(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加湿液取得工程では、加湿液に酸素を添加することにより、該酸素と、前記加湿液が含有する前記硫黄酸化物と、前記アルカリ剤含有液とを反応させて副生成物を生じさせると共に前記加湿液が含有する前記硫黄酸化物を低減することを特徴とする請求項1に記載する硫黄酸化物を含むガスの脱硫方法。
前記ポットは、内部に加湿液を鉛直方向斜めに下降させる斜板を有し、前記加湿液取得手段が前記斜板の鉛直方向中央部から加湿液を取得する配管を有することを特徴とする請求項4又は5に記載する脱硫装置。
被処理ガスが導入される被処理ガス導入口に連通する加湿液接触室と、被処理ガスが排出される被処理ガス排出口及び前記加湿液接触室に連通すると共に前記加湿液接触室の下側に設けられアルカリ剤含有液が下部に収容されるアルカリ剤含有液室とを有する反応槽と、
被処理ガスに加湿液を噴霧する加湿液供給管と、
前記アルカリ剤含有液室に収容されたアルカリ剤含有液中に酸素を供給する第1酸素供給管と、
前記アルカリ剤含有液室に収容されたアルカリ剤含有液を抜き出して前記加湿液供給管に供給する循環手段と、
前記加湿液接触室の底面から下方に延び前記アルカリ剤含有液室に収容されたアルカリ剤含有液の液面よりも下方まで達するように設けられ、加湿液が噴霧された被処理ガスから自然に分離した加湿液が下降するための液体下降管と、
前記加湿液接触室の底面から下方に延び前記アルカリ剤含有液室に収容されたアルカリ剤含有液の液面よりも下方まで達するように設けられ、加湿液が噴霧された被処理ガスから加湿液が自然に分離された被処理ガスが下降して前記アルカリ剤含有液室に収容されたアルカリ剤含有液中に分散するための気体下降管と、
前記液体下降管の下端部を側方から囲う側壁を有するポットと、
前記ポット内に酸素を供給する第2酸素供給管と、
前記ポット内から加湿液を引き抜く配管と、
前記ポット内から加湿液を引き抜く配管に設けられたエアセパレータと、
前記エアセパレータの下流側に設けられた固液分離処理手段とを有することを特徴とする脱硫装置。
上面に設けられた被処理ガス導入口から被処理ガスが導入され側壁に設けられた被処理ガス排出口から被処理ガスが排出されると共にアルカリ剤含有液が下部に収容される反応槽と、
前記反応槽の上部に設けられ被処理ガスに加湿液を噴霧する加湿液供給管と、
前記反応槽に収容されたアルカリ剤含有液中に酸素を供給する第1酸素供給管と、
前記反応槽に収容されたアルカリ剤含有液を抜き出して前記加湿液供給管に供給する循環手段と、
前記反応槽内の前記加湿液供給管の下側に設けられ、ドーナツ型で中央部に向かって下に傾斜した傾斜板、該傾斜板の内径よりも大きい外径を有しドーナツ型で中央部に向かって下に傾斜したロート型集液器、及び、前記ロート型集液器の中央部の穴に接続されると共に前記反応槽に収容されたアルカリ剤含有液の液面よりも下方まで達するように設けられ、加湿液が噴霧された被処理ガスから自然に分離した加湿液が下降するための液体下降管を有する分離板と、
前記液体下降管の下端部を側方から囲う側壁を有するポットと、
前記ポット内に酸素を供給する第2酸素供給管と、
前記ポット内から加湿液を引き抜く配管と、
前記ポット内から加湿液を引き抜く配管に設けられたエアセパレータと、
前記エアセパレータの下流側に設けられた固液分離処理手段とを有することを特徴とする脱硫装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態1)
本発明の硫黄酸化物を含むガスの脱硫方法を適用できる脱硫装置を、
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態1にかかる硫黄酸化物を含むガスの脱硫方法を適用することができるジェットバブリング式の脱硫装置の一例を示す模式図である。ジェットバブリング式とは、反応槽の下部に硫黄酸化物を除去するためのアルカリ剤含有液を収容し、このアルカリ剤含有液中に被処理ガス及び酸素を導入して被処理ガスとアルカリ剤含有液を気液接触させてジェットバブリング層を形成しつつ反応させる方式である。
【0021】
また、本発明において、硫黄酸化物(SOx)としては、例えば亜硫酸ガス、あるいは、亜硫酸ガスが水に溶解したもの等の各種形態の二酸化硫黄等が挙げられる。そして、硫黄酸化物を含むガスとしては、石炭焚き炉や石炭焚火力発電所から排出される燃焼排ガス等が挙げられる。
【0022】
図1に示すように、ジェットバブリング式の脱硫装置10は、円筒状のジェットバブリング式の反応槽11と、反応槽11の側壁中央部付近に設けられ反応槽11に被処理ガス(第1ガス)を導入する被処理ガス導入口12と、反応槽11の側壁上部に設けられ反応槽11で脱硫処理された被処理ガスを反応槽11から排出する被処理ガス排出口13とを有する。被処理ガス導入口12が請求項の「ガス導入手段」に相当し、被処理ガス排出口13が「ガス排出手段」に相当する。
【0023】
反応槽11は、内部に、鉛直方向中央部に被処理ガス導入口12と連通する加湿液接触室14を有し、加湿液接触室14の下側に加湿液接触室14と連通し下部にアルカリ剤含有液15が収容されるアルカリ剤含有液室16を有し、加湿液接触室14の上側にアルカリ剤含有液室16及び被処理ガス排出口13と連通する被処理ガス排出室17を有する。この加湿液接触室14とアルカリ剤含有液室16は反応槽11を横断する第1隔壁18で仕切られ、加湿液接触室14と被処理ガス排出室17は反応槽11を横断する第2隔壁19で仕切られている。
【0024】
そして、加湿液接触室14とアルカリ剤含有液室16とは、第1隔壁18から下方に延びアルカリ剤含有液15の液面21よりも下方まで達するように設けられた複数の気体下降管22、第1隔壁18からアルカリ剤含有液15の液面21よりも下方であって気体下降管22の下端よりも下方に達するように設けられた複数の第1液体下降管23及び第2液体下降管24により連通されている。気体下降管22、第1液体下降管23及び第2液体下降管24のそれぞれの下端の液面21からの距離は特に限定されないが、例えば、気体下降管22の下端の液面21からの距離は0.1〜0.7m、第1液体下降管23や第2液体下降管24の下端の液面21からの距離は0.4〜1.0mである。また、各下降管の長さも特に限定されないが、例えば、気体下降管22の長さは2.5〜3.5m、第1液体下降管23や第2液体下降管24の長さは2.8〜3.8mである。
【0025】
複数の気体下降管22、第1液体下降管23、第2液体下降管24は、第1隔壁18において上端がほぼ均一なるように配置されている。気体下降管22の下側には、気体下降管22から噴出される被処理ガス(第3ガス)がアルカリ剤含有液15中に分散するように、複数の小さな開口が設けられている。また、複数の第1液体下降管23は、
図2に示すように、被処理ガス導入口12と加湿液接触室14との接合部近傍の第1隔壁18に、第1隔壁18の縁に沿って等間隔に複数設けられている。
図2は
図1の要部拡大図であり、
図2(a)は第1隔壁18の上面図、
図2(b)は側面図である。なお、第2液体下降管24については記載を省略する。気体下降管22、第1液体下降管23、第2液体下降管24の形状や大きさに特に限定はないが、気体下降管22、第1液体下降管23、第2液体下降管24がそれぞれ円筒状の場合、例えば、気体下降管22の直径は0.1〜0.2m、第1液体下降管23の直径は0.5〜0.7m、第2液体下降管24の直径は0.5〜0.7mである。
【0026】
加湿液の第1液体下降管23への流れ込みを促進し気体下降管22への流れ込みを抑制するために、第1隔壁18の第1液体下降管23の背面に、液体の流れをせき止める堰き止め板を設けてもよい。堰き止め板について、
図2を用いてさらに説明する。
図2(a)及び
図2(b)に示すように、第1隔壁18に開口を有する複数の第1液体下降管23の被処理ガスの流れから見て背面側には、液体の流れをせき止める堰き止め板51が設けられている。そして、堰き止め板51は、加湿液が第1液体下降管23に流れ込みやすくするために、平面視の両端に被処理ガス導入口12側に曲がった曲がり部51aを有し、また、上部が被処理ガス導入口12側に約45度に傾いている傾斜部51bを有する。
【0027】
第1ガスが加湿液に接触して第2ガスが生じるが、この第2ガスから分離された加湿液が第1液体下降管23に流入し、第2ガスから加湿液が分離された第3ガスが気体下降管22に流入する。加湿液とは、硫黄酸化物を含むガスである被処理ガス(第1ガス)を加湿して、乾燥によるスケール(被処理ガスの含有成分の濃縮等により装置内や配管内に生じる析出物)の発生を抑制することができる液体である。
【0028】
加湿液接触室14、第1隔壁18、気体下降管22、並びに、第1液体下降管23で、自然沈降分離によって被処理ガス(第2ガス)から加湿液を分離する加湿液分離手段を構成する。
【0029】
アルカリ剤含有液室16内の液面上の空間である空間部26は、加湿液接触室14の水平方向中央部を貫通する連通管25により被処理ガス排出室17と連通されている。
【0030】
図1においては、気体下降管22、第1液体下降管23、第2液体下降管24や、連通管25をそれぞれ複数設けたものを示したが、一つのみでもよい。第2液体下降管24はなくてもよい。空間部26に連通するように被処理ガス排出口13を設け、空間部26が被処理ガス排出室17を兼ねるようにし被処理ガス排出室17や連通管25を省略してもよい。
【0031】
アルカリ剤含有液室16には、アルカリ剤含有液15を撹拌する撹拌機27が設けられている。
【0032】
被処理ガス導入口12には、配管31を経由して加湿液となる工業用排水を被処理ガスに噴霧する工業用水供給管32が設けられている。配管31及び工業用水供給管32は設けなくてもよい。
【0033】
また、反応槽11のアルカリ剤含有液室16の側面下部には、配管33を経由してアルカリ剤含有液15を抜き出すポンプ34が設けられている。そして、被処理ガス導入口12には、ポンプ34の出口側に接続された配管35を経由して、抜き出したアルカリ剤含有液15を被処理ガス(第1ガス)に供給する第1加湿液供給管36が設けられている。また、加湿液接触室14には、ポンプ34の出口側に接続された配管35を経由して、抜き出したアルカリ剤含有液15を加湿液として被処理ガス(第1ガス)に供給する第2加湿液供給管37が設けられている。第1加湿液供給管36及び第2加湿液供給管37は、いずれか一方のみでもよい。この第1加湿液供給管36及び第2加湿液供給管37の少なくとも一方、及び必要に応じて設ける工業用水供給管32で、加湿液接触手段を構成する。また、配管33、ポンプ34、配管35、第1加湿液供給管36、第2加湿液供給管37で、循環手段を構成する。
【0034】
また、反応槽11のアルカリ剤含有液室16の底部近傍には、気体下降管22からアルカリ剤含有液室16に供給された被処理ガス(第3ガス)に接触するように、図示しない酸素供給源から酸素を供給する酸素供給管38が設けられている。酸素供給管38は酸素を含む気体を供給できればよく、例えば、空気を供給してもよい。アルカリ剤含有液15が収容されたアルカリ剤含有液室16、気体下降管22及び酸素供給管38で、硫黄酸化物除去手段を構成する。
【0035】
第1液体下降管23内の下端近傍であってアルカリ剤含有液15の液面21よりも下側には、第1液体下降管23を下降した加湿液を抜き出すために、ポンプ41に接続された配管42が配置されている。複数の第1液体下降管23は、下端近傍で図示しない水平方向の連結管で連結され、この連結管に配管42の一端が挿入され、ポンプ41を動作することにより、第1液体下降管23を下降した加湿液を抜き出すことができる構造となっている。この第1液体下降管23、ポンプ41及び配管42で、加湿液取得手段を構成する。
【0036】
そして、第1液体下降管23を下降した加湿液を抜き出す配管42の途中には、抜き出された加湿液中の空気等のガスを除去するエアセパレータ61が、反応槽11外に設けられている。このエアセパレータ61がガス除去手段である。ガス除去手段は、エアセパレータ61に限定されず、抜き出された加湿液中の空気等のガスを除去することができる手段であればよい。
【0037】
ポンプ41の後段には、ポンプ41の出口側に接続された配管43を経由した加湿液を固液分離して、硫黄酸化物と酸素とアルカリ剤含有液との反応の副生成物を回収する固液分離手段44が設けられている。固液分離手段44が副生成物回収手段である。
【0038】
固液分離手段44の後段には、固液分離手段44に接続された配管45を経由して、固液分離手段44で分離された液体から窒素化合物やCOD等を除去する排水処理装置が接続されている。また、配管45から分岐された配管47は、反応槽11のアルカリ剤含有液室16に接続されている。配管47には、固液分離された液体を再びアルカリ剤含有液として利用可能にするために石灰石等のアルカリ剤を導入するアルカリ剤導入手段48が途中に設けられている。
【0039】
このように、本発明においては、詳しくは後述するが、石膏等の硫黄酸化物と酸素とアルカリ剤含有液との反応の副生成物を回収する工程を第1液体下降管23から取り出した加湿液に対してのみ行う、すなわち副生成物の回収を行う経路が1つのみであるため、簡素な構成の装置となる。そして、エアセパレータ61を設けているため、副生成物の回収を行う経路が1つのみであるにも関わらす、副生成物を高回収率で回収することができる。また、この簡素な構成の装置は、アルカリ剤含有液を循環させてアルカリ剤含有液を硫黄酸化物を含む第1ガスに接触させる構成であるため、排水中に含まれる酸化性物質(過酸化物)量を低減し、排水処理装置への負荷を抑制できる。また、第1液体下降管23内の加湿液は硫黄酸化物を含むガスに接触した後であるためpHが低くアルカリ剤が溶解しやすいので、アルカリ剤の混入が抑制された純度の高い副生成物を得ることができる。
【0040】
このような脱硫装置10を用いた本発明の硫黄酸化物を含むガスの脱硫方法について、説明する。まず、被処理ガスである硫黄化合物を含む第1ガスを被処理ガス導入口12から反応槽11へ導入する。被処理ガス導入口12から導入された第1ガスは、工業用水供給管32によって噴霧された工業用水、及び、第1加湿液供給管36によって噴霧されたアルカリ剤含有液に順に接触し、その後、第2加湿液供給管37から噴霧されたアルカリ剤含有液に接触する(加湿液接触工程)。実施形態1においては、工業用水及びアルカリ剤含有液が加湿液である。工業用水及びアルカリ剤含有液に第1ガスが接触すると、第1ガスが加湿されて装置内の乾燥によるスケールの発生が防止できる。また、第1加湿液供給管36、第2加湿液供給管37や工業用水供給管32によるアルカリ剤含有液や工業用水の噴霧によって、第1ガスの冷却や除塵も行うことができる。第1ガスの除塵を行うと、後段の加湿液分離工程で加湿液を分離する際に第2ガスから塵等の微粉末も除去される。したがって、塵等の微粉末による第3ガスと酸素とアルカリ剤との反応の阻害を防ぐことができ、効率よく反応させることができる。そして、第1ガス中に含まれるSO
2等の硫黄酸化物の一部も加湿液に吸収される。このように加湿液に気液接触した第1ガス、すなわち、第1ガスと加湿液との混合物が第2ガスである。
【0041】
そして、この第2ガスに含まれるSO
2等の硫黄酸化物を吸収した加湿液は、自然に加湿液接触室14の底面、すなわち第1隔壁18へと落下して、SO
2等の硫黄酸化物を吸収した加湿液である液体と、第3ガスに分離する(加湿液分離工程)。落下した加湿液の多くは、上流側である被処理ガス導入口12近傍に設けられた第1液体下降管23に流れ込む。また、第3ガスは、被処理ガス導入口12から第1液体下降管23よりも遠い位置(下流側)に設けられた気体下降管22に流れ込む。なお、第2加湿液供給管37の被処理ガス導入口12側から遠い領域に設けられた部分から噴霧された加湿液は、第2液体下降管24を下降して、アルカリ剤含有液室16へと収容される。
【0042】
気体下降管22に流れ込んだ第3ガスは、アルカリ剤含有液室16に達してアルカリ剤含有液室16に収容されたアルカリ剤含有液15の液面21下の気体下降管22の下端から噴出して分散し、アルカリ剤含有液と気液接触しながらバブリングしつつ上昇する。そして、第3ガスとアルカリ剤含有液を含む液連続相の気液接触層であるジェットバブリング層(フロス層)28が、アルカリ剤含有液の液面21上に形成される。アルカリ剤含有液15には、酸素供給管38から供給された酸素が混合されているため、このジェットバブリング層28では、第3ガスが含有する硫黄酸化物と酸素及びアルカリ剤が反応する(硫黄酸化物除去工程)。これにより、第3ガスからSO
2等の硫黄酸化物が除去される。
【0043】
アルカリ剤含有液が含有するアルカリ剤とは、酸を中和する中和剤であり、例えば炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。また、アルカリ剤含有液の溶媒としては、水が挙げられる。
【0044】
ここで、硫黄酸化物と酸素とアルカリ剤との反応においては、乾燥することによりスケールが発生する場合があるが、本発明においては、この硫黄酸化物と酸素とアルカリとの反応の前段で、加湿液接触工程において被処理ガスである第1ガスを加湿液に接触させる工程を有するため、スケールの発生が抑制される。
【0045】
硫黄酸化物除去工程で生じさせる硫黄酸化物除去反応では、第3ガスに含まれるSO
2等の硫黄酸化物がアルカリ剤及び酸素と反応して、副生成物である石膏等の固形物が生じ、第3ガスから硫黄酸化物が除去される。例えば、硫黄酸化物がSO
2を含み、アルカリ剤として石灰石(CaCO
3)を用いた場合は、下記(1)式の反応が起こり、副生成物である石膏(CaSO
4・2H
2O)が生じ、第3ガスから分離できる。
SO
2+2H
2O+1/2O
2+CaCO
3→CaSO
4・2H
2O+CO
2 (1)
【0046】
この硫黄酸化物除去反応により硫黄酸化物が除去された第3ガスは、アルカリ剤含有液室16の上部の空間部26、連通管25及び被処理ガス排出室17を経由して、被処理ガス排出口13から排出される。
【0047】
一方、生じた副生成物を高濃度で含有するアルカリ剤含有液15は、アルカリ剤含有液室16の下部から、ポンプ34によって配管33を経由して引き抜かれる。引き抜かれたアルカリ剤含有液は、配管35を経由して、第1加湿液供給管36及び第2加湿液供給管37から第1ガスに噴霧される(循環工程)。すなわち、循環工程を経たアルカリ剤含有液は第1ガスの加湿液となる。第1ガスは循環工程を経た加湿液としてのアルカリ剤含有液と接触すると、第1ガスが加湿されて第2ガスとなる(加湿液接触工程)。また、第1ガス中のSO
2等の硫黄酸化物の一部がこの循環工程を経たアルカリ剤含有液に吸収される。
【0048】
循環工程を経て、第2ガスに含まれるSO
2等の硫黄酸化物を吸収した加湿液としてのアルカリ剤含有液が、自然に加湿液接触室14の底面、すなわち第1隔壁18へと落下して、SO
2等の硫黄酸化物を吸収した加湿液としてのアルカリ剤含有液と、第3ガスに分離する(加湿液分離工程)。落下した加湿液としてのアルカリ剤含有液の多くは第1液体下降管23に流入し、第3ガスは気体下降管22に流入する。気体下降管22に流入した第3ガスは、アルカリ剤含有液15及び酸素に接触して、再び硫黄酸化物除去反応が生じる。
【0049】
一方、第1液体下降管23に流入した加湿液としてのアルカリ剤含有液は、ポンプ41に接続された配管42から少なくとも一部が抜き出される(加湿液取得工程)。
【0050】
ここで、第1液体下降管23に流入した加湿液としてのアルカリ剤含有液は、アルカリ剤含有液室16に収容されたアルカリ剤含有液に由来するため、アルカリ剤、及び、硫黄酸化物除去反応の副生成物を含む。
【0051】
また、アルカリ剤含有液室16で生じる硫黄酸化物除去反応において、酸化反応が進みすぎると酸化性物質であるS
2O
82−等の過酸化物が生じるため、循環し第1液体下降管23に流入したアルカリ剤含有液は、酸化性物質を含む。酸化性物質は後段の排水処理装置の劣化につながる。例えば、排水処理用の吸着剤やイオン交換剤として使用される樹脂の劣化や、排水処理に用いる微生物の成長の阻害等を招く。
【0052】
しかしながら、本実施形態においては、この第1液体下降管23に流入したアルカリ剤含有液は、加湿液接触工程で第1ガスに接触した後に酸素に接触しておらず、加湿液接触工程で含んだ第1ガスに含まれるSO
2等の硫黄酸化物を、反応させずにSO
2等の硫黄酸化物の状態を維持したまま含む。
【0053】
したがって、本発明においては、SO
2等の硫黄酸化物が還元剤となって酸化性物質を還元する反応、例えば下記(2)式の反応が生じるため、酸化性物質による排水処理装置の劣化を抑制することができる。
H
2S
2O
8+H
2SO
3+H
2O→3H
2SO
4 (2)
【0054】
加湿液取得工程で抜き出された加湿液としてのアルカリ剤含有液は、配管42の途中に設けられたエアセパレータ61により、空気等のガスが除去される(ガス除去工程)。勿論、加湿液中の空気等のガスの全量を完全に取り除いてしまわなくてもよく、加湿液中に含まれるガスの量を減少させればよい。エアセパレータ61によりガスが除去されポンプ41を経由した加湿液は、固液分離手段44により、硫黄酸化物と酸素とアルカリ剤含有液との反応である硫黄酸化物除去反応の副生成物が回収される(副生成物回収工程)。第1液体下降管23内の加湿液は、硫黄酸化物を含む第1ガスに接触した後であるためpHが低く炭酸カルシウム等のアルカリ剤が溶解しやすいので、硫黄酸化物除去反応で生じた副生成物への残存アルカリ剤の混入が抑制され、純度の高い副生成物を含む。このように純度の高い副生成物を含む加湿液を固液分離するため、固液分離手段44で回収される石膏等の副生成物は、純度が高いものである。
【0055】
加湿液取得手段の下流側で固液分離手段44の上流側に、SO
2等の硫黄酸化物の残存量を測定する硫黄酸化物量測定手段を設け、測定された硫黄酸化物量に応じて、反応槽11における硫黄酸化物除去反応の反応条件をフィードバック制御するようにしてもよい。フィードバック制御は、自動によるものでもよいし、手動によるものでもよい。
【0056】
固液分離手段44で分離された液体は、排水処理装置に送られ、窒素化合物やCOD等を除去する排水処理がなされる(排水処理工程)。上述したように、この排水処理される排水は、酸化性物質が除去されているため、排水処理装置の劣化が抑制される。
【0057】
また、固液分離手段44で得られた液体の一部は、配管45から分岐された配管47を経由し、配管47の途中に設けられたアルカリ剤導入手段48によって石灰石等のアルカリ剤が導入され、反応槽11のアルカリ剤含有液室16に送られて、再び硫黄酸化物除去反応のアルカリ剤含有液として利用される。
【0058】
本発明においては、石膏等の硫黄酸化物と酸素とアルカリ剤含有液との反応である硫黄酸化物除去反応の副生成物を回収する工程は、硫黄酸化物除去反応の直後のアルカリ剤含有液に対しては行わない。換言すると、本発明においては、
図7に示すように、アルカリ剤含有液室16からアルカリ剤含有液15を抜き出し、抜き出したアルカリ剤含有液15から固液分離手段144により副生成物の回収することはしない。すなわち、被処理ガスをアルカリ剤含有液室16で硫黄酸化物除去反応させた後は、循環工程、加湿液接触工程、加湿液分離工程、加湿液取得工程及びガス除去工程を経たものに対してのみ副生成物を回収する工程を行う。したがって、副生成物の回収を行う経路が、アルカリ剤含有液室16で被処理ガスを硫黄酸化物除去反応させた後に、循環工程、加湿液接触工程、加湿液分離工程、加湿液取得工程、ガス除去工程及び副生成物回収工程を順に経るという1種類のみなので、簡素な構成である。なお、副生成物の回収を行う経路は1種類であればよく、「アルカリ剤含有液室16で被処理ガスを硫黄酸化物除去反応させた後、循環工程、加湿液接触工程、加湿液分離工程及び加湿液取得工程を順に経たもの」からガスを除去した後に副生成物を回収する経路は複数あってもよい。具体的には、例えば、第1液体下降管23から抜き出される加湿液を2系列以上にし、それぞれガス除去工程及び副生成物回収工程を経るようにしてもよい。
【0059】
ここで、第1液体下降管23には加湿液とともに第2ガスが流入するため、ポンプ41により第1液体下降管23から配管42を経て抜き出された加湿液にはガスが含まれている。このため、仮にエアセパレータ61が設けられていない場合、加湿液中のガスによりポンプ41の運転が妨げられる恐れがあり、ポンプ41により加湿液を固液分離手段44に効率良く送ることができず、固液分離手段44による加湿液からの副生成物の回収率が低くなる。多くの副生成物を回収するためには、アルカリ剤含有液室16からアルカリ剤含有液15を抜き出し、抜き出されたアルカリ剤含有液15から追加の固液分離手段144(
図7)により副生成物を回収する必要がある。
【0060】
これに対して、本発明によれば、第1液体下降管23から配管42を経て抜き出された加湿液がエアセパレータ61を経てポンプ41に流れるため、加湿液がポンプ41に到達する前にエアセパレータ61により加湿液からガスを除去することができる。このため、加湿液中のガスによりポンプ41の運転が妨げられることはなく、ポンプ41により加湿液を固液分離手段44に効率良く送ることができ、固液分離手段44による加湿液からの副生成物の回収率を高めることができる。よって、本発明においては、アルカリ剤含有液室16から抜き出されたアルカリ剤含有液15から副生成物を回収する必要はなく、アルカリ剤含有液15から副生成物を回収する追加の固液分離手段144を要せず、脱硫装置を簡素化することができる。
【0061】
このように、本発明によれば、排水処理装置への負荷を抑制し且つ副生成物の純度及び回収率を高いものとすることができ、さらには、石膏等の硫黄酸化物除去反応の副生成物を回収する経路が1種類のみであり簡素な構成である。
【0062】
図1は冷却を同時に行えるいわゆるスート式の脱硫装置であるが、本発明の脱硫装置はスート式に限らず、冷却を別塔で行うものもよい。
【0063】
また、
図3に示すように、反応槽11のアルカリ剤含有液室16底部近傍から配管80を経由してポンプ81によってアルカリ剤含有液を抜き出し、ポンプ81の出口側に接続した配管82を配管47に接続するようにしてもよい。これにより、アルカリ剤含有液の性状を詳細に調整することができる。
【0064】
(実施形態2)
図4は本発明の実施形態2にかかるジェットバブリング式の脱硫装置を示す模式図である。なお、実施形態1と同じ部材には同じ符号を付し、重複する説明は省略してある。
図4に示すように、脱硫装置70は、実施形態1の脱硫装置
10において、第1液体下降管23の下端にポット71を設けた脱硫装置である。
【0065】
詳述すると、
図4に示すように、脱硫装置70は、第1液体下降管23の下端部を囲い、半密閉のポット71が設けられている。ポット71は、その上端が、アルカリ剤含有液室16の液面21よりも下側で気体下降管22のガス出口高さ近傍になり、また、その下端が、第1液体下降管23よりも下側になるように設けられている。ポット71の上端は、液面21よりも下側でも上側でもよい。ポット71の上面は例えば液面21よりも0.1〜0.7m程度下側であり、ポット71の下端は例えば液面21から2.0〜2.5m程度下側である。
【0066】
ポット71について、ポット71の概略の構成を示す断面図である
図5を参照してさらに詳細に説明する。ポット71は円筒形状であり、側壁72と、中央部に穴を有しドーナツ型で側壁72の下端から中央部に向かって下に傾斜した底板73を有し、酸素供給管38から反応槽11内に供給される酸素がポット71内に入らないように構成されている。例えばポット71から加湿液としてのアルカリ剤含有液を排出する排出口(図示なし)を側壁72の下部と後述する斜板76との接続部に設ける等して、酸素供給管38から反応槽11内に供給される酸素のポット内への流入を防止することができれば、底板73は設けなくてもよい。また、ポット71は、上部が開放されている。ポット71の大きさ及び形状は特に限定されないが、例えば、円筒形状であれば、直径1.7〜2.3m、側壁72の高さは1.7〜2.3m程度である。
【0067】
そして、ポット71は、第1液体下降管23の下端と、ポット71内に酸素を供給するための第2酸素供給管(酸素供給手段)74の下端と、第3ガス等の硫黄酸化物を含むガスを供給するスパージャパイプ75の下端との周りを囲うように設けられている。すなわち、ポット71内には、第1液体下降管23、第2酸素供給管74及びスパージャパイプ75のそれぞれの下端が挿入されている。スパージャパイプ75から供給する気体としては、例えば、第3ガスを用いることができる。スパージャパイプ75から硫黄酸化物を含むガスを供給することにより、酸化性物質を還元する還元剤としての硫黄酸化物の濃度を上昇させて(2)式の反応を調整することができると共に、ポット71内の加湿液としてのアルカリ剤含有液及び酸素を撹拌することもでき、また、ポット71内で生じる(1)式の反応を調整することもできる。なお、スパージャパイプ75は設けなくてもよい。
【0068】
また、ポット71内には、ポット71を仕切り、第1液体下降管23からポット71内に流入した加湿液の流れを規定する鉛直方向約45度に傾けられた斜板76が設けられている。斜板76の鉛直方向中央部には、斜板76を流れる加湿液を水平方向に引き抜くために、ポンプ41へと続く配管77が接続されている。
【0069】
配管77の他端は、加湿液中の空気等のガスを除去するエアセパレータ61に接続され、エアセパレータ61は配管42を経由してポンプ41に接続されている。
【0070】
実施形態2においては、第1液体下降管23、ポンプ41、配管42に加えて、ポット71、第2酸素供給管74、スパージャパイプ75、配管
77で、加湿液取得手段を構成する。
【0071】
このような脱硫装置70を用いて硫黄酸化物を含むガスの脱硫を行う方法について、説明する。実施形態2においては、加湿液取得工程以外の工程については、実施形態1と同様であるため、加湿液接触工程、加湿液分離工程、硫黄酸化物除去工程、循環工程、ガス除去工程、副生成物回収工程、排水処理工程等については、説明を省略する。
【0072】
実施形態2においては、第1液体下降管23に流入した加湿液としてのアルカリ剤含有液は、ポット71内で第2酸素供給管74から供給される酸素と接触する。
【0073】
ここで、第1液体下降管23に流入したアルカリ剤含有液は、上述したように、SO
2等の硫黄酸化物と酸化性物質とが例えば上記(2)式のように反応しているため、酸化性物質はほとんど存在せず、また、SO
2等の硫黄酸化物も多少低減されている。しかしながら、SO
2等の硫黄酸化物が相当量残存している場合もある。また、第1液体下降管23に流入したアルカリ剤含有液は、アルカリ剤含有液室16に収容されたアルカリ剤含有液に由来するため、アルカリ剤や、硫黄酸化物除去反応の副生成物を含む。
【0074】
したがって、実施形態2では、ポット71内においても、第2酸素供給管74により新たに供給された酸素と、アルカリ剤含有液に残存しているSO
2等の硫黄酸化物と、アルカリ剤含有液が含有するアルカリ剤が反応して、例えば上記(1)式の反応が起こる。したがって、ポット71から抜き出される加湿液は、SO
2等の硫黄酸化物、及び酸化性物質とも顕著に低減されたものとなる。
【0075】
さらに詳述すると、実施形態2においては、まず第1液体下降管23やポット71内で実施形態1と同様に上記(2)式等の酸化性物質と硫黄酸化物との反応が生じるためSO
2等の硫黄酸化物を低減し、酸化性物質をほぼ無くすことができる。その後、ポット71内に第2酸素供給管74により酸素が導入されることにより、上記(1)式等の硫黄酸化物とアルカリ剤及び酸素の反応が生じるため、SO
2等の硫黄酸化物をさらに低減することができると共に、石膏等の副生成物の純度を上げることができる。
【0076】
第2酸素供給管74により導入される酸素の量や、スパージャパイプ75から供給される硫黄酸化物を含むガスの量を調整することにより、ポット71内で生じる上記(1)式や(2)式の反応を調整することができる。勿論、状況に応じて、どちらかあるいは双方の量を0とすることもできる。
【0077】
第1液体下降管23やポット71内で上記(2)式等の酸化性物質と硫黄酸化物との反応及び続いて(1)式等の硫黄酸化物とアルカリ剤と酸素との反応が生じた加湿液は、斜板76を流れ、斜板76の途中に設けられた配管77からポンプ41により抜き取られる。ここで、この加湿液は、(1)式等の硫黄酸化物とアルカリ剤と酸素との反応の副生成物を回収する経路が1種類のみであり、さらにはポット71内でも(1)式等の硫黄酸化物とアルカリ剤と酸素との反応を生じさせているため、大量の副生成物を含むスラリー状であり量自体も多い。したがって、斜板76を設けることにより加湿液の分離を抑制しながら引き抜くことが好ましい。スラリー(加湿液)が斜板76の上で流れるようにすることにより、スラリー中の副生成物の沈殿を防ぎ、副生成物を分離させることなくスラリーを引き抜くことができる。
【0078】
配管77から抜き取られた加湿液は、実施形態1と同様にエアセパレータ61で加湿液中の空気等のガスが除去され、配管42を経由してポンプ41に送られる。
【0079】
図4及び
図5の脱硫装置は、ポット71、第2酸素供給管74、スパージャパイプ75の全てを実施形態1の脱硫装置に追加した構成であるが、いずれかのみを実施形態1の脱硫装置に追加した構成としてもよい。
【0080】
(実施形態3)
図6は本発明の実施形態3にかかるスプレー式の脱硫装置を示す模式図である。なお、実施形態1と重複する説明は省略してある。
【0081】
図6に示すように、スプレー式の脱硫装置100は、円筒状のスプレー式の反応槽101と、反応槽101の天井板中央部付近に設けられ反応槽101に被処理ガス(第1ガス)を導入する被処理ガス導入口102と、反応槽101の側壁下部に設けられ反応槽101で脱硫処理された被処理ガスを反応槽101から排出する被処理ガス排出口103とを有する。被処理ガス導入口102が請求項の「ガス導入手段」に相当し、被処理ガス排出口103が「ガス排出手段」に相当する。
【0082】
反応槽101内部には、カスケード型の分離板104が設けられている。分離板104は、ドーナツ型で中央部に向かって下に傾斜した傾斜板105と、傾斜板105の内径よりも大きい外径を有しドーナツ型で中央部に向かって下に傾斜したロート型集液器106と、ロート型集液器106の中央部の穴に接続された液体下降管107を有する。液体下降管107の下端は、反応槽101の下部に収容されるアルカリ剤含有液108の液面109よりも下方まで達するように設けられている。
図6においては、分離板104を1つのみ設けたものを示したが、複数設けてもよい。傾斜板105、ロート型集液器106及び液体下降管107からなる分離板104で加湿液分離手段を構成する。
【0083】
反応槽101内上部には、配管111を経由して加湿液となる工業用排水を被処理ガスに噴霧する工業用水供給管112が設けられている。配管111及び工業用水供給管112は設けなくてもよい。
【0084】
また、反応槽101の側面下部には、配管113を経由してアルカリ剤含有液108を抜き出すポンプ114が設けられている。そして、反応槽101内の工業用水供給管112の下方であって、分離板104の上方には、ポンプ114の出口側に接続された配管115を経由して、抜き出したアルカリ剤含有液108を被処理ガス(第1ガス)に供給する加湿液供給管116が設けられている。工業用水供給管112、加湿液供給管116の数は特に限定されない。この加湿液供給管116及び必要に応じて設ける工業用水供給管112で、加湿液接触手段を構成する。また、配管113、ポンプ114及び配管115、加湿液供給管116で、循環手段を構成する。
【0085】
また、反応槽101内のロート型集液器106の下方であってアルカリ剤含有液108の液面109の上方には、ポンプ114の出口側に接続された配管115を経由して、抜き出したアルカリ剤含有液108を被処理ガス(第3ガス)に供給するアルカリ剤含有液供給管117が、3本設けられている。
図6においては、3本のアルカリ剤含有液供給管117を設けたが、アルカリ剤含有液供給管117の数は特に限定されない。
【0086】
反応槽101の底部近傍には、アルカリ剤含有液供給管117から供給されたアルカリ剤含有液に接触した被処理ガス(第3ガス)に接触するように、図示しない酸素供給源から酸素を供給する酸素供給管118が設けられている。酸素供給管118は酸素を含む気体を供給できればよく、例えば、空気を供給してもよい。アルカリ剤含有液108が収容された反応槽101、アルカリ剤含有液供給管117及び酸素供給管118で、硫黄酸化物除去手段を構成する。
【0087】
液体下降管107の下端近傍であってアルカリ剤含有液108の液面109よりも下側には、液体下降管107を下降した加湿液を抜き出すために、ポンプ119に接続された配管120が配置されている。この液体下降管107、ポンプ119及び配管120で、加湿液取得手段を構成する。
【0088】
そして、液体下降管107を下降した加湿液を抜き出す配管120の途中には、加湿液中の空気等のガスを除去するエアセパレータ61が、反応槽101外に設けられている。
【0089】
ポンプ119の後段には、ポンプ119の出口側に接続された配管121を経由した加湿液を固液分離して、硫黄酸化物と酸素とアルカリ剤含有液との反応の副生成物を除去する固液分離手段122が設けられている。固液分離手段122が副生成物回収手段である。
【0090】
固液分離手段122の後段には、固液分離手段122に接続された配管123を経由して、固液分離手段122で分離された液体から窒素化合物やCODを除去する排水処理装置が接続されている。また、配管123から分岐された配管124は、反応槽101に接続されている。配管124には、固液分離された液体を再びアルカリ剤含有液として利用可能にするために石灰石等のアルカリ剤を導入するアルカリ剤導入手段125が途中に設けられている。
【0091】
このように、本発明においては、石膏等の硫黄酸化物と酸素とアルカリ剤含有液との反応の副生成物を回収する工程を液体下降管107から取り出した加湿液に対してのみ行う、すなわち副生成物の回収を行う経路が1つのみであるため、簡素な構成の装置となる。そして、エアセパレータ61を設けているため、副生成物の回収を行う経路が1つのみであるにも関わらす、副生成物を高回収率で回収することができる。また、この簡素な構成の装置は、アルカリ剤含有液を循環させてアルカリ剤含有液を硫黄酸化物を含む第1ガスに接触させる構成であるため、排水中に含まれる酸化性物質(過酸化物)量を低減し、排水処理装置への負荷を抑制できる。また、液体下降管107内の加湿液は硫黄酸化物を含むガスに接触した後であるためpHが低くアルカリ剤が溶解しやすいので、アルカリ剤の混入が抑制された純度の高い副生成物を得ることができる。
【0092】
このような脱硫装置100を用いた本発明の硫黄酸化物を含むガスの脱硫方法について、説明する。まず、被処理ガスである硫黄化合物を含む第1ガスを被処理ガス導入口102から反応槽101へ導入する。被処理ガス導入口102から導入された第1ガスは、反応槽101上部に設けられた工業用水供給管112によって噴霧された工業用水、及び、加湿液供給管116によって噴霧されたアルカリ剤含有液に順に接触する(加湿液接触工程)。工業用水及びアルカリ剤含有液が加湿液である。工業用水及びアルカリ剤含有液に第1ガスが接触すると、第1ガスが加湿されて装置内の乾燥によるスケールの発生が防止できる。また、加湿液供給管116や工業用水供給管112によるアルカリ剤含有液や工業用水の噴霧によって、第1ガスの冷却や除塵も行うことができる。第1ガスの除塵を行うと、後段の加湿液分離工程で加湿液を分離する際に第2ガスから塵等の微粉末も除去される。したがって、塵等の微粉末による第3ガスと酸素とアルカリ剤との反応の阻害を防ぐことができ、効率よく反応させることができる。そして、第1ガス中に含まれるSO
2等の硫黄酸化物の一部も加湿液に吸収される。このように加湿液に気液接触した第1ガス、すなわち、第1ガスと加湿液との混合物が第2ガスである。
【0093】
そして、この第2ガスが傾斜板105やロート型集液器106と衝突して、第2ガスに含まれるSO
2等の硫黄酸化物を吸収した加湿液は、自然に傾斜板105やロート型集液器106を伝わってその中心部へと流れ、SO
2等の硫黄酸化物を吸収した加湿液である液体と、第3ガスに分離する(加湿液分離工程)。落下した加湿液は、液体下降管107に流れ込む。また、第3ガスは、ロート型集液器106の外側から反応槽101壁面側を通って反応槽101を下降する。
【0094】
反応槽101を下降した第3ガスは、ロート型集液器106の下方であって液体下降管107の外側に設けられたアルカリ剤含有液供給管117から噴霧されるアルカリ剤含有液と接触しアルカリ剤含有液は反応槽101下部にたまり酸素供給管118から供給された酸素と接触する。こうして、第3ガスが含有する硫黄酸化物と酸素及びアルカリ剤が反応する(硫黄酸化物除去工程)。これにより、第3ガスからSO
2等の硫黄酸化物が除去される。
【0095】
第3ガスに含まれるSO
2等の硫黄酸化物が酸素及びアルカリ剤と反応すると、上述した実施形態1と同様に、副生成物である石膏等の固形物が生じ、第3ガスから硫黄酸化物が除去される。この硫黄酸化物除去反応により硫黄酸化物が除去された第3ガスは、被処理ガス排出口103から排出される。
【0096】
一方、生じた副生成物を高濃度で含有するアルカリ剤含有液は、反応槽101の下部から、ポンプ114によって配管113を経由して引き抜かれる。引き抜かれたアルカリ剤含有液は、配管115を経由して加湿液供給管116から反応槽101上部において噴霧される(循環工程)。すなわち、循環工程を経たアルカリ剤含有液は第1ガスの加湿液となる。第1ガスが循環工程を経た加湿液としてのアルカリ剤含有液と接触すると、第1ガスが加湿されて第2ガスとなる(加湿液接触工程)。また、第1ガス中のSO
2等の硫黄酸化物の一部がこの循環工程を経たアルカリ剤含有液に吸収される。
【0097】
循環工程を経て、第2ガスに含まれるSO
2等の硫黄酸化物を吸収した加湿液としてのアルカリ剤含有液が、傾斜板105やロート型集液器106と衝突して、第2ガスに含まれるSO
2等の硫黄酸化物を吸収した加湿液は、自然にロート型集液器106を伝わってその中心部へと流れ、SO
2等の硫黄酸化物を吸収した加湿液である液体と、第3ガスに分離する(加湿液分離工程)。落下した加湿液は、液体下降管107に流れ込む。また、第3ガスは、ロート型集液器106の外側から反応槽101の壁面側を通って反応槽101を下降する。
【0098】
ロート型集液器106の外側から反応槽101壁面側を通って反応槽101を下降した第3ガスは、配管115を経由してアルカリ剤含有液供給管117から噴霧されたアルカリ剤含有液108と接触し、アルカリ剤含有液108と接触したアルカリ剤含有液は反応槽101下部にたまり、酸素供給管118から供給された酸素に接触する。こうして、再び硫黄酸化物除去反応が生じる。
【0099】
一方、液体下降管107に流入した加湿液は、ポンプ119に接続された配管120から少なくとも一部が抜き出される(加湿液取得工程)。
【0100】
ここで、液体下降管107に流入した加湿液としてのアルカリ剤含有液は、反応槽101に収容されたアルカリ剤含有液に由来するため、アルカリ剤及び硫黄酸化物除去反応の副生成物を含む。また、反応槽101内に収容されたアルカリ剤含有液108内で生じる硫黄酸化物除去反応において、酸化反応が進みすぎて酸化性物質であるS
2O
82−等の過酸化物が生じるため、液体下降管107に流入したアルカリ剤含有液は、酸化性物質を含む。酸化性物質は後段の排水処理装置の劣化につながる。
【0101】
しかしながら、本実施形態においては、この液体下降管107に流入したアルカリ剤含有液は、加湿液接触工程で第1ガスに接触した後に酸素に接触しておらず、加湿液接触工程で含んだ第1ガスに含まれるSO
2等の硫黄酸化物を、反応させずにSO
2等の硫黄酸化物の状態を維持したまま含む。
【0102】
したがって、本実施形態においても、SO
2等の硫黄酸化物が還元剤となって酸化性物質を還元する反応、例えば上記(2)式の反応が生じるため、酸化性物質による排水処理装置の劣化を抑制することができる。
【0103】
加湿液取得工程で抜き出された加湿液としてのアルカリ剤含有液は、配管120の途中に設けられたエアセパレータ61により、空気等のガスが除去される(ガス除去工程)。エアセパレータ61によりガスが除去されポンプ119を経由した加湿液は、配管121を経由し、固液分離手段122により石膏等の硫黄酸化物除去反応の副生成物が除去される(副生成物回収工程)。液体下降管107内の加湿液は、硫黄酸化物を含む第1ガスに接触した直後であるためpHが低くアルカリ剤が溶解しやすいので、硫黄酸化物除去反応で生じた副生成物へのアルカリ剤の混入が抑制され、純度の高い副生成物を含む。このように純度の高い副生成物を含む加湿液を固液分離するため、固液分離手段122で回収される石膏等の副生成物は、純度が高いものである。また、エアセパレータ61を設けているため、副生成物の回収を行う経路が1つのみであるにも関わらす、副生成物を高回収率で回収することができる。
【0104】
固液分離手段122で分離された液体は、排水処理装置に送られ、窒素化合物やCOD等を除去する排水処理がなされる(排水処理工程)。上述したように、この排水処理される排水は、酸化性物質が除去されているため、排水処理装置の劣化が抑制される。
【0105】
また、固液分離手段で得られた液体の一部は、配管123から分岐された配管124を経由し、配管124の途中に設けられたアルカリ剤導入手段125によって石灰石等のアルカリ剤が導入され、反応槽101に送られて、再び硫黄酸化物除去反応のアルカリ剤含有液として利用される。
【0106】
スプレー式の脱硫装置100においても、液体下降管107の下端部を囲うように実施形態2と同様のポット71を設けてもよい。さらに、実施形態2と同様に、液体下降管107下端を囲うポット71内に第2酸素供給管74、スパージャパイプ75等を設け、加湿液を回収する段階においても上記(1)式等の反応が生じるようにしてもよい。すなわち、液体下降管107やポット71内で実施形態1と同様に上記(2)式等の酸化性物質と硫黄酸化物との反応を生じさせることによってSO
2等の硫黄酸化物を低減し、酸化性物質をほぼ無くし、その後、ポット71内に酸素を導入することにより、上記(1)式の反応を生じさせて、SO
2等の硫黄酸化物をさらに低減すると共に、純度の高い石膏等の副生成物が得られるようにしてもよい。
【0107】
図6は冷却を同時に行う1塔で構成されるいわゆるスート式の脱硫装置であるが、スート式に限らず、冷却を別塔で行うものもよい。
【実施例】
【0108】
以下に、本発明の更なる理解のために実施例を用いて説明するが、実施例はなんら本発明を限定するものではない。
<実施例1>
図1に示す脱硫装置10を用いて、脱硫操作を行った。具体的には、
図1に示す脱硫装置10で、亜硫酸(SO
2)濃度が約350ppm−dryの石炭焚排ガスを、アルカリ剤として石灰石を用い、アルカリ剤含有液室16内のアルカリ剤含有液15のpHを4.50に調整し、エアセパレータ61でガスを除去しながら、脱硫処理した。
【0109】
<実施例2>
図1に示す脱硫装置を用いる代わりに、
図1に示す脱硫装置にポット71、第2酸素供給管74、スパージャパイプ75、配管77を追加した
図4に示す脱硫装置70を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0110】
<比較例1>
図1に示す脱硫装置を用いる代わりに、エアセパレータ61を有さず、反応槽11底部からもアルカリ剤含有液を抜き出し副生成物を固液分離手段144で固液分離する
図7に示す脱硫装置200を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0111】
実施例1〜2及び比較例1において固液分離手段で得られた固形物中に含まれる炭酸カルシウム(CaCO
3)及び石膏(CaSO
4・2H
2O)の各割合(純度)をJIS R9101:1995法を用いて求めた。なお、比較例1においては、炭酸カルシウムや石膏の純度は、反応槽11底部から抜き出したアルカリ剤含有液を処理した固液分離手段144で得た固形物について求めた。また、比較例1においては、固液分離手段44で得られた固形物の量は、固液分離手段144で得られた固形物よりも非常に少なかった。結果を表1に示す。なお、炭酸カルシウムや石膏は通常いくらかの水分を含んでいるため、表1に示した各純度は、分母(固形物量)から水分を除いた状態で計算したものである(表1において、「wt%−dry」と表記する)。
【0112】
また、実施例2において、アルカリ剤含有液室16内のアルカリ剤含有液、及び、配管45から排水処理装置に送られた排水にそれぞれ含まれる酸化性物質の濃度をJIS K0102:2010法で測定した。結果を表2に示す。
【0113】
表1に示すように、実施例1及び2では、比較例1に比べて、アルカリ剤(CaCO
3)の含有割合が低く、石膏(CaSO
4・2H
2O)の純度が高かった。特に、実施例2においては、ポットを設け酸素供給量を調整することにより、実施例1に比べて、(1)式の反応をより進行させ石膏の純度を向上させることができた。また、表2に示すように、本発明においては、排水の酸化性物質濃度が非常に低減されていることが分かる。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】