(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(メタ)アクリル酸100質量部、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル0.5〜5質量部、及びエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0〜0.1質量部を重合させて得られるアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体と、多価金属塩と、水とを含む液状組成物を、塩基を用いてpHを7.0以上に調整した後に、カルボン酸及びリンオキソ酸よりなる群から選択される少なくとも1種の酸を用いてpHを2.5〜6.5に調整することにより得られることを特徴とする、25℃での粘度が1,000〜100,000mPa・sの粘性組成物。
前記液状組成物中のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体の含有量が、水100質量部に対して0.1〜4質量部である、請求項1〜3のいずれかに記載の粘性組成物。
(A)(メタ)アクリル酸100質量部、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル0.5〜5質量部、及びエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0〜0.1質量部を重合させて得られるアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体と、(B)多価金属塩と、(C)塩基と、(D)カルボン酸及びリンオキソ酸よりなる群から選択される少なくとも1種の酸と、(E)水とを含み、
pHが2.5〜6.5であり、
25℃での粘度が1,000〜100,000mPa・sである、
ことを特徴とする、粘性組成物。
アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体が0.1〜4質量%、多価金属塩が0.1〜4質量%、塩基が0.01〜6質量%、及びカルボン酸及び/又はリンオキソ酸が0.1〜4質量%の含有量で含まれる、請求項7又は8に記載の粘性組成物。
前記液状組成物中のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体の含有量が、水100質量部に対して0.1〜4質量部である、請求項11〜13のいずれかに記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、多価金属塩の存在下であっても、酸性から弱酸性のpH領域でアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体により高粘度を実現できる粘性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、特定のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体と多価金属塩と水とを含む液状組成物を、塩基を用いて当該液状組成物のpHを7.0以上にした後に、カルボン酸及び/又はリンオキソ酸を用いてpHを2.5〜6.5に調整して得られた粘性組成物は、高粘度を備え得ることを見出した。更に、当該粘性組成物では、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体に特有の欠点であるベタツキが抑制されており、皮膚に塗布した際の使用感が格段に高まっていることも見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の粘性組成物及びその製造方法を提供する。
項1. (メタ)アクリル酸100質量部、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル0.5〜5質量部、及びエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0〜0.1質量部を重合させて得られるアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体と、多価金属塩と、水とを含む液状組成物を、塩基を用いてpHを7.0以上に調整した後に、カルボン酸及びリンオキソ酸よりなる群から選択される少なくとも1種の酸を用いてpHを2.5〜6.5に調整することにより得られることを特徴とする、粘性組成物。
項2. 多価金属塩が、有機酸の多価金属塩である、項1に記載の粘性組成物。
項3. 多価金属塩が、アスコルビン酸誘導体の多価金属塩である、項1又は2に記載の粘性組成物。
項4. 前記液状組成物中のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体の含有量が、水100質量部に対して0.1〜4質量部である、項1〜3のいずれかに記載の粘性組成物。
項5. 前記液状組成物中の多価金属塩の含有量が、水100質量部に対して0.1〜4質量部である、項1〜4のいずれかに記載の粘性組成物。
項6. 化粧料、皮膚外用剤、又はトイレタリー製品である、項1〜5のいずれかに記載の粘性組成物。
項7. (A)(メタ)アクリル酸100質量部、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル0.5〜5質量部、及びエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0〜0.1質量部を重合させて得られるアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体と、(B)多価金属塩と、(C)塩基と、(D)カルボン酸及びリンオキソ酸よりなる群から選択される少なくとも1種の酸と、(E)水とを含み、
pHが2.5〜6.5であり、
25℃での粘度が1,000〜100,000mPa・sである、
ことを特徴とする、粘性組成物。
項8. 多価金属塩が、有機酸の多価金属塩である、項7に記載の粘性組成物。
項9. アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体が0.1〜4質量%、多価金属塩が0.1〜4質量%、塩基が0.01〜6質量%、及びカルボン酸及び/又はリンオキソ酸が0.1〜4質量%の含有量で含まれる、項7又は8に記載の粘性組成物。
項10. 化粧料、皮膚外用剤、又はトイレタリー製品である、項7〜9のいずれかに記載の粘性組成物。
項11. 下記第1〜3工程を含む、粘性組成物の製造方法:
(メタ)アクリル酸100質量部、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル0.5〜5質量部、及びエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0〜0.1質量部を重合させて得られるアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体と、多価金属塩と、水とを含む液状組成物を調製する第1工程、
前記液状組成物に、塩基を添加してpHを7.0以上に調整することにより、アルカリ性粘性組成物を調製する第2工程、及び
前記アルカリ性粘性組成物に、カルボン酸及びリンオキソ酸よりなる群から選択される少なくとも1種の酸を添加してpHを2.5〜6.5に調整することにより、粘性組成物を調製する第3工程。
項12. 多価金属塩が、有機酸の多価金属塩である、項11に記載の製造方法。
項13. 多価金属塩が、アスコルビン酸誘導体の多価金属塩である、項11又は12に記載の製造方法。
項14. 前記液状組成物中のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体の含有量が、水100質量部に対して0.1〜4質量部である、項11〜13のいずれかに記載の製造方法。
項15. 前記液状組成物中の多価金属塩の含有量が、水100質量部に対して0.1〜4質量部である、項11〜14のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多価金属塩の存在下であっても、酸性から弱酸性のpH領域でアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体を高度に増粘させて高粘度の粘性組成物を提供することができるので、様々な製品分野において多価金属塩を含み且つ高粘度の製剤を製造することが可能になる。
【0010】
また、従来、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体の含有量が多いと、皮膚に塗布した際に、ベタツキが感じられ、使用感が悪いという欠点があったが、本発明によれば、このような欠点が解消されており、皮膚に塗布しても、ベタツキの無い、サラッとしたみずみずしい良好な使用感を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の粘性組成物は、特定のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体と多価金属塩と水とを含む液状組成物を、塩基を用いてpHを7.0以上にした後に、カルボン酸及び/又はリンオキソ酸を用いてpHを2.5〜6.5に調整することにより得られることを特徴とする。以下、本発明の粘性組成物について、詳細に説明する。
【0013】
アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体
本発明に用いられるアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体は、(メタ)アクリル酸100質量部、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル0.5〜5質量部、及びエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0〜0.1質量部を重合することにより得られるポリマーである。
【0014】
なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
【0015】
前記(メタ)アクリル酸として、アクリル酸及びメタクリル酸のいずれか一方を単独で使用してもよく、またこれらの双方を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
前記アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、(メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が18〜24である高級アルコールとのエステルである。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸とステアリルアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸とエイコサノールとのエステル、(メタ)アクリル酸とベヘニルアルコールとのエステル、及び(メタ)アクリル酸とテトラコサノールとのエステル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、本発明の粘性組成物において、粘度をより高めたり、皮膚に塗布した際の使用感をより向上させるという観点から、好ましくは、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エイコサニル、メタクリル酸ベヘニル、及びメタクリル酸テトラコサニル挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、それぞれ単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、日本油脂株式会社製の商品名ブレンマーVMA70等の市販品を用いてもよい。
【0017】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、0.5〜5質量部であり、好ましくは1〜3質量部である。前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量が0.5質量部未満の場合、得られるアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体を水に分散させる際、ママコが発生しやすくなる傾向がある。また、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量が5質量部を超える場合、得られるアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体を用いて粘性組成物を調製する際、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体の溶解性が悪くなる傾向がある。
【0018】
また、前記エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、サッカロース、ソルビトール等のポリオールの2置換以上のアクリル酸エステル類;前記ポリオールの2置換以上のアリルエーテル類;フタル酸ジアリル、リン酸トリアリル、メタクリル酸アリル、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、1,5−ヘキサジエン、ジビニルベンゼン、ポリアリルサッカロース等が挙げられる。これらのエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の中でも、得られるアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体を用いて粘性組成物を調製した際、少量の使用で高い増粘性の付与を可能とし、また、乳化物、懸濁物等に高い懸濁安定性を付与することを可能にするという観点から、好ましくは、ペンタエリスリトールアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、リン酸トリアリル、及びポリアリルサッカロースが挙げられる。これらのエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物は、それぞれ単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
前記エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の使用量は、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、0〜0.1質量部であり、好ましくは0.001〜0.044質量部である。エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の使用量が0.1質量部を超える場合、得られるアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体を用いて粘性組成物を調製する際、不溶性のゲルが生成しやすくなる傾向がある。
【0020】
前記アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体の製造において、(メタ)アクリル酸、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び要すればエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を重合する方法としては、特に限定されず、例えば、これらをラジカル重合開始剤の存在下に重合溶媒中で重合させる方法等が挙げられる。
【0021】
前記ラジカル重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、α,α'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビスメチルイソブチレート、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、第三級ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、それぞれ単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
前記ラジカル重合開始剤の使用量としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、0.01〜0.45質量部が好ましく、0.01〜0.35質量部がより好ましい。ラジカル重合開始剤を上記範囲内で使用することにより、重合反応速度を適切に制御でき、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体を経済的に製造することが可能になる。
【0023】
また、前記重合溶媒としては、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を溶解し、かつ得られるアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体を溶解しない溶媒であることが好ましい。このような重合溶媒の具体例としては、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、エチレンジクロライド、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン等が挙げられる。これらの重合溶媒の中でも、品質が安定しており入手が容易であるという観点から、好ましくは、エチレンジクロライド、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、酢酸エチルが挙げられる。これらの重合溶媒は、それぞれ単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
前記重合溶媒の使用量としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、200〜10,000質量部が好ましく、300〜2,000質量部がより好ましい。重合溶媒を上記範囲内で使用することにより、重合反応が進行しても、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体が凝集するのを抑制して均一に撹拌させ、且つ重合反応を効率的に進行させることが可能になる。
【0025】
また、上記重合反応を行う際の雰囲気については、重合反応が可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気が挙げられる。
【0026】
上記重合反応を行う際の反応温度は、重合反応が可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、50〜90℃が好ましく、55〜75℃がより好ましい。このような反応温度で重合反応を行うことにより、反応溶液の粘度上昇を抑制し、反応制御を容易にすることができ、更に得られるアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体の嵩密度を制御することができる。
【0027】
上記重合反応を行う際の反応時間は、反応温度によって異なるので一概には決定することはできないが、通常、2〜10時間である。
【0028】
反応終了後は、例えば、反応溶液を80〜130℃に加熱し、重合溶媒を除去することにより白色微粉末のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体を単離することができる。
【0029】
本発明の粘性組成物において、前記アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体は、それぞれ単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
多価金属塩
本発明に用いられる多価金属塩は、水溶液中で2価以上の金属イオンとして遊離できるものであれば特に限定されず、本発明の粘性組成物の用途に応じて適宜選択される。
【0031】
2価以上の金属としては、特に制限されないが、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、亜鉛、及びアルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、マグネシウム及びカルシウムは、多価金属塩として様々な分野の製品で使用されており、本発明において好適に使用することができる。
【0032】
前記多価金属塩としては、具体的には、無機酸の多価金属塩、及び有機酸の多価金属塩が挙げられる。
【0033】
前記無機酸の多価金属塩としては、具体的には、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、及びピロリン酸カルシウム等が挙げられる。
【0034】
また、前記有機酸の多価金属塩としては、具体的には、乳酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、ピロリドンカルボン酸マグネシウム、安息香酸マグネシウム、L−グルタミン酸マグネシウム、アスコルビン酸マグネシウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、スルホ−L−アスコルビン酸マグネシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム、ピロリドンカルボン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、アスコルビン酸リン酸カルシウム、及びスルホ−L−アスコルビン酸カルシウム等が挙げられる。
【0035】
これらの多価金属塩の中でも、好ましくは有機酸の多価金属塩が挙げられる。とりわけ、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、スルホ−L−アスコルビン酸マグネシウム、アスコルビン酸リン酸カルシウム、スルホ−L−アスコルビン酸カルシウム等のアスコルビン酸誘導体の多価金属塩は、抗酸化作用に優れ、化粧料、医薬等に配合される有効成分又は添加剤として有用性が高く、本発明において好適に使用される。
【0036】
これらの多価金属塩は、それぞれ単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体と多価金属塩と水とを含む液状組成物
本発明の粘性組成物の調製は、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体と多価金属塩と水とを含む液状組成物(単に「液状組成物」と表記することもある)を用いて行われる。
【0038】
前記液状組成物におけるアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体の含有量は、本発明の粘性組成物に備えさせる粘度に応じて適宜設定すればよいが、通常、水100質量部に対して、0.1〜4質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましく、0.2〜2質量部が更に好ましい。このような範囲を充足すると、本発明の粘性組成物を皮膚に塗布した際の使用感もより一層良好にすることもできる。
【0039】
また、前記液状組成物における多価金属塩の含有量についても、本発明の粘性組成物に備えさせる粘度に応じて適宜設定すればよいが、通常、水100質量部に対して、0.1〜4質量部が好ましく、0.5〜3質量部がより好ましい。
【0040】
前記液状組成物には、前記アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体、多価金属塩、及び水以外に、本発明の粘性組成物の用途に応じて、他の添加剤や有効成分が含まれていてもよい。
【0041】
前記液状組成物を製造する方法については、特に限定されないが、例えば、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体を水に分散させた後、多価金属塩を添加する方法;多価金属塩を水に溶解させた後、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体を添加して分散させる方法;アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体と多価金属塩とを混合した後、この混合物を水に添加する方法等が挙げられる。
【0042】
前記液状組成物のpHは、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体と多価金属塩の濃度にも依存するが、通常2〜5程度である。
【0043】
また、前記液状組成物では、通常、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体が分散した状態で存在し、多価金属塩が溶解した状態になっている。また、前記液状組成物は、通常、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体は増粘しておらず、低粘度の分散液体の状態である。
【0044】
前記液状組成物のアルカリ処理
本発明の粘性組成物の調製では、先ず、前記液状組成物に塩基を添加してpH7.0以上に調整し、アルカリ性粘性組成物を得る。
【0045】
pH調整に使用される塩基については、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化銅、水酸化鉄、水酸化リチウム、水酸化ベリリウム、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−アミノ−2メチル−1プロパノール、トリエチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、アンモニア等が挙げられる。これらの塩基の中でも、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−アミノ−2メチル−1プロパノールは、安価で入手し易く、本発明において好適に用いられる。
【0046】
これらの塩基は、それぞれ単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
また、前記液状組成物への塩基の添加によって、液性をpH7.0以上に調整すればよいが、当該pHとして好ましくは7.0〜12.0が挙げられる。このようなpH範囲に調整することにより、本発明の粘性組成物に高粘度を備えさせることが可能になる。
【0048】
塩基を用いて前記液状組成物のpHを7.0以上に調整する方法としては、特に限定されず、例えば、前記液状組成物を攪拌しながら、塩基を添加する方法が挙げられる。添加する塩基は、固体状であってもよく、また水溶液状にしたものであってもよい。
【0049】
斯して前記液状組成物のpHを7.0以上に調整することにより、通常、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体が可溶化して増粘し、得られたアルカリ性粘性組成物は、ゲル状又はゾル状になっている。なお、本発明においてゲル状とは、粘性が高く半固体様の性質を示す状態をいい、ゾル状とは、流動性が高く液体状の性質を示す状態をいう。
【0050】
アルカリ性粘性組成物の酸処理
次いで、前記アルカリ性粘性組成物に、カルボン酸及び/又はリンオキソ酸を添加してpH2.5〜6.5に調整することにより、本発明の粘性組成物が調製される。
【0051】
pH調整に使用されるカルボン酸としては、分子構造にカルボキシル基を有する酸であれば特に限定されず、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸等のいずれであってもよい。当該カルボン酸として、具体的には、酢酸、酪酸、乳酸、安息香酸、グルコン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フィチン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、フタル酸、クエン酸、エチレンジアミン4酢酸等が挙げられる。
【0052】
また、pH調整に使用されるリンオキソ酸としては、リン原子にヒドロキシル基とオキソ基が結合している酸であればよく、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、二リン酸、エチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ブチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ブトキシエチルホスフェート、ジブトキシエチルホスフェート、2−エチルヘキシルホスフェート、ビスー(2−エチルヘキシルホスフェート)、イソトリデシルホスフェート、ジイソトリデシルホスフェート、ドデシルホスフェート、ジドデシルホスフェート、テトラデシルホスフェート、ジテトラデシルホスフェート、ヘキサデシルホスフェート、ジヘキサデシルホスフェート、オクタデシルホスフェート、ジオクタデシルホスフェート、オレイルホスフェート、ジオレイルホスフェート等が挙げられる。
【0053】
これらのカルボン酸及びリンオキソ酸の中でも、pHコントロールが容易であるという観点から、好ましくは、酢酸、酪酸、乳酸、安息香酸、グルコン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フィチン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、フタル酸、クエン酸、エチレンジアミン4酢酸、及びリン酸が挙げられる。
【0054】
これらのカルボン酸及びリンオキソ酸は、それぞれ単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
また、前記アルカリ性粘性組成物へのカルボン酸及び/又はリンオキソ酸の添加によって、液性をpH2.5〜6.5に調整すればよいが、当該pHとして好ましくは3.5〜6.5が挙げられる。このようなpH範囲に調整することにより、多価金属塩を含んでいながら、酸性〜弱酸性で高粘度を備える粘性組成物が調製される。
【0056】
カルボン酸及び/又はリンオキソ酸を用いて前記アルカリ性粘性組成物のpHを2.5〜6.5にする方法としては、特に限定されず、例えば、前記アルカリ性粘性組成物を攪拌しながら、カルボン酸及び/又はリンオキソ酸を添加する方法が挙げられる。添加するカルボン酸及び/又はリンオキソ酸は、固体状であってもよく、また水溶液状にしたものであってもよい。
【0057】
斯してアルカリ性粘性組成物のpHを2.5〜6.5にすることにより、アルカリ性粘性組成物の粘性を保持しつつ、pHを酸性〜弱酸性の領域にすることができ、本発明の粘性組成物が調製される。
【0058】
本発明の粘性組成物の特性及び用途
本発明の粘性組成物は、前記の製造方法によって製造されるものであり、前記アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体、多価金属塩、塩基、並びにカルボン酸及び/又はリンオキソ酸が含まれる。
【0059】
本発明の粘性組成物における前記アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体の含有量としては、例えば、0.1〜4質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。
【0060】
また、本発明の粘性組成物における前記多価金属塩の含有量としては、例えば、0.1〜4質量%が好ましく、0.5〜3質量%がより好ましい。
【0061】
また、本発明の粘性組成物における前記塩基の含有量は、前記液状組成物の液性をpH7.0以上に変えるのに必要とされる量であり、使用する塩基の種類に応じて異なるが、例えば、0.01〜6質量%が好ましく、0.03〜5質量%がより好ましい。
【0062】
また、本発明の粘性組成物における前記カルボン酸及び/又はリンオキソ酸の含有量は、前記アルカリ性粘性組成物の液性をpH2.5〜6.5に変えるのに必要とされる量であり、使用するカルボン酸及び/又はリンオキソ酸の種類に応じて異なるが、例えば、0.1〜4質量%が好ましく、0.3〜2質量%がより好ましい。
【0063】
本発明の粘性組成物において、水は、前記アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体、多価金属塩、塩基、カルボン酸及び/又はリンオキソ酸、並びに必要に応じて添加される添加剤や有効成分以外の残部を構成する。
【0064】
本発明の粘性組成物は、前述する成分以外に、その用途に応じて、他の添加剤や有効成分を含んでいてもよい。例えば、本発明の粘性組成物を化粧料として使用する場合には、保湿剤、酸化防止剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、消臭剤、界面活性剤、香料、色素等を含んでいてもよい。とりわけ、本発明の粘性組成物を化粧料として使用する場合には、皮膚に対するベタツキを無くし、サラッとした良好な使用感をより一層向上させるという観点から、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、乳酸ナトリウム、2−ピロリドン−5−カルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム等の保湿剤を配合していることが望ましい。
【0065】
本発明の粘性組成物に、他の添加剤や有効成分を含ませる場合には、前記液状組成物のアルカリ処理前に、前記液状組成物中にこれらの添加剤や有効成分を添加してもよく、また前記アルカリ性粘性組成物の酸処理後に、これらの添加剤や有効成分を添加してもよい。
【0066】
本発明の粘性組成物の粘度は、例えば、25℃において、1,000〜100,000mPa・sである。当該粘度としては、1,000〜60,000mPa・Sが好ましく、1,000〜15,000mPa・sが更に好ましく、1,000〜10,000mPa・sがより更に好ましい。本発明では、多価金属塩を含んでおり、酸性〜弱酸性でありながらも、このように高粘度を具備することが可能になっている。
【0067】
なお、前記粘度は、BH型回転粘度計(芝浦システム株式会社製、単一円筒型回転粘度計(ビスメトロン)、型番:VS−11H)を用いて、回転速度を毎分20回転として、回転開始から1分後の25℃における粘度を測定することにより測定される。測定に使用するローターは、2,000mPa・s未満の場合はローターNo.3、2,000mPa・s以上5,000mPa・s未満の場合はローターNo.4、5,000mPa・s以上15,000mPa・s未満の場合はローターNo.5、15,000mPa・s以上40,000mPa・s未満の場合はローターNo.6、40,000mPa・s以上の場合はローターNo.7である。
【0068】
本発明の粘性組成物は、前記粘度を備えており、粘性のある液状、流動性のあるゲル状、クリーム状等の形状を呈する。
【0069】
本発明の粘性組成物は、化粧料、医薬(特に皮膚外用剤)、トイレタリー製品、ハウスホールド製品、水溶性塗料等の分野で使用される。とりわけ、本発明の粘性組成物は、高粘度であることに加え、皮膚に塗布しても、ベタツキが抑制され、サラッとしたみずみずしい使用感が得られるので、化粧料、皮膚外用剤、又はトイレタリー製品として好適に使用される。
【0070】
本発明の粘性組成物を化粧料とする場合、その製剤形態については、特に制限されないが、例えば、化粧水、乳液、美容液、クリーム、クリームパック、マッサージクリーム、ヘアーセッティングジェル、日焼け止め、スタイリングジェル、アイライナー、マスカラ、口紅、ファンデーション等が挙げられる。また、本発明の粘性組成物をトイレタリー製品とする場合、その製剤形態については、特に限定されないが、例えば、クレンジングクリーム、クレンジングジェル、洗顔フォーム、ヘアーウォッシュ、ボディーウォッシュ、リンス等が挙げられる。
【0071】
また、本発明の粘性組成物を化粧料とする場合、多価金属塩として、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、スルホ−L−アスコルビン酸マグネシウム、アスコルビン酸リン酸カルシウム、スルホ−L−アスコルビン酸カルシウム等のアスコルビン酸誘導体の多価金属塩を使用すると、これらの多価金属塩が有する美白作用に基づいて、本発明の粘性組成物を美白用化粧料として好適に使用することができる。
【実施例】
【0072】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0073】
1.粘性組成物の調製及びその評価
[測定方法]
各実施例及び比較例により得られた粘性組成物について、粘度、質感官能試験を、以下の方法により評価した。
【0074】
(1)粘度
各評価試料について、BH型回転粘度計(芝浦システム株式会社製、単一円筒型回転粘度計(ビスメトロン)、型番:VS−11H)を用いて、回転速度を毎分20回転として、1分後の25℃における粘度を測定した。測定に使用したローターは、2,000mPa・s未満の場合はローターNo.3、2,000mPa・s以上5,000mPa・s未満の場合はローターNo.4、5,000mPa・s以上15,000mPa・s未満の場合はローターNo.5、15,000mPa・s以上40,000mPa・s未満の場合はローターNo.6、40,000mPa・s以上の場合はローターNo.7である。なお、粘度が1,000mPa・s以上の試料は、塗布時に垂れ難いという特性を備えることができるので、高粘度で良好な試料と判断できる。
【0075】
(2)使用感
各実施例及び比較例で得られた粘性組成物の適当量を皮膚上に乗せて、指で伸ばすことにより塗布した。塗布後の使用感について、以下の判定基準により評点化した。なお、使用感の評価は、10人のパネラー(男女各5人)によって判定された評点の合計を算出することにより行った。評点の合計点が25点以上の場合は、みずみずしい触感で実用レベルを満足できる良好な使用感があると判断できる。
<使用感の判定基準>
4点:サラッとした触感で、みずみずしさを感じる。
3点:サラッとした触感で、ややみずみずしさを感じる。
2点:ベタツキを感じないが、みずみずしさを感じない。
1点:ベタツキを感じる。
【0076】
[製造例1]
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管及び冷却管を備えた500mL容の四つ口フラスコに、アクリル酸45g(0.625モル)、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしてのブレンマーVMA70(日本油脂社製:メタクリル酸ステアリル10〜20質量部、メタクリル酸エイコサニル10〜20質量部、メタクリル酸ベヘニル59〜80質量部、及びメタクリル酸テトラコサニル1質量部以下の混合物)0.45g、ノルマルへキサン150g、及び2,2'−アゾビスメチルイソブチレート0.081g(0.00035モル)を仕込んだ。引き続き、均一撹拌、混合した後、反応容器の上空部、原料及び溶媒に存在している酸素を除去する為に、溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、60〜65℃に保持して4時間反応させた。反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、ノルマルヘキサンを除去し、更に110℃、10mmHgにて8時間減圧乾燥することにより、白色微粉末状のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体43gを得た。
【0077】
[実施例1]
200mL容のポリビーカーに、蒸留水100gを仕込み、製造例1により得られたアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体1.0gを添加し、攪拌機(プライミクス株式会社製、型番:T.K.ロボミクス、翼直径30mmのディスパー翼)を用いて5,000rpmで30分間攪拌し均一に分散させた。次に、アスコルビン酸リン酸マグネシウム2.0gを添加し、攪拌機を用いて2,000rpmで5分間攪拌し均一に分散させて、液状組成物を得た。この時の液状組成物のpHを、pHメーター(HORIBA株式会社製、型番:D−51)を用いて測定した結果、4.5であった。
【0078】
得られた液状組成物に、18質量%水酸化ナトリウム水溶液3.0gを添加し、攪拌機を用いて2,000rpmで5分間攪拌し均一に分散させて、アルカリ性粘性組成物を得た。この時のアルカリ性粘性組成物のpHは11.2であった。
【0079】
次に、前記アルカリ性粘性組成物に50質量%クエン酸水溶液0.9gを添加し、攪拌機を用いて2,000rpmで5分間攪拌し均一に分散させることによって、最終的に粘性組成物を得た。得られた粘性組成物のpHは6.0であった。
【0080】
[実施例2]
実施例1において、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体の量を2.0gに、18質量%水酸化ナトリウム水溶液の量を6.0gに、50質量%クエン酸水溶液の量を1.8gに変更した以外は、実施例1と同様にして粘性組成物を得た。なお、水酸化ナトリウム添加前に得られた液状組成物のpHは4.2、水酸化ナトリウム添加後に得られたアルカリ性粘性組成物のpHは11.4、最終的に得られた粘性組成物のpHは6.0であった。
【0081】
[実施例3]
実施例1において、アルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体の量を3.0gに、18質量%水酸化ナトリウム水溶液の量を9.0gに、50質量%クエン酸水溶液の量を2.3gに変更した以外は、実施例1と同様にして粘性組成物を得た。なお、水酸化ナトリウム添加前に得られた液状組成物のpHは4.0、水酸化ナトリウム添加後に得られたアルカリ性粘性組成物のpHは11.5、最終的に得られた粘性組成物のpHは6.0であった。
【0082】
[実施例4]
実施例1において、50質量%クエン酸水溶液の量を1.6gに変更した以外は、実施例1と同様にして粘性組成物を得た。なお、水酸化ナトリウム添加前に得られた液状組成物のpHは4.5、水酸化ナトリウム添加後に得られたアルカリ性粘性組成物のpHは10.8、最終的に得られた粘性組成物のpHは5.0であった。
【0083】
[実施例5]
実施例1において、50質量%クエン酸水溶液の量を2.2gに変更した以外は、実施例1と同様にして粘性組成物を得た。なお、水酸化ナトリウム添加前に得られた液状組成物のpHは4.4、水酸化ナトリウム添加後に得られたアルカリ性粘性組成物のpHは11.2、最終的に得られた粘性組成物のpHは4.0であった。
【0084】
[実施例6]
実施例1において、アスコルビン酸リン酸マグネシウム2.0gを塩化マグネシウム2.0gに変更した以外は、実施例1と同様にして粘性組成物を得た。なお、水酸化ナトリウム添加前に得られた液状組成物のpHは2.5、水酸化ナトリウム添加後に得られたアルカリ性粘性組成物のpHは11.0、最終的に得られた粘性組成物のpHは6.0であった。
【0085】
[実施例7]
実施例1において、50質量%クエン酸水溶液0.9gを50質量%乳酸水溶液0.8gに変更した以外は、実施例1と同様にして粘性組成物を得た。なお、水酸化ナトリウム添加前に得られた液状組成物のpHは4.5、水酸化ナトリウム添加後に得られたアルカリ性粘性組成物のpHは11.2、最終的に得られた粘性組成物のpHは6.0であった。
【0086】
[実施例8]
実施例1において、50質量%クエン酸水溶液0.9gを50質量%エチレンジアミン四酢酸(EDTA)水溶液0.7gに変更した以外は、実施例1と同様にして粘性組成物を得た。なお、水酸化ナトリウム添加前に得られた液状組成物のpHは4.3、水酸化ナトリウム添加後に得られたアルカリ性粘性組成物のpHは10.9、最終的に得られた粘性組成物のpHは6.0であった。
【0087】
[実施例9]
実施例1において、50質量%クエン酸水溶液0.9gを20質量%リン酸水溶液3.0gに変更した以外は、実施例1と同様にして粘性組成物を得た。なお、水酸化ナトリウム添加前に得られた液状組成物のpHは4.4、水酸化ナトリウム添加後に得られたアルカリ性粘性組成物のpHは10.9、最終的に得られた粘性組成物のpHは6.0であった。
【0088】
[実施例10]
実施例1において、アスコルビン酸リン酸マグネシウムの量を0.5g、50質量%クエン酸水溶液の量を0.8gに変更した以外は、実施例1と同様にして粘性組成物を得た。なお、水酸化ナトリウム添加前に得られた液状組成物のpHは3.9、水酸化ナトリウム添加後に得られたアルカリ性粘性組成物のpHは11.0、最終的に得られた粘性組成物のpHは6.0であった。
【0089】
[実施例11]
実施例1において、アスコルビン酸リン酸マグネシウムの量を3.0g、50質量%クエン酸水溶液の量を1.1gに変更した以外は、実施例1と同様にして粘性組成物を得た。なお、水酸化ナトリウム添加前に得られた液状組成物のpHは4.6、水酸化ナトリウム添加後に得られたアルカリ性粘性組成物のpHは10.8、最終的に得られた粘性組成物のpHは6.0であった。
【0090】
[実施例12]
実施例1において、蒸留水100gを蒸留水100gとグリセリン8.0gとに変更した以外は、実施例1と同様にして粘性組成物を得た。なお、水酸化ナトリウム添加前に得られた液状組成物のpHは4.5、水酸化ナトリウム添加後に得られたアルカリ性粘性組成物のpHは11.3、最終的に得られた粘性組成物のpHは6.0であった。
【0091】
[実施例13]
実施例1において、蒸留水100gを蒸留水100gと1,3−ブタンジオール8.0gとに変更した以外は、実施例1と同様にして粘性組成物を得た。なお、水酸化ナトリウム添加前に得られた液状組成物のpHは4.3、水酸化ナトリウム添加後に得られたアルカリ性粘性組成物のpHは10.9、最終的に得られた粘性組成物のpHは6.0であった。
【0092】
[比較例1]
200mL容のポリビーカーに、蒸留水100gを仕込み、製造例1により得られたアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体1.0gを添加し、攪拌機(プライミクス株式会社製、型番:T.K.ロボミクス、翼直径30mmのディスパー翼)を用いて5,000rpmで30分間攪拌し均一に分散させた。次に、アスコルビン酸リン酸マグネシウム2.0gを添加し、攪拌機を用いて2,000rpmで5分間攪拌し均一に分散させて、液状組成物を得た。この時の液状組成物のpHは4.5であった。
【0093】
得られた液状組成物に、18質量%水酸化ナトリウム水溶液2.5gを添加し、攪拌機を用いて2,000rpmで5分間攪拌し均一に分散させ粘性組成物を得た。このときの粘性組成物のpHは6.0であった。
【0094】
[比較例2]
200mL容のポリビーカーに、蒸留水100gを仕込み、製造例1により得られたアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体1.0gを添加し、攪拌機(プライミクス株式会社製、型番:T.K.ロボミクス、翼直径30mmのディスパー翼)を用いて5,000rpmで30分間攪拌し均一に分散させた。次に、アスコルビン酸リン酸マグネシウム2.0gを添加し、攪拌機を用いて2,000rpmで5分間攪拌し均一に分散させ、液状組成物を得た。この時の液状組成物のpHは4.5であった。
【0095】
得られた液状組成物に、50質量%クエン酸水溶液0.9gを添加し、攪拌機を用いて2,000rpmで5分間攪拌し均一に分散させた。この時のpHは3.6であった。
【0096】
次に、18質量%水酸化ナトリウム水溶液3.0gを添加し、攪拌機を用いて2,000rpmで5分間攪拌し均一に分散させて粘性組成物を得た。このときの粘性組成物のpHは6.0であった。
【0097】
[比較例3]
実施例1において、50質量%クエン酸水溶液0.9gを1mol/L塩酸6.8gに変更した以外は、実施例1と同様にして粘性組成物を得た。なお、水酸化ナトリウム添加前に得られた液状組成物のpHは4.4、水酸化ナトリウム添加後に得られたアルカリ性粘性組成物のpHは10.9、最終的に得られた粘性組成物のpHは6.0であった。
【0098】
[参考例1]
200mL容のポリビーカーに、蒸留水100gを仕込み、製造例1で得られたアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体1.0gを添加し、攪拌機(プライミクス株式会社製、型番:T.K.ロボミクス、翼直径30mmのディスパー翼)を用いて5,000rpmで30分間攪拌し均一に分散させた。次に、アスコルビン酸ナトリウム2.0gを添加し、攪拌機を用いて2,000rpmで5分間攪拌し均一に分散させて、液状組成物を得た。この時の液状組成物のpHは4.5であった。
【0099】
得られた液状組成物に、18質量%水酸化ナトリウム水溶液2.0gを添加し、攪拌機を用いて2,000rpmで5分間攪拌し均一に分散させ粘性組成物を得た。この時の粘性組成物のpHは6.0であった。
【0100】
[評価結果の纏め]
各実施例、比較例、及び参考例で得られた粘性組成物について、粘度及び使用感を評価した結果を表1に示す。表1から明らかなように、製造例1で得られたアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体と、多価金属塩と、水とを含む液状組成物を、塩基でpH7.0以上に調整した後に、カルボン酸又はリンオキソ酸でpH6.5以下に調整することにより、高い粘度を備える粘性組成物が得られた(実施例1〜13)。一方、当該液状組成物を塩基を用いて直接pHを6.0に調整した場合(比較例1)、及び当該液状組成物にカルボン酸添加後に塩基を添加してpHを6.0に調整した場合(比較例2)では、高粘度にまで増粘できなかった。更に、当該液状組成物を塩基でpH7.0以上に調整した後に、塩酸でpH6.5以下にしても、高粘度の粘性組成物を得ることができなかった(比較例3)。
【0101】
なお、参考例1に示されるように、製造例1により得られたアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体と1価の金属塩(アスコルビン酸ナトリウム)を共存させた場合には、単に、塩基を用いて直接pHを6.0に調整するだけで、高粘度にまで増粘させることができている。従って、多価金属塩との共存下で、酸性から弱酸性のpH領域で高粘度にまで増粘できないというのは、製造例1により得られたアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体に特有の欠点であることも確認された。
【0102】
また、各実施例で得られた粘性組成物は、皮膚に塗布しても、べたつかずに、サラッとして、皮膚にみずみずしさを付与できており、使用感が良好であることも確認された。
【0103】
【表1】
【0104】
[実施例14]
200mL容のポリビーカーに、蒸留水100gを仕込み、製造例1により得られたアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体1.0gを添加し、攪拌機(プライミクス株式会社製、型番:T.K.ロボミクス、翼直径30mmのディスパー翼)を用いて5,000rpmで30分間攪拌し均一に分散させた。次に、アスコルビン酸リン酸マグネシウム2.0gを添加し、攪拌機を用いて2,000rpmで5分間攪拌し均一に分散させて、液状組成物を得た。この時の液状組成物のpHを測定した結果、4.5であった。
【0105】
得られた液状組成物を攪拌機で2,000rpmで撹拌しながら、18質量%水酸化ナトリウム水溶液をpH11.2に到達するまで徐々に滴下し、アルカリ性粘性組成物を得た。pH11.2に到達するまでの間、粘度の測定も行った。
【0106】
次いで、得られたアルカリ性粘性組成物(pH11.2)を攪拌機で2,000rpmで撹拌しながら、50質量%クエン酸水溶液をpH5.0に到達するまで徐々に滴下し、粘性組成物を得た。pH5.0に到達するまでの間、粘度の測定も行った。
【0107】
図1に、液状組成物(PH4.5)からアルカリ性粘性組成物(pH11.2)が得られるまでの間、及び当該アルカリ性粘性組成物(pH11.2)から粘性組成物(pH5.0)が得られるまでの間に、粘度の測定を行った結果を示す。この結果から、液状組成物(PH4.5)のpHが高まると共に粘度が上昇し、その後、クエン酸を用いてpHを低下させても、アルカリ性粘性組成物(pH11.2)と同等の粘度が維持されることが確認された。
【0108】
[実施例15]
200mL容のポリビーカーに、蒸留水100gを仕込み、製造例1により得られたアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体1.0gを添加し、攪拌機(プライミクス株式会社製、型番:T.K.ロボミクス、翼直径30mmのディスパー翼)を用いて5,000rpmで30分間攪拌し均一に分散させた。次に、アスコルビン酸リン酸マグネシウム2.0gを添加し、攪拌機を用いて2,000rpmで5分間攪拌し均一に分散させて、液状組成物を得た。この時の液状組成物のpHを測定した結果、4.5であった。
【0109】
得られた液状組成物を攪拌機で2,000rpmで撹拌しながら、18質量%水酸化ナトリウム水溶液をpH10.8に到達するまで徐々に滴下し、アルカリ性粘性組成物を得た。pH10.8に到達するまでの間、粘度の測定も行った。
【0110】
次いで、得られたアルカリ性粘性組成物(pH10.8)を攪拌機で2,000rpmで撹拌しながら、50質量%乳酸水溶液をpH5.1に到達するまで徐々に滴下し、粘性組成物を得た。pH5.1に到達するまでの間、粘度の測定も行った。
【0111】
図2に、液状組成物(PH4.2)からアルカリ性粘性組成物(pH10.8)が得られるまでの間、及び当該アルカリ性粘性組成物(pH10.8)から粘性組成物(pH5.1)が得られるまでの間に、粘度の測定を行った結果を示す。この結果も、実施例14の場合と同様に、液状組成物(PH4.2)のpHが高まると共に粘度が上昇し、その後、乳酸を用いてpHを低下させても、高粘度を保持できることが分かった。
【0112】
[実施例16]
200mL容のポリビーカーに、蒸留水100gを仕込み、製造例1により得られたアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体1.0gを添加し、攪拌機(プライミクス株式会社製、型番:T.K.ロボミクス、翼直径30mmのディスパー翼)を用いて5,000rpmで30分間攪拌し均一に分散させた。次に、塩化マグネシウム2.0gを添加し、攪拌機を用いて2,000rpmで5分間攪拌し均一に分散させて、液状組成物を得た。この時の液状組成物のpHを測定した結果、2.5であった。
【0113】
得られた液状組成物を攪拌機で2,000rpmで撹拌しながら、18質量%水酸化ナトリウム水溶液をpH11.0に到達するまで徐々に滴下し、アルカリ性粘性組成物を得た。pH11.0に到達するまでの間、粘度の測定も行った。
【0114】
次いで、得られたアルカリ性粘性組成物(pH11.0)を攪拌機で2,000rpmで撹拌しながら、50質量%クエン酸水溶液をpH5.3に到達するまで徐々に滴下し、粘性組成物を得た。pH5.3に到達するまでの間、粘度の測定も行った。
【0115】
図3に、液状組成物(PH2.5)からアルカリ性粘性組成物(pH11.0)が得られるまでの間、及び当該アルカリ性粘性組成物(pH11.0)から粘性組成物(pH5.3)が得られるまでの間に、粘度の測定を行った結果を示す。この結果、多価金属塩として塩化マグネシウムを使用した場合であっても、液状組成物(PH2.5)のpHが高まると共に粘度が上昇し、その後、クエン酸を用いてpHを低下させても、高粘度を保持できることが分かった。
【0116】
2.製剤例
[製剤例1] 美白化粧水
表2に示した成分1〜9を均一に混合し分散させた後に、成分10を添加して混合し、次いで、成分11及び12を加え均一に撹拌することにより、美白化粧水を調製した。
【0117】
【表2】
【0118】
[製剤例2] スキンケアローション
表3に示した成分1〜3を混合し、第1混合物を調製した。また、別途、成分4〜7を混合し、第2混合物を調製した。80℃に加熱した状態で、第1混合物を第2混合物に滴下・撹拌し、乳化させた。次いで、成分8を滴下し撹拌を行った後、成分9を滴下し撹拌を行った。更に、成分10を添加して撹拌を行い、冷却することによりスキンケアローションを調製した。
【0119】
【表3】
【0120】
[製剤例3] 美白成分配合保湿クリーム
表4に示した成分1〜4を混合し、第1混合物を調製した。また、別途、成分5〜8を混合し、第2混合物を調製した。75℃で加熱した状態で、第1混合物を第2混合物に滴下・撹拌し、乳化させた。次いで、成分9を滴下し撹拌を行った後、成分10を滴下し撹拌を行った。更に、成分11を添加して撹拌を行い、冷却させた。室温まで低下した時点で、更に成分12を滴下し撹拌することにより、美白成分配合保湿クリームを調製した。
【0121】
【表4】
【0122】
[製剤例4] クレンジングジェル
表5に示した成分1〜3を混合し、第1混合物を調製した。また、別途、成分4〜6を混合し、第2混合物を調製した。次いで、第1混合物と第2混合物を撹拌混合し、これに成分7と成分8の混合物を添加して混合した。その後、成分9を滴下して撹拌を行った。次いで、成分10と成分11の混合物を滴下して撹拌を行うことにより、クレンジングジェルを調製した。
【0123】
【表5】
【0124】
製剤例1〜4で得られた化粧料は、いずれも、高粘度で、ベタツキがなく、みずみずしく良好な使用感を有していた。