(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262811
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】真空成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20180104BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20180104BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
C23C14/04 A
C23C14/50 F
H01L21/68 N
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-136249(P2016-136249)
(22)【出願日】2016年7月8日
(65)【公開番号】特開2018-3141(P2018-3141A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2017年9月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】河野 貴志
(72)【発明者】
【氏名】石井 博
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智之
【審査官】
村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−136249(JP,A)
【文献】
特開2006−233256(JP,A)
【文献】
特開2007−119794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空槽と、この真空槽内に設けられる基板を支持する基板支持体及びマスクを支持するマスク支持体と、前記真空槽外に設けられ前記基板支持体に支持された基板と前記マスク支持体に支持されたマスクとの相対位置を調整するためのアライメント機構とを備えた真空成膜装置であって、前記基板支持体が接続された前記アライメント機構が設けられ前記真空槽の槽壁外面に当接固定される第1の固定部材と、前記マスク支持体が設けられ前記真空槽の槽壁内面に当接固定される第2の固定部材とを有し、前記第1の固定部材の前記槽壁外面との当接端部と、前記第2の固定部材の前記槽壁内面との当接端部とが、前記槽壁を挟んで対向位置に設けられていることを特徴とする真空成膜装置。
【請求項2】
前記第1の固定部材及び前記第2の固定部材の前記槽壁を挟んで対向位置に設けられる当接端部は複数組設けられていることを特徴とする請求項1に記載の真空成膜装置。
【請求項3】
前記第1の固定部材及び前記第2の固定部材の前記槽壁を挟んで対向位置に設けられる当接端部は、一方の前記当接端部の当接端面を他方の前記当接端部が当接する槽壁面に投影した投影面内に、前記他方の当接端部の当接端面が収まる形状に夫々設定されていることを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の真空成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空成膜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空成膜装置においては、近年、基板の大型化に伴う真空槽の大型化により、真空時の真空槽の槽壁の歪みが大きくなっている。
【0003】
そのため、真空槽内が大気圧の状態で基板とマスクとの位置関係を調整(アライメント)しても、真空槽内を真空にした際に槽壁の歪みにより、基板とマスクとの位置関係にずれが生じ、基板とマスクとのアライメント精度に影響を与える場合がある。
【0004】
図1に大気時の真空成膜装置を、
図2に真空時の真空成膜装置を示す。Aは基板を支持する基板支持体、BはマスクCを支持するマスク支持体、Dは真空槽、Eは蒸発源、Fは基板支持体Aを真空槽Dに固定する固定部材、Gはマスク支持体Bを真空槽Dに固定する固定部材、Hは基板とマスクとの位置調整を行うアライメント機構である。
【0005】
図1及び
図2に図示したように、基板支持体A及びマスク支持体Bは、いずれも固定部材F,Gを介して真空槽Dの槽壁の夫々異なる位置に固定されている。しかし、槽壁の歪みの度合いは位置により異なることから、基板支持体Aの点aにおける変位量とマスク支持体Bの点bにおける変位量とは夫々異なり、この変位量の差分δだけ、マスクと基板支持面との間隔IとI’とに差が生じる。
【0006】
即ち、前記変位量の差分δに起因して基板支持体A及びマスク支持体Bの位置関係がずれ、これらに支持される基板及びマスクに位置ずれが生じる場合がある。
【0007】
そこで、例えば特許文献1では、基板支持体及びマスク支持体が設けられるアライメント機構を、真空槽の上方に設けられる支持板に載置し、この支持板と真空槽の天板とを離間させる脚部を支持板と真空槽との天板との間に設けることで、基板とマスクとの位置ずれを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−33468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示される構成は、アライメント機構に基板支持体及びマスク支持体の双方を設ける構成であり、これらを真空槽の上方にまとめて設ける必要があることから、アライメント機構が大型化・複雑化し、コスト高となることは避けられず、現実的でない。
【0010】
本発明は、上述のような現状に鑑みなされたもので、簡易な構成で真空槽の槽壁の歪みに起因する基板とマスクとの位置ずれを抑制できる真空成膜装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
真空槽と、この真空槽内に設けられる基板を支持する基板支持体及びマスクを支持するマスク支持体と、前記真空槽外に設けられ前記基板支持体に支持された基板と前記マスク支持体に支持されたマスクとの相対位置を調整するためのアライメント機構とを備えた真空成膜装置であって、前記基板支持体が接続された前記アライメント機構が設けられ前記真空槽の槽壁外面に当接固定される第1の固定部材と、前記マスク支持体が設けられ前記真空槽の槽壁内面に当接固定される第2の固定部材とを有し、前記第1の固定部材の前記槽壁外面との当接端部と、前記第2の固定部材の前記槽壁内面との当接端部とが、前記槽壁を挟んで対向位置に設けられていることを特徴とする真空成膜装置に係るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述のように構成したから、簡易な構成で真空槽の槽壁の歪みに起因する基板とマスクとの位置ずれを抑制できる真空成膜装置となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0015】
図3に図示したように、大気圧状態でアライメント機構6により基板2とマスク4との相対位置を調整した後、真空槽1内を真空状態とした際に槽壁が歪んでも、
図4に図示したように、第1の固定部材7及び第2の固定部材8の当接端部9,10が槽壁を挟んで対向位置に夫々設けられているため、第1の固定部材7及び第2の固定部材8は、槽壁の歪みの影響を略同じ量だけ受けることになる。
【0016】
即ち、第1の固定部材7及び第2の固定部材8の当接端部9,10が、槽壁の平面視における同一部位の内外に夫々設けられているため(同軸上に設けられているため)、第1の固定部材7及び第2の固定部材8の槽壁の歪みに起因する変位量は略等しくなる。
【0017】
従って、第1の固定部材7と第2の固定部材8との前記変位量の差は最小限となり、マスクと基板支持面との間隔XとX’との差が少ないから、第1の固定部材7に設けられるアライメント機構6(の基板支持体3)に支持される基板2と第2の固定部材8に設けられるマスク支持体5に支持されるマスク4との位置ずれを抑制することができ、アライメント精度への影響を低減できることになる。
【0018】
また、マスク支持体5が設けられる第2の固定部材8をアライメント機構6に接続せず、真空槽1の槽壁内面に当接固定する構成であるから、特許文献1に開示される構成に比べ、アライメント機構6が大型化・複雑化せず、それだけコストを抑制でき、より実現性の高い構成となる。
【実施例】
【0019】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0020】
本実施例は、
図3,4に図示したように、真空槽1と、この真空槽1内に設けられる基板2を支持する基板支持体3及びマスク4を支持するマスク支持体5と、蒸発源11とを備えた真空成膜装置に本発明を適用した例である。この真空成膜装置には、蒸発源11から放出された蒸発粒子の蒸発レートをモニタする膜厚モニタ、真空槽1外に設けたモニタした蒸発粒子の量を膜厚に換算する膜厚計、換算された膜厚が所望の膜厚になるように成膜材料の蒸発レートを制御するために蒸発源11を加熱するヒータ用電源等が設けられる。
【0021】
真空槽1の外部上方位置には、基板支持体3に支持された基板2とマスク支持体5に支持されたマスク4との相対位置を調整するためのアライメント機構6が設けられている。
【0022】
基板支持体3は、基板2の下面を支持する支持具12とアライメント機構6の固定板14とを連結する連結部材13とで構成されている。
【0023】
アライメント機構6の固定板14は、ガイド部材15を介して真空槽1の槽壁天面部1aの外面に固定される第1の固定部材7により、真空槽1に固定されている。従って、基板支持体3も第1の固定部材7により真空槽1に固定される。
図3,4中、符号19はベローズである。
【0024】
第1の固定部材7は、真空槽1の槽壁天面部1aの外面に当接固定される複数の角柱状の脚部16を有する構成である。脚部16は天面部1aの外面に垂直状態に立設されている。本実施例においては、
図5に図示したように平面視矩形状で各角部に夫々脚部16を有するテーブル状体としている。
【0025】
この脚部16の槽壁天面部1aの外面との当接部が第1の固定部材7の当接端部9である。
【0026】
マスク支持体5は、マスク4を支持する支持具17と、この支持具17と真空槽1の槽壁天面部1aの内面とを連結する第2の固定部材8とで構成されている。
図5中、符号18は支持具17と第2の固定部材8とを繋ぐ斜材である。第2の固定部材8は角柱状であり、その上端部が真空槽1の槽壁天面部1aの内面に当接固定された当接端部10である。第2の固定部材8は、天面部1aの内面に垂直状態に垂設されている。
【0027】
本実施例においては、第1の固定部材7の脚部16と同数の第2の固定部材8を設ける構成としており、当接端部9,10を4組有する構成としている。
【0028】
第1の固定部材7と第2の固定部材8の当接端部9,10は、槽壁を挟んで夫々対向位置に設けられている。
【0029】
具体的には、第1の固定部材7の当接端部9及び第2の固定部材8の当接端部10は、真空槽1の槽壁天面部1aの面方向と直交する垂直方向で重なるように夫々配設される。
【0030】
更に具体的には、第1の固定部材7及び前記第2の固定部材8の前記槽壁を挟んで対向位置に設けられる当接端部9,10は、一方の当接端部の当接端面を他方の当接端部が当接する槽壁面に投影した投影面内に、他方の当接端部の当接端面が収まる形状に夫々設定されている。
【0031】
本実施例においては、第1の固定部材7の当接端部9の当接端面の投影面内に第2の固定部材8の当接端部10の当接端面が収まる形状に夫々設定されている。
【0032】
更に、本実施例においては、第1の固定部材7の当接端部9の中心軸と第2の固定部材8の当接端部10の中心軸とが同軸上となるように設定している。
【0033】
従って、本実施例は、真空槽1が内部を真空状態とした際に槽壁が変形しても、槽壁の歪み量が同一となる部位に第1の固定部材及び第2の固定部材の当接端部が固定されることで、第1の固定部材7及び第2の固定部材8の変位量の差は最小限となり、マスク4と基板支持体3の基板支持面との間隔XとX’との差が少なく、基板3とマスク4との位置ずれを抑制することができ、アライメント精度への影響を低減できることになる。
【0034】
本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0035】
1 真空槽
2 基板
3 基板支持体
4 マスク
5 マスク支持体
6 アライメント機構
7 第1の固定部材
8 第2の固定部材
9 当接端部
10 当接端部