特許第6262711号(P6262711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262711
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】化合物、発光材料および有機発光素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 498/04 20060101AFI20180104BHJP
   C07D 513/04 20060101ALI20180104BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180104BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   C07D498/04 101
   C07D513/04 301
   H05B33/14 B
   C09K11/06 655
【請求項の数】10
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2015-500308(P2015-500308)
(86)(22)【出願日】2014年2月14日
(86)【国際出願番号】JP2014053477
(87)【国際公開番号】WO2014126200
(87)【国際公開日】20140821
【審査請求日】2017年2月13日
(31)【優先権主張番号】特願2013-28792(P2013-28792)
(32)【優先日】2013年2月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】相良 雄太
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓之
(72)【発明者】
【氏名】志津 功將
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 浩
(72)【発明者】
【氏名】安達 千波矢
【審査官】 谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−082703(JP,A)
【文献】 特開平10−340786(JP,A)
【文献】 特表2008−546762(JP,A)
【文献】 特開平11−116579(JP,A)
【文献】 米国特許第02807622(US,A)
【文献】 国際公開第2004/094389(WO,A1)
【文献】 Ying-Hung SO et al,Synthesis and Photophysical Properties of Some Benzoxazole and Benzothiazole Compounds,Macromolecules,1996年,vol.29, no.8,p.2783-2795
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 498/04
C07D 513/04
C09K 11/06
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
一般式(1)
D−A−D
[一般式(1)において、Aは下記一般式(2)〜(5):
【化1】
のいずれかで表される構造(ただし一般式(2)〜(5)の構造中の水素原子は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルケニル基または炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルキニル基で置換されていてもよい)を有する2価の基であり、2つのDは各々独立に下記の群:
【化2】
から選択される構造(ただし構造中の水素原子は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数12〜40のアリール置換アミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数12〜40のカルバゾリル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、アミド基、炭素数2〜10のアルキルアミド基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルキニル基またはニトロ基で置換されていてもよい)を有する基を表す。]
【請求項2】
一般式(1)のAが下記一般式(6)〜(9)のいずれかで表される構造を有することを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【化3】
[一般式(6)〜(9)において、R1〜R10は各々独立に水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルケニル基または炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルキニル基を表す。R1とR2、R3とR4、R5とR6、R7とR8は互いに結合してベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、シクロヘキサジエン環、シクロヘキセン環、シクロペンタエン環、シクロヘプタトリエン環、シクロヘプタジエン環またはシクロヘプタエン環を形成していてもよい。]
【請求項3】
一般式(1)の2つのDが同一の構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
一般式(1)のDが下記一般式(10)〜(12)のいずれかで表される構造を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【化4】
[一般式(10)〜(12)において、R11〜R18およびR21〜R25は各々独立に水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数12〜40のアリール置換アミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数12〜40のカルバゾリル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、アミド基、炭素数2〜10のアルキルアミド基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルキニル基またはニトロ基を表す。R11とR12、R12とR13、R13とR14、R15とR16、R16とR17、R17とR18、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R24とR25は互いに結合してベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、シクロヘキサジエン環、シクロヘキセン環、シクロペンタエン環、シクロヘプタトリエン環、シクロヘプタジエン環またはシクロヘプタエン環を形成していてもよい。]
【請求項5】
Dが一般式(11)で表される構造を有することを特徴とする請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物からなる発光材料。
【請求項7】
下記一般式(1)で表される構造を有する遅延蛍光体。
一般式(1)
D−A−D
[一般式(1)において、Aは下記一般式(2)〜(5):
【化5】
のいずれかで表される構造(ただし一般式(2)〜(5)の構造中の水素原子は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルケニル基または炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルキニル基で置換されていてもよい)を有する2価の基であり、2つのDは各々独立に下記の群:
【化6】
から選択される構造(ただし構造中の水素原子は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数12〜40のアリール置換アミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数12〜40のカルバゾリル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、アミド基、炭素数2〜10のアルキルアミド基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルキニル基またはニトロ基で置換されていてもよい)を有する基を表す。]
【請求項8】
請求項6に記載の発光材料を含む発光層を基板上に有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項9】
遅延蛍光を放射することを特徴とする請求項8に記載の有機発光素子。
【請求項10】
有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項8または9に記載の有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光材料として有用な化合物とそれを用いた有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの有機発光素子の発光効率を高める研究が盛んに行われている。特に、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する電子輸送材料、正孔輸送材料、発光材料などを新たに開発して組み合わせることにより、発光効率を高める工夫が種々なされてきている。その中には、複素芳香環を含む化合物を利用した有機エレクトロルミネッセンス素子に関する研究も見受けられ、これまでにも幾つかの提案がなされてきている。
【0003】
例えば特許文献1には、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する一対の電極間に存在する有機層の中に、下記の一般式[I]や一般式[II]で表される化合物を用いることが記載されている。下記の一般式において、X1 およびX2 はNまたはCHを表し、Y1 およびY2 はS、O、N−Z(Zは、水素原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環基)を表し、R1 〜R4 は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を表すものと規定されている。
【化1】
【0004】
特許文献1において、上記一般式[I]や一般式[II]で表される化合物は、発光層内において蛍光発光材料として用いたり、正孔注入層や電子注入層においてキャリア輸送材料として用いたりすることができることが記載されている。また、特許文献1には、上記一般式[I]や一般式[II]で表される化合物の具体例として、多種多様な構造を有する化合物が例示されており、その中には以下の構造を有する化合物Aも例示されている。
【化2】
【0005】
特許文献2には、リン光発光材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子において、有機層の中に上記一般式[I]や一般式[II]に包含される化合物を用いることが記載されている。特許文献2の中にも、化合物Aは例示化合物として記載されており、実施例では正孔輸送層に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−340786号公報
【特許文献2】特開2005−82703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、上記一般式[I]や一般式[II]で表される構造を有する化合物については、有機エレクトロルミネッセンス素子へ利用することが提案がなされている。しかしながら、これらの一般式は極めて広範囲の化合物を包含するものであり、また、特許文献1や特許文献2に記載されている構造例も多様である。その一方で、特許文献1や特許文献2において具体的に効果が確認されている化合物は少数であるに過ぎない。特に、上記一般式[I]や一般式[II]において、R1やR2がアリール基である場合の当該アリール基に置換する置換基の種類としては、上記化合物Aに示すようなジアリールアミノ基などが挙げられているに過ぎない。
【0008】
しかしながら、発光材料として上記化合物Aを発光層に用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光効率が高くない。このため、同系列の化合物を発光材料として用いるためには、改良の余地がある。一方、特許文献1や特許文献2には、発光材料としての発光効率と類似化合物の構造との間の関係を示唆する記載は存在しない。このため、特許文献1や特許文献2において効果が確認されている化合物に類似する構造を有する化合物がどのような性質を示すのかを正確に予測することは極めて困難である。また、特許文献1や特許文献2において具体的に構造が示されている上記化合物Aは発光効率の点で改善の余地があるが、どのような構造を採用すれば発光効率を改善しうるのかという点について、特許文献1や特許文献2には何も示唆されていない。
【0009】
本発明者らはこれらの従来技術の課題を考慮して、発光効率が高い化合物を提供することを目的として検討を進めた。また、発光材料として有用な化合物の一般式を導きだし、発光効率が高い有機発光素子の構成を一般化することも目的として鋭意検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、本発明者らは、特定の構造を有する化合物群を合成することに成功するとともに、それらの化合物群が発光材料として優れた性質を有することを見出した。また、そのような化合物群の中に、遅延蛍光材料として有用なものがあることを見出し、発光効率が高い有機発光素子を安価に提供しうることを明らかにした。本発明者らは、これらの知見に基づいて、上記の課題を解決する手段として、以下の本発明を提供するに至った。
【0011】
[1] 下記一般式(1)で表される化合物。
一般式(1)
D−A−D
[一般式(1)において、Aは下記一般式(2)〜(5):
【化3】
のいずれかで表される構造(ただし一般式(2)〜(5)の構造中の水素原子は置換基で置換されていてもよい)を有する2価の基であり、2つのDは各々独立に下記の群:
【化4】
から選択される構造(ただし構造中の水素原子は置換基で置換されていてもよい)を有する基を表す。]
【0012】
[2] 一般式(1)のAが下記一般式(6)〜(9)のいずれかで表される構造を有することを特徴とする[1]に記載の化合物。
【化5】
[一般式(6)〜(9)において、R1〜R10は各々独立に水素原子または置換基を表す。R1とR2、R3とR4、R5とR6、R7とR8は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。]
【0013】
[3] 一般式(1)の2つのDが同一の構造を有することを特徴とする[1]または[2]に記載の化合物。
[4] 一般式(1)のDが下記一般式(10)〜(12)のいずれかで表される構造を有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の化合物。
【化6】
[一般式(10)〜(12)において、R11〜R18およびR21〜R25は各々独立に水素原子または置換基を表す。R11とR12、R12とR13、R13とR14、R15とR16、R16とR17、R17とR18、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R24とR25は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。]
[5] Dが一般式(11)で表される構造を有することを特徴とする[4]に記載の化合物。
【0014】
[6] [1]〜[5]のいずれか1項に記載の化合物からなる発光材料。
[7] 上記一般式(1)で表される構造を有する遅延蛍光体。
[8] [6]に記載の発光材料を含む発光層を基板上に有することを特徴とする有機発光素子。
[9] 遅延蛍光を放射することを特徴とする[8]に記載の有機発光素子。
[10] 有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする[8]または[9]に記載の有機発光素子。
【発明の効果】
【0015】
本発明の化合物は、発光材料として有用である。また、本発明の化合物の中には遅延蛍光を放射するものが含まれている。本発明の化合物を発光材料として用いた有機発光素子は、高い発光効率を実現しうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成例を示す概略断面図である。
図2】化合物1の1H NMRスペクトルである。
図3】化合物1のマススペクトルである。
図4】化合物3の1H NMRスペクトルである。
図5】化合物3のマススペクトルである。
図6】化合物4の1H NMRスペクトルである。
図7】化合物4のマススペクトルである。
図8】化合物1を用いた有機フォトルミネッセンス素子の発光スペクトルである。
図9】化合物1を用いた有機フォトルミネッセンス素子の過渡減衰曲線である。
図10】化合物3を用いた有機フォトルミネッセンス素子の発光スペクトルである。
図11】化合物3を用いた有機フォトルミネッセンス素子の過渡減衰曲線である。
図12】化合物4を用いた有機フォトルミネッセンス素子の発光スペクトルである。
図13】化合物4を用いた有機フォトルミネッセンス素子の過渡減衰曲線である。
図14】化合物1を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルである。
図15】化合物1を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の電流密度−外部量子効率特性を示すグラフである。
図16】化合物3を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルである。
図17】化合物3を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の電流密度−外部量子効率特性を示すグラフである。
図18】化合物4を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルである。
図19】化合物4を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の電流密度−外部量子効率特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本発明に用いられる化合物の分子内に存在する水素原子の同位体種は特に限定されず、例えば分子内の水素原子がすべて1Hであってもよいし、一部または全部が2H(デューテリウムD)であってもよい。
【0018】
[一般式(1)で表される化合物]
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする。
一般式(1)
D−A−D
【0019】
一般式(1)において、Aは下記一般式(2)〜(5)のいずれかで表される構造を有する2価の基を表す。
【化7】
【0020】
上記構造中に存在する水素原子は置換基で置換されていてもよい。置換基の数は特に制限されず、置換基は存在していなくてもよい。また、2つ以上の置換基が存在するときは、それらの置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0021】
置換基としては、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルキニル基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。より好ましい置換基は、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。さらに好ましい置換基は、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜12の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。
【0022】
アルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、より好ましくは炭素数1〜6であり、具体例としてメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基を挙げることができる。アルコキシ基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、より好ましくは炭素数1〜6であり、具体例としてメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソプロピポキシ基を挙げることができる。置換基として採用しうるアリール基は、単環でも縮合環でもよく、具体例としてフェニル基、ナフチル基を挙げることができる。ヘテロアリール基も、単環でも縮合環でもよく、具体例としてピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、トリアジル基、トリアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基を挙げることができる。これらのヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して結合する基であっても、ヘテロアリール環を構成する炭素原子を介して結合する基であってもよい。
【0023】
一般式(2)〜(5)の右端のベンゼン環に結合するDの結合位置は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよい。また、一般式(2)〜(5)の左端のベンゼン環に結合するDの結合位置も、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよい。好ましいのは、メタ位またはパラ位であり、最も好ましいのはパラ位である。
【0024】
一般式(1)におけるAは、下記の一般式(6)〜(9)のいずれかで表される構造を有する基であることが好ましい。
【化8】
【0025】
一般式(6)〜(9)において、R1〜R10は各々独立に水素原子または置換基を表す。R1〜R10はすべてが水素原子であってもよい。また、2個以上が置換基である場合、それらの置換基は同じであっても異なっていてもよい。R1〜R10がとりうる置換基の説明と好ましい範囲については、上記の一般式(1)におけるAがとりうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。
【0026】
1とR2、R2とR3、R3とR4、R5とR6、R6とR7、R7とR8は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。環状構造は芳香環であっても脂肪環であってもよく、またヘテロ原子を含むものであってもよく、さらに環状構造は2環以上の縮合環であってもよい。ここでいうヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択されるものであることが好ましい。形成される環状構造の例として、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、シクロヘキサジエン環、シクロヘキセン環、シクロペンタエン環、シクロヘプタトリエン環、シクロヘプタジエン環、シクロヘプタエン環などを挙げることができる。
【0027】
一般式(6)〜(9)で表される構造の好ましい例として、R1〜R10がすべて水素原子である構造を挙げることができる。また、R1とR8、R2とR7、R3とR6、R4とR5、R9とR10がそれぞれ同一である線対称の構造も挙げることができる。
【0028】
一般式(1)における2つのDは、各々独立に下記の群から選択される構造を有する基を表す。
【化9】
【0029】
上記の群に記載される構造中に存在する水素原子は置換基で置換されていてもよい。特に、環骨格構成原子に結合している水素原子は置換基で置換されていてもよい。置換基の数は特に制限されず、置換基は存在していなくてもよい。また、2つ以上の置換基が存在するときは、それらの置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
上記の群に記載される構造中に存在する水素原子が置換されうる置換基としては、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数12〜40のアリール置換アミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換のカルバゾリル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、アミド基、炭素数2〜10のアルキルアミド基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルキニル基およびニトロ基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。より好ましい置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のジアルキルアミノ基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換のカルバゾリル基である。さらに好ましい置換基は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のジアルキルアミノ基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、炭素数6〜15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜12の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。
【0031】
上の群に記載される構造中に存在する隣会う環骨格原子に結合している水素原子同士は、互いに置換基が結合して環状構造を形成していてもよい。環状構造は芳香環であっても脂肪環であってもよく、またヘテロ原子を含むものであってもよく、さらに環状構造は2環以上の縮合環であってもよい。具体例については、上記の一般式(6)〜(9)における環状構造の具体例を参照することができる。
【0032】
一般式(1)のDは、下記一般式(10)〜(12)のいずれかで表される構造を有する基であることが好ましい。
【化10】
【0033】
一般式(10)〜(12)において、R11〜R18およびR21〜R25は各々独立に水素原子または置換基を表す。R11とR12、R12とR13、R13とR14、R15とR16、R16とR17、R17とR18、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R24とR25は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0034】
一般式(1)の2つのDは、同一であっても異なっていてもよいが、同一の構造を有することが好ましい。また、一般式(1)のAが対称構造を有していて、2つのDも同一であり、分子全体が対称構造をとる場合も好ましい。
【0035】
通常の発光材料はアクセプターとして作用するAとドナーとして作用するDが結合したA−D構造を有する。これに対して一般式(1)で表される化合物は、D−A−Dの構造を有しており、アクセプターとして作用するAに対して、ドナーとして作用するDが2つ結合している。Dが2つ以上結合しているとドナーとしての機能が打ち消しあって、分子が発光材料として有効に機能しない危険性が生じることが一般に懸念される。しかしながら、本発明にしたがってAとDをそれぞれ選りすぐって互いに組み合わせることにより、発光効率が高くて優れた効果を有する発光材料を提供できることが判明した。これは、HOMOとLUMOの広がりを分子レベルで制御して、発光材料として好ましい条件を満たすようにしたためであると考えられる。
【0036】
一般式(1)のAとDの組み合わせは任意に選択しうるが、例えばAが一般式(6)で表される構造を有する基であって、Dが一般式(11)で表される構造を有する基である化合物、Aが一般式(7)で表される構造を有する基であって、Dが一般式(11)で表される構造を有する基である化合物、Aが一般式(8)で表される構造を有する基であって、Dが一般式(11)で表される構造を有する基である化合物、Aが一般式(9)で表される構造を有する基であって、Dが一般式(11)で表される構造を有する基である化合物、Aが一般式(6)で表される構造を有する基であって、Dが一般式(10)で表される構造を有する基である化合物、Aが一般式(6)で表される構造を有する基であって、Dが一般式(12)で表される構造を有する基である化合物などを、好ましい例として挙げることができる。
【0037】
以下において、一般式(1)で表される化合物の具体例を例示する。ただし、本発明において用いることができる一般式(1)で表される化合物はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【0038】
【化11-1】
【化11-2】
【0039】
【化12-1】
【化12-2】
【0040】
一般式(1)で表される化合物の分子量は、例えば一般式(1)で表される化合物を含む有機層を蒸着法により製膜して利用することを意図する場合には、1500以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、800以下であることがさらにより好ましい。分子量の下限値は、一般式(1)で表される最小化合物の分子量である。
一般式(1)で表される化合物は、分子量にかかわらず塗布法で成膜してもよい。塗布法を用いれば、分子量が比較的大きな化合物であっても成膜することが可能である。
【0041】
本発明を応用して、分子内に一般式(1)で表される構造を複数個含む化合物を、発光材料として用いることも考えられる。
例えば、一般式(1)で表される構造中にあらかじめ重合性基を存在させておいて、その重合性基を重合させることによって得られる重合体を、発光材料として用いることが考えられる。具体的には、一般式(1)のAかDのいずれかに重合性官能基を含むモノマーを用意して、これを単独で重合させるか、他のモノマーとともに共重合させることにより、繰り返し単位を有する重合体を得て、その重合体を発光材料として用いることが考えられる。あるいは、一般式(1)で表される構造を有する化合物どうしを反応させることにより、二量体や三量体を得て、それらを発光材料として用いることも考えられる。
【0042】
一般式(1)で表される構造を含む繰り返し単位を有する重合体の例として、下記一般式(13)または(14)で表される構造を含む重合体を挙げることができる。
【化13】
【0043】
一般式(13)および(14)において、Qは一般式(1)で表される構造を含む基を表し、L1およびL2は連結基を表す。連結基の炭素数は、好ましくは0〜20であり、より好ましくは1〜15であり、さらに好ましくは2〜10である。連結基は−X11−L11−で表される構造を有するものであることが好ましい。ここで、X11は酸素原子または硫黄原子を表し、酸素原子であることが好ましい。L11は連結基を表し、置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のアリーレン基であることが好ましく、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のフェニレン基であることがより好ましい。
一般式(13)および(14)において、R101、R102、R103およびR104は、各々独立に置換基を表す。好ましくは、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは炭素数1〜3の無置換のアルキル基、炭素数1〜3の無置換のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子であり、さらに好ましくは炭素数1〜3の無置換のアルキル基、炭素数1〜3の無置換のアルコキシ基である。
1およびL2で表される連結基は、Qを構成する一般式(1)の構造のAかD、一般式(6)〜(9)の構造のR1〜R10、一般式(10)〜(12)の構造のR11〜R18、R21〜R28のいずれかに結合することができる。1つのQに対して連結基が2つ以上連結して架橋構造や網目構造を形成していてもよい。
【0044】
繰り返し単位の具体的な構造例として、下記式(15)〜(18)で表される構造を挙げることができる。
【化14】
【0045】
これらの式(15)〜(18)を含む繰り返し単位を有する重合体は、一般式(1)の構造のAかDのいずれかにヒドロキシ基を導入しておき、それをリンカーとして下記化合物を反応させて重合性基を導入し、その重合性基を重合させることにより合成することができる。
【化15】
【0046】
分子内に一般式(1)で表される構造を含む重合体は、一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、それ以外の構造を有する繰り返し単位を含む重合体であってもよい。また、重合体の中に含まれる一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位は、単一種であってもよいし、2種以上であってもよい。一般式(1)で表される構造を有さない繰り返し単位としては、通常の共重合に用いられるモノマーから誘導されるものを挙げることができる。例えば、エチレン、スチレンなどのエチレン性不飽和結合を有するモノマーから誘導される繰り返し単位を挙げることができる。
【0047】
[一般式(1)で表される化合物の合成方法]
一般式(1)で表される化合物は、既知の反応を組み合わせることによって合成することができる。例えば、以下のスキームにしたがって合成することが可能である。
【化16】
上式におけるDおよびAの説明については、一般式(1)における対応する記載を参照することができる。上式におけるXはハロゲン原子を表し、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
一般式(1)で表される化合物のうち、例えばAが一般式(6)で表される構造を有する基であって、Dが一般式(11)で表される構造を有する基である化合物は以下のスキームにより合成することが可能である。
【化17】
【0048】
上式におけるR1〜R18の説明については、一般式(6)および一般式(11)における対応する記載を参照することができる。上式におけるXはハロゲン原子を表す。
上記の2つのスキームにおける反応は、公知の反応を応用したものであり、公知の反応条件を適宜選択して用いることができる。上記の反応の詳細については、後述の合成例を参考にすることができる。また、一般式(1)で表される化合物は、その他の公知の合成反応を組み合わせることによっても合成することができる。
【0049】
[有機発光素子]
本発明の一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光材料として有用である。このため、本発明の一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光層に発光材料として効果的に用いることができる。一般式(1)で表される化合物の中には、遅延蛍光を放射する遅延蛍光材料(遅延蛍光体)が含まれている。すなわち本発明は、一般式(1)で表される構造を有する遅延蛍光体の発明と、一般式(1)で表される化合物を遅延蛍光体として使用する発明と、一般式(1)で表される化合物を用いて遅延蛍光を発光させる方法の発明も提供する。そのような化合物を発光材料として用いた有機発光素子は、遅延蛍光を放射し、発光効率が高いという特徴を有する。その原理を、有機エレクトロルミネッセンス素子を例にとって説明すると以下のようになる。
【0050】
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、正負の両電極より発光材料にキャリアを注入し、励起状態の発光材料を生成し、発光させる。通常、キャリア注入型の有機エレクトロルミネッセンス素子の場合、生成した励起子のうち、励起一重項状態に励起されるのは25%であり、残り75%は励起三重項状態に励起される。従って、励起三重項状態からの発光であるリン光を利用するほうが、エネルギーの利用効率が高い。しかしながら、励起三重項状態は寿命が長いため、励起状態の飽和や励起三重項状態の励起子との相互作用によるエネルギーの失活が起こり、一般にリン光の量子収率が高くないことが多い。一方、遅延蛍光材料は、項間交差等により励起三重項状態へとエネルギーが遷移した後、三重項−三重項消滅あるいは熱エネルギーの吸収により、励起一重項状態に逆項間交差され蛍光を放射する。有機エレクトロルミネッセンス素子においては、なかでも熱エネルギーの吸収による熱活性化型の遅延蛍光材料が特に有用であると考えられる。有機エレクトロルミネッセンス素子に遅延蛍光材料を利用した場合、励起一重項状態の励起子は通常通り蛍光を放射する。一方、励起三重項状態の励起子は、デバイスが発する熱を吸収して励起一重項へ項間交差され蛍光を放射する。このとき、励起一重項からの発光であるため蛍光と同波長での発光でありながら、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差により、生じる光の寿命(発光寿命)は通常の蛍光やりん光よりも長くなるため、これらよりも遅延した蛍光として観察される。これを遅延蛍光として定義できる。このような熱活性化型の励起子移動機構を用いれば、キャリア注入後に熱エネルギーの吸収を経ることにより、通常は25%しか生成しなかった励起一重項状態の化合物の比率を25%以上に引き上げることが可能となる。100℃未満の低い温度でも強い蛍光および遅延蛍光を発する化合物を用いれば、デバイスの熱で充分に励起三重項状態から励起一重項状態への項間交差が生じて遅延蛍光を放射するため、発光効率を飛躍的に向上させることができる。
【0051】
本発明の一般式(1)で表される化合物を発光層の発光材料として用いることにより、有機フォトルミネッセンス素子(有機PL素子)や有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの優れた有機発光素子を提供することができる。このとき、本発明の一般式(1)で表される化合物は、いわゆるアシストドーパントとして、発光層に含まれる他の発光材料の発光をアシストする機能を有するものであってもよい。すなわち、発光層に含まれる本発明の一般式(1)で表される化合物は、発光層に含まれるホスト材料の最低励起一重項エネルギー準位と発光層に含まれる他の発光材料の最低励起一重項エネルギー準位の間の最低励起一重項エネルギー準位を有するものであってもよい。
有機フォトルミネッセンス素子は、基板上に少なくとも発光層を形成した構造を有する。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および陽極と陰極の間に有機層を形成した構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を含むものであり、発光層のみからなるものであってもよいし、発光層の他に1層以上の有機層を有するものであってもよい。そのような他の有機層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層、正孔阻止層、電子注入層、電子輸送層、励起子阻止層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。具体的な有機エレクトロルミネッセンス素子の構造例を図1に示す。図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を表わす。
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および各層について説明する。なお、基板と発光層の説明は有機フォトルミネッセンス素子の基板と発光層にも該当する。
【0052】
(基板)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機エレクトロルミネッセンス素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英、シリコンなどからなるものを用いることができる。
【0053】
(陽極)
有機エレクトロルミネッセンス素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な材料を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0054】
(陰極)
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陽極の説明で挙げた導電性透明材料を陰極に用いることで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0055】
(発光層)
発光層は、陽極および陰極のそれぞれから注入された正孔および電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層であり、発光材料を単独で発光層に使用しても良いが、好ましくは発光材料とホスト材料を含む。発光材料としては、一般式(1)で表される本発明の化合物群から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子および有機フォトルミネッセンス素子が高い発光効率を発現するためには、発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、発光材料中に閉じ込めることが重要である。従って、発光層中に発光材料に加えてホスト材料を用いることが好ましい。ホスト材料としては、励起一重項エネルギー、励起三重項エネルギーの少なくとも何れか一方が本発明の発光材料よりも高い値を有する有機化合物を用いることができる。その結果、本発明の発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、本発明の発光材料の分子中に閉じ込めることが可能となり、その発光効率を十分に引き出すことが可能となる。もっとも、一重項励起子および三重項励起子を十分に閉じ込めることができなくても、高い発光効率を得ることが可能な場合もあるため、高い発光効率を実現しうるホスト材料であれば特に制約なく本発明に用いることができる。本発明の有機発光素子または有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光は発光層に含まれる本発明の発光材料から生じる。この発光は蛍光発光および遅延蛍光発光の両方を含む。但し、発光の一部或いは部分的にホスト材料からの発光があってもかまわない。
ホスト材料を用いる場合、発光材料である本発明の化合物が発光層中に含有される量は0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、また、50重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
発光層におけるホスト材料としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する有機化合物であることが好ましい。
【0056】
(注入層)
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
【0057】
(阻止層)
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子もしくは正孔)および/または励起子の発光層外への拡散を阻止することができる層である。電子阻止層は、発光層および正孔輸送層の間に配置されることができ、電子が正孔輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、正孔阻止層は発光層および電子輸送層の間に配置されることができ、正孔が電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、正孔阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいう電子阻止層または励起子阻止層は、一つの層で電子阻止層および励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。
【0058】
(正孔阻止層)
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。正孔阻止層の材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。
【0059】
(電子阻止層)
電子阻止層とは、広い意味では正孔を輸送する機能を有する。電子阻止層は正孔を輸送しつつ、電子が正孔輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
【0060】
(励起子阻止層)
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、正孔輸送層と発光層の間に、発光層に隣接して該層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接して該層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、正孔注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層などを有することができる。阻止層を配置する場合、阻止層として用いる材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーの少なくともいずれか一方は、発光材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーよりも高いことが好ましい。
【0061】
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知の正孔輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
【0062】
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。使用できる電子輸送層としては例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0063】
有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する際には、一般式(1)で表される化合物を発光層に用いるだけでなく、発光層以外の層にも用いてもよい。その際、発光層に用いる一般式(1)で表される化合物と、発光層以外の層に用いる一般式(1)で表される化合物は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、上記の注入層、阻止層、正孔阻止層、電子阻止層、励起子阻止層、正孔輸送層、電子輸送層などにも一般式(1)で表される化合物を用いてもよい。これらの層の製膜方法は特に限定されず、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで作製してもよい。
【0064】
以下に、有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることができる好ましい材料を具体的に例示する。ただし、本発明において用いることができる材料は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。なお、以下の例示化合物の構造式におけるR、R’、R1〜R10は、各々独立に水素原子または置換基を表す。なお、以下の例示化合物の構造式におけるR、R1〜R10は、各々独立に水素原子または置換基を表す。nは3〜5の整数を表す。
【0065】
まず、発光層のホスト材料としても用いることができる好ましい化合物を挙げる。
【0066】
【化18】
【0067】
【化19】
【0068】
【化20】
【0069】
【化21】
【0070】
【化22】
【0071】
次に、正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0072】
【化23】
【0073】
次に、正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0074】
【化24】
【0075】
【化25】
【0076】
【化26】
【0077】
【化27】
【0078】
【化28】
【0079】
【化29】
【0080】
次に、電子阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0081】
【化30】
【0082】
次に、正孔阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0083】
【化31】
【0084】
次に、電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0085】
【化32】
【0086】
【化33】
【0087】
【化34】
【0088】
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0089】
【化35】
【0090】
さらに添加可能な材料として好ましい化合物例を挙げる。例えば、安定化材料として添加すること等が考えられる。
【0091】
【化36】
【0092】
上述の方法により作製された有機エレクトロルミネッセンス素子は、得られた素子の陽極と陰極の間に電界を印加することにより発光する。このとき、励起一重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長の光が、蛍光発光および遅延蛍光発光として確認される。また、励起三重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長が、りん光として確認される。通常の蛍光は、遅延蛍光発光よりも蛍光寿命が短いため、発光寿命は蛍光と遅延蛍光で区別できる。
一方、りん光については、本発明の化合物のような通常の有機化合物では、励起三重項エネルギーは不安定で熱等に変換され、寿命が短く直ちに失活するため、室温では殆ど観測できない。通常の有機化合物の励起三重項エネルギーを測定するためには、極低温の条件での発光を観測することにより測定可能である。
【0093】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。本発明によれば、発光層に一般式(1)で表される化合物を含有させることにより、発光効率が大きく改善された有機発光素子が得られる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子は、さらに様々な用途へ応用することが可能である。例えば、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造することが可能であり、詳細については、時任静士、安達千波矢、村田英幸共著「有機ELディスプレイ」(オーム社)を参照することができる。また、特に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、需要が大きい有機エレクトロルミネッセンス照明やバックライトに応用することもできる。
【実施例】
【0094】
以下に合成例および実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0095】
(合成例1) 化合物1の合成
【化37】
【0096】
2,5−ジアミノベンゼンー1,4−ジチオール二塩酸塩2.0g(8.2mmol)、4−ブロモ安息香酸3.8g(18.8mmol)を100ml二口フラスコに投入した。この反応器へポリリン酸30mlを加え100℃で30時間加熱、攪拌した。反応後、加熱を止めて反応液を室温まで冷却した後、反応物を水300mlとクロロホルム300mlの混合溶液に投入した。分液ロートで有機相と水相を分離し、有機相を乾燥、濃縮した後にメタノール100mlを加え固形分を析出させた。この析出物を吸引ろ過、乾燥して、反応中間体であるジブロモ体3.8gを黄色粉末として得た(収率93%)。
得られたジブロモ体の一部0.71g(1.4mmol)とフェノキサジン0.65g(3.5mmol)、炭酸カリウム0.59g(4.3mmol)を窒素置換した50ml二口フラスコに投入した。この反応器中へ酢酸パラジウム0.032g(0.14mmol)とトリーtert―ブチルホスフィン0.029g(0.14mmol)を高純度窒素ガスで脱気処理した脱水トルエン10mlに溶解した混合液を滴下し、窒素雰囲気下80℃で24時間加熱、攪拌した。反応終了後、この反応物に水300mlとクロロホルム300mlを入れ、有機相と水相を分離した。有機相を濃縮したのち、メタノールを100ml加えて10分間超音波照射して固形分を析出させた。析出固形物を吸引濾過して乾燥させた後に、得られた粉末を370℃で昇華精製して化合物1の黄色粉末0.12gを得た(収率12%)。図21H−NMRスペクトル(CDCl3,500MHz)、図3にマススペクトルを示す。
【0097】
(合成例2) 化合物3の合成
【化38】
【0098】
100ml二口フラスコに4,6−ジアミノヒドロキノン二塩酸塩1.5g(7.0mmol)、4−ブロモ安息香酸3.3g(16.4mmol)、ポリリン酸30mlを投入し、100℃で72時間加熱、攪拌した。加熱を止め、室温まで冷却した後、この反応物を水300ml、クロロホルム300mlの混合溶液中に投入した後に分液ロートで有機相と水相を分離した。有機相を乾燥、濃縮した後にメタノール100mlを加えて固形分を析出させた。この固形分をろ過、乾燥して反応中間体であるジブロモ体の紫色粉末2.7gを得た(収率79%)。
得られたジブロモ体の一部0.70g(1.5mmol)とフェノキサジン0.60g(3.3mmol)、炭酸カリウム1.23g(9.9mmol)を窒素置換した200ml二口フラスコに入れた。この反応器へ酢酸パラジウム0.033g(0.15mmol)、トリーtert―ブチルホスフィン0.030g(0.15mmol)を高純度窒素ガスで脱気処理した脱水トルエン50mlに溶解して滴下して窒素雰囲気下80℃で48時間加熱、攪拌した。
反応終了後、この反応物を水300ml、クロロホルム300mlの混合溶液を入れて分液ロートで有機相と水相を分離した。有機相を濃縮、乾固した後にメタノールを100ml加えて10分間超音波処理して固形分を析出させた。析出した固形分を濾過、乾燥させ、得られた粉末を350℃で昇華精製して化合物3の0.57gを黄色針状結晶として得た(収率57%)。図41H−NMRスペクトル(CDCl3,500MHz)、図5にマススペクトルを示す。
【0099】
(合成例3) 化合物4の合成
【化39】
【0100】
100ml二口フラスコに44,6−ジアミノレソルシノール二塩酸塩1.5g(7.0mmol)、4−ブロモ安息香酸3.3g(16.4mmol)、ポリリン酸20mlを投入し、100℃で24時間加熱、攪拌した。加熱を止め、室温まで冷却した後、この反応物を水300ml、クロロホルム300mlの混合溶液中に投入した後に分液ロートで有機相と水相を分離した。有機相を乾燥、濃縮した後にメタノール100mlを加えて固形分を析出させた。この固形分をろ過、乾燥して反応中間体であるジブロモ体の白色粉末3.0gを得た(収率88%)。
得られたジブロモ体の一部0.70g(1.5mmol)とフェノキサジン0.60g(3.3mmol)、炭酸カリウム1.23g(9.9mmol)を窒素置換した200ml二口フラスコに入れた。この反応器へ酢酸パラジウム0.033g(0.15mmol)、トリーtert―ブチルホスフィン0.030g(0.15mmol)を高純度窒素ガスで脱気処理した脱水トルエン50mlに溶解して滴下して窒素雰囲気下80℃で48時間加熱、攪拌した。
反応終了後、この反応物を水300ml、クロロホルム300mlの混合溶液を入れて分液ロートで有機相と水相を分離した。有機相を濃縮、乾固した後にメタノールを100ml加えて10分間超音波処理して固形分を析出させた。析出した固形分を濾過、乾燥させ、得られた粉末を350℃で昇華精製して化合物4の0.28gを黄色針状結晶として得た(収率28%)。図61H−NMRスペクトル(CDCl3,500MHz)、図7にマススペクトルを示す。
【0101】
(実施例1) 有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価(薄膜)
シリコン基板上に真空蒸着法にて、真空度5.0×10-4Paの条件にて化合物1とCBPとを異なる蒸着源から蒸着し、化合物1の濃度が6.0重量%である薄膜を0.3nm/秒にて100nmの厚さで形成して有機フォトルミネッセンス素子とした。
作製した有機フォトルミネッセンス素子について、半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A)、光パワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、光学分光器(オーシャンオプティクス社製:USB2000)およびストリークカメラ(浜松ホトニクス(株)製C4334型)を用いて測定を行った。330nm励起光による発光スペクトルを図8に示し、過渡減衰曲線を図9に示す。この過渡減衰曲線は、化合物に励起光を当てて発光強度が失活してゆく過程を測定した発光寿命測定結果を示すものである。通常の一成分の発光(蛍光もしくはリン光)では発光強度は単一指数関数的に減衰する。これは、グラフの縦軸がセミlog である場合には、直線的に減衰することを意味している。化合物1の過渡減衰曲線では、観測初期にこのような直線的成分(蛍光)が観測されているが、数μ秒以降には直線性から外れる成分が現れている。これは遅延成分の発光であり、初期の成分と加算される信号は、長時間側に裾をひくゆるい曲線になる。このように発光寿命を測定することによって、化合物1は蛍光成分のほかに遅延成分を含む発光体であることが確認された。
フォトルミネッセンス量子効率を300Kで測定したところ、大気中で60%、窒素雰囲気下で78%であった。
【0102】
化合物1のかわりに化合物3を用いて、同様の方法により有機フォトルミネッセンス素子を作製した。330nm励起光による発光スペクトルを図10に示し、過渡減衰曲線を図11に示す。フォトルミネッセンス量子効率を300Kで測定したところ、大気中で21%、窒素雰囲気下で60%であった。
【0103】
化合物1のかわりに化合物4を用いて、同様の方法により有機フォトルミネッセンス素子を作製した。330nm励起光による発光スペクトルを図12に示し、過渡減衰曲線を図13に示す。フォトルミネッセンス量子効率を300Kで測定したところ、大気中で84%、窒素雰囲気下で98%であった。
【0104】
(実施例2) 有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0×10-4Paで積層した。まず、ITO上にα−NPDを35nmの厚さに形成した。次に、化合物1とCBPを異なる蒸着源から共蒸着し、15nmの厚さの層を形成して発光層とした。この時、化合物1の濃度は6.0重量%とした。次に、TPBiを65nmの厚さに形成し、さらにフッ化リチウム(LiF)を0.8nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を80nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子とした。
製造した有機エレクトロルミネッセンス素子を、半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A)、光パワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、および光学分光器(オーシャンオプティクス社製:USB2000)を用いて測定した。発光スペクトルを図14に示し、電流密度−外部量子効率特性を図15に示す。化合物1を発光材料として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は13.5%の高い外部量子効率を達成した。化合物1を発光材料として用いたフォトルミネッセンス量子効率が78%であったことから、1重項励起子生成確率は87%と計算される(光取り出し効率20%、再結合確率100%として計算)。
仮に発光量子効率が100%の蛍光材料を用いてバランスの取れた理想的な有機エレクトロルミネッセンス素子を試作したとすると、光取り出し効率が20〜30%であれば、蛍光発光の外部量子効率は5〜7.5%となる。この値が一般に、蛍光材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の外部量子効率の理論限界値とされている。化合物1を用いた本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、理論限界値を超える高い外部量子効率(13.5%)を実現している点で極めて優れている。
【0105】
化合物1のかわりに化合物3を用い、CBPのかわりにmCBPを用いて、同様の方法により有機エレクトロミネッセンス素子を作製した。発光スペクトルを図16に示し、電流密度−外部量子効率特性を図17に示す。化合物3を発光材料として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は13.3%の高い外部量子効率を達成した。化合物3を発光材料として用いたフォトルミネッセンス量子効率が81%であったことから、1重項励起子生成確率は82%と計算される(光取り出し効率20%、再結合確率100%として計算)。
【0106】
化合物1のかわりに化合物4を用い、CBPのかわりにmCBPを用いて、同様の方法により有機エレクトロミネッセンス素子を作製した。発光スペクトルを図18に示し、電流密度−外部量子効率特性を図19に示す。化合物4を発光材料として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は16.4%の高い外部量子効率を達成した。化合物4を発光材料として用いたフォトルミネッセンス量子効率が98%であったことから、1重項励起子生成確率は84%と計算される(光取り出し効率20%、再結合確率100%として計算)。
【0107】
上記の構造を有する化合物Aと実施例における化合物1、化合物3、化合物4について分子の一重項エネルギーと三重項エネルギーの差(■EST)を密度汎関数法(TD−DFT(PBE1PBE/
6−31G))を用いて計算した結果を表1に示す。この結果、化合物Aは、実施例の化合物に比べて大きな■EST値を持つことから、発光能力が低いことは明らかである。
【0108】
【表1】
【0109】
【化40】
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の化合物は発光材料として有用である。このため本発明の化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子用の発光材料として効果的に用いられる。本発明の化合物の中には、遅延蛍光が放射するものも含まれているため、発光効率が高い有機発光素子を提供することも可能である。このため、本発明は産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0111】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 陰極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19