炭素系化合物(H2)は16mg得られた。これにより、珪素系活物質粒子に対する炭素系化合物の含有量は、160質量ppmと算出できた。
【0128】
続いて、炭素系化合物(H2)を、実施例1と同様の手順で、GPC測定を行ったところ、重量平均分子量は5100であり5000より大きかった。このような珪素系活物質粒子(H1)を負極材として使用して、実施例1と同様、電極作製、コインセル作製、電池評価、ガス発生評価を行った。その結果を表1に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
表1から分かるように、実施例1〜5では、電池評価において、充放電試験及びガス発生試験のいずれの評価もAとなった。充放電試験の評価結果から、本発明の負極材は、従来より良好なサイクル特性を有することが分かった。また、ガス発生試験の評価結果より、電池内部で発生するガスが、従来よりも少量となることが確認され、電解質の分解等がより少なくなり、良好なサイクル特性を有することが分かった。一方で、比較例1〜3では、充放電試験及びガス発生試験のいずれの評価も実施例1〜5に劣る結果となった。比較例1、2では、炭素系化合物の重量平均分子量が400未満であるため、電極とした時に電解液に溶出し、充放電挙動に悪影響を及ぼしたと考えられる。また、比較例3では、炭素系化合物の重量平均分子量が5000より大きいため、導電性を低下させる要因となりサイクル特性が悪化したと考えられる。
【0131】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。