(54)【発明の名称】画像表示装置用紫外線硬化型液状オルガノポリシロキサン組成物、該組成物を含む画像表示装置用接着剤、該接着剤を用いた画像表示装置及び該接着剤を用いた接着方法
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)下記(A−1)、(A−2)の質量比(A−1):(A−2)が100:0〜50:50の範囲であるオルガノポリシロキサン又はそれらの混合物:100質量部、
(A−1)下記一般式(1)で表される構造を分子中に少なくとも2つ有する直鎖状オルガノポリシロキサン
(A−2)下記一般式(1)で表される構造を分子中に少なくとも1つ有する分岐状オルガノポリシロキサン
【化1】
[式中、mは0、1又は2の整数、R
1は水素原子、フェニル基又はハロゲン化フェニル基、R
2は水素原子又はメチル基、R
3は1価の同一又は異なってもよい炭素原子数1〜10の有機基、Z
1は−R
4−、−R
4O−、又は、−R
4SiR
32O−(ここで、R
3は上記と同様であり、R
4は2価の同一又は異なってもよい炭素原子数1〜10の有機基である)で表される2価の基、Z
2は酸素原子、又は、2価の同一若しくは異なってもよい炭素原子数1〜10の有機基である。]
(B)光重合開始剤:0.01〜10質量部、
(C)BET法により測定した比表面積が50m
2/g以上であるシリカ:0.05〜20質量部、
(D)下記一般式(2)で表される環状アセタール構造を有するビス(メタ)アクリレート化合物:0.01〜10質量部、
【化2】
[式中、R
5及びR
6は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R
7は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、R
8及びR
9は、それぞれ独立して炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し、R
10及びR
11は、それぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、s及びtは、それぞれ独立して0〜5の整数を表す。]
を含有するものであることを特徴とする画像表示装置用紫外線硬化型液状オルガノポリシロキサン組成物。
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像表示装置用紫外線硬化型液状オルガノポリシロキサン組成物を含むものであることを特徴とする画像表示装置用接着剤。
透明導電性膜を有する支持板と画像表示部、及びカバーパネルと前記支持板の少なくともいずれか一つを請求項4に記載の画像表示装置用接着剤を用いて貼り合わせたものであることを特徴とする画像表示装置。
請求項4に記載の画像表示装置用接着剤を用いて、パネルと画像表示部、カバーパネルと透明導電性膜を有する支持板、画像表示部と透明導電性膜を有する支持板、のいずれかを貼り合わせることを特徴とする接着方法。
【背景技術】
【0002】
光学表示素子であるタッチパネル(タッチスクリーンパネルとも呼ばれる)は、液晶表示装置等の画像表示部と、座標軸を即座に認識し入力を行うデバイスである入力部を組み合わせたものである。入力部は、例えば、ITO(インジウム−スズ酸化物)等の透明導電性膜(透明導電性皮膜)を有する支持板(ガラス板又は樹脂板)とカバーパネル(ガラス又は樹脂)を貼り合わせたものである。入力部は、通常、液晶ディスプレイなどのFPD(フラットパネルディスプレイ)やCRT(ブラウン管)の表示面側にそれらの最表面に形成されているパネルに換えて形成される。画像表示部及び入力部を有するタッチパネルはソフトウェアと組み合わせることで多種多様の操作性を実現することができる。
【0003】
また、タッチパネルには各種の方式が存在するが、抵抗膜方式と静電容量方式の2つの方式が主流であり、静電容量方式はさらに表面型静電容量方式と投影型静電容量方式に分類され、後者の投影型はX−Yの格子状駆動電極を用いた積算算出法を適用しており、ワイヤーセンサー方式とグリッド方式がある。さらにグリッド方式には1つのセンサーを使用した自己容量検出法と2つの送受信センサーを使用した相互容量検出法などがある。なお、抵抗膜方式と静電容量方式以外の方式としては、光学方式、超音波方式、電磁誘導方式、インセル方式などが挙げられる。
【0004】
タッチパネルに使用される粘着剤(粘着シート)は、ITO面と直接接する、最表面のカバーパネルとITO面を持つ支持板との貼り合わせ、及び該支持板と背面(画像表示部側であり、液晶ディスプレイの場合は偏光板のTACフィルム等)との貼り合わせ等に用いることができる。また、ITO面を持つ支持板と背面側(バックライト側)の液晶ディスプレイ(偏光板)を全面で貼り合わせる場合などにオプティカルボンディングと呼ばれる基材レス両面粘着シートが使用される。この粘着シートは、カバーパネルとITO面を持つ支持板との貼り合わせで使用されるものとは要求物性が異なる。
【0005】
従来、本用途で使用される粘着剤(感圧接着剤とも呼ばれる)や粘着シートは、耐久性、特に高温下や高温高湿度下での問題があり、高温環境下における微細な気泡や着色の発生、高温高湿度環境下における粘着剤層の白濁や剥がれの発生、微細な気泡の発生が見られた。また最近の傾向では意匠性を高めるため平坦な画像表示部に印刷等による装飾が施される場合がある。しかし、それに伴い生じる段差に対して粘着剤をそのまま貼り合わせた場合、気泡を巻き込むなどの問題があり、前者の耐久性向上と後者の段差追従性は両立させることが困難であった。
【0006】
特許文献1は、平坦な画像表示部と装飾部(段差部分)を有する透明パネルの貼り合わせの際に気泡の発生を抑制しうる粘着剤を開示している。しかし、粘着剤成分としてカルボキシル基含有単量体が用いられているために直接金属面あるいは金属薄膜層に接触した場合に金属の腐食が発生するため、この用途(カバーパネルとITO面の貼り合わせ用)で用いることは困難であった。
【0007】
さらに、投影型静電容量方式などにおいては、粘着剤中に含有する酸成分等がガラスや樹脂のシートやフィルム上に形成されたITOなどの透明導電性膜やそれをエッチングして得られる回路、及び銀、銅、アルミなどの微細な金属配線を腐食してしまうという問題があった。
【0008】
特許文献2は、カルボキシル基含有モノマーを含まないアルコキシアクリレートを主モノマー成分として用い、金属薄膜層に対して腐食を生じさせない粘着剤組成物を開示している。しかし、高温高湿度下における粘着剤層の白濁が発生し、タッチパネル用粘着剤としては十分な性能を有しているとは言えず、未だ十分な解決はなされていなかった。
【0009】
特許文献3は発光ダイオード(LED)素子用として有用な透明オルガノシロキサン組成物を開示しているものの、この組成物を紫外線照射によって硬化させた硬化物のゴム硬度が硬過ぎるために、液晶表示ムラの発生を引き起こしてしまうという問題があり、この組成物は画像表示装置用としては不十分であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、透明性が高く、ガラス及び樹脂に対する接着性に優れ、高温における耐久性が良好で、段差追従性に優れた硬化物を与えることができ、硬化前における形状保持性が高い画像表示装置用紫外線硬化型液状オルガノポリシロキサン組成物を提供することを目的とする。また、該組成物を含む画像表示装置用接着剤、該接着剤を用いた画像表示装置及び該接着剤を用いた接着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、(A)下記(A−1)、(A−2)の質量比(A−1):(A−2)が100:0〜50:50の範囲であるオルガノポリシロキサン又はそれらの混合物:100質量部、
(A−1)下記一般式(1)で表される構造を分子中に少なくとも2つ有する直鎖状オルガノポリシロキサン
(A−2)下記一般式(1)で表される構造を分子中に少なくとも1つ有する分岐状オルガノポリシロキサン
【化1】
[式中、mは0、1又は2の整数、R
1は水素原子、フェニル基又はハロゲン化フェニル基、R
2は水素原子又はメチル基、R
3は1価の同一又は異なってもよい炭素原子数1〜10の有機基、Z
1は−R
4−、−R
4O−、又は、−R
4SiR
32O−(ここで、R
3は上記と同様であり、R
4は2価の同一又は異なってもよい炭素原子数1〜10の有機基である)で表される2価の基、Z
2は酸素原子、又は、2価の同一若しくは異なってもよい炭素原子数1〜10の有機基である。]
(B)光重合開始剤:0.01〜10質量部、
(C)BET法により測定した比表面積が50m
2/g以上であるシリカ:0.05〜20質量部、
(D)下記一般式(2)で表される環状アセタール構造を有するビス(メタ)アクリレート化合物:0.01〜10質量部、
【化2】
[式中、R
5及びR
6は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R
7は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、R
8及びR
9は、それぞれ独立して炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し、R
10及びR
11は、それぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、s及びtは、それぞれ独立して0〜5の整数を表す。]
を含有するものであることを特徴とする画像表示装置用紫外線硬化型液状オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
【0013】
このような組成物であれば、透明性が高く、ガラス及び樹脂に対する接着性に優れ、高温における耐久性が良好で、段差追従性に優れた硬化物を与えることができ、硬化前における形状保持性が高い。
【0014】
また、前記一般式(1)において、Z
1が−R
4−で表される2価の有機基であり、Z
2が酸素原子であることが好ましい。
【0015】
また、前記一般式(1)において、Z
1が−R
4O−又は−R
4SiR
32O−で表される2価の基であり、Z
2が2価の同一又は異なってもよい炭素原子数1〜10の有機基であることが好ましい。
【0016】
このような組成物であれば、光硬化しやすいものとなる。
【0017】
更に本発明では、上記本発明の画像表示装置用紫外線硬化型液状オルガノポリシロキサン組成物を含むものであることを特徴とする画像表示装置用接着剤を提供する。
【0018】
このような接着剤であれば、FPDにおけるパネルと画像表示部、タッチパネルにおける入力部と画像表示部、タッチパネルの入力部におけるカバーパネルと透明導電性膜を有する支持板等を接着するための接着剤として好適に用いることができる。
【0019】
更に本発明では、パネルと画像表示部を上記本発明の画像表示装置用接着剤を用いて貼り合わせたものであることを特徴とする画像表示装置を提供する。
【0020】
更に本発明では、透明導電性膜を有する支持板と画像表示部、及びカバーパネルと前記支持板の少なくともいずれか一つを上記本発明の画像表示装置用接着剤を用いて貼り合わせたものであることを特徴とする画像表示装置を提供する。
【0021】
本発明の組成物は、透明性が高く、ガラス及び樹脂に対する接着性に優れ、高温における耐久性が良好で、段差追従性に優れた硬化物を与えることができ、硬化前における形状保持性が高い。そのため、本発明の組成物を含む接着剤を用いた画像表示装置は、高温における耐久性が良好なものとなる。
【0022】
更に本発明では、上記本発明の画像表示装置用接着剤を用いて、パネルと画像表示部、カバーパネルと透明導電性膜を有する支持板、画像表示部と透明導電性膜を有する支持板、のいずれかを貼り合わせることを特徴とする接着方法を提供する。
【0023】
このような接着方法であれば、パネルと画像表示部、カバーパネルと透明導電性膜を有する支持板、画像表示部と透明導電性膜を有する支持板、のいずれかの貼り合わせを確実に達成することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の組成物は、塗工性及び硬化前における形状保持性に優れ、紫外線硬化により、透明性、接着性、耐久性、耐熱変色性及び段差追従性に優れた硬化物を与えることができる。また、本発明の組成物は、ITO等の透明導電性膜に対する腐食性がない。すなわち、耐腐食性に優れる。また、本発明の組成物を、特に、FPD、湾曲パネルディスプレイ、タッチパネル等における各種基材の接着に用いた場合、高温高湿条件下においても液晶部の表示ムラが発生しにくい。従って、本発明の組成物は画像表示装置用、例えば、FPD用、湾曲パネルディスプレイ用、タッチパネル用、特に静電容量方式のタッチパネル用として好適であり、画像表示部/パネル間の保護(封止)、ガラス、アクリル、ポリカーボネート、PET等の各種基材用の接着材料として有用である。
【0025】
特に、本発明の組成物は硬化前における形状保持が可能なことから、低粘度の液状接着剤と併用する際に、該液状接着剤の流出を防止するためのダム材として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
上記のように、透明性が高く、ガラス及び樹脂に対する接着性に優れ、高温における耐久性が良好で、段差追従性に優れた硬化物を与えることができ、硬化前における形状保持性が高い画像表示装置用紫外線硬化型液状オルガノポリシロキサン組成物が求められている。
【0029】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。その結果、下記(A)〜(D)成分を含有する画像表示装置用紫外線硬化型液状オルガノポリシロキサン組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0030】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の説明において、分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0031】
本発明の画像表示装置用紫外線硬化型液状オルガノポリシロキサン組成物は、
(A)下記(A−1)、(A−2)の質量比(A−1):(A−2)が100:0〜50:50の範囲であるオルガノポリシロキサン又はそれらの混合物:100質量部、
(A−1)下記一般式(1)で表される構造を分子中に少なくとも2つ有する直鎖状オルガノポリシロキサン
(A−2)下記一般式(1)で表される構造を分子中に少なくとも1つ有する分岐状オルガノポリシロキサン
【化3】
[式中、mは0、1又は2の整数、R
1は水素原子、フェニル基又はハロゲン化フェニル基、R
2は水素原子又はメチル基、R
3は1価の同一又は異なってもよい炭素原子数1〜10の有機基、Z
1は−R
4−、−R
4O−、又は、−R
4SiR
32O−(ここで、R
3は上記と同様であり、R
4は2価の同一又は異なってもよい炭素原子数1〜10の有機基である)で表される2価の基、Z
2は酸素原子、又は、2価の同一若しくは異なってもよい炭素原子数1〜10の有機基である。]
(B)光重合開始剤:0.01〜10質量部、
(C)BET法により測定した比表面積が50m
2/g以上であるシリカ:0.05〜20質量部、
(D)下記一般式(2)で表される環状アセタール構造を有するビス(メタ)アクリレート化合物:0.01〜10質量部、
【化4】
[式中、R
5及びR
6は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R
7は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、R
8及びR
9は、それぞれ独立して炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し、R
10及びR
11は、それぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、s及びtは、それぞれ独立して0〜5の整数を表す。]
を含有するものである。
【0032】
このような組成物であれば、透明性が高く、ガラス及び樹脂に対する接着性に優れ、高温における耐久性が良好で、段差追従性に優れた硬化物を与えることができる。また、液状であるため作業性に優れる。更に、硬化前における形状保持性が高いため、低粘度の液状接着剤(例えば、粘度10,000mPa・s以下の液状接着剤)と併用する際に、該液状接着剤の流出を防止するためのダム材として有用である。
【0033】
−(A)成分−
本発明の組成物を構成する(A)成分は、下記(A−1)、(A−2)の質量比(A−1):(A−2)が100:0〜50:50の範囲であるオルガノポリシロキサン又はそれらの混合物である。
【0034】
本発明では(A)成分として(A−1)成分を単独で用いることもできるが、(A)成分として(A−1)成分及び(A−2)成分を併用することが好ましい。(A)成分を(A−1)成分の直鎖状オルガノポリシロキサン及び(A−2)成分の分岐状オルガノポリシロキサンの混合物とすることにより、本発明の組成物は該組成物を硬化して得られる硬化物が適度な硬度を有するものとなる。このような組成物であれば、画像表示装置用としてより好適に用いることができる。
【0035】
(A−1)成分としては、一般式(1):
【化5】
(式中、m、R
1、R
2、R
3、Z
1、Z
2は上記と同様である。)
で表される構造を分子中に少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサンであって、SiO
4/2単位及びSiO
3/2単位を有せず、SiO
2/2とSiO
1/2単位のみで構成された直鎖状であるオルガノポリシロキサンが使用される。
【0036】
一般式(1)において、R
3で示される炭素原子数1〜10の一価有機基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基などの炭化水素基;これらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換した置換炭化水素基、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基、シアノエチル基等が挙げられ、さらにこれらの置換又は非置換の炭化水素基において炭化水素鎖の一部にエーテル結合(エーテル性酸素原子)、アミド結合などを含むものも包含される。なお、R
3で示される一価有機基は、炭素原子数1〜8程度のものが好ましい。
【0037】
R
4又はZ
2で表される2価の炭素原子数1〜10の有機基の例としては、2価の置換又は非置換の炭化水素基、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基等のアルキレン基等が挙げられ、これらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部はフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換されていてもよく、さらに、これらの炭化水素鎖中にエーテル結合、アミド結合等を含むものも包含される。
【0038】
上記一般式(1)においては、Z
1が−R
4−で表される2価の有機基であるときは、Z
2は酸素原子であることが好ましく、Z
1が−R
4O−又は−R
4SiR
32O−で表される2価の基であるときは、Z
2は2価の同一又は異なってもよい炭素原子数1〜10の有機基であることが好ましい。これにより、光硬化しやすいものとなる。
【0039】
上記一般式(1)で表される構造を有する基の具体例としては、下記式に示すもの等が挙げられる。
【0043】
以下に(A−1)成分のオルガノポリシロキサンを例示する。これらのポリシロキサンにおいて、各シロキサン繰り返し単位の配列はランダムであってもブロックであってもよい。また、これらのオルガノポリシロキサンは、(A−1)成分として一種単独でも二種以上組み合わせて使用することもできる。
【0047】
(A−1)成分としては25℃において100〜200,000mPa・sの粘度を有するものが好適である。(A−1)成分の粘度の好ましい範囲は500〜50,000mPa・sであり、より好ましい範囲は1,000〜5,000mPa・sである。(A−1)成分の粘度が100mPa・sを超える場合は、本発明の組成物を紫外線で照射して得られる硬化物が硬くなりすぎず、画像表示装置用として好適であり、(A−1)成分の粘度が200,000mPa・s未満の場合は、作業性に優れる。
【0048】
(A−1)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンの分子量は特に限定されないが、ポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000〜100,000であることが好ましい。
【0049】
(A−2)成分のオルガノポリシロキサンは、一般式(1):
【化12】
(式中、m、R
1、R
2、R
3、Z
1、Z
2は上記と同様である。)
で表される構造を分子中に少なくとも1つ有するオルガノポリシロキサンであって、SiO
4/2単位及び/又はSiO
3/2単位を含む分岐状オルガノポリシロキサンである。
【0050】
ここで、(A−2)成分のシロキサン単位の合計に対して、SiO
4/2単位及び/又はSiO
3/2単位を1〜50mol%有することが好ましい。
【0051】
(A−2)成分は、上記(A−1)成分の使用を前提に、(A−1):(A−2)の質量比が100:0〜50:50の範囲で使用され、好ましくは100:0〜60:40、より好ましくは、99:1〜60:40の範囲で使用される。(A−2)成分の量が50%を超えると、得られる硬化物の硬度が硬くなり過ぎるため接着性や段差追従性に劣り、画像表示装置用の接着剤として用いた場合に表示ムラ等の不具合を引き起こす一因となる。
【0052】
以下に(A−2)成分のオルガノポリシロキサンを例示する。これらのオルガノポリシロキサンは(A−2)成分として一種単独でも二種以上組み合わせて使用することもできる。
【0053】
下記のMA単位(SiO
1/2)とM単位(SiO
1/2)とQ単位(SiO
4/2)とからなり、これら単位のモル比がMA:M:Q=1:4:5であって、ポリスチレン換算の重量平均分子量が5,000であるオルガノポリシロキサン
【化13】
【化14】
【化15】
【0054】
下記のMA−D単位(SiO
2/2)とD単位(SiO
2/2)とT単位(SiO
3/2)とからなり、これら単位のモル比がMA−D:D:T=2:6:7であって、ポリスチレン換算の重量平均分子量が3,500であるオルガノポリシロキサン
【化16】
【化17】
【化18】
【0055】
(A−2)成分としては、(A−1)成分と同様、25℃において100〜200,000mPa・sの粘度を有するものが好適である。(A−2)成分の粘度の好ましい範囲は500〜50,000mPa・sであり、より好ましい範囲は1,000〜10,000mPa・sである。(A−2)成分の粘度が100mPa・sを超える場合は、本発明の組成物を紫外線で照射して得られる硬化物が硬くなりすぎず、画像表示装置用として好適であり、(A−2)成分の粘度が200,000mPa・s未満の場合は、作業性に優れる。
【0056】
(A−2)成分の分岐状オルガノポリシロキサンの分子量は特に限定されないが、ポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000〜100,000であることが好ましい。
【0057】
(A−1)成分及び(A−2)成分の可視光(589nm)における屈折率(25℃)としては、後述する(C)成分との相溶性(透明性)から1.430〜1.470の範囲とすることが特に好適である。
【0058】
このような(A−1)成分、(A−2)成分の合成方法としては、例えば下記に示すオルガノハイドロジェンシラン、
【化19】
(式中、m、R
1、R
2、R
3、Z
1は上記と同様である。)
好ましくは下式に示す化合物、
【化20】
(式中、m、R
1、R
2、R
3、Z
1、Z
2は上記と同様である。)
より具体的には、例えば、1,3−ビス(3−メタクリロキシプロピル)テトラメチルジシロキサンと1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを酸触媒存在下で平衡化反応することによって得られる(3−メタクリロキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンと、脂肪族不飽和基(例えば、エチレン性不飽和基、及びアセチレン性不飽和基が挙げられる。)を含むオルガノポリシロキサンとを、塩化白金酸触媒存在下でヒドロシリル化反応させるとよく、この方法で本発明に好適なものを製造することができるが、上記の合成方法に制限されるものではない。また、上記の脂肪族不飽和基を含むオルガノポリシロキサンは、脂肪族不飽和基を有するオルガノアルコキシシランを含むアルコキシシランの(共)加水分解縮合、酸触媒存在下での平衡化反応など公知の方法で製造することができ、市販のものを用いても良い。
【0059】
−(B)成分−
(B)成分の光重合開始剤としては、アクリル系官能基の光硬化に使用されるものとして公知のものをいずれも使用することができる。例えば、ベンゾイン及び置換ベンゾイン(例えば、アルキルエステル置換ベンゾイン)、ミカエル(Michler’s)ケトン、2,2−ジエトキシアセトフェノン(“DEAP”)のようなジアルコキシアセトフェノン、ベンゾフェノン及び置換ベンゾフェノン、アセトフェノン及び置換アセトフェノン、キサントン及び置換キサントン、2,2−アシルフォスフィンオキサイドなどである。望ましい光重合開始剤の具体例としては、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジエトキシキサントン、クロロ−チオ−キサントン、アゾビスイソブチロニトリル、N−メチルジエタノールアミンベンゾフェノン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド及びこれらの混合物がある。可視光線開始剤も用いることができ、その例としては、カムホキノンパーオキシエステル開始剤及び非フルオレン−カルボン酸パーオキシエステルが挙げられる。これらの中で、特に好ましくはDEAPである。
【0060】
光重合開始剤は商業的にも入手でき、例えば、BASF社からIRGACURE及びDAROCUREの商品名で入手することができる。具体的には、例えば、IRGACURE 184 (1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、IRGACURE 907(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン)、IRGACURE 500(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンとの組合せ)、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン)、IRGACURE 1700(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチルフェニル)ホスフィンオキサイドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンとの組合せ)、IRGACURE 819 [ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド]、DAROCURE1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン)、及び4265(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−ホスフィンオキサイドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンとの組合せ)があり、可視光線(青色)光重合開始剤としては、dl−カムホルキノン及びIRGACURE 784(ビス(η
5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル]チタン)がある。
【0061】
(B)成分である光重合開始剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.01〜10質量部であり、本発明に所望される反応性と深部硬化性の面から特に好ましくは0.1〜5質量部である。配合量が、0.01質量部未満の場合、反応が十分に進行しない恐れがある。10質量部を超える場合、得られる硬化物が透明性、ガラス及び樹脂に対する接着性、高温における耐久性並びに段差追従性を有さないものとなる恐れがある。また、組成物の硬化前における形状保持性が低下する恐れがある。
【0062】
(B)成分は一種単独でも二種以上を組み合わせても使用できる。
【0063】
光重合開始剤は、開始剤同士を反応させ結合させたポリマーでもあり得る。そのような光重合開始剤は、米国特許第4,477,326号及び第4,587,276号に記載されている。
【0064】
パーオキシド開始剤のような他のフリーラジカル開始剤も(B)成分と併用可能である。その場合の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましい。パーオキシド開始剤を併用して添加することで、直接紫外線で照射できない本発明の組成物の箇所については、必要に応じて60〜100℃程度加熱することで本発明の組成物を硬化することもできる。
【0065】
−(C)成分−
(C)成分のシリカは、紫外線照射によって得られる硬化物に強度を付与することは勿論、塗布した本発明の組成物の形状を保持するために配合される成分であり、BET法(例えば、窒素ガス吸着法)により測定した比表面積が50m
2/g以上(通常50〜400m
2/g)のものである。(C)成分の比表面積は、好ましくは100〜350m
2/gである。比表面積が50m
2/g未満の場合は組成物の形状を保持する能力が劣るため、不適である。なお、BET法とは、窒素、アルゴン等の気体分子を固体粒子に吸着させ、吸着した気体分子の量から固体粒子の比表面積を測定する方法である。
【0066】
なお、上記シリカは親水性のものであっても疎水性のものであってもよい。親水性シリカとしては、微粉末シリカ、例えば、アエロジル50,130,200,300(商品名、日本アエロジル社製)、キャボシルMS−5,MS−7(商品名、キャボット社製)、レオロジルQS−102,103(商品名、トクヤマ社製)、ニプシルLP(商品名、日本シリカ社製)等が挙げられ、また、疎水性シリカとしては、例えば、アエロジルR−812,R−812S,R−972,R−974(商品名、デグッサ社製)、レオロジルMT−10(商品名、トクヤマ社製)、ニプシルSSシリーズ(商品名、日本シリカ社製)等が挙げられる。
【0067】
この(C)成分のシリカは、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0068】
上記親水性の微粉末シリカを用いる場合には、必要に応じて、その表面を疎水化処理することが好ましい。疎水化処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン等のオルガノシラザン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン等のハロゲン化シランや、これらのハロゲン原子がメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基で置換されたオルガノアルコキシシラン等が挙げられる。疎水化処理方法としては、例えば、微粉末シリカを疎水化処理剤と共に150〜200℃、特に150〜180℃で2〜4時間程度加熱処理する方法が挙げられる。また、予め表面処理したものを本発明の組成物に配合してもよいし、本発明の組成物を調製する段階で、(A)成分とともに疎水化処理剤を配合することにより、表面処理が行われるようにしてもよい。
【0069】
本発明の組成物への(C)成分の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して0.05〜20質量部の範囲とする必要がある。(C)成分の配合量が0.05質量部未満ではチキソ性の付与効果が不十分となる場合があり、塗布した組成物の形状を保持できなくなる場合がある。配合量が20質量部を超えると組成物の粘度が高くなり過ぎるため、組成物を塗布する際、著しく作業性に劣るものとなる。
【0070】
−(D)成分−
(D)成分は、下記一般式(2)で表される環状アセタール構造を有するビス(メタ)アクリレート化合物である。
【化21】
[式中、R
5及びR
6は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R
7は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、R
8及びR
9は、それぞれ独立して炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し、R
10及びR
11は、それぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、s及びtは、それぞれ独立して0〜5の整数を表す。]
【0071】
一般式(2)において、R
7で表される炭素原子数1〜5のアルキル基としては、−CH
3、−CH
2CH
3、−CH(CH
3)
2、−CH
2CH
2CH
3、−(CH
2)
3CH
3、−CH(CH
3)CH
2CH
3、−CH
2CH(CH
3)CH
3、−C(CH
3)
3、−(CH
2)
4CH
3、−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
3、−CH
2CH(CH
3)CH
2CH
3、−CH
2CH
2CH(CH
3)CH
3、−C(CH
3)
2CH
2CH
3、−CH
2C(CH
3)
3等が挙げられる。これらの中でも、−CH
3、−CH
2CH
3、−CH(CH
3)
2、−CH
2CH
2CH
3が好ましく、−CH
3、−CH
2CH
3が特に好ましい。なお、R
7は水素原子とすることもできる。
【0072】
一般式(2)において、R
8及びR
9で表される炭素原子数1〜5のアルキレン基としては、−CH
2−、−(CH
2)
2−、−CH(CH
3)CH
2−、−CH
2CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−(CH
2)
3−、−(CH
2)
4−、−CH(CH
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2−、−C(CH
3)
2CH
2−、−CH
2C(CH
3)
2−、−(CH
2)
5−、−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH(CH
3)CH
2−、−C(CH
3)
2CH
2CH
2−、−CH
2C(CH
3)
2CH
2−等が挙げられる。これらの中でも、−CH
2−、−(CH
2)
2−、−CH(CH
3)CH
2−、−CH
2CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−(CH
2)
3−で表される炭素原子数1〜3のアルキレン基が好ましい。
【0073】
一般式(2)において、R
10及びR
11で表される炭素原子数1〜5のアルキル基としては、上述したR
7で表される炭素原子数1〜5のアルキル基の例示と同様の基が挙げられる。なお、R
10及びR
11は水素原子とすることもできる。
【0074】
一般式(2)において、s及びtはそれぞれ独立して0〜5の整数を表す。ビス(メタ)アクリレート化合物の生産性の理由から、好ましくは1〜2、更に好ましくはs=t=1である。
【0075】
一般式(2)で表される環状アセタール構造を有するビス(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、下記一般式(3)で表される化合物等が挙げられる。また、(D)成分は一種単独でも二種以上を組み合わせても使用できる。
【化22】
(式中、R
5及びR
6は上記と同様である。)
【0076】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.01〜10質量部であり、好ましくは0.1〜5質量部である。配合量が、0.01質量部未満の場合、樹脂に対する接着性が低下する恐れがある。10質量部を超える場合、本発明の組成物の紫外線による反応性及び透明性を損なう恐れがある。
【0077】
−その他の成分−
本発明の組成物には、必要に応じて、その他の成分を配合することができる。
【0078】
・反応性希釈剤:
組成物の粘度や硬化物の硬度調整等、高温における耐久性、特に湿熱処理後の透明性、さらに基材に対して接着性を付与する等の目的で、シリコーンを含まない反応性希釈剤を添加することができる。
【0079】
シリコーンを含まない反応性希釈剤としては、H
2C=CGCO
2Qによって示されるような(メタ)アクリレート類があり、本発明の(D)成分以外のものが使用できる。上記式中、Gは、水素、ハロゲン、又は炭素原子数1〜約4個のアルキル基であり;Qは、炭素原子数1〜約16個のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルカリル基、アラルキル基又はアリール基から選ばれ、これらのいずれかは、必要に応じ、シラン、ケイ素、酸素、ハロゲン、カルボニル、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、尿素、ウレタン、カルバメート、アミン、アミド、イオウ、スルホネート、スルホン等で置換又は封鎖し得る。
【0080】
反応性希釈剤としてとりわけ望ましい(メタ)アクリレート類のより具体的な例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノール−A(メタ)アクリレート(“EBIPA”又は“EBIPMA”)のようなビスフェノール−Aジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフラン(メタ)アクリレート及びジ(メタ)アクリレート、シトロネリルアクリレート及びシトロネリルメタクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(“HDDA”又は“HDDMA”)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラヒドロジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(“ETTA”)、トリエチレングリコールジアクリレート及びトリエチレングリコールジメタクリレート(“TRIEGMA”)、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬株式会社製、KAYARAD R−684、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート等)、並びにイソボルニルアクリレート及びイソボルニルメタクリレートがある。これらの(メタ)アクリレート類は、一種単独は勿論、二種以上を組合せて反応性希釈剤として使用できる。
【0081】
反応性希釈剤を使用する場合には、(A)成分100質量部に対して0.05〜50質量部配合すればよい。
【0082】
・改質剤:
本発明の組成物は、高温における耐変色性、さらにガラス、アクリル、ポリカーボネート、PET等の各種基材に対して接着が必要な特定の用途において、所望されるような硬化又は未硬化特性を改変させる他の成分も含ませ得る。例えば、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリアルキル−又はトリアリル−イソシアヌレート、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のような接着促進剤を5質量%以下の量で含ませ得る。
【0083】
また、約30質量%までの量で非(メタ)アクリルシリコーン希釈剤又は可塑剤を添加することができる。非(メタ)アクリルシリコーン類としては、25℃において100〜10,000mPa・sの粘度を有するトリメチルシリル末端化オイル、及びシリコーンゴムである。非(メタ)アクリルシリコーン類は、本発明の組成物の架橋に取り込ませる目的でビニル基のような共重合性基を含んでもよい。
【0084】
・無機充填剤:
本発明の組成物には、(C)成分以外の無機充填剤を添加しても良い。無機充填剤を使用する場合には、(A)成分100質量部に対して0.1〜20質量部配合すればよい。
【0085】
−調製及び硬化−
本発明の組成物を調製及び硬化する方法は特に限定されない。本発明の組成物の調製方法としては、上述の各成分を使用し、それらを一緒に混合する方法を挙げることができる。
【0086】
本発明の組成物から得られる硬化物の物理特性は、一般式(1)の反応性シリコーンの分子量、使用する硬化方法等に依存する。一般に、反応性シリコーンの分子量が大きいほど、より軟質の硬化反応生成物を与える。
【0087】
本発明の組成物を硬化させるのに有用な紫外線源としては、種々の紫外線波長帯域において紫外線エネルギーを発出するように設計された通常の水銀蒸気ランプやメタルハライドランプ、単一波長を発出するLEDランプ等が挙げられる。
【0088】
本発明の組成物を硬化させるための紫外線波長範囲は、220〜450nmであることが望ましい。
【0089】
本発明の組成物は、直接又はシート状に成形した後、光学表示素子であるタッチパネルを構成するシート及びフィルムの各種基材(例えば、画像表示部)に対して貼り合わせ、紫外線を照射し、硬化させることができる。
【0090】
本発明の組成物を硬化して得られる硬化物の硬さは特に限定されないが、JIS6249に規定されるタイプAデュロメータ硬さが好ましくは30以下、より好ましくは10〜30である。このような硬さであれば、画像表示装置用としてより好適に用いることができる。
【0091】
更に本発明では、上記本発明の画像表示装置用紫外線硬化型液状オルガノポリシロキサン組成物を含む画像表示装置用接着剤を提供する。このような接着剤であれば、FPDにおけるパネルと画像表示部、タッチパネルにおける入力部と画像表示部、タッチパネルの入力部におけるカバーパネルと透明導電性膜を有する支持板等を接着するための接着剤として好適に用いることができる。
【0092】
更に本発明では、パネルと画像表示部を上記本発明の画像表示装置用接着剤を用いて貼り合わせた画像表示装置を提供する。また、本発明では、透明導電性膜を有する支持板と画像表示部、及びカバーパネルと透明導電性膜を有する支持板の少なくともいずれか一つを上記本発明の画像表示装置用接着剤を用いて貼り合わせた画像表示装置を提供する。本発明の組成物は、透明性が高く、ガラス及び樹脂に対する接着性に優れ、高温における耐久性が良好で、段差追従性に優れた硬化物を与えることができ、硬化前における形状保持性が高い。そのため、本発明の組成物を含む接着剤を用いた画像表示装置は、高温における耐久性が良好なものとなる。
【0093】
ここで、画像表示装置としては、タッチパネル、FPD、湾曲パネルディスプレイ等を挙げることができる。また、画像表示部としては、液晶モジュールを挙げることができる。液晶モジュールは液晶、偏光板及びTACフィルムを有するものとすることができる。支持板の材料としては、ガラス板、樹脂板等を挙げることができる。また、透明導電性膜としては、ITO膜を挙げることができる。また、パネル及びカバーパネルの材料としては、ガラス、樹脂等を挙げることができる。
【0094】
以下、本発明の画像表示装置の一態様について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の画像表示装置用接着剤を用いたタッチパネルの一例を示す断面模式図である。
図1に示すように、タッチパネル100はカバーパネル1と透明導電性膜を有する支持板とを有する入力部及び画像表示部2を具備する。ここで、透明導電性膜を有する支持板は支持板3上に透明導電性膜4が形成されたものである。カバーパネル1と支持板3の透明導電性膜4が形成されている面は本発明の画像表示装置用接着剤5で接着されている。また、支持板3の透明導電性膜4が形成されていない面と画像表示部2は本発明の接着剤5で接着されている。
図1では、カバーパネル1と透明導電性膜4の接着、支持板3と画像表示部2の接着の両方に本発明の接着剤を用いた例を示したが、このうち一方のみの接着に本発明の接着剤を用いることもできる。
【0095】
図2は、本発明の画像表示装置用接着剤を用いたFPDの一例を示す断面模式図である。FPD200はパネル11と画像表示部12を具備する。パネル11と画像表示部12は本発明の画像表示装置用接着剤5で接着されている。
【0096】
更に本発明では、上記本発明の画像表示装置用接着剤を用いて、パネルと画像表示部、カバーパネルと透明導電性膜を有する支持板、画像表示部と透明導電性膜を有する支持板、のいずれかを貼り合わせる接着方法を提供する。このような接着方法であれば、パネルと画像表示部、カバーパネルと透明導電性膜を有する支持板、画像表示部と透明導電性膜を有する支持板、のいずれかの貼り合わせを確実に達成することができる。
【0097】
例えば、
図2に示すFPDを作製する場合、本発明の接着剤5を画像表示部12に直接塗布し、この画像表示部12とパネル11を貼り合わせた後、紫外線を照射し、硬化させることで画像表示部12とパネル11を接着させることができる。また、予め本発明の接着剤5をシート状に成形し、このようにして得られたシートを画像表示部12又はパネル11に貼り付けてもよい。
【実施例】
【0098】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0099】
[実施例1〜4、比較例1〜5]
下記(A−1)成分、(A−2)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び改質剤成分を用意し、表1に示す組成(数値は質量部)のシリコーン組成物を調製した。得られた組成物に対し、下記方法で拡延値を測定することにより、硬化前における組成物の形状安定性を評価し、その結果を表2に示した。
【0100】
拡延値:50mm四方のガラス板にシリコーン組成物1.00gを円形状に塗布した10秒後における直径(初期)と、23℃、30分放置後における直径を測定した。なお、拡延値(初期)の値が40mm以上の場合、形状保持性が無いと判断した。
【0101】
得られた組成物に対し、日本電池社製コンベアタイプUV照射装置を用いて、窒素雰囲気下、高圧水銀灯による紫外線照射(500mJ/cm
2)を3回行い、厚み2mmの硬化物を得た。その硬化物の硬さ・透過率を下記方法で評価し、その結果を表2に示した。
【0102】
硬さ:ASTM D 2240の規定に順じて、株式会社テクロック製デュロメータ ショアOO硬度計、JIS6249の規定に準じて、株式会社島津製作所製デュロメータ タイプAにより測定した。
【0103】
光透過率:作製した硬化物の試料の光透過率については、分光光度計(日立製作所製U−3310)を用いて400nmの波長で測定し初期値とした。次にその試料を150℃の乾燥機内に暴露した状態で1,000時間処理後の光透過率を測定した。
【0104】
また、得られた組成物について、下記方法によりガラス及びアクリル樹脂への接着性を評価し、その結果を表2に示した。
【0105】
接着性:ガラス板又はアクリル樹脂板を同種2枚ずつ用意し、一方の板上に塗布面積が20mm×25mmになるように耐熱テープ(厚み80μm)で囲った枠内へ実施例及び比較例の組成物を塗布し、もう一枚の板で組成物を挟んだ状態で上記の紫外線照射条件で硬化させ、〇:接着、×:非接着にて評価した。
【0106】
〔(A−1)成分〕
下記平均分子式で示される、25℃における粘度が3,000mPa・sであり、589nmにおける屈折率(25℃)が1.446であるオルガノポリシロキサン
【0107】
【化23】
【0108】
〔(A−2)成分〕
下記のMA単位(SiO
1/2)とM単位(SiO
1/2)とQ単位(SiO
4/2)とからなり、これら単位のモル比がMA:M:Q=1:4:5であって、ポリスチレン換算の重量平均分子量が5,000であるオルガノポリシロキサン
【化24】
【化25】
【化26】
【0109】
〔(B)成分〕
2,2−ジエトキシアセトフェノン(“DEAP”)
【0110】
〔(C)成分〕
(C)−a レオロシールDM−30(株式会社トクヤマ製、比表面積300m
2/g)
(C)−b AEROSIL(登録商標) OX 50(エボニックインダストリーズAG社製、比表面積50m
2/g)
(C)−c AEROSIL(登録商標) RX 50(エボニックインダストリーズAG社製、比表面積35m
2/g)
なお、(C)−a〜(C)−cの比表面積はBET法により測定したものである。
【0111】
〔(D)成分〕
下記構造式で表されるジオキサングリコールジアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD R−604)
【化27】
【0112】
〔改質剤〕
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
*1:日東樹脂工業株式会社製、クラレックスRH20クリヤー
*2:日東樹脂工業株式会社製、クラレックス001
【0115】
表2に示したように、本発明の組成物(実施例1〜4の組成物)は、硬化前における形状保持性が高く、紫外線硬化により、透明性、耐熱性及び接着性に優れた硬化物を与えることができ、画像表示装置用の接着剤として好適である。一方、(A−1):(A−2)の質量比が100:0〜50:50の範囲外である比較例1と2においては、150℃の加熱処理後の光透過率が低下し、ガラス及びアクリル樹脂への接着性を示さなかった。また、(D)成分を含有しない比較例3と4においては、アクリル樹脂への接着性を示さなかった。
【0116】
また、実施例1〜4に添加した(C)成分は比表面積が50m
2/g以上であるのに対し、比表面積35m
2/gの(C)成分を添加した比較例5では、拡延値測定において試料が流れ出し、形状保持性に劣る結果となった。
【0117】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。